JP3775112B2 - 車両のエンジン再始動時の制御装置 - Google Patents

車両のエンジン再始動時の制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止したエンジンを再始動する車両のエンジン再始動時の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、走行中において車両が停止し、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させ、燃料の節約、排気エミッションの低減、あるいは騒音の低減等を図るように構成した車両が提案され、すでに実用化されている(例えば特開平8−14076号公報、特開平9−222035号公報)。
【0003】
具体的には、車速零、アクセルオフ、ブレーキペダルオン、などといった所定の停止条件を満足したことが検出されたときにエンジンを自動停止するようにしている。
【0004】
エンジンを再始動させる条件が成立したとき、例えば、ドライバがアクセルペダルを踏む(アクセルオン)などの走行の意思を示した場合には、直ちにエンジンを再始動させるようにしている。又、バッテリの充電容量が不足したときなどではドライバが走行の意思を表していない場合でもエンジンを再始動させるようにしている。これは、バッテリ上がりを防止し、エンジン再始動が不可能な事態となることを避けるためである。
【0005】
ところで自動変速機搭載車においては、シフトポジションが「D(ドライブ)」ポジションのような前進走行ポジションに設定されていると、車速が実質的に零の場合であっても、自動変速機の歯車変速装置はニュートラルの状態にはならず、第1速段に設定されるようになっている。従って、内燃機関の出力はトルクコンバータ、歯車変速装置の前進クラッチを経て常に出力軸に伝達されるため、いわゆるクリープが生じる。このクリープはドライバがアクセルをオンにしなくても極低速走行を可能とするものであり、車両を走行させる上でドライバにとって有効に作用する場合が多い。
【0006】
ところが、エンジンが自動停止していると、このクリープ力が発生しない。従って、車両が斜面上に停止していたような場合には、後退してしまう恐れがある。そこで、このようなことに鑑みて、エンジン停止時に車輪をロックすることによって、車両が動かないようにブレーキ力を保持する制御(いわゆるヒルホールド制御)を行うものが提案されている。
【0007】
エンジンが自動停止しているときは、自動変速機用のオイルポンプも停止しているため、前進段を形成するためのクラッチも係合が解かれた状態となっている。そのため、シフトポジションが駆動ポジションの状態でエンジンを再始動したときには、それと同時に前進段を形成するために当該クラッチを係合させる技術が提案されている。
【0008】
又、このようにエンジンが再始動してから前進クラッチを係合させると発進性が損なわれるため、エンジンを自動停止させている間でも、モータジェネレータ等による動力発生源により電動のオイルポンプを回したり、大型のアキュムレータを備えたりして前進クラッチを係合したままの状態に維持しておく技術も提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれの制御形態を採用している場合であっても、エンジンが再始動される際に、クリープ力(駆動力)の回復とブレーキ作動(ヒルホールド)の解除とのタイミングがずれると、車両の飛び出し感が発生したり、逆に車両が急な坂道にあった場合に後退が発生したりしてしまうことがあった。
【0010】
とりわけ、エンジンの再始動と共に前進クラッチを係合させる制御形態を採用している車両にあっては、再始動によるエンジンの駆動力の発生タイミングと前進クラッチの係合タイミングとブレーキ作動の解除タイミングとの3者のかけ合せとなるため、不具合が発生する恐れがそれだけ大きくなり易いという事情があった。
【0011】
また、エンジンの始動処理を行った後において、エンジン回転速度がアイドル回転速度に落ち着く前に、一時的にアイドル回転速度より高い回転速度(最大回転速度)となる状態がある。
【0012】
その最大回転速度NEmaxについて図12を用いて説明する。
【0013】
図12は、ヒルホールド制御を実行していないときの車速V、エンジン回転速度NE、ブレーキペダルのオン・オフ信号、車両の前後の揺れ(以後、車両の前後Gという)を示したものである。
【0014】
図12において、時刻t21にてブレーキペダルオンの信号が検出され、時刻t22にて車両が停止している(車速零)。
【0015】
所定のエンジン自動停止条件が成立したら、エンジンは自動停止を開始する(時刻t23)。
【0016】
時刻t24にて例えばエンジンの再始動条件の1つであるブレーキペダルオフの信号があった場合には、エンジンは再始動処理を実行し、エンジンの回転速度NEが上昇し始める。
【0017】
前述したようにエンジン回転速度NEはアイドル回転速度NEiに落ち着く前の時刻t25付近でアイドル回転速度より一時的に高くなる。これが最大回転速度NEmaxである。この最大回転速度NEmaxに達する付近では、図に示してあるように、車両は前後に大きく揺れを生じている。
【0018】
これはエンジンが始動し始め直後ということもあって、エンジン回転速度NEが未だ完全に落ち着いていない状態であることに加え、所定のクラッチの係合状態とも関係して、車両が不安定な状態であるからと考えられる。
【0019】
また、このときブレーキペダルは、解除(解放)されている状態であるため、より一層、車両に大きな揺れが生じている。
【0020】
このように車両に発生する前後Gは、ドライバに不快感を与える可能性がある。
