JP3655745B2 - シート重量計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用シートに座っている乗員の重量を含むシート重量を計測する装置に関する。特には、荷重センサにかかる荷重の特性をできるだけ単純にすることができ、高精度でシート重量を計測できるシート重量計測装置に関する。また、異常な力がシートにかかった時の安全性を向上できる、あるいは、荷重センサに対する強度要求を緩和できるといった利点を有するシート重量計測装置に関する。さらに、装置全体の寸法を薄くできコンパクトに構成できるシート重量計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車には乗員の安全を確保するための設備としてシートベルトやエアバッグが備えられる。最近では、シートベルトやエアバッグの性能をより向上させるため、乗員の重量(体重)に合わせてそれらの安全設備の動作をコントロールしようという動向がある。例えば、乗員の体重に合わせて、エアバッグの展開ガス量や展開速度を調整したり、シートベルトのプリテンションを調整したりする。そのためには、シートに座っている乗員の重量を何らかの手段で知る必要がある。そのような手段の一例として、シートレールの4隅に荷重センサ(ロードセル)を配置して、ロードセルにかかる垂直方向荷重を合計することにより乗員の重量を含むシート重量を計測する、との提案がなされている(同一出願人による特願平9−156666号)。
【0003】
上記のようなシート重量計測装置用の荷重センサとしては、最大計測荷重が50kg程度で小型のものが望まれる。そのような荷重センサとしては、荷重を受けてたわむセンサ板に歪ゲージを貼った(あるいは形成した)もの、圧電式のもの、荷重を受けてたわむ弾性部材の変位を静電容量センサで検出するもの等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以下のような特徴を有するシート重量計測装置を提供することを目的とする。
(1)センサにかかる荷重の特性をできるだけ単純にすることができ、シート上の乗員の重量を計測しやすい。
(2)異常な力がシートにかかった時の安全性を向上できる。
(3)装置全体の寸法を薄くでき、また、加工コストや組み立てコストを低減できる。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
上記課題を解決するため、本発明のシート重量計測装置は、 車両用シートに座っている乗員の重量を含むシート重量を計測する装置であって; 車両のシート固定部とシートとを連結し、シート側又は車体側の一方又は両方が回転支点(ピボット)で軸支されているアームを含むシート連結機構と、 車両とシートとの間に加わるシート重量を受け、それを検出する荷重センサ機構と、 上記アームの回動に主に起因する、シートのシート固定部に対する変位をある範囲内に規制する変位規制機構と、 を具備することを特徴とする。
【0006】
シートが、ピボットに軸支された回動可能なアームを含むシート連結機構により車体に連結されているため、シートに荷重がかかった時におけるシートの車体に対する変位が、ある程度規則性を有するものとなる。そのため、荷重センサにかかる荷重の特性が単純なものとなり、シート上の乗員の重量を捕えやすくなる。この場合、上記荷重センサが、アームにかかるシート重量の上下方向成分を選択的に受けることが好ましい。
なお、本明細書にいうシート重量計測装置の目的は、基本的にはシート上の乗員の重量を測定することである。したがって、シートそのものの重量分をキャンセルして乗員の重量のみを計測する装置も、本明細書にいうシート重量計測装置に含まれる。
【0007】
本発明においては、上記荷重センサが上記アームを介して上記シート重量を受けることが好ましい。この場合、アームのテコ作用により、シートの変位を増幅あるいは減幅させて荷重センサに伝えることができる。また、荷重センサの荷重範囲をアームのテコ比で変更でき、荷重センサを小型、軽量、安価にできるという利点もある。
【0008】
また、本発明においては、上記荷重センサが上記シートの左右に各1セットずつ設けられており、該荷重センサがシートの左又は右の全体にかかる重量の合計を検出することが好ましい。センサの数や配線の数・長さを削減できる。その具体例として、荷重センサが、荷重を受けるセンサ板と、該板の撓み又は歪を検出するセンサ本体とを有し、該センサ板が、上記前後シート連結機構のアームを中央部で連結する構造を採用できる。この場合、センサの数が2個から1個にまとめられることに加えて、感度のバラツキや温度差によるバラツキが縮小されるという利点がある。
【0009】
本発明においては、上記変位規制機構が、上記ピボットの軸ピンの、車体又はシートに対する相対的な変位を規制するものであることが好ましい。また、シートブラケットやシートレール等のピボットの連結部材に、上記軸ピンの変位を規制する部分が設けられていることが好ましい。このようにすれば、構成部品を減らすことができる。
