JP3713990B2 - パワートレーンの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両のエンジンの状態を、所定の条件に基づいて、自動的に運転状態と停止状態とで相互に切り換えるパワートレーンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンが搭載された車両においては、エンジンの内部で燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、この熱エネルギを機械エネルギ(動力)に変換して車両を走行させている。一方、近年においては、燃料の節約と、エミッションの低減と、騒音の低減とを目的として、エンジンを自動停止させるとともに、エンジンを停止状態から自動的に再始動させることの可能な制御装置が提案されている。
【0003】
このような制御装置の一例が、特開平9−79062号公報に記載されている。この公報に記載された制御装置は、エンジンと、エンジンを始動させるスターターモータと、エンジンの出力側に配置された自動変速機と、自動変速機のシフトポジションを切り換えるシフトレバーとを備えている。そして、エンジンの自動始動条件が成立している間にエンジン回転数が所定回転数に達したとき、シフトレバーが走行ポジションに設定されていれば自動停止条件の判定をおこない、シフトレバーが非走行ポジションにある場合は、車速が走行状態を示すまで自動始動状態を保持し、該走行状態を示したときに自動停止条件の判定をおこなうことが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された制御装置においては、シフトレバー信号がエンジン自動停止・始動コントローラに入力されるとともに、シフトレバーが非走行ポジション(ニュートラルポジション)に位置していることを基準として、エンジンの自動停止・復帰制御がおこなわれている。したがって、エンジンの自動停止状態において、シフトポジションセンサなどのフェールなどにより、シフトポジションを正確に判断することが不可能な場合は、復帰条件が成立したとしても、エンジンを運転状態に復帰させることができず、車両が走行不能になる可能性があった。
【0005】
この発明は上記事情を背景としてなされたものであり、エンジンが自動復帰不可能になる事態を可及的に抑制することの可能なのパワートレーンの制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、エンジンの出力側に変速機が配置されているとともに、停止条件が成立した場合に前記エンジンを自動的に停止させる停止制御と、この停止制御中に復帰条件が成立した場合に前記エンジンを運転状態に復帰させる復帰制御とをおこなうことの可能なパワートレーンの制御装置において、前記変速機により所定のシフトポジションが選択され、かつ、前記停止条件が成立した場合に前記停止制御をおこなうとともに、前記復帰条件が成立した場合は、前記変速機により選択されているシフトポジションに関係なく前記復帰制御をおこなうエンジン制御手段と、前記変速機の変速比を制御する摩擦係合装置とを備え、前記エンジンの復帰制御と、その復帰制御の際におこなわれる前記変速機の油圧制御との干渉を防止する手段を更に備えていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項1の発明によれば、変速機により選択されているシフトポジションに関わりなく復帰制御がおこなわれる。したがって、シフトポジションを正確に判断することが不可能な場合でも、復帰条件のみに基づいてエンジンが運転状態に復帰される。また、その復帰制御と油圧制御とが共におこなわれる場合、それらの制御の干渉が防止される。
【0008】
請求項2の発明は、エンジンの出力側に変速機が配置されているとともに、停止しているエンジンを運転状態に復帰させる復帰制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合に、前記変速機の摩擦係合装置に作用する油圧を制御する油圧制御とをおこなうことの可能なパワートレーンの制御装置において、前記復帰制御と前記油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、前記復帰制御と前記油圧制御との干渉を防止する制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、エンジンの復帰制御と、非走行ポジションから走行ポジションへの変更とが共におこなわれる状態には、エンジンの復帰制御および非走行ポジションから走行ポジションへの変更が並行して発生した状態と、エンジンの復帰制御および非走行ポジションから走行ポジションへの変更が並行して発生する可能性のある状態とが含まれる。
【0010】
請求項2の発明によれば、復帰制御と油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、復帰制御と油圧制御との干渉が防止される。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、前記制御手段は、前記復帰制御と前記油圧制御とのいずれか一方の制御を中止もしくは禁止する手段を含むことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項2の作用に加えて、復帰制御と油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、復帰制御と油圧制御との干渉を防止するために、いずれか一方の制御が中止もしくは禁止される。
【0013】
請求項4の発明は、エンジンの出力側に変速機が配置されているとともに、停止しているエンジンを運転状態に復帰させる復帰制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合に、前記変速機の摩擦係合装置に作用する油圧を制御する油圧制御とをおこなうことの可能なパワートレーンの制御装置において、前記復帰制御の際におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、前記復帰制御の際におこなわれる油圧制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる油圧制御との干渉を防止する制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の発明によれば、復帰制御の際におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、復帰制御の際におこなわれる油圧制御と、変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる油圧制御との干渉が防止される。
また、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記制御手段は、前記復帰制御の際におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御とのいずれか一方の制御を中止もしくは禁止する手段を含むことを特徴とするものである。
請求項5の発明によれば、請求項4と同様の作用に加え、復帰制御の際におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、いずれか一方の油圧制御が中止もしくは禁止される。
