JP2008063643A - 微細構造体の製造方法および微細構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】金型を利用せずに、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを拡大することができる微細構造体の製造方法およびその方法によって得られる微細構造体の提供。
【解決手段】アルミニウム基板と、前記アルミニウム基板の表面に存在する、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜とを有する微細構造体を得る微細構造体の製造方法であって、少なくとも、
前記アルミニウム基板を陽極とし、30〜99質量%の濃度の酸性水溶液を用い、30〜130℃の温度下、2V〜1000Vの範囲から選択される一定電圧で直流電解処理を施す電解処理工程(A)と、
前記電解処理工程(A)における電解処理と同電圧で陽極酸化処理を施す陽極酸化処理工程(B)と
をこの順に具備する、微細構造体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、微細構造体およびその製造方法に関する。
金属および半導体の薄膜、細線、ドット等の技術領域では、ある特徴的な長さより小さいサイズにおいて自由電子の動きが閉じ込められることにより、電気的、光学的および化学的に特異な現象が見られることが知られている。このような現象は「量子力学的サイズ効果(量子サイズ効果)」と呼ばれている。このような特異な現象を応用した機能性材料の研究開発が、現在、盛んに行なわれている。具体的には、数百nmより微細な構造を有する材料が、「微細構造体」または「ナノ構造体」と称されており、光学デバイス、磁気デバイス、触媒体、コンデンサー、フィルター等の微細加工が要求される材料開発の対象の一つとされている。
こうした微細構造体の作製方法としては、例えば、フォトリソグラフィ、電子線露光、X線露光等の微細パターン形成技術を初めとする半導体加工技術によって直接的にナノ構造体を作製する方法が挙げられる。
中でも、規則的な微細構造を有する微細構造体を作製する方法についての研究が注目され、多く行われている。
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムに陽極酸化処理を施して得られる陽極酸化アルミナ膜(陽極酸化皮膜)が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
このようなマイクロポアを有する陽極酸化皮膜の用途例としては、光機能性ナノデバイス、磁気デバイス、発光担体、触媒担持体等が知られている。例えば、特許文献1には、ポアを金属で封孔し局在プラズモン共鳴を発生させてラマン分光分析用装置へ応用する旨が記載されている。
このようなマイクロポアを形成させる陽極酸化処理の前には、陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる窪みを形成させておく方法が知られている。このような窪みを形成させることにより、マイクロポアの配列(以下、「ポア配列」ともいう。)およびポア径のばらつきを所望の範囲に制御することが容易となる。
窪みを形成させる一般的な方法として、陽極酸化皮膜の自己規則性を利用した自己規則化法が知られている。これは陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。
しかしながら、このような自己規則化法では、局所的に、ポア配列が三角格子の細密充填をとる構造(以下、「ハニカム構造」ともいう。)を有するものの、このハニカム構造はドメインと呼ばれるある程度限られた面積内で保持されているにすぎなかった(図1参照)。
ここで、図1は、ポア配列のドメインを説明するための模式図である。図1に示すように、自己規則化法では、生成するマイクロポア1がハニカム構造をとる領域が、複数のドメイン2に分かれて存在することとなる。
そこで、このドメインを拡大するべく、12V以下の低化成電圧条件下における陽極酸化時において、電解液として用いる硫酸の濃度、温度、更に、攪拌条件を適切に設定する方法が知られているが(例えば、特許文献2等参照。)、その効果は十分ではなく、更なる改良が必要であった。
また、陽極酸化処理と孔径拡大処理を交互に行なうことでテーパー形状のポアを有する微細構造体の製造方法が知られている(例えば、特許文献3および4等参照。)。
これらの製造方法は光学デバイスの鋳型等に用いられ、先細りのポア形状のみならず、理想的な配列構造、即ち、ポア配列がハニカム構造をとることが求められていたが、ドメインの拡大は十分ではなかった。
一方、窪みを形成させる他の方法として、あらかじめ理想的な凸部配列を有する金型(スタンパ)を基材に押し付ける方法が知られている。
しかしながら、金型は非常に高価であり、工業化するためにはさらなる安価な方法が望まれている。
特開2005−307341号公報 特開2004−285404号公報 特開2004−217961号公報 特開2006−124827号公報
したがって、本発明は、金型を利用せずに、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを拡大することができる微細構造体の製造方法およびその方法によって得られる微細構造体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、アルミニウム基板に対し、陽極環化処理を施す前に特定の条件下で電解処理をすることにより、金型を利用せずに、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインが拡大した微細構造体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(i)〜(v)を提供する。
