JP5964199B2 - 熱電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱電変換素子及びその製造方法に関する。
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換することができる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換材料や熱電変換素子を応用した熱電発電は、熱エネルギーを直接電力に変換することができ、可動部を必要としない等の利点を有し、体温で作動する腕時計や僻地用電源、宇宙用電源等に用いられている。
熱電変換材料としては種々の金属材料が提案されており、例えば、石英基板上にスパッタ法により亜鉛アンチモンを成膜して得られた薄膜が、熱電変換特性を示すことが報告されている(非特許文献1)。
熱電変換性能を向上させるべく、新たな熱電変換材料の探索や素子の改良が試みられている。熱電変換性能は熱電変換材料のゼーベック係数、導電率及び熱伝導率により変化し、ゼーベック係数及び導電率が大きく、熱伝導率が小さいほど熱電変換性能は向上する。
非特許文献2には、陽極酸化アルミニウム基板上にフラッシュ蒸着法によりBiSbTe材料を成膜することで、多孔質状の薄膜が得られること、及び当該薄膜は石英基板上に同じ金属材料で形成した薄膜と比較して熱伝導率が低下することが報告されている。しかしながら、導電率及びゼーベック係数は石英基板を用いた場合と比べて低下している。
K. Ito et al.,"Low Thermal Conductivity and Related Thermoelectric Properties of Zn4Sb3 and CoSb3 Thin Films", Mat. Res. Soc. Symp. Proc.,Vol.793,2004年,S5.1.1 M. Kashiwagi et al., "Enhanced figure of merit of a porous thin film of bismuth antimony telluride", Applied Physics Letters,Vol.98,023114,2011年
本発明は、優れた熱電変換性能を備えた熱電変換素子、及び当該素子の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、熱電変換素子の性能を向上させるため鋭意検討を行った。その結果、多孔質陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板上に高融点の元素からなる材料を成膜して熱電変換層を形成すると、熱電変換層内に空隙構造が形成されて熱伝導率が低下すること、しかも導電率やゼーベック係数においても非常に優れたものとなることを見出した。本発明は、この知見に基づき成されたものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により達成された。
<1> アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に、融点300℃以上の元素を主成分として含有し且つ空隙構造を有する熱電変換層を積層してなり、該熱電変換層に主成分として含有する合金が、ZnSb、CoSb、MnSi1.75、及びFeSiからなる群より選ばれ、且つ結晶化した状態の合金である熱電変換素子。
<2> 前記多孔質陽極酸化皮膜の開口率が下記数式(I)を満たす、<1>に記載の熱電変換素子。
数式(I) 開口率=φ/P>0.5
(式中、φは平均孔径、Pは平均孔間隔をそれぞれ表す。)
<3> 前記多孔質陽極酸化皮膜の孔の平均孔径が60nm以上である、<1>又は<2>に記載の熱電変換素子。
<4> アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に融点300℃以上の元素を主成分として含有する熱電変換材料を成膜してなり且つ空隙構造を有する熱電変換層が積層された熱電変換素子の製造方法であって、
前記主成分として含有する熱電変換材料が、ZnSb、CoSb、MnSi1.75、及びFeSiからなる群より選ばれる合金であり、
前記熱電変換材料を気相蒸着法により成膜して熱電変換層を形成する工程、及び該熱電変換層を350〜500℃でアニール処理して前記熱電変換材料成分を結晶化した状態とする結晶化処理工程を含熱電変換素子の製造方法。
<5> 前記成膜して熱電変換層を形成する工程において、基板温度150〜350℃で成膜する、請求項4に記載の熱電変換素子の製造方法。
<6> アルミニウム板をシュウ酸で陽極酸化して、前記多孔質陽極酸化皮膜を有する基板を得る工程を含む、<4>又は<5>項に記載の熱電変換素子の製造方法。
本発明の熱電変換素子は、優れた熱電変換性能を示し、種々の熱電発電用物品に好適に用いることができる。また、本発明の熱電変換素子の製造方法によれば、優れた熱電変換性能を備えた熱電変換素子が得られる。
本発明の熱電変換素子の一例を示す模式図である。 アルミニウムの陽極酸化皮膜の部分断面図である。 陽極酸化皮膜上に熱電変換材料が成膜される過程を模式的に示す図である。
