JP4861743B2 - インクジェット記録材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ビニルアルコール系重合体およびカチオン性処理剤により被覆された気相法シリカを含む水性分散液を基材に塗工してなるインクジェット記録材、およびその製造方法に関する。
ポリビニルアルコールで代表されるビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)は水溶性の合成高分子として知られており、その強度特性を利用して合成繊維ビニロンの原料に用いられ、また、その優れた皮膜形成能、界面活性能、水素結合形成能などの特徴を利用して紙加工剤、繊維用糊剤、分散剤、接着剤およびフィルムなどに利用されている。中でも紙加工用途に関してビニルアルコール系重合体は、一般紙の表面サイズ剤、アート紙・コート紙のアンダーサイズ剤、蛍光染料の分散剤、インクジェット記録材における充填材のバインダーなどとして、印刷物の品質向上のために利用されている。
最近では、インクジェットプリンターの利用が拡大し、商業印刷におけるカラープルーフ、デザイン分野におけるデザインイメージ出力、オーバーヘッドプロジェクターの原稿などにインクジェット記録材が使用されている。これらの用途においてインクジェット記録材に要求される特性としては、インク受理層表面の光沢が高いこと、インク受理層の透明性が高いこと、画像濃度が高いこと、色再現性が良好なこと、インク吸収性が高いこと、ドット再現性が良好であることなどが挙げられる。
インクジェット記録材への上記要求に対し、無機微粒子と親水性バインダーからなる空隙層をインク受理層として設けた記録材が知られている(特許文献1および2)。この記録材は毛細管現象を利用したインク吸収メカニズムにより、高いインク吸収性と耐水性を両立させている。しかしながら、インク受理層に毛細管を形成させるためには通常、バインダーに対して微粒子を多量に含有させる必要がある。この場合、微粒子に対してバインダーの比率が低くなり、インク受理層は非常に剛性が高く硬いものとなる。そのため、無機微粒子と親水性バインダーからなる塗工液を基材に塗工してインク受理層を形成させる際に、塗膜の乾燥段階での内部応力の発生、または微小な異物の混入によって、インク受理層に容易にひび割れが発生しやすいという問題点があった。
このような塗膜のひび割れの問題に対して、塗膜を乾燥する前に塗膜を増粘させてひび割れを防ぐ方法が考えられ、高重合度ポリビニルアルコールに硬化剤としてホウ酸を添加した塗工液を用い、塗工後に塗膜を20℃以下に冷却する方法が提案されている(特許文献3)。この方法では、塗膜を20℃以下に冷却すると、ポリビニルアルコールとホウ酸との相互作用により塗膜に強固な3次元構造が形成され、その結果、ひび割れが防止できるとされている。しかしながら、この方法では塗工後に塗膜の温度を一旦下げる必要があるため、エネルギー的な損失が大きく、塗膜形成に時間を要し、生産速度を上げることができないという問題があった。さらに、この方法では高重合度のポリビニルアルコールを使用するために塗工液の粘度が高く、その取り扱い性の点で塗工液の濃度を低く抑える必要があった。そのため、この方法には塗膜乾燥に時間を要し、生産速度を上げることができないという問題も存在した。
これらの問題点に対して、ポリオキシプロピレン基を有するビニルアルコール系重合体の水溶液の温度変化に対する粘度変化を利用した方法が開示されている(特許文献4)。しかしながら、この方法では配合するシリカの種類により混和性に劣ったり、得られた皮膜の透明性、光沢性が低くなる問題点があった。
特開平3−56552号公報 特開平7−137434号公報 特開2001−150805号公報 特開2005−42008号公報
本発明は、表面のひび割れがなく、光沢性が高く、インク吸収性に優れ、かつ透明性の高いインク受理層を有するインクジェット記録材、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、上記課題は、ビニルアルコール系重合体(A)および気相法シリカ(B)を含む水性分散液を基材に塗工してなるインクジェット記録材であって、ビニルアルコール系重合体(A)が濃度8重量%水溶液の粘度を、ロータ回転数が60rpmの条件でBL型粘度計により測定したとき、温度60℃での粘度ηと温度40℃での粘度ηとの比η/ηが0.8以上であるものであり、気相法シリカ(B)が酢酸イオンを対イオンとするカチオン性処理剤により被覆されたものであり、かつ前記水性分散液が気相法シリカ(B)100重量部に対してビニルアルコール系重合体(A)10〜100重量部を含むことを特徴とするインクジェット記録材によって解決されることが見出された。
このとき、上記ビニルアルコール系重合体(A)としては、下記の一般式(I)
Figure 0004861743
(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体であることが好適である。
このとき、上記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)が0.01〜1モル%であることが好適である。好適な実施態様では、上記ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度Pと、上記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)との積P×Sが下記式(1)を満足する。
5<P×S<1500 (1)
またこのとき、上記ビニルアルコール系重合体(A)が、上記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが炭素数1〜4のアルキル基であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有することも好適な実施態様である。より好適な実施態様では、Rがメチル基であり、Rがメチル基である。別の好適な実施態様では、上記ビニルアルコール系重合体(A)が、上記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが水素原子であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する。