そして、請求項6の発明は、請求項2ないし5のいずれかの発明において、前記変速機により所定のシフトポジションが選択され、かつ、前記停止条件が成立した場合に前記停止制御をおこなうとともに、前記復帰条件が成立した場合は、前記変速機により選択されているシフトポジションに関係なく前記復帰制御をおこなうエンジン制御手段を更に備えていることを特徴とするものである。
したがって請求項6の発明によれば、請求項2ないし5のいずれかの発明と同様の作用に加え、変速機で選択されているシフトポジションに関係なくエンジンの復帰制御が実行され、そのためシフトポジションを正確に判断することが不可能な場合でも、復帰条件のみに基づいてエンジンが運転状態に復帰される。
【0015】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図を参照してより具体的に説明する。図2は、この発明を適用した車両のシステム構成を示すブロック図である。車両の動力源であるエンジン1としては、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジン等の内燃機関が用いられる。この実施例のエンジン1は、燃料噴射装置および吸排気装置ならびに点火装置等を備えた公知の構造のものである。
【0016】
また、エンジン1の吸気管には電子スロットルバルブ2が設けられており、電子スロットルバルブ2の開度が電気的に制御されるように構成されている。エンジン1から出力されるトルクの一方の伝達経路には、トルクコンバータ3およびオイルポンプ4ならびに歯車変速機構5が配置されている。具体的には、エンジン1と歯車変速機構5との間にトルクコンバータ3が配置され、トルクコンバータ3と歯車変速機構5との間にオイルポンプ4が配置されている。さらに、エンジン1から出力されるトルクの他方の伝達経路には、駆動装置6を介してモータ・ジェネレータ7が配置されている。
【0017】
まず、一方のトルク伝達経路の構成について具体的に説明する。このトルクコンバータ3およびオイルポンプ4ならびに歯車変速機構5を内蔵したケーシング8の内部には、作動油としてのオートマチック・トランスミッション・フルード(以下、ATFまたはオイルと略記する)が封入されている。トルクコンバータ3は、ポンプインペラ9およびタービンランナ10ならびにステータ3Aを備えている。このステータ3Aは、ポンプインペラ9からタービンランナ10に伝達されるトルクを増幅するためのものである。そしてエンジン1の動力がポンプインペラ9に伝達され、ポンプインペラ9のトルクがATFによりタービンランナ10に伝達されるように構成されている。なお、トルクコンバータ3は、ポンプインペラ9とタービンランナ10とを機械的に接続するロックアップクラッチ3Bを備えている。
【0018】
さらに、エンジン1の動力はポンプインペラ9を介してオイルポンプ4に伝達され、オイルポンプ4により、油圧制御装置(後述する)の油路の元圧が生じる。また、歯車変速機構5は、入力軸11と、遊星歯車12と、前進クラッチC1および後進クラッチC2を含む各種の摩擦係合装置と、出力軸13とを備えている。そして、入力軸11がタービンランナ10に接続され、出力軸13が車輪14に接続されている。上記歯車変速機構5は、例えば前進5段、後進1段の変速段(つまり変速比)を設定することが可能に構成されている。また、油圧により動作するピストンにより、前進クラッチC1および後進クラッチC2が係合・解放が制御されるように構成されている。そして、前進段を設定する場合は前進クラッチC1が係合され、後進段を設定する場合は後進クラッチC2が係合される。
【0019】
また、この実施例では、シフトレバー15のマニュアル操作により、各種のシフトポジションを選択することが可能である。例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションの各ポジションを選択可能になっている。ここで、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジション、Rポジションが走行ポジションである。そして、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジションが選択された場合は、複数の変速段同士の間で変速可能である。これに対して、Lポジション、またはRポジションが選択された場合は、単一の変速段に固定される。なお、ケーシング8の内部にはロック機構13Aが設けられており、Pポジションが選択されていた場合は、ロック機構13Aにより出力軸13の回転が防止されるように構成されている。
【0020】
また、油圧制御装置16により、歯車変速機構5における変速段の設定または切り換え制御、ロックアップクラッチ3Bの係合・解放やスリップ制御、摩擦係合装置を動作させるピストンに油圧を供給する油圧回路のライン圧の制御、摩擦係合装置の係合圧の制御などがおこなわれる。この油圧制御装置16は電気的に制御されるもので、歯車変速機構5の変速を実行するための第1ないし第3のシフトソレノイドバルブS1 ,〜S3 と、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4 とを備えている。
【0021】
さらに、油圧制御装置16は、油圧回路のライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLTと、歯車変速機構5の変速過渡時におけるアキュムレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLNと、ロックアップクラッチ3Bや所定の摩擦係合装置の係合圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUとを備えている。
【0022】
図3は、前進クラッチC1に対応する油圧回路の一部を示す模式図である。オイルポンプ4に接続された油路には、プライマリレギュレータバルブ17が設けられている。このプライマリレギュレータバルブ17は、オイルポンプ4により発生した元圧をライン圧PLに調圧するためのものである。このプライマリレギュレータバルブ17は、リニアソレノイドバルブSLTによって制御されている。そして、プライマリレギュレータバルブ17により調圧されたライン圧PLが、マニュアルバルブ18の入力ポートに導かれている。マニュアルバルブ18は、シフトレバー15と機械的に接続されている。そして、シフトレバー15により前進ポジション、例えばDポジションあるいは、2ポジションが選択されたときに、マニュアルバルブ18の入力ポートと出力ポートとが連通し、ライン圧PLが前進クラッチC1に供給される。
【0023】
また、マニュアルバルブ18と前進クラッチC1との間の油路75には、大オリフィス19および切換弁20が直列に配置されている。切換弁20の開閉はソレノイド21により制御される。この切換弁20は、大オリフィス19を介して供給されるライン圧PLを、前進クラッチC1に対して選択的に供給もしくは遮断するためのものである。なお、ソレノイド21は電子制御装置47により制御されている。
【0024】
さらに、切換弁20をバイパスし、かつ、その一端が前進クラッチC1と切換弁20との間に接続され、他端が大オリフィス19と切換弁20との間に接続された油路76が設けられている。この油路76には、チェックボール22と小オリフィス23とが相互に並列に配置されている。小オリフィス23の流通面積は、大オリフィス19の流通面積よりも狭く設定されている。そして、切換弁20が閉じられた場合は、大オリフィス19を通過したオイルが、さらに小オリフィス23を経由して前進クラッチC1に到達する。なお、チェックボール22は、前記前進クラッチC1の係合時に、油路76を介して前進クラッチC1に供給する油量を減少させる機能を有する。また、チェックボール22は、前進クラッチC1の解放時に、オイルの流通面積を拡大して前進クラッチC1に供給されていた油オイルを円滑に排出する機能を備えている。
