JP4578613B2 - Qポール型質量分析計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減圧(真空)雰囲気中にてガス分子の質量を計測するための質量分析計に関する。特に、0.1Pa以上の比較的高圧の雰囲気中でも使用可能である質量分析計、および小型で高質量分子を高感度で計測可能である質量分析計、並びに極微量なガスを計測可能である質量分析計に関する。
【0002】
【従来の技術】
マスフィルター、四重極型質量分析計などとも呼ばれるQポール型質量分析計は、小型・シンプルな構造と容易な制御にて広いダイナミックレンジを持った高感度な計測が行えるため、ガス分子の質量を測定する質量分析計として非常に一般的なものとなっている。Qポール型質量分析計は、ガスをイオン化するイオン源、イオンの質量分別を行うQポール、質量分別されたイオンを検出するコレクタにより構成され、通常0.01Pa以下の低い圧力の雰囲気中にて動作される。図9に通常動作条件での従来のQポール型質量分析計を示す。
【0003】
Qポールは四本の棒(ポール)がミクロンオーダの高精度で平行配置されており、通常長さが100〜300mm、対向するポールの間隔が5〜10mmとなっている。各ポールには、1〜5MHz程度の高周波電圧:Vと直流電圧:Uが印加される。正確には対向するポールに同じV、U電圧を、隣接するポールには−V、−U電圧を印加する。これらによって径方向に関しては、特有な四重極電界(双曲電界)が形成される。この四重極電界の軸上付近に存在するイオンは、クーロン力により径方向に振動し、V、Uの値によって決められる特有な質量/電荷以外のイオンは軸外に放出される。
【0004】
一方、軸方向に関しては、どの軸方向位置においても同じ電位となり軸方向の電界(電位の位置変化率)はゼロとなる。そのため、イオンには軸方向のクーロン力は発生しない。同じ電位となるのは、ポールが一体で同電位となりポールの軸方向位置によって電圧が変化していないためである。すなわち、どの軸方向位置においても軸に垂直な断面では、全く同じ電界が形成されているために、軸方向の電界は発生していないのである。
【0005】
通常、イオン源の電圧をQポールの軸上電位(四重極電界の中心電位)よりも10V程度高くし、イオンを10eVの直進エネルギーに対応する速度(速度10eV)にてQポール内を前進させる。この時、径方向に関しては、特定な質量/電荷を持ったイオンだけが安定的に振動を続ける。そこで、特定なイオンのみがQポールを通過し、コレクタにて検出され信号となる。特定な質量/電荷を持たないイオンは、途中で散逸される。このように、Qポール内におけるイオンの径方向の動きと軸方向の動きとは、完全に独立している。
【0006】
V、Uの値の比率を変化させることにより、計測されるイオンの質量/電荷を選択することが出来、1〜1000amu(atomic mass unit:原子質量単位)程度のイオンを計測することが可能である。しかし、質量数Mamuのイオンを十分な分解能で質量分別するためには、Qポール内で、少なくとも(M/0.5)0.5 の2〜4倍の振動が行われなければならない。つまり、2amuでは5回、50amuでは30回、100amuでは50回、300amuでは100回程度の振動が必要となる。すなわち、この振動に要する時間よりも、イオンのQポール通過時間を長くする必要がある。そこで、Qポールの長さ、高周波振動数との関係から、質量分別が達成し得るイオンの速度が決められる。例えば、Qポールの長さが200mm、高周波振動数が2MHzの場合、およそ速度15eVにて、全ての質量範囲に必要な振動数をちょうど満足する。
したがって、質量分別が達成し得るイオンの速度は約15eVが最大となり、より十分な分解能を得るためには5〜10eVの速度とすることが必要となる。
【0007】
Qポール型質量分析計は0.01Pa以下の雰囲気にて使用されるとしたが、0.01Pa以上の高圧雰囲気で動作されると雰囲気ガスとイオンの衝突が発生して正常な計測が阻害される。以下、この説明を行う。
【0008】
平均自由行程とは、イオンなどが雰囲気ガスに衝突せずに進むことのできる平均距離のことであり、雰囲気の圧力(密度)に反比例する。厳密には、雰囲気ガスとイオンの大きさ、質量、速度にも関連するので、圧力だけでなくガスの種類やイオンの速度にも依存する。0.1PaのAr雰囲気中であれば、平均自由行程はHeイオン(4amu)で120mm、CO2イオン(44amu)で60mmとなり、300amuの大きなイオンでは33mm程度となる。
【0009】
イオンの平均自由行程がQポールの長さより小さい、例えば、雰囲気圧力が1Paの場合には、Qポールを通過するイオンは統計的(平均的)には必ず雰囲気ガスと衝突する。簡単のため、衝突は必ず軸方向で正面衝突するものとみなす(実際には径方向の衝突成分もあるが、平均すれば相殺されて無視することができる)。
【0010】
イオンが雰囲気ガスより質量が大きい場合には、イオンは衝突時に雰囲気ガスからの圧力を受けて速度が大幅に低下する。したがって軸方向の速度は衝突のたびに遅くなり、最終的にはQポール内にて停止してしまう。ただし、径方向の振動に関しては変化はない。この状況を図10に示した。
【0011】
減速の割合はイオンと雰囲気ガスの質量比がより大きいほど少ない。すなわち、重いイオンほどあまり減速しない。一方、イオンが雰囲気ガスより質量が小さい場合には、衝突後には跳ね返ってイオンの進行方向が逆になってしまう。質量が同じ場合には、一回の衝突で停止してしまう。これらの衝突前後の速度変化は、次式で統一的に表される。
V2=V1(Mi−Mg)/(Mi+Mg)
ここに、V1:イオンの衝突前速度、V2:衝突後速度、Mi:イオンの質量、Mg:雰囲気ガスの質量である。
【0012】
いずれにしろ、雰囲気ガスとの衝突により、停止・逆行を含めた減速が発生し、Qポール内でのイオンの前進が阻害される。そのために、通常は、平均自由行程がQポールの長さより大きくなる0.01Pa以下の圧力で使用される。
【0013】
このため、0.01Pa以上の圧力のガスを測定する場合には、Qポール型質量分析計の領域のみ差動排気を行い圧力を下げ、そこに小さなコンダクタンスの導入パイプを経てガスを導入しなければならなかった。この複雑な構造によりコスト・信頼性の問題だけでなく、測定すべきガスの濃度が薄くなり感度が劣化するという問題も発生させていた。工業的には測定すべきガスが大気圧であるケースが圧倒的に多いが、この場合には2〜3段の差動排気が必要で特に問題が深刻であった。
【0014】
