JP5597194B2 - ビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤 - Google Patents

ビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤 Download PDF

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Description

本発明は表面のひび割れがなく、インク吸収性に優れるインク受理層を有するインクジェット記録材を効率よく製造するのに有用なポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤に関する。
ポリビニルアルコールで代表されるビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)は水溶性の合成高分子として知られており、その強度特性を利用して合成繊維ビニロンの原料などに用いられている。また、その優れた皮膜形成能、界面活性能、水素結合形成能などの特徴を利用して紙加工剤、繊維用糊剤、分散剤、接着剤およびフィルムなどにも利用されている。中でも紙加工用途に関してPVAは、一般紙の表面サイズ剤、アート紙・コート紙のアンダーサイズ剤、蛍光染料の分散剤、インクジェット記録材における充填材のバインダーなどとして、印刷物の品質向上のために利用されている。
最近では、インクジェットプリンターの利用が拡大し、商業印刷におけるカラープルーフ、デザイン分野におけるデザインイメージ出力、オーバーヘッドプロジェクターの原稿などにインクジェット記録材が使用されている。これらの用途においてインクジェット記録材に要求される特性としては、インク受理層表面の光沢が高いこと、インク受理層の透明性が高いこと、画像濃度が高いこと、色再現性が良好なこと、インク吸収性が高いこと、ドット再現性が良好であることなどが挙げられる。
インクジェット記録材への上記要求に対し、無機微粒子と親水性バインダーからなる空隙層をインク受理層として設けた記録材が知られている(特許文献1および2)。この記録材は毛細管現象を利用したインク吸収メカニズムにより、高いインク吸収性と耐水性を両立させている。
しかしながら、インク受理層に毛細管を形成させるためには通常、バインダーに対して微粒子を多量に含有させる必要がある。この場合、微粒子に対してバインダーの比率が低くなり、インク受理層は非常に剛性が高く硬いものとなる。そのため、無機微粒子と親水性バインダーからなる塗工液を基材に塗工してインク受理層を形成させる際に、塗膜の乾燥段階での内部応力の発生、または微小な異物の混入によって、インク受理層に容易にひび割れが発生しやすいという問題点がある。
このような塗膜のひび割れの問題に対して、塗膜を乾燥する前に塗膜を増粘させてひび割れを防ぐ方法が考えられ、高重合度ポリビニルアルコールに硬化剤としてホウ酸を添加した塗工液を用い、塗工後に塗膜を20℃以下に冷却する方法が提案されている(特許文献3)。この方法では、塗膜を20℃以下に冷却すると、ポリビニルアルコールとホウ酸との相互作用により塗膜に強固な3次元構造が形成され、その結果、ひび割れが防止できるとされている。しかしながら、この方法では塗工後に塗膜の温度を一旦下げる必要があるため、エネルギー的な損失が大きく、塗膜形成に時間を要し、生産速度を上げることができないという問題があった。さらに、この方法では高重合度のポリビニルアルコールを使用するために塗工液の粘度が高く、その取り扱い性の点で塗工液の濃度を低く抑える必要があった。そのため、この方法には塗膜乾燥に時間を要し、生産速度を上げることができないという問題も存在した。
PVAからなる塗工液の粘度を制御する方法としては、上述のようにPVAに対して反応性を有する添加剤を加える方法以外に、変性したPVAを使用する方法も考えられる。PVAを変性して、温度変化に対するPVAの溶液粘度の挙動を制御しようとする試みは少ないが、水溶液が感熱応答性を示すPVAとして、ビニルアルコール系重合体成分および水溶液が曇点を示すポリアルケニルエーテル成分からなるブロック共重合体およびグラフト共重合体が知られている。ポリビニルアルコールとポリ(2−メトキシエチルビニルエーテル)とのブロック共重合体の場合、40〜90℃の温度域における該ブロック共重合体の水溶液粘度の温度依存性が、ポリビニルアルコールの場合に比べて小さい(特許文献4)。また、ポリビニルアルコールを幹成分とし、ポリ(2−メトキシエチルビニルエーテル)を枝成分とするグラフト共重合体の場合、幹成分および枝成分に使用している各重合体の水溶液が曇点を示す温度付近において、該グラフト重合体の水溶液粘度が上昇し、水溶液が白濁する(特許文献5)。
また、ポリオキシアルキレン基を有するPVAのポリオキシアルキレン基の含有量やポリオキシアルキレン基中の繰り返し単位の数を調節することにより、PVAに感温増粘性を付与し、その性質を応用したひび割れの少ないインクジェット記録材の製造方法(特許文献6)も開発されている。
しかしながら特許文献6に記載されているPVAは、主としてポリオキシプロピレン基からなる単一のポリオキシアルキレン基を有しており、感温増粘性を有するものの、その発現温度が高いため、該PVAを含有するコーティング剤を塗工して得られた塗膜を加熱乾燥する際に、塗膜表面が乾燥した後に塗膜の粘度が上昇するため、塗膜の乾燥によるひび割れに対して若干の効果はあるものの、それを完全に防止するのは困難であった。
特開昭60−204390号公報 特開平7−137434号公報 特開2001−150805号公報 特開平6−136036号公報 特開平11−322866号公報 特開2005−42008号公報
本発明の目的は、表面のひび割れがなく、光沢性が高く、インク吸収性に優れ、かつ透明性の高いインク受理層を有するインクジェット記録材を効率よく製造するのに有用なPVAを含有するコーティング剤を提供するものである。
また、本発明は上記コーティング材を基材に塗工してなるインクジェット記録剤などの塗工物を提供することを目的とする。
