JP2010168617A - 微細構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 規則性の高いマイクロポアを有する微細構造体を短時間で製造することができる新規の方法の提供。
【解決手段】 アルミニウムまたはアルミニウム合金の酸化皮膜よりなり、該下記式(1)により定義される規則化度が70%以上となるマイクロポアを有する微細構造体の製造方法であって、該製造方法は、アルミニウム基板またはアルミニウム合金基板を電解液中で陽極酸化処理を施して該基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程を有し、該工程に用いる前記電解液がカルボン酸であり、かつ、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
規則化度(%)=B/A×100・・・(1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、その他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記マイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
【選択図】なし
【解決手段】 アルミニウムまたはアルミニウム合金の酸化皮膜よりなり、該下記式(1)により定義される規則化度が70%以上となるマイクロポアを有する微細構造体の製造方法であって、該製造方法は、アルミニウム基板またはアルミニウム合金基板を電解液中で陽極酸化処理を施して該基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程を有し、該工程に用いる前記電解液がカルボン酸であり、かつ、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
規則化度(%)=B/A×100・・・(1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、その他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記マイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
【選択図】なし
Description
本発明は、微細構造体の製造方法に関する。
金属および半導体の薄膜、細線、ドット等の技術領域では、ある特徴的な長さより小さなサイズにおいて自由電子の動きが閉じ込められることにより、電気的、光学的および化学的に特異な現象が見られている。このような現象は「量子力学的サイズ効果(量子サイズ効果)」と呼ばれている。このような特異な現象を応用した機能材料の研究開発が、現在盛んに行われている。具体的には、数百nmより微細な構造を有する材料が、「微細構造体」または「ナノ構造体」と称されており、材料開発の対象とされている。
こうした微細構造体の作製方法としては、例えば、フォトリソグラフィ、電子線露光、X線露光等の微細パターン形成技術を初めとする半導体加工技術によって直接的にナノ構造体を作製する方法が挙げられる。
中でも、規則的なマイクロポアを有する微細構造体を作製する方法についての研究が注目され、多く行われている。
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化処理して得られる陽極酸化アルミナ膜(陽極酸化皮膜)が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化処理して得られる陽極酸化アルミナ膜(陽極酸化皮膜)が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
このようなマイクロポアを有する陽極酸化皮膜の用途例としては、光機能性ナノデバイス、磁気デバイス、発光担体、触媒担持体等が知られている。例えば、特許文献1には、ポアを金属で封孔し局所プラズモン共鳴を発生させてラマン光分析装置へ応用する旨が記載されている。
このようにマイクロポアを形成させる陽極酸化処理の前には、陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる窪みを形成させておく方法が知られている。このように窪みを形成させることにより、マイクロポアの配列およびポア径のばらつきを所望の範囲に制御することが容易となる。
窪みを形成させる一般的な方法として、陽極酸化皮膜の自己規則性を利用した自己規則化法が知られている。これは陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。
このようにマイクロポアを形成させる陽極酸化処理の前には、陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる窪みを形成させておく方法が知られている。このように窪みを形成させることにより、マイクロポアの配列およびポア径のばらつきを所望の範囲に制御することが容易となる。
窪みを形成させる一般的な方法として、陽極酸化皮膜の自己規則性を利用した自己規則化法が知られている。これは陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。
しかしながら、特許文献1記載の自己規則化法は、通常数時間という長時間をかけて行う必要があった。
上記した従来技術の問題点を解決するため、本発明は、規則性の高いマイクロポアを有する微細構造体を短時間で製造することができる新規の方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、特定の電解液を使用し、かつ、特定の電流密度でアルミニウム基板の陽極酸化処理を行うことにより、規則性の高い微細構造体を短時間で製造できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の酸化皮膜よりなり、該下記式(1)により定義される規則化度が70%以上となるマイクロポアを有する微細構造体の製造方法であって、該製造方法は、アルミニウム基板またはアルミニウム合金基板を電解液中で陽極酸化処理を施して該基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程を有し、該工程に用いる前記電解液がカルボン酸であり、かつ、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有することを特徴とする微細構造体の製造方法を提供する。