本発明の好適な実施態様では、酢酸イオンを対イオンとするカチオン性処理剤により被覆された気相法シリカ(B)として、比表面積が70m/g以上の気相法シリカをカチオン性処理剤により被覆したものを用いることが好適な実施態様である。また、極性溶媒中に気相法シリカ(B)と前記カチオン性処理剤とを含有させたものを予備混合処理することにより前記カチオン性処理剤による気相法シリカ(B)の被覆を行い、更に微粒化処理を施して水性シリカ分散液を調製した後、該水性シリカ分散液とビニルアルコール系重合体(A)を含む水溶液とを混合して水性分散液を調製し、該水性分散液を基材に塗工することを特徴とするインクジェット記録材の製造方法が本発明の好適な実施態様である。
本発明で用いられる水性分散液は、良好な混和性が得られ、かつその水性分散液を室温以上に加熱したとき、その水性分散液の粘度が一般のビニルアルコール系重合体を用いた場合に比べて高くなるという特徴を有する。そのため、本発明で用いられる水性分散液は、該水性分散液を基材に塗工して得られた塗膜を加熱乾燥する際に、塗膜が乾燥する以前に塗膜の粘度が上昇するため、塗膜のひび割れを防止することができる。そして、本発明で用いられる水性分散液を塗工することにより、光沢性が高く、インク吸収性に優れ、かつ透明性の高いインク受理層を有するインクジェット記録材を生産性よく製造することが可能であり、高い工業的価値を有している。
本発明のインクジェット記録剤は、ビニルアルコール系重合体(A)および気相法シリカ(B)を含む水性分散液を基材に塗工してなるものであって、ビニルアルコール系重合体(A)が濃度8重量%水溶液の粘度を、ロータ回転数が60rpmの条件でBL型粘度計により測定したとき、温度60℃での粘度ηと温度40℃での粘度ηとの比η/ηが0.8以上であるものであり、気相法シリカ(B)が酢酸イオンを対イオンとするカチオン性処理剤により被覆されたものであり、かつ前記水性分散液が気相法シリカ(B)100重量部に対してビニルアルコール系重合体(A)10〜100重量部を含むものである。
本発明で用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、8重量%水溶液の粘度を、ロータ回転数が60rpmの条件でBL型粘度計により測定したとき、温度60℃での粘度ηと温度40℃での粘度ηとの比η/ηが0.8以上であることを特徴とする。このことにより、本発明で用いられるビニルアルコール系重合体(A)を記録材などとして使用する際に、皮膜表面のひび割れがないなどの優れた物性を有する塗工物が得られる。粘度比η/ηは1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。上記ビニルアルコール系重合体(A)は、粘度比η/ηが0.8に満たない一般的なビニルアルコール系重合体に対して、高い温度領域でも粘度が大きいという特殊な性質を有しており、かかる重合体を使用することで、皮膜表面のひび割れ防止や高い光沢性といった効果を達成しうる。
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、上述したように、粘度比η/ηが0.8以上であることが必要であり、中でも下記の一般式(I)
Figure 0004861743
(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体であることが好ましい。上記ポリオキシアルキレン基のRとしては、本発明で用いられる水性分散液を皮膜とした時に高い透明性が得られる観点から、メチル基であることが好ましい。また、一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基のRとしては水素原子またはメチル基であることが好ましく、塗膜乾燥時における、粘度上昇による塗膜ひび割れ防止の観点からは、メチル基であることがより好ましい。
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)においては、ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位中のオキシアルキレン繰返し単位の数nは1〜100の整数である。オキシアルキレン繰返し単位の数nが100を超える場合には、上記ビニルアルコール系重合体(A)の水への溶解性が低くなり、本発明で用いられる水性分散液の安定性が不充分になる。上記nは、5<n<80を満たすことが好ましく、8<n<50を満たすことがより好ましく、10<n<40を満たすことがさらに好ましく、15<n<35を満たすことが特に好ましい。オキシアルキレン繰返し単位の数nが5を超える場合、皮膜とした時に高い透明性皮膜が得られ、かつ塗膜のひび割れ防止効果を得ることができる。
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度P(以下、重合度と略記する)には特に制限はないが、通常50〜10000であり、好ましくは100〜8000であり、より好ましくは300〜5000である。本発明は、ビニルアルコール系重合体(A)および気相法シリカ(B)を含む水性分散液を基材に塗工してなるインクジェット記録材に関するものであるが、上記ビニルアルコール系重合体(A)の重合度が50未満の場合には、気相法シリカ(B)同士のバインダーとしての接着強度および基材との接着強度が充分に得られないおそれがある。一方、上記ビニルアルコール系重合体(A)の重合度が10000を超える場合には、水性分散液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になるおそれがあり、かつ、上記水性分散液を基材に塗工する際に均一な塗工層が得られにくくなるおそれがある。