【0025】
一方、切換弁20と前進クラッチC1との間の油路75には、オリフィス24を介してアキュムレータ25が配置されている。このアキュムレータ25は、ピストン26およびスプリング27を備えている。このアキュムレータ25およびオリフィス24は、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられて前進クラッチC1を係合する場合に、この前進クラッチC1に供給する油圧を、所定時間の間、スプリング27およびアキュムレータ背圧によって決定される所定の油圧特性(具体的には、緩慢に増大する特性)に維持するためのものである。
【0026】
したがって、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられて前進クラッチC1を係合する時のショックを軽減することができる。なお、前記後進クラッチC2に対応する油圧回路も、図3の油圧回路と同様に構成することができる。
【0027】
図4は、エンジン1の他方のトルク伝達経路の構成を示す説明図である。駆動装置6は減速装置28を備えており、この減速装置28がエンジン1およびモータ・ジェネレータ7に接続されている。モータ・ジェネレータ7は、例えば交流同期型のものが適用される。モータ・ジェネレータ7は、永久磁石(図示せず)を有する回転子(図示せず)と、コイル(図示せず)が巻き付けられた固定子(図示せず)とを備えている。そして、コイルの3相巻き線に3相交流電流を流すと回転磁界が発生し、この回転磁界を回転子の回転位置および回転速度に合わせて制御することにより、トルクが発生する。モータ・ジェネレータ7により発生するトルクは電流の大きさにほぼ比例し、モータ・ジェネレータ7の回転数は交流電流の周波数により制御される。
【0028】
減速装置28は、同心状に配置されたリングギヤ29およびサンギヤ30と、このリングギヤ29およびサンギヤ30に噛み合わされた複数のピニオンギヤ31とを備えている。この複数のピニオンギヤ31はキャリヤ32により保持されており、キャリヤ32には回転軸33が連結されている。また、エンジン1のクランクシャフト34と同心状に回転軸35が設けられており、回転軸35とクランクシャフト34とを接続・遮断するクラッチ36が設けられている。そして、回転軸35と回転軸33との間で相互にトルクを伝達するチェーン37が設けられている。なお、回転軸33には、チェーン38を介してエアコンプレッサなどの補機39が接続されている。
【0029】
また、モータ・ジェネレータ7は出力軸40を備えており、出力軸40に前記サンギヤ30が取り付けられている。また、駆動装置6のハウジング41には、リングギヤ29の回転を止めるブレーキ42が設けられている。さらに、出力軸40の周囲には一方向クラッチ43が配置されており、一方向クラッチ43の内輪が出力軸40に連結され、一方向クラッチ43の外輪がリングギヤ29に連結されている。上記構成の減速装置28により、エンジン1とモータ・ジェネレータ7との間のトルク伝達、または減速がおこなわれる。そして、一方向クラッチ43は、エンジン1から出力されたトルクがモータ・ジェネレータ7に伝達される場合に係合する構成になっている。
【0030】
上記モータ・ジェネレータ7は、エンジン1を始動させるスタータとしての機能と、エンジン1の動力により発電する発電機(オルタネータ)としての機能と、エンジン1の停止時に補機39を駆動する機能とを兼備している。
【0031】
そして、モータ・ジェネレータ7をスタータとして機能させる場合は、クラッチ36およびブレーキ42が係合され、一方向クラッチ43が解放される。また、モータ・ジェネレータ7をオルタネータとして機能させる場合は、クラッチ36および一方向クラッチ43が係合され、ブレーキ42が解放される。さらに、モータ・ジェネレータ7により補機39を駆動させる場合は、ブレーキ42が係合され、クラッチ36および一方向クラッチ43が解放される。
【0032】
また、モータ・ジェネレータ7にはインバータ44を介してバッテリ45が接続され、モータ・ジェネレータ7およびインバータ44ならびにバッテリ45には、コントローラ46が接続されている。前記インバータ44は、バッテリ45の直流電流を3相交流電流に変換してモータ・ジェネレータ7に供給する一方、モータ・ジェネレータ7で発電された3相交流電流を直流電流に変換してバッテリ45に供給する3相ブリッジ回路(図示せず)を備えている。この3相ブリッジ回路は、例えば6個のパワートランジスタ(図示せず)を電気的に接続して構成され、これらのパワートランジスタのオン・オフを切り換えることにより、モータ・ジェネレータ7とバッテリ45との間の電流の向きを切り換える。このようにして、3相交流電流と直流電流との相互の変換と、モータ・ジェネレータ7に印可される3相交流電流の周波数の調整と、モータ・ジェネレータ7に印可される3相交流電流の大きさの調整と、回生制動トルクの大きさの調整とがおこなわれる。
【0033】
そして、モータ・ジェネレータ7を電動機として機能させる場合は、バッテリ45からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ・ジェネレータ7に供給する。また、モータ・ジェネレータ7を発電機として機能させる場合は、回転子の回転により発生した誘導電圧をインバータ44により直流電圧に変換してバッテリ45に充電する。したがって、モータ・ジェネレータ7から出力される動力を、エンジン1または補機39に伝達することが可能である。さらに、エンジン1の動力により、モータ・ジェネレータ7を電動機として機能させることが可能である。
【0034】
前記コントローラ46は、バッテリ45からモータ・ジェネレータ7に供給される電流値、またはモータ・ジェネレータ7により発電される電流値を検出または制御する機能を備えている。また、コントローラ46は、モータ・ジェネレータ7の回転数を制御する機能と、バッテリ45の充電状態(SOC:state of charge)を検出および制御する機能とを備えている。
【0035】
図5は、この発明が適用された車両の制御回路を示すブロック図である。電子制御装置(ECU)47は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM、ROM)ならびに入力・出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0036】
この電子制御装置47には、エンジン回転数センサ48の信号、エンジン水温センサ49の信号、イグニッションキー(図示せず)の操作状態を検出するイグニッションスイッチ50の信号、コントローラ46の信号、エアコンスイッチ51の信号、入力軸11の回転数を検出する入力軸回転数センサ52の信号、出力軸13の回転数を検出する出力軸回転数センサ(車速センサ)53の信号、ATFの温度を検出する油温センサ54の信号、シフトレバー15の操作位置を検出するシフトポジションセンサ55の信号などが入力されている。
【0037】
