JP4688921B2 - 軸電界を有する分析計 - Google Patents

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Description

本発明は、細長い導体セットを有する種類の分析計に関するものである。より詳細には、本発明は、導体セットに沿って延びる軸電界を有する分析計に関するものである。
細長い導体セットを有する質量分析計、すなわち一般的には(4つのロッドを有する)四重極質量分析計は、何年間も広く用いられている。このようなロッドセットを真空室内で縦になって使用することは一般的になってきた。多くのこのような計器はでは、Q0、Q1、Q2およびQ3と呼ばれる4つのロッドセットがある。ロッドセットQ0は、イオン発生源からイオンおよびガスを受け取り、イオン伝達装置の役目を果たすと同時にそれの中のガスを離れた所に押し出すことができるようにイオン源に印加された無線周波数電圧(RF)だけを有する。ロッドセットQ1は、質量フィルタとの役目を果たす、すなわち所望の親イオンを伝えるためにそれに印加されたRFおよびDCを有する。ロッドセットQ2は、親イオンの破砕のための衝突セルとしての役目を果たすためにそれに供給された衝突ガスを有し、一般的にはそれに印加されたRFのみを有する。ロッドセットQ3は、衝突セルQ2で発生された娘イオンのための走査可能なフィルタとしての役目を果たすようにそれに印加されたRFおよびDCを有する。
米国特許第4,963,736号 米国特許第4,935,624号 米国特許第4,861,988号 米国特許第4,501,965号 米国特許第4,137,750号 米国特許第5,179,278号
上記で参照した種類のタンデム質量分析計において、および他の質量分析計においても、RFロッドセットQ0およびQ2によって規定される容積内のガスは、例えば特許文献1に記載されている衝突集束として公知の方法、感度および質量分解能を改善する。この方法では、ガスとイオンとの間の衝突によってイオンの速度は減少され、イオンは軸近くに集束する。しかしながら、イオンの減速は、ロッドセットを介する一方のロッドセットから他方のロッドセットまでのイオン伝達の際にも遅延を生じ、難点を生じる。
例えば、ロッドセットQ0が大気圧イオン源からのイオンをロッドセットQ1の中に伝達するとき、Q0の中のガス圧は比較的高い(例えば、衝突集束に対して5ミリトール以上)可能性があり、ガスとの衝突はイオンを実際上停止まで減速できる。したがって、Q0に入るイオンとQ1に到達するイオンとの間には遅延がある。いくつかのイオン密度がQ0を通るイオン伝達時間よりも速い周波数で次々と監視される場合、この遅延は複数のイオンの監視の際に問題を生じる。この場合、Q1に入るイオンからの信号は定常状態に達することができず、測定イオン強度はあまりにも低い可能性があり、測定の時間の関数であり得る。
同様に、娘イオンは衝突セルQ2で形成された後、イオンは、Q2で多数の衝突後に、その非常に低い速度のためにQ2からゆっくりと排出する。イオン除去時間(一般的には数十ミリ秒)は、擬似の読み取り(例えば、いくつかのイオン対、すなわち迅速に連続する親/破砕を監視する時の隣接チャネル間の干渉)を生じ得る。これを避けるために、かなり十分な休止時間が測定間に必要とされ、計器の生産性を減少させる。拡大イオン除去時間は擬似のピーク拡大も生じ得る。
したがって、本発明の1つの態様における目的は、
(a)部材のセットであって、そのセットの部材間に、縦軸を有する容積を画定する部材セット、
(b)前記部材にRF電圧を印加し、前記縦軸に沿って前記容積を通ってイオンを伝達する手段、
(c)前記部材に沿って延び、前記縦軸の少なくとも一部に沿って延びる軸電界を確立する手段、
を分析計に提供することにある。
他の態様における本発明は、縦軸を有する容積をその間に規定する導電部材のセットと併用するために、RFを前記部材に印加し、前記容積を通って軸方向にイオンを伝達することを制御し、前記軸に沿った軸電界を確立し、さらに前記イオンの前記伝達を制御する方法を提供する。
他の態様では、本発明は、
(a)軸方向の大きさおよび放射状の大きさを有する容積をロッドのセット間に規定し、
(b)前記容積内に制動ガスを供給し、
(c)問題のイオンを前記容積の中に注入するかあるいは前記容積内に形成し、
(d)前記容積内の問題の質量範囲にイオンを含むように前記ロッドに電位を印加し、
(e)前記ロッドの長さの少なくとも一部に沿って縦方向に軸電界を確立し、かつ前記容積内に含まれるイオンを分離するように前記電界を振動させ、
(f)検出するために問題のイオンを前記容積から排出し、
(g)分析するために排出されたイオンの少なくともいくつかを検出することを含む、サンプルを質量分析する方法を提供する。
本発明を併用することができる種類の従来の先行技術の質量分析計10を示す図1を最初に参照する。質量分析計10は、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、あるいは任意の他の所望のサンプル供給源であってもよい従来のサンプル供給源12を有する。この供給源12から、サンプルは、チューブ14を介してサンプルをイオン化するイオン源16に案内される。イオン源16は、(サンプルの種類に応じて)特許文献2および特許文献3にそれぞれに示されているような電気スプレーあるいはイオンスプレー装置であってもよいし、あるいは(サンプル源がガスクロマトグラフであるならば)コロナ放電針であってもよいし、あるいは特許文献4号に示されるようなプラズマであってもよい。イオン源16はチャンバ18内に置かれる。
イオン源16から、イオンは、(特許文献5に示されるような)ガスカーテン供給源24によってカーテンガス(例えばN2)を供給されたガスカーテンチャンバ24を通り、プレート22内の開口20を通って案内される。それから、イオンは、オリフィス板28のオリフィス27を通って、真空ポンプ30によって例えば1トールまで吸い込まれた第1のステージ真空室29の中に移動する。次に、イオンは、スキンマ31bのスキンマ開口31aを通って、真空室32の中に移動する。真空室32は、ポンプ33によって例えば8ミリトールまで吸い込まれたステージ32a、およびポンプ34で例えば3×10−5ミリトールまで吸い込まれたステージ32bに分割されている。プレート35bのオリフィス35aがステージ32a、32bを接続している。
真空室32は、Q0、Q1、Q2およびQ3として示される4つの四重極セットを含んでいる。4つのロッドセットは、共通中央軸36に沿って互いに平行に延び、各々が細長い内部容積38、40、42、44を規定するように端と端をわずかに離隔されている。