(i)アルミニウム基板と、上記アルミニウム基板の表面に存在する、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜とを有する微細構造体を得る微細構造体の製造方法であって、少なくとも、
上記アルミニウム基板を陽極とし、30〜99質量%の濃度の酸性水溶液を用い、30〜130℃の温度下、2V〜1000Vの範囲から選択される一定電圧で直流電解処理を施す電解処理工程(A)と、
上記電解処理工程(A)における電解処理と同電圧で陽極酸化処理を施す陽極酸化処理工程(B)と
をこの順に具備する、微細構造体の製造方法。
(ii)更に、上記陽極酸化処理工程(B)の後に、
上記陽極酸化処理工程(B)により形成される陽極酸化皮膜の少なくとも一部を溶解し、溶解後に陽極酸化処理を施す工程(C)を具備する上記(i)に記載の微細構造体の製造方法。
(iii)上記工程(C)を少なくとも3回繰り返す上記(ii)に記載の微細構造体の製造方法。
(iv)上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の微細構造体の製造方法により得られる微細構造体。
(v)225個以上のマイクロポアが理想三角格子状に配列されている領域を有する上記(iv)に記載の微細構造体。
ここで、マイクロポアが理想三角格子状に配列されているとは、225個以上のマイクロポアのうち互いに隣接する3つのマイクロポアの中心でなす全ての三角形の各内角が、それぞれ60°±10°となるように、マイクロポアが配列されている状態をいう。
本発明の微細構造体の製造方法によれば、金型を利用せずに、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインが拡大した微細構造体を安価に得ることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の微細構造体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、
アルミニウム基板と、上記アルミニウム基板の表面に存在する、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜とを有する微細構造体を得る微細構造体の製造方法であって、少なくとも、
上記アルミニウム基板を陽極とし、30〜99質量%の濃度の酸性水溶液を用い、30〜130℃の温度下、2V〜1000Vの範囲から選択される一定電圧で直流電解処理を施す電解処理工程(A)と、
上記電解処理工程(A)における電解処理と同電圧で陽極酸化処理を施す陽極酸化処理工程(B)と
をこの順に具備する、微細構造体の製造方法である。
本発明においては、ポア配列の規則性をより向上させ、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインをより拡大させる観点から、上記陽極酸化処理工程(B)の後に、更に、上記陽極酸化処理工程(B)により形成される陽極酸化皮膜の少なくとも一部を溶解し、溶解後に陽極酸化処理を施す工程(C)を具備するのが好ましい。
次に、本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板ならびに該アルミニウム基板に施す電解処理工程(A)、陽極酸化処理工程(B)および工程(C)について詳述する。
[アルミニウム基板]
本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
本発明においては、アルミニウム基板のうち後述する電解処理工程(A)を施す表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.9質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、ポア配列の規則性が十分となる。
また、本発明においては、アルミニウム基板のうち後述する電解処理工程(A)を施す表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理が施されるのが好ましく、特に、本発明の製造方法により得られる微細構造体が光透過性であることを利用する用途に用いる場合は、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを更に拡大させる観点から、あらかじめ熱処理が施されるのが好ましい。
<熱処理>
熱処理は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。具体的には、例えば、アルミニウム基板を加熱オーブンに入れる方法等が挙げられる。
このような熱処理を施すことにより、後述する陽極酸化処理工程(B)により生成するポア配列の規則性が高い領域が広くなり、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを更に拡大する。
また、熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水に直接投入する方法等が挙げられる。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理としては、具体的には、例えば、各種アルコール(例えば、メタノール等)、各種ケトン(例えば、メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