本発明者らは、塗膜表面が乾燥する前に増粘するコーティング剤を開発するべく鋭意研究を重ねた結果、オキシブチレン基を特定量有するポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系共重合体(以下、POA変性PVAと略することがある)を含有するコーティング剤が、低温領域においても感温増粘性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、オキシブチレンユニットを含有するポリオキシアルキレン(POA)基を有する下記一般式(II’)で示される単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体であり、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度Pが500〜5000であり、けん化度が20〜99.99モル%であり、POA基変性量Sが0.1〜10モル%であるPOA変性PVAを含有するコーティング剤である。
Figure 0005597194
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3は水素原子または−COOM基を表し、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を意味する。R4は水素原子、メチル基または−CH −COOM基を表し、ここでMは前記定義のとおりである。Xは−O−、−CH −O−、−CO−、−(CH −、−CO−O−または−CO−NR5−を表し、ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を意味する。kはメチレンユニットの繰り返し単位を表し、1≦k≦15である。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。ここで、繰り返し単位数mで表されるユニットをユニット1と呼び、繰り返し単位数nで表されるユニットをユニット2と呼ぶことにする。ユニット1とユニット2の配置は、ランダム状、ブロック状のどちらの形態になっても良い。
本発明のコーティング剤を基材に塗工してなる塗工物、特に本発明のコーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材が本発明の好適な実施態様である。
本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤は、低温領域に感温増粘性を有しており、これを塗工して得られる塗膜は、乾燥によるひび割れが無く、非常に高い光沢度を有している。
本発明で用いるPOA変性PVAは、記一般式(I)で示されるPOA基を側鎖に有する。
Figure 0005597194
式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。ここで、繰り返し単位数mで表されるユニットをユニット1と呼び、繰り返し単位数nで表されるユニットをユニット2と呼ぶことにする。ユニット1とユニット2の配置は、ランダム状、ブロック状のどちらの形態になっても良い。
本発明のPOA変性PVAはPOA基変性量Sが0.1〜10モル%である必要がある。POA基変性量Sが10モル%を超えると、POA変性PVA一分子あたりに含まれる疎水基の割合が高くなり、該PVAの水溶性が低下する場合がある。一方、POA基変性量Sが0.1モル%未満の場合、POA変性PVAの水溶性は優れているものの、該PVA中に含まれるPOA基の数が少なく、POA変性に基づく物性が発現しない場合がある。
POA基変性量Sとは、PVAの主鎖メチレン基に対するPOA基のモル分率で表される。POA基変性量Sの下限は0.2モル%以上が好ましく、0.3モル%以上がより好ましい。POA基変性量Sの上限は2モル%未満が好ましく、1.5モル%以下がより好ましい。
POA変性PVAのPOA基変性量Sは、該PVAの前駆体であるPOA変性ポリ酢酸ビニル(以下、ポリ酢酸ビニルをPVAcと略記することがある)のプロトンNMRから求めることができる。具体的には、n−ヘキサン/アセトンでPOA変性PVAcの再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のPOA変性PVAcを作成する。該PVAcをCDClに溶解させ、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて室温で測定する。ビニルエステルの主鎖メチンに由来するピークα(4.7〜5.2ppm)とユニット2の末端メチル基に由来するピークβ(0.8〜1.0ppm)から下記式を用いてPOA基変性量Sを算出する。
S(モル%)={(βのプロトン数/3n)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3n))}×100
nはユニット2の繰り返し単位数を表す。
POA変性PVAの粘度平均重合度Pは、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、該PVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
なお、粘度平均重合度を単に重合度と呼ぶことがある。
POA変性PVAの重合度は500〜5000である。重合度が5000を超えると、該PVAの生産性が低下し実用的でなく、重合度が500未満の場合、インク受理層における充填材のバインダーとして使用した際に、充填材に対するバインダー力が発現せず、インク受理層がもろくなって、満足なインクジェット記録材が得られないことがある。
POA変性PVAのけん化度は、JIS K6726に従って測定される。けん化度は、水溶性、水分散性である観点から20〜99.99モル%である必要があり、40〜99.9モル%が好ましい。けん化度が20モル%未満の場合には、POA変性PVAの水溶性が低下して、PVA水溶液を調製するのが困難であり、けん化度が99.99モル%を超えると、POA変性PVAの生産が困難になるので実用的でない。けん化度の下限は80モル%以上がより好ましく、85モル%以上がさらに好ましい。上限は99モル%以下が好ましい。