規則化度(%)=B/A×100・・・(1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、その他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記マイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
規則化度(%)=B/A×100・・・(1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、その他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記マイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
本発明の微細構造体の製造方法において、前記電解液は脂肪族ヒドロキシ酸であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、マイクロポアの規則化度が70%の微細構造体を短時間で製造することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の微細構造体の製造方法は、アルミニウム基板またはアルミニウム合金基板を電解液中で陽極酸化処理を施して該基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程を有し、該工程に用いる前記電解液がカルボン酸であり、かつ、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有することを特徴とする。
本発明の微細構造体の製造方法は、アルミニウム基板またはアルミニウム合金基板を電解液中で陽極酸化処理を施して該基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程を有し、該工程に用いる前記電解液がカルボン酸であり、かつ、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有することを特徴とする。
〔アルミニウム基板、アルミニウム合金基板〕
本発明の微細構造体の製造方法に用いるアルミニウム基板およびアルミニウム合金基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
以下、これらを総称してアルミニウム基板という。
本発明の微細構造体の製造方法に用いるアルミニウム基板およびアルミニウム合金基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
以下、これらを総称してアルミニウム基板という。
アルミニウム基板のうち、陽極酸化処理を施す表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%であることが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、ポア配列の規則性が十分となる。
アルミニウム基板の表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理を施されるのが好ましい。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基板の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。
本発明の微細構造体の製造方法においては、鏡面仕上げ処理は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる方法と、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基板の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。
本発明の微細構造体の製造方法においては、鏡面仕上げ処理は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる方法と、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」、第6版、(社)日本アルミニウム協会編、2001年、p.164−165に記載されている各種方法が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸-硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延である場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸-硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延である場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨としては、例えば、「アルミハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年p.164−165に記載されている各種の方法が挙げられる。
また、米国特許第2708655号明細書に記載されている方法が好適に挙げられる。
また、「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p32−38に記載されている方法も好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
また、米国特許第2708655号明細書に記載されている方法が好適に挙げられる。