本発明の熱電変換素子は、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に、融点300℃以上の元素を主成分として含有する熱電変換層を積層してなる。陽極酸化アルミニウム皮膜の多孔質層の上に、熱電変換層を積層することで層内に空隙構造が形成され、層の熱伝導率低下を実現することができる。さらに、熱電変換層の主成分として高融点の元素を用いることで導電率及びゼーベック係数の向上も可能となる。
熱電変換素子はゼーベック効果を利用して熱電変換を行うものであり、その熱電変換性能を表す指標として、下記式(A)で表される性能指数Zが用いられている。

式(A): Z=S2・σ/κ
S(V/K):熱起電力(ゼーベック係数)
σ(S/m):導電率
κ(W/mK):熱伝導率

式中、Sはゼーベック係数を、σは導電率を、κは熱伝導率をそれぞれ表す。ゼーベック係数は、絶対温度1Kあたりの熱起電力である。
素子の熱電変換性能を高めるためには、熱電変換層や熱電変換材料のゼーベック係数Sの絶対値及び導電率σを大きくし、熱伝導率κを小さくすることが求められる。
本発明の熱電変換素子は、熱電変換層が空隙構造を有しており、これにより熱伝導率が低下する。一般に、層内に気孔等が存在すると熱伝導率は低下する反面、電気抵抗率も上昇するため導電率が低下する。しかし、本発明では熱電変換層の材料として特定の融点を有する元素を用いることで、空隙構造を維持したまま導電率とゼーベック係数との双方に優れた熱電変換層を得ることができる。本発明の熱電変換素子は、これら熱伝導率、導電率及びゼーベック係数の相乗的な効果により、優れた熱電変換性能を発揮することができる。
本発明の熱電変換素子の一例を図1に示す。熱電変換素子1は、アルミニウム基板2と、該基板の表面に形成された陽極酸化皮膜3と、該陽極酸化皮膜の上に成膜された熱電変換層4とを備える。本発明の熱電変換素子は基板と熱電変換層に加え、これらを電気的に接続する電極を有していてもよい。基板は、図2に示すように、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜13を有する。アルミニウム陽極酸化皮膜13には、断面形状が略直管形状で、ハニカム状に配列するマイクロポア15が形成されている。以下、これらの図面を適宜参照して、本発明を詳細に説明する。
[基板]
本発明の熱電変換素子の基板は、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有するものであればよい。このような基板は、アルミニウム基板に陽極酸化処理を施して、基板表面に陽極酸化皮膜を形成させることで得られる。アルミニウムの陽極酸化皮膜は、基底層であるバリアー層とその上に形成された多孔質層とからなる。多孔質層は規則的に配列した複数の細孔(マイクロポア)を有している(図2)。本発明の熱電変換素子は、この多孔質層の上に熱電変換層を成膜する。
陽極酸化処理により形成されたアルミニウムの陽極酸化皮膜は、それ自体が自立可能であるため、陽極酸化処理後に土台のアルミニウム板を除去して皮膜部分のみを素子の基板として用いてもよいし、表面に陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を基板として用いてもよい。
以下、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜の製造方法について説明する。
<アルミニウム基板>
アルミニウム基板は特に限定されず、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハ、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
アルミニウム基板は、陽極酸化処理を施す表面のアルミニウムの純度が高いものが好ましい。具体的には、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.9質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、アルミニウム陽極酸化皮膜の表面に形成されるマイクロポア(細孔)の配列規則性が良好となり好ましい。
アルミニウム基板は、陽極酸化処理を行う前に前処理を行ってもよい。例えば、ポア配列の規則性を向上させるために、あらかじめ熱処理を行っておくことが好ましい。また、アルミニウム基板の陽極酸化処理を施す表面には、あらかじめ脱脂処理、鏡面仕上げ処理が施されるのが好ましい。
<熱処理>
熱処理は、200〜350℃で30秒〜2分程度行うことが好ましい。具体的には、アルミニウム基板を加熱オーブンに入れて加熱する方法等が挙げられる。このような熱処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の表面に形成されるマイクロポアの配列の規則性が向上する。