【0021】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであって、エンジンの再始動に当って車両の飛び出し感が発生したり車両の後退が発生したりするのを防止すると共に、良好な発進性を確保することができる車両のエンジン再始動時の制御装置を提供することをその課題とする。
【0032】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止したエンジンを再始動する車両のエンジン再始動時の制御装置において、前記エンジンの自動停止中に車両のブレーキ力を保持する手段と、エンジン再始動の際に、エンジン回転速度がアイドル回転速度に落ち着く前に一時的に前記アイドル回転速度より高い最大回転速度に至ったことを判定する手段とを備え、前記自動停止したエンジンが再始動する際に、エンジン回転速度がアイドル回転速度に落ち着く前に一時的に前記アイドル回転速度より高い最大回転速度に至ったと判定された時点もしくはその時点以降でかつ該時点を基準に所定時間が経過した時点から前記車両のブレーキ力を減少させることにより、上記課題を解決したものである。
【0033】
請求項1は、ブレーキ力減少の「開始タイミング」の一例を示したものである。
【0034】
エンジンが暖まっているときと冷えているときとでは、エンジン始動時のタイミングが現実問題としてばらつくことがあるが、請求項1の発明により、たとえ、エンジンの始動のタイミングがばらついたとしても、即ち駆動力の発生にばらつきが発生したとしても、常にブレーキ力の減少の開始タイミングを一定にすることができる。
【0035】
また、請求項1の発明によると、ブレーキ力を、エンジン始動開始当初における不安定な状態が経過するまで(駆動力が安定するまで)は保持しているので、車両が前後に揺れることを大幅に抑制することができる。
【0036】
なお、前述したように、例えばブレーキ力減少の「開始タイミング」を駆動力の回復状態に合わせて決定した場合には、「減少のさせ方」については必ずしも駆動力に依存させる必要はなく、例えば、請求項2、3に記載の「減少のさせ方」を採用してもよい。
【0037】
又、ブレーキ力減少の「開始タイミング」に対しては、いわゆるガードを設定し、例えばエンジンの再始動に失敗したようなときでも誤ったタイミングでブレーキ力の減少が開始しないように構成することもできる(請求項4)
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0039】
この実施形態では、図6に示されるような車両の駆動システムにおいて、所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させると共に、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止したエンジンを再始動させるようにしている。
【0040】
図6において、符号1は前述した車両に搭載されるエンジン、2は自動変速機である。このエンジン1には該エンジン1を再始動させるためのモータ及び発電機として機能するモータジェネレータ(MG)3が、該エンジン1のクランク軸1aに、クラッチ26、チェーン27、クラッチ28及び減速機構Rを介して連結されている。なお、エンジンスタータをモータジェネレータ3と別に設け、エンジン始動時に、スタータとモータジェネレータ3を併用したり、極低温時にはスタータを専用に使用してもよい。
【0041】
減速機構Rは、遊星歯車式で、サンギア33、キャリア34、リングギア35を含み、ブレーキ31、ワンウェイクラッチ32を介してモータジェネレータ3及びクラッチ28の間に組込まれている。
【0042】
自動変速機2用のオイルポンプ19は、エンジン1のクランク軸1aにクラッチ26、28を介して直結されている。自動変速機2内には、前進走行時に係合される公知の前進クラッチC1や、後進時に係合される後進クラッチC2(図示せず)等が設けられている。符号4はモータジェネレータ3に電気的に接続されるインバータである。このインバータ4は、スイッチングにより電力源であるバッテリ5からモータジェネレータ3への電気エネルギの供給を可変にしてモータジェネレータ3の回転速度を可変にする。又、モータジェネレータ3からバッテリ5への電気エネルギの充電を行うように切り換える。
【0043】
符号7はクラッチ26、28の断続の制御、及びインバータ4のスイッチング制御を行うためのコントローラである。
【0044】
なお、図中の矢印線は各信号線を示している。
【0045】
該コントローラ7は、エンジン及び自動変速機等をコントロールするECU(電子制御装置)80とリンクしている。このコントローラ7、ECU80には、図中の矢印線に示すように各種センサ群90(エンジン回転速度NEを検出するエンジン回転速度センサ91、車速Veを検出する車速センサ92、アクセルのオン、オフを検出するためのアイドル接点センサが付設されると共にアクセル開度に相当するスロットル開度を検出するスロットル開度センサ93、シフトレバーのシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ94、ブレーキオン信号を検出するブレーキ信号センサ95、イグニッションスイッチのオン・オフを検出するイグニッションの位置を検出するセンサ96、エコランモードを検出するエコランスイッチセンサ97、タービン回転速度を検出するタービン回転速度センサ98、バッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出センサ99等)からの信号が入出力されている。シフトポジションセンサ94は、従来と同様のセンサであり、各ポジションにそれぞれ配置されている。
【0046】
又、このコントロール7は、エンジン及び自動変速機等を制御するエンジンECU(電子制御装置)80、ブレーキ力を制御するブレーキECU82とリンクしている。
【0047】
次に、上記自動変速機2において前進クラッチC1を係合させる構成について説明する。