【0010】
ここで、シートレール又はシートにシートベルト(バックル)のアンカー固定部が接続されている場合、変位規制機構を該アンカー固定部の近傍にのみ設けることができる。あるいは、アンカー固定部の近傍を含む複数の箇所に変位規制機構を設け、アンカー固定部の近傍の変位規制機構のみをシートベルト引張力2500kgf 程度に耐えられる強固なものとすることができる。これにより、シート重量計測装置全体の重量を軽くできる。
【0011】
以下、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の1実施例に係るシート重量計測装置の全体構成を模式的に示す側面図である。
以下、本明細書中で、単に前後、左右というときは、乗員1から見ての前後、左右を意味する。
図中には、シート3、その上の乗員1、シート下のシート重量計測装置5等が示されている。シート3は、乗員1の座るシートクッション3aと、背当てであるシートバック3bからなる。シートクッション3aの底面には前後、左右の4カ所にシートアジャスタ10が突設されている。なお、図上では左側の前後の2個のアジャスタ10のみが示されているが、右側のシートアジャスタ10はその奥に隠れている。このような図示上の関係は、以下に述べる本装置の各部についても同じである。シートアジャスタ10は、シート3内のフレームが一部が突出した部分であり、乗員1の調整によって、シートレール11上を前後にスライド可能である。
【0012】
シートレール11は溝断面(図示されず)を有する車両の前後方向に延びる部材である。その溝内をシートアジャスタ10の下端部がスライドする。シートレール11はシートクッション3aの下に左右2本設けられている。シート重量計測装置を有しない従来のシートでは、シートレール11が車体のシャーシのシートブラケットにボルトでしっかりと固定される。シートレール11の後方の1カ所には、シートベルト2のバックル4を固定するアンカー固定部12が設けられている。このアンカー固定部12には、シートベルト2の張力がかかる。車両の衝突時を想定したアンカー固定部12の破断耐荷重は2000kgf 以上である。
【0013】
シートレール11の下には前後2組のシート重量計測装置5が設けられている。なお、図示されていない右側のシートレールの下にも前後2組のシート重量計測装置5が設けられており、結局、シート3の下には、前後左右4カ所にシート重量計測装置5が設けられている。
【0014】
この実施例のシート重量計測装置5は、シートレール11とシートブラケット21との間に配設された、シート連結機構14や荷重センサ31等から構成されている。シートレール11の下面には、前後にピンブラケット13が突設されている。ピンブラケット13は、図示されていないが、1本のシートレール11の左右に2枚設けられている。ピンブラケット13には、左右方向に貫通するピン孔が開けられており、その孔には軸ピン15が挿通されている。
【0015】
一方、シートブラケット21上にも、前側のピンブラケット33と後側のピンブラケット兼規制ブラケット23が立設されている。各ブラケット33、23も、図示されていないが、1カ所のシートブラケット21の左右に2枚設けられている。各ブラケット33、23にも左右方向に貫通するピン孔が開けられており、その孔には軸ピン17が挿通されている。
【0016】
前後の軸ピン17、15は、アーム16の前後のピン孔にも挿通されている。アーム16は、軸ピン17の回りを回動し、前後のアーム16は長さが等しい。結局、シートレール11と、前後の二本のアーム16は、平行四辺形リンク機構を構成する。
なお、後述する荷重センサ31が標準状態にあるときに、前後の軸ピン17、15のシャーシ7上における高さは、ほぼ等しい。したがって、荷重センサ31にかかる荷重が変動してセンサ31が微小変形した場合、シートレール11のセンサベース19に対する変位は、主に上下方向のみとなる。そのため、荷重センサ31にかかる力が上下方向を主としたものとなり、乗員の重量計測に与える外乱が少なくなる。別言すれば、シートにかかる荷重のうち前後及び左右方向の成分は、主にアームのピボットに受け持たれる。
【0017】
前後のシートブラケット21の間には、板状のセンサベース19が掛け渡されている。このように掛け渡したのは、シートブラケットの撓みを補強するためであるが、シートブラケットが強固であればセンサベースを掛け渡さなくてもよい。センサベース19とシートレール11の間には、前後2個の荷重センサ31が配置されている。この荷重センサ(ロードセル)31は、歪板にストレインゲージを貼ったものや、圧電式、静電容量式、磁歪方式、感圧抵抗方式等の板状、棒状、シート状等のセンサを広く用いることができる。
【0018】