上記熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却することが好ましい。冷却方法としては、基板を水等に直接投入する方法等が挙げられる。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去する処理である。後述の各処理における有機成分を原因とする欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理の方法としては、各種アルコール(メタノール等)、各種ケトン(メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温〜80℃程度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温〜70℃程度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間程度接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種の陽極酸化処理用電解液を常温で金属基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間程度接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温〜50℃程度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温〜50℃程度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間程度接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
これらの中でも、アルミニウム基板表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらないため、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
また、脱脂処理は、通常の脱脂剤を用いて行うことができる。例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸、例えば、アルミニウム基板の圧延時に発生した圧延筋等をなくすために行われる。
鏡面仕上げ処理の方法は特に限定されず、例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨等の通常の方法を用いることができる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法等が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる場合、使用する研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法等が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更する機械研磨を施し、その後、電解研磨を施すことが好ましい。
<陽極酸化処理>
アルミニウム基板の陽極酸化処理は通常の方法を用いることができる。例えば、自己規則化法を用いることができる。自己規則化法とは、陽極酸化皮膜に形成されるマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウム基板を使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
本発明において、陽極酸化処理は、下記の陽極酸化処理(a−1)により行うことが好ましく、陽極酸化処理(a−1)に加えて、脱膜処理(a−2)、再陽極酸化処理(a−3)を併せて行うことがより好ましい。陽極酸化処理(a−1)、脱膜処理(a−2)、再陽極酸化処理(a−3)はそれぞれ複数回行ってもよい。例えば、陽極酸化処理(a−1)と脱膜処理(a−2)とをこの順に数回繰り返し行い、次いで再陽極酸化処理(a−3)を行うことが好ましい。また、再陽極酸化処理(a−3)の後に脱膜処理(a−2)を行ってもよい。
上記処理工程を2回以上繰り返して行う場合、各工程における処理条件はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
<陽極酸化処理(a−1)>
陽極酸化処理は、電解質溶液(例えば、酸濃度0.01〜5mol/Lの溶液)中で、アルミニウム基板を陽極として電気分解を行い、基板表面を酸化して、表面に酸化アルミニウムの多孔質皮膜を形成させる処理である。
電解質溶液は、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸等がより好ましく、硫酸、リン酸、シュウ酸がさらに好ましく、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
形成されるマイクロポアの孔径は用いる酸溶液の種類により異なる。本発明ではマイクロポアの平均孔径が60nm以上であることが好ましく、このような孔径を得るためには電解質溶液としてシュウ酸を用いることが好ましい。
陽極酸化処理条件は、使用される電解液によって変化するので一義的に定まらないが、一般的には電解液濃度0.01〜5mol/L、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.05〜3mol/L、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度0.1〜1mol/L、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化処理を行う際の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有するマイクロポアを形成することができる。
また、電解液を流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
