JP4502839B2 - 起泡性水中油型乳化組成物 - Google Patents
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特許文献1および2は、SUSで表されるトリグリセリドを25質量%以上含有する油脂を用いた起泡性クリームに関する発明を開示するものである。
特許文献1および2の起泡性クリームは、SUSで表されるトリグリセリドを多く含む起泡性クリームであるが、USUで表されるトリグリセリドを0.3質量%以上含む起泡性クリームではない。特許文献1および2の起泡性クリームは、製造後、クリームが凝集してしまうため、粘度が上がり、ボテた状態となりやすいという欠点があった。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物は、油相中にSUSで表されるトリグリセリド(以下SUSという)を60質量%以上、好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは70〜90質量%含有する。起泡性水中油型乳化組成物の油相中のSUSの含有量が60質量%よりも少ないと、口溶けが悪化し、冷涼感が損なわれるので好ましくない。
上記のエステル交換油としては、パーム油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油などの各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。エステル交換の方法としては、酵素を用いても、化学触媒を用いてもよく、またランダムエステル交換でも、1,3位置選択性のあるエステル交換でも構わない。
上記のエステル交換油としては、パーム油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油などの各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。エステル交換の方法としては、酵素を用いても、化学触媒を用いてもよく、またランダムエステル交換でも、1,3位置選択性のあるエステル交換でも構わない。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物では、ヤシ油、パーム核油、これらの油脂を必要に応じて水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、さらにこれらの油脂や脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油などのラウリン系油脂の含有量は、好ましくは5質量%未満、さらに好ましくは4質量%未満である。
また、本発明の起泡性水中油型乳化組成物では、乳脂を用いてもよい。本発明の起泡性水中油型乳化組成物の乳脂の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは1〜20質量%である。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物の油分は特に制限はないが、低油分であるのが好ましく、さらに好ましくは40質量%以下であるのが好ましい。
上記の乳原料の乳固形分(乳由来の固形分)中のリン脂質の含有量は、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である。本発明の起泡性水中油型乳化組成物において上記の乳原料を用いないと、乳化が不安定となりやすい。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物では上記の乳原料を好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜20質量%となるように含有させる。
上記の乳原料としては、乳固形分中のリン脂質の含有量が2質また以上である乳原料であればどのようなものでも構わないが、具体的な例としてクリームまたはバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分があげられる。
まず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。図1にFolch法のフローを示す。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から以下の計算式を用いて乳原料の乳固形分100g中のリン脂質の含有量(g)を求める。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳原料−乳原料の水分(g))×25.4×(0.1/1000)
上記のその他の原料としては、水、糖類・甘味料、上記の乳原料以外の乳蛋白質、乳清ミネラル、安定剤、セルロースやセルロース誘導体、澱粉類、穀類、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、食塩、岩塩、海塩、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストンなどのデキストリン類、卵製品、果汁、ジャム、カカオおよびカカオ製品、コーヒーおよびコーヒー製品、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、グリシン、しらこたん白抽出物、ポリリジン、エタノールなどの保存料、着香料、苦味料、調味料などの呈味成分、着色料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤などがあげられる。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物の上記糖類や上記甘味料の含有量は、固形分として好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である。