これらのうち、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない観点から、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
また、脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸、例えば、アルミニウム基板の圧延時に発生した圧延筋等をなくして、電着法等による封孔処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法等が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる場合、使用する研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法等が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に例示される。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更する機械研磨を施し、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
[電解処理工程(A)]
上記電解処理工程(A)は、上述したアルミニウム基板を陽極とし、30〜99質量%の濃度の酸性水溶液を用い、30〜130℃の温度下、2V〜1000Vの範囲から選択される一定電圧で直流電解処理を施す工程である。
本発明においては、上記電解処理工程(A)は、上述した鏡面仕上げ処理を施す場合、鏡面仕上げ処理の後に施すものである。
上記電解処理工程(A)で用いる酸性水溶液の濃度は、上述したように、30〜99質量%であり、40〜95質量%であるのが好ましく、50〜90質量%であるのがより好ましい。
酸性水溶液の濃度がこの範囲であると、後述する陽極酸化処理工程(B)により生成するポア配列の規則性が高い領域が広くなり、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを更に拡大する。
また、上記電解処理工程(A)で用いる酸性水溶液の種類(電解液の種類)は特に制限されないが、電解研磨処理に一般的に用いられるもの、具体的には、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165、また、米国特許第2708655号明細書に記載されているもの、「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38等に記載されているものを用いることができる。
上記電解処理工程(A)における処理温度は、上述したように、30〜130℃であり、35〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。
処理温度がこの範囲であると、後述する陽極酸化処理工程(B)により生成するポア配列の規則性が高い領域が広くなり、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを更に拡大する。
上記電解処理工程(A)における電圧は、上述したように2V〜1000Vの範囲から選択される一定電圧であり、5V〜750Vの範囲であるのが好ましく、10V〜500Vの範囲であるのが特に好ましい。
ここで、「2V〜1000Vの範囲から選択される一定電圧」とは、電解処理が定電流による処理ではなく、定電圧(2V〜1000Vの範囲から選択されるある電圧、例えば、25V)による直流電解処理である。
電圧がこの範囲の一定電圧であると、後述する陽極酸化処理工程(B)により生成するポア配列の規則性が高い領域が広くなり、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを更に拡大する。
このような電解処理工程(A)を施すことにより、所定の平均表面粗さと光沢度を有するアルミニウム基板表面、例えば、平均表面粗さRaが0.1μm以下、光沢度が50%以上の表面を得ることができる。即ち、電解処理工程(A)を施すことにより、後述する陽極酸化処理工程(B)で形成されるマイクロポアの生成の起点となる窪みを形成することができる。
本発明においては、平均表面粗さRaは0.1μm以下であるのが好ましく、0.03μm以下であるのがより好ましく、0.02μm以下であるのが更に好ましい。また、光沢度は50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのが更に好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
[陽極酸化処理工程(B)]
上記陽極酸化処理工程(B)は、上記電解処理工程(A)を施したアルミニウム基板の表面に陽極酸化皮膜を形成する処理であって、本発明においては、上記電解処理工程(A)における電解処理と同電圧で、定電圧にて陽極酸化処理を施す工程である。
陽極酸化処理としては、上記電解処理工程(A)における電解処理と同電圧の定電圧で行う以外は、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
なお、本発明においては、電解液の種類に応じて電圧を調整する場合や所望のポア径を得るために電圧を制御する場合は、上記電解処理工程(A)の電圧を予め決定した陽極電解処理工程(B)の電圧と同電圧にする。
陽極酸化処理における電解液の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
