JP4990737B2 - 微細構造体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、微細構造体の製造方法に関する。
精密濾過分野において実用化されているメンブレンフィルタとしては、有機系メンブレンフィルタおよび無機系メンブレンフィルタが知られている。
また、有機系メンブレンフィルタおよび無機系メンブレンフィルタは、例えば、タンパク質吸着材、浄水、空気清浄、脱臭・脱硝・排ガス装置用構造体、オゾン除去、各種ウイルス除去、クリーンルーム用素材、ガス分離等の用途の他、赤血球の変形テスト、ケモタキシス、培養チャンバー、走査電子顕微鏡、放射性分析、剥離細胞診、蛍光X線分析、アルカリ溶出、アスベストのモニタリング、寄生虫の検出、大気中粒子のIR分析、河川・海水中の藻類分析等の種々の用途にも使用されている。
有機系メンブレンフィルタの多くは、細孔が独立したものではなく、また孔径分布も比較的広いため、フィルタの最も重要な機能である特定物(例えば、CMPスラリー粒子;レジスト用顔料・染料;IJインク;磁性体;細胞(セルカルチャーインサート用途など);フラーレンなどのサイズ分画を有する分子;DMSOなどの溶剤;等)の分離精度を向上させるための研究が各方面で進められている。
例えば、非特許文献1には、ポリマーよりなる有機皮膜に、原子炉から生じる高エネルギー粒子を照射し、粒子が有機皮膜を通過した飛跡をエッチング処理することにより細孔を形成する、いわゆるトラックエッチング方式が提案されている。
しかしながら、このトラックエッチング方式は、有機皮膜に対して直行した細孔径分布の狭い独立した細孔が得られるが、飛跡形成時に重複して粒子が入射することによる二重孔の発生を避けるため、孔密度、いわゆる空隙率を上げることができないという問題があった。
一方、このような問題点のない無機系メンブレンフィルタとしては、アルミニウムの陽極酸化皮膜を利用したポーラスアルミナメンブレンフィルタが知られている(例えば、非特許文献2参照。)。
このポーラスアルミナメンブレンフィルタは、アルミニウムを酸性電解液中で陽極酸化処理することで、細孔径分布の狭い独立した細孔(マイクロポア)が、高い空隙率で配置されているため、時間当たりの濾過流量の高く、また安価に製造することができる。
また、このポーラスアルミナメンブレンフィルタは、マイクロポア(以下、単に「ポア」ともいう。)同士の中心点間距離(以下、「ポア周期」ともいう。)を電圧値で調整できることが知られている。
例えば、特許文献1には、ポア周期を2.5nm/Vで除することによって得られるアノード酸化電圧で陽極酸化を行うこと、即ち、ポア周期を電圧値(周期[nm]≒電圧[V]×2.5)で調整できることが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の陽極酸化は、インプリント方式を用いない、いわゆる自己規則化方式を用いた条件で施されるため、ポア配列が三角格子の細密充填をとる構造(以下、「ハニカム構造」ともいう。)を達成するのは非常に困難であり、具体的な条件として開示されているのは、硫酸/25V(周期62.5nm)、シュウ酸/40V(周期100.0nm)、リン酸/195V(周期500.0nm)の3つの条件だけであり、ポア周期の連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造とする具体的な条件は未知であった。
T.D.Brock,Membrane Filtration,Sci.Tech,Inc.,Madison(1983) 益田秀樹,「陽極酸化を用いたポーラスメンブレンの新技術」, アルトピア,1995年7月 特許第3714507号
したがって、本発明は、自己規則化方式を採用した場合であっても、ポア周期を連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造とすることができる微細構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定のパラメータを用いて陽極酸化時の電圧に適した電解液を選択することにより、自己規則化方式を採用した場合であっても、ポア周期を連続的に調整しつつポア配列がハニカム構造となる微細構造体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(i)〜(v)を提供する。
(i)アルミニウム基板と、上記アルミニウム基板の表面に存在する、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜とを有する微細構造体を得る微細構造体の製造方法であって、少なくとも、
上記アルミニウム基板を陽極とし、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、下記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程(A)を具備する、微細構造体の製造方法。
H=F/(D×V) (1)
上記式(1)中、Fは上記陽極酸化処理における電解時の酸化皮膜の形成速度(nm/min)を表し、Dは上記陽極酸化処理に使用する電解液中に電解時の処理温度で無電解にて浸漬処理した時の酸化皮膜の溶解速度(nm/min)を表し、Vは上記陽極酸化処理における電解時の電圧(V)を表す。
(ii)上記酸のうち少なくとも1種が、硫酸、リン酸、シュウ酸または下記式(2)で表される酸である上記(i)に記載の微細構造体の製造方法。
HOOC−R−COOH (2)
上記式(2)中、Rは置換基を有してもよく、直鎖状または分岐状であってもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。
(iii)上記マイクロポアのポア径の分散が平均径の8%以内である上記(i)または(ii)に記載の微細構造体の製造方法。
(iv)上記陽極酸化処理工程(A)が、
2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、上記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程(1)と、
上記工程(1)により形成された上記陽極酸化皮膜を、酸またはアルカリを用いて部分的に溶解させる工程(2)と、
上記工程(2)の後に、上記工程(1)と同様の条件で陽極酸化処理を施して上記マイクロポアを深さ方向に成長させる工程(3)と、
上記工程(3)により深さ方向に成長させた上記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の上記陽極酸化皮膜を除去する工程(4)とを具備し、
上記工程(3)および上記工程(4)をこの順に2回以上繰り返して行う工程である、上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
(v)上記陽極酸化処理工程(A)と、
上記陽極酸化処理工程(A)の後に上記アルミニウム基板を除去し、上記陽極酸化皮膜を上記アルミニウム基板から分離する分離処理工程(B)と、
上記分離処理工程(B)により分離された上記陽極酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる貫通化処理工程(C)とを具備する、上記(i)〜(iv)のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
以下に説明するように、本発明によれば、自己規則化方式を採用した場合であっても、ポア周期を連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造とすることができる微細構造体の製造方法ならびにその製造方法によって得られる微細構造体およびその微細構造体を用いるポーラスアルミナメンブレンフィルタを提供することができる。
