JP3851188B2 - インクジェット記録材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクによる記録に用いられるインクジェット記録材に関する。さらに詳しくは、塗工皮膜にひび割れが無いため好適な高い光沢性を有し、インク吸収性に優れ、かつ透明性の高いインクジェット記録材に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録液(水性インク)を使用して記録する方法としては、例えば、万年筆、水性ボールペン、水性サインペン、セラミックペン、蛍光ペンなどの筆記用具を使用する方法や、これらの筆記用具を利用したペンプロッターを用いる方法などがある。最近では被記録材にインクの小滴を付着させて記録を行うインクジェット記録方式が挙げられる。
【0003】
インクジェット記録方式は、騒音が少ないこと、カラー化が容易であること、高速記録が可能であることなどの理由から、ファクシミリ、各種プリンターなどへの応用が進められている。最近、特に注目されているインクジェットプリンターの利用分野としては、写真に近い高画質が要求される印刷分野におけるカラープルーフの作成やデザイン分野におけるデザインイメージの出力などがある。さらに、コンピューターで作成した文字や画像情報をインクジェットプリンターによって透明な記録シートに出力し、これをオーバーヘッドプロジェクターの原稿として会議のプレゼンテーションなどに利用することも一般的に行われている。これらの用途に使用されるインクジェット用記録シートは光沢タイプに分類される。
【0004】
このようなインクジェット記録方式で使用される光沢タイプの記録シートに要求される特性として、インク受理層表面の光沢性が高いこと、インク受理層の透明性が高いこと、画像濃度が高いこと、色再現性が良好なこと、インク吸収性が高いこと、ドット再現性が良好であることなどが挙げられる。
【0005】
光沢タイプのインクジェット記録材に関する従来技術として、例えば、特開平3−56552号公報や特開平7−137434号公報には、無機超微粒子と親水性バインダーからなる空隙層をインク受理層として設けた記録材が記載されている。このような記録材は毛細管現象を利用したインク吸収メカニズムにより、高いインク吸収性と耐水性を両立可能にしたものである。しかしながら、インク受理層に毛細管を形成するためには通常、バインダーに対して微粒子を多量に含有させる必要があり、かかる皮膜は非常に剛性が高く、硬い皮膜になる。このような柔軟性に劣る皮膜は、塗工液膜の乾燥段階での内部応力の発生、または微小な異物により容易にひび割れを発生し易い問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術では実現できなかった、インク受理層の表面のひび割れがなく、高い光沢性があり、インク吸収性に優れ、かつ皮膜の透明性に優れるインクジェット記録シートを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体を分散安定剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする水性エマルジョンをバインダーに用い、平均粒子径が200nm以下の無機微粒子を含有するインク受理層を支持基体の内部または表面に設けてなるインクジェット記録材が、その課題を解決して、インク受理層表面のひび割れがなく、高い光沢性があり、インク吸収性に優れ、かつ皮膜の透明性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明のインクジェット記録材は、上述の如き水性エマルジョンおよび平均粒子径が200nm以下の無機微粒子を含有するが、ここで水性エマルジョンは分散質および分散安定剤からなる。分散質は、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体からなる。このようなエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン;塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸およびそのナトリウムまたはカリウム塩などのスチレン系単量体、アクリル酸エステル系重合体および/またはメタクリル酸エステル系重合体;その他N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。またジエン系不飽和単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンが挙げられる。
【0009】
本発明において使用される水性エマルジョンの分散質としては、上記重合体の中でもアクリル酸エステル系重合体および/またはメタクリル酸エステル系重合体が好適に用いられる。アクリル酸エステル系重合体およびメタクリル酸エステル系重合体を構成する単量体単位としては、様々なものがあるが、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基を有する単量体単位、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物から誘導された単位、さらにはアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩から誘導された単位などがある。その中でも、特に炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸エステル単位あるいはメタクリル酸エステル単位が好ましい。