陽極酸化処理は、例えば、酸濃度1〜10質量%の溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等、グリコール酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.1〜20質量%、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15質量%、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10質量%、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜300μmであるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ましく、10〜100μmであるのが更に好ましい。
陽極酸化処理の処理時間は、0.5分〜16時間であるのが好ましく、1分〜12時間であるのがより好ましく、2分〜8時間であるのが更に好ましい。
本発明においては、このような陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
また、マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
ここで、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合である。具体的には、封孔処理前に表面空隙率を測定して求められる。
本発明においては、上記電解処理工程(A)および上記陽極酸化処理工程(B)をこの順に具備することにより、金型を利用せずに、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを拡大することができる微細構造体を製造することができる。
これは、上述したように、上記電解処理工程(A)を施すことにより上記陽極酸化処理工程(B)で形成されるマイクロポアの生成の起点となる窪みを形成することができ、また、上記電解処理工程(A)の処理電圧が上記陽極酸化処理工程(B)の処理電圧と同じ値であるため、上記電解処理工程(A)により形成される窪みの間隔を保ちながらマイクロポアが生成できるためであると考えられる。
[工程(C)]
上記工程(C)は、ポア配列の規則性をより向上させ、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインをより拡大させる観点から必要に応じて具備する工程であって、上記陽極酸化処理工程(B)により形成される陽極酸化皮膜の少なくとも一部を溶解し、溶解後に陽極酸化処理を施す工程である。
<溶解処理>
上記工程(C)における溶解処理は、上記陽極酸化処理工程(B)により形成される陽極酸化皮膜の少なくとも一部を溶解する処理である。
本発明においては、この溶解処理を施すことにより、陽極酸化皮膜の表面付近のポア配列が不規則な部分が溶解するため、後述する陽極酸化処理により生成するマイクロポアのポア配列の規則性が高い領域が広くなり、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインがより拡大する。
なお、この溶解処理により上記陽極酸化処理工程(B)により形成される陽極酸化皮膜の全部を溶解する場合であっても、陽極酸化皮膜の底部分の形状がアルミニウム基板表面に露出するため、規則的な窪みを得ることができ、後述する陽極酸化処理により生成するマイクロポアのポア配列の規則性が高い領域が広くなり、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインがより拡大する。
陽極酸化皮膜の溶解は、アルミニウムは溶解させず、アルミナ(酸化アルミニウム)である陽極酸化皮膜のみを溶解させるアルミナ溶解液に接触させることにより行う。
なお、陽極酸化皮膜を一部溶解する場合であって、浸せき以外の方法で接触させる場合は、アルミナ溶解液は、アルミニウムを溶解するものであってもよい。
アルミナ溶解液としては、具体的には、例えば、クロム酸、硝酸、水酸化クロム、リン酸、ジルコニウム化合物、チタン化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液が好適に挙げられる。
なお、陽極酸化皮膜を一部溶解する場合であって、浸せき以外の方法で接触させる場合は、アルミナ溶解液は特に限定されず、上記で例示したもの以外に、具体的には、硫酸、塩酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸性水溶液であってもよく、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ性水溶液であってもよい。
ジルコニウム化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタン、リン酸チタン等が挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウム等が挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウム等が挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウム等が挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウム等が挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウム等が挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物等が挙げられる。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素等が挙げられる。