1カ所の荷重センサ31には、乗員1が座っていない時で、前のセンサーに0〜5kgf 、後ろのセンサーに5〜10kgf の荷重がかかる。また、体重が70kgの人が普通に座った状態(標準状態)で、前のセンサーに5〜20kgf 、後ろのセンサーに10〜30kgf の荷重がかかる。荷重センサ31の測定レインジは、一般的には、−100kgf (引っ張り)〜+100kgf であり、上記標準状態で測定レインジの中央となるよう調整することが好ましい。
【0019】
次にシートレール11とシートブラケット21との間の変位規制機構について説明する。後側のピンブラケット兼規制ブラケット23の上部は、前上方に延びている。同ブラケット23の上部はシートレール11の側方にまで突出しており、また長孔23aが形成されている。長孔23aは図では相当長く描かれているが、実際は少々のばか孔程度でもよい。同長孔23aは、2本の軸ピン15と17の中心間距離と同じ半径の円弧の形をしている。この長孔23aには、シートレール11の側面に立設された規制ピン25が挿通されている。アーム16が回動すると、シートレール11はリンク状に上下し、規制ピン25は長孔23a内を摺動する。
【0020】
しかし、ピン25が長孔23aの端に当接すると、それ以上はシートレール11が動くことはできない。これによって、シートレール11のシートブラケット21に対する変位は規制される。この時の変位可能寸法は、上記標準状態の上下2mm以内が好ましい。より好ましくは、変位幅は±0.7〜1.5mmである。この程度のストロークがあれば、シートとシート固定部にシート重量計測装置を組み込む場合、現状のシートレールやシートブラケットの寸法精度でも問題なくシート重量計測装置を組み込むことができる。
【0021】
上記変位規制機構による変位規制が作用しないうちは、荷重センサ31には荷重がかかり、荷重センサ31はたわむ。
なお、通常時のシート3に加える前後、左右方向の荷重は、軸ピン15、17やアーム16を介して、シートレール11からシートブラケット21に伝わる。
このように、シートとシート固定部の間に両者の相対変位をある範囲内に規制する変位規制機構を設け、荷重センサに規定以上の力(例えば測定レインジを越える力)がかかるような場合は、超過荷重を荷重センサではなく変位規制機構(荷重制限機構)に受け持たせる。そのため、荷重センサ31に求められる耐破断荷重は著しく低くてすみ、荷重センサの小型化・低コスト化を実現できる。
【0022】
図1の実施例では、変位規制機構(規制ピン25と規制ブラケット23)は、シートベルトアンカー固定部12の設けられている左側後方の1カ所のみに設けられている。これは、車両衝突時に乗員1が前方に移動しようとするのをシートベルト2で拘束するため、同部12に大きな引張力がかかるのを受け持たせるためである。
【0023】
次に他の実施例について説明する。
図2(A)及び(B)は、図1の実施例のシート重量計測装置の変形例の構造を示す側面図である。
同図において、図1と同じ符号で示す部分は同様の部位を示す。
すなわち、図2の実施例では、シート連結機構14の構造や荷重センサ31の配置は、図1の実施例と同じである。ただし、左側後方のピンブラケット41は、前方のピンブラケット33と同様な構造を有し、前上方に伸びた延長部や長穴は設けられていない。
【0024】
図2の実施例では、変位規制機構がアーム16′、16″の一端部に形成されている。すなわち、前側のアーム16′の後端部には、ハンマーヘッド状の規制部16′aが形成されている。同部16′aの上面はピンブラケット13の台座13aの下面とある隙間を介して対向しており、同部16′aの下面はセンサベース19の上面とある隙間を介して対向している。この隙間は、上述の標準状態で1〜2mmである。
一方、図2(A)の後側(図の右側)の変位規制機構では、アーム16″の後端部には、ハンマーヘッド状の部分を設けずストレートな規制部16a″となっており、ピンブラケット13の台座13aの下面に突部13bを設けたり、センサベース19の上面に凸部19aを設けている。
【0025】
図2(B)の実施例が図2(A)の実施例と異なるのは、荷重センサ43、45がピンブラケット33、13とシートレール11又はセンサベース19間に設けられていることである。図2(B)のような配置は、両端に近いところに配置できるため、保持機構として安定するという利点がある。
【0026】
図3は、本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置を示す図である。(A)は全体の側面図であり、(B)は矢印B−B方向に見た側面図である。
図3の実施例のシート重量計測装置が、図2の実施例のシート重量計測装置と異なる主な点は以下である。
(1)センサベース19側の軸ピン17が、前後いずれもセンサベース19の中央寄りにあり、シートレール11側の軸ピン15は、前後いずれも外側寄りにある。つまり、シートレール11、前後のアーム53、51は平行四辺形リンク機構を構成していない。しかし、部材各部の弾性変形やピン部のクリアランスがあるため、アーム51、53は少々回動する。
【0027】