また電子制御装置47には、運転者の停車意図を検出するパーキングブレーキスイッチ56の信号、運転者の減速意図または制動意図を検出するフットブレーキスイッチ57の信号、排気管(図示せず)の途中に設けられた触媒温度センサ58の信号、アクセルペダル59の踏み込み量を示すアクセル開度センサ60の信号、エンジン1の電子スロットルバルブ2の開度を検出するスロットル開度センサ61の信号などが入力されている。
【0038】
さらに電子制御装置47には、モータ・ジェネレータ7の回転数および回転角度を検出するレゾルバ62の信号、運転席のシートベルトが装着されたか否かを検出するシートベルトスイッチ63の信号、運転席のドアの開閉状態を検出するドアスイッチ64の信号、フューエルリッドの開閉状態を検出するフューエルリッドセンサー64Aの信号、フードの開閉状態を検出するフードセンサー64Bの信号などが入力されている。
【0039】
この電子制御装置47からは、エンジン1の点火装置65を制御する信号、エンジン1の燃料噴射装置66を制御する信号、コントローラ46を制御する信号、駆動装置6のクラッチ36およびブレーキ42を制御する信号、油圧制御装置16を制御する信号、エンジン1の自動停止・自動復帰状態をランプまたはブザーなどにより出力するインジケータ67への制御信号、電子スロットルバルブ2の開度を制御するアクチュエータ68の制御信号などが出力されている。
【0040】
また、この実施形態の車両は、図2に示すように、アンチロックブレーキシステム(以下、ABSと略記する)69を備えている。このABS69は、車両の制動時に各車輪のホイールシリンダに作用する制動油圧を制御し、適度のコーナリングフォースを確保して操舵性を確保するとともに、制動停止距離が最短になるように、摩擦係数の最も大きい値が得られるスリップ率が得られるように制御するための機構である。
【0041】
このABS69は、各車輪14の回転速度を検出する回転速度センサ70と、マスタシリンダ71とホイールシリンダ72との間の配管途中に配置され、かつ、各ホイールシリンダ72へのブレーキ油圧を制御するABSアクチュエータ73と、車輪速度センサ70からの信号によって車体速度を推測するとともに、各車輪14の回転状況を監視し、路面の状況に応じた最適の制動力が得られるようにブレーキ油圧の増減指令を、ABSアクチュエータ73に対して出力する電子制御装置74とを備えている。そして、電子制御装置74と電子制御装置47とが相互にデータ通信可能に接続されている。
【0042】
上記車両の制御内容を簡単に説明する。イグニッションキーの操作によりイグニッションスイッチ50がスタート位置に切り換えられると、モータ・ジェネレータ7のトルクが駆動装置6を介してエンジン1に伝達され、エンジン1が始動される。なお、イグニッションキーに対する操作力が解除されると、イグニッションスイッチ50は自動的にオン位置に復帰する。車両の走行中は、電子制御装置47に記憶されている変速線図(変速マップ)に基づいて、歯車変速機構5および油圧制御装置16を有する自動変速機A1が制御され、自動変速機A1の変速比が制御される。また、電子制御装置47に記憶されているロックアップクラッチ制御マップに基づいて、ロックアップクラッチ3Bが制御される。
【0043】
一方、バッテリ45は、充電量が所定の範囲になるように制御されており、充電量が少なくなった場合は、エンジン出力を増大させ、その一部をモータ・ジェネレータ7に伝達して発電させ発生した電気エネルギをバッテリ45に充電する制御がおこなわれる。
【0044】
また、上記ハード構成を有する車両においては、所定の条件に基づいてエンジン1の自動停止・復帰制御がおこなわれる。まず、エンジン1の自動停止制御・復帰制御について説明する。この制御は、電子制御装置47に入力される各種の信号に基づいて、所定の停止条件が成立した場合は、エンジン1を運転状態から停止状態へ自動的に切り換える一方、所定の復帰条件が成立した場合は、エンジン1を自動停止状態から運転状態へ自動的に復帰させる制御である。この自動停止・復帰制御は、車速センサ53の信号、フットブレーキスイッチ57の信号、シフトポジションセンサ55の信号、アクセル開度センサ60の信号、バッテリ45の充電量SOCを示す信号などに基づいておこなわれる。
【0045】
この実施形態において、エンジン1の自動停止制御・復帰制御は、基本的にはシフトレバー15により、NポジションまたはPポジションあるいはDポジションが選択されている場合におこなうことが可能である。具体的には、エンジン1の自動停止・復帰制御を、シフトレバー15のシフトポジションに関わりなくおこなうことの可能な第1の制御態様と、エンジン1の自動停止制御を、NポジションまたはPポジションに限りおこなうことが可能である一方、エンジン1の自動復帰制御を、シフトポジションに関わりなくおこなうことの可能な第2の制御態様とを選択することが可能である。
【0046】
前記第1の制御態様および第2の制御態様において、エンジン1を自動停止させるための停止条件は、車速が零であり、かつ、フットブレーキスイッチ57がオンされ、かつ、アクセルペダル15がオフされ、かつ、バッテリ45の充電状態が所定値以上になった場合に成立する。また、エンジン1の自動停止状態において、上記各条件のうちの少なくとも一つが欠如した場合は、復帰条件が成立する。これらの自動停止条件および復帰条件は、電子制御装置47に記憶されている。
【0047】
ここで、第1の制御態様において、Dポジションが選択されている時に、エンジン1の自動停止制御をおこなう際のシステムの状態を、図6のタイムチャートを参照して説明する。自動停止判断が成立して時刻t2においてエンジンの停止指令が出力されると、若干の遅れをもって時刻t3からエンジン回転数NEが徐々に低下する特性を示す。一方、エンジン回転数NEの低下に並行してオイルポンプ4の回転数も低下し、時刻t3よりも遅れた時刻t4から前進クラッチC1に作用する油圧が急激に低下する特性を示す。
【0048】
ところで、時刻t2よりも早い時刻t1において、ABS69に対する制御信号が出力されている。具体的には、各ホイールシリンダ72に作用するブレーキ油圧の増大が開始され、時刻t4以降はブレーキ油圧が一定値に制御される。このような、ABS69における一連の制御が、いわゆるヒルホールド制御である。したがって、前記のように前進クラッチC1が解放されて車輪14にトルクが伝達されない状態になったとしても、ヒルホールド制御により、車輪14の回転が防止される。
【0049】
つぎに、第2の制御態様において、NポジションまたはPポジションが選択されているときに、エンジン1の自動停止制御をおこなう場合のシステムの状態について説明する。この場合は、マニュアルバルブ18の機能により、エンジン1の自動停止制御がおこなわれる前から、前進クラッチC1に対して油圧は作用しておらず、前進クラッチC1が開放されている。なお、ヒルホールド制御については、NポジションまたはPポジションでエンジン1の自動停止がおこなわれる場合も、Dポジションの場合と同様におこなわれる。
【0050】
これに対して、第1の制御態様または第2の制御態様において、Dポジションが選択された状態でエンジン1の自動復帰制御をおこなう場合を具体的に説明する。この実施形態においては、エンジン1を運転状態に復帰する場合は、前進クラッチC1に作用する油圧を急速増圧することにより、速やかに、かつ、小さな係合ショックで係合させるために、ファーストアプライ制御がおこなわれる。
【0051】
つまり、エンジン1の運転中にNポジションが選択されている場合は、マニュアルバルブ18の入力ポートにまでライン圧PLが作用しているのに対して、エンジン1の自動停止制御がおこなわれている場合は、オイルポンプ4が停止している。このため、エンジン1の自動復帰の際において、前進クラッチC1に油圧が到達するまでの時間は、マニュアルシフトの場合に比べて長時間を必要とする。そこで、前進クラッチC1に作用する油圧を早期に所定値まで高めるために、ファーストアプライ制御または昇圧制御の少なくとも一方がおこなわれる。