また、本発明の微細構造体の製造方法によれば、得られる微細構造体のポアの規則化度およびポア径の単分散性も良好となり、濾過精度も損なわないポーラスアルミナメンブレンフィルターとすることができるため、非常に有用である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の微細構造体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、アルミニウム基板と、上記アルミニウム基板の表面に存在する、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜とを有する微細構造体を得る微細構造体の製造方法であって、少なくとも、
上記アルミニウム基板を陽極とし、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、上記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程(A)を具備する、微細構造体の製造方法である。
次に、本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板ならびに該アルミニウム基板に施す陽極酸化処理工程(A)および所望により施される他の処理工程について詳述する。
〔アルミニウム基板〕
アルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板;等が挙げられる。
本発明においては、アルミニウム基板のうち、後述する陽極酸化処理を施す表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.9質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、マイクロポアの配列(ポア配列)の規則性が十分となる。
また、本発明においては、アルミニウム基板のうち、後述する陽極酸化処理を施す表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理が施されるのが好ましく、特に、ポア配列の規則性を向上させる観点から、熱処理が施されるのが好ましい。
<熱処理>
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。具体的には、例えば、アルミニウム基板を加熱オーブンに入れる方法等が挙げられる。
このような熱処理を施すことにより、後述する陽極酸化処理により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
また、熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法等が挙げられる。
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理としては、具体的には、例えば、各種アルコール(例えば、メタノール等)、各種ケトン(例えば、メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
これらのうち、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない観点から、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
また、脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸、例えば、アルミニウム基板の圧延時に発生した圧延筋等をなくして、電着法等による封孔処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法等が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる場合、使用する研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法等が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法;米国特許第2708655号明細書に記載されている方法;「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法;等が好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更する機械研磨を施し、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
〔陽極酸化処理工程(A)〕
陽極酸化処理工程(A)は、アルミニウム基板を陽極酸化することにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する処理工程であり、本発明においては、上記アルミニウム基板を陽極とし、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、後述する式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程である。
陽極酸化処理としては、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、上記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で施す限り、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。
この方法においては、ポア周期は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア周期を得ることができるが、背景技術においても言及したように、ポア周期の連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造とする具体的な条件は未知であった。
これに対し、本発明においては、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、下記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施すことにより、ポア周期を連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造とすることができる。
H=F/(D×V) (1)
上記式(1)中、Fは上記陽極酸化処理における電解時の酸化皮膜の形成速度(nm/min)を表し、Dは上記陽極酸化処理に使用する電解液中に電解時の処理温度で無電解にて浸漬処理した時の酸化皮膜の溶解速度(nm/min)を表し、Vは上記陽極酸化処理における電解時の電圧(V)を表す。
2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、上記式(1)で規定されるH値が165〜200にあることによりポア周期を連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造とすることができる理由は、詳細には明らかではないが、本発明者は以下のように考えている。
即ち、上記式(1)で規定されるH値は陽極酸化処理における電解時の電圧に対する酸化皮膜の実質的な成長率を示すことになるが、このH値がポア配列をハニカム構造とする際に大きな影響を与えるためであると考えている。
そして、本発明者は、上記式(1)で規定されるH値を2種以上の酸を用いて165〜200の範囲で調整することにより、ポア周期を連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造にできることを見出したのである。具体的には、165未満の場合は陽極酸化時に通電が一か所に集中する、いわゆる「焼け」と呼ばれる現象が生じ、均一な厚さの酸化皮膜が形成されないことを見出し、200を超える場合は通電性が徐々に低下し、酸化皮膜の成長性が低下または停止することを見出した。
また、上記式(1)で規定されるH値は、175〜190の範囲であることがポア周期をより調整しやすいため好ましく、180〜185の範囲であることがポア周期を更に調整しやすいためより好ましい。
一方、上記式(1)中、皮膜形成速度Fは20〜1500(nm/min)であるのが好ましく、50〜1200(nm/min)であるのがより好ましく、100〜1000(nm/min)であるのが特に好ましい。