(2)両荷重センサ52、55は、いずれも、アーム51、53とセンサベース19の間に挟まれるように設置されている。したがって、荷重センサ52、55は、いずれもアーム51、53を介してシートレール11上の荷重を受ける。そのため、シートレール11の中央部方向にアーム51、53を伸ばすことができ、アーム先端の変位量が増大し、規制機構の寸法精度が楽になるという利点がある。
【0028】
(3)前側(図の左側)のアームの回動規制機構は、頭部にフランジ状の規制部55aを有する規制ロッド55を備える。規制ロッド55は、センサベース19上に立設されており、アーム53の底板53aに開けられている規制孔53bを貫通している。規制ロッド55の外周面と孔53bとの間には、ある隙間が設けられている。
なお、アーム53は、図3(B)に示すアーム51同様に、底板と両側板からなる上向きコの字状の断面形状をしている。規制ロッド55頭部の規制部55aの径は、規制孔53bの径よりも大である。シートレール11に上向きの力がかかってアーム53が上に回動すると、アーム底板53aの上面が規制ロッド規制部55aの下面に当接する。この時点でアーム53の回動は阻止され、シートレール11のシートブラケット21に対する変位は規制される。なお、上述の標準状態では、規制ロッド規制部55aの下面とアーム底板53a上面との間には1〜2mm程度の隙間が存在する。
【0029】
(4)後側(図の右側)のアーム51は、中央方向に長く延びている(延長部51a)。この延長部51aの先には、ハンマーヘッド状の規制部51bが形成されている。同部51bの上面はシートレール11の下面と、同部51bの下面はセンサベース19の上面と、ある隙間を隔てて対向している。アーム51の回動は、この規制部51bが上記両面と当接することにより規制される。
【0030】
この例では、センサベース側の軸ピン17と規制部51bの距離は、同ピン17と荷重センサ52の距離の約2倍程度となっている。したがって、アーム51のある回動角に対する規制部51bの変位は、センサ52の変位の2倍に拡大される。そのため、センサ52の負担荷重レインジにおけるストロークの2倍の隙間を、規制部51bとシートレール11又はセンサベース19の間に持たさせることができ、部品の寸法精度や組み立て精度に関する要求を緩和できる。
【0031】
(5)図3(B)に示すように、シートレール11やピンブラケット13、33及びアーム51は、底板と左右両側板からなる上向きコの字状の断面を有する。このような構成にすることにより、加工しやすく、各部材の剛性を確保しつつ軽量化を実現することができる。
【0032】
図4は、本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の側面図である。
この実施例の特徴は以下である。
(1)後側(図の右側)のアーム61には、中央寄りにアーム延長部63が延設されている。アーム延長部63の先端部63aの下には、緩衝バネ65を介して荷重センサ67が配置されている。アーム延長部63は、アーム61の回動変位を拡大して緩衝バネ65及びセンサ67に伝える。緩衝バネ65は、所定の予圧を受けてアーム先端部63aとセンサ67の間に介装されており、同部63aの変位のうちの70〜99%を受け持つ。したがって、センサ67の測定レインジ内におけるストロークが小さくても、有効な計測を行うことができる。これにより、ストロークの小さいセンサを、比較的粗い精度の周辺部材の中に問題なく組み込むことができる。
【0033】
(2)前側(図の左側)の荷重センサ(センサ板)73は、板バネ材からなるセンサ板にストレインゲージ(図示されず)を貼付した構成となっている。同センサ板73は、アーム71の中央側端部の下隅から図の右方に延びている。センサ板73の中央側端部は、センサベース19上に突設されている台座75の上面に連結されている。したがって、このセンサ板73は、シートレール11に下方向の荷重が加わると上に凸にたわみ、シートレール11に上方向の荷重が加わると下に凸にたわむ。このたわみをストレインゲージで検出して荷重を計測する。このような板構造の荷重センサとすることにより、荷重センサを薄く構成でき、ひいてはシート重量計測装置全体を薄くすることができる。
【0034】
前側(図の左側)のアームの回動規制機構は、頭部にフランジ状の規制部55aを有する規制ロッド55を備える。規制ロッド55は、センサベース19上に立設されており、アーム71の前端に突設されている規制片77に開けられている規制孔77aを貫通している。規制ロッド55の外周面と規制孔77aとの間には、ある隙間が設けられている。
なお、アーム71の主要部は、図3(B)に示すアーム51同様に、底板と両側板からなる上向きコの字状の断面形状をしている。規制ロッド55頭部の規制部55aの径は、規制孔77aの径よりも大である。シートレール11に上向きの力がかかってアーム71が上に回動すると、規制片77の上面が規制ロッド規制部55aの下面に当接する。この時点でアーム71の回動は阻止され、シートレール11のシートブラケット21に対する変位は規制される。なお、上述の標準状態では、規制ロッド規制部55aの下面と規制片77上面との間には1〜2mm程度の隙間が存在する。
