JP7137323B2 - 車両制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動的に車両を発進させる機能を有する車両を制御する車両制御装置に関し、特に発進時のブレーキからの異音発生を抑制したものに関する。
自動車等の車両の自動運転装置や運転支援装置において、エンジン等の走行用動力源と、ブレーキとを協調制御し、車両の発進を自動的に行うことを可能としたものが知られている。
例えば、自動運転機能を有する車両において、自動的に車両を停車させた後、所定の再発進条件を充足した場合に、ブレーキを解除するとともにエンジンの出力を向上させて車両を自動的に発進させる。
ブレーキの解除は、液圧式のサービスブレーキのホイルシリンダに供給されるブレーキフルード液圧を、ハイドロリックコントロールユニットに設けられた減圧弁を用いて減圧することによって行うことが可能である。
車両の停車時、再発進時における制御に関する従来技術として、例えば特許文献1には、登坂路での車両後退を防止するために、停車中であっても再発進に備えてモータの出力を継続させる電動車両において、登坂路の状況、先行車の有無や車間距離等に応じてトルク指令値を切り換えることが記載されている。
特許文献2には、先行車に対する車間距離を維持しつつ追従走行制御(アダプティブクルーズコントロール)を行う車間距離制御装置において、登坂路での停止保持制御中には、アダプティブクルーズコントロールの再セットによる発進時、路面勾配の推定結果に応じた時間変化率でブレーキ液圧を低下させると同時に、エンジンに制動力と対抗するように駆動トルクを出力させることが記載されている。
特開2015-143062号公報 特許第4813610号
例えば、発進デバイスとしてトルクコンバータを用いる車両の場合、停車中であっても駆動輪に微小な駆動力(クリープ力)が負荷されていることから、自動的に再発進を行う際に車両が急激に動き出すことを防止するためには、ブレーキフルード液圧を徐々に低下させて、ブレーキを穏やかに解除することが要求される。
しかし、例えば、冷間始動後のアイドルアップ時、低温時、多湿時のような所定の環境条件においては、ブレーキを徐々に解除した場合、ブレーキ摩擦材が発生する摩擦力と駆動力とのバランスにより、異音(ブレーキ鳴き)が発生する場合がある。
ドライバがブレーキペダル踏力によりブレーキの解除速度を調節可能な手動運転時においては、経験のあるドライバであれば踏力の調節によって異音を抑制することができるが、ブレーキの解除を自動的に行う場合には、車両側の制御により異音の発生を防止することが要望される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、発進時のブレーキからの異音発生を抑制した車両制御装置を提供することである。
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、車両の液圧式ブレーキのブレーキフルード液圧を制御するとともに所定の自動発進条件が充足した際に前記ブレーキフルード液圧を減圧して前記液圧式ブレーキを制動状態から解除状態に移行させるブレーキ制御部と、前記液圧式ブレーキから異音が発生しやすい条件を判別する異音発生条件判別部とを備え、前記ブレーキ制御部は、前記自動発進条件が充足しかつ前記異音発生条件判別部が異音が発生しやすい条件であると判別した場合に、異音が発生し難い条件であると判別した場合に対して、前記ブレーキフルード液圧を減圧させる速度を増加させる急速減圧制御を実行し、前記異音発生条件判別部は、前記車両のエンジンが暖機中である場合に異音が発生しやすい条件であると判別し、前記エンジンを制御するエンジン制御部を備え、前記エンジン制御部は、前記エンジンが暖機中である場合における前記急速減圧制御による前記ブレーキフルード液圧の減圧に先立ち前記エンジンの回転数を所定の暖機時アイドル回転数よりも低下させることで前記エンジンの出力を低下させることを特徴とする車両制御装置である。
請求項2に係る発明は、車両の液圧式ブレーキのブレーキフルード液圧を制御するとともに所定の自動発進条件が充足した際に前記ブレーキフルード液圧を減圧して前記液圧式ブレーキを制動状態から解除状態に移行させるブレーキ制御部と、前記液圧式ブレーキから異音が発生しやすい条件を判別する異音発生条件判別部とを備え、前記ブレーキ制御部は、前記自動発進条件が充足しかつ前記異音発生条件判別部が異音が発生しやすい条件であると判別した場合に、異音が発生し難い条件であると判別した場合に対して、前記ブレーキフルード液圧を減圧させる速度を増加させる急速減圧制御を実行し、前記異音発生条件判別部は、操舵装置の舵角が所定値以上である場合には、異音が発生しにくい条件であると判別することを特徴とする車両制御装置である。