陽極酸化処理は、一定電圧下で行う以外に、電圧を断続的または連続的に変化させる方法も用いることができる。この場合は電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、好ましい。
<脱膜処理(a−2)>
脱膜処理は、上記陽極酸化処理によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する処理である。脱膜処理では、アルミニウム基板は溶解させず、酸化アルミニウム(アルミナ)からなる陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板に近くなるほど規則性が高くなるため、脱膜処理により、一度陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に露出させて、規則的な窪みを得ることができる。
脱膜処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板をアルミナ溶解液に接触させることにより行う。アルミナ溶解液は、アルミナを溶解し、アルミニウムを実質的に溶解しないものであればよい。
アルミナ溶解液としては、酸溶液又はアルカリ溶液を用いることができ、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の酸またはこれらの混合物の水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム等のアルカリの水溶液が挙げられる。また、クロム化合物、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物、ハロゲン単体等から選ばれる少なくとも1種を含有した水溶液を用いることもできる。これらの溶液を2種以上混合したものを、アルミナ溶解液として用いてもよい。
具体的なクロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
中でも、酸を含有する水溶液を用いることが好ましく、酸として、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が好ましい。2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸水溶液の酸濃度は、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特に限定されないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましく、1mol/L以下であるのが更に好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
アルミナ溶解液の温度は、−10℃以上であるのが好ましく、−5℃以上であるのがより好ましく、0℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
アルミナ溶解液として酸水溶液を用いる場合、酸水溶液の温度は、20〜60℃であることが好ましい。
陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板をアルミナ溶解液に接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板をアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
また、陽極酸化皮膜の溶解量は、陽極酸化皮膜全体の0.001〜50質量%であるのが好ましく、0.005〜30質量%であるのがより好ましく、0.01〜15質量%であるのが更に好ましい。溶解量が上記範囲であると、陽極酸化皮膜の表面の配列が不規則な部分を溶解させて、マイクロポアの配列の規則性を高くすることができるとともに、マイクロポアの底部分に陽極酸化皮膜を残存させて、再陽極酸化処理(a−3)で実施する陽極酸化処理の起点を残すことができる。
<再陽極酸化処理(a−3)>
上記脱膜処理により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
再陽極酸化処理は、通常の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(a−1)と同様の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、ポア径の均一性が向上する点で、好ましい。
再陽極酸化処理を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、ポア径も均一になる。一方、再陽極酸化処理を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
再陽極酸化処理による陽極酸化皮膜の厚さの増加量は、0.1〜100μmであるのが好ましく、0.5〜50μmであるのがより好ましい。増加量が上記範囲であると、ポアの配列の規則性をより高くすることができる。
<アルミニウム除去処理>