【0035】
図5(A)、(B)、(C)は、本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の構成を示す部分側面図である。
この実施例の特徴は、アームを板状とし、アームの一端をピボットで軸支し、他端をシート又は車体側に固定したことである。このような構成により、標準状態で水平に設置された板状のアームは、上下方向の負荷を受けるとアーム材料の弾性に依存して上下方向にある範囲内で撓み、前後・左右方向には撓みにくい。したがって、ピボットを中心に回動可能なアームを含む、アームの撓みによる変位規制機構が構成される。また、各シート重量計測装置においてピボットが一つですむため、構造が簡単にできる。
【0036】
図5(A)は図2(B)の変形例を示す。板状のアーム16の前端(図の左側)がピボットピン15によってピンブラケット13に軸支される。アーム16の後端(図の右側)は固定ブラケット76に固定される。荷重センサ43はシートレール11と固定ブラケット76の間に設置される。シートに重量がかかると、シート重量でアーム16はピン15に沿って回動し、荷重センサ43は負荷を受ける。またピボット連結部が上下に動くと、アーム16は固定された固定ブラケット76に対して撓む。このとき、アーム16は板状のため前後・左右方向には撓みにくく、上下方向のみにある範囲内に撓む。したがって、結果として、両端をピボットで軸支されたアームと同様に、シートの車体に対する変移を規則性を有するものとし、荷重の上下方向成分を選択的に検出できる。この構成では、シート重量がアーム16を上下に撓ます力が荷重センサ43に一定の比率で分配されるため、精度は落ちるがその比率からシート重量を求めることができる。
【0037】
図5(B)の実施例が図5(A)の実施例と異なるのは、荷重センサの代わりに歪センサ80がアーム16に一体化されて設置されていることである。この構成の利点は、アーム自体を、荷重センサ機構の、荷重を受けるセンサ板、及び撓み及び歪みを検出するセンサ本体として構成できることである。また同時に変移規制機構としても作用する。
【0038】
図5(C)の実施例は、図4の実施例の変形であり、図4の実施例と異なるのは、アーム71が中央部でピボットピン17によってブラケット33に軸支されることである。また、アーム71の前端はブラケット78に固定され、後端は台座75に固定される。歪センサ80は、アーム71の中央部(軸支点)と後端の間に設置される。シート重量がかかると、アーム71はピン17を中心に反時計回りに回動し、同時に固定部に対して撓む。アーム71の中央部のピボットを介することによりアームの上下の撓み成分のみが、アームと一体に構成された荷重センサ機構に伝えられる。
なお、ここで用いられる歪センサ80は、曲げ歪を検出する場合は、図6(A)に示す様にアーム16の上面あるいは下面に、剪断力を検出する場合は、図6(B)に示すようにアーム16の側面に配置される。
【0039】
図7は、本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の構成を示す側面図である。
この実施例の特徴は以下である。
(1)軸ピン15、17及びアーム81からなる回動式のシート連結機構をシートレール11の前後に対称に配置し、両アーム81から中央方向に延びるアーム延長部83を設け、同部83の中央寄り先端部間に荷重センサ(センサ板)85を掛け渡している。すなわち、アーム延長部83は、前後のアーム81の中央寄り端部の下隅に固設されており、センサベース19と平行に中央方向に延びている。両アーム延長部83の中央端部83aは、ある距離をおいて対向している。この両端部83aの上には、センサ板85が掛け渡されている。センサ板85と両端部83aの間は、固定されている。なお、センサ板85はアームと一体に構成してもよい。
【0040】
センサ板85には、シートレール11にかかる荷重による変形がアーム81、延長部83を介して伝わる。この変形をセンサ板85に貼ったストレインゲージ(図示されず)で検出し、シートレール11にかかる荷重を計測する。これにより、1カ所の荷重センサで、1本のシートレール11にかかる前後の荷重を足し合わせて計測でき、シート重量計測装置の部品点数を削減できるとともに、回路を簡略化できる。
【0041】
(2)変位規制機構は次のように構成されている。すなわち、前後のアーム81が回動した際に、それらの上下面が、ピンブラケット13、33の台座13f、33fの下面又は上面に当接して回動が規制される。
【0042】
図8は、図7の実施例の変形例を示す側面図である。
この実施例のシート重量計測装置の特徴は以下である。
