JP4241123B2 - β‐FeSi2の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は溶融塩法を用いてβ‐FeSi2を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
β‐FeSi2は,環境への負荷が少ない半導体材料として期待されている。環境への負荷が少ない半導体(環境半導体)というのは,資源が豊富で,生体への毒性が低くて,環境汚染の心配がない元素を基本材料としたものである。β‐FeSi2は,このような環境半導体であり,特に太陽光発電素子や熱電素子の材料として注目を浴びている。
【0003】
β‐FeSi2を実用的に製造する試みについては,これまでに数多くの報告がなされている。例えば,以下に列挙するような従来技術が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001‐244199号公報
【特許文献2】
特開2001‐131747号公報
【特許文献3】
特開平7‐166323号公報
【特許文献4】
特開平6‐177436号公報
【非特許文献1】
Suzuki, R. ほか4名, Electroless coating of Fe3Si on steel in the molten salt, 「steel research」 71 (2000) No.4, p.130-137
【0005】
特許文献1はスパッタリング法を使うものであり,特許文献2は化学蒸着法を使うものであり,特許文献3はSi基板上にFeを気相堆積させてから固相反応を用いるものである。これらの技術は,いずれも,真空容器を用いた気相堆積装置が必要であり,装置が大掛かりになる。
【0006】
一方,特許文献4は,FeとSiを溶かして,その融液からβ‐FeSi2を作るものである。すなわち,FeとSiを1対2の原子数比で混合して,これを溶融し,その融液を冷却することで,まず,α‐FeSi2を作る。次に,α‐FeSi2を840℃で長時間熱処理することによって,α‐FeSi2をβ‐FeSi2に相転移させている。
【0007】
さらに,非特許文献1は,溶融塩法を用いてFe‐Si系の材料を製造することを開示している。この文献は,溶融塩法を用いて鉄基板または鉄鋼基板上にFe3Siを形成するものであるが,Fe3Siのほかに,FeSiやFeSi2も一緒に形成されることを述べている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
β‐FeSi2を製造するための上述の各種の従来技術は,次のような問題がある。気相堆積装置を用いる方法は,大掛かりで高価な装置が必要となる。一方,α‐FeSi2からβ‐FeSi2に相転移させる方法は,まず,FeとSiを溶かすために1600℃程度の高温が必要になり,かつ,α‐FeSi2からβ‐FeSi2に相転移させるのに長時間の熱処理を要する。また,溶融塩法を用いて鉄基板上にβ‐FeSi2を形成する方法は,FeSi2のほかにFe3SiやFeSiも一緒に形成されてしまい,β‐FeSi2だけを製造することが難しい。
【0009】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり,その目的は,気相堆積装置などの大掛かりな装置を必要とすることなく,また,FeやSiを溶かすほどの高温にすることもなく,簡単な装置を用いて,β‐FeSi2を大面積でも安価に製造できる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
まず,Fe‐Si系の相図(phase diagram)を用いて,本発明の原理を説明する。なお,この明細書では,鉄をその元素記号のFeで表し,シリコン(ケイ素)をその元素記号のSiで表す。
【0011】
図1は,Fe‐Si系の相図である。横軸はFe‐Si系におけるSiの原子数%であり,縦軸は温度である。Fe‐Si系は,このようにきわめて複雑な相図をしており,その組成比に応じて,Fe3Si,Fe2Si,Fe5Si3,FeSi,FeSi2などのさまざまな結晶形態が存在する。さらに,同じFeSi2でも,高温域で安定なα‐FeSi2と,それよりも低温域で安定なβ‐FeSi2とが存在する。これらの各種の結晶形態のうち,β‐FeSi2だけが半導体特性を示し,それ以外の結晶は金属である。