これらの各発明によれば、異音が発生しやすい条件である場合に、ブレーキフルード液圧を急速に減圧させて急速にブレーキを解除することによって、ブレーキの摩擦状態を異音が発生しやすい状態から早期に抜け出させ、異音の発生を抑制することができる。
また、異音が発生するリスクを精度よく評価し、適切な車両制御を行うことができる。
さらに、請求項1に係る発明によれば、急速減圧制御の実行に先立ち、エンジンの出力トルクを低下させることによって、ブレーキフルード液圧を急速に減圧することによる車両の急激な発進(飛び出し)を防止し、乗員に不安感、不快感を与えることを防止するとともに、安全性を向上することができる。
以上説明したように、本発明によれば、発進時のブレーキからの異音発生を抑制した車両制御装置を提供することができる。
本発明を適用した車両制御装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。 第1実施形態の車両制御装置におけるハイドロリックコントロールユニットの構成を示す図である。 第1実施形態の車両制御装置における自動運転による発進時のブレーキ解除制御を示すフローチャートである。 第1実施形態の車両制御装置における発進時のエンジン回転数の推移とブレーキ解除タイミングとを模式的に示す図である。 本発明を適用した車両制御装置の第2実施形態における発進時のエンジン回転数の推移とブレーキ解除タイミングとを模式的に示す図である。
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した車両制御装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の車両制御装置は、例えば、自動運転モードと手動運転モードとを切り換え可能な乗用車等の自動車に設けられるものである。
図1は、第1実施形態の車両制御装置の構成を示すブロック図である。
車両制御装置1は、環境認識ユニット100、自動運転制御ユニット200、電動パワーステアリング(EPS)制御ユニット300、エンジン制御ユニット(ECU)400、トランスミッション制御ユニット(TCU)500、ブレーキ制御ユニット600等を有して構成されている。
上述した各ユニットは、直接、あるいは、例えばCAN通信システム等の車載LANを介して接続され、相互に通信を行なうことが可能となっている。
環境認識ユニット100は、自車両周辺の道路形状や、他車両、歩行者、建築物、地形等の各種物体を認識するものである。
環境認識ユニット100には、例えば、ステレオカメラ装置110、ミリ波レーダ装置120、レーザスキャナ装置130、高精度地図データベース140、測位装置150等が接続されている。
ステレオカメラ装置110は、撮像範囲を自車両前方に向けるとともに、車幅方向に所定の基線長だけ離間して配置された左右一対のカメラ、及び、ステレオ画像処理装置を有する。
ステレオ画像処理装置は、左右カメラの出力画像データを利用して公知のステレオ画像処理を行い、車線左右の白線形状や、画像内に含まれる各種物体(被写体)の種類、自車両に対する相対位置、相対速度等を判別する。
ミリ波レーダ装置120は、例えば24GHz帯や79GHz帯のミリ波レーダを用いて、自車両の周囲に存在する物体を検出し、検出された物体の自車両に帯する相対位置、相対速度を判別するものである。
レーザスキャナ装置130は、自車両周囲をレーザ光で照射し、レーザ光が物体に当たった際の散乱光を利用して、自車両の周囲に存在する物体の位置や形状を三次元的にスキャンする3D LiDARである。
レーザスキャナ装置130は、例えば、自車両の全方位(周囲360°)において物体の形状検出を行うことが可能となっている。
高精度地図データベース140は、自車両が走行する可能性がある範囲における立体的な道路形状や、制限速度、一方通行や右左折禁止等の各種規制に関する情報を、HD地図データとしてデータベース化したものである。
立体的な道路形状に関するデータは、路面の勾配(傾斜方向、斜度)に関するデータを含む。
道路形状に関するデータは、例えば、3D LiDARを搭載した測定用車両を、事前に走行させて得られたスキャンデータ等に基づいて生成される。
測位装置150は、例えばGPS等を用いて自車両の現在位置を検出するものである。
環境認識ユニット100は、測位装置150による測位結果に基づいて、高精度地図データベース140から、自車両周囲の道路形状等に関する地図データを読み出すことが可能となっている。
