JP4594345B2 - 油脂組成物及び該油脂組成物を含有する水中油型乳化物 - Google Patents

油脂組成物及び該油脂組成物を含有する水中油型乳化物 Download PDF

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本発明は、主に製菓、製パン領域で使用されるクリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物に、好適に用いることができる油脂組成物に関するものである。
また、本発明は、主に製菓、製パン領域で使用されるクリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物において、トランス脂肪酸を実質的に含まず、高油分であっても乳化安定性が高く、口溶け、起泡性、保形性等のホイップ特性が良好な水中油型乳化物に関するものである。
主に製菓、製パン領域で使用されるクリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物としては、元来、生乳から乳脂肪を分離して製造される天然の生クリームが用いられていた。しかしながら、生クリームは、風味の点で他に類するものがない程優れてはいるものの、ホイップ前の乳液状態では、保存中の品温の上昇や輸送中の振動によって、いわゆるボテと呼ばれる急激な粘度の上昇や固化が起こり易く、取り扱い面で難点があった。また、生クリームは、原料である生乳の品質が季節変動を受けやすく、さらに価格的に高価である等の問題点があった。
このため、比較的低価格で、入手し易く、比較的品質の安定した水中油型乳化物として、乳脂肪の一部を植物性油脂に置き換えたコンパウンドタイプの水中油型乳化物や乳脂肪の全てを植物性油脂に置き換えた植物性タイプの水中油型乳化物が開発されてきた。
植物性タイプの水中油型乳化物に用いられる植物性油脂としては、炭素数12の飽和脂肪酸であるラウリン酸を多く含むヤシ油、パーム核油等のラウリン系油脂、パーム油、菜種油等の炭素数16以上の脂肪酸を多く含む植物油脂、これら植物油脂の硬化油、分別油、これらの混合油等が挙げられる。
ラウリン系油脂のみを用いて得られる水中油型乳化物は、口溶けが非常に良い反面、温度変化により増粘しやすく、作業に適した適度な起泡、硬度を保つことが難しいという問題がある。また、ラウリン系油脂のみを用いて得られる水中油型乳化物は、脂肪分を低く設定すると、水中油型乳化物の製造は可能となるが、クリーム、特にホイップクリームとして用いた場合、ホイップ後のホイップクリームの物性に腰が弱い、保形性が乏しい等の問題が依然として残っていた。
一方、ラウリン系油脂とパーム油、菜種油等の炭素数16以上の脂肪酸を多く含む植物油脂の硬化油を併用して得られる水中油型乳化物は、口溶け、乳化安定性、保形性のバランスが良いことから、従来、クリーム、特にホイップクリームとして広く流通してきた(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、近年、硬化油に含まれるトランス脂肪酸が栄養学的に好ましくないという学説が出てきて、米国では一定基準以上のトランス酸を含む食品には表示の義務が課されるなど、トランス脂肪酸を低減した油脂含有食品が社会的に求められる様になってきた。従って、クリーム、特にホイップクリームに用いられる水中油型乳化物に関しても、トランス脂肪酸を含有する植物油脂の硬化油を使用しないことが求められるようになってきた。
トランス脂肪酸を実質上含有しない水中油型乳化物としては、ラウリン系油脂とパーム油の中融点分別油を併用したタイプ等が考案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
しかしながら、ラウリン系油脂とパーム油の中融点分別油を併用して得られる水中油型乳化物はトランス脂肪酸を実質的に含まないが、油分を多く含む高油分の配合において、特に乳化安定性に問題があり、実用上満足できるものではなかった。よって、油分を多く含む高油分のクリーム、特にホイップクリームに用いられる水中油型乳化物は、美味しさの面で非常に有利であるが、依然として品質上、満足のいくものはなかった。
従って、トランス脂肪酸を実質的に含まず、高油分であっても乳化安定性が高く、口溶け、起泡性、保形性等のホイップ特性が良好であるクリーム、特にホイップクリームに用いられる水中油型乳化物の開発が望まれていた。
特開平10−75729号公報 特開2002−34450号公報 特開平5−219887号公報 特開平8−70807号公報
本発明の目的は、主に製菓、製パン領域で使用されるクリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物において、トランス脂肪酸を実質的に含まず、高油分であっても乳化安定性が高く、口溶け、起泡性、保形性等のホイップ特性が良好な水中油型乳化物提供するために、好適に用いることができる油脂組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、主に製菓、製パン領域で使用されるクリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物において、トランス脂肪酸を実質的に含まず、高油分であっても乳化安定性が高く、口溶け、起泡性、保形性等のホイップ特性が良好な水中油型乳化物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ラウリン系油脂と特定の脂肪酸組成を有するエステル交換油とを配合し、トランス脂肪酸が5質量%未満、特定値の固体脂含量(以下、SFCとする)とした油脂組成物を、クリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物に使用することで、トランス脂肪酸を実質的に含まず、高油分であっても乳化安定性が高く、口溶け、起泡性、保形性等のホイップ特性が良好な水中油型乳化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、下記油脂A及び油脂Bを含有する油脂組成物であって、該油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が5質量%未満、該油脂組成物の35℃でのSFC(固体脂含量)が5%未満、該油脂組成物の15℃でのSFC(固体脂含量)と25℃でのSFC(固体脂含量)の差が30%以上である油脂組成物である。