【0012】
FeとSiを1対2の原子数比率(Siが約66.7%)にして,これを溶かしてから冷却すると,この相図から分かるように,α‐FeSi2(あるいは,α‐FeSi2とわずかなFeSiとの混晶)が形成される。これをそのまま室温まで冷却しても,α‐FeSi2のままである。α‐FeSi2をβ‐FeSi2に相転移させるには,937℃よりも低い温度で,きわめて長時間熱処理する必要がある。
【0013】
一方,Fe基板の上に溶融塩法でFe‐Si系の材料を製造することを考えると,Fe3Si,Fe2Si,Fe5Si3,FeSi,FeSi2などの各種の結晶形態が形成される可能性がある。所望の結晶形態だけを作ろうとすると,製造条件を厳しく管理する必要がある。また,そのように管理したとしても,ほかの結晶形態が混じらないようにするのが困難な場合もある。発明者らの実験によれば,Fe基板の上に溶融塩法でβ‐FeSi2を製造することを試みたが,Fe5Si3やFeSiなどの結晶形態が混じることが避けられなかった。
【0014】
そこで,発明者らは,上述の相図を検討するうちに,FeSi基板を使うことに思い至り,その着想に基づいて実験を行った結果,本発明を完成するに至ったものである。本発明は,まず,基板としてFeSiを使うことを特徴としている。Si原子を含む溶融塩をFeSi基板に接触させると,FeSiよりもSiの含有量が少ない結晶形態は形成されずに,FeSi2だけが製造できた。また,そのときの溶融塩の温度を937℃(α‐FeSi2とβ‐FeSi2の間の転移温度)以下に保つことで,α‐FeSi2ができずにβ‐FeSi2だけが製造できた。
【0015】
本発明は,Si原子とフッ素原子とを含む溶融塩をFeSi基板に接触させて,これを前記溶融塩の融点から937℃までの温度範囲内に所定時間維持することにより,前記FeSi基板上にβ‐FeSi2を形成するものである。FeSi基板を用いることで,Fe基板を使う場合と比較して,Fe3SiやFeSiの混じらないβ‐FeSi2だけを作ることができる。また,β‐FeSi2の安定温度域の上限値である937℃以下の温度に保つことで,α‐FeSi2が混じることなく,β‐FeSi2だけを作ることができる。本発明は,基本的に加熱装置があれば足りるので,大面積の基板上にβ‐FeSi2を安価に作ることができる。
【0016】
一般に,溶融塩とは,塩(いろいろな種類のものがある)を溶融したものであって,熱処理の熱伝達媒体などに使われており,100〜500℃の比較的低温用にはKNO3(硝酸カリウム)やNaNO3(硝酸ナトリウム)などの硝酸塩が利用される。500〜1000℃程度の用途にはKCl(塩化カリウム)やNaCl(塩化ナトリウム)などの塩化物が利用され,それ以上の温度についてはBaCl2(塩化バリウム)などが利用される。
【0017】
本発明では,溶融塩を900℃付近に維持することが必要なので,溶融塩としてはKClやNaClなどの塩化物を利用するのが好ましい。このうち,KClは,膜表面にカリウムシリサイドができてしまうという問題が生じやすいので,NaClを用いるのが最適である。
【0018】
溶融塩の組成としては,上述のNaClを主体にするのが好ましく,これに,Si原子を含む物質とフッ素原子を含む物質とを添加する。例えば,NaClに,NaF(フッ化ナトリウム),Na2SiF6(ケイフッ化ナトリウム)及びSiを添加する。溶融塩中のフッ素イオンは,SiがFeSi中に移行してβ‐FeSi2を作る際の不均化反応に関与していると考えられる。このような不均化反応については,上述の非特許文献1に詳しい説明がある。NaFは,このフッ素イオンを供給するものである。Na2SiF6は,SiF6 2-イオンとともにSi原子を供給するものである。また,Na2SiF6以外に,Si単体(例えば,粉末Si)も供給するのが好ましい。Si単体を添加することで,溶融塩中のSi濃度を容易に調節することができる。