中でも、アルミナ溶解液は、リン酸およびクロム酸の混合水溶液(リン酸/クロム酸混合水溶液)、リン酸および硝酸の混合水溶液(リン酸/硝酸混合水溶液)、硫酸および硝酸の混合水溶液、シュウ酸および硝酸の混合水溶液、塩酸および硝酸の混合水溶液、酢酸および硝酸の混合水溶液、酪酸および硝酸の混合水溶液等であるのが好ましく、リン酸/クロム酸混合水溶液、リン酸/硝酸混合水溶液であるのがより好ましい。
ここで、リン酸/クロム酸混合水溶液の混合比(リン酸/クロム酸)およびリン酸/硝酸混合水溶液(リン酸/クロム酸)の混合比は、1/99〜95/5であるのが好ましく、5/95〜90/10であるのがより好ましく、10/90〜80/20であるのが特に好ましい。
アルミナ溶解液が混合水溶液である場合、混合物の濃度の合計(例えば、リン酸/硝酸混合水溶液である場合、リン酸の濃度と硝酸の濃度との合計)が、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。
また、アルミナ溶解液は、0℃以上であるのが好ましく、20℃以上であるのがより好ましく、40℃以上であるのが更に好ましい。
なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法等が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、上記陽極酸化処理工程(B)を施した後のアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上であるのが更に好ましい。
<陽極酸化処理>
上記工程(C)における陽極酸化処理は、上記陽極酸化処理工程(B)により形成される陽極酸化皮膜の少なくとも一部を溶解した後に、再度行う陽極酸化処理である。
本発明においては、この陽極酸化処理を施すことにより、ポア配列の規則性がより高い陽極酸化皮膜が形成され、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインがより拡大した微細構造体を得ることができる。
本発明においては、この陽極酸化処理は、上述した自己規則化法と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、この陽極酸化処理は、ポア配列の規則性をより高くし、ポア径が均一になる観点から、低温で行うのが好ましい。
また、本発明においては、この陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、ポア径の0.5〜1000倍であるのが好ましく、1〜800倍であるのがより好ましく、1〜500倍が更に好ましい。
更に、本発明においては、この陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜のマイクロポアの平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
また、マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
本発明においては、ポア配列の規則性を更に向上させ、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインを更に拡大させる観点から、上記工程(C)を少なくとも3回繰り返すのが好ましく、4回以上繰り返すのがより好ましく、5回以上繰り返すのが更に好ましい。
[微細構造体]
本発明の微細構造体は、上述した本発明の微細構造体の製造方法により得られる。
また、本発明の微細構造体は、平均ポア密度が50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
更に、本発明の微細構造体は、マイクロポアの占める面積率が20〜50%であるのが好ましい。
本発明の微細構造体は、225個以上のマイクロポアが理想三角格子状に配列されている領域を有しているのが好ましい。
ここで、マイクロポアが理想三角格子状に配列されているとは、225個以上のマイクロポアのうち互いに隣接する3つのマイクロポアの中心でなす全ての三角形の各内角が、それぞれ60°±10°となるように、マイクロポアが配列されている状態をいう。
なお、格子状といえるためには、少なくとも上記三角形が縦方向および/または横方向に連続して並んでいる必要がある。
<ポアワイド処理>
本発明の微細構造体には、用途に応じて、ポアワイド処理を施すことができる。
ポアワイド処理は、上記陽極酸化処理工程(B)または上記工程(C)を施した場合は上記工程(C)の後、アルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜を溶解させ、マイクロポアのポア径を拡大する処理である。
これにより、テーパー状またはステップ状のマイクロポアを形成することができ、かつ、ポア径のばらつきを制御することが容易となる。
ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。
また、酸水溶液の濃度は、1〜10質量%であるのが好ましく、酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
一方、ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。
