JP4827464B2 - 記録用媒体、記録用媒体の無機微粒子含有層形成用塗布液、および記録用媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
まず、本発明で用いられるAA化PVA系樹脂(A)について、詳しく説明する。
本発明で用いるAA化PVA系樹脂(A)は、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する。)系樹脂にアセト酢酸エステル基を導入したもので、かかるAA化PVA系樹脂(A)を得るには、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡略で、品質の良いAA化PVA系樹脂(A)が得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法で製造するのが好ましく、かかる方法について説明するが、これに限定されるものではない。
また、ケン化を行うときの温度は、とくに制限されないが、通常10〜70℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
l(OH)=[2(OH,OH)+(OH,OR)]/(OH,OR)
(ただし、(OH,OR)、(OH,OH)の各吸収強度比は、いずれもモル分率で計算するものとする。)
かかる水酸基平均連鎖長およびその測定方法に関しては、「ポバール」(発行所:高分子刊行会、248ページ、1981)およびMacromolecules,Vol.10,p532(1977)に詳述されている。
(i) 膨潤度=(X−Y)/Y≧1.0
(ii) 溶出率(%)=(Z/30)×100≧3.0
X:PVA系樹脂30gに270gの水を加えて、25℃で24時間放置した後 、真空度100mmHgの吸引で10分濾過して濾紙(No.2)上に残存 する吸水膨潤したPVA系樹脂の重量(g)
Y:上記吸水膨潤したPVA系樹脂を105℃で、乾燥し、恒量となった時の 重量(g)
Z:上記濾過によって得られた濾液から、水及び揮発成分を留去した時の不揮 発成分の重量(g)
かかる膨潤度が小さすぎたり、あるいは溶出率が小さすぎると、粒度別AA化度分布が3.0以下のAA化PVA系樹脂(A)を得ることが困難となる。
周期律表第4A族元素のうち、自然界に存在するのはジルコニウム、チタニウム、ハフニウムの三種であり、本発明では特にジルコニウム、チタニウムを含有する化合物であり、さらに水性の塗布液中に配合して使用されることから、水溶性であることが好ましい。
中でも、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、酢酸ジルコニル、塩基性塩化ジルコニル、酸塩化ジルコニル、硝酸ジルコニルなどのジルコニル化合物が好ましく、特に、塩基性塩化ジルコニル、硝酸ジルコニルが本願発明の目的を顕著に発揮できる点で好適に用いられる。
(式中、Mは周期律表第4A族元素)
なお、アセトアセチル基と金属系架橋剤との反応および構造については、「金属キレート化合物」(発行所:共立出版、136ページ他、昭和35年)、に詳述されている。
本発明の記録用媒体の無機微粒子含有層に用いられる無機微粒子(C)としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、非晶質シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ、気相法アルミナ、アルミナ水和物、アルミナゾル、水酸化アルミニウム、ゼオライト、水酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、などが挙げられ、用途に応じて選択されて用いられる。
かかるカルシウム塩(D)は、具体的には、カルシウム陽イオンと、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、等の無機陰イオンが結合した化合物を挙げることができ、中でも本発明の効果が顕著に発揮される点で、塩化カルシウム、硝酸カルシウムが好適に用いられる。
例えば、AA化PVA系樹脂(A)の他に公知一般のPVA系樹脂を併用してもよく、そのようなPVA系樹脂としては、未変性一般PVA、ダイアセトンアクリルアミド変性PVA、シラノール変性PVA、エチレン変性PVA、スルホン酸変性PVA、アミン変性PVA、アクリルアミド変性PVA、末端SH変性PVA、アクロレイン変性PVA、カルボキシル変性PVA、アルキレンオキシド変性PVA、PVA/ポリアルキレンオキシドグラフト共重合体、PVA/ポリ(メタ)アクリル酸(および/またはその塩)ブロック共重合体、長鎖アルキルビニルエーテル変性PVA、VEOPA変性PVA、主鎖1,2−グリコール変性PVA、側鎖1,2−グリコール変性PVA、などを挙げることができる。
かかるホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸のナトリウム、カリウム等の金属塩、ホウ酸のエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールエステル、ホウ砂などが挙げられ、特にホウ酸、ホウ酸塩およびホウ砂が本願発明の目的を顕著に発揮できる点で好適に用いられる。
なお、かかる定着剤の使用量は、AA化PVA(A)100重量部に対して1〜400重量部程度が用いられる。