【0019】
FeSi基板は,FeSiの結晶からなる基板であり,多結晶基板または単結晶基板である。このFeSiを製造するには,FeとSiを原子数比が1対1になるように混ぜて,これを溶融してから冷却するだけでよい。図1の相図によれば,FeとSiが原子数比で1対1のところ(Siが50%)では,FeSi結晶の相が固相と液相の境界線のところまで達しているのが分かる。したがって,融液から冷却して凝固させるだけで,容易にFeSi結晶を得ることができる。このようなFeSi材料はフェロシリコンとして市販されている。
【0020】
溶融塩をFeSi基板に接触させて維持するときの温度(これを,反応温度と呼ぶことにする)としては,β‐FeSi2の安定温度域の上限値である937℃以下の温度にすることが必要である。そして,それよりも低い温度に維持するに当たっては,できれば937℃に近い温度にするのが好ましい。温度が低すぎると,FeSi中にSiが拡散するのに時間がかかる(すなわち,β‐FeSi2の製造に時間がかかる)ことになる。温度の下限は,溶融塩の融点である。それよりも低い温度では,溶融塩が固体になり,液体状態に比べて,FeSi基板へのSiの供給がほとんど停止してしまう。NaClを主体にした溶融塩の場合,反応温度の下限値はNaClの融点である801℃である。
【0021】
溶融塩の融点を下げたい場合には,KCl(融点は776℃)をNaClに混ぜることができる。これにより,NaClとKClの混合比に応じて融点が下がる。ただし,膜表面上にカリウムシリサイドができるという問題が生じるので,膜形成後に膜表面を除去することが必要になる。
【0022】
溶融塩をFeSi基板に接触させて所定温度に維持するときの時間(これを,反応時間と呼ぶことにする)は,基本的に,製造すべき膜厚に依存する。反応時間を長くするほど,β‐FeSi2の膜厚が厚くなる。一例を挙げると,900℃において1時間程度の反応時間で8μm程度の膜厚が得られる。膜の成長速度は拡散法則に支配されていて,膜厚は反応時間の平方根にほぼ比例する。
【0023】
【発明の実施の形態】
次に,本発明の実施形態を説明する。図2は材料供給の説明図である。まず,多結晶または単結晶のFeSi基板10を準備する。次に,溶融塩の材料を準備する。例えば,NaClを基塩として,これに,NaFとNa2SiF6を添加する。具体的には,NaClを73.16mol%,NaFを21.95mol%,Na2SiF6を4.89mol%の割合で準備する。さらに,Si粉末を添加する。Si粉末の分量は,例えば,Na2SiF6を基準にして,Si粉末をその4.5倍のモル比になるようにする。Si粉末が少なすぎると,薄膜の成長速度が低下することになる。Si粉末が多すぎると,溶融塩の融液の粘性が高くなるなどの弊害が生じるおそれがある。
【0024】
NaCl,NaF,Na2SiF6及びSiの割合はそれほど厳密に規定する必要はない。後述するように,β‐FeSi2の成長速度は拡散法則によって律速されているので,拡散法則に従って拡散するだけの十分な量のSi原子と,不均化反応をもたらす適量のフッ素イオン,SiF6 2-イオンとが,融液中に存在すれば,溶融塩の組成比が異なっても,ほぼ同じ速度でβ‐FeSi2が成長すると考えられる。
【0025】
以上のようにして準備した材料をセラミック製のるつぼ12の中に入れて,蓋をし,図3に示す加熱装置で加熱する。図3は加熱装置の構成図である。電気炉14の内部にセラミック管16があり,その内部にるつぼ12を配置する。るつぼ12の温度は熱電対18で測定する。そして,図示しない加熱制御装置を用いて,所定の温度制御プログラムに従って温度が変化するように,電気炉14のヒータ20の供給電力を調節する。
【0026】
図4は加熱時の温度曲線を示すグラフである。横軸は電気炉のスイッチを入れた時刻からの経過時間であり,縦軸はるつぼの温度(すなわち,基板及び溶融塩材料の温度)である。加熱スタート時(電気炉14のスイッチを入れた時刻)の温度は室温であり,そこから1時間で所定の反応温度(例えば900℃)に達する。すなわち,そのような昇温曲線22に沿うように,温度を制御する。昇温曲線22の傾きに特別な意味はなく,時間節約の観点から,可能な限り短時間で900℃に達すればよい。