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)において、一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)は、ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対して0.01〜1モル%であることが好ましい。本発明のインクジェット記録材において、より優れた塗膜のひび割れ防止効果を得る観点からは、上記ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)の下限は、0.03モル%以上であることがより好ましく、0.05モル%以上であることがさらに好ましく、0.07モル%以上であることが特に好ましく、0.08モル%以上であることが最も好ましい。一方、本発明で用いられる水性分散液の放置粘度安定性を重視する場合は、上記含有量S(モル%)の上限は0.9モル%以下であることがより好ましく、0.8モル%以下であることがさらに好ましく、0.6モル%以下であることが特に好ましく、0.4モル%以下であることが最も好ましい。
また、本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度Pとポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)の積(P×S)が、下記式(1)を満足することが好ましい。
5<P×S<1500 (1)
上記P×Sが5を超えるビニルアルコール系重合体(A)を用いることにより、より塗膜のひび割れ防止効果に優れたインクジェット記録材を得ることができる。また、上記P×Sが1500未満のビニルアルコール系重合体(A)を用いることにより、本発明で用いられる水性分散液の放置粘度安定性をより顕著に改善することができる。
上記P×Sは、下記式(1’)を満足することがより好ましい。
50<P×S<1000 (1’)
また、上記P×Sは、下記式(1’’)を満足することがさらに好ましい。
100<P×S<800 (1’’)
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)のけん化度には特に制限はないが、80〜99.99モル%であることが好ましく、85〜99.9モル%であることがより好ましく、88〜99.5モル%であることがさらに好ましい。該ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度が80モル%未満の場合またはけん化度が99.99モル%より大きい場合には、ビニルアルコール系重合体(A)の水に対する溶解性が低下し、その結果、本発明で用いられる水性分散液の取扱いが困難になるおそれがある。
本発明で用いられる、上述の一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化する方法が挙げられる。ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体の製造方法としては、ポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合する方法が好ましい。
一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体としては、下記の一般式(II)で示される不飽和単量体が挙げられる。
Figure 0004861743
(Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、Aはカルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、オキシ基、アルキレンオキシ基などの2価の連結基を表す。)
一般式(II)で示される不飽和単量体のRとしてはメチル基が好ましい。また、一般式(II)で示される不飽和単量体のRとしては水素原子、メチル基およびブチル基が好ましく、水素原子およびメチル基がより好ましい。さらに、一般式(II)で示される不飽和単量体のRがメチル基であり、Rがメチル基であることが特に好ましい。
例えば、一般式(II)のRが水素原子の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、ポリオキシプロピレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンモノメタクリレート、ポリオキシプロピレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシプロピレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシプロピレンモノビニルエーテル、ポリオキシブチレンモノアクリレート、ポリオキシブチレンモノメタクリレート、ポリオキシブチレンモノアクリル酸アミド、ポリオキシブチレンモノメタクリル酸アミド、ポリオキシブチレンモノアリルエーテル、ポリオキシブチレンモノメタアリルエーテル、ポリオキシブチレンモノビニルエーテルなどが挙げられる。中でも、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアクリル酸アミドが好適に用いられる。
一般式(II)のRが炭素数1〜4のアルキル基の場合、一般式(II)で示される不飽和単量体として具体的には、上記の一般式(II)のRが水素原子の場合に例示した不飽和単量体の末端のOH基が炭素数1〜4のアルコキシ基に置換されたものが挙げられる。中でも、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルまたはポリオキシプロピレンモノアクリル酸アミドの末端のOH基がメトキシ基に置換された不飽和単量体が好適に用いられる。
ビニルエステル系単量体としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられるが、一般に酢酸ビニルが用いられる。