(1)アーム延長部93が緩衝バネ構造となっている。すなわち、アーム延長部93は、前後のアーム91の中央寄り端部から、中央方向に延びている。同アーム延長部93は、途中から蛇腹状に上下にうねるように形成されており、前後方向にも変形しやすくなっており、緩衝バネの作用をなす。アーム延長部93の中央端はセンサ板95の端に接続されている。このアーム延長部93の緩衝バネ作用により、センサ板95を大きくたわませずに上下変位を増やすことができるという利点がある。
【0043】
(2)センサ板95は、その中央部で、センサベース19上に突設された台座99とボルト97によって固定されている。そして、センサ板95には、両側の緩衝バネ93からの上下の力に加えて引張力あるいは圧縮力がかかる。なお、シートレール11が持ち上げられる方向の力がかかるときは、センサベース19上の前後のピンブラケット33が前後に離される方向の変位が生じる。一方、シートレール11が押し下げられる方向の力がかかるときは、センサベース19上の前後のピンブラケットが前後に近寄る方向の変位が生じる。このような構造により、シートレール11の上下で生じる引張力あるいは圧縮力を吸収し、上下の力をセンサ板95に伝達するという利点がある。
【0044】
(3)変位規制機構の構成は、図3の前側の変位規制機構の構成と同じである。なお、図8のように、変位規制機構(規制ロッド55等)、ピボット式シート連結機構(軸ピン15、17、アーム91等)及び荷重センサ95を、前後方向(横に)並べて配置することにより、シート重量計測装置全体を薄く構成することができる。なお、本実施例では、他の実施例と同様に、シートレールとセンサベースの構成を上下逆に入れ替えることもできる。すなわち、荷重センサ95等をシートレール11の下面に取り付けることもできる。
【0045】
(5)シートに最も大きな力が加わる車両正面衝突時の荷重方向は前後方向、上下方向であり、この方向に構造的に強い。特に上下方向は、規制部によりピボット軸のみを介在してシートと車両固定部を直接連結するため、アーム及びセンサの強度を減じられる。すなわち、上下方向のシート重量以外のストレス(水平方向の荷重)を荷重センサに直接伝えない。
(6)左右の荷重センサを一体に構成でき、2つのセンサの感度、温度特性を合わせやすく、部品点数も減る。
【0046】
図9は、本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の具体的構成を示す分解斜視図である。なお、同図は、装置の前半部(あるいは後半部)のみを示すものである。
シートレール101の端部下面には、ピンブラケット103が、図示せぬボルトによって固定される。同ピンブラケット103は、厚さ2.2mmの鋼板(ハイテン)をプレス加工したものである。ピンブラケット103は、シートレール101の下面に押し当てられる平板状の台座部103dと、その中央部左右端から下方に突設されている垂下部103bからなる。台座部103dの前後には、ブラケット固定用のボルト孔103aが開けられている。垂下部103bには、軸ピン125を挿通するピン孔103cが開けられている。垂下部103bは、アーム105の左右の外側をはさむように組み立てられ、ブラケット103の孔103cとアーム105の孔105aとが同芯となって、両孔に軸ピン123が挿通される。
【0047】
アーム105は、マグネシウム、アルミ等からなる部材である。アーム105はセンサベースと同様のコの字状鋼板で構成してもよいが、全体を薄くするため、成形品を用いている。アーム105には、左右に平行に延びるピン孔105a、105bが前後に2つ開けられている。前側のピン孔105aには、上述の軸ピン123が挿通される。後側のピン孔105bには、軸ピン125が挿通される。
【0048】
アーム105の後側にはアーム延長部107が延設されている。同延長部107は、後側にいくにしたがって幅・厚さともに小さくなっている。アーム延長部107のアーム105寄りの部分は2又に分かれている。アーム延長部107の後端部には、リング部107aが形成されている。同部107aの中央には、ボルト孔107bが開けられている。リング部107aは、センサ板109に対して。ボルト111、ナット113で固定される。なお、図示は省略されているが、センサ板109の後方(図の右奥)にも延長部を有する後側のアームが存在する。
【0049】
センサ板109は、帯状の部材(材質SUS、厚2mm、幅10mm、長さ60mm)である。このセンサ板109の上面(又は下面)には、ストレインゲージ119が貼り付けられている。同ストレインゲージ119は、センサ板109の伸縮及び曲げ歪を検出する。センサ板109の前後両端部にはアーム延長部107との連結部を構成するボルト孔109aが開けられている。センサ板109の中央部には、同板109を、センサベース121の台座117に固定するボルト115の通る孔109bが開けられている。センサ板109の中央部は、左右に張り出している(幅広部109c)。この部分109cは、センサ信号取り出しのためのものである。
【0050】