【0027】
次に,反応温度(例えば900℃)の状態を反応時間tだけ維持する。図4では反応時間t=6時間の例を示している。反応時間tの間は,温度一定の定温曲線24となる。所定の反応時間tが経過したら,電気炉のスイッチを切って,室温まで自然冷却する。このとき降温曲線26に沿って温度が低下する。スイッチを切ってから5分後には温度は800℃まで降下し,ここで溶融塩が凝固する。それ以後は反応が進まない。実験では,自然冷却により一晩放置して室温に戻ってから,試料を電気炉から取り出した。
【0028】
図4の温度曲線において,反応温度と反応時間が重要である。この実施例ではNaClを主体とした溶融塩を用いているので,反応温度は,NaClの融点の801℃よりも高い温度に設定する必要がある。一方で,反応温度は,β‐FeSi2の安定温度域の上限値である937℃以下に設定する必要がある。ゆえに反応温度を例えば900℃に設定することができる。
【0029】
次に,反応時間の意義について説明する。図5は反応時間tと膜厚dの関係を示したグラフである。横軸は図4に示す反応時間tであり,縦軸は得られたβ‐FeSi2の膜厚dである。このグラフを求めたときの反応温度は900℃であり,溶融塩としては,NaCl(73.16mol%)・NaF(21.95mol%)・Na2SiF6(4.89mol%)・Si(Na2SiF6:Si=1:4.5のモル比)を用いている。実験によれば,図5のグラフ中の(1)式で示すように,膜厚dは反応時間tの平方根にほぼ比例している。曲線28は(1)式を示している。(1)式中の拡散係数Dは約2×10のマイナス11乗(cm2/sec)となった。
【0030】
したがって,反応時間tを調節することでβ‐FeSi2の膜厚dを制御することが可能になる。例えば,900℃のときに,1時間で約8μmの膜厚が得られ,6時間で約12μm,12時間で約26μmが得られる。
【0031】
膜厚が反応時間の平方根にほぼ比例することから,β‐FeSi2の成膜過程が拡散法則に支配されていることが分かる。すなわち,構成元素であるFe及びSiの拡散速度によってβ‐FeSi2の成長速度が律速される。
【0032】
【実施例】
次に,具体的な実施例を説明する。図2において,まず,FeSi基板10を準備する。純度99.9%の粒状(数mm程度のもの)の多結晶FeSiを,機械研磨によって板状に加工する。次に,この基板を,400番のサンドペーパーと1500番のサンドペーパーとを用いて,水を流しながら研磨し,さらに,布を用いてポリッシュ仕上げをする。次に,この基板を硝酸:酢酸:フッ酸=2:1:1のエッチング液に30秒浸して,表面をエッチングする。その後,この基板を,フッ酸:水=1:9の水溶液に10秒以上浸して,水溶液から取り出し,乾燥させる。これで,FeSi基板10が完成する。
【0033】
次に,溶融塩の材料を準備する。NaClを1.9g,NaFを0.4g,Na2SiF6を0.4g,Si粉末を0.3gだけ用意する。いずれも粒状または粉末状である。実験に用いたるつぼ12の容量が5ミリリットルなので,それに合わせた分量にしている。大面積のβ‐FeSi2を製造する場合には,大きなるつぼを用意して,それに合わせて,基板サイズを大きくするとともに溶融塩の材料を増やせばよい。
【0034】
以上の基板と溶融塩材料とをるつぼ12に入れて,反応温度を900℃にして,反応時間tを0.25時間〜168時間の間で各種の条件にして,FeSi基板上にβ‐FeSi2薄膜を形成した。温度曲線の形状は図4に示したものである。
【0035】
実験の終了した基板をるつぼから取り出して,これをイオン交換水で洗浄した。これにより,基板に付着した塩類やシリコン粉末を除去した。その後,各種の測定を行った。まず,試料の断面を光学顕微鏡で観測した。その結果,どの反応時間においても平坦な連続膜が成長していることが分かった。β‐FeSi2の膜厚は,この光学顕微鏡による観測から求めた。その値は,図5のグラフに示した通りである。
【0036】