【0048】
図7は自動変速機の油圧制御装置において前進クラッチC1を係合させる構成の要部を示す油圧回路図である。後進クラッチC2の場合も基本的には同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0049】
プライマリレギュレータバルブ50は、ライン圧コントロールソレノイド52によって制御され、オイルポンプ19によって発生された元圧をライン圧PLに調圧する。このライン圧PLは、マニュアルバルブ54に導かれる。マニュアルバルブ54は、シフトレバー44と機械的に接続され、ここでは、前進ポジション、例えば、Dポジション、あるいはマニュアルの1st(L)、2nd等が選択されたときにライン圧PLを前進クラッチC1側に連通させる。
【0050】
マニュアルバルブ54と前進クラッチC1との間には大オリフィス56と切換弁58が介在されている。切換弁58はソレノイド60によって制御され、大オリフィス56を通過してきたオイルを選択的に前進クラッチC1に導いたり遮断したりする。
【0051】
切換弁58をバイパスするようにしてチェックボール62と小オリフィス64が並列に組み込まれており、切換弁58がソレノイド60によって遮断されたときには大オリフィス56を通過してきたオイルは更に小オリフィス64を介して前進クラッチC1に到達するようになっている。なお、チェックボール62は前進クラッチC1の油圧がドレンされるときに該ドレンが円滑に行われるように機能する。
【0052】
切換弁58と前進クラッチC1との間の油路66には、オリフィス68を介してアキュームレータ70が配置されている。このアキュームレータ70はピストン72及びスプリング74を備え、前進クラッチC1にオイルが供給されるときに、スプリング74によって決定される所定の油圧にしばらく維持されるように機能し、前進クラッチC1の係合時の発生するショックを低減する。
【0053】
次に車両を停止状態に維持するためのブレーキの構成を図8に基づいて説明する。
【0054】
図8において、符号200はブレーキ操作部材としてのブレーキペダルを示している。ブレーキペダル200は油圧式ブースタ206を介してマスタシリンダ208を作動させるようになっている。マスタシリンダ208の上部にはリザーバ210が取り付けられており、このリザーバ210からポンプ214がブレーキ液を汲み上げてアキュームレータ216に高圧で蓄えるようにされており、そのアキュームレータ216に前記ブースタ206が液通路218により接続されている。
【0055】
マスタシリンダ208の内部の図示せぬ加圧室は、液通路212、244とから成る主液通路によって、前輪238を制動するブレーキのホイールシリンダに接続されている。一方、加圧室(図示せず)は後輪を制動するブレーキのホイールシリンダに接続されているが、この後輪系統の構成は前輪系統の構成と同一であるため図示及び説明を省略し、以下、前輪系統についてのみ説明する。
【0056】
液通路212には逆止弁222と電磁増減圧弁232とが設けられている。電磁増減圧弁232は常には液通路212と244、即ちマスタシリンダ208とホイールシリンダ240とを連通させる増圧許容状態にあるが、ソレノイド230に中間的な電流が供給されることによりマスタシリンダ208とホイールシリンダ240との連通を遮断する保圧状態に切り換えられ、更にソレノイド230に大電流が供給されることによってホイールシリンダ240をリザーバ210に連通させる減圧許容状態に切り換えられる三位置電磁弁となっている。
【0057】
上記電磁増減圧弁232をバイパスするバイパス通路224には逆止弁222が設けられており、ホイールシリンダ240のブレーキ液はこのバイパス通路224を経てマスタシリンダ208へ環流し得るようにされている。
【0058】
なお、マスターシリンダ208とホイールシリンダ240の間のバイパス通路224には、ブレーキをかけたときに、そのままホイールシリンダ240にブレーキ液を閉じ込めておける機能を備えたリニア弁228が備えられている。このリニア弁228は単なるオン・オフの2通りの制御に限られたものではなく、弁の開閉制御を自在の位置に制御でき、リニアに可変できる機能を備えている。
【0059】
後述するが、このリニア弁228があることにより、例えばブレーキペダル200を一気に離した状態のときでも、ブレーキ油圧を徐々に解放する制御が可能である。
【0060】
又、本実施形態では、該リニア弁228を制御することにより、ブレーキ力を減少するタイミングを制御し、車両の前後の揺れ(車両の前後G)を抑制するようにする(後に詳述)。
【0061】
また、後述するブレーキ油圧を保持している間に、ブレーキの油圧低下による制動力低下を防ぐために該リニア弁228をバイパスする形でホイールシリンダ240を加圧可能な加圧弁229を設置する。
【0062】
上記通路212の逆止弁222を経た後の部分には、電磁閉開弁220を介して前記アキュームレータ216が接続されている。電磁閉開弁220は常にはアキュームレータ216と液通路212との連通を遮断する状態にあるが、上記電磁増減圧弁232の作動開始と同時に開状態とされ、アキュームレータ216から高圧のブレーキ液が電磁増減圧弁232に供給されるようになっている。このアキュームレータ216から供給される高圧のブレーキ液がマスタシリンダ208に流入することは、逆止弁222によって阻止される。
【0063】
なお、符号236は前輪238の回転速度を検出する回転速度センサ、202はブレーキペダル200の操作力を検出するロードセルである。
【0064】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0065】