上記の陽極酸化処理によってアルミニウム基板の表面上に形成された陽極酸化皮膜から、必要に応じてアルミニウム基板を除去してもよい。本発明で用いる素子基板は少なくとも多孔質陽極酸化皮膜を有していればよく、アルミニウム部分は必ずしも伴っていなくてもよい。アルミニウム基板の除去は、通常の方法により行うことができる。例えば、陽極酸化皮膜(アルミナ)は溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液を用いて、アルミニウム基板のみを溶解して除去する方法が挙げられる。
本発明で用いるアルミニウムの陽極酸化皮膜は、膜厚が6μm以上であることが好ましい。
また、陽極酸化皮膜の多孔質層の開口率が0.5以上であることが好ましい。開口率は下記数式(I)から算出される孔間隔に対する孔径の比率である。

数式(I) 開口率=φ/P>0.5

数式(I)において、φは多孔質層の細孔(マイクロポア)の平均孔径を、Pは平均孔間隔をそれぞれ表す。多孔質層の孔径とは開口部の孔の直径をいい、平均孔径φはその平均値である。多孔質層の孔間隔とは隣接する2つの開口部の中心間距離をいい、平均孔間隔Pはその平均値である。
本発明では、多孔質層の平均孔径φが60nm以上であることが好ましい。また、平均孔間隔Pは100nm以上であることが好ましい。
本発明の熱電変換素子は、この陽極酸化皮膜の多孔質層の上に熱電変換層が成膜されてなる。陽極酸化皮膜の多孔質層は、熱電変換層成膜の際に、熱電変換層の主成分である高融点元素(熱電変換材料)が堆積・積層する足場となる。多孔質層を足場として熱電変換材料を堆積させると、熱電変換層には多孔質層の孔径の大きさ、孔間隔、孔の形状に対応した空隙構造が形成される。これを本発明における熱電変換層の空隙構造という。
図3に、陽極酸化皮膜の多孔質層上に熱電変換材料が成膜される過程を模式的に示す。図3a)は、熱電変換材料成膜前の陽極酸化皮膜の上部(開口部)の模式図である。陽極酸化皮膜23は、複数のマイクロポア25を有している。熱電変換材料26は、陽極酸化皮膜23の表面に徐々に堆積していき(図3b)、熱電変換層が成膜される(図3c)。
熱電変換層の空隙構造の位置や大きさ、形状等は熱伝導率低下の有無や程度に影響すると考えられる。前述のように熱電変換層の空隙構造は、多孔質層の孔径、孔間隔、孔形状等(以下、孔径等)に応じて決まるため、多孔質層の孔径等を制御することで、熱電変換層の空隙構造を調節することが可能である。多孔質層の開口率や孔径を上記の好ましい範囲内とすることで、より効果的に熱伝導率の低下を実現することができる。熱電変換層の空隙構造は、その平均孔径が1〜100nmであることが好ましく、5〜60nmであることがより好ましい。
[高融点材料]
本発明の素子は、熱電変換層の主成分として融点300℃以上の元素を用いる。好ましくは、融点330℃以上の元素を主成分として用いる。高融点の元素を使用することで、熱電変換層の熱伝導率の低下と導電率及びゼーベック係数の向上とを共に実現することができる。
主成分として用いる融点300℃以上の元素は、1種であっても2種以上であってもよく、融点300℃以上の元素が熱電変換層中に合計で90質量%以上含有されていればよい。好ましくは当該元素が合計で95質量%以上、より好ましくは98質量%以上含有される。
熱電変換層の主成分として用いる元素の具体例としては、Zn(融点:419℃)、Sb(融点:630℃)、Co(融点:1495℃)、Mn(融点:1244℃)、Si(融点:1410℃)、Mg(融点:650℃)、Ge(融点:938℃)、Fe(融点:1538℃)等が挙げられる。本発明の熱電変換層は、これらの元素2種以上からなる合金を主成分とすることが好ましい。好ましい合金の具体例としては、ZnSb、CoSb、MnSi1.75、MgSi、SiGe、及びFeSiが挙げられる。
また、熱電変換層は、主成分或いは後述のその他成分としてテルル(Te(融点:449℃))を実質的に含有しないことが好ましい。テルルは昇華性があるため、変換層に含まれると時間とともに層の組成が変化してしまうため好ましくない。具体的には、テルルの含有量が熱電変換層中10質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明では、熱電変換層に主成分として含有する合金は、Zn Sb 、CoSb 、MnSi 1.75 、及びFeSi からなる群より選ばれる合金である。
[その他の成分]
熱電変換層は上記主成分の他に、ドーパント等を含有してもよい。
ドーパントを含有する場合、ドーパントは主成分として用いる元素の種類に応じて適宜選択することができる。
その他の成分の含有量は、熱電変換層中10質量%以下であることが好ましい。また、本発明の熱電変換層には他成分として融点が300℃未満の元素も含まれうるが、上述したように導電率等の観点からは当該元素の含有量が少ないことが好ましく、熱電変換層中10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
[熱電変換層の形成]
熱電変換層は、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜上に、上記の融点300℃以上の元素を主成分とする熱電変換材料を成膜して形成される(図1)。上述のように陽極酸化皮膜の多孔質層は複数のマイクロポアを有しており、この上に熱電変換材料を成膜することで、熱電変換層内に多孔質のポア構造と同様の空隙構造を形成することができる(図3)。
熱電変換層の成膜は、気相蒸着法により行うことが好ましい。以下、気相蒸着法による熱電変換層の形成方法について説明する。