自動運転制御ユニット200は、環境認識ユニット100による環境認識結果に基づいて、自車両の目標走行軌跡や目標走行速度等からなる自動運転シナリオを生成するとともに、自車両が自動運転シナリオに従って走行するよう、自車両の操向(操舵)や駆動、制動を制御するものである。
自動運転制御ユニット200には、EPS制御ユニット300、エンジン制御ユニット400、トランスミッション制御ユニット500、ブレーキ制御ユニット600等が接続されている。
自動運転制御ユニット200は、これらの各ユニットに対して適宜指令を与えることにより、車両の操舵機能、加減速機能を統括的に制御して自動運転を行う。
自動運転制御ユニット200は、環境認識ユニット100が自車両前方の障害物を発見した場合や、赤信号、一時停止標識等を認識した場合には、自車両を自動的に停止させるとともに、障害物の退去や青信号への切り替わり等により、所定の再発進条件が充足した場合には、自車両を自動的に再発進させる機能を有する。
再発進時における車両制御装置1の動作については、後に詳しく説明する。
EPS制御ユニット300は、車両の前輪を操舵(転舵)する操舵装置に設けられ、手動運転時においてはドライバの操舵力、保舵力を軽減するパワーアシストや、環境認識ユニット100の認識結果に基づく操舵支援を行うため、操舵装置にアシストトルクを付与する電動パワーステアリング(EPS)装置を制御するものである。
EPS制御ユニット300は、自動運転時においては、自動運転制御ユニット200が生成した目標軌跡に沿って自車両が走行するよう、操舵装置を駆動して車両の操向制御を行う。
EPS制御ユニット300には、モータ310、トルクセンサ320、舵角センサ330等が接続されている。
モータ310は、操舵装置にトルクを付与して駆動し、転舵動作や保舵動作を行う電動アクチュエータである。
モータ310の出力は、ギヤ列等を有する減速装置を介して転舵装置のステアリングラックやステアリングシャフトに伝達される。
トルクセンサ320は、ドライバが操舵操作を入力するステアリングホイールに接続された回転軸であるステアリングシャフトの中間部に設けられ、ステアリングシャフトに作用しているトルクを検出するものである。
EPS制御ユニット300は、手動運転時においては、トルクセンサ320の出力に基づいてモータ310によるアシストトルクの発生方向及び大きさを決定する。
舵角センサ330は、ステアリングシャフトの回転角度位置を検出するエンコーダを備え、操舵装置における前輪の舵角を検出するものである。
エンジン制御ユニット400は、車両の走行用動力源であるエンジン及びその補機類を統括的に制御するものである。
例えば、エンジンが直噴ガソリンターボ過給エンジンである場合、エンジン制御ユニット400は、スロットル開度、過給圧、燃料噴射量、燃料噴射時期(複数回噴射の場合各回の噴射量及び噴射時期)、点火時期、吸排気バルブのバルブタイミング、EGR率などを制御する。
エンジン制御ユニット400は、車両の手動運転時においては、ドライバによるアクセル操作量(アクセルペダル踏込量)等に基づいて設定される要求トルクに、エンジンの実際の出力トルクが近づくようエンジンの出力調整を行う。
また、自動運転時においては、自動運転制御ユニット200が設定する要求トルクに、出力トルクが近づくようエンジンの出力調整を行う。
エンジンを運転した状態で車両が停車するアイドリング状態においては、エンジン制御ユニット400は、エンジン回転数(クランクシャフトの回転速度)が所定の目標アイドル回転数と実質的に一致するように、スロットルバルブ開度等を制御してエンジンの出力トルクを調節する。
また、エンジンの冷却水温が所定の低温状態であり、冷却水温や触媒温度の昇温を優先する暖機運転中においては、目標アイドル回転数は所定量だけ増加(アイドルアップ)される。
トランスミッション制御ユニット500は、エンジンの出力を変速して駆動輪に伝達する変速機及びその補機類を統括的に制御するものである。
変速機として、例えば、変速機構部(バリエータ)としてチェーン式の無段変速機(CVT)を有するものを用いることができる。
変速機は、変速機構部の入力軸回転速度とエンジンのクランクシャフトの回転速度との速度差を吸収し、車速ゼロからの発進を可能とする発進デバイスとして、例えば流体継手であるトルクコンバータを有する。
トルクコンバータには、車両の走行時に入力側のインペラと出力側のタービンとの相対回転を拘束するロックアップクラッチが設けられる。
トランスミッション制御ユニット500は、CVTの変速比や、エンジンの出力回転を逆転させて後退を可能とする前後進切替部の状態、ロックアップクラッチの締結、解除等を制御する。