【0010】
一方、本発明において使用される水性エマルジョンの分散安定剤は、上述の如く分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体をPVA系重合体と略記することがある)からなる。該分散安定剤としては、分子の主鎖中にメルカプト基を有する重合体でも充分な効果を有するが、この場合PVA系重合体が酸化によりジスルフィド結合を形成して不溶化する恐れがある。そのため分子の末端、特に片末端にのみメルカプト基が結合したPVA系重合体が、不溶化の心配がなく取扱い上便利である。このような分子の片末端にのみメルカプト基を有するPVA系重合体は、様々な方法により製造することができ、例えば、チオール酸の存在下にビニルエステル類を主体とするビニルモノマーを重合し、得られたビニルエステル系重合体を常法によりけん化することによって得ることができる。この製造方法において使用されるチオール酸は、−COSH基を有する有機チオール酸を包含する。例えばチオール酢酸、チオールプロピオン酸、チオール酪酸、チオール吉草酸などが挙げられるが、なかでもチオール酢酸が反応性もよく最も好ましい。
【0011】
分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体の製造に用いられるビニルエステル類としては、ラジカル重合可能なビニルエステルであればよく、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、なかでも酢酸ビニルが最も重合性がよく好ましい。また、分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体の製造に際して、これらビニルエステル類に、ビニルエステル類と共重合可能なモノマーを共存させて共重合することもできる。例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその塩またはそのアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリドなどの(メタ)アクリルアミド類およびその誘導体;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンなどのハロゲン化ビニル類;ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体またはその塩が挙げられる。
【0012】
チオール酸の存在下、酢酸ビニルなどのビニルエステル類を主体とするビニルモノマーの重合は、ラジカル重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、パール重合法、乳化重合法などいずれの方法でも行うことができるが、メタノールを溶媒とする溶液重合法が工業的には最も有利である。重合中に存在させるチオール酸の重合系への添加量、添加方法には特に制限はなく、目的とするビニルエステル系重合体の物性値によって適宜決定されるべきものである。重合方式としては回分式、半連続式、連続式など公知の方法を採用しうる。
【0013】
ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化カーボネートなど公知のラジカル重合開始剤が使用できるが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤が取扱い易く好ましい。また放射線、電子線なども使用することができる。重合温度は使用する開始剤の種類により適当な温度を採用することが望ましいが、通常30〜90℃の範囲から選ばれる。所定時間重合した後、未重合のビニルエステル類を通常の方法で除去することにより末端にチオール酸エステル基を有するビニルエステル系重合体が得られる。
【0014】
このようにして得られたビニルエステル系重合体は常法によりけん化されるが、通常、重合体をアルコール溶液とりわけメタノール溶液として実施するのが有利である。アルコールは無水物のみならず少量の水を含有するものも目的に応じて用いられ、また、酢酸メチル、酢酸エチルなどの有機溶媒を任意に含有せしめたものであってもよい。けん化温度は通常10〜70℃の範囲から選ばれる。
【0015】
ビニルエステル系重合体のけん化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドなどのアルカリ性触媒が好ましく、該触媒の使用量は反応系中の水分量および目的とするけん化度の大小などにより適宜決められるが、ビニルエステル単位に対しモル比で0.001以上、好ましくは0.002以上用いることが望ましい。一方、アルカリの量が多くなりすぎると残存アルカリをポリマー中より除去することが困難となり、ポリマーが着色するなど好ましくない現象が起きるので、該アルカリ触媒の使用量はビニルエステル単位に対しモル比で0.2以下にすることが望ましい。なおビニルエステル系重合体中にカルボキシル基やそのエステル基など、アルカリ触媒と反応しアルカリを消費する成分が含有されている場合、その分量を加えた量のアルカリ触媒を使用することが望ましい。このけん化反応により、末端にチオール酸エステル基を有するビニルエステル系重合体において、末端のチオール酸エステルと主鎖のビニルエステル結合がけん化され、ポリマー末端はメルカプト基に、主鎖はビニルアルコールになるが、主鎖のビニルエステル単位のけん化度は使用目的に応じて80〜95モル%の範囲で適宜選定すればよい。けん化反応後、析出した重合体は例えばメタノールで洗浄するなど公知の方法で精製し、残存アルカリ、酢酸のアルカリ金属塩などの不純物を除去して乾燥することにより、通常白色粉末として得ることができる。