また、アルカリ水溶液の濃度は、0.1〜5質量%であるのが好ましく、アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液等が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜60分であるのが好ましく、10〜50分であるのがより好ましく、15〜30分であるのが更に好ましい。
<皮膜表面はく離処理>
本発明の微細構造体には、用途に応じて、皮膜表面はく離処理を施すことができる。
皮膜表面はく離処理は、基本的には上記ポアワイド処理と同様であるが、単にポア径を拡大するのではなく、残存する陽極酸化皮膜の表面から中間部にかけてを全てはく離溶解させ、アルミニウム近接部付近の陽極酸化皮膜のみを残す処理である。
これにより、深さ方向に対し均一な径を有する直管状のマイクロポアを形成することができ、かつ、ポア径のばらつきを制御することが可能となる。
<その他の処理>
本発明の微細構造体は、必要に応じて、その他の処理を施すことができる。
例えば、本発明の製造方法で得られた微細構造体を試料台にして、水溶液を垂らして膜状にしたい場合には、水との接触角を小さくするために、親水化処理を施してもよい。親水化処理は、従来公知の方法により施すことができる。
また、本発明の製造方法で得られた微細構造体を試料台にして、酸で変性し、または分解されるタンパク質を対象とする場合には、陽極酸化処理に用いられ、アルミニウム表面に残留している酸を中和するために、中和処理を施してもよい。中和処理は、従来公知の方法により施すことができる。
更に、本発明の微細構造体は、用途に応じて、アルミニウム基板を除去することもできる。
アルミニウム基板を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、アルミナが難溶または不溶であり、アルミニウムが可溶である溶剤に浸せきさせる方法が好ましい。
溶剤としては、具体的には、例えば、臭素、ヨウ素などのハロゲン溶剤;希硫酸、リン酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸などの酸性溶剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性溶剤;等が好適に例示される。中でも、臭素、ヨウ素が好ましい。
本発明の微細構造体は、用途に応じて、陽極酸化皮膜のマイクロポアに触媒を担持することもできる。
本発明においては、上記触媒は触媒機能を有するものであれば特に限定されないが、その具体例としては、AlCl3、AlBr3、Al23、SiO2、SiO2−Al23、Siゼオライト、SiO2−NiO、活性炭、PbO/Al23、LaCoO3、H3PO4、H427、Bi23−MoO3、Sb25、SbO5−Fe23、SnO2−Sb25、Cu、CuO2−Cr23、Cu−Cr23−ZnO、Cu/SiO2、CuCl2、Ag/α−Al23、Au、ZnO、ZnO−Cr23、ZnCl2、ZnO−Al23−CaO、TiO2、TiCl4・Al(C253、Pt/TiO2、V25、V25−P25、V25/TiO2、Cr23、Cr23/Al23、MoO3、MoO3−SnO2、Co・Mo/Al23、Ni・Mo/Al23、MoS2、Mo−Bi−O、MoO3−Fe23、H3PMo1240、WO3、H3PW1240、MnO2、Fe−K2O−Al23、Fe23−Cr23、Fe23−Cr23−K2O、Fe23、Co、Co/活性炭、Co34、Coカルボニル錯体、Ni、RaneyNi、Ni/担体、修飾Ni、Pt、Pt/Al23、Pt−Rh−Pd/担体、Pd、Pd/SiO2、Pd/Al23、PdCl2−CuCl2、Re、Re−Pt/Al23、Re27/Al23、Ru、Ru/Al23、Rh、Rh錯体等が挙げられる。
触媒の担持方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、電着法;触媒粒子の分散液を、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム部材に塗布し乾燥させる方法;等が好適に挙げられる。触媒は、単一粒子または凝集体であるのが好ましい。
電着法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、金電着法の場合、1g/LのHAuCl4と7g/LのH2SO4を含有する30℃の分散液に、アルミニウム部材を浸せきさせ、11Vの定電圧(スライダックで調整)で、5〜6分間電着処理する方法が挙げられる。
また、電着法としては、現代化学,1997年1月号,p.51−54に銅、スズおよびニッケルを用いた例が詳細に記載されており、この方法を用いることもできる。
触媒粒子を用いる方法に用いられる分散液は、従来公知の方法により得ることができる。例えば、低真空蒸発法による微粒子の作製方法、触媒塩の水溶液を還元する触媒コロイド作製方法により得ることができる。
触媒コロイド粒子は、平均粒径が1〜200nmであるのが好ましく、1〜100nmであるのがより好ましく、2〜80nmであるのが更に好ましい。
分散液に用いられる分散媒としては、水が好適に用いられる。また、水と混合しうる溶剤、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコールと、水との混合溶媒も用いることができる。
触媒コロイド粒子を用いる方法において、塗布方法は特に限定されず、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、浸せき塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