また、上記式(1)中、皮膜溶解速度Dは0.001〜0.20(nm/min)であるのが好ましく、0.005〜0.15(nm/min)であるのがより好ましく、0.01〜0.10(nm/min)であるのが特に好ましい。
更に、上記式(1)中、Vは1〜800(V)であるのが好ましく、3〜600(V)であるのがより好ましく、5〜500(V)であるのが特に好ましい。
ここで、皮膜形成速度Fおよび皮膜溶解速度Dの決定方法を以下に示す。
皮膜形成速度F(nm/min)は、渦電流式膜厚計や、イオンミリング等の切削により断面方向を観察する等の方法を用いて、上記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の膜厚(nm)を計測し、それを上記陽極酸化処理に要した処理時間(min)で除した値である。
一方、皮膜溶解速度D(nm/min)は、上記陽極酸化処理後の電解液を用いて計測する。具体的には、上記陽極酸化処理時の液温および濃度等を変更せず、電気をかけずに酸化皮膜を有するアルミニウムを浸漬し、浸漬前後のバリア皮膜(孔底部の酸化皮膜厚)の溶解厚さ(nm)を、渦電流式膜厚計や、イオンミリング等の切削により断面方向を観察する等の方法を用いて計測し、浸漬時間(min)で除した値である。
本発明においては、皮膜形成速度Fおよび皮膜溶解速度Dの物性値は、電解液の液温、濃度、電解液中の物質の組成比、電解液にかかる圧力等で任意に変更することができる。
ここで、皮膜形成速度Fは、電解液の液温および酸濃度を上げると向上するが、電圧値Vが高いほどこの効果が顕著となる。また、電解液の液温よりも電解液の濃度による効果の方が大きい。
同様に、皮膜溶解速度Dも、電解液の液温および酸濃度を上げると向上し、電圧値Vが高いほどこの効果が顕著となる。ただし、皮膜溶解速度Dにおいては、電解の液温による効果の方が大きい。
また、本発明においては、皮膜形成速度Fおよび皮膜溶解速度Dを予め実験的に求めておくことで、所望のH値を満たすよう条件を設定することができる。
また、H値の誤差を小さくする意味でも、可能な限り長時間処理における皮膜形成速度Fおよび皮膜溶解速度Dで評価した方が好ましい。
具体的な処理時間としては、10分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、50分以上が更に好ましい。ただし、処理時間が2時間を超えると、皮膜形成速度Fの計測においては酸化皮膜上部の溶解、皮膜溶解速度Dの計測においてはバリア皮膜全溶解による酸化皮膜の崩壊、がそれぞれ発生する可能性があるため好ましくない。
本発明においては、陽極酸化皮膜に存するマイクロポアに関して、下記式(3)により定義される規則化度が70%以上である状態をポア配列がハニカム構造を形成していると評価しており、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、上記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施すことにより、規則化度を70%以上とすることができる。
規則化度(%)=B/A×100 (3)
上記式(3)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に上記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる上記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
ここで、図1は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。図1を用いて、上記式(1)をより具体的に説明する。
図1(A)に示されるマイクロポア1は、マイクロポア1の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円3(マイクロポア2に内接している。)を描いた場合に、円3の内部にマイクロポア1以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア1は、Bに算入される。
図1(B)に示されるマイクロポア4は、マイクロポア4の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円6(マイクロポア5に内接している。)を描いた場合に、円6の内部にマイクロポア4以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア4は、Bに算入されない。
また、図1(B)に示されるマイクロポア7は、マイクロポア7の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円9(マイクロポア8に内接している。)を描いた場合に、円9の内部にマイクロポア7以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア7は、Bに算入されない。
また、本発明においては、ポア周期は、下記式(4)により求めた値をいう。
ポア周期=(1/n)ΣLi (4)
上記式(4)中、Li、一のマイクロポアの重心を中心として最も半径が短い円(内接円)を描くことができる他のマイクロポアを決定し、上記一のマイクロポアの重心と上記他のマイクロポアの重心との距離を表す。
即ち、ポア周期は、測定範囲における各マイクロポアについて測定されたLiの平均値である。
自己規則化法によりマイクロポアを形成するには、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、上記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で後述する陽極酸化処理(a−1)を実施すればよいが、好ましくは、後述する陽極酸化処理(a−1)、脱膜処理(a−2)および再陽極酸化処理(a−3)をこの順に実施する方法により形成するのが好ましい。
<陽極酸化処理(a−1)>
陽極酸化処理(a−1)をする際の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有することができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。特に、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。このようなかくはん装置としては、例えば、「マグネティックスターラーHS−50D(AS ONE製)」等が挙げられる。
陽極酸化処理(a−1)は、例えば、酸濃度1〜10mol/Lの溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。
陽極酸化処理(a−1)に用いられる溶液には、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用いる。
このように2種の異なる酸を用いる場合、上記酸のうち少なくとも1種が、硫酸、リン酸、シュウ酸または下記式(2)で表される酸であるのが好ましい。
HOOC−R−COOH (2)
上記式(2)中、Rは置換基を有してもよく、直鎖状または分岐状であってもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。
上記式(2)で表される酸としては、具体的には、例えば、マロン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。
硫酸、リン酸、シュウ酸または上記式(2)で表される酸以外の他の酸としては、具体的には、例えば、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸、グリコール酸等が挙げられる。
陽極酸化処理(a−1)の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.1〜20mol/L、液温−10〜50℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.5〜15mol/L、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度1〜10mol/L、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