また、「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p32−38に記載されている方法も好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、研磨剤を用いる方法を、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行い、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRaは、0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で測定する。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で測定する。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶媒等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分を溶解させて除去し、有機成分を原因とする陽極酸化処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
また、鏡面処理仕上げ処理の際に皮膜に形成された酸化膜を除去する目的としても脱脂処理は用いられる。
脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶媒等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分を溶解させて除去し、有機成分を原因とする陽極酸化処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
また、鏡面処理仕上げ処理の際に皮膜に形成された酸化膜を除去する目的としても脱脂処理は用いられる。
脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
中でも、以下の各方法が好適に例示される。
アルコール(例えば、メタノール)、ケトン、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);アセトン等の有機溶媒を常温でアルミニウム基板表面に接触させ、超音波を用いる方法(超音波洗浄法);石鹸、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度を1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させ中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法)が例示できる。
アルコール(例えば、メタノール)、ケトン、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);アセトン等の有機溶媒を常温でアルミニウム基板表面に接触させ、超音波を用いる方法(超音波洗浄法);石鹸、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度を1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させ中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法)が例示できる。
<陽極酸化処理>
アルミニウム基板に電解液中で陽極酸化処理を施すことにより、該基板上にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成される。
本発明の微細構造体の製造方法では、従来の自己規則化法において広く用いられる硫酸、リン酸等の無機酸ではなく、カルボン酸を電解液として用いる。
詳しくは後述するが、本発明の微細構造体の製造方法は、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上という、従来の自己規則化法における電流密度(通常は、80〜250[A/m2])よりもはるかに高い電流密度となる段階を有するため、電解液として硫酸、リン酸等の無機酸を用いた場合、いわゆる焼けと呼ばれる現象、すなわち、局所的に皮膜が異常に成長する現象が生じてしまう。
電解液として、カルボン酸を用いた場合、弱酸性であることから高濃度化が可能であり、かつ、有機酸痕含有による高抵抗化が生じる事から、局所的電流集中がなくなるため、上記のような高い電流密度になる段階が存在するにもかかわらず、焼けの問題を生じることなしに規則性の高いマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を得ることができる。
アルミニウム基板に電解液中で陽極酸化処理を施すことにより、該基板上にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成される。
本発明の微細構造体の製造方法では、従来の自己規則化法において広く用いられる硫酸、リン酸等の無機酸ではなく、カルボン酸を電解液として用いる。
詳しくは後述するが、本発明の微細構造体の製造方法は、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上という、従来の自己規則化法における電流密度(通常は、80〜250[A/m2])よりもはるかに高い電流密度となる段階を有するため、電解液として硫酸、リン酸等の無機酸を用いた場合、いわゆる焼けと呼ばれる現象、すなわち、局所的に皮膜が異常に成長する現象が生じてしまう。
電解液として、カルボン酸を用いた場合、弱酸性であることから高濃度化が可能であり、かつ、有機酸痕含有による高抵抗化が生じる事から、局所的電流集中がなくなるため、上記のような高い電流密度になる段階が存在するにもかかわらず、焼けの問題を生じることなしに規則性の高いマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を得ることができる。
電解液として使用するカルボン酸は特に限定されず、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピルビン酸、オレイン酸等を用いることができる。これらの中でも、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸のようなヒドロキシ酸が、分子量が小さいため、水に溶けやすく、高濃度での処理が可能であることから好ましく、より好ましくは乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸のような脂肪族ヒドロキシ酸である。