一般式(I)で示されるPOA基のユニット1の繰り返し単位数mは1≦m≦10である必要がある。mがこのような範囲である場合には、低温領域に感温増粘性が発現し、得られる塗膜の乾燥によるひび割れが防止される。1≦m≦5がより好ましく、1≦m≦3がさらに好ましく、1≦m≦2が特に好ましい。また、ユニット2の繰り返し単位数nは3≦n≦20である必要があり、5≦n≦18が好ましく、8≦n≦15が特に好ましい。nが3未満の場合、POA基同士の相互作用が発現せず、POA変性PVA水溶液の粘度が低い場合があり、nが20を超える場合、POA基の疎水性が高くなり、POA変性PVAの水溶性が低下する場合がある。
一般式(I)で示されるPOA基の含有量は、50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下がより好ましく、15重量部以下が特に好ましい。POA基の含有量が50重量部を超えると該PVAの疎水性が高くなり、水溶性が低下する場合がある。含有量の下限は2.5重量部以上が好ましい。
ここで、POA基の含有量とは、PVAの主鎖100重量部に対するPOA基の重量部(重量分率)で表される。POA基の含有量はPOA基変性量、ユニット1の繰り返し単位数m、ユニット2の繰り返し単位数n、POA変性PVAのけん化度を用いて計算される値である。前述のPOA基変性量Sが同等であっても、けん化度が高くなるにつれ、あるいはm又はnがが大きくなるにつれ、POA変性PVA中のPOA基の含有量は大きくなる。
本発明のPOA変性PVAの4重量%水溶液粘度を、ロータ回転数が6rpmの条件でBL型粘度計により測定したとき、20℃における粘度ηと40℃における粘度ηとの比η/ηが0.8以上であることが好ましい。粘度比η/ηは1.0以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、2.0以上が特に好ましい。粘度比η/ηが0.8未満の場合、POA基同士の相互作用が小さく、POA変性に伴う物性が発現しない場合がある。
また本発明のPOA変性PVAは、20℃、ロータ回転数6rpmの条件で測定した類似の重合度を有する無変性PVAの4重量%水溶液粘度をηとするとき、粘度比η/ηは1.2より大きいことが好ましく、1.5より大きいことがより好ましく、2.0より大きいことがさらに好ましく、5.0より大きいことが特に好ましい。ここで類似の重合度を有する無変性PVAとは、POA変性PVAの重合度の0.95倍〜1.05倍の範囲の重合度を有する無変性PVAを指し、POA変性PVAと同等のけん化度(POA変性PVAのけん化度のプラスマイナス1モル%)を有するものである。
POA変性PVAを製造するには、POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合をアルコール系溶媒中または無溶媒で行い、得られたPOA変性ビニルエステル系共重合体をけん化する方法が好ましい。POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行う際に採用される温度は0〜200℃が好ましく、30〜140℃がより好ましい。共重合を行う温度が0℃より低い場合は、十分な重合速度が得られにくい。また、重合を行う温度が200℃より高い場合、本発明で規定するPOA基変性量を有するPOA変性PVAを得られにくい。共重合を行う際に採用される温度を0〜200℃に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合により生成する発熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等があげられるが、安全性の面からは後者の方法が好ましい。
POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を行うのに用いられる重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の任意の方法を用いることができる。その中でも、無溶媒またはアルコール系溶媒中で重合を行う塊状重合法や溶液重合法が好適に採用され、高重合度の共重合物の製造を目的とする場合は乳化重合法が採用される。アルコール系溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらの溶媒は2種類またはそれ以上の種類を混合して用いることができる。
共重合に使用される開始剤としては、重合方法に応じて従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。さらには、上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤とすることもできる。また、レドックス系開始剤としては、上記の過酸化物と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
また、POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合を高い温度で行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVAの着色等が見られることがあるため、その場合には着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤を1〜100ppm(ビニルエステル系単量体に対して)程度添加することはなんら差し支えない。
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際して、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合しても差し支えない。使用しうる単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