油脂A:ラウリン系油脂、ラウリン系油脂の分別油及びラウリン系油脂の極度硬化油からなる群から選ばれる1種又は2種以上
油脂B:油脂Cをエステル交換反応することにより得られるエステル交換油
油脂C:全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満、全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満である油脂
本発明の第2の発明は、前記油脂Cが、パーム油及び/又はパーム油の分別油である第1の発明に記載の油脂組成物である。
本発明の第3の発明は、前記油脂Cが、ヨウ素価55〜71のパーム油の分別油である第1の発明に記載の油脂組成物である。
本発明の第4の発明は、前記油脂組成物中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が、70質量%以上である第1の発明〜第3の発明のいずれか1つの発明に記載の油脂組成物である。
本発明の第5の発明は、前記油脂組成物が、クリームに用いられる第1の発明〜第4の発明のいずれか1つの発明に記載の油脂組成物である。
本発明の第6の発明は、第1の発明〜第5の発明のいずれか1つの発明に記載の油脂組成物を含有する水中油型乳化物である。
本発明の第7の発明は、前記水中油型乳化物の油分中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が、70質量%以上である第6の発明に記載の水中油型乳化物である。
本発明の第8の発明は、前記水中油型乳化物中における油分含量が、40質量%を超える第6の発明又は第7の発明に記載の水中油型乳化物である。
本発明の第9の発明は、前記水中油型乳化物が、クリームである第6の発明〜第8の発明のいずれか1つの発明に記載の水中油型乳化物である。
本発明の第10の発明は、前記クリームが、ホイップクリームである第9の発明に記載の水中油型乳化物である。
本発明の第11の発明は、第6の発明〜第10の発明のいずれか1つの発明に記載の水中油型乳化物を用いた食品である。
本発明によれば、主に製菓、製パン領域で使用されるクリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物において、トランス脂肪酸を実質的に含まず、高油分であっても乳化安定性が高く、口溶け、起泡性、保形性等のホイップ特性が良好な水中油型乳化物提供するために、好適に用いることができる油脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、主に製菓、製パン領域で使用されるクリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物において、トランス脂肪酸を実質的に含まず、高油分であっても乳化安定性が高く、口溶け、起泡性、保形性等のホイップ特性が良好な水中油型乳化物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の油脂組成物について説明する。
本発明は、下記油脂A及び油脂Bを含有する油脂組成物であって、該油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が5質量%未満、該油脂組成物の35℃でのSFC(固体脂含量)が5%未満、該油脂組成物の15℃でのSFCと25℃でのSFCの差が30%以上であることを特徴とする油脂組成物である。
油脂A:ラウリン系油脂、ラウリン系油脂の分別油及びラウリン系油脂の極度硬化油からなる群から選ばれる1種又は2種以上
油脂B:油脂Cをエステル交換反応することにより得られるエステル交換油
油脂C:全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満、全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満である油脂
本発明の油脂組成物の原料油脂である油脂Aとしては、ラウリン系油脂、ラウリン系油脂の分別油、ラウリン系油脂の極度硬化油が使用される。
ラウリン系油脂とは、油脂を構成する脂肪酸として炭素数12の飽和脂肪酸であるラウリン酸に富んだ油脂の総称である。ラウリン系油脂特有の冷涼感が良好なものとなるためには、油脂の全構成脂肪酸中におけるラウリン酸含量は、30質量%以上であることが好ましい。ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油等が挙げられる。油脂Aとしては、ラウリン系油脂を分別して得られるラウリン系油脂の分別油やラウリン系油脂を極度に水素添加して得られるラウリン系油脂の極度硬化油(実質的にトランス脂肪酸を含有していない)も使用することができる。油脂Aとしては、ラウリン系油脂、ラウリン系油脂の分別油、ラウリン系油脂の極度硬化油の1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