【0016】
本発明で使用される分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体は、例えば上述のようにして製造されるが、このPVA系重合体の重合度は200〜700の範囲で選定される。ここで、重合度が200未満のものではエマルジョンの機械的安定性が低下し、逆に700を超えるものでは重合安定性が低下し、凝固物が増加する。なお、このPVA系重合体の重合度は、該PVA系重合体の30℃における水中での極限粘度数〔η〕から、次式により求めた粘度平均重合度Pである。
P=(〔η〕×103/7.51)(1/0.64)
また、上記分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体は、けん化度が80〜95モル%である。このけん化度が80モル%未満でも、また95モル%を超えても、重合安定性が低下し、凝固物が増加する。
【0017】
本発明において使用される水性エマルジョンは、上述の如く、分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体を分散安定剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とするものであるが、ここで分散安定剤の使用量は、上記分散質100重量部に対して、2〜10重量部の範囲で選定すべきである。分散安定剤の使用量が2重量部未満では、重合安定性および分散安定性が低下し、実用上好ましくない。また、10重量部を超えると、重合安定性や分散安定性は良好であるが、水性エマルジョンの適用物における耐水性や接着性能などが低下し、実用的でない。
【0018】
本発明において使用される水性エマルジョンは、種々の方法で調製することができる。該水性エマルジョンの調製方法としては、一般に水、上記分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体からなる分散安定剤および重合開始剤の存在下に、前述したエチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体(好適にはアクリル酸エステル系単量体および/またはメタクリル酸エステル系単量体)を、一時または連続的に添加して、加熱、攪拌する乳化重合法が好適である。上記の乳化重合法において、単量体を予め分散安定剤の水溶液と混合乳化したものを連続的に添加してもよい。また、非水溶媒中での分散重合法を採用することもできる。この際に用いられる重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤のいずれもが使用可能であり、PVA系重合体末端のメルカプト基と、臭素酸カリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの水溶性酸化剤によるレドックス系もまた使用することができる。水溶性酸化剤の中でも過酸化水素水は、通常の重合条件下において単独ではラジカルを発生せず、PVA系重合体末端のメルカプト基とのレドックス反応によってのみ分解し、ラジカルを発生することから、PVA系重合体とのブロック共重合体を有効に生成し、もって安定化効果を大ならしめるので特に好ましい開始剤である。また重合開始時に過酸化水素水を用いたのち、他の酸化剤を追加添加するなど、酸化剤の併用も可能である。
【0019】
分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体よりなる分散安定剤を用いて乳化重合を行うに際しては、重合系が酸性であることが重要であり、望ましい。これは、メルカプト基は通常、ラジカル重合において極めて高い反応活性を示すが、塩基性下では単量体中の二重結合へイオン的に付加、消失する速度が大きく、その重合効率が著しく低下するためである。重合に用いられる不飽和単量体の種類にもよるが、全ての重合操作をpH6以下、好ましくはpH4以下で実施することが望ましい。
【0020】
本発明における水性エマルジョンの平均粒径は、0.5μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下である。平均粒子径が0.5μmを超えると乾燥皮膜の透明性が著しく悪化する。
【0021】
本発明における水性エマルジョンのガラス転移温度は20℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以下である。ガラス転移温度が20℃以上となると乾燥過程で蓄積する内部応力を吸収できなくなり皮膜のひび割れが悪化する。
【0022】
本発明でいう各重合体のTg(ガラス転移温度)とは、通常知られている
FOXの式: 1/Tg=a1/Tg1+a2/Tg2+a3/Tg3+…