触媒コロイド粒子を用いる方法に用いられる分散液としては、例えば、金コロイド粒子の分散液、銀コロイド粒子の分散液が好適に用いられる。
金コロイド粒子の分散液としては、例えば、特開平2001−89140号公報および特開平11−80647号公報に記載されているものを用いることができる。また、市販品を用いることもできる。
銀コロイド粒子の分散液は、陽極酸化皮膜から溶出する酸によって影響を受けない点で、銀とパラジウムの合金の粒子を含有するのが好ましい。この場合、パラジウムの含有量は、5〜30質量%であるのが好ましい。
分散液を塗布した後、水等の溶媒を用いて適宜洗浄する。これにより、マイクロポアに担持された触媒粒子のみ陽極酸化皮膜に残存し、マイクロポアに充填されなかった触媒粒子は除去される。
担持処理後の触媒の付着量は、10〜1000mg/m2であるのが好ましく、50〜800mg/m2であるのがより好ましく、100〜500mg/m2であるのが特に好ましい。
また、担持処理後の表面空隙率は、70%以下であるのが好ましく、50%以下であるのがさらに好ましく、30%以下であるのが特に好ましい。担持処理後の表面空隙率は、アルミニウム表面の面積に対する担持されていないマイクロポアの開口部の面積の合計の割合である。
分散液に用いられる触媒コロイド粒子は、通常、粒径分布のばらつきが変動係数で10〜20%程度である。本発明においては、ポア径のばらつきを特定の範囲にすることにより、粒径分布にばらつきのあるコロイド粒子を効率よく封孔に用いることができる。
ポア径が50nm以上である場合は、触媒コロイド粒子を用いる方法が好適に用いられる。また、ポア径が50nm未満である場合は、電着法が好適に用いられる。両者を組み合わせる方法も好適に用いられる。
本発明の微細構造体は、規則的な配列を有するマイクロポアを有するため、種々の用途に応用することができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1)
1.電解処理(A1)
高純度アルミニウム(純度99.99質量%、厚さ0.4mm、住友軽金属社製)を10cm四方の面積でカットし、以下の組成の電解液を用いて、電圧25V(定電圧)、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解処理を施した。
なお、陽極を上記でカットしたアルミニウムとし、陰極をカーボン電極とし、電源にはGP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
処理後の光沢度を、鮮明度光沢度計PGD−4(東京光電社製)で計測したところ、75%であった。
<電解液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
2.陽極酸化処理(B1)
電解処理(A1)を施した後のサンプルを、0.36mol/Lの硫酸水溶液の電解液を用いて、電圧25V(定電圧)、液温度15℃、液流速6.0m/minの条件で5時間陽極酸化処理を施した。
なお、陰極をステンレス電極とし、電源にはGP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置としては、NeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
3.溶解処理(C1a)
電解処理(A1)により形成された陽極酸化皮膜を溶解するため、陽極酸化処理(B1)を施した後のサンプルを、温度50℃、0.18mol/Lのクロム酸と0.62mol/Lのリン酸の混合水溶液中に12時間浸せきした。
4.再陽極酸化処理(C1b)
溶解処理(C1a)後のサンプルを、0.36mol/Lの硫酸水溶液の電解液を用いて、電圧25V、液温度15℃、液流速6.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。
なお、陰極、電源、冷却装置、かくはん加温装置および電解液の流速測定には、上記陽極酸化処理工程(B1)と同様のものを用いた。
5.ポアワイド処理
再陽極酸化処理(C1b)後のサンプルを、液温30℃の0.52mol/Lのリン酸水溶液中に15分浸せきし、実施例1の微細構造体サンプルを得た。
(実施例2)
溶解処理(C1a)で用いた処理液(混合水溶液)を、温度1℃、0.50mol/Lの硝酸と0.70mol/Lのリン酸の混合水溶液に代えた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の微細構造体サンプルを得た。
(実施例3)
電解処理工程(A1)の電圧を40V(定電圧)に代え、また、陽極酸化処理工程(B1)および再陽極酸化処理(C1b)で用いた電解液を0.50mol/Lのシュウ酸水溶液に代え、更に、陽極酸化処理工程(B1)および再陽極酸化処理(C1b)の電圧を40V(定電圧)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の微細構造体サンプルを得た。
なお、プレ陽極酸化処理時点での表面光沢度は76%であった。
(実施例4)
1.電解処理(A1)
実施例1の電解処理(A1)と同様の処理を行なった。
2.陽極酸化処理(B2)
電解処理(A1)を施した後のサンプルを、0.36mol/Lの硫酸水溶液の電解液を用いて、電圧25V(定電圧)、液温度15℃、液流速6.0m/minの条件で40分間陽極酸化処理を施した。
なお、陰極、電源、冷却装置、かくはん加温装置および電解液の流速測定には、上記陽極酸化処理工程(B1)と同様のものを用いた。
3.溶解処理(C2a)