かかる発色性物質の例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド[クリスタルバイオレットラクトン]、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、 3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロロフタリド、3−ジメチルアミノ−6−メトキシフルオラン、7−アセトアミノ−3−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3 −ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3,6−ビス−β−メトキシエトキシフルオラン、3,6−ビス−β−シアノエトキシフルオラン等のトリフェニルメタン系染料のロイコ体が挙げられる。
本発明の記録用媒体は、支持基材上に無機微粒子含有層を有するもので、かかる無機微粒子含有層は、一般的には支持基材上に無機微粒子とバインダーとを含有する水性塗布液を塗工し、乾燥することで得ることができる。
支持基材としては 特に制限されるものではないが、例えば、紙(マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙、一般上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷用紙、上・中・下級紙、新聞用紙、剥離紙、カーボン紙、ノンカーボン紙、グラシン紙など)、樹脂コート紙、合成紙、不織布、布、金属箔、ポリオレフィン樹脂(例えばポリエチレン、PET、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の熱可塑性樹脂からなるフィルムやシートが使用でき、インクジェット記録用マット紙あるいは光沢紙の場合はセルロースを原料とする紙基材が、インクジェット記録用フォトライク光沢紙の場合はフィルムあるいは樹脂コート紙などが主として用いられる。
塗工後は乾燥すればよく、乾燥条件としては特に制限されないが、通常インクジェット記録用媒体製造時は70〜150℃程度で0.5〜20分程度、感熱記録用媒体製造時の場合は高温で乾燥すると感熱発色してしまうため、40〜90℃程度で0.5分〜1時間程度が好適である。
以上、インクジェット記録用媒体や感熱記録用媒体について説明したが、本発明の記録用媒体は、かかる媒体以外にも、水性インクを用いたペンプロッターのような記録機器や筆記器具等に用いられる記録用媒体としても可能である。
なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1000部、メタノール200部、およびアゾビスイソブチロニトリル0.05モル%(対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら温度を上昇させ、沸点下で3時間重合を行った。酢酸ビニルの重合率が50%となった時点で、m−ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し重合体のメタノール溶液(樹脂分41%)を得た。続いて、該溶液を酢酸メチル(誘電率7.03)で希釈して、濃度29.5%(ケン化溶媒の誘電率23.7)に調製してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら水酸化ナトリウムを加えて中和した。これに更に水酸化ナトリウムをポリマー中の酢酸ビニル単位1モルに対して30ミリモル加えてケン化し、析出物をろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、さらに80℃で60分熱処理してPVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.1モル%であり、平均重合度は、JIS K6726に準じて分析を行ったところ、2300であり、酢酸ナトリウムの含有量は0.8%であった。また、膨潤度は3.0であり、溶出率は6.7%であった。
製造例1において酢酸ビニルの重合時間を4時間として、重合率が75%となった時点で重合を終了し、ケン化工程における水酸化ナトリウムの添加量をポリマー中の酢酸ビニル単位1モルに対して14ミリモルとした以外は製造例1と同様に行い、ケン化度90モル%、平均重合度2000、膨潤度105、溶出率55%のPVA系樹脂を得た。
次に、該PVA系樹脂を、ジケテンの使用量を28部とした以外は製造例1と同様にアセト酢酸エステル基を導入し、ケン化度90.0モル%。AA化度2.0モル%のAA化PVA系樹脂(A2)を得た。かかるAA化PVA系樹脂(A2)の水酸基平均連鎖長は15であった。また、かかるAA化PVA系樹脂(A2)の粒度別AA化度は、44〜74μm:2.4モル%、74〜105μm:2.2モル%、105〜177μm:2.0モル%、177〜297μm:2.0モル%、297〜500μm:1.8モル%、500〜1680μm:1.6モル%で、粒度別AA化度分布(最高AA化度/最低AA化度)は1.5であった。
製造例1においてケン化時に使用する水酸化ナトリウムの添加量をポリマー中の酢酸ビニル単位1モルに対して20ミリモルとした以外は製造例1と同様に行い、ケン化度98.5モル%、平均重合度2300、膨潤度4.0、溶出率9.5%のPVA系樹脂を得た。
次に、該PVA系樹脂を、ジケテンの使用量を60部とした以外は製造例1と同様にアセト酢酸エステル基を導入し、ケン化度98.5モル%。AA化度4.4モル%のAA化PVA系樹脂(A3)を得た。かかるAA化PVA系樹脂(A3)の水酸基平均連鎖長は20であった。また、かかるAA化PVA系樹脂(A3)の粒度別AA化度は、44〜74μm:5.3モル%、74〜105μm:4.9モル%、105〜177μm:4.4モル%、177〜297μm:4.4モル%、297〜500μm:4.0モル%、500〜1680μm:3.5モル%で、粒度別AA化度分布(最高AA化度/最低AA化度)は1.5であった。