なお、最近0.1〜1Paの高圧雰囲気でも動作が可能とする超小型のQポール型質量分析計が開発されている。これは、原理的には通常のQポール型質量分析計と同じであるが、Qポールの長さを10mm(通常の1/10)程度と短くして、0.1〜1Paでの平均自由行程より短い距離内で質量分別してしまう方式である。しかし、Qポールの長さが短いのでポール間隔も1mm以下とする必要があり、要求されるQポールの位置精度が非常に厳しくなる。そのため、現状では十分な性能が達成できず、製造での困難さとコストも増大している。
【0015】
一方、通常のQポール型質量分析計では、特に高質量分子の感度を劣化させる深刻なフリンジング問題が存在する。フリンジング問題は、Qポールの端面(フリンジング)付近において電界がQポール中央付近より弱くかつ乱れていることにより発生するもので、端面電界問題、端電場問題とも呼ばれる。正常な電界となっているQポール内では安定的な振動となる特定なイオンも、フリンジング領域では、不安定な軌道となって発散してしまい、感度の大幅な低下が引き起こされる。
【0016】
Qポールの入口側(イオン源側)すなわち入口フリンジング領域での影響は非常に大きく、出口側(コレクタ側)すなわち出口フリンジング領域ではほとんど影響しないことが知られている。これは、入口フリンジング領域を通過するイオンは、少しでも入射方向や位置がずれるとその後の質量分別に大きな影響を与えるが、出口フリンジング領域を通過するイオンは、その後コレクタに入りさえすれば良いからである。
【0017】
Qポール端面の外側・内側それぞれでポール間隔に等しい距離までは電界が乱れていると考えられるので、フリンジング領域は概ねポール間隔の2倍の長さとなる。Qポール内で電界が乱れていないQポール領域は、ポールの長さからフリンジング領域を差し引いた長さとなる。
【0018】
フリンジング問題の影響は、フリンジング領域における振動回数に比例して大きくなる。そのため、悪影響の度合いはイオンの軸方向速度に逆比例することになる。すなわち、イオンの速度が遅ければ、フリンジング領域にイオンが滞在する時間が長くなり、不安定な振動が繰り返され悪影響が大きくなる。実験的にも、フリンジング領域での振動が1回以上となると悪影響が急増することが知られている。
【0019】
同一の直進エネルギーを持ったイオンでは高質量ほど速度が遅くなるので、フリンジング問題は高質量で非常に深刻となる。例えば、フリンジング領域の長さが5mm、高周波振動数が2MHzの場合であって、イオンの速度が5eV、15eV、30eVの時、フリンジング領域における振動回数は、それぞれ、2amuでは0.5回、0.26回、0.2回、28amuでは1.7回、0.98回、0.7回、50amuでは2.3回、1.3回、0.9回、100amuでは3.2回、1.7回、1回、300amuでは5.6回、3.2回、2.3回となる。すなわち、速度5eVでは28amu以上で、速度30eVでも100amu以上でフリンジング問題の悪影響が出る。
【0020】
直進エネルギーを大きくすればQポール領域内での滞在時間が短くなり悪影響は低減するが、上述の質量分別において振動数が不足し必要な分解能が得られなくなる。そこで、実際には両方の問題が妥協できる10eV程度の直進エネルギーが採用されている。しかし、この条件でも、フリンジング問題により100amuでは1/5、300amuでは1/100程度まで感度が低下することが知られている。
【0021】
フリンジング問題の対策としては、従来いろいろな方法が考案されている。特公昭40−17440号では高周波電圧と直流電圧の比率を変えた複数のセグメントのQポールを使用している。入射側のQポールでは、分解能を大きく設定してフリンジング問題を低減し、順次分解能を小さくして中央のQポールで所要の分解能が得られるようにしている。しかし、構造が複雑となる上、各セグメントのQポール間での電界の乱れによる性能劣化が新たに発生するという問題があった。なお、Qポールは各セグメントに分かれているものの、各Qポールの軸上の電位は同じである。したがって、軸上における軸方向の電界はゼロで、イオンの軸方向速度は一定となっている。
【0022】
特開昭48−41791号ではフリンジング部にノズルを配置しているが、ノズル自体が新たに電界を乱すという問題があった(100amuでは1/5、300amuでは1/100となるデータは、このノズル方式での結果である)。
【0023】
また、Qポール領域内での軸上の直流電位をアース電位ではなく、例えば100Vと高くすると同時に、イオン源の電位を110V、イオン源とQポール間の電位を0Vとすることも行われている。この場合には、イオンはフリンジング領域を速度100eVの高速で通過するので悪影響が少なくなり、またQポール領域内ではイオンは減速して速度10eVの低速で前進するので正常に質量分別がなされる、との考えである。
【0024】
しかしながら、実際にはこの方式はほとんど効果を挙げていない。これには二つの原因がある。まず、Qポール内の軸上電位とQポール外の電位に大きな差が発生したため、直流電位成分が大きく歪みフリンジングの悪影響がより強くなっているからである。つぎに、イオンが減速している位置は、正確にはフリンジング領域内(最終端近く)であって、決してQポール領域内ではない。軸方向の電界が存在すればイオンは減速するが、その軸方向の電界が軸に垂直な断面で完全に一様でなければ悪影響が発生する。つまり、その位置はまさしくフリンジング領域となる。そのため、この方式では実際にはフリンジング領域内での振動回数は低減していないからである。特に、この減速電界はQポール側の四重極電界と外側の一様な電界(無電界)の非対称な電界から形成されているため、その断面は一様とはならず電界が大きく乱れている。
【0025】
いずれにしろ、従来では有効なフリンジング問題に対する対策はなく、高質量分子を高感度で計測できるQポール型質量分析計は存在していなかった。
【0026】
近年、Qポール型質量分析計に動作原理は類似している3次元四重極型質量分析計(イオントラップ)が実用化されている。イオントラップでは、Qポール型質量分析計のようにイオンが一方向に移動しながら質量分別されるのはなく、3次元四重極内の同じ領域に留まりながら質量分別される。しかし、3次元四重極内の高周波電界と直流電界によって、特定な質量/電荷を持ったイオンのみを検出するという原理は全く同じである。これらは、特公昭60−32310号、特公平4−49219号、特公平8−21365号などで詳しく示されている。
【0027】