適当なRF電位およびDC電位は、概略的に50と示されているコントローラの一部である電源48によって、ロッドセットQ0〜Q3の対向するロッド対およびいろいろなイオン光学要素22、28、31bおよび35bに印加される。適当なDCオフセット電圧も、電源48によっていろいろなロッドセットに印加される。検出器56は、最後のロッドQ3のセットを通って伝達されるイオンを検出する。
使用中、通常RFのみが(別個の電源が必要となることを避けるためにロッドセットQ1からコンデンサC1を介して)ロッドセットQ0に供給され、さらにそのうえに全てのロッドに均一に印加されるDCロッドオフセット電圧が供給される。このロッドオフセット電圧はロッドセット内部に電位(軸方向電位)を与える。ロッドは導電性表面を有し、ロッドオフセット電位は全ての4つのロッドに均一に印加されるために、電位はロッドセットの長さの至る所で一定であるので、軸方向の電界はゼロである(すなわち軸電界はゼロである)。ロッドセットQ0はイオン伝達装置の役目を果たし、それを通って軸方向にイオンを伝達すると同時にオリフィス31aからロッドセットQ0に入るガスをポンプで離れた所に送ることができる。したがって、特にチャンバ18が大気圧にあり、ガスカーテンチャンバ24内の圧力が大気圧よりもわずかに高い場合、ロッドセットQ0内のガス圧は比較的高い。ロッドセットQ0内のガス圧は、いずれにしてもイオンの衝突集束を得るようにかなり高く保持される、例えばそれは約8ミリトールであってもよい。典型的な例として、印加されたオフセットは、プレート22の1000ボルトDC、プレート28の100ボルトDC、スキンマ31bの0ボルト、およびQ0の−20〜−30ボルトDCオフセットであってもよい(これは調べるイオンに応じて変えることができる)。Q1、Q2およびQ3のためのロッドオフセットは、周知のように動作モードによって決まる。
ロッドセットQ1は通常、それに印加されたRFおよびDCの両方を有するので、イオンフィルタの役目を果たし、従来のように、所望の質量(あるいは所望の質量範囲内)のイオンを伝達する。
ロッドセットQ2は、その内部容積42の中に注入された衝突ガス発生源58からの衝突ガスを有し、それの中で適当なガス圧(例えば、8ミリトール)を保持するようにアースされた金属ケース60の中に一般に封入される。ロッドセットQ2は、(RFのみが印加され、それに(前述のように)ロッドセットの容積内の電界を規定するロッドオフセット電圧)を有する。ロッドオフセット電圧は、Q2が衝突セルの役目を果たし、ロッドセットQ0およびQ1によってQ2に伝達された親イオンを破砕する場合、ロッドオフセット電圧はMS/MSモードの衝突エネルギーを制御するために使用される。
ロッドセットQ2によって構成された衝突セルの中に形成される娘イオンは、RFおよびDCの両方が印加されるロッドセットQ3によって逐次走査される。ロッドセットQ3を介して伝達されるイオンは検出器56によって検出される。検出信号は、処理され、メモリに記憶され、および/またはスクリーン上に表示され、プリントアウトされる。
次に、本発明による修正された四重極ロッドセット62を示す図2〜図5を参照する。ロッドセット62は、両方とも均一に先細にされた2対のロッド62A、62Bを備えている。一方の対62Aは、ロッドの広い端部64Aがロッドセットの内部容積68への入口66にあり、狭い端部70Aがロッドセットの出口端72にあるように置かれている。他方の対62Bは、その広い端部64Bが内部容積68の出口端72にあるように、かつその狭い端部70Bが入口66にあるように置かれる。このロッドは中央縦軸67を規定する。
ロッド62A、62Bの各対は、電源48の一部を形成するRF発生器74によって(分離コンデンサC2を介して)各対に印加されたRF電位と一緒に電気的に接続される。別個のDC電圧が、DC電源76‐1および76‐2(これもまた電源48の一部を形成する)によって、各対に、例えば、一方の対62Aに電圧V1が、他方の対62Bに電圧V2が印加される。
先細にされたロッド62A、62Bは、ロッドの中心が正方形の4つの隅にあるように、絶縁ホルダあるいは支持体(図示せず)に置かれている。所望の電界を供給するために他の間隔を使用することもできる。例えば、ロッドの広い端部の中心を狭い方の端部の中心よりも中心軸67の近くに置いてもよい。
それとは別に、図6〜図9に示すようにロッドは全て同じ直径であってもよい。図6〜図9の′を付けられた参照番号は図2〜図5の同じ参照番号に対応する部品を示す。図6〜図9において、ロッドは同じ直径のものであるが、一方のまま62Aの端部64Aは一方の端部で四重極の軸67により近く置かれており、また他方の対62Bの端部68Bは他方の端部で中心軸67により近くに置かれている。前述のいずれの場合も、DC電圧は、一方の端部と他方の端部で異なる軸方向電位(すなわち軸67上の電位)を供給する。好ましくは、この差はなだらかであるが、後述されるように、この差は段々になっている差であることもあり得る。どちらの場合も、軸電界は軸67に沿って形成される。
図2〜図5に示されたものにおいて、入口端部66の中心軸67上のDC電位は、大きな直径のロッド端部64Aが近接しているために大きな直径のロッド端部64A上の電位(V1)により近い。出口端72で、電位は大きな直径のロッド端部64B上の電位により近いので、この電位はV2により近い。1つの例では、ロッド直径は、40%だけ互いに異なり(大きな端部の各ロッドの直径は12.5mmであり、小さい端部の直径は7.5mmであった)、電位V1およびV2は、それぞれ3ボルトおよび2ボルトであった。
この場合、モデルプログラムによって計算される中心軸67に沿った電位は、入口端部の2.789ボルトから出口端部72の2.211ボルトまで変えられた。軸方向電位78は、軸67に沿った電位が垂直軸上にプロットされ、入口66から出口72までの距離が水平軸上にプロットされている図10に示されている。
図11は、四重極軸67に垂直で、そこから中心軸電位が得られる平面内のロッドセット62の一方の端部の等電位線80を示している。
前述した幾何学的形状の有効性は、図2〜図5に示された幾何学的形状を有するRF四重極を構成し、図1に示された種類の3重の四重極の質量分析計システムの衝突セル(Q2)としてRF四重極を作動させることによって示された。前述のように、この構成では、4つの先細のロッド62A、62Bからなる四重極は、絶縁された入口開口および出口開口でアースされた金属ケース60の中に囲まれ、V1=3ボルトおよびV2=2ボルトであった。衝突セルQ2の圧力は、約8.0ミリトールに設定され、レセルピンのm/z609親イオンのm/z195破砕イオンからのイオン信号が監視される(609/195と示される)。したがって、Q1は、質量m/z609を通過させるように適合され、Q3はm/z195を通過させるように適合される。