また、POA基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に際し、得られる共重合体の重合度を調節することなどを目的として、本発明の主旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で共重合を行っても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、などのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類;ホスフィン酸ナトリウム1水和物などのホスフィン酸塩類が挙げられ、中でもアルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1〜10重量%が望ましい。
POA変性ビニルエステル系共重合体のけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒またはp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた加アルコール分解反応ないし加水分解反応を適用することができる。この反応に使用しうる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもメタノールまたはメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒に用いてけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
一般式(I)で示されるPOA基を有する不飽和単量体としては、例えば、下記の一般式(II)で示される不飽和単量体などが挙げられる。
Figure 0005597194
式中、R1は水素原子またはメチル基を表す。R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3は水素原子または−COOM基を表し、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を意味する。R4は水素原子、メチル基または−CH−COOM基を表し、ここでMは前記定義のとおりである。Xは−O−、−CH−O−、−CO−、−(CH−、−CO−O−または−CO−NR5−を表し、ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を意味する。kはメチレンユニットの繰り返し単位を表し、1≦k≦15である。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。
一般式(II)で示される不飽和単量体のR2としては水素原子、メチル基またはブチル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。さらに、一般式(II)で示される不飽和単量体のR1が水素原子であり、R2が水素原子またはメチル基であり、R3が水素原子であることが特に好ましい。
例えば、一般式(II)のR1が水素原子又はメチル基、R2が水素原子、R3が水素原子の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンモノメタクリレート、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンモノアリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルなどが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルが好適に用いられ、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルが特に好適に用いられる。
一般式(II)のR2が炭素数1〜8のアルキル基の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、一般式(II)のR1が水素原子又はメチル基、R2が水素原子、R3が水素原子の場合の例として上記に例示した不飽和単量体の末端のOH基が炭素数1〜8のアルコキシ基に置換されたものが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノビニルエーテルの末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が好適に用いられ、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミドの末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が特に好適に用いられる。
本発明のコーティング剤を基材に塗工してなる塗工物、特に、本発明のコーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材が本発明の好適な実施態様である。本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤は、インクジェット記録材の製造に好適に用いられる。本発明のPOA変性PVAは、温度変化に対する該POA変性PVA水溶液の粘度挙動を利用して、コーティング剤に好適に使用される。本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤を基材に塗工してインクジェット記録材を製造する場合、該POA変性PVAはインク受理層における充填材のバインダーとして好適に用いられる。ここで、インク受理層の中でも特に光沢度の高いものを光沢層と呼ぶことがある。
本発明のコーティング剤において、POA変性PVAをインク受理層または光沢層におけるバインダーとして用いる場合、POA変性PVAは単独で使用してもよく、他の水溶性または水分散性樹脂と併用してもよい。本発明のPOA変性PVAと併用することができる水溶性樹脂としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビヤゴム、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン変性PVA、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性メラミン樹脂などが挙げられる。本発明のPOA変性PVAと併用することができる水分散性樹脂としては、SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョンなどが挙げられる。