また、車両がAWD車両であって、トランスミッションケース内にトランスファを有する場合には、トランスミッション制御ユニット500は、後輪側又は前輪側への伝達トルクを調節するトランスファクラッチの締結力制御等も行う。
ブレーキ制御ユニット600は、車両の各車輪にそれぞれ設けられた液圧式サービスブレーキ(以下単に「ブレーキ」と称する)にブレーキフルードを供給するブレーキ制御部である。
ブレーキは、ハブベアリングハウジングに取り付けられるキャリパ内部のホイルシリンダWCに供給されるブレーキフルードの液圧によって、摩擦材であるブレーキパッドを車輪とともに回転するロータに押圧し、制動力を発生させる。
ブレーキ制御ユニット600は、アンチロックブレーキ制御、車両挙動制御等を行う機能を有する。
アンチロックブレーキ制御は、制動時に車輪のロックが発生した場合に、当該車輪のホイルシリンダWCのブレーキフルード液圧を周期的に減圧して車輪の回転を回復させるものである。
車両挙動制御は、オーバーステア挙動、アンダーステア挙動の検出に応じて、左右のブレーキの制動力差を発生させ、これらの挙動を抑制する方向のヨーモーメントを発生させるものである。
また、ブレーキ制御ユニット600は、他のユニットや各種センサと協働して、ブレーキ解除時に異音が発生しやすい条件を判別する異音発生条件判別部としても機能する。
ブレーキ制御ユニット600には、ハイドロリックコントロールユニット610、車速センサ620、ヨーレートセンサ630、横Gセンサ640、前後Gセンサ650等が接続されている。
図2は、第1実施形態の車両制御装置におけるハイドロリックコントロールユニットの構成を示す図である。
ハイドロリックコントロールユニット610は、制御部611、ブレーキアクチュエータ612を有する。
制御部611は、ブレーキアクチュエータ612の各構成要素を制御して、前後左右の車輪にそれぞれ設けられたブレーキの制動力を個別に調節するものである。
ブレーキアクチュエータ612は、ブレーキフルードを加圧して液圧を昇圧し、各車輪のホイルシリンダWCに供給し、ブレーキを作動させるものである。
ブレーキアクチュエータ612は、液圧保持弁613、加圧制御弁614、モータ615、ポンプ616、液圧センサ617等を有する。
液圧保持弁613は、各車輪のホイルシリンダWC内のブレーキフルード液圧を保持する閉状態と、ホイルシリンダWCからブレーキフルードを排出してブレーキアクチュエータ612側に戻す開状態(減圧状態)とを切り換え可能な弁である。
加圧制御弁614は、ポンプ616によって加圧されたブレーキフルードを、各車輪のホイルシリンダWCに導入して制動力を発生させる弁である。
加圧制御弁614は、ホイルシリンダWCに供給されるブレーキフルード液圧を車輪毎に調節する機能を有し、これによって各車輪の制動力を個別に調節可能となっている。
モータ615は、ポンプ616を駆動する電動アクチュエータである。
モータ615のオンオフ、回転速度及び回転方向は、制御部611からの指令に応じて変更可能となっている。
ポンプ616は、モータ615により駆動され、ブレーキフルードを加圧して各車輪のホイルシリンダWCに供給されるブレーキフルード液圧を発生させるものである。
ポンプ616は、加圧時に対して逆転させることにより、ホイルシリンダWC側からブレーキアクチュエータ612側へブレーキフルードを吸引し、ホイルシリンダWC内のブレーキフルード液圧を急速に減圧することが可能となっている。
液圧センサ617は、ブレーキアクチュエータ612から各車輪のホイルシリンダWCに供給されているブレーキフルード液圧をそれぞれ検出する圧力センサである。
液圧センサ617の出力は、制御部611を介してブレーキ制御ユニット600に伝達される。
ブレーキアクチュエータ612には、マスタシリンダMC及びホイルシリンダWCがブレーキフルード配管(ブレーキライン)を介して接続されている。
マスタシリンダMCは、ドライバによるブレーキペダルの踏み込み操作に応じて、ブレーキフルード液圧を発生させるものである。
手動運転時には、ハイドロリックコントロールユニット610は、マスタシリンダ液圧に応じたブレーキフルード液圧を各車輪のホイルシリンダWCに供給するとともに、アンチロックブレーキ制御、車体挙動制御が必要な場合には、適宜各車輪のブレーキフルード液圧を加圧、減圧する。
自動運転時には、ハイドロリックコントロールユニット610は、マスタシリンダMCのブレーキフルード液圧に関わらず、自動運転制御ユニット200から伝達される制動要求に応じて、各車輪のホイルシリンダWCにブレーキフルード液圧を与える。
車速センサ620は、各車輪を回転可能に支持するハブ部に設けられ、車輪の回転速度を検出するものである。