イオントラップでは、軸方向への移動が不要であるため0.1Paの高圧雰囲気でも計測できること、フリンジング(端面)が存在しないため高質量ガスを感度劣化なしに計測できることのメリットがある。また特定ガスのイオンは蓄積し、その他は除去する濃縮機能により、極微量なガスの計測を行えるというメリットもある。しかし、同じ領域にイオンが留まるため、空間電荷の影響で多くのイオンを同時に計測できることができずダイナミックレンジが狭いこと、イオン溜め込みと質量掃引を交互に行うために複雑な制御が必要であること、イオン源の拡張性がないことなどの問題がある。
【0028】
なお、イオントラップにおいて、0.1Paの高圧でも計測可能であることは注目に値する。すなわち、軸方向に移動しないとしても、イオンは3次元四重極内で振動しているので実質的には十分に長い行程を持っている。この行程は0.1Paでの平均自由行程よりも遥かに長くイオンは雰囲気ガスと何回も衝突しているが、質量分別は問題なく行われている。これは、安定的な振動をしているイオンが、衝突によりイオンの軌道が変更されても安定振動を維持することを示している。磁場偏向型の質量分析計では、イオンの軌道が途中で変われば必要な初期条件が失われ、以後の質量分別が全く不可能となることと対称的である。
【0029】
四重極電界を利用する原理がQポール質量分析計と同じものとして荷電粒子の非接触的保持・輸送を目的とした四重極レール装置が存在しており、四重極電極を水平面から傾け、帯電粒子を、重力を利用して四重極の中心軸上、つまり軸方向へ非接触のまま下方へ滑降させる方法や、粒子と同極性に帯電させた絶縁物を粒子に近づけその反発力により粒子を軸方向に移動させる方法などが知られている。
【0030】
上記の四重極レール装置における重力を利用した方法では、粒子(荷電粒子)の質量は、ガス分子などと比べると非常に大きい。すなわち、四重極レール装置は、ガス分子などの質量分別が目的ではなく、質量の大きな粒子、例えば、結晶構造を有する物質の粒であるパーティクルなどの測定に用いられる装置である。
仮に、この粒子(荷電粒子)がイオン化されたガス分子(イオン)である場合は、イオンがQポール領域を通過するのに要する時間が極端に長くなってしまい、計測器として実用にほど遠いものとなる。
【0031】
上記の四重極レール装置における粒子と同極性に帯電させた絶縁物との反発力を利用した方法では、Qポール領域に入射された帯電粒子をクーロン力の反力を利用してQポール領域外へ押し出さなければならないので、必然的に四重極電界に乱れが生じ、正常な質量分別が不可能となる。さらに、この方法では、駆動機構はQポール領域にそって往復動作するため、帯電粒子を連続的にQポール領域外へ輸送することができない。したがって、質量分析器として、この方法もまた実用にほど遠いものとなる。
【0032】
上記のように四重極レールとQポール質量分析計では、四重極電界を利用する原理こそ同じであるが、研究のために大きなパーティクルの非接触保持・輸送を主目的としている四重極レールと、計測のためにガス分子の連続的な質量分別を目的としたQポール型質量分析計では、その用途・機能・構造はまったく異なる。従って四重極レールの粒子輸送方法をQポール型質量分析計に応用するすることは性能上および実用上の観点から全く不可能である。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
従来のQポール型質量分析計において、0.1Pa以上の高圧雰囲気では、イオンが雰囲気ガスと衝突して軸方向の速度がゼロになり、Qポール領域内で停止し、コレクタに検出されなかった。
【0034】
また、四重極電界内において荷電粒子を輸送する方法として、重力や同極に帯電させた絶縁物を近づけて、その反力を利用したものなどがあるが、いずれの方法によってもガス分子の連続的な質量分別を行うことは不可能であった。
【0035】
また、Qポール型質量分析計の感度を劣化させるQポール端面(フリンジング)付近の端電場の影響を少なくするためにイオンを高速入射すると、そのまま高速でQポール領域内を通過するので必要な振動回数が得られず、正常な質量分別が行われないなどの問題があった。
【0036】
更に、濃縮機能が行えず、極微量なガスの計測を行えないという問題点もあった。
【0037】
【課題を解決するための手段】
本発明では、Qポール内におけるイオンの径方向と軸方向の動きが完全に独立していることに注目し、径方向でのイオンの動き、すなわち質量分別の機能は従来どうりとしながら、軸方向の力を与える種々の方法によってイオンの軸方向の動きを制御することにより上記問題を解決した。
【0038】
すなわち、Qポール領域内において軸方向の速度が低下したイオン、あるいはほとんど停止するまでに減速されたイオン(なお、これらのQポール領域内におけるイオンの軸方向の速度の低下、減速は、イオンが雰囲気ガスと衝突することによって引き起こされるものである。)に対して、Qポール領域内において新たな軸方向の力を連続的に、あるいは間欠的に与えて加速させ、前進を続行させてコレクタにて検出できるようにした。
【0039】
また、フリンジング問題の悪影響を低減させるため高速入射されたイオンを、Qポール領域内において新たな軸方向の力を与えて減速させ、あるいはほとんど停止するまでに減速させ、正常な質量分別が行えるようにした。
【0040】
また、Qポール領域内においてイオンの軸方向の速度をほぼゼロとし、特定ガス(極微量なガス)のイオンのみを蓄積し(Qポール領域内に滞留させ)、その他は除去する濃縮機能を持たせ、当該蓄積(滞留)した特定ガス(極微量なガス)のイオンをコレクタ側に射出する工程を間欠的に行うようにした。
【0041】
軸方向でのイオンの動きを制御する手段として、本発明は、以下の手段を採用するものである。
1)Qポール型質量分析計を構成する4本のQポールがそれぞれ軸方向位置によって異なる直流電位を有し、当該4本のQポールの軸方向での同位置では4本とも、直流電圧:Uを除けば、等しい直流電位を持つように構成されているQポールにより形成された電界により発生するクーロン力。
2)計測すべきイオンの雰囲気ガスとの衝突により発生する反力。
3)計測すべきイオンが、Qポール領域内にて新たに軸方向の力を受けなくても、Qポール領域を通過できるように、Qポール長さ、雰囲気ガスの種類と圧力、イオン源とQポールの軸上電位を設定して行う制御。
4)計測すべきイオン自体によりQポール領域内に形成された空間電荷により発生するクーロン力。
5)径方向に印加された四重極高周波電界に同期した高周波磁場により発生するローレンツ力。