本発明のPOA変性PVAをインクジェット記録材のインク受理層におけるバインダーに使用する場合、インク受理層に用いられる充填材としては沈降性シリカ、ゲル状シリカ、気相法により合成されたシリカ(以下、気相法シリカと称する)、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、クレー、タルク、ケイソウ土、ゼオライト、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、サチンホワイト、有機顔料などが挙げられる。
本発明のPOA変性PVAをインクジェット記録材の光沢層におけるバインダーに使用する場合、光沢層に用いられる充填材の粒子径としては特に制限は無いが、30〜400nmが好ましく、80〜400nmがより好ましい。平均粒子径が30nmより小さい場合は、光沢層に毛細管が形成されにくいため、インクジェット記録材のインク吸収性が悪くなる。また、平均粒子径が400nmを超えると、光沢層表面の光沢性が著しく低下するため好ましくない。光沢層に用いられる充填材としては無機微粒子および有機微粒子のいずれもが用いられる。このような無機微粒子としては、コロイダルシリカ、気相法シリカ、アルミナゾル、酸化アルミニウム微粒子、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛などが挙げられ、これらの中でもコロイダルシリカ、気相法シリカ、アルミナゾル、酸化アルミニウム微粒子が好適に用いられる。一方、有機微粒子としては、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、スチレン/アクリル共重合体樹脂などの微粒子が挙げられる。
コロイダルシリカとは、水中に分散してコロイド状をなしている無定型シリカ粒子をいう。コロイダルシリカとしては、表面電荷が負に帯電したものが一般に使用できるが、さらにシランカップリング剤などの表面処理により正電荷を付与したもの、ないしはこれらの凝集体としたものも好適に用いられる。
気相法シリカとは、揮発性シラン化合物を酸水素炎中で加水分解することにより得られる二酸化ケイ素である。気相法シリカは平均粒子径が数十nmの球形の1次粒子からなり、最終粒子はこれら1次粒子の凝集体となる。この2次凝集体をビーズミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧式ホモジナイザーなどの粉砕手段により粉砕して得られる粒子径30〜400nmの微粒子が好適に用いられる。このような気相法シリカとしては、表面電荷が負に帯電したものが一般に使用できるが、さらに表面処理により正電荷を付与したものも好適に用いられる。
酸化アルミニウム微粒子としては、γ型結晶形態の酸化アルミニウム微粒子が使用される。γ型結晶形態の酸化アルミニウムは、1次粒子の平均粒子径を10nm程度にまで小さくすることが可能であるが、粉末状態では一般に1次粒子が2次凝集体を形成して、粒子径が数μmオーダーの粒子となる。この2次凝集体をビーズミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧式ホモジナイザーなどの粉砕手段により粉砕して得られる粒子径30〜400nmの微粒子が好適に用いられる。
本発明のPOA変性PVAをインクジェット記録材の光沢層における微粒子のバインダーに使用する場合、POA変性PVA/微粒子の重量比率に関しては特に制限されるものではないが、POA変性PVA/微粒子の重量比率が3/97〜50/50であることが好ましく、5/95〜40/60であることがより好ましく、8/92〜30/70であることがさらに好ましい。ビニルアルコール系重合体/微粒子の重量比率が、3/97より小さい場合は、バインダー量の不足により十分な強度を持った光沢層が得られない。また、POA変性PVA/微粒子の重量比率が、50/50より大きい場合は、インク吸収のために必要な毛細管の形成が困難になり、インク吸収性が劣る。
本発明のPOA変性PVAをインクジェット記録材のインク受理層または光沢層に用いる場合には、インクの定着剤としてカチオン性樹脂を併用することもできる。この目的に使用しうるカチオン性樹脂は、水に溶解したときに離解してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーからなり、これらの中でもオリゴマーまたはポリマーが好ましい。具体的なカチオン樹脂の例は、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、ポリビニルアミン共重合体、ポリアリルアミン共重合体、ジアリル・ジメチル・アンモニウムクロライド共重合体、ポリエチレンイミンなどであるが、これらに制限されるものではない。
上記のインクジェット記録材に用いられる基材としては、従来公知の透明性または不透明性の支持基体がいずれも使用できる。透明性の支持基体としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、セロハン、セルロイドなどのフィルム、シート、または透明性の高い紙などが挙げられる。不透明性の支持基体としては、一般の紙、顔料コート紙(アート紙、コート紙、キャストコート紙)、布、木材、金属板、合成紙、不透明化処理した合成樹脂系フィルムまたはシートなどが挙げられる。
本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤を基材に塗工してインクジェット記録材を製造する方法としては、該POA変性PVAおよび必要に応じて充填材、インクの定着剤などを、水性媒体に溶解または分散させてコーティング剤を調製し、得られたコーティング剤を従来公知のサイズプレス、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーターなどを用いて基材に塗工する方法が挙げられる。ここで、塗工温度については特に制限は無いが、10℃〜60℃であることが好ましく、より好ましくは20℃〜60℃、さらに好ましくは20℃〜35℃である。また、支持基体が紙である場合には、抄紙時に上記水溶液または水分散液を内添する方法も使用できる。