気相蒸着法としては特に限定されず、融点300℃以上の元素を主成分とする熱電変換層を形成するための原料物質を基板上に堆積して、熱電変換膜を成膜できる方法であればよい。例えば、パルスレーザー堆積法、スパッタリング法、真空蒸着法、電子線蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマアシスト蒸着法、イオンアシスト蒸着法、反応性蒸着法、レーザーアブレーション法、エアロゾルデポジション法等の物理蒸着法、熱CVD法、触媒化学気相成長法、プラズマCVD法、有機金属気相成長法等の化学気相成長法を好適に採用できる。これらの方法の内で、スパッタリング法、イオンプレーティング法が好ましい。
融点300℃以上の元素を主成分として含有する熱電変換層を形成するための原料物質(以下、「原料」)としては、気相蒸着法によって気化させて基板上に堆積させることにより、上述した融点300℃以上の元素を主成分とした熱電変換膜を形成し得るものであれば特に限定なく使用できる。例えば、上記融点300℃以上の元素を成分とする金属を用いることができる。主成分が2種以上の元素からなる場合は、これらの成分を含む原料の混合物を使用してもよい。
基板は、上述したアルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板を用いる。
これらの原料は、目的とする合金の金属成分比となるように混合して、そのまま用いることが可能であるが、特に、これらの原料を混合し焼成して用いることが好ましい。焼成物とすることにより、気相蒸着の際に取り扱いが容易となる。
気相蒸着による熱電変換層の成膜は、室温下で行ってもよく、基板を150〜350℃程度に加熱しておこなってもよい。ただし、基板を加熱しないで堆積・成膜を行う場合、成分の結晶化の程度が非常に低く、良好な熱電変換性能を発揮できないことがあるため、成膜後に後述のアニール処理を行うことが必要となる。基板を加熱して堆積させる場合には、該成分が基板上に結晶化した状態で生成するため、アニール処理を行わなくてもよいが、併せて行ってもよい。基板を加熱するか、或いは成膜後にアニール処理を行うことによって、成分の結晶化が進行して良好な熱電変換性能を発揮できるようになる。
熱電変換層を形成するに際しては、熱電変換性能を向上させるため、成分の結晶化を進行させる処理(結晶化処理)が必要である。結晶化処理は、基板温度を高温にして成膜を行うか、或いは成膜後のアニール処理により成される。熱電変換層の主成分として融点の低い元素を用いた場合、当該結晶化処理によって溶融し、変換層内の空隙構造が消失してしまう。本発明では、変換層の主成分として融点300℃以上の元素を用いることで、変換層の空隙構造を維持して熱伝導率を下げ、且つ十分な結晶化により熱電変換性能を向上させることができる。
また、アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板を用いることで、基板と熱電変換層との密着性に優れた素子が得られる。基板と熱電変換層との密着性が向上することで、基板の反りや剥離に起因するクラックを抑制でき、良好な熱電変換性能を発揮することができる。
アニール処理温度は、350〜500℃程度が好ましい。この温度範囲でアニール処理を行うことによって、熱電変換膜の結晶化が進行して、良好な熱電変換性能を有するものとなる。アニール処理温度が低すぎる場合には、結晶化が十分に進行せず、熱電変換性能が劣るものとなるので好ましくない。一方、アニール処理温度が高すぎると、別の相が出現して、やはり熱電変換性能が低下するので好ましくない。
アニール処理時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素ガスを用いることができる。熱電変換膜の還元を行いたい場合には、アルゴン/水素や窒素/水素ガスなどを用いることができる。この時の圧力は特に限定されず、減圧、大気圧、加圧のいずれでもよい。
アニール処理時間は、熱電変換膜の大きさや厚さなどによって異なるが、熱電変換膜の結晶化が十分に進行するまで処理を行えばよく、通常、10分から12時間程度、好ましくは1時間から4時間の処理時間とすればよい。
形成される熱電変換層の膜厚は、50nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましい。膜厚が薄いと温度差を付与しにくくなることと、膜内の抵抗が増大してしまうため好ましくない。
本発明の熱電変換素子は、温泉熱発電、腕時計用電源、半導体駆動電源、小型センサー用電源、太陽熱発電、廃熱発電等の用途に好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明をより詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
製造例1 陽極酸化アルミニウム基板の製造(処理液:硫酸)
(A)前処理(電解研磨処理)
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットし、以下組成の電解研磨液を用い、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
(電解研磨液組成)
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
(B)陽極酸化処理工程