6)径方向に印加された時間的に強度変化する磁場により発生する電磁誘導力。
【0042】
前記の各手段は、それぞれ単独で用いてもよいし、複合させて用いることもできる。例えば、電界により発生するクーロン力のみによって軸方向でのイオンの動きを制御することもできるし、電界による制御と空間電荷による制御とを複合させて軸方向でのイオンの動きを制御することもできる。
【0043】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して説明する。
【0044】
【実施例1】
図1は本発明の第一の実施例を説明する概略図である。本実施例で説明するQポール型質量分析計は、高圧の雰囲気中でも動作可能で、かつ高質量分子を高感度で計測可能なQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を、4本のQポールがそれぞれ軸方向で異なる直流電位を有し、当該4本のQポールの軸方向の同位置では4本とも、直流電圧:Uを除けば、等しい直流電位を持つように構成されているQポールにより形成された電界によって発生するクーロン力で行うものである。
【0045】
Qポール型質量分析計の基本的な構造は従来品と同一であるので、その説明は省略する。Qポール1の長さは、従来品と同じ100〜300mmとすることができるが、本実施例のQポール型質量分析計においては、Qポール1表面に、らせん状に抵抗薄膜3が形成されている点が従来品と相違している。抵抗薄膜3とQポール1表面との間には絶縁薄膜2が挟まれている。図1中、符号8で示されている部分が抵抗薄膜形成部となる。
【0046】
この実施例では、抵抗薄膜3の幅と下地露出面(薄膜がなくQポール1本来の表面が露出している所)の幅はほぼ同じである。抵抗薄膜3の入口側には200V、出口側には100Vの直流電位が印加されている。
【0047】
4本のQポール1とも同じ構造となっているので、Qポール1内の電位は軸方向の位置、すなわち入口から出口の位置まで一定の率で減少している。そのため、Qポール1内の軸上には軸方向に関して、イオンが前進する方向の電界が形成されており、イオンにはクーロン力が働き加速される。
【0048】
なお、本実施例では、イオン源4に200V、コレクタ5に0Vが印加されている。
【0049】
一方、Qポール1自体には従来のQポール型質量分析計と同じく、V、U電圧が印加されている。直流電位としては0Vとなる。そのため径方向に関しては、下地露出面からのV、U電圧により四重極電界が形成される。ただし、電界の加法法則により抵抗薄膜3からの直流電位が重層(重畳)するので、四重極電界の全体の電位がQポール1の軸方向の位置によって変化している。
【0050】
そのため、イオンは軸方向には加速されながら、径方向では質量分別が行われる(ただし、直流電位とV、U電圧の露出面は半分ずつとなるので、電界の絶対値は、全面がV、U電圧の露出面である場合の半分の大きさとなる)。
【0051】
この実施例では、雰囲気ガスの圧力は、従来のQポール型質量分析計が用いられる限界を大きく超えた1Pa程度となっている。
【0052】
この圧力ではイオンの平均自由行程は10mm以内となり、Qポール1内ではイオンは必ず雰囲気ガスと衝突する。そのため、イオンは図1中、符号9で示すように、軸方向に関して衝突直後に一旦減速するが、本実施例のQポール型質量分析計においては、上記クーロン力により直ちに加速される。加速されたイオンはふただび雰囲気ガスと衝突し減速・加速を繰り返し、Qポール1内ではイオンはあまり高速にならずに前進を続ける。
【0053】
この実施例のように両端で50Vの差があるQポール1内で20回以上の衝突が発生するので、例えば雰囲気ガスと同質量のイオンでは、前進の速度は最大でも2.5eV(=50/20)となり十分に質量分別が行われる。重いイオンの場合には減速の割合が小さいが、電圧勾配を小さくしたり雰囲気ガスの質量を大きくして前進の速度を低く抑えることができる。
【0054】
一方、平均自由行程より短い5mm程度の長さを持つ入口フリンジング領域6では、ほとんどのイオンは衝突せずに100eVもの高速で通過する。そのため、フリンジング問題の悪影響はほとんどない。出口フリンジング領域7を50eVで通過したイオンはコレクタ5にて検出される。
【0055】
このようにして、高圧の雰囲気中でも動作可能で、しかも高質量分子を高感度で計測することが可能である。
【0056】
なお、本実施例の変形として、Qポール1表面の抵抗薄膜3の面積を下地露出面よりも十分に大きくあるいは全面薄膜とすると同時に、薄膜に直流電位だけでなくV電圧、U電圧を重層(重畳)させることによって同様な動作を行わせることもできる。
【0057】
【実施例2】
図2は本発明の第二の実施例を説明する概略図である。本実施例で説明するQポール型質量分析計は、高質量分子を高感度で計測可能なQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を、4本のQポールがそれぞれ軸方向で異なる直流電位を有し、4本のQポールの軸方向の同位置では4本とも、直流電圧:Uを除けば、等しい直流電位を持つように構成されているQポールにより形成された電界によって発生するクーロン力で行うものである。
【0058】
実施例1で説明した本発明のQポール型質量分析計とは、Qポール1において導電薄膜10が追加され電圧印加状況が異なる点、および雰囲気ガスの圧力が0.1Pa以下である点が異なるのみで、他は同様である。
【0059】
この実施例のQポール型質量分析計においては、Qポール1の中央に、Qポール1表面との間に絶縁薄膜2を介在させて、らせん状に導電薄膜10が形成されており、Qポール1の両端側には、Qポール1表面との間に絶縁薄膜2を介在させて、らせん状に抵抗薄膜3が形成されている。図2中、符号8、8で表される部分が、らせん状に抵抗薄膜3が形成されている抵抗薄膜形成部、符号11で表される部分が、らせん状に導電薄膜10が形成されている導電薄膜形成部である。そして、中央の導電薄膜10に200V、抵抗薄膜3の最両端に0Vが印加されている。イオン源4には110V、コレクタ5には0Vが印加されている。
【0060】
図2中、左側の、入口に近い抵抗薄膜形成部8においては、前記実施例1の場合とは逆に、Qポール1内の電位は軸方向の位置、すなわち入口から導電薄膜10が形成されている位置まで一定の率で増加している。そのため、Qポール1内の軸上には軸方向に関して、イオンが前進する方向と反対方向の電界が形成されており、イオンにはクーロン力が働き減速される。
【0061】