上記カゼイン蛋白質としては、αs1−カゼイン、αs2−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインの各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含有する食品素材であるアルカリカゼイン(カゼイネート)、酸カゼインなどが挙げられる。
上記ホエイ蛋白質としては、ラクトアルブミン、βラクトグロブリン、血清アルブミン、免疫グロブリン、プロテオースペプトンの各単体や、これらの混合物、若しくはこれらを含有する食品素材として、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPCおよび/またはWPI)などが挙げられる。
上記カゼイン蛋白質及び上記ホエイ蛋白質の両方を含有する食品素材として、例えば、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、脱脂粉乳、全粉乳、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、クリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料、サワークリ―ム、発酵乳などがあげられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物の上記乳原料以外の乳蛋白質の含有量は、好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満である。
上記の乳清ミネラルとは、ホエイから乳糖とホエイ蛋白質を除去したもので、乳固形分中の灰分の含有量が大凡10〜90質量%であり、多量の灰分を含有するものである。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物の乳清ミネラルの含有量は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上、最も好ましくは0.3〜3質量%である。
本発明の起泡性水中油型乳化組成物の上記安定剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、最も好ましくは上記安定剤を用いないのが望ましい。
まず、SUSを60質量%以上、USUを0.3質量%以上および必要によりその他の原料を含有させた油相と、水および必要により乳原料やその他の原料を含有させた水相とをそれぞれ個別に調製し、次いで、該油相と該水相とを混合乳化し、水中油型に乳化することにより、本発明の起泡性水中油型乳化組成物が得られる。
これを、必要により、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミルなどの均質化装置により圧力0〜100MPaの範囲で均質化しても良い。また、必要によりインジェクション式、インフージョン式などの直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式などの間接加熱方式を用いたUHT・HTST・低温殺菌、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱などの加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理を施しても良く、あるいは直火などの加熱調理により加熱しても良い。また、加熱後に必要に応じて再度均質化しても良い。また、必要により急速冷却、徐冷却などの冷却操作を施しても良い。
上記の食品としては、例えば、食パン、菓子パン、パイ、デニッシュ、クロワッサン、フランスパン、セミハードロール、シュー、ドーナツ、ケーキ、クラッカー、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーンなどのベーカリー製品、洋菓子、和菓子、チョコレート菓子、冷菓、デザート、シチュー、グラタン、ドリア、飲料などをあげることができる。
また、起泡済みクリームとして、冷蔵、冷凍、常温の保管流通条件で用いることもできる。
(エステル交換油1)
パーム油を分別して得られたパーム軟部油(パームオレイン)を化学触媒を用いてランダムエステル交換した油脂。
(エステル交換油2)
パーム油を分別して得られたパーム軟部油をさらに分別して得られた軟部油(スーパーオレイン)を、化学触媒を用いてランダムエステル交換した油脂。
表1の配合により、次のようにして実施例1〜9の起泡性水中油型乳化組成物をそれぞれ得た。
まず、水を60℃に昇温し、撹拌しながら、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量12質量%、乳固形分38質量%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)、乳糖およびトレハロースを溶解させ、水相を調製した。
一方、パーム中部油、カカオバター、サル脂、イリッペ脂、エステル交換油1、エステル交換油2、パーム核硬部油および乳脂の混合油からなる油相を調製した。
上記水相に上記油相を加え混合撹拌して予備乳化物を調製した。予備乳化後30MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で140℃、4秒間殺菌し、再度30MPaの圧力で均質化後、15℃まで冷却した。その後、冷蔵庫で12時間エージングを行い、実施例1〜9の起泡性水中油型乳化組成物をそれぞれ得た。
得られた実施例1〜9の起泡性水中油型乳化組成物の評価を表2に示した。評価方法および評価基準は次の通りである。
