JP4694812B2 - 記録用媒体 - Google Patents
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Description
特に近年、デジタルカメラの普及および撮影したデジタル写真を個人で印刷するケースが増加し、インクジェットプリントにも銀塩写真による印画紙と同等の質感と表現力が要求されるようになってきた。
このような写真印刷に好適なインクジェット記録用媒体としては、(1)光沢普通紙:支持基材である原紙上にインク受容層を設け、その上に無機超微粒子と親水性樹脂を主成分とする光沢層を設けたもの、(2)フォトライク光沢紙:樹脂フィルムあるいは樹脂コート紙を支持基材とし、その上に無機超微粒子と親水性樹脂を主成分とする光沢層兼インク受容層を設けたもの、が広く用いられている。
また、かかる記録用媒体の光沢性やインク吸収性を向上させる目的で、種々の変性PVA系樹脂が提案されており、本出願人も、周波数1.6Hz、湿度40%RH、温度30〜90℃で粘弾性を測定した時のtanδのピーク最大値が0.5以下であるアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(例えば、特許文献1参照。)や、下記(a)式を満足するオキシアルキレン基含有PVA系樹脂(例えば、特許文献2参照。)を提案した。
y≦−1.12x+58.1 ・・・(a)
〔x:オキシアルキレン基含有PVA系樹脂の完全ケン化状態におけるオキシアルキレン基含有量(重量%)、y:オキシアルキレン基含有PVA系樹脂の結晶化度(%)〕
そこで、本発明者が、上記の公報に開示された各種変性PVA系樹脂を上述の事情に鑑みて詳細に検討したところ、無機微粒子の配合量を増やすと塗工層の光沢性が低下することが判明した。
すなわち、インク吸収性と光沢性のいずれもの性能に優れた光沢層あるいはインク受容層を有するインクジェット記録用媒体が求められ、具体的には、無機微粒子を増やして空隙率を上げなくても優れたインク吸収性が得られるPVA系樹脂、あるいは、無機微粒子を増やしても光沢性に優れた塗工層が得られるPVA系樹脂が望まれるところである。
[但し、R1、R2、R3はそれぞれ独立した水素又はアルキル基である。]
[但し、R1、R2、R3、R5、R6はそれぞれ独立した水素又はアルキル基である。]
本発明で用いられるビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、ビニルエチレンカーボネートがポリビニルエステル系ポリマーの分子鎖中に均一に分布させられる点から滴下重合が好ましく、特にはHANNA法〔反応性比:r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、r(酢酸ビニル)=0.85〕に基づく重合方法が好ましい。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
また、共重合反応の反応温度は40℃〜200℃、さらには40〜180℃、特には40℃〜72℃の範囲程度とすることが好ましい。
ケン化に当たっては、該共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
かくして側鎖に1,2−ジオール成分を有したPVA系樹脂が得られる。
また、一定圧力下(常圧〜100kg/cm2)で且つ高温下(50〜200℃)でビニルエステル部分をケン化することなく、脱炭酸を行うことも可能であり、かかる場合、脱炭酸を行った後、上記ケン化を行うこともできる。
本発明で用いられる2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとしては、上記一般式(3)で示される構造のものであれば特に限定されず、上記一般式(3)において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R5、R6はそれぞれ独立して水素又はアルキル基であり、該アルキル基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。中でも入手の容易さ、良好な共重合性を有する点で、R1、R2、R3が水素で、R5、R6がメチル基である2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランが好適である。
ケン化に当たっては、上記(i)の方法と同様に行われる。
また、上記ケン化が酸触媒を用いて行われる場合は、通常、ケン化後に特別な処理を施すことなく、上記ケン化条件下で該ケン化とともに脱ケタール化が行われ、1,2−ジオール成分に変換される。
本発明で用いられる上記一般式(4)で示される化合物において、R1、R2、R3は上記一般式(1)と同様のものが挙げられ、R 7およびR8は、それぞれ独立して水素またはR9−CO−(式中、R9は、アルキル基、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい)である。
式(4)で示される化合物としては、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテンなどが挙げられる。なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、R1、R2、R3が水素、R7、R8がR9−CO−であり、R9がアルキル基である3,4−ジアシロキシ−1−ブテンが好ましく、そのなかでも特にR9がメチル基である3,4−ジアセトキシ−1−ブテンがより好ましい。