そこで、入口フリンジング部6で悪影響を受けないように110eVの高速でここを通過したイオンは、入口に近い抵抗薄膜形成部8において、前進方向とは逆の電界により、質量分別が達成され得る速度である10eVまで減速される。
【0062】
この実施例のQポール型質量分析計においては、0.1Pa以下の圧力のため、ほとんどのイオンは雰囲気ガスと衝突せず中央部では10eVの低速のまま前進する。
【0063】
なお、通常よく使用される条件を考慮すれば、イオンの速度を20eV以下にまで減速すれば、質量分別を達成し得る。
【0064】
図2中、右側の、出口に近い抵抗薄膜形成部8に達したイオンは、前記実施例1の場合と同じように、前進方向の電界により加速され、出口フリンジング部7を100eVの高速で通過しコレクタ5にて検出される。
【0065】
したがって、中央部では十分な質量分別が行われる一方、フリンジング部での悪影響はほとんどない。そのため、高質量分子を高感度で計測することが可能である。
【0066】
なお、本実施例の変形として、中央の薄膜部を実施例1と同様に抵抗薄膜3として電位勾配をつければ、1Pa程度の高圧の雰囲気中でも動作可能となる。
【0067】
【実施例3】
図3(a)は本発明の第三の実施例を説明する概略図である。本実施例で説明するQポール型質量分析計は、高圧の雰囲気中でも動作可能なQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を、雰囲気ガスとの衝突による反力によって行うものである。
【0068】
本実施例のQポール型質量分析計は、イオン源4とコレクタ5が、ガスが通り抜け得る構造となっており、そこをキャリアガスが流れている構造になっている点を除き、従来のQポール型質量分析計と同様である。
【0069】
キャリアガスとしての雰囲気ガスの圧力は1Pa程度で、キャリアガスはQポール1内を符号14で示されるように、イオンの前進する方向に流れている。
【0070】
この実施例のQポール型質量分析計においては、イオンはキャリアガスと衝突するたびに前進方向の反力を受けるので、図3(b)に示すように、イオンの軌道15は、符号16で示す衝突と停止を繰り返しつつ、キャリアガスの流れに乗って前進する。
【0071】
すなわち、イオン源4で発生したイオンはキャリアガスの流れとともにQポール領域に入り、軸方向に関しては質量分別が達成され得る速度である20eVを大きく下回る低速で前進し、径方向に関する四重極電界によって質量分別が行われる。
【0072】
この実施例のQポール型質量分析計においては、図3(a)図示のように、細いノズル形状の入口電極12と出口電極13を採用することにより、フリンジング領域での電界の乱れを小さくするとともに、フリンジング領域でのキャリアガスの流速を早めてフリンジング問題による悪影響を低減させることができる。
【0073】
【実施例4】
図4は本発明の第四の実施例を説明する概略図である。本実施例で説明するQポール型質量分析計は、高圧の雰囲気中でも動作可能で、かつ高質量分子を高感度で計測可能なQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を、Qポールの長さ、雰囲気ガスの種類と圧力、イオン源とQポールの軸上電位の各条件を設定することによって行うものである。
【0074】
この実施例のQポール型質量分析計は、イオン源4に印加される直流電圧、Qポール長さ、および雰囲気ガスの種類・圧力及び、Qポールの軸上電位を除いて従来例と同様である。
【0075】
具体的には、イオン源4は60V、Qポール1の長さは200mm、雰囲気ガスが1PaのHe、Qポール1の軸上電位は0Vとなっている。
【0076】
例えば、ボンベに充填されたHeを、可変流量バルブを通して減圧された雰囲気に導入して、1PaのHe圧力を持続させる。
【0077】
Qポール領域において、イオンは雰囲気ガスのHeと衝突し、図4中、符号16で表されるように、衝突、停止を繰り返しつつ、次第に減速していく。衝突回数が少ない入口フリンジング領域6の初期段階ではイオンの速度は速すぎるが、多数の衝突を経た出口フリンジング領域7の最終段階でもイオンの速度は最後まで残っており、イオンはコレクタ5まで到達し検出される。
【0078】
ただし、雰囲気ガスであるHeと同質量以下であるHeおよびH2 のイオンでは衝突により完全停止および逆行するので、本実施例では雰囲気ガスと同質量以下のガスは原理的に測定不可能であり、雰囲気ガスと同質量以上のガスが測定可能である。
【0079】
この動作が行われるためには、Qポール1の長さ、雰囲気ガスの種類と圧力、イオン源4とQポール1の軸上電位の各条件がある関係を満足しなければならない。すなわち、イオンが速すぎると質量分別が不可能で、遅すぎるとコレクタ5に達しない。必要な条件は、上述の、衝突前後の速度変化の式{V2=V1(Mi−Mg)/(Mi+Mg)}から得られる減速割合を公比とした等比級数の式から求められる。ただし、計算の際には、イオンの平均自由行程としては径方向での振動による行程も含めることに注意しなければならない。
【0080】
実用的には多種類のガス、すなわち質量の大きく異なるイオンを測定するので、厳密に必要な諸条件を決めることは困難である。しかし、本実施例の条件とすると10〜500amuの広範囲のガスに対して必要な振動数を満足し正常に質量分別することができる。
【0081】
具体的には、50amuでは40回、100amuでは60回、300amuでは110回程度の振動回数を達成し、上述の質量分別に必要な振動回数を満足している。この時Qポール内で、50amuで5回、100amuで15回、300amuで50回程度の衝突が発生して適切な減速が実現している。
【0082】
さらに本実施例では、イオンは60eVの高速で入口フリンジング領域6を通過するので、フリンジング問題の悪影響はほとんどなく、高質量分子を高感度で計測することが可能である。この入口フリンジング領域6を通過するイオンの速度は、高速であればあるほどフリンジング問題の悪影響を受けないこととなるが、30eV以上の速度で入口フリンジング領域6を通過するようにしておけば、フリンジング問題の悪影響をあまり受けないようになる。
【0083】
なお、測定すべきガスを狭い質量範囲に限定すれば、条件を最適化して分解能をより向上させることもできる。例えば雰囲気ガスを0.1PaのArとすると、300amu程度のイオンは50回程度衝突し、振動回数は250回程度にもおよぶ。
【0084】
【実施例5】