【0052】
ここでは、ファーストアプライ制御を中心として説明をおこない、昇圧制御については後述する。前述したように、エンジン1の自動復帰指令が出力されると、エンジン1が再始動され、かつ、オイルポンプ4の回転が開始される。そして、プライマリレギュレータバルブ17で調圧されたライン圧PLは、マニュアルバルブ18を介して前進クラッチC1に供給される。ここで、電子制御装置47からファーストアプライ制御の信号が出力されて、切換弁20が開放されている場合は、マニュアルバルブ18を通過したライン圧PLが、大オリフィス19を介してそのまま前進クラッチC1に供給される。
【0053】
そして、前進クラッチC1の係合が開始される直前で電子制御装置47の制御信号により切換弁20が閉じられると、大オリフィス19を通過したライン圧PLは、小オリフィス23を介して緩慢に前進クラッチC1に供給される。また、この段階で、前進クラッチC1に供給される油圧が高まり、前進クラッチC1に接続されている油路75の油圧により、ピストン26がスプリング27に抗して図3の上方に移動する。その結果、このピストン26が移動している間、前進クラッチC1に供給される油圧が緩慢に上昇する特性に制御されるため、前進クラッチC1は非常に円滑に係合を完了できる。
【0054】
図7は、エンジン1の復帰制御にともなうシステムの状態を示すタイムチャートである。前進クラッチC1の油圧を示す特性のうち、実線がファーストアプライ制御をおこなった場合を示し、破線がファーストアプライ制御をおこなわない場合を示している。ファーストアプライ制御をおこなわない場合とは、前進クラッチC1の係合油圧を、常時、小オリフィス23を経由して供給する場合を意味している。
【0055】
また、時間TFASTは、ファーストアプライ制御の実行時間を示している。この時間TFASTは、定性的には前進クラッチC1を作動させるピストン(図示せず)が、いわゆるクラッチパックを詰める時間に対応している。また、エンジン回転数NEが所定のアイドル回転数に至る若干前までの時間に対応している。なお、Tc、Tc′は前進クラッチC1のクラッチパックが詰められる時間、Tac、Tac′はアキュムレータ25が機能している時間に相当している。
【0056】
ここで、ファーストアプライ制御がおこなわれていない場合は、マニュアルバルブ18を経由した油圧が、小オリフィス23を通過して前進クラッチC1に供給される。このため、前進クラッチC1のピストンのクラッチパックが詰められるまでの間に長い時間Tc′が経過し、破線で示す特性を経て時刻t3頃に前進クラッチC1係合が完了する。これに対して、この実施形態においてはエンジン1の復帰指令が出力された後に、時間TFASTの間、ファーストアプライ制御がおこなわれるため、時間Tc′よりも短い時間Tcでクラッチパックを詰めることができる。このため、前進クラッチC1の係合を、時刻t3よりも早い時刻t2頃に完了させることができる。
【0057】
図8は、前進クラッチC1の油圧の制御モードをより詳細に説明するタイムチャートである。すなわち、復帰判断の成立後に時間TFASTの間は、ファーストアプライ制御がおこなわれ、前進クラッチC1用のピストン(図示せず)と、前進クラッチC1の摩擦材(図示せず)とが係合する直前の状態、つまり待機状態になる。そして、前進クラッチC1に作用する油圧を徐々に上昇する係合制御がおこなわれて前記ピストンと摩擦材とが係合を開始するとともに、前進クラッチC1の係合が完了した時点以降は、ほぼ一定の油圧に維持する終了制御がおこなわれる。
【0058】
ところで、ファーストアプライ制御の開始タイミングTsは、エンジン回転数(言い換えれば、オイルポンプ4の回転数)NEが所定値NE1より多くなった時点に設定されている。このように、ファーストアプライ制御をエンジンの再始動指令Tcomと同時に開始させないようにした理由は、エンジン1の回転速度が零の状態から若干立ち上がった状態になるまでの時間T1が、そのエンジン停止状態によりばらつく可能性があるためである。
【0059】
すなわち、ファーストアプライ制御を、エンジン1の再始動指令Tcomと同時に開始させた場合、前記時間T1のばらつきの影響を受けて、前進クラッチC1が、ときにファーストアプライ制御が実行されている間に係合を開始してしまい、ショックが発生する可能性がある。そこで、時間T1のばらつきが大きくなるエンジン1の再始動直後を避け、エンジン回転速度NEが若干上昇し始めた時点Tsを、ファーストアプライ制御の開始タイミングにすることにより、エンジン1の停止状態の変化に関わりなく、時間T1のばらつきが小さい状態で前進クラッチC1の係合油圧を供給することができる。
【0060】
また、このファーストアプライ制御の開始タイミングは、他の条件により設定することも可能である。すなわち、エンジン1の自動停止指令が出力された直後に、再びエンジン1の復帰指令が出力された場合は、前進クラッチC1に作用している油圧が充分にドレンされる前にファーストアプライ制御が開始されて急激に前進クラッチC1の油圧が増大して係合ショックが発生する可能性がある。
【0061】
そこで、図6に示すように、エンジン停止指令が出力された時点から、前進クラッチC1の油圧が零になる時点までの推定時間Toffをタイマーで設定しておき、この時間Toffが経過するまではファーストアプライ制御をおこなわないようにすることが可能である。なお、時間Toffの代わりに、エンジン回転数NEが所定値まで低下したことに基づいて前進クラッチC1の油圧低下を推定し、この推定結果に基づいてファーストアプライ制御を開始するタイミングを設定することも可能である。
【0062】
つぎに、ファーストアプライ制御の継続時間TFASTについて説明する。自動変速機A1の作動油であるATFは、その温度に依存して粘度が変化する特性を備えている。そして、低温時(例えば20℃以下)には、オイルの粘度が高いため、ファーストアプライ制御を同じ時間おこなったとしても、常温時(例えば20℃〜80℃)ほどには前進クラッチC1にオイルが供給されない。そこで、低温時にはファーストアプライ制御を常温時よりも長時間に亘っておこなう必要がある。
【0063】
一方、高温時(例えば100℃以上)の場合には常温時に比べてオイルの粘度が低下しすぎて、油圧制御装置16のバルブボディーの各シール部からの漏れ量が多くなり、やはり同じ時間だけファーストアプライ制御をおこなったとしても、前進クラッチC1に供給されるオイルの量が低下気味となる。そこで、図8に示すように、ATFの温度と時間TFASTとを対応させたマップを用意し、このマップを予め電子制御装置47に記憶しておき、このマップに基づいて時間TFASTを設定することが可能である。このようにして、時間TFASTを設定することにより、ATF油温の相違により粘度のばらつきが生じた場合においても、この粘度のばらつきがファーストアプライ制御に与える影響を抑制することができ、前進クラッチC1の係合ショックを回避することができる。
【0064】
なお、エンジン1の自動復帰制御にあたり、前進クラッチC1の係合を早期に達成させるための制御としては、ファーストアプライ制御の他に昇圧制御が例示される。この昇圧制御とは、リニアソレノイドバルブSLTの機能によりプライマリレギュレータバルブ17の調圧値を上昇させ、ライン圧PLを昇圧させるものである。この昇圧制御の開始タイミングおよび継続時間は、前記ファーストアプライ制御と同一でもよいし、異なっていてもよい。そして、エンジン1の自動復帰に際しては、前述したファーストアプライ制御または昇圧制御のうちの少なくとも一方を採用することが可能である。