なお、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、イーストマンケミカル社やアクロス社の製品を市場から入手することができる。
ケン化に当たっては、上記(i)の方法と同様に行われる。
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系モノマー及び式(4)で示される化合物の合計量1モルに対して0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜17ミリモルの割合が適当である。
ビニルエステル系モノマーと式(4)で示される化合物との共重合体をケン化して得られる側鎖に1,2−ジオール成分を含有するPVA系樹脂(A)は、ケン化時にビニルエステル系モノマーのエステル部分と式(4)で示される化合物のアシロキシ部分を同時に水酸基に変換することによって製造されるので、ビニルエチレンカーボネートを使用するときの欠点である炭酸ジメチル等の副生成物が発生しないという特徴を有する。
本発明の記録用媒体の塗工層に含有される無機微粒子(B)としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、非晶質シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、などが好ましく用いられ、これらを単独、または2種類以上組み合せて用いることができる。特に、塗工層が光沢層であり、高度の光沢性が必要とされる場合には、コロイダルシリカ、気相法シリカ、アルミナゾルのような無機超微粒子が好適に用いられ、インク受容層のように光沢性よりもインク吸収性が重要である場合には、非晶質シリカが好適に用いられる。
また、塗工層がインク受容層の場合、かかる無機微粒子(B)の好ましい平均粒子径は、0.1〜50μm(さらには0.3〜30μm、特には0.5〜20μm)であり、かかる平均粒子径が0.1μm未満の場合は、インク受容層中の空隙が小さくなり、インクの吸収性が低下し、フェザリングや画像斑の原因となる場合があり、逆に50μmを超えるとインク受容層表面の平滑性が低下し、マットタイプの場合には表面のざらつきにより質感が低下し、その上に光沢層を設ける場合にも、光沢層の厚みを厚くしないと光沢性が得られなくなり、結果としてインク吸収性が低下するため、好ましくない。
また、塗工層がインク受容層の場合、PVA系樹脂(A)と無機微粒子(B)の含有割合(A/B)は、5/100〜100/100(さらには10/100〜50/100、特には10/100〜30/100)(重量比)であることが好ましい。かかる含有割合(A/B)が100/100を超えると空隙の減少によりインクの吸収能が低下して、フェザリングやブリーディングの原因となる場合があり、逆に5/100を下回ると、無機粒子の脱落や、かかる層の上に光沢層を塗布する際、湿潤状態での表面強度の低下による層はがれが起こる場合があるため、好ましくない。
本発明の記録用媒体は、その塗工層が記録用媒体の光沢層、インク受容層のいずれの場合に対しても適用できる。かかる記録用媒体のインク受容層は、支持基材上にPVA系樹脂(A)と無機微粒子(B)を含有する塗工液を塗工して製造され、光沢層は予め塗工されたインク受容層の上に、かかる塗工液を塗工して製造される。
かかる塗工液中の総固形分は、特に限定されないが、塗工液全体の5〜60重量%(さらには10〜50重量%、特には10〜30重量%)であることが好ましく、かかる総固形分が5重量%未満では乾燥負荷が大きくなると共に、塗工層の厚みの均一性が低下する場合があり、逆に60重量%を超えると、塗工液が高粘度となり、高速での塗工が困難となり、作業性が低下することがあるため好ましくない。
塗工液の塗布量は、インク受容層の場合には、乾燥後の厚みが3〜100μm、(さらには5〜80μm、特には10〜50μm)になるようにするのが好ましく、光沢層の場合には、乾燥後の厚みが1〜20μm、(さらには1〜10μm、特には1〜5μm)になるようにするのが好ましい。
本発明に使用できる架橋剤としては、有機系架橋剤として、アルデヒド系化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、グルタルジアルデヒド等)、アミノ樹脂(尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン樹脂等)、エポキシ系化合物(エポキシ樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等)、ヒドラジド化合物(アジピン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等)、酸無水物、イソシアネート化合物(ポリイソシアネート、ブロックイソシアネート等)が挙げられる。また、無機系架橋剤として、ホウ素化合物(ホウ酸、ホウ酸塩等)、チタン化合物(テトラアルコキシチタネート等)、アルミニウム化合物(硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等)、リン化合物(亜リン酸エステル、ビスフェノールA変性ポリリン酸等)、変性シリコーン化合物(アルコキシ変性シリコーン、グリシジル変性シリコーン等)、ジルコニウム化合物(クロロヒドロキシオキソジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル(第一稀元素化学製「ジルコゾールZN」)等)、が挙げられる。また、これらの架橋剤を二種類以上併用することも可能である。
