JP2006281629A - 平版印刷版の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 支持体上に、片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと架橋剤とを熱又は光により硬化させて架橋親水層を形成する工程と、形成された架橋親水層に、インクジェット組成物を射出し、熱又は光によりインクジェット組成物を硬化させて疎水性の画像を形成する工程とを有することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力または画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキ及び/又は湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版の赤外線レーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法および工程を指す。
しかしながら、このように微粒子の単なる熱融着による合体で画像部を形成させる方法は、ある程度の機上現像性を示すものの、微粒子を含有する非画像部分の感熱層を、湿し水又は油性インクによって充分に除去することは困難であり、非画像部に感熱層成分が残存し、印刷において汚れを生じるという問題があった。また、画像強度、特に支持体と画像部との密着性、が極めて弱く、耐刷性が不十分であるという問題を有していた。
即ち、本発明の平版印刷版の作製方法は、支持体上に、片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと架橋剤とを熱又は光により硬化させて架橋親水層を形成する工程と、形成された架橋親水層に、インクジェット組成物を射出し、熱又は光によりインクジェット組成物を硬化させて疎水性の画像を形成する工程とを有することを特徴とする。
ここで、架橋親水層の形成にあたっては、架橋剤として複数の、少なくとも互いに反応性である架橋剤を用い、且つ、複数の架橋剤のうち少なくとも1種は、前記片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと共有結合及び/又はイオン結合を形成しうる官能基を有することが好ましい態様である。
また、本発明においては、架橋親水層形成の際、親水性ポリマーの片末端が架橋膜中に化学結合的に固定化されるが、親水性ユニットを有するポリマー部位は片側が固定化されていないため、自由度が高く、運動性に優れた構造を有している。そのため、印刷時に、湿し水の給水排水を効率よく行うことが可能となる。更に、3次元的に架橋した親水膜のなかに親水性グラフト鎖が大量に導入されているため、より多くの湿し水を保水することができ、高親水性で地汚れが生じにくく、インキ払い性が良好となる。
また、本発明の方法では、画像部領域の形成に硬化性のインクを用いたインクジェット記録方式を使用しているため、架橋親水層に画像形成因子を含む必要がなく、任意の物性を有するインク組成物を用い、デジタルデータを基に、インクジェット記録装置の解像度に応じた任意の画像を容易に形成することができる。
以下、本発明の方法について、工程順に詳細に説明する。
本工程、即ち、架橋親水層形成工程においては、(A)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと(B)架橋剤とを含有する架橋親水層形成組成物を、支持体上に塗布し、熱又は光により該塗布膜を硬化させて架橋親水層を形成する。ここで、架橋親水層形成組成物に含まれる各成分について述べる。
本発明に使用することができる片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーは、公知の熱架橋剤と反応可能な官能基を一方の末端に有し、架橋剤と反応して水不溶性になるものであればよい。公知な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。架橋剤と反応し得る官能基としては、カルボキシル基あるいはその塩、無水カルボン酸、アミノ基、水酸基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、(ブロック)イソシアネート基、シラノール基(シランカップリング基)、炭素−炭素二重結合基、エステル基、テトラゾール基、またはアクリレート基、メタクリレート基、スチリル基などのラジカル重合性基等が挙げられる。
架橋親水層を形成する際、親水性ポリマーの片末端のみ架橋させるために、親水性ポリマーの側鎖官能基と末端架橋性基は異なっていることが好ましく、さらに、末端架橋性基のほうが側鎖官能基よりも架橋反応性が高いほうが好ましい。
また、片末端の架橋性基は2つ以上有しても良く、さらに2種類以上の異なる架橋性基を有してもよい。
本発明において架橋親水層を形成する組成物中の(A)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーの含有量は目的に応じて適宜選択できるが、一般的には、10〜95質量%であることが好ましく、45〜90質量%であることがさらに好ましい。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性ポリマーと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸といったα,ω−アルカン若しくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ブチルアミン、スペルミン、ジアミンシクロヘキサン、ピペラジン、アニリンフェニレンジアミン、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン、等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、
これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性部材の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
また、(A)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーとイオン結合しうる架橋剤も使用可能である。例えば、(A)特定親水性ポリマーの末端がカルボン酸であれば、(B)架橋剤として多官能アミンを、(A)特定親水性ポリマーの末端がアミンであれば、(B)架橋剤としてカルボン酸を使用することができる。