一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基を有する不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合するに際しては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を採用することができる。その中でも、無溶媒で重合する塊状重合法、またはアルコールなどの溶媒中で重合する溶液重合法が通常採用され、高重合度の重合体を得る場合には乳化重合法が採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールが挙げられ、これらの中でメタノールが好適に用いられる。重合に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤、または過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤など、公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、−30〜150℃の範囲が適当である。
ビニルエステル系重合体のけん化方法としては、従来公知の方法のいずれもが好適に用いられるが、通常は、ビニルエステル系重合体のアルコール溶液にアルカリ性触媒または酸性触媒を用いてけん化する方法が採用される。けん化溶媒に用いられるアルコールとしてはメタノールが好適である。また、けん化溶媒としては、無水物のみならず少量の水を含むものも目的に応じて用いられるほか、酢酸メチル、酢酸エチルなどその他の有機溶媒を含有したものでもよい。けん化温度は通常10〜70℃の範囲から選ばれる。けん化触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドなどのアルカリ性触媒が好ましい。けん化触媒の使用量は、目的とするけん化度の大小および水分量などにより適宜決められるが、重合体中のビニルエステル単位に対してモル比で0.001以上、好ましくは0.002以上であることが望ましい。
本発明に用いられるカチオン性処理剤により被覆する前のシリカ原料としては、気相法シリカを用いる。
上記気相法シリカは、四塩化珪素などのシラン系ガスを酸水素炎中で燃焼させて得られる、「ヒュームドシリカ」とも称されているものが何ら制限なく使用される。
本発明に用いられる気相法シリカの比表面積は70m/g以上が好適であり、180m/g以上がより好ましい。比表面積が70m/g未満である場合は、本発明で用いられる水性分散液を基材に塗工する際に塗工層の光沢または透明性が得られにくくなるおそれがある。なお、上記比表面積とは、S.Brunaure、P.H.Emmett、E.TellerによるJ.Am.Chem.Soc., 60, 309 (1938)に記載された多分子層吸着理論を応用して測定されるBET比表面積を示すものである。
本発明において、カチオン性処理剤により被覆された気相法シリカとは、カチオン性処理剤を気相法シリカ表面に物理吸着または化学結合により被覆させたシリカを示すものである。一般にシリカ粒子のゼータ電位は、表面シラノール基の影響により、負の値を示す。したがって、シリカ粒子がカチオン性処理剤により被覆されたことを確認する方法としては、カチオン性処理剤により被覆された気相法シリカのゼータ電位を測定し、その値が正になることを確認する方法を挙げることができる。
本発明に用いられるカチオン性処理剤は、水に溶解したとき、酢酸イオンと解離してカチオン性を示すものであれば、特に制限なく使用することができるが、第1〜3級アミン基または第4級アンモニウム塩基を有する処理剤が好適である。その中でも、ジアリルメチルアミン酢酸塩重合体などのジアリルアミン誘導体が好ましい。
上記カチオン性処理剤は、塩化物イオンと解離してカチオン性を示す重合体に、酢酸塩等を加えた後、イオン交換処理を行うことにより得られ、このようなカチオン性処理剤の平均分子量は1万〜10万の範囲にあることが好ましい。また、上記カチオン性処理剤は、酢酸イオンを対イオンとして含むものであればよく、他の陰イオンが含まれていても差し支えない。
本発明に用いられるカチオン性処理剤の使用量は、気相法シリカ100重量部に対して、3〜30重量部であることが、得られる水性分散液の安定性が得られることから好ましい。その中でもより好ましくは5〜20重量部である。
本発明に用いられる気相法シリカ(B)の平均凝集粒子径は300nm未満が好ましく、50〜300nm未満の範囲がより好ましい。平均凝集粒子径が300nm以上である場合は、本発明で用いられる水性分散液を基材に塗工する際に塗工層の光沢または透明性が得られにくくなるおそれがある。
本発明に用いられる気相法シリカ(B)は、極性溶媒中において、シリカ粒子を微粒化しながら、カチオン性処理剤をシリカ表面に均一に被覆させ、シリカ粒子を含む水性シリカ分散液として得ることが好ましい。
上記の水性シリカ分散液を調製する方法は、特に制限されないが、具体的には、極性溶媒中に気相法シリカとカチオン性処理剤とを含有させたものを予備混合処理することにより、カチオン性処理剤による気相法シリカの被覆を行い、更に微粒化処理を施して、シリカ粒子を好適な範囲の平均凝集粒子径まで微粒化して、カチオン性処理剤をシリカ表面に均一に被覆させる手法が好適に採用される。上記方法を採用することにより、カチオン性処理剤がメカノケミカル的にシリカ表面に付着し、処理が一層均一に行われるものと推定される。
上記の予備混合処理に用いる混合装置は特に制限されないが、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼等を有する一般攪拌機、ディスパーミキサー等の高速回転遠心放射型攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサー等の高速回転せん断型攪拌機、コロイドミル、プラネタリーミキサーなどの乳化機を用いる方法が挙げられる。
上記の微粒化処理に用いる微粒化装置は特に制限されないが、超音波乳化機、湿式メディア型粉砕機、高圧ホモジナイザーなどを用いた微粒化処理が挙げられる。その中でも、高圧ホモジナイザーが最も好適に使用できる。
上記水性シリカ分散液は、保存安定性や分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、カチオン性処理剤、界面活性剤、アルコール、防カビ剤などを少量添加してもよい。