次に,FeSi基板上の薄膜をX線回折装置で測定した。その結果,どの反応時間のものでも,β‐FeSi2の回折パターンが得られた。すなわち,β‐FeSi2の標準の粉末回折パターンに一致するような回折パターンが得られた。この回折パターンは次のようにして得たものである。薄膜が形成されたFeSi基板を,粉末にすることなくそのままの状態で,X線ディフラトメータの試料ホルダーに取り付けて,試料とX線検出装置とをθ‐2θ走査させて,回折パターンを測定した。このことから,基板上の薄膜が,優先配向性をもたない多結晶のβ‐FeSi2薄膜であることが分かった。β‐FeSi2以外の,例えばFe5Si3やFeSiなどに起因する回折ピークは観測されなかった。
【0037】
また,透過形電子顕微鏡により大きさ約1μm程度のドメインが観察され,さらに,各ドメインからβ‐FeSi2を示す制限視野回折(SAD:selected area diffraction)パターンが確認できた。このことから,得られた薄膜が大きさ1μm程度の結晶粒からなる多結晶であることが確認できた。
【0038】
図6(a)は,FeSi基板上のβ‐FeSi2の断面図である。この断面図は,900℃・72時間の条件で得られたβ‐FeSi2の断面を走査型電子顕微鏡で撮影した画像の概略図である。このβ‐FeSi2の膜厚は約38μmである。β‐FeSi2は柱状構造をしているのが分かる。この試料の四つの深さ地点a〜dについて,エネルギー分散型X線分光法により,簡易定量分析を実施した。その結果を図6(b)に示す。図6(a)のa点はβ‐FeSi2薄膜の表面付近であり,b点はβ‐FeSi2薄膜の深さ方向のほぼ中間位置であり,c点はβ‐FeSi2薄膜の基板に近い位置であり,d点はFeSi基板の内部の位置である。図6(b)に示すように,a点〜c点では,FeとSiの組成比がほぼ1対2になっている。このうち,a点では溶融塩の成分のNaとClがわずかに残留している。表面付近のこのようなNaとClは,自然冷却の過程で形成されたものと推測される。基板内のd点では,当然ながら,FeとSiの組成比は1対1になっている。
【0039】
最後に,半導体特性を実験で確認した。形成されたβ‐FeSi2について,電極としてInを用いたIn/β‐FeSi2/FeSi/In構造の電流・電圧特性を調べたところ,整流特性が観測された。したがって,金属・半導体接合が実現できていることが確認できた。
【0040】
【発明の効果】
本発明は,溶融塩法を用いてFeSi基板上にβ‐FeSi2を形成しているので,(1)気相堆積装置などの大掛かりな装置を必要としない,(2)FeやSiを溶かすほどの高温にする必要がない,(3)加熱装置だけの簡単な装置で済むので大面積のβ‐FeSi2を安価に製造できる,という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】Fe‐Si系の相図である。
【図2】材料供給の説明図である。
【図3】加熱装置の構成図である。
【図4】試料加熱時の温度曲線を示すグラフである。
【図5】反応時間tと膜厚dの関係を示したグラフである。
【図6】β‐FeSi2の断面図と簡易定量分析結果である。
【符号の説明】
10 FeSi基板
12 るつぼ
14 電気炉
16 セラミック管
18 熱電対
20 ヒータ

Claims (3)

  1. Si原子とフッ素原子とを含む溶融塩をFeSi基板に接触させて,これを前記溶融塩の融点から937℃までの温度範囲内に所定時間維持することにより,前記FeSi基板上にβ‐FeSi2を形成することを特徴とするβ‐FeSi2の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法において,前記溶融塩は,NaCl,NaF,Na2SiF6及びSiを混合して溶融したものであることを特徴とする製造方法。
  3. 請求項2に記載の製造方法において,801℃から937℃までの温度範囲内に所定時間維持することを特徴とする製造方法。
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