油脂Aの全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量は、トランス脂肪酸を実質的に含まないという主旨から、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
油脂Aとして、ラウリン系油脂、ラウリン系油脂の分別油、ラウリン系油脂の極度硬化油を使用すると、得られる水中油型乳化物、特にホイップクリームが冷涼感のある口溶けのよいものとなる。
本発明の油脂組成物の原料油脂である油脂Bとしては、油脂Cをエステル交換反応することにより得られるエステル交換油が使用される。
油脂Bの原料油脂である油脂Cとしては、全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満、全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満である油脂が使用される。
油脂Cの全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量は、20質量%以上75質量%未満であることが好ましく、25質量%以上70質量%未満であることがより好ましく、30質量%以上70質量%未満であることが最も好ましい。
油脂Cの全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が前記範囲にあると、得られる油脂組成物中における3飽和脂肪酸のトリアシルグリセロール(トリアシルグリセロールに結合する3つの脂肪酸が全て飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロール)の生成量が抑えられ、得られる水中油型乳化物が蝋感のない良好な口溶けのものとなる。また、油脂Cの全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が前記範囲にあると、得られる油脂組成物の酸化安定性が良いものとなり、得られる水中油型乳化物の風味も良好なものとなる。
油脂Cの全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量は、25質量%以上70質量%未満であることが好ましく、25質量%以上65質量%未満であることがより好ましく、30質量%以上65質量%未満であることが最も好ましい。
油脂Cの全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が前記範囲にあると、得られる油脂組成物中における3飽和脂肪酸のトリアシルグリセロール(トリアシルグリセロールに結合する3つの脂肪酸が全て飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロール)の生成量が抑えられ、得られる水中油型乳化物が蝋感のない良好な口溶けのものとなる。また、油脂Cの全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が前記範囲にあると、得られる油脂組成物の酸化安定性が良いものとなり、得られる水中油型乳化物の風味も良好なものとなる。
油脂Cは、全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量及び炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が上記範囲内であれば、1種の油脂又は2種以上の混合油の両方を使用することができる。
油脂Cの全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量は、トランス脂肪酸を実質的に含まないという主旨から、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満、全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満である油脂Cの具体例としては、パーム油やパーム油に分別処理(自然分別、溶剤分別、界面活性剤等)を施して得られるパーム油の分別油等が挙げられる。特に油脂Cとしては、ヨウ素価25〜75のパーム油の分別油が好ましく、ヨウ素価55〜71のパーム油の分別油(パームオレインと呼ばれることもある)やヨウ素価25〜49のパーム油の分別油(パームステアリンと呼ばれることもある)がより好ましく、ヨウ素価55〜71のパーム油の分別油が最も好ましい。
油脂Cとして、パーム油やパーム油の分別油を使用すると、得られる水中油型乳化物の乳化安定性が良好なものとなる。
また、油脂Cとして、ヨウ素価55〜71のパーム油の分別油を使用すると、得られる水中油型乳化物の乳化安定性、口溶けが良好なものとなる。
エステル交換油である油脂Bを得るための油脂Cのエステル交換反応は、化学的エステル交換、酵素的エステル交換のどちらでも行うことができる。
化学的エステル交換は、ナトリウムメチラート等の化学触媒を触媒として用いてエステル交換反応が行われる。化学的エステル交換によるエステル交換反応は、位置特異性の乏しいエステル交換反応となる(ランダムエステル交換とも言われる)。
化学的エステル交換は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、水洗にて触媒を洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
酵素的エステル交換は、リパーゼを触媒として用いてエステル交換反応が行われる。