コントローラ50のデータシステムは、約10ミリ秒(ms)間、609/195イオンを伝達するように設定され、それからQ1は、m/z195を与える親イオンが全然ない質量m/z600に自動的に設定された。Q1をm/z600(なお、m/z195のQ3の場合)に設定した後、イオン信号が測定されない休止時間があった。この休止時間は、0から500ミリ秒の間で変えることができる。休止時間後、m/z600/195のイオン信号は10ミリ秒間測定され、このサイクルが繰り返される。
図12は、垂直軸上のm/z600/195の信号の強度対水平軸上のミリ秒の休止時間をプロットする。軸電界のない標準の四重極のプロットが84として示され、図2〜図5に示されるような先細りのロッドを有する四重極のためのプロットが86として示されている。
軸電界のない標準の四重極の場合、m/z609親イオンから形成された娘質量195のイオンがなおQ2から漏れていて、600/195チャネルに記録されるため、Q1をm/z600に移動後、30ミリ秒以上の間、質量609/195のイオンからの信号が、持続することがプロット84から分かる。換言すると、イオンは、ロッドセットQ2における多数の衝突後、速度が非常に遅くなっているために、ロッドセットQ2からゆっくりと排出する。(Q2は、実際、Q3のためのガスイオン源の役目を果たしている。)
ロッド62Aとロッド62Bとの間に1ボルト差を印加することによって軸電界が形成された場合、この差は、センチメートル当たり0.578/15=0.038ボルト(15センチメートルの長さのロッドに対して)であるように計算される、前述のような軸電界を形成する。図12のプロット86によって示されるように、この軸電界は、10ms未満の時間にロッドセットQ2からの大部分のイオンを除去するのに十分である。
DC電位が高いと除去時間はいくぶんより速くなり、例えば、3.0ボルトの電圧差では除去時間は2.0ms未満である。しかしながら、あまりに大きい(この場合、3.0ボルトよりも大きい)電圧差は、隣接ロッドの電圧差で誘起される放射線軸電界成分のためにイオン信号を減少させる。
ロッドセットQ2を空にする主要な長所は、急速に連続していくつかのイオン対(親/破砕)を監視する場合、隣接チャネル間に全然干渉がないことである。軸電界がない場合、同じ親質量を有するイオン対を急速に連続して監視するときに干渉が観察される。見てわかるとおり、測定と測定との間に10ミリ秒以上の休止時間をとった場合、8ミリトールの圧力で、センチメートル当たり0.038ボルト程の小さい軸電界で、十分に干渉を取り除くことができる圧力が高ければ、同じ効果を生じるためにより大きい電界が必要である。
さらに、ロッドセットQ2の同じイオン遅延問題によって引き起こされた親走査および中性損失走査モードの干渉は、十分な軸電界が使用される場合、除去される。例えば、親走査モードでは、ロッドセットQ3m/zが固定され、ロッドセットQ1は質量範囲にわたって走査される。ロッドセットQ3を通って伝達される特定の破砕質量に生じる親イオンは質量スペクトルを生じる。走査速度が速く、ロッドセットQ2の圧力が衝突セルを取り除く際に数ミリ秒の遅延を生じるようなものであるならば、たとえQ1が親イオンの伝達のための窓を通過したとしても、(もはやQ2に伝達されていない親イオンから)Q2に形成される破砕はなおQ3の中に漏れているので、立下がりイオン信号は見せかけの広いピークを生じる。
Q2を取り除く際のこの遅延は、垂直軸上に相対信号強度および水平軸上にm/zをプロットする図13Aの88として示されるピーク形状を生じる。プロット88には擬似の広がった立下がり90がある。
図13Bは、イオンがロッドセットQ2をより速い速度で移動し続けるように軸電界(端部間の1.0ボルト差)が印加されたときに達成されるピーク形状92を示している。図13Bから分かるように、ピーク間の鮮鋭度は良く、図13Aの90に示された種類の高い質量“テール”が全然ない。
次に、本発明の他の変形を示す図14および図15を参照する。図14および図15は、通常のように配置されているが、縦方向に6つのセグメント96A‐1〜96A‐6および96B‐1〜96B‐6(セクション96B‐1〜96B‐6は別個に示されていない)に分割されている2対の平行円筒状ロッド96A、96Bからなる四重極ロッドセット96を示している。隣接セグメントあるいはセクション間のギャップ98は非常に小さく、例えば0.5mmである。各Aセクションおよび各Bセクションには、分離コンデンサC3を介してRF発生器74から同じRF電圧が供給されるが、各々には、抵抗器R1〜R6を介して異なるDC電圧V1〜V6が供給される。したがって、セクション96A‐1、96B‐1は電圧V1を受け取り、セクション96A‐2、96B‐2は電圧V2等を受け取る。これは、垂直軸上に軸電圧を水平軸上にロッドに沿った距離をプロットする図16の102に示されているように、ロッドセット96の中央の縦軸100に沿って階段電圧を生じる。個別の電位は、各セクションのための個別のDC電源あるいは各セクションに供給するための抵抗性分圧器回路網を有する1つの電源によって発生できる。
図16に示された階段状の電位はほぼ一定の軸電界を生じる。同じ長さを多くのセクションは、分ければ分けるほど、階段の大きさは微細になり線形の軸電界に近似するが、図示したような6つのセクションを使用すると良い結果が生じることが分かる。
図14および図15の幾何学的形状の使用の例では、ロッド長22cmおよびロッド直径0.9cmのRF四重極は図にあるように6つのセクションに分割され、同じ振幅のRF電圧が全てのセクションに印加された(RFはAセクションに印加され、Bセクションと180°位相がずれていた)。セグメントに分けられたこのような四重極を、Q0(図1)、すなわちイオンを大気圧イオン源16からQ1に伝達するQ1への入口装置として利用した。この動作モードのQ0の圧力は8.0ミリトールであった。(したがって、イオン源16はQ0のためのガスイオン源であり、Q0はQ1のためのガスイオン源である。)
次に、この装置は、2つのイオン間、すなわち、低質量イオン(m/z40)と高質量イオン(m/z609)との間の“ホップをピークにする”ために使用された。
この動作モードでは、Q1において低質量から高質量に急激に変わるときに、Q1に印加されたRF電圧およびDC電圧に大きなジャンプがある。Q0はコンデンサC1を介してQ1からRFを受け取るので、RF電圧およびDC電圧のジャンプは、Q0に短いDCパルスを形成し、これはQ0から全てのイオンを追い出すという望ましくない結果を有する。次に、遅延が生じると同時に、Q0がイオンで充満し、再びQ1にイオンを送る。いくつかのイオン強度をQ0を通る通過時間よりも速い速度で順次監視すると、Q1に入るいずれの所与の質量のイオンも定常状態信号に達せず、測定イオン強度はあまりにも低く、測定時間の関数であることがある。Q0のために別個のRF電源を備えることが非常に高価であるため、質量分析計メーカは、この問題に我慢してきた。