【0065】
つぎに、エンジン1の復帰制御がおこなわれた場合における、ABS69の状態を説明する。まず、アクセルペダル59が踏み込まれずに復帰条件が成立した場合は、実線で示すようにヒルホールド制御が継続される。また、アクセルペダル59が踏み込まれて復帰条件が成立した場合は、破線で示すように、時間TFASTの終了時刻である時刻t1から、ホイールシリンダ72に供給するブレーキ油圧を低下させる制御がおこなわれ、時刻t2に到達する前にヒルホールド制御が解除される。つまり、トルクコンバータ3によるクリープ力の発生により、ABS69による制動力を解除している。
【0066】
また、上記ハード構成を有する車両においては、シフトレバー15によりDポジションが選択されている状態において、所定の条件が成立した場合に前進クラッチC1の油圧を制御する、いわゆるニュートラル制御をおこなうことが可能である。このニュートラル制御をおこなうためのニュートラル制御条件は、アクセルペダル59がオフされ、かつ、フットブレーキスイッチがオンされ、かつ、車速が零であることが判断された場合に成立する。なお、これらの事項の少なくとも一つが欠落した場合は、ニュートラル制御が解除される。
【0067】
上記ニュートラル制御条件が成立すると、前進クラッチC1の係合状態において、切換弁21の機能により前進クラッチC1に作用する油圧が低下され、図8に示す低圧待機制御の値に保持される。つまり、前進クラッチC1によりトルクが伝達されない状態になる。このように、前進クラッチC1に作用する油圧の一連の制御がニュートラル制御である。
【0068】
さらに、上記ハード構成を有する車両においては、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられる操作にともない、前進クラッチC1に作用する油圧を制御する、いわゆるN→Dシフト制御がおこなわれる。前述したように、Nポジションが選択されている場合は、マニュアルバルブ18の機能により、前進クラッチC1には油圧が作用しておらず、前進クラッチC1が開放されている。
【0069】
そして、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられることにより、前進クラッチC1に油圧が作用する。この場合、前進クラッチC1に作用する油圧の特性は、エンジン1の自動復帰時における油圧の特性とほぼ同様であり、N→Dシフト制御における時間TFASTの方が、エンジン1の自動復帰時における時間TFASTよりも短く設定される。その理由は前述したように、N→Dシフト制御においては、Nポジションが選択されている状態で、油圧がマニュアルバルブ18まで到達しているからである。
【0070】
ここで、上記実施形態の構成とこの発明の構成との対応関係を説明する。エンジン1ならびにトルクコンバータ3ならびに歯車変速機構5などにより、この発明のパワートレーンが構成されている。また、自動変速機A1が、この発明の変速機に相当し、前進クラッチC1が、この発明の摩擦係合装置に相当する。さらに、ファーストアプライ制御または昇圧制御が、この発明の第1の油圧制御に相当し、ニュートラル制御が、この発明の第2の油圧制御に相当する。
【0071】
つぎに、上記構成を有する車両において、前述した第2の制御態様に対応するエンジン1の自動停止・復帰制御の制御内容を、図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、各種のセンサやスイッチにより検出された信号が電子制御装置47に入力され、電子制御装置47によりこれらの入力信号が処理される(ステップ100)。
【0072】
そして、この制御例においては、NポジションまたはPポジションで停止条件が成立した場合に限り、エンジン1の自動停止制御がおこなわれる。例えば、車速が零であること、かつ、フットブレーキスイッチ57がオンであること、かつ、アクセルペダル15がオフであること、かつ、バッテリ45の充電状態が所定値以上であることが判断された場合は、停止条件が成立し、エンジン1の自動停止制御がおこなわれる。
【0073】
ついで、エンジン1の自動停止状態から運転状態に復帰させる復帰条件が成立しているか否かが判断される(ステップ101)。具体的には、車速が零であること、フットブレーキスイッチ57がオンされていること、アクセルペダル15がオフされていること、バッテリ45の充電状態が所定値以上であること、のうちの少なくとも一つが欠如した場合は、復帰条件が成立する。なお、この制御例においては、エンジン1の復帰制御は、シフトポジションに関わりなくおこなわれる。
【0074】
そして、ステップ101で否定判断された場合はリターンされ、ステップ101で肯定判断された場合は、エンジン1が運転状態に復帰され、かつ、図7,8に対応するファーストアプライ制御がおこなわれる(ステップ102)。ついで、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられたか否かが判断され(ステップ103)、ステップ103で否定判断された場合は、エンジン1の自動復帰制御およびファーストアプライ制御を継続し(ステップ104)、リターンされる。
【0075】
一方、前記ステップ103で肯定判断された場合は、ニュートラル制御条件が成立しているか否かが判断される(ステップ105)。たとえば、バッテリ45の充電量SOCが所定値未満であることのみを条件として、ステップ101で肯定判断され、その後、ステップ103を経由してステップ105に進んだ場合は、未だ、アクセルオフかつ、ブレーキオン、かつ車速が零の状態にあることが考えられる。この状態では、ステップ105で否定判断され、エンジン1は運転状態に維持されるものの、前述したファーストアプライ制御を中止する(ステップ106)。ついで、前述したN→Dシフト制御を実施して(ステップ107)、リターンされる。つまり、エンジン1の自動復帰にともなうファーストアプライ制御と、N→Dシフト制御との干渉が回避される。したがって、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられた場合に、前進クラッチC1の油圧制御に基づくショックを抑制することができる。
【0076】
また、ステップ105で肯定判断された場合は、エンジン1の自動復帰はおこなわれるものの、前述したファーストアプライ制御が中止され(ステップ108)、前述したニュートラル制御がおこなわれ(ステップ109)、リターンされる。ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、ステップ100ないしステップ104がこの発明のエンジン制御手段に相当する。また、ステップ101,102,103およびステップ106,108がこの発明の油圧制御手段に相当する。さらに、ステップS101,102,103およびステップS105,106,107がこの発明の制御手段に相当する。
【0077】
以上のように、図1の制御例によれば、エンジン1の自動停止制御は、NポジションまたはPポジションに限りおこない、復帰制御はシフトポジションに関わりなくおこなうことが可能な第2の制御態様が採用されている。このため、シフトポジションセンサ55がフェールした場合のように、現在のシフトポジションを正確に判断すること、もしくは判断自体が困難な場合であっても、復帰条件のみに基づいてエンジン1を自動復帰させる。したがって、上記のような条件下においても、車両が走行可能な状態になる。