リパーゼは、リパーゼ粉末やリパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼを使用するができる。酵素的エステル交換によるエステル交換反応は、リパーゼの種類によって、位置特異性の乏しいエステル交換反応、1,3位特異性の高いエステル交換反応のどちらで行うこともできる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
1,3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。
酵素的エステル交換は、例えば、リパーゼ粉末又は固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末又は固定化リパーゼを除去後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
エステル交換油である油脂Bを得るための油脂Cのエステル交換反応は、位置特異性の乏しいエステル交換反応で行うことが好ましい。位置特異性の乏しいエステル交換反応で行うと、得られる水中油型乳化物の乳化安定性がより良好なものとなる。
位置特異性の乏しいエステル交換反応における位置特異性の乏しさの指標としては、例えば、ランダム化率で示すことができる。ランダム化率は、その値が高いほど、位置特異性の乏しいエステル交換反応であることを示している。ランダム化率は、例えば、油脂のトリアシルグリセロールを構成する全構成脂肪酸の脂肪酸組成(AOCS Ce1f−96準拠)と、エステル交換反応前後における油脂のトリアシルグリセロールの2位置の脂肪酸組成(AOCS Ch3−91準拠)から炭素数16の飽和脂肪酸であるパルミチン酸を指標に算出することができる。
ランダム化率(%)=(エステル交換反応後の2位置のパルミチン酸−エステル交換反応前の2位置のパルミチン酸)/(全脂肪酸組成中のパルミチン酸−エステル交換反応前の2位置のパルミチン酸)×100
エステル交換油である油脂Bを得るための油脂Cのエステル交換反応におけるランダム化率は、10%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
エステル交換油である油脂Bの全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量は、トランス脂肪酸を実質的に含まないという主旨から、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
本発明の油脂組成物は、前記油脂A及び前記油脂Bを含有することを特徴とする。
本発明の油脂組成物は、効果を損なわない程度であれば、前記油脂A及び前記油脂B以外の油脂を含有することができるが、油脂組成物中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
本発明の油脂組成物中に含有させることのできる前記油脂A及び前記油脂B以外の油脂としては、通常、クリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物用の油脂に使用される植物油脂等が挙げられる。
本発明の油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量は、トランス脂肪酸を実質的に含まないという主旨から、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
本発明の油脂組成物の35℃でのSFCは、5%未満であることが好ましく、4%未満であることがより好ましく、3%未満であることが最も好ましい。油脂組成物の35℃でのSFCが前記範囲にあると、得られる水中油型乳化物の口溶けが良好なものとなる。
SFCとは、固体脂含量のことであり、例えば、基準油脂分析法の「暫1−1996 固体脂含量 NMR法」に従って測定することができる。
本発明の油脂組成物の15℃でのSFCと25℃でのSFCの差は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが最も好ましい。油脂組成物の15℃でのSFCと25℃でのSFCの差が前記範囲にあると、得られる水中油型乳化物、特にホイップクリームの冷涼感が良好なものとなる。
本発明の油脂組成物は、前記油脂A及び前記油脂B(必要に応じて、前記油脂A及び前記油脂B以外の植物油脂)を、得られる油脂組成物の35℃でのSFCが5%未満、15℃でのSFCと25℃でのSFCの差が30%以上となるように配合することにより製造することができる。油脂組成物中の前記油脂Aと前記油脂Bの配合比は、使用する油脂A、油脂Bの種類によって異なるが、油脂A:油脂Bの質量比で95:5〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることがより好ましく、90:10〜60:40であることが更に好ましく、90:10〜70:30であることが最も好ましい。
具体的には、例えば、油脂Aとしてラウリン系油脂の極度硬化油、油脂Bの原料油脂(油脂C)としてヨウ素価55〜71であるパーム油の分別油(パームオレイン)を使用した場合の配合比は、油脂A:油脂Bの質量比で95:5〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることがより好ましく、90:10〜60:40であることが更に好ましく、90:10〜70:30であることが最も好ましい。また、例えば、油脂Aとしてラウリン系油脂及びラウリン系油脂の極度硬化油、油脂Bの原料油脂(油脂C)としてヨウ素価55〜71であるパーム油の分別油(パームオレイン)を使用した場合の配合比は、油脂A:油脂Bの質量比で95:5〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることがより好ましく、90:10〜60:40であることが更に好ましく、90:10〜70:30であることが最も好ましい。また、例えば、油脂Aとしてラウリン系油脂及びラウリン系油脂の極度硬化油、油脂Bの原料油脂(油脂C)としてヨウ素価25〜49であるパーム油の分別油(パームステアリン)を使用した場合の配合比は、油脂A:油脂Bの質量比で95:5〜85:15であることが好ましく、95:5〜90:10であることがより好ましい。