車速センサ620は、車輪の回転速度に周波数が比例する車速パルス信号を出力する。
ヨーレートセンサ630は、車体に作用するヨー方向(鉛直軸回り回転)の回転速度を検出するものである。
横Gセンサ640は、車体に作用する車幅方向の加速度を検出するものである。
前後Gセンサ650は、車体に作用する前後方向の加速度を検出するものである。
前後Gセンサ650は、走行中のアンチロックブレーキ制御に利用されるほか、停車中においては路面の勾配の検出にも利用される。
これらの各センサの出力は、ブレーキ制御ユニット600に伝達される。
また、ブレーキ制御ユニット600は、外気温センサ710、雨滴センサ720の出力を取得可能となっている。
外気温センサ710は、自車両周囲の気温を検出する温度センサである。
雨滴センサ720は、フロントウインドウに雨滴が衝突する際の振動を検出することにより、降雨状態を検出するセンサである。
雨滴センサ720は、例えば、図示しないワイパ装置のオート動作制御に用いられるほか、後述するブレーキ解除時の制御にも利用される。
以下、第1実施形態の車両制御装置における自動発進時の動作について説明する。
図3は、第1実施形態の車両制御装置における自動運転による発進時のブレーキ解除制御を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
<ステップS01:自動運転車両停車判断>
自動運転制御ユニット200は、車両が自動運転状態でありかつ自動運転により(ドライバのブレーキ操作によらず)停車したか否かを判別する。
自動運転により停車した場合はステップS02に進み、その他の場合はステップS01を繰り返す。
<ステップS02:各種データ取得>
ブレーキ制御ユニット600は、再発進時におけるブレーキ制御の内容を決定するための判断材料として、各種センサの出力等のデータを取得する。
取得されるデータは、路面の勾配、外気温、操舵装置の舵角、推定ブレーキ温度、エンジン冷却水温、車外の湿度に関する情報等を含む。
を含む。
路面の勾配は、例えば、前後Gセンサ650の出力や、高精度地図データベース140の3D道路形状情報に基づいて推定することが可能である。
外気温、舵角は、それぞれ外気温センサ710、舵角センサ330によって検出される。
推定ブレーキ温度は、従前のブレーキ装置の制動力の発生履歴等に基づいて推定することができる。
例えば、制動回数の増加に応じて推定ブレーキ温度は向上し、制動力が大きい場合には、制動力が小さい場合に対して昇温が大きいものとしてブレーキ温度を推定することができる。
エンジン冷却水温は、図示しない水温センサの出力を、エンジン制御ユニット300を介して取得することができる。
湿度に関する情報は、例えば、雨滴センサ720が降雨状態を検出した場合には、高湿度状態であると判別することができる。
データの取得が完了した後、ステップS03に進む。
<ステップS03:発進判定>
自動運転制御ユニット200は、所定の自動発進条件が充足したか否かを判別する発進判定を行う。
例えば、先行車の停止に追従して停車した場合は先行車の発進に応じて、また、赤信号に応じて車両が停車した場合は青信号への切り替わりに応じて、発進判定が成立し得る。
例えば障害物の存在や車両の異常、各種の規制等などの自動発進を妨げる事情が特にない場合には、発進判定が成立したものとして、ステップS04に進む。
発進判定が不成立の場合には、ステップS03を繰り返す。
<ステップS04:登坂判定>
ブレーキ制御ユニット600は、前後Gセンサ650の出力に基づいて推定される道路の勾配が、所定以上の斜度を有する上り坂(登坂路)であるか否かを判別する。
所定以上の斜度を有する上り坂である場合には、登坂判定を成立させ、急速減圧制御による車両の飛び出し挙動を防止するためステップS13に進む。
一方、その他の場合には、登坂判定は非成立であり、ステップS05に進む。
<ステップS05:エンジントルクダウン>
エンジン制御ユニット400は、アイドリング状態にあるエンジンの出力トルクを、勾配によるずり下がりが発生せず、かつ、ブレーキ解除時にドライバが飛び出し感(ドライバが意図しない急加速感)を受けないことを考慮して設定される所定のトルクダウン量だけ低下させるトルクダウン制御を開始する。
エンジンのトルクダウンは、例えば、電動スロットルバルブの開度低下や、点火時期の遅延、一部気筒の燃焼休止などによって行われる。
その後、ステップS06に進む。
<ステップS06:ブレーキ消費液量推定>
ブレーキ制御ユニット600は、液圧センサ617が検出するブレーキフルード液圧に基づいて、各車輪のホイルシリンダWCにおけるブレーキフルードの消費液量を推定する