本発明で用いられる水性分散液は、上記気相法シリカ(B)100重量部に対して上記ビニルアルコール系重合体(A)10〜100重量部を含む。上記(B)100重量部に対する(A)の配合量としては、15〜45重量部が好ましく、20〜40重量部がより好ましい。上記(A)の配合量が10重量部に満たない場合は、充分な塗膜のひび割れ防止効果が得られない。一方、上記(A)の配合量が100重量部を超える場合は、本発明のインクジェット記録材のインク吸収性が不充分になる。
本発明で用いられる水性分散液は、その他の効果を著しく低下させない範囲で水溶性塩を、塗膜ひび割れを防止する為の添加剤として使用することができる。かかる水溶性塩としては、硫酸、塩酸、りん酸、酢酸、ホウ酸およびスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
上記水溶性塩の使用量は、水性分散液中の気相法シリカ(B)100重量部に対して0.1〜6.0重量部であることが好ましく、0.3〜4.0重量部であることがより好ましく、0.6〜2.0重量部であることがさらに好ましい。使用量が0.1重量部未満である場合には、本発明で用いられる水性分散液を基材に塗工する際に塗工層のひび割れ防止向上効果が得られにくい。また、使用量が6.0重量部を超える場合には、本発明で用いられる水性分散液を基材に塗工する際に塗工層の光沢または透明性が得られにくくなるおそれがある。
上記水溶性塩の添加方法は特に制限はされず、ビニルアルコール系重合体(A)、気相法シリカ(B)を含む水性シリカ分散液、ビニルアルコール系重合体(A)および気相法シリカ(B)を混合して得られる塗工液のいずれを調製する場合においても添加することができる。
本発明で用いられる水性分散液には、インク定着剤としてカチオン性処理剤を配合しても良い。上記カチオン性処理剤としては、例えば、水に溶解したときに離解してカチオン性を呈する第1〜3級アミン基または第4級アンモニウム塩基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーからなり、これらの中でもオリゴマーまたはポリマーが好ましい。また、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、ビニルアミン重合体、アリルアミン重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ポリエチレンイミン、カチオン基含有変性ポリビニルアルコールなどが例示されるが、これらに制限されるものではない。
本発明で用いられる水性分散液の固形分濃度は特に限定されないが、好ましくは10〜30重量%である。上記水性分散液の調製方法は特に制限はされないが、上記ビニルアルコール系重合体(A)を含む水溶液と、気相法シリカ(B)を含む水性シリカ分散液とを混合する方法が好ましい。カチオン性処理剤により処理されていない気相法シリカとビニルアルコール系重合体を混合すると、激しい凝集による水性分散液の増粘が起こるおそれがある。
上記水性分散液は、本発明の効果を著しく低下させない範囲で、公知の任意の添加剤を配合することができる。代表的な添加剤を例示すれば、蛍光増白剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防カビ剤などを挙げることができる。上記水性分散液を基材に塗工してインクジェット記録材が得られる。
本発明で用いられる水性分散液は、他の水溶性または水分散性樹脂をさらに含有してもよい。水溶性樹脂としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、カチオン化でんぷん、アラビヤゴム、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性メラミン樹脂などが挙げられる。また、水分散性樹脂としては、SBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョンなどが挙げられる。
本発明のインクジェット記録材に用いられる基材としては、従来公知の透明性または不透明性の基材がいずれも使用できる。透明性の基材としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、セロハン、セルロイドなどのフィルム、シート、または透明性の高い紙などが挙げられる。不透明性の基材としては、一般の紙、顔料コート紙(アート紙、コート紙、キャストコート紙)、布、木材、金属板、合成紙、ポリエチレンラミネート紙、不透明化処理した合成樹脂系フィルムまたはシートなどが挙げられる。
本発明のインクジェット記録材を製造する方法としては、ビニルアルコール系重合体(A)および気相法シリカ(B)、必要に応じてインクの定着剤などを、水性媒体に分散させて水性分散液を調製し、得られた水性分散液を従来公知のサイズプレス、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーター、ダイコーターなどを用いて基材に塗工する方法が挙げられる。ここで、塗工温度については特に制限はないが、10℃〜60℃であることが好ましく、より好ましくは20℃〜60℃、さらに好ましくは30℃〜50℃である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中、特に断りのない限り「%」および「部」は重量基準であり、「重合度」は粘度平均重合度である。
I.PVAの製造と評価
下記の方法によりPVAを製造し、その重合度、けん化度、ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量、および水溶液の粘度比η/ηを求めた。
[重合度およびけん化度]
PVAの重合度およびけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
[ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量]
ビニルエステル系重合体をけん化することにより得られたゲル状物を粉砕後、メタノールによるソックスレー洗浄を3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製PVAを得た。該精製PVAを重水溶媒に溶解したものを測定試料とし、500MHzのプロトンNMR測定装置(JEOL製「GX−500」)を用いたNMRスペクトル測定から、ポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量を求めた。