図5は本発明の第五の実施例を説明する概略図である。本実施例で説明するQポール型質量分析計は、高圧の雰囲気中でも動作可能で、かつ高質量分子を高感度で計測可能なQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を、イオン自体の空間電荷によるクーロン力によって行うものである。
【0085】
本実施例のQポール型質量分析計は、イオン源4、Qポール1、コレクタ5にそれぞれ印加される直流電圧を除いて従来のQポール型質量分析計と同様である。
【0086】
具体的には、イオン源4には200V、Qポール1には100V、コレクタ5には0Vが印加されており、これによって図5図示のように、Qポール領域内での軸上電位が、入口フリンジング領域での軸上電位よりも低く、かつ出口フリンジング領域での軸上電位よりも高く設定されている。
【0087】
雰囲気ガスの種類・圧力は、衝突によってイオンがQポール領域内で最終的に停止する条件であればよい。この圧力としては、例えば、前記実施例で採用した雰囲気ガスの圧力よりも少し高い圧力が考えられ、例えば、Heの圧力を10Paに設定して行うことができる。
【0088】
本実施例のQポール型質量分析計においては、雰囲気ガスとの衝突によりイオンはQポール領域内に停止・滞留するが、そのままイオンの入射を続けると次第に自らの電荷による電位、すなわち空間電荷による電位を形成する。初期状態であれば、停止・滞留している場所を中心として丘状の空間電荷(電位)が形成される。
【0089】
さらにイオンの入射を続けて空間電荷(電位)の丘の裾野が両フリンジング領域まで達すると、空間電荷(電位)の形状はイオンの前進すべき方向に下り勾配をもった滑り台状に変化し始める。これは、出口フリンジング領域7に達したイオンはコレクタ電位による外側(図では右側)向きの軸上電界によってコレクタ5側に流れ出るのに対して、入口フリンジング領域6に達したイオンはイオン源電位による内側(図では右側)向きの電界によってQポール内に留まるからである。
【0090】
イオンは径方向には振動という形で拘束を受けているが、軸方向には最初(空間電荷が形成されるまでは)、何の拘束も受けず自由に軸上を動ける。したがって、イオンは自らの電荷と平衡するような形に分布する。
【0091】
このような滑り台状の空間電荷(電位)では、イオンは軸方向に関して前進方向のクーロン力を受ける。そのため、新たにQポール1内に入射し雰囲気ガスとの衝突により減速・停止したイオンは、このクーロン力によってふただび加速され、質量分別されながらQポール1を通過し、コレクタ5にて検出される。
【0092】
なお、空間電荷によるクーロン力は径方向にも加わるが、四重極型質量分析計の動作原理から径方向への数eVの速度成分は許容されるので測定上の問題とはならない。また、イオンは100eVもの高速で入口フリンジング領域6を通過するので、フリンジング問題の悪影響はほとんどない。
【0093】
【実施例6】
図6は本発明の第六の実施例を説明する概略図である。本実施例で説明するQポール型質量分析計は、高圧の雰囲気中でも動作可能なQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を、Qポールへ印加されるV電圧と同期した径方向磁場によるローレンツ力によって行うものである。
【0094】
この実施例のQポール型質量分析計は、Qポール1の上下位置に磁場発生用のコイル17が設置されている点を除いて従来のQポール型質量分析計と同様である。
【0095】
コイル17から発生した磁場は、Qポール領域において磁気力線18が径方向の上下方向となるように形成される。そのため、径方向の左右方向に振動するイオンは磁場力線18を横切ることになり、軸方向のローレンツ力が発生する。磁場は高速で方向が変化する高周波磁場となっており、高周波の位相はQポール1へ印加されるV電圧と同期している。そのため、イオンが振動で往復するたびに磁場方向が変わり、同位相で振動しているイオンに対して加わるローレンツ力の方向は常に一定となる。
【0096】
したがって、雰囲気ガスとの衝突により、符号16で表すように、減速・停止したイオンは、前進方向の力を受け質量分別しながらQポール領域内を通過することとなる。
【0097】
ただし、半数のイオンの振動位相はV電圧の位相と同じであるが、残りは逆位相となる。そのため、前進して正常に計測されるイオンは半数のみで残り半数は逆行することになるが、測定上の大きな問題とはならない。
【0098】
実際上はイオンと磁場では位相のずれが考えられるので、位相変換器を設置して最適位相に調整することが望ましい。また、イオンの振動周波数は振動方向によって異なるので、コイルの方向と周波数を最適とするように調整することが望ましい。
【0099】
さらに、質量分別に対する磁場自体による悪影響は200ガウスより発生しはじめて300ガウスで分解能が半分に劣化するので、適用される磁場の大きさは200ガウス以内とすることが望ましい。
【0100】
なお、雰囲気ガスの圧力が高いことを必須条件とした上で、イオン源4の電圧を60〜200Vと高くしてイオンが入口フリンジング領域6を高速で通過するようにすれば、高質量分子を高感度で計測も可能となる。
【0101】
【実施例7】
図7は本発明の第七の実施例を説明する概略図である。本実施例は、高圧の雰囲気中でも動作可能であるQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を行うために、時間変化する径方向磁場による電磁誘導力を利用したものである。
【0102】
この実施例のQポール型質量分析計は、Qポール1の左右のやや上方位置に磁場発生用のコイル17が設置されている点を除いて従来例と同様である。
【0103】
コイル17から発生した磁場は、Qポール領域において磁気力線18が径方向となるように形成される。磁場は急速な増加とゆっくりとした減衰が繰返す鋸刃状磁場となっており、時間的に強度変化する磁場により発生する電磁誘導力19がイオンに加えられる。この電磁誘導力は、交流電場が加えられている導電板に発生する渦電流の現象として知られているものである。
【0104】
そこで、Qポール内のイオンは軸方向には自由に動けるので、電磁誘導力により軸方向の力を受けることになる。
【0105】
ゆっくりとした減衰で発生する電磁誘導力の方向が前進方向となるようにしているので、イオンは前進方向の力を長時間受けて長い行程を前進する。一方、逆行方向となる急激な増加による電磁誘導力は加わる時間が短いため、逆行の実際の行程は短くなる。これは、前進・逆行いずれの行程も平均自由行程と衝突回数の積で与えられるが、前進方向の方が衝突回数が多くなるからである。