次いで、電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.30mol/L硫酸の電解液で、電圧25V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で、5時間の陽極酸化処理を施した。
その後、陽極酸化処理後のアルミニウム基板を、0.2mol/L無水クロム酸及び0.6mol/Lリン酸の混合水溶液(液温:50℃)に12時間浸漬させる脱膜処理を施した。
その後、0.30mol/L硫酸の電解液で、電圧25V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で、3時間の再陽極酸化処理を施した。
なお、陽極酸化処理および再陽極酸化処理は、いずれも陰極はステンレス電極とし、電源はGP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置にはNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置にはペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。更に、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
得られた陽極酸化アルミニウム基板の多孔質構造について、平均孔径φ、平均孔間隔P、開口率(φ/P)をそれぞれ下記の方法で測定・算出した。
電子顕微鏡を用い、陽極酸化アルミ表面を撮影した。撮影画像より、開口部20個を選定し、直径を計測し、平均孔径φを求めた。また、2つ開口部の中心間距離を計測し、平均孔間隔Pと、開口率(φ/P)を算出した。
製造例2 陽極酸化アルミニウム基板の製造(処理液:シュウ酸)
(A)前処理工程(電解研磨処理)
製造例1の(A)と同様に行った。
(B)陽極酸化皮膜形成工程(陽極酸化処理)
上記で得られた電解研磨処理後のアルミニウム基板に、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。更に陽極酸化処理後のサンプルに、0.5mol/Lリン酸水溶液を用いて40℃の条件で25分間浸漬して脱膜処理を施した。
これらの処理をこの順に4回繰り返した後、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧40V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で4時間再陽極酸化処理を施し、更に、0.5mol/Lリン酸水溶液を用いて40℃の条件で25分間浸漬させて脱膜処理を施すことにより、アルミニウム基板表面に、マイクロポアが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化皮膜を形成させた。
なお、陽極酸化処理および再陽極酸化処理ともに、陰極はステンレス電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置としては、NeoCool BD36(ヤマト科学社製)を用い、かくはん加温装置として、ペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
得られた陽極酸化アルミニウム基板の多孔質構造について、平均孔径φ、平均孔間隔P、開口率(φ/P)を、製造例1と同様にしてそれぞれ測定・算出した。
実施例1 熱電変換素子の作製
製造例1で得られた硫酸処理による陽極酸化アルミニウム基板を用いて、スパッタリング法により熱電変換層を成膜して、熱電変換素子を作製した。
ZnSb(亜鉛アンチモン)からなるターゲットを作製し、マグネトロンスパッタ装置を用い、基板の温度を150℃に維持しながら、成膜を行った。このときの熱電変換層の膜厚は200nmであった。さらに、アルゴンガスで置換した電気炉を用い、350℃で4時間アニール処理を行い、熱電変換層を形成した。
熱電変換層の性能を下記により評価した。結果を表1に示す。
実施例2
基板を製造例2で得られたシュウ酸処理による陽極酸化アルミニウム基板に変更した以外は実施例1と同様にして、基板上に熱電変換層を成膜し、性能を評価した。結果を表1に示す。
比較例1
基板を石英基板に変更した以外は実施例1と同様にして、基板上に熱電変換層を成膜し、性能を評価した。結果を表1に示す。
比較例2〜3
熱電変換材料としてZnSbの代わりに表2に示す各材料を使用し、アニール処理の温度と時間を表2に示す条件に変更した以外は実施例2と同様にして、基板上に熱電変換層を成膜し、性能を評価した。結果を表2に示す。なお、Biは融点271℃である。
[熱電性能の評価]
熱電特性測定装置 MODEL RZ2001i(製品名、オザワ科学社製)を用い、温度100度の大気雰囲気で測定を行い、熱起電力(ゼーベック係数:V/k)と導電率(S/m)を測定した。得られたゼーベック係数と導電率から、Power Factor(PF)を、下記式より算出した。

PF=(ゼーベック係数)×(導電率)
[空隙構造の評価]
走査型プローブ顕微鏡 Nanopics 1000(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)を用い、タッピングモードで熱電変換層の表面を観察した。視野範囲を1000nmとして、表面の凹凸から空隙の有無を確認した。
[密着性評価]