に従い求めたものであり、式中のTg1、Tg2およびTg3は各重合体を構成する単量体を単独で重合した際に得られる重合体のガラス転移温度(POLYMER HANDBOOK,THIRD EDITION,WileyInterscienceに記載されている値)を表し、表中のa1、a2およびa3は各重合体を構成する単量体単位の重量分率を表す。
【0023】
本発明において、分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体よりなる分散安定剤には、必要に応じて従来公知のアニオン性、ノニオン性またはカチオン性の低分子界面活性剤を適宜併用することもできる。インクとして染料インクが用いられる場合、インクの定着性の点で記録材のインク受理層にカチオン性物質が一般的に添加される。分散安定剤の混和安定性の点からは、ノニオン性またはカチオン性の界面活性剤が好ましい。
【0024】
本発明において水性エマルジョンは、平均粒子径が200nm以下の無機微粒子とともに用いられる。この無機微粒子の平均粒子径が200nmを超えると、インク受理層表面の光沢が低下するため好ましくない。
無機微粒子の具体例としては、例えば、コロイダルシリカ、気相法により合成されたシリカ、アルミナゾル、酸化アルミニウム微粒子、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子などが挙げられ、これらの中でもコロイダルシリカ、気相法により合成されたシリカ、アルミナゾル、酸化アルミニウム微粒子などが好適に用いられる。
【0025】
本発明において用いられるコロイダルシリカとは、水中に分散してコロイド状をなす無定型シリカ粒子をいう。このようなコロイダルシリカとしては、表面電荷が負に帯電したものが一般に使用できるが、表面処理により正電荷を付与したものも好適に用いられる。
【0026】
気相法により合成されたシリカとは、揮発性シラン化合物を酸水素炎で処理することにより得られる二酸化ケイ素である。このような気相法により合成されたシリカは、平均粒子径が数十nmの球形の1次粒子からなり、最終粒子はこれら1次粒子の凝集塊となる。この2次凝集体を、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、高圧式ホモジナイザーなどの粉砕手段で粉砕することによって得られる粒子径200nm以下の微粒子が好適に用いられる。このような気相法シリカとしては、表面電荷が負に帯電したものが一般に使用できるが、さらに表面処理により正電荷を付与したものも好適に用いられる。
【0027】
酸化アルミニウム微粒子としては、γ型結晶形態の酸化アルミニウム微粒子が使用される。γ型結晶形態の酸化アルミニウムは、1次粒子の平均粒子径を10nm程度にまで小さくすることが可能であるが、粉末状態では一般に1次粒子が2次凝集体を形成して、粒子径が数μmオーダーとなる。この2次凝集体を、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、高圧式ホモジナイザーなどの粉砕手段で粉砕することによって得られる粒子径200nm以下の微粒子が好適に用いられる。
【0028】
本発明において、分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体を分散安定剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体(好適にはアクリル酸エステル系重合体および/またはメタクリル酸エステル系重合体)を分散質とする水性エマルジョンは、単独で、またはポリビニルアルコールとともに使用される。該水性エマルジョンは、さらに他の水溶性樹脂または水分散性樹脂とともに使用することもできる。ここで、他の水溶性樹脂または水分散性樹脂としては、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でん粉、アラビヤゴム、メチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどのノニオン性水溶性樹脂、CMC、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン変性PVA、カチオン性PVA、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステルなどの水溶性樹脂;SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョンなどの水分散性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、本発明における上記の水性エマルジョンは、充填材を含有していてもよい。ここで、充填材としては、微粒子合成シリカ、クレー、タルク、ケイソウ土、ゼオライト、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、サチンホワイト、有機顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明のインクジェット記録材においては、インクの定着剤としてカチオン性樹脂を併用することもできる。