また、乾燥前の湿潤状態で、あるいは一旦乾燥させた後に再湿潤液で処理し、キャストドラムに圧接して乾燥させることで、表面光沢性・平滑性を付与する方法も、好ましく用いられる。
なお、例中「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000g、メタノール400g、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン120g(6モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.06モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、67℃で重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が89%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシー1−ブテンの合計量1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂(A1)を得た。
[1H−NMR]
1.2〜1.5ppm:メチレンプロトン、1.8ppm:メチンプロトン(変性種に起因)、3.5ppm:1級メチロールのメチレンプロトン、3.82〜3.84ppm:メチンプロトン、4.13〜4.6ppm:水酸基、4.25ppm:ジオール水酸基
製造例1において、ケン化の途中でサンプルを抜き取ることによりPVA系樹脂(A2)〔部分ケン化物(ケン化度89.1モル%)を得た。該PVA系樹脂(A2)の1H−NMRスペクトルの帰属は以下の通り。
1.36〜1.8ppm:メチレンプロトン、1.93〜1.95ppm:メチルプロトン、3.5ppm:1級メチロールのメチレンプロトン、3.8ppm:メチンプロトン、4.15〜4.57ppm:水酸基、4.3ppm:ジオールの水酸基
製造例1と同様の手法を用い、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの配合量を変更して、ケン化度98.3モル%、平均重合度920、1,2−ジオール構造単位の含有量14.8モル%のPVA系樹脂(A3)を得た。
製造例1と同様の手法を用い、メタノールの配合量を変更して、ケン化度99.2モル%、平均重合度1620、1,2−ジオール構造単位の含有量3.3モル%のPVA系樹脂(A4)を得た。
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1300g、メタノール
260g、ビニルエチレンカーボネート51.7g(3モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.04モル%(対仕込み酢酸ビニルモノマー)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。重合を開始して2時間後に、更にアゾビスイソブチロニトリル0.04モル%(対初期の仕込み酢酸ビニルモノマー)を添加し、更に重合を続けた。その後、酢酸ビニルの重合率が85%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化及び脱炭酸を行った。ケン化及び脱炭酸が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したPVA系樹脂(A5)を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
得られたPVA系樹脂(A5)のケン化度は99.2モル%であり、重合度は1260であった。また、1,2−ジオール構造単位の含有量は3.1モル%であった。
[1H−NMR]
1.376〜1.538ppm:メチレンプロトン、3.528ppm:1級メチロールのメチレンプロトン、3.849ppm:メチンプロトン、4.139〜4.668ppm:水酸基
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000g、メタノール100g、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン14.9g(1モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.045モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、68℃で重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度30%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モルに対して9ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。かかるケン化物を3Nの塩酸(水/メタノール=1/1の混合溶媒)中に分散させ、60℃で脱ケタール化を行い、生成したPVA系樹脂(A6)を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
得られたPVA系樹脂(A6)のケン化度は99.3モル%であり、平均重合度は1110、1,2−ジオール構造単位の含有量は0.9モル%であった。
[1H−NMR]