【0106】
なお、逆行の場合には衝突する速度(エネルギー)は大きいが、これは衝突により失われてしまう行程の増加には寄与しない。このため、平均すればイオンは常に前進方向の力を受けることになる。
【0107】
そこで、イオン源4で発生したイオンは、雰囲気ガスとの衝突により、符号16で表すように、減速・停止し、ここで電磁誘導力19による前進方向の力を受け、符号15で表すようなイオンの軌道を経て、質量分別されながらQポール領域内を通過し、コレクタ5に到達することになる。
【0108】
本実施例では径方向内での磁場の方向や磁場の周波数、位相は任意でよい。
【0109】
なお、雰囲気ガスの圧力が高いことを必要条件とした上で、イオン源の電圧を60〜200Vと高くしてイオンが入口フリンジング領域を高速で通過するようにすれば、高質量分子を高感度で計測可能となる。
【0110】
【実施例8】
図8は本発明の第八の実施例を説明する概略図である。本実施例で説明するQポール型質量分析計は、高圧での雰囲気でも動作可能で、かつ極微量なガスを計測可能であるQポール型質量分析計であり、Qポール領域内において計測すべきイオンの軸方向の動きの制御を、4本のQポールがそれぞれ軸方向で異なる直流電位を有し、当該4本のQポールの軸方向での同位置では4本とも、直流電圧:Uを除いて、等しい直流電位を持つように構成されているQポールにより形成された電解により発生するクーロン力によって行うものである。
【0111】
Qポールにおいて5組の導電薄膜が設置されているが、これらの導電薄膜はQポールの全面を覆っており下地露出面がなく、それぞれの導電薄膜には独立可変の直流電圧と共通のV、U電圧が印加される。また、Qポールの軸上電位は0Vとなっており、イオン源には110V、コレクタには0Vが印加されている。これらの点を除いて本実施例のQポール型質量分析計の構造は、実施例2の場合と同様な構造となっている。なお雰囲気ガスの圧力は1Paに設定されている。
【0112】
この実施例のQポール型質量分析計においては蓄積モードと検出モードがあって、それぞれのモードでは導電薄膜に印加される直流電位が異なる。蓄積モードでは特定ガス(極微量なガス)のイオンが蓄積され、その他のイオンは除去される。間欠的に実行される検出モードでは濃縮された特定ガス(極微量なガス)のイオンが検出される。
【0113】
図8(a)図示の蓄積モードでは、導電薄膜にはQポール先端(イオン源近く)からそれぞれ100V、90V、90V、90V、120Vの直流電位が印加されている。すなわち、Qポール内では電位勾配がなく、Qポール内の両端付近では電位が高くなっている。そのため、イオン源で生成されたイオンは、入口フリンジング領域を110eVの高速で通過した後に、Qポール領域内にて減速され、質量分別が行われる。しかし、計測すべき特定のガス(極微量なガス)の濃度は低いので、質量分別された特定のガス(極微量なガス)のイオンの数は非常に少なく、そのままイオンをQポール領域からコレクタの方向に射出しても、バックグランドノイズに埋もれて信号として検出することができない。
【0114】
本実施例のQポール型質量分析計においては、Qポール内には電位勾配がないので、雰囲気ガスと衝突を繰り返したイオンは、最終的には軸方向に関しての動きがなくなり、完全に停止してしまう。しかし、イオン源からはイオンが次々にQポール内に入射するので、中央付近には特定ガスのイオンが蓄積され、時間とともに濃度が高くなる、すなわち濃縮される。濃縮されたイオンには自らの空間電荷による斥力が働くが、Qポール内の両端付近では電位が高くなっているので、イオンはQポールの中央付近に留まり続ける。すなわち、計測すべき特定のガス(極微量なガス)のイオンがQポール領域内に滞留する。
【0115】
このようにして一定時間の蓄積(Qポール領域内での計測すべき特定ガスのイオン滞留)が行われた後に、検出モードに切り換えられる。
【0116】
図8(b)図示の検出モードでは、導電薄膜にはQポール先端(イオン源近く)からそれぞれ100V、85V、70V、55V、40Vの直流電位が印加される。Qポール自体の表面の電位は段階的であるが、軸上では空間電荷や電位変化の緩和により、連続的な電位勾配が形成される。そのため、Qポール内の中央付近に蓄積されていた特定ガスのイオンは、Qポールからコレクタの方向に射出され、コレクタにて電気信号として検出される。
【0117】
Qポールからイオンが射出される時間は、少なくとも10-3秒以下となるので、その時に検出される信号量としては、通常の103以上の大きなものとなり、バックグランドノイズの影響を無視することができる。ただし、バックグランドノイズは無視できても、一回の計測ではデータとしては信号量が不十分となる場合が多いので、検出モードを間欠的に動作させて信号量を増加させる。すなわち、例えば、動作時間を蓄積モード1秒、間欠的に実行する検出モード10-3秒として、このサイクルを繰り返してデータ処理的な加算操作を行う。
【0118】
以上により、本実施例のQポール型質量分析計によれば、通常の方法では測定できないような極微量なガスを計測することができる。
【0119】
なお、毎回の計測において、信号がバックグランドノイズに完全に埋もれている場合には、データ処理的な加算操作をいくら行っても信号として区別することは困難である。そこで蓄積モードの動作時間設定は、信号が少なくともバックグランドノイズと同等レベル以上に増加することを基準にして決定される。
【0120】
本実施例では、薄膜としては導電薄膜で、しかもQポールの全面を覆うものを採用したが、これは、実施例1、2のように抵抗薄膜や螺旋状薄膜を使用することもできる。抵抗薄膜では、電位の急激な変化を緩和してイオンに対する攪乱を減らしたり、あるいは電位勾配をつけて、より高圧の雰囲気で動作可能とすることもできる。螺旋状薄膜では、V、U電圧の印加がQポールへの一ケ所だけで済むなどのメリットがあるが、薄膜製作技術としては高度なものが要求される。なお、薄膜をまったく使用せずに、複数のセグメントに分かれたQポールを使用することも、精度確保で不利があるとはいえ、当然実行可能である。
【0121】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の態様に変更可能である。
【0122】
例えば、各実施例において説明したQポール領域内におけるイオンの軸方向の動きの制御方法をそれぞれ単独で実行してイオンの軸方向の動きを制御することもできるし、各実施例において説明したイオンの軸方向の動きの制御方法を複合させて実行し、イオンの軸方向の動きを制御することもできる。