なお、これらのカルボン酸は単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、これらのカルボン酸は単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の微細構造体の製造方法において、電解液の濃度は、0.01mol/L〜5.0mol/Lであることが好ましく、より好ましくは0.05mol/L〜2.0mol/Lであり、さらに好ましくは0.1mol/L〜1.0mol/Lである。
また、電解液の温度は、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは0〜30℃であり、さらに好ましくは0〜10℃である。
また、電解液の温度は、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは0〜30℃であり、さらに好ましくは0〜10℃である。
また、陽極酸化処理時の電解液の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有するマイクロポアを形成することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般攪拌装置を使用する方法が用いられる。攪拌速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。そのような攪拌装置としては、例えば、AS ONE社製のマグネティックスターラーHS−50Dが挙げられる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般攪拌装置を使用する方法が用いられる。攪拌速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。そのような攪拌装置としては、例えば、AS ONE社製のマグネティックスターラーHS−50Dが挙げられる。
本発明の微細構造体の製造方法は、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有する。本願発明者らは、電解液としてカルボン酸を使用し、かつ、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有するように、陽極酸化処理の条件を設定することにより、規則性の高いマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を短時間で得ることができることを見出した。
アルミニウム基板に電解液中で陽極酸化処理を施した場合、アルミニウム基板表面に陽極酸化皮膜が形成された後、該陽極酸化皮膜表面にマイクロポアが形成される。これら一連の過程における電流密度に着目した場合、アルミニウム基板表面に陽極酸化皮膜が形成される段階には、電流密度が急激に上昇する。その後、電流密度が0[A/m2]付近まで下がった後、電流密度が再び上昇する。この二度目の電流密度の上昇時にマイクロポアが形成される。本明細書において、「陽極酸化処理のマイクロポア形成時における電流密度」とは、この二度目の電流密度の上昇時の電流密度を指す。
ここで、「陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有する」と記載していることから明らかなように、マイクロポア形成時の電流密度が常時500[A/m2]以上であることは要求されず、少なくとも電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有するようにマイクロポア形成時の陽極酸化処理の条件を設定すればよい。したがって、マイクロポア形成時の初期の段階において、電流密度が500[A/m2]以上となるように設定して、その後、500[A/m2]よりも低くなるように電流密度を下げてもよい。但し、形成されるマイクロポアの規則化度は、最終的に到達する電流密度(陽極酸化処理終了時の電流密度)が大きいほど向上し、最終的に到達する電流密度(陽極酸化処理終了時の電流密度)がある電流密度以下では規則化度が悪化することから、マイクロポア形成時の初期の電流密度は500[A/m2]よりも低い状態から、電流密度を上昇させて電流密度が500[A/m2]以上となるように設定することが好ましい。
マイクロポア形成時の初期の電流密度は500[A/m2]よりも低い状態から、電流密度を上昇させて電流密度が500[A/m2]以上となるように設定する場合、電流密度の最大値が750[A/m2]以上となるように設定することが好ましく、1000[A/m2]以上となるように設定することがより好ましい。
但し、高電流密度下では、焼けの発生が生じやすくなるため、電流密度の最大値が2000[A/m2]以下になるように設定することが好ましく、1500[A/m2]以下になるように設定することがより好ましい。
なお、電流密度が500[A/m2]以上となった後、電流密度が500[A/m2]よりも低くなるように電流密度を下げてもよい。
但し、高電流密度下では、焼けの発生が生じやすくなるため、電流密度の最大値が2000[A/m2]以下になるように設定することが好ましく、1500[A/m2]以下になるように設定することがより好ましい。
なお、電流密度が500[A/m2]以上となった後、電流密度が500[A/m2]よりも低くなるように電流密度を下げてもよい。
形成されるマイクロポアの規則化度は、最終的に到達する電流密度(陽極酸化処理終了時の電流密度)によって決まってくるものであり、マイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる時間の長さとは無関係である。したがって、マイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる時間の長さは特に限定されない。
なお、陽極酸化処理全体の処理時間は、5〜60分であることが好ましく、5〜30分であることがより好ましく、5〜10分であることがさらに好ましい。
なお、陽極酸化処理全体の処理時間は、5〜60分であることが好ましく、5〜30分であることがより好ましく、5〜10分であることがさらに好ましい。
マイクロポア形成時における電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有する限り、マイクロポア形成時の電圧制御は特に限定されない。したがって、一定電圧下で陽極酸化処理を実施してもよく、電圧を断続的または連続的に変化させながら陽極酸化処理を実施してもよい。ただし、マイクロポアの大きさは電圧によって影響されるため、電圧を変化させる処理を実施した後、一定電圧下での処理を行うことが好ましい。