本明細書において、ブレーキフルードの消費液量とは、非制動状態から現在の状態となるまでに、ハイドロリックコントロールユニット610からホイルシリンダWCに送出された液量を示すものとする。
消費液量が大きいほど、ブレーキパッドのロータへの押圧力及び制動力が強いものと推定される。
消費液量及びブレーキフルード液圧は、例えば、車両が高い減速度(急制動)で減速しつつ停車した場合や、勾配路での停車時に大きくなる。
その後、ステップS07に進む。
<ステップS07:消費液量判断>
ブレーキ制御ユニット600は、ステップS06において推定されたブレーキフルードの消費液量を、予め設定された閾値と比較する。
消費液量が閾値以下である場合は、異音が発生し難い条件であるとしてステップS13に進み、消費液量が閾値超である場合は、ブレーキパッドに作用する摩擦力が大きく異音が発生しやすい条件であるとしてステップS08に進む。
<ステップS08:外気温判断>
ブレーキ制御ユニット600は、外気温センサ710が検出した外気温を、予め設定した閾値と比較する。
外気温が閾値以下である低温状態である場合には、異音が発生しやすい条件であるとしてステップS09に進み、外気温が閾値超である非低温状態である場合には、異音が発生し難い条件であるとしてステップS13に進む。
<ステップS09:高湿度判定>
ブレーキ制御ユニット600は、自車両の周囲が所定の高湿度状態であるか否かを判別する。
一例として、ブレーキ制御ユニット600は、雨滴センサ720が降雨状態を検出した場合に、高湿度状態であると判定する。
高湿度状態であると判定された場合には、異音が発生しやすい条件であるとしてステップS10に進み、その他の場合には異音が発生し難い条件であるとしてステップS13に進む。
<ステップS10:ブレーキ温度判定>
ブレーキ制御ユニット600は、ステップS02において推定した推定ブレーキ温度を、予め設定された閾値と比較する。
推定ブレーキ温度が閾値以下である場合には、異音が発生しやすい条件であるとしてステップS11に進み、その他の場合には、異音が発生し難い条件であるとしてステップS13に進む。
<ステップS11:舵角判定>
ブレーキ制御ユニット600は、ステップS02においてEPS制御ユニット300から取得した操舵装置の舵角を、予め設定された閾値と比較する。
舵角が閾値以下である場合(小舵角時)は、発進時の走行抵抗が小さく異音が発生しやすい条件であるとしてステップS12に進み、その他の場合(大舵角時)には、発進時の走行抵抗が大きく異音が発生し難い条件であるとしてステップS13に進む。
<ステップS12:エンジン暖機判定>
ブレーキ制御ユニット600は、ステップS02においてエンジン制御ユニット400から取得したエンジンの冷却水温を、予め設定された閾値と比較する。
冷却水温が閾値以下である場合には、エンジン暖機が未了であり、アイドリング回転数を通常時よりも高くするアイドルアップ制御が介入している状態であり、異音が発生しやすい条件であるとしてステップS14に進み、その他の場合(暖機終了時)には、異音が発生し難い条件であるとしてステップS13に進む。
<ステップS13:液圧保持弁開放>
ブレーキ制御ユニット600は、液圧保持弁613を閉状態から開状態へ推移させ、各車輪のホイルシリンダWCのブレーキフルード液圧を減圧する。
これによってブレーキは制動状態から解除状態へ推移する。
ブレーキの解除後、エンジン制御ユニット400は、エンジンの出力トルク増加を開始し、車両は発進、加速する。
その後、一連の処理を終了する。
<ステップS14:液圧保持弁開放・モータ逆転>
ブレーキ制御ユニット600は、液圧保持弁613を閉状態から開状態へ推移させるとともに、モータ615をブレーキフルードの加圧時とは逆方向に回転させる急速減圧制御を実行する。
これにより、ポンプ616は、各車輪のホイルシリンダWCからブレーキフルードを吸引する状態となり、ホイルシリンダWCのブレーキフルード液圧は、ステップS13の場合に対して急速に減圧される。
これによってブレーキは、制動状態から解除状態へ急速に推移する。
ブレーキの解除後、エンジン制御ユニット400は、エンジンの出力トルク増加を開始し、車両は発進、加速する。
その後、一連の処理を終了する。
図4は、第1実施形態の車両制御装置における発進時のエンジン回転数の推移とブレーキ解除タイミングとを模式的に示す図である。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸はエンジン回転数(クランクシャフト回転速度)を示している。(後述する図5において同じ)
第1実施形態において急速減圧制御は、アイドルアップが行われている暖機未了(冷間)状態において行われる。