結果として、軸電界がない高圧の通常のRF四重極Q0では、イオンは、定常状態信号に達するのに数十ミリ秒必要とすることがある。イオンをQ0を通って移動させ続ける軸電界を使用した場合、RF電圧の大きな変化後のQ0の回復時間あるいは補充時間はずっと短い。これは、垂直軸上にm/z609イオンの相対強度を、水平軸上に時間をプロットする図17に示されている。5つのプロット104〜112が、図17に示されているが、これはそれぞれV1とV6との間の電圧△Vが、0.0ボルト、0.2ボルト、0.55ボルト、2.5ボルト、および5.0ボルトの場合を示している。
図17からロッドの全長に沿った電圧差△Vが無軸電界と同じゼロボルトである場合、イオン信号が定常状態に達するのに約50ミリ秒要することが図17から分かる。軸電界が増加するにつれて、定常状態信号に達する時間は、△V=5ボルトの場合、約10ミリ秒まで減少する。これはセクション当たり約5/6ボルトのグラジエントに対応する。
したがって、軸電界により、イオンをRF四重極Q0の一方の端部から他方の端部まで定常状態で急速に伝達しなければならない高圧状態でQ0を使用することが可能になる。図示した例では、いくつかのm/z値が高速で(すなわち、m/z値当たり10ミリ秒で)逐次監視され、RF四重極Q0が殆ど遅延なくイオン源からQ1の入口に各m/zイオンを伝達できる動作モードが可能である。
無軸電界と比べた場合の利点は、イオンを減速してほとんど静止させるのにガスが最も有効な、長いRFロッドおよび高圧の時に最も大きい。
6つのセグメントを用いる図示された例では、伝達時間の遅延をゼロまで減少させる上で、装置の性能は個別セグメント上の正確な電圧にそれほど敏感ではなかった。セグメント間の差は、性能に著しい影響を及ぼさないで±25%だけ変えることができる。これは、イオンがQ0を移動し続けるのに十分な力を生じるために軸電界は均一である必要がないことを示唆した。
必要に応じて、中心にイオンを捕捉するために電位をロッドセット96の中心の電位ウェルに供給する(すなわち、中心に各サイドよりも低い電位を与える)ように設定できることも理解されよう。そうすると、この電位は、捕捉イオンを排出するために一方の端部の方へ顕著なグラジエントを生じるように変えられる。この配置は、通常、入口装置Q2においてよりも(イオンが破砕され、それから排出される)衝突セルQ2において使用される。
次に、RF四重極に軸電界を生じる他の方法を示す図18および図19を参照する。図18および図19の配置では、四重極ロッド116A、116Bは従来のものであるが、絶縁リング120によって分離された6つのセグメント118‐1〜118‐6に分割される円筒状の金属ケースあるいはシェルによって取り囲まれている。四重極の中心軸122の電界は、ロッド116A、116B上の電位と、ケース118上の電位で決まる。ケースの正確な寄与は、中心軸122からケースまでの距離に依存し、適当なモデルプログラムによって決定することができる。セグメントに分割されたケースを用いれば、図15および図16の軸電界と同様に、すなわちグラジエントに近似する階段状に軸電界を形成することができる。
直径0.615インチのロッドを有する四重極の周りのケース直径が2.75インチの場合、ケース118に印加された約100ボルトDCの電圧は中心軸122に沿った電位に2、30分の1ボルトを印加することが計算によって突きとめられた。
例えば、各々が絶縁リング120によって分離された6つのセグメントにそのケース118を有するRF四重極は、図1に示されるような3重の四重極質量分析計システム10上に構成され、衝突セルQ2として設置された。ケース118は、衝突ガスを閉じ込める、図1のケース60の役目を果たした。6つのセグメントに対する電圧が抵抗R1〜R6(図14)を介して供給され、セグメント間に等しい電圧差を生じた。セグメントの電圧は図18のV1〜V6によって示される。6つのセグメントの両端間の全電圧差は、0から250ボルトDCの範囲で調整することができる。
ロッドセットQ2からゆっくりと排出されるイオンに由来した干渉を除去する際のこの配置の有効性は、m/z609/195(レセルペンからの測定できるイオン信号があるはず)からm/z600/195(イオン信号がないはず)の間で急速に変えることによって示された。
図20のプロット126によって示されるように、軸電界が全然なく、測定間に全然遅延がない場合、600/195で擬似信号があるが、これは実際にはQ2を通ってQ3の中に漏れ続けているm/z609/195イオンに帰因するものである。この擬似信号が低レベルまで減少するのに約30ミリ秒が、ゼロまで減少するのに50ミリ秒かかる。使用中、干渉を排除するには、約50ミリ秒あるいはそれ以上の休止時間が干渉を除去するのに必要である。
ケース118の6つのセクションの両端間の100ボルトによって誘起される軸電界の場合、親信号がほとんどゼロに減少する時間は、プロット128によって示されるように約40ミリ秒まで減少された。250ボルトによって誘起される軸電界の場合には、干渉を除去するのに必要な遅延あるいは休止時間はプロット130によって示されるように20ミリ秒未満まで減少される。
次に、ロッドセットに沿って軸電界を誘起する他の方法を示している図21〜図23を参照する。図21〜図23に示すように、4つの小さい補助電極あるいはロッド134‐1〜134‐4が、四重極136A、136B間の空間に取り付けられている。図示された例では、補助ロッド134‐1〜134‐4は、四重極136A、136B間に等距離の正方形に配置されているが、四重極ロッドの軸によって形成された正方形に対して45°回転されたロッド134‐1〜134‐4によって規定された正方形である。各補助ロッド134‐1〜134‐4は抵抗性材料の表面層140を有する絶縁コア138を有する。
各ロッド134‐1〜134‐4の2つの端部間に印加された電圧により、電流が抵抗層に流れ、一方の端部から他方の端部への電位グラジエントが生じる。4つの補助ロッドが全部並列に接続された場合、すなわち補助ロッドの端部間に同じ電圧差V1(図23)がある場合、発生された電界は四重極の中心軸142の電界に寄与し、軸電界あるいはグラジエントを生じる。