[水溶液の粘度比η/η
8重量%PVA水溶液を調製し、BL型粘度計を用いてロータ回転数60rpm、温度40℃の条件で該水溶液の粘度ηを測定した。次いで、BL型粘度計を用いてロータ回転数60rpm、温度60℃の条件で該水溶液の粘度ηを測定し、PVA水溶液の粘度比η/ηを求めた。
PVA−1
還流冷却器、攪拌機、温度計、窒素導入管、後添加液用の仕込み口およびポンプを備えた6リットルの反応器に、酢酸ビニル2282g、メタノール198g、一般式(II)におけるRがメチル基であり、Rがメチル基であり、Rが水素原子であり、Aがメチレンオキシ基であり、オキシアルキレン繰返し単位の平均値nが24であるポリオキシプロピレン基を有する不飽和単量体(ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル(以下、POPMAと略記する)100gを仕込んだ。重合液を攪拌しながら、系内を窒素置換した。重合液を加温し、60℃で恒温状態になった時点で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記する)1.3gを添加して重合を開始した。重合開始時点より系内の固形分濃度を分析しつつ重合を行い、1.8時間後に反応器を冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は30%であった。得られた重合ペーストをn−ヘキサン中に滴下して重合体を析出させた。析出した重合体を回収してアセトンに溶解し、n−ヘキサン中で析出させる再沈−精製操作を3回実施した。さらに重合体をアセトンに溶解して蒸留水に滴下し、煮沸精製した後、60℃で乾燥して精製ポリ酢酸ビニル(以下、PVAcと略記する)を得た。
次に、精製PVAcの濃度17.5%のメタノール溶液を調製した。この精製PVAcのメタノール溶液を40℃で攪拌しながら、水酸化ナトリウムの濃度10%のメタノール溶液を、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02となるように添加し、60分間のけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕後、メタノールによるソックスレー洗浄を3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製PVAを得た。該PVAの重合度およびけん化度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ、重合度は2400、けん化度は98.5モル%であった。また、プロトンNMRスペクトル測定から、該精製PVAにおけるPOPMAの末端メトキシ置換体単位の含有量を求めたところ、全単量体単位に対して0.1モル%であった。上記にて得られたPVAを以下、PVA−1と称する。PVA−1の基本構造および水溶液粘度を表2に示す。
PVA−2〜15および18
重合反応の条件(酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、ポリオキシアルキレン基を有する単量体の種類およびその仕込み量、重合開始剤の使用量、重合時間)を表1に示すように変更した以外はPVA−1と同様の方法により各種のPVAを調製した。得られたPVAの基本構造および水溶液粘度を表2に示す。
PVA−16
重合反応の条件(酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、ポリオキシアルキレン基を有する単量体の仕込み量、重合開始剤の使用量)を表1に示すように変更し、かつPVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように添加した以外はPVA−1と同様の方法によりPVA−16を調製した。得られたPVA−16の基本構造および水溶液粘度を表2に示す。
PVA−17
重合反応の条件(酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、ポリオキシアルキレン基を有する単量体の仕込み量、重合開始剤の種類および使用量、重合時間)を表1に示すように変更した以外はPVA−1と同様の方法によりPVA−17を調製した。PVA−17の基本構造および水溶液粘度を表2に示す。
II.水性シリカ分散液の調製と評価
下記の方法により水性シリカ分散液を調製し、得られた水性シリカ分散液の評価を行った。
[平均凝集粒子径]
分散液中に分散しているシリカ微粒子の平均凝集粒子径をレーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−910」)にて測定を行った。
[ゼータ電位]
分散液中に分散しているシリカ微粒子のゼータ電位をレーザーゼータ電位計(大塚電子株式会社製「LEZA−600」)にて測定を行った。
(水性シリカ分散液−1の調製)
比表面積が300m/gの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS30」)240gを用い、気相法シリカ濃度が12%になるようにイオン交換水1760gと混合し、タービン・ステーター型分散機で分散することにより気相法シリカ分散液を得た。この気相法シリカ分散液をジアリルメチルアミン酢酸塩重合体(重量平均分子量20000)20%水溶液120gに添加しながら、タービン・ステーター型分散機で混合することにより、予備混合液を得た。この予備混合液を、高圧ホモジナイザーを用いて微粒化処理することにより、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−1(固形分濃度12.5重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−2の調製)