電解処理(A1)により形成された陽極酸化皮膜を溶解するため、陽極酸化処理(B2)を施した後のサンプルを、温度40℃、0.56mol/Lのリン酸水溶液中に20分間浸せきした。
4.再陽極酸化処理(C2b)
溶解処理(C2a)後のサンプルを、0.36mol/Lの硫酸水溶液の電解液を用いて、電圧25V、液温度15℃、液流速6.0m/minの条件で40分間陽極酸化処理を施した。
なお、陰極、電源、冷却装置、かくはん加温装置および電解液の流速測定には、上記陽極酸化処理工程(B1)と同様のものを用いた。
5.溶解処理(C2a)および陽極酸化処理(C2b)の繰り返し処理
上記溶解処理(C2a)および上記陽極酸化処理(C2b)を施す工程を更に4回繰り返した。
なお、この繰り返し処理の最中に、各溶解処理の皮膜の形状を破断面方向からFE-SEMにより観察したところ、ポア径は表面部から底部にかけて均一な直管状であることが確認できた。
6.皮膜表面はく離処理
上記繰り返し処理後のサンプルを、温度40℃、0.56mol/Lのリン酸水溶液中に20分間浸漬して陽極酸化皮膜を一部溶解し、実施例4の微細構造体サンプルを得た。
なお、上記同様に、皮膜の形状を破断面方向からFE-SEMにより観察したところ、ポア径は表面部から底部にかけて均一な直管状であることが確認できた。
(実施例5)
1.電解処理(A1)
実施例1の電解処理(A1)と同様の処理を行なった。
2.陽極酸化処理(B3)
電解処理(A1)を施した後のサンプルを、0.50mol/Lのシュウ酸水溶液の電解液を用いて、電圧40V(定電圧)、液温度15℃、液流速6.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。
なお、陰極、電源、冷却装置、かくはん加温装置および電解液の流速測定には、上記陽極酸化処理工程(B1)と同様のものを用いた。
3.溶解処理(C3a)
電解処理(A1)により形成された陽極酸化皮膜を溶解するため、陽極酸化処理(B3)を施した後のサンプルを、温度30℃、0.56mol/Lのリン酸水溶液中に5分間浸せきした。
4.再陽極酸化処理(C3b)
溶解処理(C3a)後のサンプルを、0.50mol/Lのシュウ酸水溶液の電解液を用いて、電圧40V(定電圧)、液温度15℃、液流速6.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。
なお、陰極、電源、冷却装置、かくはん加温装置および電解液の流速測定には、上記陽極酸化処理工程(B1)と同様のものを用いた。
5.溶解処理(C3a)および陽極酸化処理(C3b)の繰り返し処理
上記溶解処理(C3a)および上記陽極酸化処理(C3b)を施す工程を更に4回繰り返し、実施例5の微細構造体サンプルを得た。
なお、この繰り返し処理の最中に、各溶解処理の皮膜の形状を破断面方向からFE-SEMにより観察したところ、ポア径は表面部から底部にかけて先細りとなる、いわゆるステップ状のポア形状であることが確認できた。
(比較例1〜5)
実施例1〜5のぞれぞれにおいて、電解処理の電圧を5V、即ち、陽極酸化処理の電圧と異なる電圧で処理した以外は、いずれも同様の方法で、比較例1〜5の微細構造体サンプルを得た。
(比較例6)
陽極酸化処理(B1)で用いた電解液を、8.00mol/Lの硫酸水溶液に代えた以外は、比較例1と同様の方法で、比較例6の微細構造体サンプルを得た。
<各微細構造体サンプルの形状評価>
上記で得られた各微細構造体サンプルのマイクロポアについて、理想三角格子の配列をとる個数を、FE−SEMによる表面写真より測定した。
具体的には、マイクロポアの全数が225個以上となる測定長方形領域(3.0μm×3.0μm)において、全マイクロポアが理想三角格子状に配列されている否かを確認した。理想三角格子状に配列されたマイクロポアの数を第1表に示す。
Figure 2008063643
第1表から明らかなように、電解処理を陽極酸化処理の電圧と異なる電圧で施した比較例1〜6で得られた微細構造体に比べ、実施例1〜5で得られた微細構造体は、理想三角格子状に配列されたマイクロポアの数が格段に増えていることから、ポア配列のハニカム構造が形成されるドメインが十分に拡大された微細構造体であることが分かった。
図1は、ポア配列のドメインを説明するための模式図である。
符号の説明
1 マイクロポア
2 ドメイン

Claims (4)

  1. アルミニウム基板と、前記アルミニウム基板の表面に存在する、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜とを有する微細構造体を得る微細構造体の製造方法であって、少なくとも、
    前記アルミニウム基板を陽極とし、30〜99質量%の濃度の酸性水溶液を用い、30〜130℃の温度下、2V〜1000Vの範囲から選択される一定電圧で直流電解処理を施す電解処理工程(A)と、
    前記電解処理工程(A)における電解処理と同電圧で陽極酸化処理を施す陽極酸化処理工程(B)と
    をこの順に具備する、微細構造体の製造方法。
  2. 更に、前記陽極酸化処理工程(B)の後に、
    前記陽極酸化処理工程(B)により形成される陽極酸化皮膜の少なくとも一部を溶解し、溶解後に陽極酸化処理を施す工程(C)を具備する請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
  3. 前記工程(C)を少なくとも3回繰り返す請求項2に記載の微細構造体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の微細構造体の製造方法により得られる微細構造体。
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