本発明においては、電解液中に含有させる好ましい酸は、処理時の電圧値によって異なる。
具体的には、電圧値1〜30Vで処理を行う場合には、硫酸を0.01mol/L〜10.0mol/L、好ましくは0.03mol/L〜7.5mol/L、より好ましくは0.05mol/L〜5.0mol/Lとし、更に硫酸以外の酸を0.01mol/L〜5.0mol/L、好ましくは0.02mol/L〜3.0mol/L、より好ましくは0.03mol/L〜1.0mol/Lの範囲で組み合わせることが好ましい。
また、電圧値30〜95Vで処理を行う場合には、シュウ酸を0.01mol/L〜10.0mol/L、好ましくは0.03mol/L〜7.5mol/L、より好ましくは0.05mol/L〜5.0mol/Lとし、更にシュウ酸以外の酸を0.01mol/L〜5.0mol/L、好ましくは0.02mol/L〜3.0mol/L、より好ましくは0.03mol/L〜1.0mol/Lの範囲で組み合わせることが好ましい。
また、電圧値95〜185Vで処理を行う場合には、マロン酸を0.01mol/L〜10.0mol/L、好ましくは0.03mol/L〜7.5mol/L、より好ましくは0.05mol/L〜5.0mol/Lとし、更にマロン酸以外の酸を、0.01mol/L〜5.0mol/L、好ましくは0.02mol/L〜3.0mol/L、より好ましくは0.03mol/L〜1.0mol/Lの範囲で組み合わせることが好ましい。
また、電圧値185V以上で処理を行う場合には、酒石酸、リンゴ酸またはリン酸を0.01mol/L〜10.0mol/L、好ましくは0.03mol/L〜7.5mol/L、より好ましくは0.05mol/L〜5.0mol/Lとし、別の酸を0.01mol/L〜5.0mol/L、好ましくは0.02mol/L〜3.0mol/L、より好ましくは0.03mol/L〜1.0mol/Lの範囲で組み合わせることが好ましい。
陽極酸化処理(a−1)は、一定電圧下で行う以外に、電圧を断続的または連続的に変化させる方法も用いることができる。この場合は電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
本発明においては、このような陽極酸化処理(a−1)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜300μmであるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ましく、10〜100μmであるのが更に好ましい。
また、このような陽極酸化処理(a−1)により形成されるマイクロポアの平均ポア密度は、50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
更に、このような陽極酸化処理(a−1)により形成されるマイクロポアの占める面積率は、20〜95%であるのが好ましい。ここで、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
<脱膜処理(a−2)>
脱膜処理(a−2)は、上記陽極酸化処理(a−1)によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する処理である。
上記陽極酸化処理(a−1)によりアルミニウム基板表面に陽極酸化皮膜を形成した後、後述する分離処理工程(B)を直ちに施してもよいが、上記陽極酸化処理(a−1)の後、更に脱膜処理(a−2)および後述する再陽極酸化処理(a−3)をこの順で施した後に、後述する分離処理工程(B)を施すのが好ましい。
陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板に近くなるほど規則性が高くなっているので、この脱膜処理(a−2)により、一度陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に露出させて、規則的な窪みを得ることができる。したがって、脱膜処理(a−2)では、アルミニウムは溶解させず、アルミナ(酸化アルミニウム)からなる陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
アルミナ溶解液は、クロム化合物、硝酸、リン酸、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
具体的なクロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
中でも、上記アルミナ溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
アルミナ溶解液は、−10℃以上であるのが好ましく、−5℃以上であるのがより好ましく、0℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
アルミナ溶解液は、アルミナを溶解し、アルミニウムを溶解しない。ここで、アルミナ溶解液は、アルミニウムを実質的に溶解させなければよく、わずかに溶解させるものであってもよい。
脱膜処理(a−2)は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
<再陽極酸化処理(a−3)>
上記脱膜処理(a−2)により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
再陽極酸化処理(a−3)は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(a−1)と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
また、再陽極酸化処理(a−3)を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、再陽極酸化処理(a−3)を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
本発明においては、このような再陽極酸化処理(a−3)により形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1〜2000μmであるのが好ましく、1〜1000μmであるのがより好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
また、このような陽極酸化処理(a−3)により形成されるマイクロポアの平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
更に、このような陽極酸化処理(a−3)により形成されるマイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。
更にまた、このような陽極酸化処理(a−3)により形成されるマイクロポアのポア径は0.001〜0.5μmであるのが好ましい。
また、マイクロポアのアスペクト比は、10以上10000未満であることが好ましく、25以上5000未満であることが好ましく、50以上1000未満であることが好ましい。ナノエマルション法においては、液相に加わる加圧力が皮膜へと伝わるため、アスペクト比が上記範囲を下回ると、破損する可能性があり、また、アススペクト比が上記範囲を上回ると、液相がマイクロポア内に滞留しやすくなり、それぞれ好ましくない。
本発明においては、上記陽極酸化処理工程(A)として、下記(1)〜(4)の工程をこの順に施すことにより、アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成してもよい。
(1)2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、上記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程