さらに、より具体的には、例えば、油脂Aとしてヤシ油の極度硬化油、油脂Bの原料油脂(油脂C)としてヨウ素価56であるパーム油の分別油(パームオレイン)を使用した場合の配合比は、油脂A:油脂Bの質量比で95:5〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることがより好ましく、90:10〜60:40であることが更に好ましく、90:10〜70:30であることが最も好ましい。また、例えば、油脂Aとしてヤシ油及びパーム核油の極度硬化油、油脂Bの原料油脂(油脂C)としてヨウ素価56であるパーム油の分別油(パームオレイン)を使用した場合の配合比は、油脂A:油脂Bの質量比で95:5〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることがより好ましく、90:10〜60:40であることが更に好ましく、90:10〜70:30であることが最も好ましい。また、例えば、油脂Aとしてヤシ油及びパーム核油の極度硬化油、油脂Bの原料油脂(油脂C)としてヨウ素価33であるパーム油の分別油(パームステアリン)を使用した場合の配合比は、油脂A:油脂Bの質量比で95:5〜85:15であることが好ましく、95:5〜90:10であることがより好ましい。
本発明の油脂組成物は、クリーム(特にホイップクリーム)、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム等に用いられる水中油型乳化物に使用される油脂として、好適に用いることができる。本発明の油脂組成物は、クリーム(特にホイップクリーム)に使用される油脂として、特に好適に用いることができる。
なお、本出願におけるクリームとは、乳脂肪の代わりに食用植物性油脂を用いて製造される食品用の植物性クリームのことを意味する。
次に、本発明の水中油型乳化物について説明する。
本発明の水中油型乳化物は、本発明の油脂組成物を含有することを特徴とする。
本発明の水中油型乳化物は、油分(本出願において、油分とは、水中油型乳化物に含まれる油脂の全てのことを意味する)を、20〜50質量%含有することが好ましく、30〜50質量%含有することがより好ましく、41〜50質量%含有することが最も好ましい。
本発明の水中油型乳化物は、油分含量が40質量%を超える高油分の配合とすることも、低油分の配合とすることもできる。
本発明の水中油型乳化物に含まれる油分中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。つまり、本発明の水中油型乳化物に本発明の油脂組成物を配合する際、例えば、油脂組成物中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が70質量%のものを使用する場合は、そのまま使用することが好ましい。また、例えば、油脂組成物中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が100質量%のものを使用する場合は、本発明の水中油型乳化物に含まれる油分中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が70質量%となるまでは、他の植物油脂(前記油脂A及び前記油脂B以外の油脂)を配合することができる。他の植物油脂としては、通常、クリーム、特にホイップクリームとして用いられる水中油型乳化物用の油脂を使用することができる。
水中油型乳化物に含まれる油分中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が前記範囲にあると、得られる水中油型乳化物の乳化安定性が良好なものとなる。
また、本発明の水中油型乳化物中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量は、14〜50質量%であることが好ましく、21〜50質量%であることがより好ましく、29〜50質量%であることが最も好ましい。
本発明の水中油型乳化物には、油分以外の成分として、通常、水中油型乳化物に配合される成分を適量使用することができる。具体的には、乳化剤、無脂乳固形分、糖類、安定剤、塩類等を使用することができる。
乳化剤としては、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル等の従来公知の乳化剤が挙げられる。
無脂乳固形分としては、例えば、脱脂乳、脱脂粉乳、ホエーパウダー、カゼインナトリウム、生クリーム、牛乳、加糖練乳等が挙げられる。無脂乳固形分は、一部を植物性蛋白で置換して利用することもできる。
糖類としては、例えば、グルコース、マルトース、ソルビトール、シュークロース、ラクトース等が挙げられる。
安定剤としては、例えば、キサンタンガム、グアールガム等が挙げられる。
塩類としては、例えば、リン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