センサベース121は、シートレール101と上下に対向し、前後に延びる部材である。このセンサベース121上に、シート重量計測装置が搭載される。センサベース121は、厚さ2.2mmの高張力鋼板(ハイテン60)からなる上向きコの字状断面を有する部材であって、前後方向の長さは約400mm、左右の幅は41mm、高さは20あるいは25mmである。この寸法内に、シート重量計測装置全体が収められる。センサベース121のほとんどの部分は、底板121cと左右両側の側板121aからなるコの字状断面である。この断面の中に、アーム105やセンサ板109が収められる。底板121cの中央部には、センサ板109固定用の台座117が固着されている。
【0051】
センサベース121の端部には、下向きに傾斜したシートブラケット固定部121eが形成されている。同部121eにはボルト孔121fが開けられている。同部121eは、図9に示すように、シートブラケット21にボルト(図示されず)で固定される。
【0052】
センサベース121の図の手前側側板121a′の端部には、ピン孔121b′が開けられている。また、奥側の側板121aにも、上記孔121b′と対向する位置にピン孔121bが開けられている。両孔121b、121b′の開いている両側板121a、121a′の内側には、アーム105のピン孔105bの部分が嵌まり込む。そして、孔105bと121b、121b′がストレートに並んで、軸ピン125が挿通される。したがって、アーム105は、軸ピン125によって、センサベース121に軸支される。なお、軸ピン125は、図の右側部に一体成形のヘッド125aを有し、左端部にネジ125bを有する。ネジ125bには図示せぬナットが螺合されて、軸ピン125がセンサベース121に固定される。
【0053】
奥側の側辺121aの最も前寄りの端部には、上下長孔121dが形成されている。同長孔121dの形成されている部分の側辺は、やや側方にズレて位置している。同長孔121dの内側には、ピンブラケット103の垂下部103bを介してアーム105の前のピン孔105aの部分がくる。そして、ピンブラケットのピン孔103c及びアーム105のピン孔105aに挿通される軸ピン123の端部が同長孔121dを貫通している。同軸ピン123の左端部のネジ123bは、長孔121dの外側に突き出し、ナット127が螺合している。なお、このナット127は、センサベース121の側辺を圧迫するものではない。
【0054】
軸ピン123と長孔121dの間には隙間があって、アーム105のピン孔121b回りの回動があると、軸ピン123が長孔121d内で上下に振動する。しかし、上下方向の隙間がなくなって、軸ピン123が長孔121dの上下面に当接すると、その時点でアーム105の回動は規制される。
このような構成により、ほとんど追加部品なく変位規制機構を構成できる。
【0055】
図10は、センサベースの変形例を示す斜視図である。
図10では、長孔121d、121d′は、両側の側板121a、121a′に形成されている。この場合、軸ピン125は、その両端で2カ所の長孔121d、121d′を貫通している。この方が、軸ピン125の動きが両持ちで規制されるので、より強固である。
【0056】
図11は、図9の実施例のシート重量計測装置をシート下に組み込んだ状態を示す側面図である。
シート重量計測装置は、センサベース121の中に収められており、長さ、幅方向ともシートレール111からはみ出すことなく、シートレール111の下にコンパクトに組み込まれている。センサベース121は、前後のシートブラケット21上に固定されている。
【0057】
本発明は、上記の各種実施例に限定されるものではなく特許請求の範囲に示される基本思想にしたがってさまざまな変形を加えることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は以下の効果を発揮する。
(1)シートが、回動可能なアームを含むシート連結機構により車体に連結されているため、シートに荷重がかかった時におけるシートの車体に対する変位が、ある程度規則性を有するものとなる。そのため、荷重センサにかかる荷重の特性が単純なものとなり、シート上の乗員の重量を捕えやすくなる。
(2)荷重センサをシートの左右に各1セットずつ設ける場合には、センサの数や配線の数・長さを削減できる。
(3)変位規制機構を、ピボットの軸ピンの車体に対する相対的な変位を規制する形態としたり、シートブラケットやシートレール等のピボットの連結部材に軸ピンの変位を規制する部分を設ければ、構成部品を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例に係るシート重量計測装置の全体構成を模式的に示す側面図である。
【図2】図1の実施例のシート重量計測装置の変形例の構造を示す側面図である。
【図3】本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の構成を示す側面図である。