本発明で用いられる(A)片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーにおける架橋性基と、(B)架橋剤との好適な組合せとしては、以下の組み合わせが挙げられる。
カルボキシル基あるいはその塩を片末端に有する親水性ポリマーは、上記ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリメチロール化合物、ポリイソシアネート化合物或いはブロックポリイソシアネート化合物、金属架橋剤を用いて三次元架橋を形成することができる。
メチロール基、フェノール性水酸基、グリシジル基を片末端に有する親水性ポリマーは、架橋剤として、上記ポリカルボン酸化合物、ポリアミン化合物、ポリヒドロキシ化合物を用いて三次元架橋を形成しうる。
アミノ基を片末端に有する親水性ポリマーは、架橋剤として、上記ポリイソシアネート化合物或いはブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリメチロール化合物を用いて三次元架橋を形成しうる。
アルコキシシリル基などのシランカップリング基を有する片末端に有する親水性ポリマーは、テトラアルコキシシラン、多価アルコールなどと脱水縮合することにより三次元架橋を形成することが可能である。
炭素−炭素二重結合基を有する片末端に有する親水性ポリマーは、架橋剤として、ジチオエリスリトール、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)などのポリチオール化合物、ブチルアミン、スペルミン、ジアミンシクロヘキサン、ピペラジン、アニリンフェニレンジアミン、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等のアミン化合物を用いて三次元架橋を形成しうる。
また、多官能ラジカル重合性架橋剤と末端ラジカル重合性親水性ポリマーとの組み合わせも使用することができる。
1種類の架橋剤を用いる場合は、3官能以上が好ましく、架橋剤間でも反応することが好ましい。例えば、多官能エポキシ化合物をあげることができる。
2種類以上の架橋剤、例えば、(B−1)と(B−2)の2種の架橋剤を組み合わせて使用する場合を例に挙げれば、一方の架橋剤(B−1)は2官能以上で、他方の架橋剤(B−2)は3官能以上であることが好ましく、架橋剤(B−1)が2官能以上である場合、(B−1)の官能基のうち少なくとも1つが、(A)末端架橋性親水性ポリマー中に存在する架橋性基及び架橋剤(B−2)の双方と反応可能であり、架橋剤(B−1)における他の少なくとも1つの官能基は架橋剤(B−2)と反応可能である官能基であることが好ましい。
架橋剤(B−2)は、(A)末端架橋性親水性ポリマーの架橋性基および架橋剤(B−1)の双方と反応可能であるか、または、架橋剤(B−1)とのみ反応可能であることが好ましい。架橋剤(B−2)が、架橋剤(B−1)とのみ反応する例としては、(A)末端架橋性親水性ポリマーの架橋性基と架橋剤(B−2)が同一種類の架橋性基である場合があげられる。
(A)ポリマーと(B)架橋剤との好ましい組み合わせとしては、(A)ポリマーの片末端がカルボン酸、水酸基、又は、アミンであり、(B)架橋剤が多官能エポキシ化合物、多官能カルボン酸である組み合わせ、多官能アミン化合物と多官能カルボン酸との併用などが挙げられる。
本発明において、架橋親水層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明の架橋親水層には、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録材料全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
本発明の架橋親水層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
本発明の架橋親水層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の架橋親水層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
塗布後の乾燥により、架橋反応が進行し、架橋親水層が形成される。熱で架橋させる場合の温度条件等には特に制限はないが、好ましくは40℃〜300℃で、架橋性と製造安定性の観点から60℃〜250℃の範囲が好ましい。
本発明の平版印刷版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
本発明の方法における平版印刷版においては、必要に応じて、架橋親水層と支持体との間に中間層を設けることができる。また、本発明においては架橋親水層が画像部・非画像部の両方を兼ねることから、架橋親水層は支持体との密着性が高いことが好ましく、中間層の設置により支持体と架橋親水層の密着性の向上が図れるという利点がある。
前述した中間層組成物の被覆は、所望によって界面活性剤の存在下に、水性コロイド分散液から行ってもよい。
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報に記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4等のケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が親水性に優れており特に好ましい。
このようにして得られた架橋親水層表面に(C)インクジェット組成物を射出し、熱又は光によりインクジェット組成物を硬化させて疎水性の画像を形成することで、平版印刷版を得ることができる。以下、疎水性領域形成工程について説明する。
まず、本発明でのインクジェット記録方式を用いた平版印刷版作製に使用可能な(C)インクジェット組成物に関して説明する。(C)インクジェット組成物は、露光、加熱などのエネルギー付与により硬化する特性を有するものであり、以下に述べる(C−1)重合開始系と(C−2)重合性化合物、及び、所望により添加される種々の化合物を含有する。
本発明に係る(C−1)重合開始系には、(C−1−1)重合開始剤と(C−1−2)増感色素とを含有する。
(C−1−1)重合開始剤
本発明において疎水性領域形成に用いられるインクジェット組成物に使用されるラジカル重合、若しくは、カチオン重合の重合開始剤について説明する。