本発明の水中油型乳化物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法で製造することができる。例えば、油相と水相をそれぞれ調製した後、油相と水相を混合し、得られる乳化物を均質化処理することにより製造することができる。また、必要に応じて殺菌処理することもできる。均質化処理は、殺菌処理の前に行う前均質であっても、殺菌処理の後に行う後均質であってもよく、また、前均質及び後均質の両者を組み合わせた二段均質を行うこともできる。
本発明の水中油型乳化物は、油分を構成する脂肪酸中において、トランス脂肪酸を実質的に含まないことが好ましい。水中油型乳化物に含まれる油分の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量は、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることが更に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
本発明の水中油型乳化物は、クリーム、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム等の食品として用いることができ、特にクリームとして好適に用いることができる。
なお、前記した通り、本出願におけるクリームとは、乳脂肪の代わりに食用植物性油脂を用いて製造される食品用の植物性クリームのことを意味する。
本発明のクリームは、ホイップクリーム(起泡させる前のホイップクリーム用のクリームと起泡させた後のホイップしたクリームの両方を含む)として好適に用いることができる。
また、本発明のクリームは、起泡させずにクリームソース等の調理用クリームとしても好適に使用することができる。
本発明のクリームは、乳脂肪から製造される生クリームと併用して、コンパウンドクリームとして使用することもできる。
本発明のホイップクリームは、ケーキ、パン、ムース、パフェ等の製菓、製パン領域の食品に好適に使用することができる。
本発明のホイップクリームの配合組成は、例えば、好ましくは油分20〜50質量%、無脂乳固形分3〜6質量%、乳化剤0.4〜1.0質量%、水43.0〜76.6質量%、塩類0.05〜0.30質量%であり、より好ましくは油分30〜50質量%、無脂乳固形分3〜6質量%、乳化剤0.4〜1.0質量%、水44.25〜65.55質量%、塩類0.05〜0.20質量%であり、最も好ましくは油分41〜50質量%、無脂乳固形分4〜5質量%、乳化剤0.4〜0.6質量%、水44.25〜55.55質量%、塩類0.05〜0.15質量%である。
また、ホイップクリームには、必要に応じて、糖類、安定剤、香料等を添加することができる。
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明について詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例の内容に、何ら限定されるものではない。
(エステル交換油の調製)
〔エステル交換油1〕
パームオレイン(商品名:パームオレイン、日清オイリオグループ株式会社製、脂肪酸組成:炭素数16以上の飽和脂肪酸含量44.0質量%、炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量53.7質量%、炭素数14以下の脂肪酸含量1.2質量%、ヨウ素価:56.4)を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、対油0.2質量%のナトリウムメチラート(位置特異性:位置特異性乏しい)を添加し、減圧下、110℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、エステル交換油1を得た。エステル交換油1のランダム化率(パルミチン酸ベース)は100%であった。なお、パームオレイン中の脂肪酸組成は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)より測定した。
〔エステル交換油2〕
パームオレイン(商品名:パームオレイン、日清オイリオグループ株式会社製、脂肪酸組成:炭素数16以上の飽和脂肪酸含量44.0質量%、炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量53.7質量%、炭素数14以下の脂肪酸含量1.2質量%、ヨウ素価:56.4)に、対油1.2質量%のリゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(商品名:リポザイムTLIM、ノボザイムズ社製、位置特異性:1,3位特異性高い)を添加し、70℃で15時間攪拌しながら、エステル交換反応を行った。反応終了後、固定化リパーゼをろ過することによって除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、エステル交換油2を得た。エステル交換油2のランダム化率(パルミチン酸ベース)は13%であった。なお、パームオレイン中の脂肪酸組成は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)により測定した。
〔エステル交換油3〕