このため、当初のエンジン回転数は、通常時のアイドル回転数よりも高い暖機時アイドル回転数となっている。
この状態でブレーキを急速にリリースすると、車両の飛び出しが懸念されるため、第1実施形態においては、ブレーキの解除(ブレーキフルード減圧)に先立ち、トルクダウンを開始する。
トルクダウンの開始により、エンジン回転数は低下を開始し、オーバーシュートにより一時的に通常時アイドル回転数を下回った後、通常時アイドル回転数近傍で収束する。
エンジン回転数が通常時アイドル回転数近傍で安定した後、ブレーキ制御ユニット600は、急速減圧制御を開始し、ブレーキを解除(非制動状態に移行)する。
ブレーキが解除されると、車両はクリープ力によって動き出す。
エンジン制御ユニット400は、ブレーキの解除と実質的に同時にスロットルバルブの開度増加等によりエンジンのトルク増加を開始し、これによってエンジン回転数は向上して車両は加速する。
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)自動運転による発進時に、異音(ブレーキ鳴き)が発生しやすい条件である場合に、ブレーキフルード液圧を急速に減圧させて迅速にブレーキを解除する急速減圧制御を実行することによって、ブレーキの摩擦状態を異音が発生しやすい状態から早期に抜け出させ、異音の発生を抑制することができる。
(2)急速減圧制御の実行に先立ちエンジンのトルクダウンを行うことによって、ブレーキフルード液圧を急速に減圧することにより車両が急激に発進する飛び出しを防止し、乗員に不安感、不快感を与えることを防止するとともに安全性を向上することができる。
(3)エンジン回転数が通常時のアイドル回転数付近で安定した後に急速減圧制御を行うことによって、車両が発進する際の挙動が発進の都度ばらつくことを防止し、車両挙動を安定化させることができる。
(4)急速減圧制御の実行時に、ポンプ616を逆転してホイルシリンダWC内のブレーキフルードを吸引することによって、ホイルシリンダWC内のブレーキフルード液圧を迅速に減圧することができ、ブレーキの解除を迅速化して上述した効果をより向上することができる。
(5)登坂路においては急速減圧制御の実行を禁止することにより、早期にブレーキが解除されることに起因する車両の後退を防止することができる。
(6)異音が発生しやすい条件を、外気温、湿度、推定ブレーキ温度、舵角、エンジン冷却水温に基づいて判別することによって、異音が発生するリスクを精度よく評価し、適切な車両制御を行うことができる。
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した車両制御装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図5は、第2実施形態の車両制御装置における発進時のエンジン回転数の推移とブレーキ解除タイミングとを模式的に示す図である。
第2実施形態においては、エンジンのトルクダウンを開始してエンジン回転数が低下中にブレーキ制御ユニット600が急速減圧制御を開始することを特徴とする。
急速減圧制御によりブレーキが解除された直後に、エンジン制御ユニット400はエンジンのトルク増加を開始する。
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と実質的に同様の効果(第(3)項記載の効果を除く)に加えて、ブレーキが解除されるタイミングを早め、発進の決定から車両が実際に発進するまでの応答性を向上することができる。
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車両及び車両制御装置の構成は、上述した実施形態の構成に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、車両制御装置のハードウェア構成は一例であり、実施形態において複数のユニット等により実現されている機能を、単一の要素により実現してもよい。
逆に、実施形態において単一のユニット等により実現されている機能を、複数の要素により実現してもよい。
また、実施形態に設けられている一部のユニット、センサ類を省略したり、逆に他のユニット、センサ類を追加してもよい。
(2)環境認識に用いられるセンサ類の構成は一例であり、これらに追加して、あるいは、これらと置換して他種のセンサ等を用いてもよい。
例えば、ステレオカメラに代えて、単眼カメラを、ミリ波レーダ等の測距手段とともに用いることができる。
(3)実施形態において、車両のエンジンは、一例として、ガソリン直噴ターボ過給エンジンであったが、エンジンはこれに限らず、適宜変更することが可能である。