カチオン性処理剤を、ジアリルメチルアミン酢酸塩重合体(重量平均分子量20000)20%水溶液120gとジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄共重合体(重合平均分子量5000)20%水溶液60gとの混合物にした以外は、水性シリカ分散液−1と同様にして、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−2(固形分濃度12.7重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−3の調製)
水性シリカ分散液−2に、変性エタノール(エタノール85.5%、メタノール4.9%、n−プロパノール9.6%)60gを添加し、プロペラミキサーで混合することにより、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−3(固形分濃度12.3重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−4の調製)
気相法シリカを比表面積が220m/gの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS20」)にした以外は、水性シリカ分散液−1と同様にして、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−4(固形分濃度12.5重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−5の調製)
気相法シリカを比表面積が200m/gの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS102」)にした以外は、水性シリカ分散液−1と同様にして、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−5(固形分濃度12.5重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−6の調製)
気相法シリカを比表面積が140m/gの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS10」)にした以外は、水性シリカ分散液−1と同様にして、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−6(固形分濃度12.5重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−7の調製)
気相法シリカを比表面積が90m/gの気相法シリカ(株式会社トクヤマ製「レオロシールQS09」)にした以外は、水性シリカ分散液−1と同様にして、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−7(固形分濃度12.5重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−8の調製)
カチオン性処理剤を使用しなかったこと以外は、水性シリカ分散液−1と同様にして、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−8(固形分濃度12重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
(水性シリカ分散液−9の調製)
カチオン性処理剤を、ジアリルメチルアンモニウムクロライド重合体(重合平均分子量20000)20%水溶液120gにした以外は、水性シリカ分散液−1と同様にして、乳白色粘稠スラリー状の水性シリカ分散液−9(固形分濃度12.5重量%)を得た。得られた水性シリカ分散液の評価結果を表3に示す。
III.塗工液の調製と評価
下記の方法により塗工液を調製し、得られた塗工液の評価を行った。
[塗工液粘度の安定性]
塗工液の調製直後の20℃での粘度(a)と20℃で16時間放置後の粘度(b)を測定し、その比(b)/(a)から下記の基準にて粘度安定性を評価した。
A:(b)/(a)の値が2未満であった。
B:(b)/(a)の値が2以上であり5未満であった。
C:(b)/(a)の値が5を超えた。
[塗工液粘度]
塗工液の溶液粘度を、BL型粘度計を用いてロータ回転数60rpm、温度40℃およびロータ回転数60rpm、温度60℃の条件で測定した。
(塗工液−1の調製)
PVA−1の固形分濃度10重量%の水溶液50gを調製し、水性シリカ分散液−1(固形分濃度12.5重量%)200gに加え、よく混合攪拌して分散液を得た。その後、蒸留水を添加して固形分濃度11.6重量%の塗工液を調製した。塗工液の評価結果を表4に示す。
(塗工液−2〜24、27〜33の調製)
表4および表5に示したように、PVAの種類および部数、水性シリカ分散液の種類を変更した以外は塗工液−1と同様にして、塗工液を得た。塗工液の評価結果を表4に示す。
(塗工液−25、26の調製)
PVAの部数を変更し、PVAの水溶液と水性シリカ分散液との混合分散液に酢酸ナトリウムの添加を行ったこと以外は、塗工液−1と同様にして塗工液を得た。得られた塗工液の評価結果を表4に示す。
IV.インクジェット記録材の製造と評価
下記の方法により、インクジェット記録材を製造し、そのインク受理層のひび割れ、光沢度、透過度を評価した。さらにインクジェットプリンターを用いて該記録材に印刷を行ったときのインク吸収性を評価した。
(1)ひび割れ
インク受理層の表面を光学顕微鏡により観察し(拡大倍率100倍)、以下の基準にて5段階評価した。
5:表面にひび割れが全く観察されなかった。
4:表面の30%未満の領域に部分的にひび割れが発生した。
3:表面の30%以上〜50%未満の領域に部分的にひび割れが発生した。
2:表面に50%以上の領域に部分的にひび割れが発生した。
1:表面全体にひび割れが発生した。
(2)光沢度
JIS−Z8714(入射角60度の鏡面光沢度)に従い、グロスメーター(日本電色工業株式会社製)でインク受理層表面の光沢度を測定し、5回の測定値の平均値を求めた。
(3)透過度
分光光度計(株式会社島津製作所製「UV2100」)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)基体上にインク受理層を設けた記録材について、その波長500nmにおける透過率を測定した。
(4)インク吸収速度