【0078】
また、図1の制御例においては、エンジン1の自動復帰制御と、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられる操作とが並行して発生した場合は、先に判断されたエンジン1の自動復帰制御よりも、後で判断されたシフトポジションの切り換えに対応する油圧制御が優先され、ファーストアプライ制御と、ニュートラル制御との干渉が回避され、前進クラッチC1の油圧が実情に即した状態、つま、図8に示す低圧待機状態に維持される。したがって、前進クラッチC1の油圧制御に基づくショックを抑制することができる。
【0079】
図10は、この発明の他の制御例を示すフローチャートであり、前述した第2の制御態様に対応している。図10のステップ200の制御内容は、図1のステップ100の制御内容と同様である。また、図10のステップ201の制御内容は、図1のステップ103の制御内容と同様である。このステップ201で否定判断された場合はリターンされる。ステップ201で肯定判断された場合は、エンジン1の自動停止制御中であるか否かが判断される(ステップ202)。具体的には、車速が零であり、かつ、フットブレーキスイッチ57がオンされ、かつ、アクセルペダル15がオフされ、かつ、バッテリ45の充電状態が所定値以上になった場合に自動停止制御がおこなわれる。なお、エンジン1の自動停止制御は、NポジションまたはPポジションのみで実施される。
【0080】
ステップ202で肯定判断された場合は、ステップ203を経由してリターンされる。ステップ203の制御は、図1のステップ107の制御と同様である。一方、ステップステップ202で否定判断された場合は、N→Dシフト制御を禁止し(ステップ204)、リターンされる。
【0081】
ここで、図10のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。ステップ200,201,202がこの発明のエンジン制御手段に相当する。またステップ200,201,202,204がこの発明の油圧制御手段および制御手段に相当する。
【0082】
上記のように、エンジン1の自動停止中においては、N→Dシフト制御の信号が出力されたとしても、オイルポンプ4が停止しているため、前進クラッチC1に対して実質的に油圧が作用することはなく、問題はない。しかしながら、N→Dシフト制御中にエンジン1の復帰条件が成立すると、N→Dシフト制御と、エンジン1の自動復帰にともなうファーストアプライ制御とが干渉する可能性がある。そこで、図10の制御例においては、N→Dシフト制御を事前にキャンセルしておくことにより、その後にエンジン1の自動復帰制御がおこなわれた場合は、このエンジン1の自動復帰にともなうファーストアプライ制御に基づいて前進クラッチC1の油圧が制御される。したがって、ファーストアプライ制御とN→Dシフト制御とが、制御ソフト上で干渉することを防止でき、ショックを抑制することができる。
【0083】
さらに、図10の制御例においても、自動停止制御はNポジションまたはPポジションに限りおこない、復帰制御はシフトポジションに関わりなくおこなうことが可能な制御態様になっている。このため、図1の制御例と同様の作用効果を得られる。
【0084】
図11は、この発明のさらに他の制御例を示すフローチャートである。図11のステップ300の制御は、図1のステップ100の制御と同様である。また、図10のステップ301の制御は、図1のステップ103と同様である。このステップ301で否定判断された場合はリターンされる。ステップ301で肯定判断された場合は、ニュートラル制御条件が成立しているか否かが判断される(ステップ302)。ステップ302の制御内容は、図1のステップ105の制御内容と同様である。ステップ302で肯定判断された場合は、ニュートラル制御がおこなわれ(ステップ303)、リターンされる。ステップ303の制御内容は、図1のステップ109の制御内容と同様である。
【0085】
一方、ステップ302で否定判断された場合はN→Dシフト制御がおこなわれる(ステップ304)。ステップ304の制御内容は、図1のステップ107の制御内容と同様である。ついで、エンジン1の自動復帰条件が成立したか否かが判断される(ステップ305)。ステップ305の制御内容は、図1のステップ101の制御内容と同様である。ステップ305で否定判断された場合は、N→Dシフト制御を継続し(ステップ306)、リターンされる。前記ステップ305で肯定判断された場合はN→Dシフト制御を中止するとともに(ステップ307)、エンジン1の自動復帰制御をおこない(ステップ308)、リターンされる。
【0086】
ここで、図11のフローチャートに示す機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。ステップ300,301,305,308がこの発明のエンジン制御手段に相当する。また、ステップ300,301,304,305,307がこの発明の油圧制御手段に相当する。さらに、ステップS301,302,304,305,307,308がこの発明の制御手段に相当する。
【0087】
上記のように、N→Dシフト制御中にエンジン1の自動復帰条件が成立した場合は、N→Dシフト制御と、エンジン1の自動復帰にともなうファーストアプライ制御とが干渉して前進クラッチC1に作用する油圧のタイミングがずれてしまう可能性がある。そこで、図11の制御例においては、N→Dシフト制御をキャンセルし、ファーストアプライ制御のみをおこなっている。したがって、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられた場合に、前進クラッチC1の油圧制御に基づくショックを抑制することができる。
【0088】
さらに、図11の制御例においても、自動停止制御はNポジションまたはPポジションに限りおこない、復帰制御はシフトポジションに関わりなくおこなうことが可能な制御態様になっている。このため、図1の制御例と同様の作用効果を得られる。
【0089】
なお、上記各制御例においては、エンジン1の自動復帰制御に際してファーストアプライ制御をおこなう場合について説明しているが、エンジン1の復帰制御に際して昇圧制御をおこなう場合にも、各制御例と同様の作用効果を得られる。また、第1の制御態様が選択されている状態において、エンジン1の自動復帰制御と、NポジションからDポジションへの切り換えとが共におこなわれる状態になった場合も、N→Dシフト制御との制御ソフト上における干渉を防止するために、いずれか一方の制御を中止もしくは禁止する制御をおこなうことも可能である。また、各制御例で説明したファーストアプライ制御および昇圧制御が、この発明の復帰制御の際におこなわれる油圧制御に相当し、シフトレバー15がNポジションからDポジションに切り換えられる操作にともない、前進クラッチC 1 に作用する油圧を制御することが、この発明のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合に、変速機の摩擦係合装置の油圧を制御する油圧制御に相当する。
【0090】