抵抗性層140が常抵抗率のものであるならば、電界は一定である。所望ならば、非線形電界を発生するために均一でない層を備えてもよい。四重極の軸142に沿った電界の大きさは、補助ロッド134‐1〜134‐4の端部間の電位差V1および四重極の軸142からの補助ロッドの距離によって決定される。
使用に際し、図21〜図23に示された種類のRF四重極は、Q0の位置、すなわちQ1の入口装置として配置された。図14〜図17に関連して前述したように、イオンが、(低質量から高質量へジャンプする時に生じるQ1のRF電圧の大きなジャンプによって誘起されたDC電圧パルスによって)Q0から排出されると、高質量イオンがQ0を通って伝達されQ1に到達するまで遅延がある。低質量と高質量との間でジャンプする時のイオン信号を監視し、高質量信号の測定前に遅延を変えることによって、イオン信号の回復時間を測定することができる。
垂直軸上にm/z609の相対強度を、水平軸上にミリ秒で時間をプロットした図24のプロット144に示されているように、Q1において質量40からm/z609へジャンプした後、イオンが定常状態信号に達するまで、すなわちQ0が補充され、イオンの定常状態ストリームをQ1の中に伝達するのに、80ミリ秒以上の時間が必要である。
4つのポスト134‐1〜134‐4の長さの両端間に90ボルトによって誘起された軸電界の場合、図24のプロット146によって示された回復あるいは充満時間は40ミリ秒未満まで減少され、実際に、定常状態に近いレベルに達するまで20ミリ秒未満まで減少される。電位差が大きければそれだけ回復は速くなるだろう。
補助ロッドすなわち電極134‐1〜134‐4が抵抗性材料で被覆されているものとして示されているが、所望ならば、図25の補助ロッド150のために示されているように、セグメント化することができる。ロッド150は、絶縁リング152によって分離された、例えば6つのセグメント150‐1〜150‐6に分割される。異なる電圧V1〜V6を、図18、図19のセグメント化されたシェル118の場合のようにセグメント化された補助ロッド150に印加してもよい。
いろいろな他の方法を用いて、四重極(あるいは他の多重ロッドセット)の軸に沿って軸電界を発生することができる。例えば、四重極の単一ロッド156を示している図26を参照する。ロッド156は、図示されるように5つの取り囲む導電性金属バンド158‐1〜158‐5を有し、ロッドを4つのセグメント160に分割している。ロッド表面の残り、すなわち各セグメント160は、正方形当たり2.0〜50オームの表面抵抗率を有するように抵抗性材料で被覆されている。5つのバンドの選択は、設計の複雑さ対最大軸電界との妥協であり、その制約の1つは抵抗性表面に生じる熱である。
RFは、コンデンサC4を介してコントローラ50から金属バンド158‐1〜158‐5に印加される。RFブロッキングチョークL1〜L5を介して各金属バンド158‐1〜158‐5に個別のDC電位V1〜V5が印加される。
図25の実施例の使用において、バンド158‐1〜158‐5の全てに均一に印加されたRFは、セグメント160の抵抗性被覆を通ってある程度まで伝達もされ、ロッド156の長さに沿って比較的均一のRF電界を生じる。しかしながら、異なるDC電圧V1〜V5がバンドに印加された場合、ロッド156の長さに沿ってDC電圧グラジエントが確立される。任意の所望のグラジエント、例えば、ロッドセットを通過するイオンの速度を速めるための完全に一方方向のグラジエント、あるいはロッドセットの中心(縦方向)に電位ウェルを有するグラジエントを、イオン封じ込め応用で使用するために選択できる。
次に、四重極のようなロッドセットの他の単一ロッド170を示す図27〜図28を参照する。ロッド170は、外部表面上に高導電性の一対の端部金属バンド174を有する絶縁セラミックチューブ172として形成される。バンド174は、外部に設けられた抵抗性の外部表面被覆176によって分離されている。チューブ172の内部は導電性金属178で被覆されている。チューブ172の壁は比較的薄く、例えば、約0.5mm〜1.0mmである。
外部に設けられた抵抗性表面176の表面抵抗率は、通常、正方形当たり1.0〜10MΩである。V1およびV2によって示されるDC電圧差は2つの金属バンド174によって抵抗性表面176に接続されるのに対して、電源48からのRF(図1)は内部に設けられた導電性金属表面178に接続されている。
外部表面176の高抵抗率は、外部表面の電子が(約10MHzの周波数である)RFに応答することを制限するので、RFは殆ど減衰のない抵抗性表面を通過できる。また、電圧源V1はロッド170の長さに沿ってDCグラジエントを確定し、再び、軸DC電界を確定する。
図28A、図28Bは修正されたロッド配置を示している。図28A、図28Bでは、各四重極ロッド179は、低抵抗率、例えば正方形当たり300オームの表面材料で被覆され、RF電位はRF電源180によって従来の方法でロッドに印加される。別個のDC電圧V1、V2は、RFチョーク181‐1〜181‐4を介して全て4つのロッド全ての各端部に印加される。ロッド179の表面の低抵抗はRF電界にあまり影響を及ぼさないが、ロッドの長さに沿ったDC電圧グラジエントを可能にし、軸電界を確立する。抵抗率はあまり高くしてはならない。さもないと抵抗熱が生じることがある。(あるいは、外部ロッドあるいはシェルを抵抗性被覆と併用することができる。)
ロッドセットの長さの一部に沿って軸電界を印加するだけで十分な場合がある。例えば、ロッドセットに入るイオンは、通常、比較的速く移動し、ロッドセットの長さの最後の半分に沿ってのみ減速するので、ロッドセットを通過するイオンの速度を速めることが目的であるような用途では、ロッドセットの長さの最後の半分あるいは最後の部分に沿ってのみ軸電界を印加するだけで十分なこともある。しかしながら、セグメント化ロッドあるいはセグメント化ケースあるいはポストを使用する場合は、ロッドセットが極端に短くない限り(せいぜい1インチあるいは2インチ)、2つのセグメントしか備えないとロッドセットの長さの十分な部分に沿って延びる電界が生じないので、通常3つ以上のセグメントを設ける。少なくとも3つのセグメントがあり、一般に3つ以上のセグメントがあるのが好ましい。