1.25ppm:メチルプロトン(ジメチルケタール体のメチル)、1.31〜1.33ppm:メチルプロトン(ジメチルケタール体のメチル)、1.38〜1.66ppm:メチレンプロトン、1.87〜1.99ppm:メチルプロトン、3.84〜3.91ppm:メチンプロトン、4.14〜4.55ppm:水酸基
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1300g、メタノール520g、グリセリンモノアリルエーテル39.9g(2モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.07モル%(対仕込み酢酸ビニルモノマー)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。重合開始2時間後に重合開始剤を0.05モル%、5.1時間後に0.05モル%、6時間後に0.05モル%追加仕込みを行った。なお、グリセリンモノアリルエーテルの連鎖移動定数は0.017である。酢酸ビニルの重合率が70%となった時点で、重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モルに対して9ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。かかるケン化物を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、PVA系樹脂(A7)を得た。
得られたPVA系樹脂(A7)のケン化度は99.2モル%であり、重合度は860、1,2−ジオール構造単位の含有量は1.7モル%であった。
[1H−NMR]
1.363〜1.508ppm:メチレンプロトン、1.8〜2.0ppm:残アセチル基のメチルプロトン、3.826ppm:メチンプロトン、3.98〜4ppm:1,2−ジオール由来の水酸基、4.140〜4.568ppm:水酸基
ケン化度95.2モル%、平均重合度940の未変性PVAに、酢酸/PVA(重量比)が0.15となるように酢酸を加えて60分間膨潤させた後、ジケテンをPVA/ジケテン(重量比)が7.3となるように加えて反応させ、その後メタノールで洗浄して、70℃で6時間乾燥して、アセト酢酸エステル基含有3.5モル%、ケン化度95.2モル%、平均重合度940のアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(A8)を得た。得られたPVA系樹脂(A8)の粘弾性を特開2003−145918号公報に記載の方法で測定したところ、tanδのピーク最大値は0.46であった。
重合缶にポリオキシエチレンアリルエーテル(平均鎖長n=10)14.5部と酢酸ビニル15部(全使用量の15%)、メタノール10部を仕込み、還流状態になるまで昇温した後、20分間還流させてから、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対前酢酸ビニル)仕込んだ。次いで、30分重合させた後、酢酸ビニル85部(全使用量の85%)を重合缶中へ5時間30分かけて、ポンプにより一定速度で滴下仕込みしながら、重合反応を行い、滴下仕込み終了後、30分間反応を追い込み、オキシアルキレン基含有ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。
次いで、該液からモノマーを追い出し、メタノールを添加してポリ酢酸ビニル濃度を50%に調整してから、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モルに対して5ミリモルの割合で加えて、バッチ式ケン化(35℃で約70分)を行い、その後酢酸を加えて中和して、目的とするポリオキシエチレン基含有PVA系樹脂(A9)を得た。
得られたPVA系樹脂(A9)は、ケン化度90モル%、平均重合度900、ポリオキシエチレン基含有量18.8%、DSCにより測定される結晶化度は27%で上述の(1)式を満足する(27≦−1.12×18.8+58.1=37.04)ものであった。
PVA系樹脂(A1)15部を水85部に溶解させたものに、コロイダルシリカ(B)〔(WRグレース社製「Ludox AS−40」、粒径20nm、固形分40%)をPVA系樹脂(A)/コロイダルシリカ(B)=1/2(固形分重量比)となるように混合し、ホモジナイザー(特殊機化工業社製「T.K.ROBOMICS」)にて5000rpmで5分間攪拌し、固形分15%の塗工液を作製した。
かかる水分散液を坪量270g/m2の上質紙上に50μmのアプリケーターにて塗工し、105℃の熱風乾燥機中で5分間乾燥させて厚み7.5μmの塗工層を形成してインクジェット記録用媒体を得た。
得られたインクジェット記録用媒体を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
自動走査吸液計(熊谷理機工業社製「KM500win」)を使用し、インクモデル物質(水/エチレングリコール(=7/3)混合溶液)を試験液として、インクジェット記録用媒体への液体浸透試験を行い、そのデータから接触時間50ミリ秒時の吸液量を求め、インク吸収性の指標とした。
変角光度計(日本電色工業社製「VG−Σ80」)を使用し、インクジェット記録用媒体表面の法線に対して60度の光沢度を測定した。
インクジェット記録用紙に、インクジェットプリンター(エプソン社製「PM−950C」)にて、マゼンタ単色でベタ印字し、40℃、90%RHで1日放置した後の印字部の画像濃度をマクベス濃度計(マクベス社製「RD914型」)にて測定した。