この目的に使用しうるカチオン性樹脂は、水に溶解したときに離解してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩のモノマーからなるオリゴマーまたはポリマーである。さらに具体的なカチオン樹脂の例は、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ジシアンジアミド・ジメチル・ジアリル・アンモニウムクロライド、ポリエチレンイミンなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明において用いられる支持基体としては、従来公知の透明性または不透明性の支持基体がいずれも使用できる。透明性の支持基体としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、セロハン、セルロイドなどのフィルムもしくはシート、または透明性の高い紙などが挙げられる。不透明性の支持基体としては、一般の紙、顔料コート紙、布、木材、金属板、合成紙、不透明化処理した合成樹脂系フィルムまたはシートなどが挙げられる。
【0032】
分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体を分散安定剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体(好適にはアクリル酸エステル系重合体および/またはメタクリル酸エステル系重合体)を分散質とする水性エマルジョン、ならびに平均粒子径が200nm以下の無機微粒子を含有するインク受理層を、支持基体中またはその表面に形成させる方法としては、該水性エマルジョンおよび無機微粒子に、必要に応じてポリビニルアルコール、その他の水溶性樹脂もしくは水分散性樹脂および充填材を加えて水溶液または水分散液とし、これらをサイズプレス、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーターなどの通常のコーティング方法によって支持基体中に含浸させるか、あるいは、支持基体の上表面もしくは上表面と下表面との両表面上にコート層を形成させるなどの方法が使用できる。また、支持基体が紙である場合には、抄紙時に上記水溶液または水分散液を内添する方法も使用できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、特に断りのない限り「%」および「部」は重量基準である。
【0034】
参考例(分子末端にメルカプト基を有するPVA系重合体の合成)
特開昭59−187003号公報に記載された方法によって、表1に示す分子末端にメルカプト基を有するPVAを合成した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例中の諸物性の評価方法を以下に示す。
(1)インク吸収速度
インクジェットプリンターPM2000C(セイコーエプソン(株)製)を用いて、記録材に黒インクをベタ印字後、一定時間ごとに印字面を指でこすり、かすれ具合を観察する。全くかすれなくなるまでの時間を測定した。
◎:5秒未満、○:5秒以上10秒未満、△:10秒以上30秒未満、×:30秒以上。
(2)塗膜のひび割れ
インク受容層の表面を光学顕微鏡により観察した(100倍拡大)。
○:表面にひび割れが全く観察されない。
△:表面に部分的にひび割れが発生。
×:表面全体にひび割れが発生。
(3)光沢度
インクジェットプリンターPM2000C(セイコーエプソン(株)製)を用いて、記録材にブラック、イエロー、マジェンタ、シアンの各インクをベタ印字後、各印字面について、JIS Z−8714の方法(入射角60度の鏡面光沢度)に従い、グロスメーター(日本電色工業社製)で測定し、5回の測定値を平均した。
(4)透明性
分光光度計UV2100(島津製作所製)を用いて、PET基材上にインク受理層を設けた記録材の波長500nmにおける透過率を測定した。
(5)粘度
各種溶液、分散液およびエマルジョンの粘度はB型粘度計を用いて30℃で測定した。
(6)ガラス転移点の測定
水性エマルジョンのガラス転移温度は、示差熱走査熱量計RDC−220(SEIKO INSTRUMENTS製)にて測定した。
【0037】
実施例1(水性エマルジョンの合成:EM−1)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた2リットルガラス製重合容器に、上記参考例で得られたPVA−1(重合度550、けん化度88.0モル%)の4.3%水溶液1017.5g、硫酸鉄(II)0.0032gおよびエマルジット25(第一工業製薬株式会社製)0.53gを仕込み、希硫酸でpHを2.8に調整した。次いで窒素を流し(以下、重合中は窒素を流し続ける)、70℃に昇温しながら、100rpmで1時間攪拌を行った。メチルメタクリレート266.3g、アクリル酸n−ブチル266.33g、ドデシルメルカプタン2.7gを一括で仕込んだ後、100rpmで20分攪拌した。0.6%過酸化水素水溶液347gを2時間かけて滴下し、重合を開始した。重合途中、徐々に280rpmまで攪拌速度を上げていった。3時間で重合率99.5%となり、その後冷却した。生成したエマルジョンを濃度30%のアンモニア水でpHを6に調整後、100メッシュの金網でろ過したが、凝固物は全く認められなかった。得られたエマルジョンの粒子径は194nm、固形分濃度は34.7%、B型粘度計で測定した粘度は117mPa・s(ミリパスカル・秒)(30℃)であった。