本発明における重合開始剤は光の作用、または、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
具体的な重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M.Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A:Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:RapraReview vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載されているような、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
本発明における重合開始剤の他の例である(f)ボレート塩の例としては米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
本発明おいては、疎水性領域形成のためのインクジェット組成物に重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加しても良い。増感色素を添加することは、特にラジカル重合開始材の分解促進による発生ラジカル量の増加の観点から好ましい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
本発明における(C)重合開始系には、必要に応じて、共増感剤、連鎖移動剤等のその他の添加剤を加えてもよい。
(C−1−3−1)その他の共増感剤
感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物をその他の共増感剤として加えても良い。
この様なその他の共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
本発明における(C)重合開始系は、本発明に係るインクジェット組成物の全質量に対し、固形分換算で、0.2〜40質量%含まれ、好ましくは0.5〜30質量%の共増感剤、0.5〜40質量%、好ましくは、1.0〜30質量%の重合開始剤、0〜40質量%、好ましくは、1〜30質量%の任意の増感色素、ならびに、0〜30質量%、好ましくは、0.5〜20質量%のその他の添加剤を含むことが適当である。
(C−2)重合性化合物
本発明においてインクジェット組成物に用いられる重合性化合物は、ラジカル重合性化合物、例えば特開平7−159983号、特公平7−31399号、特開平8−224982号、特開平10−863号、特願平7−231444号等の各号及び特願平7−231444号に記載されている光重合性組成物を用いた光硬化型材料と、カチオン重合性化合物、例えば、カチオン重合系の光硬化性樹脂が知られており、最近では可視光以上の長波長域に増感された光カチオン重合系の光硬化性樹脂も、例えば特開平6−43633号、特開平8−324137号等に公開されている。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。また、単官能化合物よりも官能基を2つ以上持つ多官能化合物の方がより好ましい。更に好ましくは多官能化合物を2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
カチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性化合物(モノマー)が使用出来る。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。本発明のカチオン重合性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、若しくはこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明の重合性化合物としては、(メタ)アクリル系モノマー或いはプレポリマー、エポキシ系モノマー或いはプレポリマー、ウレタン系モノマー或いはプレポリマー等が好ましく用いられる。更に好ましくは、下記化合物である。
更に感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善するためには、上記モノアクリレートと、分子量400以上、好ましくは500以上の多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーを併用することが感度、密着性向上の点で好ましい。更に、単官能、二官能、三官能以上の多官能モノマーを併用することが特に好ましい。安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善することが出来る。オリゴマーとしてはエポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーが特に好ましい。
では、上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレートと、多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーとの併用が膜に可撓性を持たせられ密着性を高めつつ、膜強度を高められるため好ましい。モノアクリレートとしてはステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミスチルアクリレート、イソステアリルアクリレートが感度も高く、低収縮性でカールの発生を防止出来るとともに、滲み防止、印刷物の臭気、照射装置のコストダウンの点で好ましい。
なお、メタクリレートは、皮膚低刺激性がアクリレートより良好である。
上記化合物の中でもアルコキシアクリレートを70質量%未満の量で使用し、残部をアクリレートとする場合、良好な感度、滲み特性、臭気特性を有するため好ましい。
本発明における重合性化合物の添加量は、例えば、インクジェット組成物の全質量に対し、1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。
本発明におけるインクジェット組成物には、色材を用いることができる。本来、平版印刷版の画像部である疎水性領域を形成する組成物であるため、色材の添加は必須ではないが、検版性などの観点から、色材を添加してもよい。色材には特に制限はないが、耐候性に優れた顔料が好ましく、溶解性染料及び油性染料等の任意の公知の色材が使用できる。従来、インクジェット組成物には一般的な顔料を使用することができなかった。これは、顔料は、重合反応において重合禁止剤として機能するため、硬化感度が低下するという問題があるからである。しかし、前述の(C−1)重合開始系では、発生する活性種の量が多くなるので、このような色材も使用することができる。