・オーバーラン:下記の式で算出させる増加体積割合。
〔(定容積の起泡性水中油型乳化組成物質量−定容積の起泡後の起泡性水中油型乳化組成物質量)/(定容積の起泡後の起泡性水中油型乳化組成物の質量)〕×100(%)
・乳化安定性:振動器を用い100回/37秒で水平方向に振動させ、起泡性水中油型乳化組成物が流動性を失うまでの振動回数が10000回以上をとても良い:◎、5000回以上〜10000回未満のものを良い:○、5000回未満のものを悪い:×とした。
・耐熱保型性:起泡した起泡性水中油型乳化組成物を絞り袋で造花したものを20℃の恒温槽中で20時間放置した場合の離水の程度。◎:とても良い ○:良い ×:悪い
・口溶け:起泡した起泡性水中油型乳化組成物を口に含んだときの溶け易さ。◎:とても良い ○:良い ×:悪い
・冷涼感:起泡した起泡性水中油型乳化組成物を口に含んだときの冷たさ。◎:とても良い ○:良い ×:悪い
実施例10〜18としてそれぞれ実施例1〜9で得られた起泡性水中油型乳化組成物400gと生クリーム400gとを混合し、縦型ミキサーにてホイップしたときの評価を表3に示した。評価方法および評価基準は実施例1〜9の場合と同じである。
表4の配合により実施例19〜27の起泡性水中油型乳化組成物をそれぞれ得た。製造方法は実施例1と同様の方法で行った。得られた実施例19〜27の起泡性水中油型乳化組成物の評価を表5に示した。評価方法および評価基準は実施例1〜9の場合と同じである。
実施例28〜36としてそれぞれ実施例19〜27で得られた起泡性水中油型乳化組成物400gと生クリーム400gとを混合し、縦型ミキサーにてホイップしたときの評価を表6に示した。評価方法および評価基準は実施例1〜9の場合と同じである。
表7の配合により比較例1〜9の起泡性水中油型乳化組成物をそれぞれ得た。製造方法は実施例1と同様の方法で行った。得られた比較例1〜9の起泡性水中油型乳化組成物の評価を表8に示した。評価方法および評価基準は実施例1〜9の場合と同じである。
比較例10〜18としてそれぞれ比較例1〜9で得られた起泡性水中油型乳化組成物400gと生クリーム400gとを混合し、縦型ミキサーにてホイップしたときの評価を表9示した。評価方法および評価基準は実施例1〜9の場合と同じである。
表10の配合により比較例19〜27の起泡性水中油型乳化組成物をそれぞれ得た。製造方法は実施例1と同様の方法で行った。得られた比較例19〜27の起泡性水中油型乳化組成物の評価を表11に示した。評価方法および評価基準は実施例1〜9の場合と同じである。
比較例28〜36としてそれぞれ比較例19〜27で得られた起泡性水中油型乳化組成物400gと生クリーム400gとを混合し、縦型ミキサーにてホイップしたときの評価を表12示した。評価方法および評価基準は実施例1〜9の場合と同じである。
表13のように乳清ミネラルを配合する以外は実施例2と実施例8と同様の配合と製法で、実施例37と実施例38の起泡性水中油型乳化組成物をそれぞれ得た。
得られた実施例37の起泡性水中油型乳化組成物は、実施例2の起泡性水中油型乳化組成物よりも風味に優れており、その他の評価は実施例2と同程度であった。
また、得られた実施例38の起泡性水中油型乳化組成物は、実施例8の起泡性水中油型乳化組成物よりも風味に優れており、その他の評価は実施例8と同程度であった。
Claims (4)
- 油相中に、SUSで表されるトリグリセリドを70質量%以上およびUSUで表されるトリグリセリドを0.3質量%以上含有し、上記のSUSで表されるトリグリセリドを含有する油脂として、パーム油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、これらの油脂を水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、および、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油のうちの1種または2種以上を使用し、上記のUSUで表されるトリグリセリドを含有する油脂として、パーム油、パーム硬部油、パーム軟部油またはパーム中部油を用いて製造したエステル交換油のうちの1種または2種以上を使用してなることを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物。(Sは炭素数16以上の飽和脂肪酸を示し、Uは炭素数18以上の不飽和脂肪酸を示す。)
- 乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料を含有する請求項1記載の起泡性水中油型乳化組成物。
- SUSで表されるトリグリセリドを含有する油脂として、パーム油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、これらの油脂を水素添加および/または分別した後に得られる加工油脂、および、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油のうちの1種または2種以上を使用し、USUで表されるトリグリセリドを含有する油脂として、パーム油、パーム硬部油、パーム軟部油またはパーム中部油を用いて製造したエステル交換油のうちの1種または2種以上を使用して、SUSで表されるトリグリセリドを70質量%以上およびUSUで表されるトリグリセリドを0.3質量%以上含有する油相を調製し、該油相と水相とを乳化することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物の製造方法。
- 請求項1または2記載の起泡性水中油型乳化組成物を含有する食品。
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