上記の具体例に示されたこの発明の特徴的な構成を記載すればつぎの通りである。すなわち、エンジンの出力側に変速機が配置されているとともに、停止条件が成立した場合に前記エンジンを自動的に停止させる停止制御と、この停止制御中に復帰条件が成立した場合に前記エンジンを運転状態に復帰させる復帰制御とをおこなうことの可能なパワートレーンの制御装置において、前記変速機により非走行ポジションが選択され、かつ、前記停止条件が成立した場合に前記停止制御をおこなうとともに、前記復帰条件が成立した場合は、前記変速機により走行ポジションが選択されている場合に前記復帰制御をおこなうことの可能なエンジン制御手段を備えていることを特徴とするパワートレーンの制御装置。
【0091】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、変速機により選択されているシフトポジションに関わりなく復帰制御がおこなわれる。したがって、シフトポジションを正確に判断することが不可能な場合でも、復帰条件のみに基づいてエンジンが運転状態に復帰される。また、その復帰制御と油圧制御とが共におこなわれる場合、それらの制御の干渉が防止される。
【0092】
請求項2の発明によれば、復帰制御と油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、復帰制御と油圧制御との干渉が防止される。
【0093】
請求項3の発明によれば、請求項2と同様の効果に加えて、復帰制御と油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、復帰制御と油圧制御との干渉を防止するために、いずれか一方の制御が中止もしくは禁止される。
【0094】
請求項4の発明によれば、復帰制御の際におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、復帰制御の際におこなわれる油圧制御と、変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる油圧制御との干渉が防止される。
請求項5の発明によれば、請求項4と同様の効果に加え、復帰制御の際におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる変速機の摩擦係合装置の油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、いずれか一方の油圧制御が中止もしくは禁止される。
請求項6の発明によれば、請求項2ないし5のいずれかの発明と同様の作用に加え、変速機で選択されているシフトポジションに関係なくエンジンの復帰制御が実行され、そのためシフトポジションを正確に判断することが不可能な場合でも、復帰条件のみに基づいてエンジンが運転状態に復帰される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御例を示すフローチャートである。
【図2】 この発明が適用された車両のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】 図2に示された油圧制御装置の油圧回路の一部を示す模式図である。
【図4】 図2に示されたエンジンと、駆動装置と、モータ・ジェネレータとの配置関係を示すブロック図である。
【図5】 図2に示された車両の制御回路を示すブロック図である。
【図6】 この発明において、エンジンの自動停止制御に対応するシステムの状態を示すタイムチャートである。
【図7】 この発明において、エンジンの自動復帰制御に対応するシステムの状態を示すタイムチャートである。
【図8】 図7のタイムチャートの細部を示すタイムチャートである。
【図9】 この発明の実施形態において、ファーストアプライ制御の継続時間を設定するためのマップである。
【図10】 図1に示された車両の他の制御例を示すフローチャートである。
【図11】 図1に示された車両のさらに他の制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…エンジン、 5…歯車変速機構、 7…モータ・ジェネレータ、 47…電子制御装置、 A1…自動変速機、 C1…前進クラッチ。

Claims (6)

  1. エンジンの出力側に変速機が配置されているとともに、停止条件が成立した場合に前記エンジンを自動的に停止させる停止制御と、この停止制御中に復帰条件が成立した場合に前記エンジンを運転状態に復帰させる復帰制御とをおこなうことの可能なパワートレーンの制御装置において、
    前記変速機により所定のシフトポジションが選択され、かつ、前記停止条件が成立した場合に前記停止制御をおこなうとともに、前記復帰条件が成立した場合は、前記変速機により選択されているシフトポジションに関係なく前記復帰制御をおこなうエンジン制御手段と、
    前記変速機の変速比を制御する摩擦係合装置とを備え、
    前記エンジンの復帰制御と、その復帰制御の際におこなわれる前記変速機の油圧制御との干渉を防止する手段を更に備えていることを特徴とするパワートレーンの制御装置。
  2. エンジンの出力側に変速機が配置されているとともに、停止しているエンジンを運転状態に復帰させる復帰制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合に、前記変速機の摩擦係合装置に作用する油圧を制御する油圧制御とをおこなうことの可能なパワートレーンの制御装置において、
    前記復帰制御と前記油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、前記復帰制御と前記油圧制御との干渉を防止する制御手段を備えていることを特徴とするパワートレーンの制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記復帰制御と前記油圧制御とのいずれか一方の制御を中止もしくは禁止する手段を含むことを特徴とする請求項2に記載のパワートレーンの制御装置。
  4. エンジンの出力側に変速機が配置されているとともに、停止しているエンジンを運転状態に復帰させる復帰制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合に、前記変速機の摩擦係合装置に作用する油圧を制御する油圧制御とをおこなうことの可能なパワートレーンの制御装置において、
    前記復帰制御の際におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御とが共におこなわれる状態になった場合も、前記復帰制御の際におこなわれる油圧制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる油圧制御との干渉を防止する制御手段を備えていることを特徴とするパワートレーンの制御装置。
  5. 前記制御手段は、前記復帰制御の際におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御と、前記変速機のシフトポジションを非走行ポジションから走行ポジションに変更する場合におこなわれる前記変速機の摩擦係合装置の油圧制御とのいずれか一方の制御を中止もしくは禁止する手段を含むことを特徴とする請求項4に記載のパワートレーンの制御装置。
  6. 前記変速機により所定のシフトポジションが選択され、かつ、前記停止条件が成立した場合に前記停止制御をおこなうとともに、前記復帰条件が成立した場合は、前記変速機により選択されているシフトポジションに関係なく前記復帰制御をおこなうエンジン制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のパワートレーンの制御装置。
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