次に、大気圧イオン源184からイオンを受け取る高圧入口ロッドセット(Q0として機能する)を示す図29を参照する。ロッドセット182はポンプ186で吸い上げられるチャンバ185に置かれる。イオン源184からのイオンは開口187、ガスカーテン室188、開口189、ポンプ190bで吸い上げられる第1ステージ真空室190aおよびスキマーオリフィス191を通ってQ0の中に伝達される。Q0から、イオンはオリフィス192を介して一対のプレート196、198を含む低圧領域194の中に案内されるが、一方のプレート(プレート195)は単にワイヤグリッドである。低圧領域194はポンプ200で吸い出される。公知の方法で、プレート196、198間の低圧容積202内のイオンは、適当なDCパルスによって、グループとして横に波動して、端部に検出器206が置かれた飛行時間チューブ204の中に入る。ロッドセットQ0におけるイオンの軸速度は、Q0の充満時間および空時間に関連した問題を取り除くために前述のようなDC軸電位を印加することによって制御することができる。軸電界の制御によって、プレート196、198間の容積202の中にイオンを入れるタイミングを制御することもできる。プレート196、198を、前述のように形成して、その長さに沿って軸DC電界を供給することもできる。例えば、このプレートを、セグメント196‐1〜196‐6および198‐1〜198‐6によって示されるように、長さに沿ってセグメント化することができ、このセグメントは絶縁ストリップ199によって分離される。その代わりに、補助ロッド(図示せず)を備えてもよい。そのように供給された軸電界を制御することによって、プレート196、198間の低圧容積202に入るイオンを軸方向の絞りまで減速し、それから、従来の方法で検出するために飛行時間チューブ204を下方にグループとして横に波動することができる。
図29に示された飛行時間システムは波動装置であるので、1つのイオンパルスを、(例えば、出口プレートの電位を上げることによって)分析すると同時にQ0にイオンを蓄積し、それから次のイオンパルスを抽出プレート196、198に入れることが好ましいかもしれない。Q0の軸電界を利用して、必要に応じてイオンを抽出領域に急速に排出し、イオンが空間電荷のために単に漏れ出す場合に得られるパルスよりも狭いパルスを有するようにすることができる。
プレート196、198は、「半径方向の排出を有する質量分析計」という題名のチャールズジョリフの同時係属出願に記載されているように、ロッド198a、198b、198c、198d(図30)を有し、かつ1つのロッド198cにスロット200を有するRF四重極と代替できる。この領域のRFロッドは空間内の狭い半径方向の位置にイオンを閉じ込め、軸方向の絞りまでイオンを減速するようにイオンを入れた後に軸電界を印加できる。イオンを減速するかあるいはイオンを支持体まで運んだ後、電圧パルスは、イオンをスロット200を通って分析のための飛行チューブの中に注入するために、対向するロッド198aに印加できる。このような装置ではイオンはゆっくり移動するか、あるいはもっと好ましくはイオンが全然移動する方がよいのは公知であるので、イオンが飛行時間に注入される前、イオンを減速するために逆電界を印加できることにより、飛行時間システムの性能が改良される。
さらに、イオンのエネルギーを制御する、あるいは軸電界下の多重極でイオンを動かすのが目的である場合、あるいは冷却ガスあるいは衝突ガスあるいはドリフトガスと組み合せるか、無冷却ガスを組み合せないに関わらず、軸電界を印加することによって多重極内部の軸イオンエネルギーを制御することあるいは変えることが望ましい場合、あるいは多重極内部から他の装置に迅速にイオンを移動させることが望ましい場合、またはイオンのエネルギーを制御するかあるいは軸電界の働きの下で多重極を介してイオンを移動させることが目的である場合、軸電界を、任意の質量分析計あるいはイオン光学装置の入口装置として使用されるRF四重極あるいは多重極に印加できる。例えば、イオンをイオントラップの中に案内するRFロッドは、特許文献6に記載されているように、イオンをイオントラップに入れる前に蓄積するために好都合に使用できる。軸電界を利用して、イオンが空間電荷の働きの下で漏入できる短い時間にイオンをRFロッドからイオントラップに注入するのを助けることができる。
軸電界装置の他の長所は、冷却ガスがある場合、軸電界を利用してイオンが軸電界の働きの下でこの装置を通ってドリフトするときいくつかのイオンの分離を生じると同時に半径方向の衝突集束により、イオンが拡散によって消失することを防止することができる。例えば、冷却ガスあるいはドリフトガスの存在下で、イオンが軸電界のあるRF多重極の中に入れられる場合、イオン速度は軸電界に比例する一定値に達する。異なる大きさのイオンは、その形状、質量および電荷に依存する異なる速度でドリフトし、イオンが装置の出口に到着する時に分離される。出口ゲート(例えば、出口オリフィス192にあるレンズ)が適当な時間に開かれると、一定の種類のイオンだけが質量分析計のような次の分析装置あるいは他の装置に入れられる。同じあるいは類似の質量のイオンが異なるドリフト時間を有する場合、この移動性分離はイオンの混合の分析を助けるために適用できるので、分析に付加的な特異性の度合いを与える。
前述した軸電界の別の用途として、特に衝突セルQ2において、必要に応じて、イオン分離を助ける際に使用する。衝突セルQ2において、分離は通常イオンとQ2にある衝突ガスとの間の衝突によって得られる。しかしながら、イオンと衝突ガスとの間の衝突はイオンを非常に低速度に減速し、分離の効率は低下し、分離処理は比較的多くの時間を必要とする可能性がある。衝突セルを通って前方にイオンを駆動するために軸電界を使用することによって、分離効率は改善される。
さらに、所望ならば、軸電界を、図31のプロット210によって示されるようなプロフィールを有し、各端部でより高い電位212、214とQ2の真中で電位ウェルを有するように配置することができる。したがって、ウェル216の周辺の軸電界は、高周波で軸方向に振動でき、イオンの平衡位置の周りに軸方向にイオンを振動させる。このような振動中、イオンの大多数をQ2の端部の外側へ駆動しないことが重要であるので、コントローラ50は、限られた振幅によってその平衡位置の周りに軸方向にイオンを振動させるように、例えば、(図18、図19の実施例における)電圧V3およびV4あるいは必要に応じてV1〜V6の全てを変える。ウェル216を有する代わりに単に軸電界を前後に振動させ、振動の各半サイクルの持続期間および軸電界強度を制御することによって大部分のイオンがロッドセットの端部の外側に消失することを防止することが好ましいこともある。
イオンの共振周波数あるいは共振周波数の高調波でさえ作動する必要は全然ない。すなわち、軸電界励起は例えば方形波であってもよい。イオンがほとんど消失することもなく、イオンは、(振動振幅が約±0.71cmに制限される場合の従来のイオントラップと対照して見ると)イオンの平衡位置の周りに軸方向に(例えば)約±2.5cm振動できる。イオンへの入力であり得る最大エネルギーは平衡状態からの最大距離として決まるので、イオンへのエネルギー入力は従来のトラップで得られるエネルギー入力よりもかなり大きい。
前述された軸振動はMS/MSで大きなイオンを破砕するためばかりでなく、(イオン源がプラズマである場合の)誘導結合プラズマ応用における酸化物イオ