例えば、過給機の有無や燃料噴射方式は特に限定されず、また、ガソリン以外の燃料を用いる火花点火式エンジンや、ディーゼルエンジン、予混合圧縮着火(HCCI)を行うエンジンであってもよい。
(4)実施形態において、車両のトランスミッションは、例えば発進デバイスとしてトルクコンバータを有する無段変速機(CVT)であったが、これに限らず、複数のプラネタリギヤセットを用いた有段変速機(ステップAT)など他種の変速機であってもよい。
(5)実施形態においては、ブレーキ周囲の雰囲気の温度を判別するために外気温センサを用いているが、これに限らず、例えばエンジン吸気温などの他の温度センサの出力を用いても良い。
また、コールドソーク(冷間放置)後におけるエンジン冷却水温やトランスミッション油温等に基づいて、雰囲気温度を推定してもよい。さらに、ネットワーク経由等で取得される気象情報を利用してもよい。
(6)実施形態においては、雨滴センサが降雨状態を検出した場合に高湿度状態を判定しているが、これに限らず、例えば湿度センサを設けてその出力により高湿度状態を判別してもよい。また、ネットワーク経由等で取得される気象情報を用いてもよい。
(7)実施形態においては、急速減圧制御を実行する際に、モータ及びポンプを逆回転させてブレーキフルードを吸引しているが、急速減圧を実現する手段はこれに限らず、適宜変更することができる。
例えば、減圧速度を変更可能な制御弁を有する場合には、制御弁の開度制御により通常時に対して減圧速度を増加させるようにしてもよい。
(8)実施形態において、車両は操舵も含めた自動運転を行うものであるが、本発明はこれに限らず、先行車追従車速制御(車間維持制御)による加減速制御のみを行う車両であっても適用することが可能である。
1 車両制御装置 100 環境認識ユニット
110 ステレオカメラ装置 120 ミリ波レーダ装置
130 レーザスキャナ装置 140 高精度地図データベース
150 測位装置 200 自動運転制御ユニット
300 電動パワーステアリング(EPS)制御ユニット
400 エンジン制御ユニット(ECU)
500 トランスミッション制御ユニット(TCU)
600 ブレーキ制御ユニット
610 ハイドロリックコントロールユニット(HCU)
611 制御部 612 ブレーキアクチュエータ
613 液圧保持弁 614 加圧制御弁
615 モータ 616 ポンプ
617 液圧センサ
620 車速センサ 630 ヨーレートセンサ
640 横Gセンサ 650 前後Gセンサ
710 外気温センサ 720 雨滴センサ

Claims (2)

  1. 車両の液圧式ブレーキのブレーキフルード液圧を制御するとともに所定の自動発進条件が充足した際に前記ブレーキフルード液圧を減圧して前記液圧式ブレーキを制動状態から解除状態に移行させるブレーキ制御部と、
    前記液圧式ブレーキから異音が発生しやすい条件を判別する異音発生条件判別部と
    を備え、
    前記ブレーキ制御部は、前記自動発進条件が充足しかつ前記異音発生条件判別部が異音が発生しやすい条件であると判別した場合に、異音が発生し難い条件であると判別した場合に対して、前記ブレーキフルード液圧を減圧させる速度を増加させる急速減圧制御を実行し、
    前記異音発生条件判別部は、前記車両のエンジンが暖機中である場合に異音が発生しやすい条件であると判別し、
    記エンジンを制御するエンジン制御部を備え、
    前記エンジン制御部は、前記エンジンが暖機中である場合における前記急速減圧制御による前記ブレーキフルード液圧の減圧に先立ち前記エンジンの回転数を所定の暖機時アイドル回転数よりも低下させることで前記エンジンの出力を低下させること
    を特徴とする車両制御装置。
  2. 車両の液圧式ブレーキのブレーキフルード液圧を制御するとともに所定の自動発進条件が充足した際に前記ブレーキフルード液圧を減圧して前記液圧式ブレーキを制動状態から解除状態に移行させるブレーキ制御部と、
    前記液圧式ブレーキから異音が発生しやすい条件を判別する異音発生条件判別部と
    を備え、
    前記ブレーキ制御部は、前記自動発進条件が充足しかつ前記異音発生条件判別部が異音が発生しやすい条件であると判別した場合に、異音が発生し難い条件であると判別した場合に対して、前記ブレーキフルード液圧を減圧させる速度を増加させる急速減圧制御を実行し、
    前記異音発生条件判別部は、操舵装置の舵角が所定値以上である場合には、異音が発生しにくい条件であると判別すること
    を特徴とする車両制御装置。
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