【0123】
【発明の効果】
本発明によれば、Qポール領域内において、計測すべきイオンの径方向とは独立な軸方向の動きを、種々の方法により制御することによって、0.1Pa以上の高圧条件下における質量分析を可能にすることができ、しかも、連続的にガス分子の質量分析を行うことが可能である。
【0124】
また、フリンジング問題の影響を低減させ、特に高質量のガスを高感度で計測することが可能となった。更にまた、特定イオンを濃縮して、極微量のガスを計測することが可能となった。
【0125】
すなわち、イオンの軸方向の動きを制御するという本発明によって、
1)高電圧動作、
2)フリンジング問題の影響の低減、
3)特定イオン濃縮、
の3つの効果が得られることになった。
【0126】
これらの3つの効果は、互いに非常に密接な関係がある。そこで、これらの効果のうち、どれか一つ、あるいはいずれかの二つ、あるいは三つを同時に得るため、本明細書で説明した実施例をいろいろと変更し、あるいは組み合わせることが可能である。
【0127】
例えば、実施例1では前記1)と2)の効果を同時に得るために、イオン源4に200Vを印加し、入口フリンジング領域を100eVの高速で通過させている。しかし、これをイオン源4に110Vを印加し、入口フリンジング領域を従来と同じ10eVで通過させてもよい、この場合には、前記2)の効果がなくなるが、1)の効果は維持されたままでイオン源への機械的・電気的な負荷が軽減される。
【0128】
また、例えば、実施例8では、前記1)、2)、3)の効果を同時に得ており、動作圧力は1Paで、Qポール中央付近の電位は90Vとなっている。しかし、動作圧力を0.1Pa以下とし、Qポール中央付近の電位をQポール先端(イオン源近く)の電位(100V)に近い99Vとしてもよい。この場合には、前記1)の効果がなくなるが、前記2)、3)の効果は維持されたままとなる。なお、前記1)の効果がなくなることは、用途によっては、圧力制御を行わなくてもよいという大きなメリットになる。
【0129】
また、例えば、実施例1では、抵抗薄膜3の出口側には100Vの一定電圧が印加されており、前記3)の効果はない。しかし、この電圧を1秒間は200V、0.001秒間は100Vに繰り返し設定すれば、前記3)の効果を得ることができる。
【0130】
なお、本明細書で説明したすべての実施例ではQポールの長さは従来例と同様な100mm〜300mmとしたが、本発明では必ずしもこの長さが必要という訳ではない。Qポールの長さは従来のQポール型質量分析計では十分な振動回数を得るために不可欠であるが、本発明では適当な条件を選べば100mm以下に短くすることが可能である。特に、実施例3、4を除く他の実施例による本発明では、Qポール領域でのイオンの軸方向の速度を自由に制御、すなわちフリンジング領域でのイオンの速度を高くしながらQポール領域内での速度は十分に低くすることが出来るので、50mm以下のQポールでも高質量分子を十分な高感度で計測することが可能である。したがって、本発明では、従来より短いQポールを使用した小型のQポール型質量分析計を実現することができる。
【0131】
また、従来例で示した高圧雰囲気で動作可能な超小型Qポール型質量分析計は、Qポールの長さに比例して間隔も狭くしなければならず位置精度が厳しくなって実用的に大きな問題であった。これに対して本発明では、従来例と同様の間隔、すなわち同じ位置精度でよい。しかもQポールの長さが数分の一と短くすることができるので、同じ位置精度であってもその達成は飛躍的に容易となる。このようにして、Qポール型質量分析計における性能・コスト面で大きな障害であったQポール位置精度の問題が、本発明により克服できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例を説明する概略図。
【図2】本発明の第二の実施例を説明する概略図。
【図3】(a) 本発明の第三の実施例の構造を説明する概略図。
(b) 図3(a)の実施例におけるイオンの動きを表す図。
【図4】本発明の第四の実施例を説明する概略図。
【図5】本発明の第五の実施例を説明する概略図。
【図6】本発明の第六の実施例を説明する概略図。
【図7】本発明の第七の実施例を説明する概略図。
【図8】(a) 本発明の第八の実施例の蓄積モードを説明する概略図。
(b) 本発明の第八の実施例の検出モードを説明する概略図。
【図9】雰囲気圧0.01Pa以下の時の従来のQポール型質量分析計を説明する概略図。
【図10】雰囲気圧1Pa程度の時の従来のQポール型質量分析計を説明する概略図。
【符号の説明】
1 Qポール
2 絶縁薄膜
3 抵抗薄膜
4 イオン源
5 コレクタ
6 入口フリンジング領域
7 出口フリンジング領域
8 抵抗薄膜形成部
10 導電薄膜
11 導電薄膜形成部
12 入口電極
13 出口電極
14 キャリアーガスの流れ
15 イオンの軌道
16 イオンの衝突・停止
17 コイル
18 磁気力線
19 誘起された電界
Claims (2)
- 減圧された雰囲気ガス中に設置されたQポール型質量分析計において、
Qポール領域内の計測すべきイオンがイオン源からコレクタに向かって加速するようなクーロン力を生じさせ、該クーロン力を連続的に前記計測すべきイオンに作用させることにより、前記イオン源側から前記コレクタ側に向けて前進する計測すべきイオンの軸方向の動きを前記Qポール領域内において制御しつつ、径方向の四重極高周波電界によるクーロン力によって前記計測すべきイオンを質量分別し、
前記Qポール領域内における計測すべきイオンの軸方向の動きの制御は、前記Qポール型質量分析計を構成する4本の前記Qポールがそれぞれ軸方向位置によって異なる直流電位を有し、当該4本の前記Qポールの軸方向の同位置では4本とも、直流電圧:Uを除けば等しい直流電位を持つように構成されているQポールにより形成された電界により発生するクーロン力を用いるものであり、
前記Qポール型質量分析計を構成する4本のQポールの表面の一部に抵抗薄膜を形成し、当該抵抗薄膜は、前記Qポールの周囲に螺旋状に巻かれて形成されると共に、前記Qポールの軸方向位置によって異なる前記直流電位が印加されることを特徴とするQポール型質量分析計。 - 前記抵抗薄膜と前記Qポールの表面との間には、絶縁薄膜を備えていることを特徴とする請求項1記載のQポール型質量分析計。
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