陽極酸化処理時の電圧は、10〜1000Vであることが好ましく、より好ましくは25〜500Vであり、さらに好ましくは100〜250Vである。
陽極酸化処理時の電圧は、10〜1000Vであることが好ましく、より好ましくは25〜500Vであり、さらに好ましくは100〜250Vである。
なお、陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の厚さは、1〜300μmであるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ましく、10〜100μmであるのが更に好ましい。
上記の手順を実施することにより、アルミニウム基板上にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成された微細構造体が得られる。本発明の製造方法によれば、規則性の高いマイクロポアを有する微細構造体を得ることができる。
具体的には、マイクロポアについて下記式(1)により定義される規則化度が70%以上である。
具体的には、マイクロポアについて下記式(1)により定義される規則化度が70%以上である。
規則化度(%)=B/A×100 ・・・(1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
図1は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。図1を用いて、上記式(1)をより具体的に説明する。
図1(A)に示されるマイクロポア101は、マイクロポア101の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円103(マイクロポア102に内接している。)を描いた場合に、円103の内部にマイクロポア101以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア101は、Bに算入される。
図1(B)に示されるマイクロポア104は、マイクロポア104の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円106(マイクロポア105に内接している。)を描いた場合に、円106の内部にマイクロポア104以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア104は、Bに算入されない。また、図1(B)に示されるマイクロポア107は、マイクロポア107の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円109(マイクロポア108に内接している。)を描いた場合に、円109の内部にマイクロポア107以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア107は、Bに算入されない。
図1(A)に示されるマイクロポア101は、マイクロポア101の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円103(マイクロポア102に内接している。)を描いた場合に、円103の内部にマイクロポア101以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア101は、Bに算入される。
図1(B)に示されるマイクロポア104は、マイクロポア104の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円106(マイクロポア105に内接している。)を描いた場合に、円106の内部にマイクロポア104以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア104は、Bに算入されない。また、図1(B)に示されるマイクロポア107は、マイクロポア107の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円109(マイクロポア108に内接している。)を描いた場合に、円109の内部にマイクロポア107以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア107は、Bに算入されない。
なお、マイクロポアの規則化度を算出するには、リン酸およびクロム酸の混合水溶液により陽極酸化皮膜を溶解させることにより、マイクロポアの底部を露出させた後、走査型電子顕微鏡で観察した画像から所定のマイクロポア数を目視で確認したうえで、上記式(1)により算出すればよい。
本発明の製造方法により得られる微細構造体は、平均ポア密度が50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
また、本発明の製造方法により得られる微細構造体は、マイクロポアの占める面積率が20〜50%であるのが好ましい。
また、本発明の製造方法により得られる微細構造体は、マイクロポアの占める面積率が20〜50%であるのが好ましい。
本発明の製造方法により得られる微細構造体は、マイクロポア内に電解メッキ、または無電解メッキにより金属を充填することにより、異方性導電膜としての用途が見込まれる。また、微細構造体をアルカリ溶液に浸漬することにより、マイクロポア底部を貫通させた精密フィルターとしての用途が見込まれる。
<その他の処理>
本発明の製造方法により得られた微細構造体は、必要に応じて、その他の処理を施すことができる。
例えば、本発明の製造方法により得られた微細構造体を試料台にして、水溶液を垂らして膜状にしたい場合には、水との接触角を小さくするために、親水化処理を施してもよい。親水化処理は、従来公知の方法により施すことができる。
また、本発明の製造方法により得られた微細構造体を試料台にして、酸で変性し、または分解されるタンパク質を対象とする場合には、ポアワイド処理に用いられ、アルミニウム基板表面に残留している酸を中和するために、中和処理を施してもよい。中和処理は、従来公知の方法により施すことができる。
本発明の製造方法により得られた微細構造体は、必要に応じて、その他の処理を施すことができる。