本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤を基材に塗工してインクジェット記録材を製造する場合、上記方法により支持基体上に塗工した後に、塗膜の温度を下げることなく、塗工温度より15℃以上高い温度で乾燥することが好ましい。この乾燥条件を満足することにより、インクジェット記録材のインク受理層または光沢層におけるひび割れ防止がより高度に達成される。
本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤を、インクジェット記録材のインク受理層または光沢層に使用することにより、塗工後において塗膜を一旦冷却することなく、塗工温度より高い温度で乾燥するだけで塗膜のひび割れ防止が達成できる。これにより、生産速度すなわち生産性が著しく向上し、かつ消費電力量などのユーティリティーコストが大きく節約でき、さらには冷却ゾーンの付帯設備を有していないコーティングラインで高光沢性のインクジェット記録材を製造することが可能となる。
このひび割れ防止発現機構については明らかでないが、以下のように推定している。塗工時の低温状態では、本発明のPOA変性PVAにおけるポリオキシアルキレン基はクラスター構造を有する水で水和され、ポリオキシアルキレン基同士の疎水性相互作用が阻害されている。一方、乾燥時の高温状態では、このポリオキシアルキレン基の水和が外れて、ポリオキシアルキレン基同士が疎水性相互作用により会合する。この現象により、高温状態におけるPOA変性PVAは、そのポリオキシアルキレン基同士の疎水基相互作用により分子間架橋を生じた状態となる。そのため、本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤は、塗工後に加熱することにより粘度上昇を起こし、さらに乾燥過程での水の蒸発による濃度上昇とあいまってゲル化する。これによって得られる塗膜は強固な3次元構造を有し、ひび割れしにくい膜になると考えられる。
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準を意味する。
以下の製造例により得られたPOA変性PVAについて、以下の方法にしたがって溶解性試験および水溶液の粘度測定を行った。
[水溶液の粘度測定]
濃度4%のPOA変性PVA水溶液を調製し、TOKIMEC INC.製B型粘度計を用いてロータ回転数6rpm、温度20℃、40℃における粘度を測定し、粘度比を求めた。
また、同等の重合度を有する無変性PVAの20℃における粘度を測定し、比較した。
[POA変性PVAの製造]
製造例1(PVA1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口および開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル750g、メタノール250g、POA基を有する不飽和単量体(単量体A)3.3gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてPOA基を有する不飽和単量体(単量体A)をメタノールに溶解して濃度20%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと単量体Aの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー溶液の総量は75mlであった。また重合停止時の固形分濃度は24.4%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、POA変性PVAcのメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPOA変性PVAcのメタノール溶液453.4g(溶液中のPOA変性PVAc100.0g)に、55.6gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPOA変性PVAc濃度20%、POA変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.1)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置してPOA変性PVA(PVA1)を得た。PVA1の重合度は1760、けん化度は98.7モル%、POA基変性量は0.4モル%であった。
製造例2〜27(PVA2〜27の製造)
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、重合時に使用するPOA基を有する不飽和単量体の種類(表2)や添加量等の重合条件、けん化時におけるPOA変性PVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1および表2に示すように変更した以外は、製造例1と同様の方法により各種のPOA変性PVA(PVA2〜27)を製造した。
製造例28(PVA28の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル700g、メタノール300gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25gを添加し重合を開始し、60℃で3時間重合した後冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は17.0%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液544.1g(溶液中のPVAc120.0g)に、55.8gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPVAc濃度20%、PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.1)。アルカリ溶液を添加後約1分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して無変性PVA(PVA28)を得た。PVA28の重合度は1700、けん化度は98.5モル%であった。