(2)酸またはアルカリを用いて、上記陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる工程
(3)陽極酸化処理を実施して上記マイクロポアを深さ方向に成長させる工程
(4)上記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する工程
<工程(1)>
工程(1)は、上記陽極酸化処理(a−1)と同様の工程であり、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、アルミニウム基板の少なくとも一方の表面に、上記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程である。
図2は、アルミニウム基板および該アルミニウム基板上に形成される陽極酸化皮膜の模式的な端面図である。
図2(A)は、工程(1)により、アルミニウム基板12a表面に、マイクロポア16aを有する陽極酸化皮膜14aが形成された状態を示している。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で形成した陽極酸化皮膜を、酸またはアルカリを用いて、部分的に溶解させる。
ここで、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させるとは、工程(1)で形成した陽極酸化皮膜を完全に溶解させるのではなく、図2(B)に示されるように、アルミニウム基板12a上に、マイクロポア16bを有する陽極酸化皮膜14bが残存するように、図2(A)に示す陽極酸化皮膜14aの表面およびマイクロポア16aの内部を部分的に溶解させることを示す。
また、陽極酸化皮膜の溶解量は、陽極酸化皮膜全体の0.001〜50質量%であるのが好ましく、0.005〜30質量%であるのがより好ましく、0.01〜15質量%であるのが更に好ましい。溶解量が上記範囲であると、陽極酸化皮膜の表面の配列が不規則な部分を溶解させて、マイクロポアの配列の規則性を高くすることができるとともに、マイクロポアの底部分に陽極酸化皮膜を残存させて、工程(3)で実施する陽極酸化処理の起点を残すことができる。
工程(2)は、アルミニウム基板上に形成された陽極酸化皮膜を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
工程(2)に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。中でも、クロム酸を含有しない水溶液が安全性に優れる点で好ましい。酸水溶液の濃度は0.01〜1mol/Lであるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜60℃であるのが好ましい。
工程(2)にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.01〜1mol/Lであるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、0.5mol/L、40℃のリン酸水溶液、0.05mol/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.05mol/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で陽極酸化皮膜が部分的に溶解されたアルミニウム基板に対して、再び陽極酸化処理を実施してマイクロポアを深さ方向に成長させる。
図2(C)に示されるように、工程(3)の陽極酸化処理により、図2(B)に示されるアルミニウム基板12aの酸化反応が進行し、アルミニウム基板12b上に、マイクロポア16bよりも深さ方向に成長したマイクロポア16cを有する陽極酸化皮膜14cが形成される。
陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した陽極酸化処理(a−1)と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
上述した電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、後に電着処理を行う場合に、均一化することができる。
陽極酸化皮膜の厚さの増加量は、0.1〜100μmであるのが好ましく、0.5〜50μmであるのがより好ましい。増加量が上記範囲であると、ポアの配列の規則性をより高くすることができる。
<工程(4)>
工程(4)では、図2(C)に示されるマイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。自己規則化法により形成されるマイクロポアは、図2(C)に示されるように、マイクロポア16cの上部を除いて、断面形状が略直管形状になる。言い換えると、マイクロポア16cの上部には、該マイクロポア16cの残りの部分とは断面形状が異なる部分(異形部分)20が存在する。工程(4)では、このようなマイクロポア16c上部に存在する異形部分20を解消するため、マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する。
ここで、変曲点30とは、マイクロポア16cの断面形状がなす主たる形状(ここでは、略直管形状)に対して、著しく形状が変化する部分を指し、別の言い方をすると、マイクロポア16cの断面形状において、主たる形状(略直管形状)に対して、形状の連続性が失われる部分を指す。
マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去することにより、図2(D)に示されるように、マイクロポア16d全体が略直管形状となる。
工程(4)では、工程(3)実施後の陽極酸化皮膜14cを断面方向からFE−SEMを撮影することによって、マイクロポア16cの断面形状の変曲点30を特定し、該変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去してもよい。
ただし、マイクロポアに異形部分が生じるのは、主として、工程(1)のように、アルミニウム基板12a上に新たに陽極酸化皮膜14aを形成した場合である。したがって、マイクロポア16cの断面形状の変曲点30よりも上方の陽極酸化皮膜を除去して、マイクロポア16c上部の異形部分20を解消するには、工程(1)で形成された陽極酸化皮膜を工程(4)で除去すればよい。
なお、後述するように、工程(3)および工程(4)を2回以上繰り返す場合、工程(4)実施後の陽極酸化皮膜14dでは、異形部分30が解消されて、マイクロポア16dの断面形状全体が略直管形状となるので、工程(4)に続いて実施する工程(3)(以下、本段落においては「工程(3′)」という。)で形成されるマイクロポア上部には新たに異形部分が生じる。したがって、工程(3′)に続いて実施する工程(4)(以下、本段落においては「工程(4′)」という。)では、工程(3′)で形成されたマイクロポア上部に新たに生じた異形部分を除去する必要がある。このため、工程(4′)では、工程(3′)で形成されるマイクロポアの変曲点よりも上方の陽極酸化被膜を除去する必要がある。
工程(4)で、マイクロポア16cの断面形状の変曲点よりも上方の陽極酸化皮膜を除去する処理としては、例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨等の研磨処理であってもよい。ただし、工程(2)のように、酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を溶解させる処理であることが好ましい。この場合、図2(D)に示されるように、図2(C)に示される陽極酸化皮膜14cよりも厚さが小さい陽極酸化皮膜14dが形成される。
工程(4)で、酸またはアルカリを用いて、陽極酸化皮膜を部分的に溶解させる場合、陽極酸化皮膜の溶解量は、陽極酸化皮膜の溶解量は、特に限定されず、陽極酸化皮膜全体の0.01〜30質量%であるのが好ましく、0.1〜15質量%であるのがより好ましい。溶解量が上記範囲であると、陽極酸化皮膜の表面の配列が不規則な部分を溶解させて、マイクロポアの配列の規則性を高くすることができる。また、工程(3)および工程(4)を2回以上繰り返して実施する場合、次に実施する工程(3)での陽極酸化処理の起点を残すことができる。