図6を参照して、エンジン始動時にはクラッチ26、28が接続状態とされ、モータジェネレータ3を駆動してエンジン1を始動する(スタータ併用あるいは単独の場合もあるが、ここでは説明しない)。このときブレーキ31をオンにすることで、モータジェネレータ3の回転は減速機構Rのサンギヤ33側からキャリア34側に減速して伝達される。これにより、モータジェネレータ3とインバータ4の容量を小さくしても、エンジン1をクランキングするのに必要な駆動力を確保できる。エンジン1の始動後は、モータジェネレータ3は発電機として機能し、例えば車両の制動時においてバッテリ5に電気エネルギを蓄える。
【0066】
エンジン始動時にはモータジェネレータ3の回転速度をコントローラ7が検出し、インバータ4に対し、モータジェネレータ3の回転がエンジン1を始動するのに必要なトルクと回転速度となるようにスイッチング信号を出力する。例えばエンジン始動時にエアコンがオンとなっていれば、エアコンオフ時に比べてより大きなトルクが必要であるから、コントローラ7は大きなトルク及び回転速度でモータジェネレータ3が回転できるようにスイッチング信号を出力する。
【0067】
エコランモード信号がオンとなった状態で、所定のエンジン停止条件が成立すると、コントローラ7は、エンジン1に燃料の供給をカットする信号を出力し、エンジンを自動停止させる。エコランモード信号は、車室内に設けられたエコランスイッチ40を運転者が押すことによってコントローラ7に入力される。
【0068】
なお、本実施形態では、エンジン1の停止条件を「車速が零」、「アクセルオフ」、「ブレーキオン」、「シフトポジションが非駆動ポジションである」とし、且つ、「これらの条件が連続して所定時間Tstopが経過」としている。この所定時間Tstopはタイマによりカウントされるようになっており、コントローラ7、エンジンECU80、及び、ブレーキECU82に入力され処理される。
【0069】
なお、この所定時間Tstopはエンジンの自動停止を開始するまでの時間に相当し、状況に応じて変更・設定可能である。この所定時間Tstopを零に設定し、所定の停止条件が整い次第すぐにエンジンの自動停止を行ってもよく、又、無限大に設定してエンジンの自動停止を実質的に禁止するようにもできる。
【0070】
なお、本実施形態では上記のような条件をエンジン自動停止条件としたが、特にこれに限定されるものではない。また、後述するエンジン再始動条件も同様とする。
【0071】
エンジン1が停止中でもエアコンやパワーステアリングは作動させておきたいため、パワーステアリング用ポンプ、エアコン用コンプレッサの負荷等が考慮されたトルクでモータジェネレータ3が回転するように、コントローラ7はインバータ4に対して相応のスイッチング信号を出力する。
【0072】
次にエンジンの再始動条件が成立し、エンジン1が自動停止された状態から再始動されるときの前進クラッチC1における作用について説明する。
【0073】
本実施形態では、所定の再始動条件が成立したときに、エンジンは再始動をする(エンジンの自動復帰)。
【0074】
所定の再始動条件は、その一例として、停止条件である「車速が零」、「アクセルオフ」、「ブレーキオン」、「シフトポジションが非駆動ポジションである」のうちいずれかが未成立のときが採用し得る。これ以外に、エンジンが自動復帰される場合として、バッテリの充電量SOCが不足してきたときがある。
【0075】
なお、シフトポジションに関しては、本実施形態では非駆動ポジションのときにエコランモードに入るようにし、駆動ポジションになったことが検出されたときにエコランモードを終了させるようにしているが、特にこれに限定されるものではなく、駆動ポジションだけでエコランを実施するシステムであっても、駆動ポジション・非駆動ポジションの両方でエコランを行うシステムであってもよい。
【0076】
図7において、エンジンが再始動すると、オイルポンプ19が回転を開始し、プライマリレギュレータバルブ50側にオイルが供給される。プライマリレギュレータバルブ50で調圧されたライン圧は、マニュアルバルブ54を介して最終的には前進クラッチC1に供給される。
【0077】
本実施形態では、なるべく早く前進クラッチC1を係合させるため、オイルの供給初期に一時的にオイルを急速に供給する(急速増圧制御)システムを採用している。
【0078】
これは、前進クラッチC1を早期に係合させることにより、車両の「駆動力回復の指標」として「エンジン回転速度」のみに着目すればよいようにするためである。即ち、前進クラッチC1の係合が遅れ気味の場合、「駆動力の回復」を見るにはエンジンの駆動力の増大状態の他に、厳密には前進クラッチC1の係合状態を考慮する必要があるが、前進クラッチC1が早期に係合されるように構成されていれば、「駆動力」の回復状態を見るに当たって前進クラッチC1の係合状態が関係する確率をそれだけ低減できる。
【0079】
まず、初めに急速増圧制御を実施する場合について説明する。
【0080】
コトンローラ7から急速増圧制御の指令を受けてソレノイド60が切換弁58を開に制御しているときは、マニュアルバルブ54を通過したライン圧PLは、大オリフィス56を通過した後、そのまま前進クラッチC1に供給される。なお、この急速増圧制御が実行されている段階では、スプリング74のばね定数の設定によりアキュームレータ70は機能しない。
【0081】
やがて、コントローラ7より急速増圧制御の終了指令を受けてソレノイド60が切換弁58を遮断制御すると、大オリフィス56を通過したライン圧PLは小オリフィス64を介して比較的ゆっくりと前進クラッチC1に供給される。
【0082】
また、この段階では、前進クラッチC1に供給される油圧は高くなっているため、アキュームレータ70に繋がっている油路66の油圧がスプリング74に抗してピストン72を図の上方に移動させる。その結果、このピストン72が移動している間、前進クラッチC1に供給される油圧の上昇が緩くなり、前進クラッチC1は非常に円滑に係合を完了できる。
【0083】