【0038】
(気相法シリカ微粒子分散液の作製)
1次粒子の平均粒子径が約12nmの気相法シリカ粉末であるアエロジルA−300〔日本アエロジル(株)製〕600gを、酢酸12gを溶解したイオン交換水2400gに、一方撹拌機にて撹拌して分散し、20重量%の分散液を調製した。この液を高圧式ホモジナイザーであるゴーリンホモジナイザー15MR−8TA型〔同栄商事(株)〕にて、700kg/cm2の圧力を加えて粉砕し、乳白色のスラリー状の粘稠状分散液(固形分濃度20%)を得た。この分散液中に分散している無機微粒子の平均粒子径は90nmであった。無機微粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910〔堀場製作所(株)製〕にて測定した。
【0039】
(インクジェット記録材の作製)
上記の粉砕した気相法シリカの固形分濃度20%の分散液1000gに固形分濃度34.7%の水性エマルジョンEM−1の34.6gと固形分濃度8%のPVA135H(クラレ製)水溶液350gを、よく混合撹拌して分散液を得た。その後、蒸留水を添加して固形分濃度17重量%の塗工液を得た。B型粘度計で測定したこの塗工液の溶液粘度は285mPa・s(30℃)であった。
この分散液を室温にてメイヤーバーで塗被量(乾燥時)が15g/m2となるようにコロナ処理を施したPETフィルムの表面に塗工し、熱風乾燥機にて100℃、3分間乾燥して、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
このシートの評価結果を表3に示す。
【0040】
実施例2(水性エマルジョンの合成:EM−2)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた2リットルガラス製重合容器に、上記参考例で得られたPVA−1(重合度550、けん化度88.0モル%)の4.3%水溶液1017.5g、硫酸鉄(II)0.0032gおよびエマルジット25(第一工業製薬株式会社製)0.53gを仕込み、希硫酸でpHを2.6に調整した。次いで窒素を流し(以下、重合中は窒素を流し続ける)、70℃に昇温しながら、100rpmで1時間攪拌を行った。メチルメタクリレート213.06g、アクリル酸n−ブチル319.60g、ドデシルメルカプタン2.7gを仕込んだ後、100rpmで20分攪拌した。0.6%過酸化水素水溶液347gを2時間かけて滴下し、重合を開始した。重合途中、徐々に280rpmまで攪拌速度を上げていった。3時間で重合率98.9%となり、その後冷却した。生成したエマルジョンを濃度30%のアンモニア水でpHを6に調整後、100メッシュの金網でろ過したが、凝固物は全く認められなかった。得られたエマルジョンの粒子径は182nm、固形分濃度は34.5%、B型粘度計で測定した粘度は167mPa・s(30℃)であった。
【0041】
(酸化アルミニウム微粒子分散液の作製)
γ型結晶形態で1次粒子の平均粒子径が20nm以下の酸化アルミニウム粉末であるアエロジルAl2O3・C〔日本アエロジル(株)製〕600gを、分散安定剤として酢酸12gを溶解したイオン交換水2400gに、一方撹拌機にて撹拌して分散し、20重量%の分散液を調製した。この液を高圧式ホモジナイザーであるゴーリンホモジナイザー15MR−8TA型〔同栄商事(株)〕にて、700kg/cm2の圧力を加えて粉砕し、乳白色のスラリー状の粘稠状分散液(固形分濃度20%)を得た。この分散液中に分散している無機微粒子の平均粒子径は95nmであった。無機微粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910〔堀場製作所(株)製〕にて測定した。
【0042】
(インクジェット記録材の作製)
上記の粉砕したγ型酸化アルミニウム微粒子の固形分濃度20%の分散液1000gに固形分濃度34.5%の水性エマルジョンEM−2の34.7gと固形分濃度8%のPVA235(クラレ製)水溶液の350gを、よく混合撹拌して分散液を得た。その後、蒸留水を添加して固形分濃度17重量%の塗工液を得た。B型粘度計で測定したこの塗工液の溶液粘度は240mPa・s(30℃)であった。
この分散液を室温にてメイヤーバーで塗被量(乾燥時)が15g/m2となるようにコロナ処理を施したPETフィルムの表面に塗工し、熱風乾燥機にて100℃、3分間乾燥して、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
このシートの評価結果を表3に示す。
【0043】
実施例3(水性エマルジョンの合成:EM−3)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた2リットルガラス製重合容器に、上記参考例で得られたPVA−2(重合度230、けん化度94.0モル%)の4.3%水溶液1017.5g、硫酸鉄(II)0.0032gおよびコータミン24P(株式会社花王製)0.53gを仕込み、希硫酸でpHを2.6に調整した。次いで窒素を流し(以下、重合中は窒素を流し続ける)、70℃に昇温しながら、100rpmで1時間攪拌を行った。スチレン234.4g、アクリル酸n−ブチル298.3g、ドデシルメルカプタン2.7gを仕込んだ後、100rpmで20分攪拌した。0.6%過酸化水素水溶液347gを2時間かけて滴下し、重合を開始した。重合途中、徐々に280rpmまで攪拌速度を上げていった。3時間で重合率99.4%となり、その後冷却した。生成したエマルジョンを濃度30%のアンモニア水でpHを6に調整後、100メッシュの金網でろ過したが、凝固物は全く認められなかった。得られたエマルジョンの粒子径は246nm、固形分濃度は34.7%、B型粘度計で測定した粘度は140mPa・s(30℃)であった。