pH=12.0の水酸化カルシウム水溶液162部に、非晶質シリカ〔トクヤマ社製「ファインシールX−45」、平均粒子径4.5μm〕29部を分散させながら徐々に加え、これにAA化PVA系樹脂(A1)の10%水溶液43部、インク定着剤としてポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド〔日東紡社製「PAS−H−5L」、28%水溶液〕16部を順に添加し、pH=6.0の水性液を得た。これに塩基性塩化ジルコニル〔第一稀元素化学工業社製「ジルコゾールZC−2」〕2.3部を加えたあと、ホモジナイザー〔特殊機化工業社製「T.K.ROBOMICS」〕にて2500rpmで5分間撹拌し、固形分15%の塗布液を作製した。
かかる塗布液を、坪量64g/m2の上質紙にクリアランス75μmのアプリケーターで固形分換算が13g/m2となるように塗工し、その後、熱風乾燥機中105℃で10分間乾燥して、無機微粒子含有層を形成させて記録用媒体を得た。
得られた記録用媒体に対して、以下の要領で無機微粒子含有層の表面強度と印刷時のインクにじみ、耐水性の評価を行った。結果を表1に示す。
得られた記録用媒体の無機微粒子含有層の表面にニチバン社製「セロハンテープ」(幅18mm)を塗工表面に貼り付け、その上からハンドローラー(重量2kg)を5往復させて荷重をかけ、これを島津製作所社製オートグラフ「AG−100」にて180度方向に剥離(テストスピード100mm/分)させ、その際の剥離強度(gf/mm)を測定した。
記録用媒体の無機微粒子含有層面にエプソン社製インクジェットプリンター「PM−950C」を用い、印字設定を「PM写真用紙・きれい」にして、黄色ベタ印字(2回)したその上に赤色ベタ印字(2回)し、さらにその上に青色でおよそ0.5mm巾の直線を印字し、印字直後の印字境界部分のにじみを目視観察して以下の通り評価した。
◎・・・ほとんどにじみが認められなかった
○・・・ごくわずかににじみが認められた
△・・・にじみが認められた
×・・・著しいにじみが認められた
記録用媒体の無機微粒子含有層表面にイオン交換水1滴を垂らし、指先で10往復擦った際の様子を観察し、以下の通り評価した。
○・・・特に変化無し
△・・・わずかに表面が損なわれ、少量のシリカ粉の脱落が見られる
×・・・表面が著しく損なわれ、多量のシリカ粉が脱落し、指先に白く付着する
実施例1において、塩基性塩化ジルコニルに替えて硝酸ジルコニル〔第一稀元素化学工業社製「ジルコゾールZN」〕を用いた以外は実施例1と同様に行って記録溶媒を得て、同様に評価した。
実施例1において、水酸化カルシウム水溶液の代わりに水酸化ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例1と同様に行い、得られた記録用媒体を同様に評価した。
実施例1において、水酸化カルシウム水溶液の代わりにアンモニア水溶液を使用した以外は実施例1と同様に行い、得られた記録用媒体を同様に評価した。
実施例1において、塩基性塩化ジルコニルのかわりに乳酸チタン系架橋剤〔松本製薬工業社製「TC−310」〕を使用した以外は実施例1と同様に行い、得られた記録用媒体を同様に評価した。
実施例1において、AA化PVA系樹脂(A1)の代わりに(A2)を使用した以外はは実施例1と同様に行い、得られた記録用媒体を同様に評価した。
実施例1において、AA化PVA系樹脂(A1)の代わりに(A3)を使用した以外はは実施例1と同様に行い、得られた記録用媒体を同様に評価した。
実施例1において、水酸化カルシウム水溶液を使用しなかった以外は実施例1と同様に行い、得られた記録用媒体を同様に評価した。
実施例1において、AA化PVA系樹脂(A1)の代わりに、重合度2500、鹸化度99.0モル%の未変性PVAを使用した以外は実施例1と同様に行い、得られた記録用媒体を同様に評価した。
Claims (7)
- 支持基材上に、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)と周期律表第4A族元素を含有する化合物からなる架橋剤(B)の反応生成物と無機微粒子(C)を含有する層を有する記録用媒体において、かかる層中にカルシウム塩(D)を含有することを特徴とする記録用媒体。
- インクジェット記録用であることを特徴とする請求項1記載の記録用媒体。
- 感熱記録用であることを特徴とする請求項1記載の記録用媒体。
- アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)、周期律表第4A族元素を含有する化合物からなる架橋剤(B)、無機微粒子(C)、カルシウム塩(D)、および水を含有することを特徴とする、記録用媒体の無機微粒子含有層形成用塗布液。
- pHが3〜7であることを特徴とする請求項4記載の塗布液。
- 無機微粒子(C)、水酸化カルシウム(D’)を含有する水性液に、アセト酢酸エステル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(A)、周期律表第4A族元素を含有する化合物からなる架橋剤の酸性水溶液(B')を順次添加してなることを特徴とする、請求項4または5記載の塗布液。
- 支持基材上に請求項4〜6いずれか記載の塗布液を塗布、乾燥してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の記録用媒体の製造方法。
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