また、本実施形態では、前述したように図8にて説明したブレーキシステムにより、エンジン停止指令後に、リニア弁228を閉状態にすることにより、ブレーキ油圧(ホイールシリンダ圧)をホールド状態にし、ブレーキ力Btを確保している。
【0084】
つまり、エンジン自動停止指令後、ブレーキ圧を一時的にホールドして(ブレーキ圧を閉じ込めることによりブレーキ力Btを高め)、車両が動かないようにしている(ヒルホールド制御)。
【0085】
次にエンジン再始動時におけるブレーキ力Bt及びクリープ力(車両の駆動力)Ktの関係を説明する。
【0086】
先ず、本実施形態を説明する前に、本発明を従来の技術と比較するために、図2(A)を用いて従来技術について簡単に説明する。
【0087】
図2(A)において、時刻t11にて所定条件が成立しエンジンが自動停止し、時刻t12にてクリープ力Ktが完全に零(無くなった状態)とする。
【0088】
この段階でヒルホールド制御が機能し、ブレーキシステム中のブレーキオイルが閉じ込められるため、ドライバはブレーキペダル200を強く踏み込まなくてもそれまでと同様なブレーキ力を得ることができる。
【0089】
ところが、時刻t13にてブレーキペダル200が解放されると、(それによって再始動の条件が成立したとして)エンジンは再始動されるが(時刻t14)、同時にこのヒルホールド制御も解除されてしまうため、時刻t15においてクリープ力がKtにまで落ち着くまでの間は車両を停止させておく機能が無くなることになる。そのため、このような従来のシステムにおいて、例えば車両がきわめて急な坂道にあった場合を想定するとブレーキが解除され、エンジンが再始動しクリープ力Ktが発生するまでの時間(時刻t13〜時刻t14)T1の間に車両が後退してしまう恐れがある。
【0090】
この時間T1は、自動変速機搭載車であって、エンジン再始動と共に前進クラッチC1を係合させるシステムを採用している車両の場合には、単にエンジンが立ち上るまでの時間だけでなく、前進クラッチが係合される時間も加わるため、この不具合は一層顕著になる恐れがある。
【0091】
また、さらにエンジン回転速度が立上った後(時刻t14以降)にあっては、クリープ力Ktが回復した状態にありながら、すでにこのときはブレーキ力Btが完全に零のため、前進クラッチC1への油圧供給が最適に実行されないと、前進クラッチC1の急係合により車両の飛び出し感が発生する可能性がある。
【0092】
また、一方で、前進クラッチC1が係合した後もヒルホールド機能が解除されないと発進がもたつく恐れがある。そのため、ヒルホールド機能の解除の適正化が重要となってくる。
【0093】
そこで本実施形態では、エンジン再始動時に以下に説明する制御(形態)を実施する。
【0094】
まず、第1の実施形態では、ブレーキ力Btを、クリープ力Kt、即ち駆動力の回復状態に合わせて反比例の関係で減少させるように制御する。
【0095】
ここで、第1の実施形態におけるエンジン再始動時の制御を図1を用いて説明する。
【0096】
図1は、車速V、エンジン回転速度NE、ブレーキペダル200からのオン・オフ信号、クリープ力Kt、ブレーキ油圧(ブレーキ力)Bt、リニアバルブ228の開閉度、を時間軸tに沿って示したものである。
【0097】
図1において、時刻t1にて走行中の車両にブレーキがかけられ、車速が低下する。このとき、ブレーキ油圧はドライバによりブレーキペダル200が踏まれているため一時的に高くなる。
【0098】
時刻t2にて車両が完全に停止状態となり、その後、エンジンの自動停止条件が成立するか否かを判定する。エンジンの自動停止条件は前述したとおりなのでここでは省略する。
【0099】
エンジンの自動停止条件が成立した場合には、時刻t3からエンジンの自動停止制御が開始される。この場合、当然エンジンが停止状態となるため、エンジン回転速度NEが零となり、また、前進クラッチC1への油圧も抜けてしまうため、クリープ力Ktも発生しなくなる。
【0100】
第1の実施形態では、前述したようにエンジン自動停止中においてもブレーキ油圧を確保しておくようにするため、リニア弁228を完全に閉状態とする。このようにすることで、エンジン停止中でもブレーキ油圧をホイールシリンダ240に閉じこめておくことができるため、ブレーキペダル200の踏込負担を軽くすることができる。
【0101】
ここまでの制御は従来の図2(A)と基本的に変わらない。
【0102】
時刻t4にて、例えばエンジン再始動条件の1つであるブレーキオフ信号があった場合には、エンジンはすぐに再始動を開始する。
【0103】
第1の実施形態では、このエンジンの再始動の際にリニア弁228を次のように制御する。
【0104】
まずここで、図1におけるIIIの拡大図を図3に示し、該リニア弁228の制御について説明する。
【0105】
時刻t4においてエンジンの再始動指令が出されると、これによってエンジンが回転を開始し、前進クラッチC1の係合に伴って時刻t5からエンジン始動と共に徐々にクリープ力Ktが発生する。
【0106】
前述したように、仮に例えば、時刻t4においてエンジン再始動(指令)と共にリニア弁228によるヒルホールド制御を解除すると(ブレーキペダル200は既に解放されているので)、時刻t5までは車両に駆動力も制動力も全く働かない状態となり、車両が後退してしまう恐れがある。
【0107】
一方で、これを嫌って、例えばエンジン回転速度NEがアイドル回転速度NEiに落ち着くまでヒルホールド制御を継続し、ここでブレーキ力Btを解除するようにすると、既にクリープ力が完全に発生している状態で(ドライバの操作に依らないで)ブレーキ力Btが解除されることになるため、車両の飛出し感が発生する恐れがあり、また、この時点までブレーキ力Btを保持しているのは発進のもたつきを招く。
【0108】