【0044】
(インクジェット記録材の作製)
実施例2において、水性エマルジョンをEM−3に変更したこと以外は実施例2と同様にして、塗工液を調製し、インクジェット記録材を製造した。その評価結果を表3に示す。
【0045】
比較例4(水性エマルジョンの合成:EM−4)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた2リットルガラス製重合容器に、上記参考例で得られたPVA−3(重合度350、けん化度84.0モル%)の4.3%水溶液1017.5g、硫酸鉄(II)0.0032gとエマルジット25(第一工業製薬株式会社製)0.53gを仕込み、希硫酸でpHを2.6に調整した。次いで窒素を流し(以下、重合中は窒素を流し続ける)、70℃に昇温しながら、100rpmで1時間攪拌を行った。メチルメタクリレート234.4g、2−エチルヘキシルアクリレート298.3gおよびドデシルメルカプタン2.7gを仕込んだ後、100rpmで20分攪拌した。0.6%過酸化水素水溶液347gを2時間かけて滴下し、重合を開始した。重合途中、徐々に280rpmまで攪拌速度を上げていった。3時間で重合率98.0%となり、その後冷却した。生成したエマルジョンを濃度30%のアンモニア水でpHを6に調整後、100メッシュの金網でろ過したが、凝固物は全く認められなかった。得られたエマルジョンの粒子径は450nm、固形分濃度は34.7%、B型粘度計で測定した粘度は433mPa・s(30℃)であった。
【0046】
(気相法シリカ微粒子分散液の作製)
1次粒子の平均粒子径が20nm以下の気相法シリカ粉末であるアエロジルMOX−170〔日本アエロジル(株)製〕600gを、酢酸12gを溶解したイオン交換水2400gに、一方撹拌機にて撹拌して分散し、20重量%の分散液を調製した。この液を高圧式ホモジナイザーであるゴーリンホモジナイザー15MR−8TA型〔同栄商事(株)〕にて、700kg/cm2の圧力を加えて粉砕し、乳白色のスラリー状の粘稠状分散液(固形分濃度20%)を得た。この分散液中に分散している無機微粒子の平均粒子径は91nmであった。無機微粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910〔堀場製作所(株)製〕にて測定した。
【0047】
(インクジェット記録材の作製)
上記の粉砕したアエロジルMOX−170の固形分濃度20%の分散液1000gに固形分濃度34.7%の水性エマルジョンEM−4の34.6gと固形分濃度8%のPVA235(クラレ製)水溶液の350gを、よく混合撹拌して分散液を得た。その後、蒸留水を添加して固形分濃度17重量%の塗工液を得た。B型粘度計で測定したこの塗工液の溶液粘度は219mPa・s(30℃)であった。
この分散液を室温にてメイヤーバーで塗被量(乾燥時)が15g/m2となるようにコロナ処理を施したPETフィルムの表面に塗工し、熱風乾燥機にて100℃、3分間乾燥して、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
このシートの評価結果を表3に示す。
【0048】
比較例5(水性エマルジョンの合成:EM−5)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、窒素置換後、上記参考例で得られたPVA−1(重合度550、けん化度88.0モル%)の5.7%水溶液189.5gを仕込み、希硫酸でpHを3.0に調整した。次いで140rpmで攪拌しながら、メチルメタクリレート48g、アクリル酸n−ブチル48gおよびドデシルメルカプタン0.48gを仕込み60℃に昇温した後、2.0%臭素酸カリウム10mlを添加し、重合を開始した。1時間で重合率85%となったところで、メチルメタクリレート72g、アクリル酸n−ブチル72gおよびドデシルメルカプタン0.72gを2時間で逐次添加し、その後、5%過硫酸アンモニウム5gを添加して重合を完結させた。重合率は99.9%となり、生成したエマルジョンを濃度30%のアンモニア水でpHを6に調整後、100メッシュの金網でろ過したが、凝固物は全く認められなかった。得られたエマルジョンの粒子径は960nm、固形分濃度は50.2%、B型粘度計で測定した粘度は1200mPa・s(30℃)であった。
【0049】
(インクジェット記録材の作製)
平均粒子径45nmの濃度20%のコロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:スノーテックス 2OL)1000gに固形分濃度34.7%の水性エマルジョンEM−5の18.2gと固形分濃度8%のPVA135H(クラレ製)水溶液の262.5gを、よく混合撹拌して分散液を得た。その後、蒸留水を添加して固形分濃度17重量%の塗工液を得た。B型粘度計で測定したこの塗工液の溶液粘度は156mPa・s(30℃)であった。