【図5】本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の構成を示す部分側面図である。
【図6】図5の実施例のシート重量計測装置のセンサ位置の例を示す部分側面図である。
【図7】本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の構成を示す側面図である。
【図8】図5の実施例のシート重量計測装置の変形例を示す側面図である。
【図9】本発明の他の1実施例に係るシート重量計測装置の具体的構成を示す分解斜視図である。
【図10】センサベースの変形例を示す斜視図である。
【図11】 図9の実施例のシート重量計測装置をシート下に組み込んだ状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 乗員 2 シートベルト
3 シート 4 バックル
5 シート重量計測装置 7 車体(シャーシ)
10 シートアジャスタ 11 シートレール
12 アンカー固定部 13 ピンブラケット
14 シート連結機構 15、17軸ピン
16 アーム 19 センサベース
21 シート固定部(シートブラケット)
23 ピンブラケット兼規制ブラケット
23a 長孔 25 規制ピン
31、43、45 荷重センサ 33、41 ピンブラケット
51、53 アーム 55 規制ロッド
61 アーム 63 アーム延長部
65 緩衝バネ 67、73 荷重センサ
71 アーム 75 台座
77 規制片 80 歪センサ
81 アーム 83 アーム延長部
85 荷重センサ(センサ板) 91 アーム
93 アーム延長部 95 荷重センサ(センサ板)
97 ボルト 99 台座
101 シートレール 103 ピンブラケット
105 アーム 107 アーム延長部
109 荷重センサ(センサ板) 111 ボルト
113 ナット 115 ボルト
117 台座 119 ストレインゲージ
121 センサベース 123、125 軸ピン
Claims (10)
- 車両用シートに座っている乗員の重量を含むシート重量を計測する装置であって;
車両のシート固定部とシートとを連結し、シート側又は車体側の一方又は両方が回転支点(ピボット)で軸支されているアームを含むシート連結機構と、
車両とシートとの間に加わるシート重量を受け、それを検出する荷重センサ機構と、
上記アームの回動に主に起因する、シートのシート固定部に対する変位をある範囲内に規制する変位規制機構と、
を具備することを特徴とするシート重量計測装置。 - 車両用シートに座っている乗員の重量を含むシート重量を計測する装置であって;
車両のシート固定部とシートレールとを連結し、シート側又は車体側の一方又は両方が回転支点(ピボット)で軸支されているアームを含む前後・左右4カ所のシート連結機構と、
車両とシートレールとの間に加わるシート重量を受け、それを検出する荷重センサ機構と、
上記アームの回動に主に起因する、シートレールのシート固定部に対する変位をある範囲内に規制する変位規制機構と、
を具備することを特徴とするシート重量計測装置。 - 上記荷重センサ機構が上記アームを介して上記シート重量を受けることを特徴とする請求項1又は2記載のシート重量計測装置。
- 上記荷重センサ機構が、アームにかかるシート重量の上下方向成分を選択的に受け検出することを特徴とする請求項1又は2記載のシート重量計測装置。
- 上記荷重センサ機構が、荷重を受けるセンサ板と該板の撓み又は歪を検出するセンサ本体とを有し、センサ板が上記アームと一体に構成されることを特徴とする請求項1、2又は3記載のシート重量計測装置。
- 上記荷重センサ機構が、荷重を受けるセンサ板と、該板の撓み又は歪を検出するセンサ本体とを有し、上記アームと一体又は別体で連結された該センサ板が、上記前後シート連結機構のアームを中央部で連結することを特徴とする請求項2記載のシート重量計測装置。
- 上記荷重センサ機構が上記シートの左右に各1セットずつ設けられており、該荷重センサがシートの左又は右の全体にかかる重量の合計を検出することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載のシート重量計測装置。
- 上記変位規制機構が、上記ピボットの軸ピンの、車体又はシートに対する相対的な変位を規制するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のシート重量計測装置。
- シートブラケットやシートレール等のピボットの連結部材に、上記軸ピンの変位を規制する部分が設けられていることを特徴とする請求項7記載のシート重量計測装置。
- 上記シート又はシートレールのシートベルトアンカー固定部近傍にのみ変位規制機構が設けられているか、又は、同部近傍の変位規制機構のみが耐破断荷重2000kgf 以上の強固なものであることを特徴とする請求項1又は2記載のシート重量計測装置。
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