例えば、本発明の製造方法により得られた微細構造体を試料台にして、水溶液を垂らして膜状にしたい場合には、水との接触角を小さくするために、親水化処理を施してもよい。親水化処理は、従来公知の方法により施すことができる。
また、本発明の製造方法により得られた微細構造体を試料台にして、酸で変性し、または分解されるタンパク質を対象とする場合には、ポアワイド処理に用いられ、アルミニウム基板表面に残留している酸を中和するために、中和処理を施してもよい。中和処理は、従来公知の方法により施すことができる。
また、本発明の製造方法により得られた微細構造体は、用途に応じて、アルミニウム基板を除去してもよい。
アルミニウム基板を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、陽極酸化皮膜(アルミナ)は溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液に微細構造体を接触させる方法が挙げられる。
上記の処理液とは、具体的には、アルミニウムの溶解速度が1μm/分以上、好ましくは3μm/分以上、より好ましくは5μm/分以上、および、陽極酸化皮膜の溶解速度が0.1nm/分以下、好ましくは0.05nm/分以下、より好ましくは0.01nm/分以下の条件を有する処理液であることが好ましい。
アルミニウム基板を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、陽極酸化皮膜(アルミナ)は溶解しにくく、アルミニウムを溶解しやすい処理液に微細構造体を接触させる方法が挙げられる。
上記の処理液とは、具体的には、アルミニウムの溶解速度が1μm/分以上、好ましくは3μm/分以上、より好ましくは5μm/分以上、および、陽極酸化皮膜の溶解速度が0.1nm/分以下、好ましくは0.05nm/分以下、より好ましくは0.01nm/分以下の条件を有する処理液であることが好ましい。
上記の特性を有する処理液としては、具体的には、アルミニウムよりもイオン化傾向の低い金属化合物を少なくとも1種含み、かつ、pHが4以下8以上、好ましくは3以下9以上、より好ましくは2以下10以上の処理液が挙げられ、酸またはアルカリ水溶液をベースとし、例えば、マンガン、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、水銀、銀、パラジウム、白金、金の化合物(例えば、塩化白金酸)、これらのフッ化物、これらの塩化物等を配合したものが好ましく例示される。中でも、酸水溶液ベースが好ましく、塩化物をブレンドするのが好ましい。特に、塩酸水溶液に塩化水銀をブレンドした処理液(塩酸/塩化水銀)、塩酸水溶液に塩化銅をブレンドした処理液(塩酸/塩化銅)が、処理ラチチュードの観点から好ましい。このような処理液の組成は特に限定されず、例えば、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、王水等を用いることができる。
なお、このような処理液の酸またはアルカリ濃度は、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。更に、このような処理液を用いた処理温度は、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
微細構造体を上記の処理液に接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
アルミニウム基板の除去後、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜の底部を除去することによって、マイクロポアによる孔を貫通化させてもよい。
陽極酸化皮膜の底部の除去は、予めpH緩衝液に浸漬させてマイクロポアによる孔の開口側から孔内にpH緩衝液を充填した後に、開口部の逆面、即ち、陽極酸化皮膜の底部に酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させる方法により行うのが好ましい。
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液や、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
また、予めpH緩衝液に浸漬させる場合は、上述した酸/アルカリに適宜対応した緩衝液を使用する。
陽極酸化皮膜の底部の除去は、予めpH緩衝液に浸漬させてマイクロポアによる孔の開口側から孔内にpH緩衝液を充填した後に、開口部の逆面、即ち、陽極酸化皮膜の底部に酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させる方法により行うのが好ましい。
酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
一方、アルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液や、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
また、予めpH緩衝液に浸漬させる場合は、上述した酸/アルカリに適宜対応した緩衝液を使用する。
マイクロポアによる孔が貫通化された微細構造体は、アルミニウム基板近傍の陽極酸化皮膜を機械的研磨処理することによっても得ることができる。
機械的研磨処理では、公知の機械的研磨処理方法を幅広く用いることができ、例えば、鏡面仕上げ処理について例示した機械研磨を用いることができる。但し、精密研磨速度が高いことから化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことが好ましい。CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
機械的研磨処理では、公知の機械的研磨処理方法を幅広く用いることができ、例えば、鏡面仕上げ処理について例示した機械研磨を用いることができる。但し、精密研磨速度が高いことから化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことが好ましい。CMP処理には、フジミインコーポレイテッド社製のPNANERLITE−7000、日立化成社製のGPX HSC800、旭硝子(セイミケミカル)社製のCL−1000等のCMPスラリーを用いることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的にする。ただし、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