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製「PM3300C」)を用いてインクジェット記録材に黒インクをベタ印字した後、一定時間ごとに印字面を指でこすり、かすれ具合を観察した。全くかすれなくなるまでの時間を測定し、以下の基準にて評価した。
5:5秒未満、4:5秒以上10秒未満、3:10秒以上30秒未満、2:30秒以上1分間未満、1:1分間以上。
実施例1
コロナ処理を施したPETフィルムの表面に、メイヤーバーを用いて塗工量(乾燥時)が20g/mとなるように30℃で塗工液−1を塗工し、熱風乾燥機にて100℃で5分間乾燥してインクジェット記録材を製造した。得られたインクジェット記録材の評価結果を表5に示す。
実施例2〜26
塗工液の種類を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材を製造した。得られたインクジェット記録材の評価結果を表5に示す。
比較例1〜7
塗工液の種類を表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材を製造した。得られたインクジェット記録材の評価結果を表5に示す。尚、比較例5および6は、塗工液の調製時にゲル化したため塗工することができなかった。
Figure 0004861743
Figure 0004861743
Figure 0004861743
Figure 0004861743
Figure 0004861743
Figure 0004861743
表1および表2より、PVA−1〜17は、粘度比η/ηが0.8以上であった。これに対し、PVA−18では、粘度比η/ηが0.8未満であった。また、無変性PVAであるPVA117、PVA124およびPVA135Hでは、粘度比η/ηが0.8未満であった。
表4および表5より、PVA−1〜17および分散液−1〜7を用いて調製された塗工液−1〜26は、塗工液粘度の安定性評価がAまたはB判定であった。これに対し、PVA−1およびカチオン性処理剤を使用しなかった分散液−8により調製された塗工液−31、PVA−1および塩素イオンのみを対イオンとするカチオン性処理剤を用いて得られた分散液−9を用いて調製された塗工液−32は、調製時に塗工液がゲル化した。
表6より、塗工液−1〜26を用いた実施例1〜26では、表面のひび割れがなく、光沢性が高く、インク吸収性に優れ、かつ透明性の高いインク受理層を有するインクジェット記録材が得られた。これに対し、粘度比η/ηが0.8未満であるPVA117および分散液−1により調製された塗工液−27を用いた比較例1では、フィルムが脆く皮膜とならなかった。また、塗工液−28〜30を用いた比較例2〜4では、得られたインクジェット記録材の表面全体にひび割れが発生するか、あるいは表面の50%以上の領域に部分的にひび割れが発生した。

Claims (9)

  1. ビニルアルコール系重合体(A)および気相法シリカ(B)を含む水性分散液を基材に塗工してなるインクジェット記録材であって、ビニルアルコール系重合体(A)が濃度8重量%水溶液の粘度を、ロータ回転数が60rpmの条件でBL型粘度計により測定したとき、温度60℃での粘度ηと温度40℃での粘度ηとの比η/ηが0.8以上であるものであり、気相法シリカ(B)が酢酸イオンを対イオンとするカチオン性処理剤により被覆されたものであり、かつ前記水性分散液が気相法シリカ(B)100重量部に対してビニルアルコール系重合体(A)10〜100重量部を含むことを特徴とするインクジェット記録材。
  2. 前記ビニルアルコール系重合体(A)が下記の一般式(I)
    Figure 0004861743
    (Rは炭素数1または2のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜100の整数である。)で示されるポリオキシアルキレン基を有する単量体単位を含有する請求項1記載のインクジェット記録材。
  3. 前記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)が、0.01〜1モル%である請求項2記載のインクジェット記録材。
  4. 前記ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度Pと、前記ビニルアルコール系重合体(A)中の全単量体単位に対するポリオキシアルキレン基を有する単量体単位の含有量S(モル%)との積P×Sが下記式(1)を満たす請求項2又は3のいずれか記載のインクジェット記録材。
    5<P×S<1500 (1)
  5. 前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが炭素数1〜4のアルキル基であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する請求項〜4のいずれか記載のインクジェット記録材。
  6. 前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する請求項5記載のインクジェット記録材。
  7. 前記ビニルアルコール系重合体(A)が、前記一般式(I)におけるRがメチル基であり、Rが水素原子であるポリオキシプロピレン基を有する単量体単位を含有する請求項〜4のいずれか記載のインクジェット記録材。
  8. 前記気相法シリカ(B)が、比表面積が70m/g以上の気相法シリカをカチオン性処理剤により被覆したものからなる請求項1〜7のいずれか記載のインクジェット記録材。
  9. 請求項1〜8のいずれか記載のインクジェット記録材の製造方法であって、
    極性溶媒中に気相法シリカ(B)と前記カチオン性処理剤とを含有させたものを予備混合処理することにより前記カチオン性処理剤による気相法シリカ(B)の被覆を行い、更に微粒化処理を施して水性シリカ分散液を調製した後、該水性シリカ分散液とビニルアルコール系重合体(A)を含む水溶液とを混合して水性分散液を調製し、該水性分散液を基材に塗工することを特徴とするインクジェット記録材の製造方法。
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