ンを分離するため、および他のイオンのために有用であり得る。
所望ならば、本発明の軸電界は解像モードのRFの唯一の四重極(例えばQ0)で使用することができる。この技術では、適当な圧力(例えば、8ミリトール)の制動ガスがQ0の中に入れられるので、イオンがQ0に入るとき、衝突集束が、(米国特許第5,179,278号に記載されているように)生じ、Q0の軸の周りの小さい領域にイオンを消失する。印加された軸電界によって、イオンは軸方向にQ0を通って移動する。フィルタリングされた雑音電界は、関心の質量(あるいは質量範囲)のイオンを除く全てのイオンを排出するために雑音電界におけるノッチを有する(その説明および図面が参照によりここに組み込まれている特許文献6の図5に記載され、図示されているような)Q0のロッドに印加されている。
本発明の軸電界は、Q1に入ったりあるいは出たりするイオンを妨害する傾向がある、Q1の入口および出口のフリンジ電界の影響を軽減するために解像(低圧、例えば0.1ミリトールよりも小さい)四重極(例えば、従来のACおよびDC電圧がそのロッドに印加される場合のQ1)で使用することもできる。軸電界は、イオンがQ1に入ったり出たりしたときにイオンの速度を速めるが、Q1の中央部を通過する際は減速するようにQ1のような解像四重極の入口および出口に置くことができるので、イオンは解像電界でより多くの振動を行い、それによってQ1の分解能を増加させる。これは、セグメント化ケースあるいは補助ロッドもしくは電極220を解像電界あるいはロッド222の中心部の周りに備えることによって、かつロッドセット222に入ったり出たりするイオンの速度を速くするように入口オフセットおよび出口オフセットを調整するが、イオンがロッドセット222の中心部を通過中、ケースあるいはロッド220によって形成された軸電位を調整することによってイオンを減速して図32に示されるように得られる。それとは別に、シェル118(図18)あるいは補助セグメント化ロッド150(図25)は、解像ロッドセットに入ったり出たりするイオンの速度を速め、ロッドセットの中心部を通って移動するイオンを(軸方向に)減速するために使用する(および所望ならば、四重極ロッドセットの各セットを越えて延びる)ことができる。
次に、一組の四重極ロッド230の長さに沿ってDC電圧グラジエントを発生する補助ロッドあるいは電極の使用について他の変更を示す図33〜図36を参照する。図33〜図36のバージョンでは、図示されるような四重極ロッド230間に正方形形状に取り付けられた4つの並行補助ロッド232が使用される。(2つの補助ロッド232のみが明瞭にするために図33に示され、4つの全ての補助ロッドは図34および図35に示されている。)
補助ロッド232は傾斜されているので、補助ロッドは、ロッド230の一方の端部240のロッドセット230の中心軸236よりももう一方の端部238のロッドセット230の中心軸236により近い。補助ロッドは端部240の軸よりも端部238の軸により近いので、端部238の電位は他方の端部240の電位よりも補助ロッドの電位によってより大きく影響を及ぼされる。図36に示されるように結果として、補助ロッドはまっすぐであるので、一方の端から他方の端まで均一に変わる軸電位242となる。補助ロッド232が曲げられるならば、この電位は非線形で変化するように形成することができる。
図33〜図36に示された実施例の長所は、RF四重極の幾何学的形状が標準であり、補助ロッド232が抵抗被覆されているのではなくむしろ単に導電性金属であるということである。したがって、この補助ロッドは形成するのがより容易である。さらに、図33〜図36の実施例で強い軸電界の発生は、図2〜図5に示された先細りのロッド方法が負わせるような(イオン消失を生じ得る)大きな横向きの電界を負わせない。
図33〜図36の傾斜補助ロッド232は電極ロッド230の全長に沿って延びるように示されているが、もちろんこの補助ロッドは、この長さの一部だけに沿って延びることができ、用途に応じて、ロッド230の端部間、あるいは端部の一方あるいは他方に隣接して置くことができる。例えば、入口端部および出口端部のフリンジ電界を通るイオン移送を改善する目的のために、および非常に低いエネルギーイオンを四重極に導入するために質量解像四重極の入口および出口の軸電界を発生するために使用することができる。
次に、中心軸252を有する従来の四重極ロッドセット250を示す図37および図38を参照する。ロッド250間に置かれ、ロッド250の入口256からロッド250の長さの約1/3延びる(それの2つだけが図37に示されている)第1の組の4つの補助ロッド254が備えられている。
ロッド250の最後の1/3に沿って延びる(ロッド250の端部260で終わる)第2の組の4つの補助ロッド258が備えられている。図37の262に示されているロッド250の長さの真中の1/3には補助ロッドがない。
従来のDCオフセット電圧V1は電極ロッド250に印加される。より高いDC電圧V2は補助ロッド254に印加されるのに対して、電圧V1を超えるが電圧V2よりも小さい電圧V3は補助ロッド258に印加される。
これらの電位は図39の262に示されるように電極ロッド250の軸252に沿って軸電圧を形成する。図示されるように、軸電位262は、ロッド250の長さの最初の1/3に沿って延びる平坦域264を有する。平坦域264には、軸DC電位がロッド250に印加されたオフセット電圧V1によってセットされるウェル266が続く。ロッド250の長さの最後の1/3に沿って、軸電位は平坦域264よりも低い他の平坦域268まで上昇する。
イオンがロッド250に導入されるとき、例えば、ロッド250が図1の衝突セルQ2として役立つとき、衝突が生じ、イオンはエネルギーを失う。イオンがロッド250の中央部262でエネルギーを失う時に、イオンは、2つの平坦域264、262間に捕捉され、イオンエネルギーがこの目的に対して十分であるならば、より多くの衝突および破砕を促進する。したがって、イオンおよび/または破砕片は、平坦域268は平坦域264よりも低いので、ロッドセットの出口端260の方へ優先的に排出される。所望ならば、平坦域268は、ロッドセットの中心でトラップからのイオンの流出の速度を速める軸電界をロッドセット250の最後の1/3に沿って確立するように傾斜することができる。その代わりに、所望ならば、イオンの排出を遅らせるために他の形状を使用することができる。
それとは別に、イオンが飛行時間ドリフトチューブの中に排出されるならば、イオンはウェル266の中に蓄積し、それから前述のように、平坦域268は平坦域264よりも低い(あるいは所望ならば、平坦域268は電圧V3を減少することによってイオンが排出されるべき時間に低下できる)ので出口端260の方へ優先的に排出することができる。