製造例29〜33(PVA29〜33の製造)
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、けん化時におけるPVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更した以外は、製造例28と同様の方法により各種の無変性PVA(PVA29〜33)を製造した。
Figure 0005597194
Figure 0005597194
(インクジェット記録材の製造と評価)
下記の方法により、インクジェット記録紙を製造し、そのインク受理層のひび割れを評価した。さらにインクジェットプリンターを用いて該記録紙に印刷を行ったときのインク吸収性を評価した。
(1)ひび割れ
インク受理層の表面を光学顕微鏡により観察し(拡大倍率100倍)、以下の基準にて評価した。
5:表面にひび割れが全く観察されない。
4:表面にひび割れがほとんど観察されない。
3:表面に部分的にひび割れが発生。
2:表面に多数のひび割れが発生。
1:表面全体にひび割れが発生。
(2)インク吸収速度
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製;PM2000C)を用いてインクジェット記録材に黒インクをベタ印字した後、一定時間ごとに印字面を指でこすり、かすれ具合を観察した。全くかすれなくなるまでの時間を測定し、以下の基準にて評価した。
5:5秒未満、4:5秒以上10秒未満、3:10秒以上30秒未満、2:30秒以上、1:60秒以上
実施例1
(気相法シリカ微粒子分散液の調製)
1次粒子の平均粒子径が約12nmの気相法シリカ粉末であるアエロジルA300(日本アエロジル(株)製)600gを、酢酸12gを溶解したイオン交換水2400gに加え、一方撹拌機にて撹拌して分散させ、固形分濃度20重量%の分散液を調製した。この分散液をホモジナイザー(IKA製;ULTRA−TURRAX T25型)にて、9500rpmで5分間粉砕し、乳白色スラリー状の粘稠分散液(固形分濃度20%)を得た。この分散液中に分散している無機微粒子の平均粒子径をレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所(株)製;LA−910)にて測定したところ、230nmであった。
(インクジェット記録材の調製)
PVA−1の固形分濃度4%の水溶液1000gを調製し、上記で得られた気相法シリカの固形分濃度20%の分散液1000gに加え、よく混合撹拌して分散液を得た。その後、蒸留水を添加して固形分濃度12重量%の塗工液を調製した。この塗工液の溶液粘度を、TOKIMEC INC.製B型粘度計を用いてロータ回転数6rpm、温度20℃の条件で測定したところ、70mPa・sであった。
コロナ処理を施したPETフィルムの表面に、メイヤーバーを用いて塗工量(乾燥時)が15g/mとなるように30℃で上記塗工液を塗工し、熱風乾燥機にて150℃で3分間乾燥してインクジェット記録用シートを製造した。シートの評価結果を表3に示す。
実施例2〜19、比較例1〜8
使用するPOA変性PVAを表3に挙げたものに代えた以外は実施例1と同様にして塗工液を調製し、インクジェット記録用シートを製造した。シートの評価結果を表3に示す。
Figure 0005597194
実施例において示されるように、本発明のPOA変性PVAを含有するコーティング剤を、インクジェット記録材のインク受理層または光沢層に使用した場合、塗工温度より高い温度で乾燥するだけで、ひび割れがなく高いインク吸収能を有するインクジェット記録材が得られる。これにより従来の乾燥システムの効率化が可能となり、生産性が著しく向上することが期待される。また本発明をインクジェット記録剤以外の紙用コーティング剤として使用することも可能であり、その分野においても乾燥システムの効率化が可能であることから、紙産業における効果は計り知れないと考えられる。

Claims (3)

  1. 下記一般式(II’)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体であり、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度Pが500〜5000であり、けん化度が20〜99.99モル%であり、ポリオキシアルキレン基変性量Sが0.1〜10モル%であるポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤。
    Figure 0005597194
    (式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3は水素原子または−COOM基を表し、ここでMは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を意味する。R4は水素原子、メチル基または−CH −COOM基を表し、ここでMは前記定義のとおりである。Xは−O−、−CH −O−、−CO−、−(CH −、−CO−O−または−CO−NR5−を表し、ここでR5は水素原子または炭素数1〜4の飽和アルキル基を意味する。kはメチレンユニットの繰り返し単位を表し、1≦k≦15である。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦10、3≦n≦20である。)
  2. 請求項1記載のコーティング剤を基材に塗工してなる塗工物。
  3. 請求項1記載のコーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材。
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