そのため、第1の実施形態では、エンジン再始動の際の、車両のクリープ力(駆動力)Ktの回復状態を検出し、自動停止したエンジン1が再始動する際に、車両のブレーキ力Btを車両の駆動力の回復状態に合わせて減少させるようにする。
【0109】
このように、駆動力の回復に合わせてブレーキ力を制御(低減)することにより、駆動力の回復とブレーキ作動の解除のタイミングを適正化することができ、車両の飛び出し感を抑制し、又、車両が後退するのを防止することができる。また良好な発進性も確保できる。
【0110】
なお、クリープ力の検出は、(例えば動力伝達系に力センサを配置して直接検出してもよいが)必ずしも直接検出する必要はない。つまり、エンジン回転速度等から導き出しても良い。
【0111】
また、「車両のブレーキ力を該車両の駆動力の回復状態に合わせて減少させる」際の具体的な開始トリガは、ここでは特に限定しない。
【0112】
つまり、開始タイミングとしては、クリープが発生した時点から直ちに反比例的にブレーキ力を減少するようにしてもよく、また、ある所定の値にクリープ力(駆動力)が到達した時点から反比例に相当する割合でブレーキ力を減少するようにしてもよい。
【0113】
具体的には、この実施形態ではエンジン回転速度NEが所定のエンジン回転速度NE1に到達したときをトリガとして、その時点から発生すると予測されるクリープ力に反比例するようにブレーキ力を減少させる。
【0114】
以下にクリープ力Ktの発生状態の検出を行うために利用可能なパラメータ(条件)を示す。発生開始、発生途中、発生完了は、それぞれのパラメータにおける条件式の閾値を適宜に変更することにより判断できる。閾値の数を増大すればそれだけ精度よく検出できる。これに合わせてブレーキ力を減少させればよい。
【0115】
(1)エンジン回転速度NE>所定エンジン回転速度NE1
(2)クリープトルク(クリープ力)Kt>所定クリープトルクKt1
(3)駆動トルクFt>所定駆動トルクFt1
(4)前進クラッチの油圧(あるいはライン圧)P>所定圧P1
(5)ブレーキペダルオフ(エンジン再始動指令)後の経過時間Td>所定時間Td1
【0116】
上記条件の(1)〜(4)については直接検出又は直接検出に近い方法なので、詳細はここでは省略する。
【0117】
上記条件(5)は、エンジンの再始動指令からの経過時間とクリープ力の回復にほぼ一定の関係があることに着目したもので、図4に示すように、ブレーキペダルがオフにされて(再始動指令が出されて)からの経過時間Td(Td1、Td2、Td3…)を確認することにより、それに合わせてブレーキ力Btを減圧できることを意味している。
【0118】
なお、ブレーキ力の制御に関して、例えば以下のような条件を更に考慮してもよい。
【0119】
(6)アクセルペダルオン
(7)車速Vc>所定車速Vc1
(8)ブレーキブースタ負圧Vs>所定ブレーキブースタ負圧Vs1
(9)ブレーキペダル踏み込みトータル回数n>所定ブレーキペダル踏み込みトータル回数n1
(10)ブレーキペダル踏み込みストロークns>所定ブレーキペダル踏み込みストロークns1
(11)シフトポジション(N→D)
(12)パーキングブレーキレバーオン
【0120】
上記条件(6)は、ブレーキを減圧中にアクセルが踏まれた場合には、ドライバの発進意思が大きいと判断し、図5に示すように本発明の制御(ブレーキ力を車両のクリープ力(駆動力)の回復状態に合わせて減少させる制御)を中止し、リニア弁228を全開にする。
【0121】
このようにすることで、発進のもたつきを無くし、スムーズな発進が可能となる。
【0122】
また、上記条件(7)のように、ブレーキ保持中(ヒルホールド制御中)に車速が上がった(零では無くなった)場合には、本制御を維持する必要がなくなったと判断し、ブレーキ力保持の終了の判定をする。
【0123】
上記条件(8)〜は、フェイルセーフ等に関係してヒルホールド制御を中止する条件である。例えばブレーキブースタ206の内圧(負圧)が減少した場合や、ブレーキペダルがトータルしてn1回踏まれたときなどでは、ブレーキ性能が確保されていないと判断し、ブレーキ力保持の終了(ヒルホール制御終了)を判定し、直ちにエンジンを再始動させ、ブレーキ負圧を確保するようにする。
【0124】
なお、クリープ力Ktの斜線部分は、もしエンジンが停止していなければ発生していたはずの力である。
【0125】
具体的なブレーキ力Btの減少させる方法としては、図8にて説明したリニア弁228を制御することにより、ブレーキ(制動)油圧を制御する。
【0126】
なお、リニア弁228は、ブレーキ力のオン・オフの2通り以外の制御も可能な弁であり、ブレーキ力Btをきめ細かくリニアに制御可能である。
【0127】
又、この第1の実施形態では具体的には、クリープ力Ktはエンジン回転速度NEより算出・推定し、これに合わせて反比例の関係となるようにブレーキ力Btの減圧勾配を決めるようにしているがこれに限定されない(後述)。
【0128】
図2(B)は、先程「従来の技術」にて説明した図2(A)と時間軸を同一にした第1の実施形態の制御を表したものである。
【0129】
図2(B)からも明らかなように、ブレーキ力Btとクリープ力Ktとが互いに反比例の関係で減少させるようにしたり、また、予め実験データによって得られた値に基づいて実行する。
【0130】
図1に戻り、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度NEiとなり、クリープ力Ktが安定した状態になる時刻t6以降はブレーキ油圧が完全に零となり(解除され)、通常通り安定したクリープ力Ktが発生するようになる。なお、時刻t7ではアクセルがオンされ、車速が上がっていく状態が示されている。
【0131】
車両のクリープ力(駆動力)Ktの回復状態に合わせてブレーキ力を減少させる割合の算出は,例えばエンジンECU80、ブレーキECU82等にて行えばよい。
【0132】