使用しうる色材には、特に限定はないが、例えばカラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
また、色材の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることであり、高分子分散剤としては、例えば、Zeneca社のSolsperseシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、色材100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
色材は、インクジェット組成物に直接添加してもよいが、分散性向上のため、あらかじめ溶剤又は本発明に係る重合性化合物のような分散媒体に添加してもよい。溶剤が硬化画像に残留する場合の耐溶剤性の劣化並びに残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)の問題を避けるためにも、色材は、重合性化合物に添加して配合することが好ましい。さらに使用する重合性化合物としては、最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
色材は、全インクジェット組成物に対し、固形分換算で、例えば、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%含有することが適当である。
本発明に係るインクジェット組成物には、必要に応じて、その他の共増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、溶剤、カチオン重合性モノマー等のその他の添加剤を加えてもよい。
(C−4−1)共増感剤
ここで、共増感剤としては、先に述べた(C−1)重合開始系において説明したものを用いることができる。
重合禁止剤は、保存性を高める観点から添加され得る。また、本発明におけるインクジェト組成物は、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤は、本発明のインクジェット記録用インク全量に対し、200〜20000ppm添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
本発明に用いるインクジェト組成物が放射線硬化型組成物である場合、液滴の着弾直後に速やかに反応しかつ硬化し得るよう、溶剤を含まないことが好ましい。しかし、硬化速度等に影響がない限り、所定の溶剤を含めることができる。本発明において、溶剤としては、有機溶剤、水が使用できる。特に、有機溶剤は、被記録媒体(紙などの支持体)との密着性を改良するために添加され得る。高沸点の有機溶剤を添加すると、VOCの問題が回避できるので有効である。有機溶剤の量は、本発明のインクジェット組成物全体の質量に対し、例えば、0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
インク色材の遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、カチオン重合性モノマー、開始剤とラジカル重合性モノマー、開始剤を併用したラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとしてもよい。
この他に、必要に応じて公知の化合物を本発明のインクジェット組成物に添加することができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して添加することができる。また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6頁に記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などが挙げられる。
その他の添加剤は、本発明におけるインクジェット組成物の全質量に対し、0〜40質量%、好ましくは、1〜30質量%の共増感剤、0〜40質量%、好ましくは、1〜30質量%の連鎖移動剤、0〜40質量%、好ましくは、1〜30質量%の重合禁止剤等を含むことが適当である。
本発明におけるインクジェット組成物は、上述のように、(C−1)重合開始系と(C−2)重合性化合物と、所望により(C−3)色材やその他の添加剤を含有するものである。これらの成分は、インクジェット組成物の質量に対して、色材が1〜10質量%、好ましくは、2〜8質量%、重合性化合物が、1〜97質量%、好ましくは、3〜95質量%、重合開始系が、0.01〜20質量%、好ましくは、0.1〜20質量%の量であって各成分の合計の質量%が100質量%となるように含有することが適当である。
本発明に好適に採用され得るインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について、以下説明する。
(3−1)インクジェット記録方法
本発明は、上記インクジェット組成物を、支持体上に形成された架橋親水層表面に噴射し、支持体上に着弾した組成物に放射線を照射し、硬化して画像部(疎水性領域)を形成して平版印刷版を得る。この工程をより詳細な工程順に説明すれば、以下のような工程に従うことになる。
(a)支持体上に形成された架橋親水層表面にインクジェット組成物を適用する工程;
(b)インクジェット組成物に200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは350〜420nmのピーク波長を有する放射線で、2000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1000mJ/cm2さらに好ましくは、50〜800mJ/cm2の出力で照射してインクジェット組成物を硬化する工程;及び
(c)硬化したインクジェット組成物が支持体上に形成された架橋親水層表面に画像部を形成する工程である。
ここで、平版印刷版は、前記本発明の第1の工程で支持体上に形成された架橋親水層とその表面に形成された疎水性画像とを有する。