いろいろな方法は軸電界を確立するために使用することができることが前述の開示から分かる。この方法は、外部装置(例えば、外部シェルあるいは補助ロッド)、(例えば、ロッドの形状、ロッドの配置を変え、ロッドをセグメント化するか、あるいは抵抗性表面をロッドに取り入れることによる)ロッド自体の操作、および軸電界を生じる他の方法を含んでいる。他の例は、図40に示されているが、図40では、図18、図19のセグメント化ケーシングが各々がロッド(図40に図示せず)の周りに延び、各々が異なる電位V1〜V6に接続されている外部グリッドのセット270‐1〜270‐4に変えられている。このグリッドは、円形、正方形、あるいは他の所望の幾何学的形状であってもよい。さらに、補助ロッドあるいは電極が使用される場合、ロッド数は多重極のロッド数と同じである必要がない。軸電界は、互いに対向して置かれた2つの補助ロッドあるいは電極だけで確立することができる。 本発明の軸電界は、いろいろな種類の電極セット、例えば、三重極、四重極、六重極および八重極、並びに図29に関連して記載されたプレートと併用することができることも分かる。本発明の軸電界を使用する電極セットは、イオンを任意の適当な装置、例えば、イオントラップ、(前述のような)飛行時間分析計あるいは他の光学分析計に向けるために使用することもできる。
図示されたロッドセットは直線として示されているが、ロッドセットは、所望であれば(例えば小型化のため)例えば、半円あるいは他の所望のアーチ形状の形で湾曲することができることが理解できる。したがって、中央の縦軸は、もちろん湾曲の形状をたどるが全てその他は本質的に同じままである。
前述された軸電界は質量分析計に関して説明されているが、軸電界は、他の応用、例えば、光学分析計、あるいは他の適当な応用のイオン移動を制御するために使用することもできる。
本発明の好ましい実施例が記載されているが、変更が本発明の精神内で行うことができ、全てのこのような変更が請求の範囲に含まれることを意図されていることが理解される。
本発明と共に使用できる種類の従来のタンデム質量分析計の概略図 図1の質量分析計のロッドセットの中の1つの代わりに使用する、先細りロッドセットの2つのロッドの側面図 図2のロッドセットの入口端の端面図 図2のロッドセットの中心の断面図 図2のロッドセットの出口端の端面図 本発明による修正ロッドセットの2つのロッドの側面図 図6のロッドセットの入口端の端面図 図6のロッドセットの中心の断面図 図6のロッドセットの出口端の端面図 図2〜図5のロッドセットの中心軸に沿った典型的なDC電圧グラジエントを示すプロット 図2〜図5のロッドセットの周りの電界パターンを示す断面図 図2〜図5のロッドセットが図1の装置のロッドセットQ2の代わりに使用される場合の、イオン信号強度対時間を示すプロット 従来の質量分析計を使用して形成され、擬似の幅広いピークを示す質量スペクトル 図2〜図5のロッドセットを図1のロッドセットQ2として使用して形成される質量スペクトル 本発明による他の修正ロッドセットの2つのロッドの側面図 図14のロッドセットの端面図 図14および図15のロッドセットに沿った電圧グラジエント 図14および図15のロッドセットが図1のロッドセットQ0として使用される場合の回復時間を示すグラフ 本発明による他の修正ロッドセットの2つのロッドの側面図 図18のロッドセットの端面図 図18および図19のロッドセットが図1のロッドセットQ2として使用される場合の回復時間を示すプロット 本発明の他の修正ロッドセットの端面図 図21のロッドセットの2つのロッドおよび補助ロッドの側面図 図21および図22のロッドセットの補助ロッドのそれぞれの図 図21〜図23のロッドセットが図1のロッドセットQ0として使用される場合のイオン信号の回復時間を示すプロット 本発明によるロッドセットのための修正補助ロッドの側面図 本発明によるロッドセットのための他の実施例の側面図 本発明によるロッドセットのためのさらに他の実施例の側面図 図27のロッドの中心の断面図 本発明による修正ロッドセットの概略図 図28Aのロッドセットの端面図 イオンを横から飛行時間チューブの中に排出するプレートを使用する、本発明による修正装置の概略図 本発明の軸電界が併用できる修正ロッドセットの端面図 図29の実施例のプレートに沿った軸電界のためのパターンを示すプロット 本発明による他のロッドセットの概略図 本発明によるロッドセットのさらに他の実施例の側面図 図33のロッドセットの一方の端部からの端面図 図33のロッドセットの他方の端部からの端面図 図33〜図35のロッドセットの中心軸に沿った典型的なDC電圧グラジエントを示すプロット 本発明による他の修正ロッドセットの側面図 図37のロッドセットの端面図 図37、図38のロッドセットの中心軸に沿った典型的なDC電圧グラジエントを示すプロット 本発明による修正外部電極セットの概略図
符号の説明
10 質量分析計
12 供給源
16 イオン源
18 チャンバ
26 ガスカーテン発生源
30、33、34 ポンプ
48 電源
50 コントローラ
56 検出器
58 衝突ガス発生源
62、96、136 四重極ロッドセット
66 入口
67 中央縦軸
68 内部容積
120 絶縁リング
134 補助電極

Claims (4)

  1. 分析計において、
    (a)部材のセットであって、そのセットの部材間に、縦軸を有する容積を画定する部材のセット、
    (b)前記部材にRF電圧を印加し、前記縦軸に沿って前記容積を通ってイオンを伝達する手段、および
    (c)前記部材に沿って延び、前記縦軸の少なくとも一部に沿って軸電界を確立する手段を有し、
    前記部材のセットが1組のロッドを含み、
    前記ロッドの各々が、内部表面および外部表面を有する絶縁材料のチューブを備え、前記軸電界を確立する手段が前記外部表面を被覆する抵抗性材料と、前記抵抗性材料に接続された、DC電圧を受けるための一対の端部金属バンド前記外部表面上に備え、前記チューブが、RFを印加するための該チューブの内部表面を被覆する導電性材料のコーティングを有することを特徴とする分析計。
  2. 前記ロッドが四重極ロッドセットを形成することを特徴とする請求項1に記載の分析計。
  3. 前記軸電界がDC電界であることを特徴とする請求項2に記載の分析計。
  4. 前記容積内に衝突ガスを含み、前記容積内のイオンの衝突冷却あるいは粉砕を生じさせることを特徴とする請求項2に記載の分析計。
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