パームステアリン(マレーシアISF社のヨウ素価33工程品、脂肪酸組成:炭素数16以上の飽和脂肪酸含量65.9質量%、炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量32.5質量%、炭素数14以下の脂肪酸含量1.4質量%、ヨウ素価:33.2)に、対油0.2質量%のアルカリゲネス属由来のリパーゼ粉末(商品名:リパーゼQLM、名糖産業株式会社製、位置特異性:位置特異性乏しい)を添加し、70℃で15時間攪拌しながら、エステル交換反応を行った。反応終了後、リパーゼ粉末をろ過することによって除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、エステル交換油3を得た。エステル交換油3のランダム化率(パルミチン酸ベース)は83%であった。なお、パームステアリン中の脂肪酸組成は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)により測定した。
(油脂組成物の調製)
表1〜3に示した配合で原料油脂を混合し、実施例1〜6の油脂組成物、比較例1〜5の油脂組成物を得た。
表1〜3に示した原料油脂は、以下のものを使用した。
パームオレイン(商品名:パームオレイン、日清オイリオグループ株式会社製、脂肪酸組成:炭素数16以上の飽和脂肪酸含量44.0質量%、炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量53.7質量%、炭素数14以下の脂肪酸含量1.2質量%、ヨウ素価:56.4)。ヤシ油の極度硬化油(商品名:ヤシ硬34、日清オイリオグループ株式会社製、脂肪酸組成:ラウリン酸含量46.7質量%)。パーム油の中融点分別油(マレーシアISF社のヨウ素価45工程品、脂肪酸組成:炭素数16以上の飽和脂肪酸含量53.4質量%、炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量45.2質量%、炭素数14以下の脂肪酸含量1.2質量%、ヨウ素価:45.4)。パーム核油の極度硬化油(日清オイリオグループ株式会社のラボ調製品、脂肪酸組成:ラウリン酸含量46.1質量%)。ヤシ油(商品名:精製やし油、日清オイリオグループ株式会社製、脂肪酸組成:ラウリン酸含量46.7質量%)。
なお、油脂組成物の原料油脂中の脂肪酸組成は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)により測定した。
(油脂組成物のSFC及び油脂組成物中のトランス酸含量測定)
実施例及び比較例の油脂組成物の各温度(5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃)におけるSFCを基準油脂分析法の「暫1−1996 固体脂含量 NMR法」に従って測定した。15℃及び25℃のSFCから、15℃のSFCと25℃のSFCの差を算出した。
また、実施例及び比較例の油脂組成物中のトランス脂肪酸含量は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)により測定した。これらの測定結果を併せて表1〜3に示す。
Figure 0004594345
Figure 0004594345
Figure 0004594345
(クリームの調製)
クリームの油脂として、実施例1〜6の油脂組成物、比較例1〜5の油脂組成物を使用し、表4に示した配合で以下の方法によりクリームを調製した。
油脂に大豆レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、香料を溶解し、分散させて油相を調製した。また、水に脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ナトリウムを溶解し、分散させて水相を調製した。次に調製した水相に調製した油相を加え、60℃〜70℃に調温しながら、ホモミキサーにて予備乳化した。予備乳化後、6.0MPaの圧力下で均質化し、85℃、15分のバッチ殺菌を行い、約10℃まで冷却した後、5℃の冷蔵庫にて約18時間エージングすることにより実施例7〜12のクリーム、比較例6〜10のクリームを得た。
Figure 0004594345
(クリームの乳化安定性評価)
実施例7〜12のクリーム、比較例6〜10のクリームを用いて、乳化安定性を評価した。
〔粘度〕
各クリームを200mlビーカーに200g計量し、品温を10℃に調整し、B型粘度計、No.2ローターを用いて、回転数60rpmにてクリームの粘度を測定した。クリームの粘度が高粘度すぎて測定不可の場合は、ボテ現象を起こしており、クリームとして不適であることを示している。結果を表5〜7に示す。
〔乳化安定性〕
各クリームをビーカーに60g計量し、品温を20℃に調整し、スリーワンモーター(四枚羽根のプロペラ)にて160rpmで回転させ、クリームが凝固・増粘する(いわゆるボテる)までの時間を測定した。クリームが凝固・増粘するまでの時間が
長いほど、乳化安定性が高いことを示す。結果を表5〜7に示す。
(ホイップクリーム性の評価)
実施例7〜12のクリーム、比較例6〜10のクリームを用いて、ホイップクリーム性を評価した。
各クリーム500gに砂糖35gを加え、ホバートミキサー(ホバートジャパン社製)用い、中速2でホイップさせたホイップ後のホイップクリームについて、オーバーラン、保形性、口溶け性を評価した。
〔オーバーラン〕
各クリームについて、以下に示す式から、クリームの増加体積の割合を算出した。オーバーランの値が大きいほど、起泡性が良好であることを示す。結果を表5〜7に示す。
<計算式>
オーバーラン(%)=[(定容積のホイップ前のクリーム質量−定容積のホイップ後のクリーム質量)/(定容積のホイップ後のクリーム質量)]×100
〔保形性〕
各ホイップクリームを絞り袋に入れ、花型で絞り出した時のホイップクリームの外観を以下の4段階基準で評価した。結果を表5〜7に示す。
◎:型崩れなく極めて良好
〇:殆ど型崩れなく良好
△:わずかに型崩れがある状態
×:型崩れが大きい状態
〔口溶け性〕
各ホイップクリームを専門パネラー10名により食し、食した時の口溶けの好ましさを5段階基準で1〜5点に点数化し、10名の平均点から、ホイップクリームの口