実施例1において、PVA系樹脂(A)として製造例2〜3によるPVA系樹脂(A2〜A3)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、PVA系樹脂(A)としてケン化度88.2モル%、重合度860の未変性PVA(比較例1)、ケン化度99.2モル%、重合度900の未変性PVA(比較例2)、製造例8によるアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(A8)(比較例3)、製造例9によるポリオキシアルキレン基含有PVA系樹脂(A9)(比較例4)、および製造例4〜7によるPVA系樹脂(A4〜A7)(比較例14〜17)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様の評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1において、PVA系樹脂(A)/コロイダルシリカ(B)の重量比を1/3とした以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8において、PVA系樹脂(A)として製造例2によるPVA系樹脂(A2)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8において、PVA系樹脂(A)として製造例8によるアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(A8)(比較例5)、製造例9によるポリオキシアルキレン基含有PVA系樹脂(A9)(比較例6)、および製造例5によるPVA系樹脂(A5)(比較例18)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1において、支持基材を上質紙に替えてPETフィルム(厚み100μm)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得た。
得られたインクジェット記録用媒体を用いて、上記評価に加えて透明性の評価を行った。結果を表3に示す。
ヘイズメーター(日本電飾社製「NDH2000」)を用い、かかるインクジェット記録用媒体のヘイズ値を測定した。
実施例11において、PVA系樹脂(A)として製造例2によるPVA系樹脂(A2)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
実施例9において、PVA系樹脂(A)としてケン化度88.2モル%、重合度860の未変性PVA(比較例7)、ケン化度99.2モル%、重合度900の未変性PVA(比較例8)、製造例8によるアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(A8)(比較例9)、製造例9によるポリオキシアルキレン基含有PVA系樹脂(A9)(比較例10)、および製造例5によるPVA系樹脂(A5)(比較例19)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例1において、コロイダルシリカ(B)に替えて非晶質シリカ(B)〔トクヤマ社製「ファインシールX−45」、平均粒径5μm〕を用い、インク定着剤としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(日東紡社製「PAS−H−5L」)を用い、その配合比率を、PVA系樹脂(A)/シリカ(B)/インク定着剤=100/15/5(重量比)とした以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得た。
得られたインクジェット記録用媒体を用いて、同様の評価を行った。結果を表4に示す。
実施例14において、PVA系樹脂(A)として製造例2によるPVA系樹脂(A2)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
実施例14において、PVA系樹脂(A)としてケン化度88.2モル%、重合度860の未変性PVA(比較例11)、ケン化度99.2モル%、重合度900の未変性PVA(比較例12)、製造例8によるアセト酢酸エステル基含有PVA系樹脂(A8)(比較例13)、製造例9によるポリオキシアルキレン基含有PVA系樹脂(A9)(比較例14)、および製造例5によるPVA系樹脂(A5)(比較例20)を用いた以外は同様にしてインクジェット記録用媒体を得て、同様の評価を行った。結果を表4に示す。
Claims (5)
- 支持基材上に、一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を含有し、かかる1,2−ジオール構造単位の含有量が4〜10モル%であるポリビニルアルコール系樹脂(A)および無機微粒子(B)を含有してなる塗工層を有することを特徴とする記録用媒体。
- 無機微粒子(B)が、非晶質シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ、アルミナゾルのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の記録用媒体。
- 塗工層が光沢層であることを特徴とする請求項1、2いずれか記載の記録用媒体。
- 塗工層がインク受容層であることを特徴とする請求項1、2いずれか記載の記録用媒体。
- インクジェット記録用途に用いることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の記録用媒体。
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