上記工程(3)および上記工程(4)は、2回繰り返して行うのが、ポアの配列の規則性が高くなるため好ましく、3回以上繰り返して行うのがより好ましく、4回以上繰り返して行うのが更に好ましい。
上記工程を2回以上繰り返して行う場合、各回の工程(3)および工程(4)の条件はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。規則化度向上性の観点から、工程(3)は、各回ごとに電圧を変えて実施することが好ましい。この場合、徐々に高電圧の条件に変えていくのが、規則化度向上性の観点から、より好ましい。
図2(D)に示す状態において、平均ポア密度が50〜1500個/μm2であるのが好ましく、マイクロポアの占める面積率が20〜50%であるのが好ましい。
図3は、上記陽極酸化処理工程(A)後の状態を示した部分断面図である。図3に示すように、アルミニウム基板12表面には、マイクロポア16を有する陽極酸化皮膜14が形成されている。
〔分離処理工程(B)〕
分離処理工程(B)は、上記陽極酸化処理工程(A)後にアルミニウム基板を除去し、陽極酸化皮膜をアルミニウム基板から分離する処理工程であり、本発明においては、所望により行われる工程である。
アルミニウム基板の除去は、図3に示す状態からアルミニウム基板12を溶解して除去する。図4は、分離処理工程(B)後の状態を示した部分断面図であり、マイクロポア16を有する陽極酸化皮膜14からなる微細構造体が示されている。
したがって、アルミニウム除去処理には、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する処理液を用いる。
処理液としては、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する液であれば特に限定されないが、例えば、塩化水銀、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、王水、塩酸/塩化銅混合物等の水溶液等が挙げられる。
濃度としては、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
処理温度としては、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
分離処理工程(B)は、上述した処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
分離処理工程(B)後の陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
分離処理工程(B)後、後述する貫通化処理工程(C)を行う前に、陽極酸化皮膜14を水洗処理するのが好ましい。水和によるマイクロポア16のポア径の変化を抑制するため、水洗処理は30℃以下で実施することが好ましい。
〔貫通化処理工程(C)〕
貫通化処理工程(C)は、上記分離処理工程(B)により分離された陽極酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる処理であり、本発明においては、所望により行われる工程である。
貫通化処理工程(C)では、図4に示すマイクロポア16を有する陽極酸化皮膜14を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜14を部分的に溶解させる。これにより、マイクロポア16底部の陽極酸化皮膜14が除去され、マイクロポア16が貫通する(マイクロポア貫通孔18が形成される)。図5は、貫通化処理工程(C)後の状態を示した部分断面斜視図であり、マイクロポア貫通孔18を有する陽極酸化皮膜14からなる微細構造体が示されている。
図5では、陽極酸化皮膜14に存在する全てのマイクロポアがマイクロポア貫通孔18となっているが、貫通化処理工程(C)により、陽極酸化皮膜に存在する全てのマイクロポアが貫通しなくてもよい。ただし、貫通化処理工程(C)により、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのうち70%以上が貫通することが好ましく、85%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
貫通化処理工程(C)に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
貫通化処理工程(C)にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
また、このように酸水溶液またはアルカリ水溶液で貫通処理を施す際には、予め、マイクロポアの中にpH干渉水溶液を浸しておくことが好ましい。この方法としても浸漬方法が好ましく、浸せき時間は、pH干渉水溶液をマイクロポアの中に十分に充填させるためにも、30秒以上であるのが好ましく、1分以上であるのがより好ましく、3分以上であるのが更に好ましい。
貫通化処理工程(C)後の陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
貫通化処理工程(C)後、陽極酸化皮膜14を水洗処理する。水和によるマイクロポア貫通孔18のポア径の変化を抑制するため、水洗処理は30℃以下で実施することが好ましい。
本発明においては、上述した分離処理工程(B)および貫通化処理工程(C)は、これらの処理工程を同時に施す方法であってもよい。
具体的には、図3に示す陽極酸化皮膜14の下方、即ち、陽極酸化皮膜14におけるアルミニウム基板12側の部分を、レーザー等による切削処理や種々の研磨処理等を用いて物理的に除去し、図5に示すマイクロポア貫通孔18を有する陽極酸化皮膜14とする方法が好適に例示される。
<加熱処理>
本発明においては、上記陽極酸化処理工程(A)ならびに所望により施される上記分離処理工程(B)および貫通化処理工程(C)を施すことにより得られる微細構造体(以下、「本発明の製造法により得られる微細構造体」という。)は、更に加熱処理されるのが好ましい。
加熱処理を施すことにより、陽極酸化皮膜表面やマイクロポア内に残留している酸イオン、即ち、上記陽極酸化処理工程(A)で使用した電解液、上記分離処理工程(B)で使用したアルミナ溶解液、上記貫通化処理工程(C)で使用した処理液由来の酸イオンが除去されるため、陽極酸化皮膜における酸イオン由来の元素の濃度を著しく低減することができる。
ここで、陽極酸化皮膜表面やマイクロポア内に残留する酸イオンは、陽極酸化処理等の各種処理で使用する酸の種類によっても異なるが、例えば、上記陽極酸化処理工程(A)では、硫酸、リン酸またはシュウ酸が好適に用いられるため、陽極酸化皮膜表面やマイクロポア内に残留する酸イオンは、SO4 2-、PO3 2-、C25COO-が主となる。
上述したように、加熱処理を施すことにより陽極酸化皮膜における酸イオン由来の元素の濃度を著しく低減することができるが、具体的には、本発明の製造法により得られる微細構造体は、陽極酸化皮膜における、S原子濃度、C原子濃度およびP原子濃度がそれぞれ以下であることが好ましい。陽極酸化皮膜におけるこれら原子濃度は、例えば、電子プローブ微量分析(EPMA)により測定することができる。
S原子濃度:3.2wt%以下
C原子濃度:2.5wt%以下
P原子濃度:1.0wt%以下
また、本発明の製造法により得られる微細構造体は、その酸化皮膜に存するマイクロポアに関し、上記式(3)により定義される規則化度が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
マイクロポアの規則化度が80%以上であると、その微細構造体を用いたポーラスアルミナメンブレンフィルタの耐圧性の均一性が向上し、濾過流量が良好となる。
更に、本発明の製造法により得られる微細構造体は、その陽極酸化皮膜に存するマイクロポアに関し、1μm2の範囲において、ポア径の分散が平均径の8%以内であり、3%以内であることが好ましく、2%以内であることがより好ましい。なお、ポア径の平均径および分散はそれぞれ下記式で求めることができる。