1.電解研磨処理
アルミニウム基板は、高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99%、厚さ0.4mm)を用いた。アルミニウム基板を10cm四方の面積でカットし、以下組成の電解液を用いて、電圧10V、液温度65℃、の条件で電解研磨処理を行った。陰極はカーボン電極とし、電源はGPO−250−30R(高砂製作所社製)を用いた。
<電解研磨液組成>
・ 85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・ 硫酸 300mL
・ 純水 40mL
1.電解研磨処理
アルミニウム基板は、高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99%、厚さ0.4mm)を用いた。アルミニウム基板を10cm四方の面積でカットし、以下組成の電解液を用いて、電圧10V、液温度65℃、の条件で電解研磨処理を行った。陰極はカーボン電極とし、電源はGPO−250−30R(高砂製作所社製)を用いた。
<電解研磨液組成>
・ 85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・ 硫酸 300mL
・ 純水 40mL
2.脱脂処理
上記で得られた研磨処理後のサンプルを、以下組成の処理液に、液温度60℃の条件で、10〜90秒浸漬して、脱脂処理を行った。
<脱脂処理液組成>
・ 水酸化ナトリウム 1.75mol/L
・ 硝酸ナトリウム 0.16mol/L
上記で得られた研磨処理後のサンプルを、以下組成の処理液に、液温度60℃の条件で、10〜90秒浸漬して、脱脂処理を行った。
<脱脂処理液組成>
・ 水酸化ナトリウム 1.75mol/L
・ 硝酸ナトリウム 0.16mol/L
3.陽極酸化処理
上記で得られた脱脂処理後のサンプルを、3.0mol/L リンゴ酸の電解液で、電圧290V、液温度0℃の条件で12分間の陽極酸化処理を行い、アルミニウム基板上にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成された微細構造体を得た。電圧はGPO−250−30R(高砂製作所社製)で定電圧に設定し、290V(±0.1V)で制御した。マイクロポア形成時の最終的な電流密度は2400A/m2であった。
上記で得られた脱脂処理後のサンプルを、3.0mol/L リンゴ酸の電解液で、電圧290V、液温度0℃の条件で12分間の陽極酸化処理を行い、アルミニウム基板上にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜が形成された微細構造体を得た。電圧はGPO−250−30R(高砂製作所社製)で定電圧に設定し、290V(±0.1V)で制御した。マイクロポア形成時の最終的な電流密度は2400A/m2であった。
上記の手順で得られた微細構造体について、以下の手順でマイクロポアの規則化度を算出した。
4.クロム処理
上記の手順で得られた微細構造体を、以下組成の処理液に、液温度60℃の条件で、12時間浸漬し、陽極酸化皮膜の溶解を行った。
<クロム処理液組成>
・ 酸化クロム(6価):0.16mol/L
・ リン酸:0.62mol/L
4.クロム処理
上記の手順で得られた微細構造体を、以下組成の処理液に、液温度60℃の条件で、12時間浸漬し、陽極酸化皮膜の溶解を行った。
<クロム処理液組成>
・ 酸化クロム(6価):0.16mol/L
・ リン酸:0.62mol/L
5.電子顕微鏡観察
クロム処理後の微細構造体をイオンコーター(RMC−EIKO社製)で、30秒蒸着し、SEM(JEOL社製)で20,000倍で撮影した。観察画像より、測定範囲におけるマイクロポアの全数Aおよび1つのマイクロポアに内接するマイクロポアの数が6個であるマイクロポアの個数Bを算出し、下記式(1)より規則化度を算出した。
規則化度(%)=B/A×100・・・(1)
結果を下記表に示す。
クロム処理後の微細構造体をイオンコーター(RMC−EIKO社製)で、30秒蒸着し、SEM(JEOL社製)で20,000倍で撮影した。観察画像より、測定範囲におけるマイクロポアの全数Aおよび1つのマイクロポアに内接するマイクロポアの数が6個であるマイクロポアの個数Bを算出し、下記式(1)より規則化度を算出した。
規則化度(%)=B/A×100・・・(1)
結果を下記表に示す。
101、102、104、105、107、108 マイクロポア
103、106、109 円
103、106、109 円
Claims (2)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金の酸化皮膜よりなり、該下記式(1)により定義される規則化度が70%以上となるマイクロポアを有する微細構造体の製造方法であって、該製造方法は、アルミニウム基板またはアルミニウム合金基板を電解液中で陽極酸化処理を施して該基板の表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程を有し、該工程に用いる前記電解液がカルボン酸であり、かつ、陽極酸化処理のマイクロポア形成時において電流密度が500[A/m2]以上となる段階を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
規則化度(%)=B/A×100・・・(1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、その他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記マイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。 - 前記カルボン酸が、脂肪族ヒドロキシ酸である請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
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