溶け性を評価した。点数は、点数が高いほど口溶けが良く、点数が低いほど口溶けが悪いことを示している。結果を5〜7に示す。
Figure 0004594345
Figure 0004594345
Figure 0004594345
表5及び表6から分かるように、ラウリン系油脂及び炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満で炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満であるエステル交換油を原料油脂とし、油脂組成物における35℃のSFCが5%未満で15℃のSFCと25℃のSFCの差が30%以上である実施例1〜6の油脂組成物を使用して得られた実施例7〜12のクリームは、油分が40質量%を超える高油分クリームであるにもかかわらず、乳化安定性が著しくに高く、優れたものであった。
また、実施例1〜6の油脂組成物を使用して得られた実施例7〜12のクリームは、起泡性が優れ、ホイップ後のホイップクリームについても、トランス脂肪酸を実質含まないにもかかわらず、保形性、口溶けが十分に満足するものであった。
さらに、位置特異性の乏しいエステル交換反応を行って得られたエステル交換油を原料油脂とした実施例2の油脂組成物を使用した実施例8のクリームは、1,3位特異性の高いエステル交換反応を行って得られたエステル交換油を原料油脂とした実施例4の油脂組成物を使用した実施例10のクリームと比較して、クリームの乳化安定性及び起泡性、ホイップクリームの口溶けがより優れたものであった。
一方、表5〜表7から分かるように、従来クリームに用いられるラウリン系油脂のみを原料油脂とした比較例8のクリームは、起泡性、保形性及び口溶けが良好であるが、乳化安定性が著しく劣るものであった。
また、ラウリン系油脂及びパーム油の中融点分別油を組み合わせた従来低油分のクリームの油脂として用いられている比較例5の油脂組成物を使用した比較例10のクリーム(前記特許文献3、4相当品)は、保形性が良好であるが、起泡性、乳化安定性及び口溶けが著しく劣るものであった。
また、ラウリン系油脂及び炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満で炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満であるエステル交換油を原料油脂としているが、油脂組成物における35℃のSFCが5%を超える比較例1及び比較例2の油脂組成物を使用して得られた比較例6及び比較例7のクリームは、乳化安定性、起泡性及び保形性が良好であるが、口溶けが著しく劣るものであり、満足のいくものではなかった。
また、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満で炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満であるが、エステル交換反応を行っていない油脂を原料油脂とした比較例4の油脂組成物を使用して得られた比較例9のクリームは、保形性及び口溶けは良好であるが、起泡性及び乳化安定性が著しく劣るものであった。

Claims (11)

  1. 下記油脂A及び油脂Bを含有する油脂組成物であって、該油脂組成物の全構成脂肪酸中におけるトランス脂肪酸含量が5質量%未満、該油脂組成物の35℃でのSFC(固体脂含量)が5%未満、該油脂組成物の15℃でのSFC(固体脂含量)と25℃でのSFC(固体脂含量)の差が30%以上である油脂組成物。
    油脂A:ラウリン系油脂、ラウリン系油脂の分別油及びラウリン系油脂の極度硬化油からなる群から選ばれる1種又は2種以上
    油脂B:油脂Cをエステル交換反応することにより得られるエステル交換油
    油脂C:全構成脂肪酸中における炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が20質量%以上75質量%未満、全構成脂肪酸中における炭素数16以上の不飽和脂肪酸含量が25質量%以上70質量%未満である油脂
  2. 前記油脂Cが、パーム油及び/又はパーム油の分別油である請求項1に記載の油脂組成物。
  3. 前記油脂Cが、ヨウ素価55〜71のパーム油の分別油である請求項1に記載の油脂組成物。
  4. 前記油脂組成物中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が、70質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
  5. 前記油脂組成物が、クリームに用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の油脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有する水中油型乳化物。
  7. 前記水中油型乳化物の油分中における前記油脂A及び前記油脂Bの合計含量が、70質量%以上である請求項6に記載の水中油型乳化物。
  8. 前記水中油型乳化物中における油分含量が、40質量%を超える請求項6又は7に記載の水中油型乳化物。
  9. 前記水中油型乳化物が、クリームである請求項6〜8のいずれか1項に記載の水中油型乳化物。
  10. 前記クリームが、ホイップクリームである請求項9に記載の水中油型乳化物。
  11. 請求項6〜10のいずれか1項に記載の水中油型乳化物を用いた食品。
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