ポア径の分散が平均径の8%以内であると、その微細構造体を用いたポーラスアルミナメンブレンフィルタの耐圧性の均一性が向上し、濾過流量が良好となる。これは、ポア径が非常に単分散化するため、ある特定のポアに濾液が流れ込むことが抑制され、フィルタ全体にかかる液圧がより均一になるためと考えられる。
平均径:μx=(1/n)ΣXi
分散:σ2=(1/n)(ΣXi2)−μx 2
分散/平均径=σ/μx≦0.08
ここで、Xiは、1μm2の範囲で測定された1個のマイクロポアのポア径である。
本発明の製造法により得られる微細構造体は、上述したように、有機溶剤系の濾過液を用いるポーラスアルミナメンブランフィルタとして好適であるが、酸化皮膜のマイクロポアに、有機化合物や無機化合物、金属微粒子等を担持することもできる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1)
1.微細構造体(ポーラスアルミナメンブランフィルタ)の作製
(1)電解研磨処理
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を、10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットした後、以下組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を施した。
陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
<電解研磨液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
(2)陽極酸化処理工程
上記で得られた電解研磨処理後のサンプルに、1.00mol/L硫酸および0.10mol/L塩酸の混合電解液で、電圧16V、液温度25℃、液流速6.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理を施した。更に陽極酸化処理後のサンプルに、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬して脱膜処理を施した。この陽極酸化処理の電解液に用いた酸の種類および電圧の条件を第1表に示す。
これらの処理をこの順に4回繰り返した後、1.00mol/L硫酸および0.10mol/L塩酸の混合電解液で、電圧16V、液温度20℃、液流速6.0m/minの条件で10時間再陽極酸化処理を施し、更に、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬させて脱膜処理を施すことにより、アルミニウム基板12表面に、マイクロポア16が直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化皮膜14を形成させた(図2(D)、図3参照。)。
なお、陽極酸化処理および再陽極酸化処理ともに、陰極はステンレス電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置としては、NeoCool BD36(ヤマト科学社製)を用い、かくはん加温装置として、ペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
また、上記陽極酸化処理における電解時(電圧16V)の酸化皮膜の形成速度F(nm/min)、上記陽極酸化処理に使用する電解液中に電解時の処理温度(25℃)で無電解にて浸漬処理した時の酸化皮膜の溶解速度D(nm/min)、ならびに、下記式(1)で規定するH値を第1表に示す。
H=F/(D×V) (1)
ここで、酸化皮膜の形成速度Fは、上記陽極酸化処理後の酸化皮膜厚を渦電流式膜厚計で計測し、それを上記陽極酸化処理の処理時間で除して計算した。また、酸化皮膜の溶解速度Dは、上記陽極酸化処理後のサンプルを、電解を止めた状態で単位時間浸漬し、浸漬前後のバリア皮膜(孔底部の酸化皮膜厚)の溶解厚さ(nm)を、イオンミリングにより断面方向からの溶解量から計測し、浸漬時間で除して計算した。
(3)分離処理
上記で得られた陽極酸化処理後のサンプルを、10質量%塩酸、および、0.05mol/L塩化第二銅の混合水溶液を用いて、20℃、30分間浸漬させることにより、アルミニウム基板12を溶解して除去し、マイクロポア16を有する陽極酸化皮膜14からなる微細構造体を作製した(図4参照。)。
(4)貫通化処理
上記で得られた分離処理後のサンプルを、0.5mol/L塩化カリウム水溶液に25℃下で2分間浸漬させた後、マイクロポアを貫通化する面に、0.10mol/L水酸化カリウムを30℃下で30分間接触させることにより、マイクロポア貫通孔18を有する陽極酸化皮膜14からなる微細構造体を作製した(図5参照。)。
(5)加熱処理
上記で得られた貫通化処理後のサンプルを、温度400℃の条件下で1時間加熱処理を施し、微細構造体(ポーラスアルミナメンブレンフィルター)を得た。
(実施例2)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.10mol/L硫酸および0.20mol/Lリン酸の混合電解液で、電圧20V、液温度15℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(実施例3)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.33mol/Lシュウ酸および0.11mol/L硫酸の混合電解液で、電圧30V、液温度15℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(実施例4)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.40mol/Lシュウ酸および0.06mol/L硫酸の混合電解液で、電圧35V、液温度15℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(実施例5)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.45mol/Lシュウ酸および0.03mol/Lリン酸の混合電解液で、電圧50V、液温度15℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(実施例6)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、1.20mol/Lマロン酸および0.10mol/Lシュウ酸の混合電解液で、電圧150V、液温度10℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(実施例7)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、1.80mol/Lリンゴ酸および0.20mol/L硫酸の混合電解液で、電圧230V、液温度5℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例1)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、1.10mol/L硫酸の電解液で、電圧16V、液温度25℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例2)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.50mol/L硫酸の電解液で、電圧20V、液温度20℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例3)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.33mol/Lシュウ酸および0.11mol/L硫酸の混合電解液で、電圧30V、液温度5℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例4)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