次に第2の実施形態におけるエンジン再始動時の制御を図9に示す。
【0133】
図9は、図1と同様に、車速V、エンジン回転速度NE、ブレーキペダル200からのオン・オフ信号、クリープ力(駆動力)Kt、ブレーキ力(ブレーキ油圧:ホイールシリンダ圧)Bt、リニアバルブ228の開閉度、車両の前後Gの関係を時間軸tに沿って示したものである。
【0134】
図9では、エコランが終了する時刻t14まで図1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0135】
エンジン始動(時刻t14)後においては、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度NEiに落ち着くまでの間に、一時的にアイドル回転速度より高い回転速度(最大回転速度)NEmaxになるところがある。
【0136】
第2の実施形態では、エンジン再始動の際に、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度NEiに落ち着く前のこの最大回転速度NEmaxに至ったことを判定し、自動停止したエンジンが再始動する際に、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度NEiに落ち着く前の最大回転速度NEmaxに至ったと判定された時点をブレーキ力減少の開始タイミングとして捉え、ここから車両のブレーキ力Btを減少させるように制御する。
【0137】
これは、ブレーキ力Btを減少させる際の開始タイミング(ブレーキ力Btを解除するトリガ)を特定したものである。
【0138】
具体的には、図9に示すように第2の実施形態では、エンジン回転速度NEが最大回転速度NEmaxに到達した時刻t15以降の時刻t16からブレーキ力Btの減少(減圧)を開始させている。
【0139】
エンジン回転速度NEが最大回転速度NEmaxに到達したか否かの判断は、例えば、エンジン回転速度NEをリアルタイム、あるいは極めて小さい間隔で検出しておき、その検出による値が減少、あるいは減少傾向が連続して検出されたときとすればよい。
【0140】
このようにすることで、エンジンが暖まっているときと、冷えているときとでエンジン始動時のタイミングがばらついたとしても、即ち、駆動力(クリープ力)の発生タイミングがばらついたとしても常にブレーキ力の解除タイミングを同一に維持でき、駆動力の発生とブレーキ力減少開始のタイミングの再現性を高く維持できるようになる。
【0141】
また、ブレーキ力Btを、エンジン始動開始当初における不安定な状態が経過するまでは保持しているので、車両が前後に揺れることを大幅に抑制することができ、車両の飛び出し感の抑制・車両の後退も防止できる。
【0142】
なお、後退防止を主眼とする場合は、エンジン回転速度NEが最大回転速度NEmaxに達した時点、またはそのすぐ直後ではなく、これから若干のタイマ経過後としてもよい。
【0143】
エンジン回転速度NEが最大回転速度NEmaxに到達したと判定された後は、時刻t16からブレーキ力Btを減少させるが、ここでは、ブレーキ力Btの保持の度合いを検出し、エンジンが始動した以降に、該ブレーキ力Btの保持の度合いに応じて該ブレーキ力Btの減少させる勾配を決定する。
【0144】
一般に、ブレーキ油圧を保持した際に、保持したブレーキ油圧値は、ほとんどの場合において値が異なる。又、エンジン自動停止時にブレーキペダルを踏む操作を行ったり、また、保持している経過時間等によっても、ブレーキ油圧は異なってくる。
【0145】
そこで、本実施形態では図10、11に示すような制御を行う。
【0146】
まず、図10から説明する。
【0147】
図10は、エンジン始動時のエンジン回転速度NEと、保持したブレーキ油圧が高い場合(太線)と、低い場合(細線)の2通りを示している。また、ブレーキ油圧が低い場合はさらに2通り(実線、破線)の減圧方法を示している。
【0148】
ブレーキ油圧が高いときには、時刻t16から減圧勾配αで時刻t17までの時間T20の期間減圧している。また、ブレーキ油圧が低いときには、実線で示してある方は、ブレーキ油圧が高いときと同じ時刻t16から減圧勾配βで時刻t17までの時間T20の期間で減圧し、破線で示してある方は、ブレーキ油圧が高いときと同じ減圧勾配αで減圧し、時刻t18から時刻t17までの時間T21の期間で実行している(減圧終了が同じ時期となるように制御)。
【0149】
ブレーキ油圧を減圧する時間を一定にした場合には、常に一定の減圧時間、減圧の開始タイミングを実現できる。又、減圧の勾配を(保持したブレーキ油圧が異なる場合に)同じにすることにより、減圧の終了を常に一定にし、安定した発進性能を確保することができる。
【0150】
なお、ブレーキ力Btを減少させる際に、第1の実施形態で記したように、ブレーキ力Btを駆動力と反比例の関係で減少させるようにしたり、マップに基づいて実行するようにするのは当然有効である。ただ、この第2実施形態では(駆動力の回復に合わせて)開始タイミングを決定して減少させているため、開始直後の段差を生じさせないという意味では、そこから一定の割合で減少させる方が好ましい。
【0151】
なお、開始タイミングを駆動力の回復に合わせてブレーキ力減少の開始タイミングが決定された後の処理としては、、エンジン停止中にブレーキ力Btを所定の値Bt1に保持すると共に、当該開始タイミングの決定後、該所定の値Bt1に保持したブレーキ力Btを一定の勾配で減少させるという方法も考えられる。
【0152】
その具体例を図11に示す。
【0153】
図11は、図10と同様に、エンジン始動時の図9におけるエンジン回転速度NEとブレーキ油圧Btを示している。
【0154】
前述したように、ブレーキ圧を保持する際には、ブレーキ油圧Btは異なる(例えば、破線A,破線B、実線C)。
【0155】