この分散液を室温にてメイヤーバーで塗被量(乾燥時)が15g/m2となるようにコロナ処理を施したPETフィルムの表面に塗工し、熱風乾燥機にて100℃、3分間乾燥して、本発明のインクジェット記録用シートを製造した。
このシートの評価結果を表3に示す。
【0050】
比較例1
(水性エマルジョンの合成:EM−6)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた2リットルガラス製重合容器に、窒素置換後、上記参考例で得られたPVA−1(重合度550、けん化度88.0モル%)の2.4%水溶液560.6g、硫酸鉄(II)0.0032gおよびエマルジット25(第一工業製薬株式会社製)0.53gを仕込み、希硫酸でpHを3.0に調整した。次いで150rpmで攪拌しながら、メタクリル酸メチル39.5g、アクリル酸n−ブチル13.2gおよびドデシルメルカプタン0.26gを仕込み70℃に昇温した後、0.5%臭素酸カリウム80gを添加し、重合を開始した。1時間で重合率85%となったところで、メタクリル酸メチル360g、アクリル酸n−ブチル120gおよびドデシルメルカプタン2.4gを2時間で逐次添加し、同時にPVA−1(重合度500、けん化度88.0モル%)の10%水溶液187gと1.0%臭素酸カリウム水溶液267gを135分で逐次添加し、重合を完結させた。重合率は99.9%となり、生成したエマルジョンを濃度30%のアンモニア水でpHを6に調整後、100メッシュの金網でろ過したが、凝固物は全く認められなかった。得られたエマルジョンの粒子径は231nm、固形分濃度は51.0%、B型粘度計で測定した粘度は9800mPa・s(30℃)であった。
【0051】
(インクジェット記録材の作製)
実施例1において、水性エマルジョンをEM−6に変更したこと以外は実施例1と同様にして塗工液を調製し、インクジェット記録材を製造した。その評価結果を表3に示す。
【0052】
比較例2
実施例1において、PVA−1の代わりに無変性PVA((株)クラレ製、商品名:PVA205、重合度500、けん化度88.2モル%)の4.3%水溶液を1017.5g使用し、かつ低分子界面活性剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で重合したが、30分後、重合率15%の時点で数mm大の粗粒が発生し、重合の継続が困難となった。
【0053】
比較例3(水性エマルジョンの合成:EM−8)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた2リットルガラス製重合容器に、硫酸鉄(II)0.0032gとエマルジット25(第一工業製薬株式会社製)0.53gを仕込み、希硫酸でpHを2.8に調整した。次いで窒素を流し(以下、重合中は窒素を流し続ける)、70℃に昇温しながら、100rpmで1時間攪拌を行った。過硫酸アンモニウム535mgを一括で仕込んだ後、100rpmで10分攪拌した。メチルメタクリレート266.3g、アクリル酸n−ブチル266.33g、ドデシルメルカプタン2.7gを100分かけて滴下し、重合を開始した。重合途中、徐々に200rpmまで攪拌速度を上げていった。4時間で重合率99.9%となり、その後冷却した。生成したエマルジョンを濃度30%のアンモニア水でpHを6に調整後、100メッシュの金網でろ過したが、凝固物は全く認められなかった。得られたエマルジョンの粒子径は449nm、固形分濃度は33.9%、B型粘度計で測定した粘度は109mPa・s(30℃)であった。
【0054】
(インクジェット記録材の作製)
実施例3において、水性エマルジョンをEM−8に変更したこと以外は実施例3と同様にして塗工液を調製したところ、酸化アルミニウム粒子の凝集が発生したため、塗工が困難となった。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録材は、インク吸収性に優れるだけでなく、にじみが少なくて記録画像の鮮明性にも優れ、塗膜のひび割れがなくて高い光沢性と透明性を有する。
Claims (4)
- 分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体を分散安定剤とし、エチレン性不飽和単量体およびジエン系不飽和単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体を構成単位とする重合体を分散質とする、粒子径が246nm以下でガラス転移温度が20℃以下である水性エマルジョンをバインダーに用い、平均粒子径が200nm以下の無機微粒子を含有するインク受理層を支持基体の内部または表面に設けてなるインクジェット記録材。
- 水性エマルジョンの分散質がアクリル酸エステル系重合体および/またはメタクリル酸エステル系重合体である請求項1記載のインクジェット記録材。
- 水性エマルジョンの分散安定剤が分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体および低分子界面活性剤である請求項1または2記載のインクジェット記録材。
- 分子末端にメルカプト基を有するビニルアルコール系重合体が、重合度200〜700かつ、けん化度80〜95モル%のビニルアルコール系重合体である請求項1または2記載のインクジェット記録材。
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