セロハンテープによるテープ剥離試験を行い、基板からの熱電変換層の剥離が無い場合には○、剥離があった場合には×と評価した。
Figure 0005964199
Figure 0005964199
表1及び2から明らかなように、陽極酸化アルミニウム基板を用いた実施例1、2では、熱電変換層内部に空隙構造が形成されていた。これに対し、石英基板を用いた比較例1では空隙構造は形成されなかった。さらに、実施例1、2は優れた熱電性能を示し、基板との密着性も良好であった。石英基板を用いた比較例1では、アニール処理を行っても熱電性能が実施例1、2には大きく及ばなかった。
融点の低い元素を用いて熱電変換層を形成した比較例2〜3でも、変換層の空隙構造は確認されなかった。これは、アニール処理により融点の低い元素が溶融し、変換層の空隙構造が消失したためと考えられる。さらに、比較例3においては、アニール処理前に比べて金属光沢が無くなり、かつ熱電変換層の比抵抗が無限大に増大した。これは変換層に含まれるテルルが昇華したためと考えられる。
実施例3
製造例2で得られたシュウ酸処理による陽極酸化アルミニウム基板を用いて、スパッタリング法により熱電変換層を成膜して、熱電変換素子を作製した。
CoSb(コバルトアンチモン)からなるターゲットを作製し、マグネトロンスパッタ装置を用い、基板の温度を150℃に維持しながら、成膜を行った。このときの熱電変換層の膜厚は200nmであった。さらに、アルゴンガスで置換した電気炉を用い、350℃で2時間アニール処理を行い、熱電変換層を形成し、性能を評価した。
結果を表3に示す。
実施例4
製造例2で得られたシュウ酸処理による陽極酸化アルミニウム基板を用いて、スパッタリング法により熱電変換層を成膜して、熱電変換素子を作製した。
MnSi1.75(マンガンシリサイド)からなるターゲットを作製し、マグネトロンスパッタ装置を用い、基板の温度を150℃に維持しながら、成膜を行った。このときの熱電変換層の膜厚は200nmであった。さらに、アルゴンガスで置換した電気炉を用い、350℃で2時間アニール処理を行い、熱電変換層を形成し、性能を評価した。
結果を表3に示す。
実施例5
製造例2で得られたシュウ酸処理による陽極酸化アルミニウム基板を用いて、スパッタリング法により熱電変換層を成膜して、熱電変換素子を作製した。
FeSi(鉄シリサイド)からなるターゲットを作製し、マグネトロンスパッタ装置を用い、基板の温度を150℃に維持しながら、成膜を行った。このときの熱電変換層の膜厚は200nmであった。さらに、アルゴンガスで置換した電気炉を用い、350℃で2時間アニール処理を行い、熱電変換層を形成し、性能を評価した。
結果を表3に示す。
比較例4
陽極酸化アルミニウム基板の代わりに石英ガラスを用いた以外には、実施例3と同様に熱電変換素子を作製し、性能を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005964199
表3から明らかなように、陽極酸化アルミニウム基板を用いた実施例3〜5は熱電変換層内部に空隙構造が形成され、基板との密着性も良好であった。また、熱電変換性能も、熱電変換材料ZnSb(表1)に比べると低いものの、良好な熱電変換性能を示した。
これに対し、石英基板を用いた比較例4では空隙構造は形成されず、基板とも密着性も悪かった。また、熱電変換性能も実施例3に比べて低かった。
1:熱電変換素子
2:アルミニウム基板
3、13、23:陽極酸化皮膜
4:熱電変換層
15、25:マイクロポア
26:熱電変換材料

Claims (6)

  1. アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に、融点300℃以上の元素を主成分として含有し且つ空隙構造を有する熱電変換層を積層してなり、該熱電変換層に主成分として含有する合金が、ZnSb、CoSb、MnSi1.75、及びFeSiからなる群より選ばれ、且つ結晶化した状態の合金である熱電変換素子。
  2. 前記多孔質陽極酸化皮膜の開口率が下記数式(I)を満たす、請求項1に記載の熱電変換素子。
    数式(I) 開口率=φ/P>0.5
    (式中、φは平均孔径、Pは平均孔間隔をそれぞれ表す。)
  3. 前記多孔質陽極酸化皮膜の孔の平均孔径が60nm以上である、請求項1又は2に記載の熱電変換素子。
  4. アルミニウムの多孔質陽極酸化皮膜を有する基板上に融点300℃以上の元素を主成分として含有する熱電変換材料を成膜してなり且つ空隙構造を有する熱電変換層が積層された熱電変換素子の製造方法であって、
    前記主成分として含有する熱電変換材料が、ZnSb、CoSb、MnSi1.75、及びFeSiからなる群より選ばれる合金であり、
    前記熱電変換材料を気相蒸着法により成膜して熱電変換層を形成する工程、及び該熱電変換層を350〜500℃でアニール処理して前記熱電変換材料成分を結晶化した状態とする結晶化処理工程を含熱電変換素子の製造方法。
  5. 前記成膜して熱電変換層を形成する工程において、基板温度150〜350℃で成膜する、請求項4に記載の熱電変換素子の製造方法。
  6. アルミニウム板をシュウ酸で陽極酸化して、前記多孔質陽極酸化皮膜を有する基板を得る工程を含む、請求項4又は5に記載の熱電変換素子の製造方法。
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