このとき、保持した油圧が低い場合も高い場合も関係なく、ブレーキ油圧をある所定の油圧値Bt1まで、加圧している。
【0156】
そして、前述したブレーキ力減少の開始タイミングt16からブレーキ力Btを該所定のブレーキ油圧Bt1から一定の勾配γにて減圧を行う。
【0157】
このようにすることで、たとえブレーキを保持したときの度合いが異なっていたとしても、所定(一定圧)の値Bt1にし、その値Bt1から同一勾配γでブレーキ力Btを解除するので、安定し、且つ、スムーズな発進ができるようになる。
【0158】
ところで、以上に説明した第1、第2実施形態は、エンジンの始動が正常に行われる判断されたときのみ実行するようにする。
【0159】
「エンジンの始動が正常に行われる判断されたとき」とは、具体的に、エンジン回転速度NEがほぼ確実に始動すると判断できる所定の回転速度NEn1に到達したときである。
【0160】
つまり、エンジン回転速度NEが所定のエンジン回転速度NEn1に到達しなかった場合には、エンジンの再始動処理が失敗に終わり、その結果駆動力の回復もないと判断する。
【0161】
そして、そのような場合はそのまま駆動力の回復に失敗したと判定してブレーキ力Btを確保した状態を維持するようにする。
【0162】
このようにすることで、エンジンの始動が万一、失敗に終わったような場合にでも、ブレーキ力が解除されることがなくなり、エンジンが正常に始動するまでは確実に車両を停止させておくことができる。
【0163】
なお、この所定のエンジン回転速度NEn1は、当然ながらエンジン回転速度NEが最大回転速度NEmaxに到達するかなり前となる。
【0164】
なお、制御は、前述したリニア弁228により行うようにする。
【0165】
【発明の効果】
本発明によれば、自動停止したエンジンが再始動する際に、車両のブレーキ力を該車両の駆動力の回復状態(すなわち変化)に合わせて減少させることにより、駆動力の回復とブレーキ作動の解除のタイミングを適正化することができ、車両飛び出し感の抑制、車両後退の防止をした上で良好な発進性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるクリープ力、ブレーキ力、リニアバルブ等の制御を時間軸に沿って表したタイムチャート
【図2】(A)従来におけるブレーキ力、クリープ力の制御を時間軸に沿って表したタイムチャート(B)本発明の実施形態におけるブレーキ力、クリープ力の制御を時間軸に沿って表したタイムチャート
【図3】図1におけるIII部の拡大図
【図4】本実施形態に係るブレーキ力の減圧方法の一例を表したグラフ
【図5】上記同様に、本実施形態に係るブレーキ力の減圧方法の一例を表したグラフ
【図6】本発明が適用された車両のエンジン駆動装置のシステム構成図
【図7】急速増圧制御を行うための油圧制御装置の要部を示す油圧回路図
【図8】ブレーキの構成を表したスケルトン図
【図9】本発明の第2の実施形態におけるクリープ力、ブレーキ力、リニアバルブ等の制御を時間軸に沿って表したタイムチャート
【図10】本発明の第2の実施形態におけるブレーキ油圧の減少方法を表したタイムチャート
【図11】本発明の第2の実施形態におけるブレーキ油圧の制御を表したタイムチャート
【図12】従来の技術における時間軸に沿って車速、エンジン回転速度、ブレーキペダルのオン・オフ信号、車両の前後の揺れを表したタイムチャート
【符号の説明】
1…エンジン
2…自動変速機
3…モータジェネレータ
4…インバータ
5…バッテリ
19…オイルポンプ
40…エコランスイッチ
80…エンジンECU
82…ブレーキECU
200…ブレーキペダル
208…マスタシリンダ
228…リニア弁
Bt…ブレーキ力
Kt…クリープ力
R…減速機構
NE…エンジン回転速度

Claims (4)

  1. 所定の停止条件が成立したときにエンジンを自動停止すると共に、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止したエンジンを再始動する車両のエンジン再始動時の制御装置において、
    前記エンジンの自動停止中に車両のブレーキ力を保持する手段と、
    エンジン再始動の際に、エンジン回転速度がアイドル回転速度に落ち着く前に一時的に前記アイドル回転速度より高い最大回転速度に至ったことを判定する手段とを備え、
    前記自動停止したエンジンが再始動する際に、エンジン回転速度がアイドル回転速度に落ち着く前に一時的に前記アイドル回転速度より高い最大回転速度に至ったと判定された時点もしくはその時点以降でかつ該時点を基準に所定時間が経過した時点から前記車両のブレーキ力を減少させる
    ことを特徴とする車両のエンジン再始動時の制御装置。
  2. 前記ブレーキ力の保持の度合いを検出する手段を更に備え、該ブレーキ力の保持の度合いに応じて該ブレーキ力の減少勾配を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジン再始動時の制御装置。
  3. さらに、エンジン停止中に前記ブレーキ力を予め定めた値まで変化させて保持すると共に、前記車両の駆動力の回復に伴ってブレーキ力を減少させる場合にはブレーキ力を一定の勾配で減少させることを特徴とする請求項1に記載の車両のエンジン再始動時の制御装置。
  4. さらに前記エンジンが確実に始動可能と判断できる所定のエンジン回転速度を設定すると共に、エンジン回転速度が該所定のエンジン回転速度に到達したか否かを検出する手段を備え、
    エンジン回転速度が該所定のエンジン回転速度に到達したときにのみ、前記ブレーキ力を減少させる制御を実行する
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両のエンジン再始動時の制御装置。
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