.33mol/Lシュウ酸および0.11mol/L硫酸の混合電解液で、電圧30V、液温度25℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例5)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.20mol/Lシュウ酸および1.00mol/Lリン酸の混合電解液で、電圧50V、液温度15℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例6)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、2.00mol/Lシュウ酸および0.02mol/Lリン酸の混合電解液で、電圧50V、液温度15℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例7)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.50mol/Lマロン酸の電解液で、電圧150V、液温度5℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例8)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.50mol/Lマロン酸および0.80mol/L硫酸の混合電解液で、電圧150V、液温度5℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
(比較例9)
上記陽極酸化処理工程における陽極酸化処理の電解条件を、0.50mol/L塩酸および0.80mol/L硫酸の混合電解液で、電圧150V、液温度5℃とした以外は、実施例1と同様の方法で微細構造体を得た。
2.微細構造体(ポーラスアルミナメンブランフィルタ)の形状解析
実施例1〜6および比較例1〜9で得られた微細構造体(ポーラスアルミナメンブランフィルタ)の表面写真(倍率20000倍)をFE−SEMにより撮影し、1μm×1μmの測定範囲(視野)に存在するマイクロポアについて、下記式(3)で定義される規則化度を求めた。この規則化度が70%以上であれば、ポア配列がハニカム構造を形成していると評価できる。その結果を第2表に示す。
規則化度(%)=B/A×100 (3)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に上記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる上記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
同様に、測定範囲(視野)に存在するマイクロポアについて、下記式(4)によりポア周期を求めた。その結果を第2表に示す。
ポア周期=(1/n)ΣLi (4)
上記式(4)中、Li、一のマイクロポアの重心を中心として最も半径が短い円(内接円)を描くことができる他のマイクロポアを決定し、上記一のマイクロポアの重心と上記他のマイクロポアの重心との距離を表す。
同様に、測定範囲(視野)に存在するマイクロポアについて、平均径およびポア径の分散を下記式により求め、分散/平均径を求めた。その結果を第2表に示す。
平均径:μx=(1/n)ΣXi
分散:σ2=(1/n)(ΣXi2)−μx 2
分散/平均径=σ/μx
ここで、Xiは、1μm2の範囲で測定された1個のマイクロポアのポア径である。
Figure 0004990737
Figure 0004990737
第1表および第2表に示すように、上記式(1)で規定されるH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施すことにより、実施例1〜7に示す種々の条件において、ポア周期を連続的に調整しつつポア配列をハニカム構造とすることができることが分かった。また、実施例1〜7で得られた微細構造体は、ポア径の単分散性も良好となり、濾過精度も損なわないポーラスアルミナメンブレンフィルターとすることができることが分かった。
図1は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。 図2は、アルミニウム基板および該アルミニウム基板上に形成される陽極酸化皮膜の模式的な端面図である。 図3は、陽極酸化処理工程(A)後の状態を示した部分断面図である。 図4は、分離処理工程(B)後の状態を示した部分断面図である。 図5は、貫通化処理工程(C)後の状態を示した部分断面図である。
符号の説明
1、2、4、5、7、8 マイクロポア
3、6、9 円
12、12a、12b、 アルミニウム基板
14、14a、14b、14c、14d 陽極酸化皮膜
16、16a、16b、16c、16d マイクロポア
18:マイクロポア貫通孔
20 異形部分
30 変曲点

Claims (5)

  1. アルミニウム基板と、前記アルミニウム基板の表面に存在する、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜とを有する微細構造体を得る微細構造体の製造方法であって、少なくとも、
    前記アルミニウム基板を陽極とし、2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、下記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理工程(A)を具備する、微細構造体の製造方法。
    H=F/(D×V) (1)
    前記式(1)中、Fは前記陽極酸化処理における電解時の酸化皮膜の形成速度(nm/min)を表し、Dは前記陽極酸化処理に使用する電解液中に電解時の処理温度で無電解にて浸漬処理した時の酸化皮膜の溶解速度(nm/min)を表し、Vは前記陽極酸化処理における電解時の電圧(V)を表す。
  2. 前記酸のうち少なくとも1種が、硫酸、リン酸、シュウ酸または下記式(2)で表される酸である請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
    HOOC−R−COOH (2)
    前記式(2)中、Rは置換基を有してもよく、直鎖状または分岐状であってもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。
  3. 前記マイクロポアのポア径の分散が平均径の8%以内である請求項1または2に記載の微細構造体の製造方法。
  4. 前記陽極酸化処理工程(A)が、
    2種以上の異なる酸を含有する電解液を用い、前記式(1)で規定するH値が165〜200となる条件で陽極酸化処理を施してマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を形成する工程(1)と、
    前記工程(1)により形成された前記陽極酸化皮膜を、酸またはアルカリを用いて部分的に溶解させる工程(2)と、
    前記工程(2)の後に、前記工程(1)と同様の条件で陽極酸化処理を施して前記マイクロポアを深さ方向に成長させる工程(3)と、
    前記工程(3)により深さ方向に成長させた前記マイクロポアの断面形状の変曲点よりも上方の前記陽極酸化皮膜を除去する工程(4)とを具備し、
    前記工程(3)および前記工程(4)をこの順に2回以上繰り返して行う工程である、請求項1〜3のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
  5. 前記陽極酸化処理工程(A)と、
    前記陽極酸化処理工程(A)の後に前記アルミニウム基板を除去し、前記陽極酸化皮膜を前記アルミニウム基板から分離する分離処理工程(B)と、
    前記分離処理工程(B)により分離された前記陽極酸化皮膜のマイクロポアを貫通させる貫通化処理工程(C)とを具備する、請求項1〜4のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
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