従来、平版印刷版としては、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するいわゆるPS版が広く用いられてきた。このPS版の製造方法としては、通常、リスフィルムを介してマスク露光(面露光)した後、非露光部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。しかし、近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力するディジタル化技術が広く普及し、それに対応した新しい画像出力方式が求められるようになった。特に、リスフィルムを使用することなく、レーザー光のような嗜好性の高い光をディジタル化された画像情報に従って走査し、直接印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が開発されている。
このような走査露光を可能にする平版印刷版を得るための方式として、本発明においては、インクジェット記録方式を用いて直接平版印刷版を作製する方法を採用している。
本発明においては、親水性とその耐久性に優れた架橋親水層をまず支持体上に形成し、その後、高親水性で且つ耐久性に優れた架橋親水層表面にインクジェット記録方式によってインクジェット組成物を吐出し、これを放射線に露光することにより、インクジェット組成物の部分が硬化して所望の画像(疎水性領域)を有する平版印刷版の作製方法を採用している。
本発明においてはインクジェット組成物を架橋親水層表面上に射出する場合、インクジェット組成物を40〜80℃、好ましくは25〜30℃に加熱して、インクの粘度を7〜30mPa・s、好ましくは7〜20mPa・sに下げた後に射出することが好ましい。特に、25℃におけるインク粘度が35〜500mP・sのインク組成物を用いると大きな効果を得ることが出来る。この方法を用いることにより、高い射出安定性を実現することができる。本発明におけるインクジェット組成物のような放射線硬化型組成物は、概して通常インクジェット記録用インクとして使用される水性インクより粘度が高いため、印字時の温度変動による粘度変動が大きい。インクジェット組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴射出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。従って、印字時のインクジェット組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、温度の制御幅は、設定温度の±5℃、好ましくは設定温度の±2℃、より好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
支持体上の架橋親水層表面上に射出された上記インクジェット組成物は、放射線を照射することによって硬化する。これは、インクジェット組成物に含まれる重合開始系中の重合開始剤が本発明の共増感剤の補助によって分解し、もって重合性化合物がラジカル重合して硬化するためである。
ここで、使用される放射線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。放射線の波長は、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜450nmであることが適当である。また、本発明の重合開始系は、低出力の放射線であっても十分な感度を有するものである。従って、放射線の出力は、例えば、10〜2000mJ/cm2、好ましくは、20〜1000mJ/cm2、より好ましくは、50〜800mJ/cm2であることが適当である。また、放射線は、露光面照度が、例えば、10〜2000mW/cm2、好ましくは、20〜1000mW/cm2で照射されることが適当である。
放射線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インクの射出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。放射線の照射は、インク着弾後、一定時間(例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは、0.01〜0.3秒、より好ましくは、0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、被記録媒体に着弾したインクが硬化前に滲むことを防止するこが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインクが浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留を抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。
このようにして、本発明においては、インクジェット組成物が放射線の照射により硬化し、疎水性の画像部領域を前記架橋親水層表面上に形成する。
本発明に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット記録装置が使用できる。即ち、本発明においては、市販のインクジェット記録装置を用いて被記録媒体へ記録することができる。
本発明のインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、放射線源を含む。
インク供給系は、例えば、インクジェット組成物を収納する元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインクジェット組成物供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、1〜100pl、好ましくは、8〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜1600×1600dpi、より好ましくは、720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
1.片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーの合成例
(合成例1:末端カルボン酸親水性ポリマーCA−1の合成)
メタクリル酸3−スルホプロピルエステルカリウム塩:147.8g、メルカプトプロピオン酸:3.82g、和光純薬社製重合開始剤VA−044:0.582gを水:151.5gに溶解し得られた水溶液を窒素雰囲気下、50℃に保たれた水:151.5g中へ2時間で滴下し、更に滴下後、50℃で2時間、60℃で2時間攪拌し、冷却後、アセトン:4.5Lへ徐々に滴下すると、白色の固体が析出する。
得られた固体をろ過し、乾燥し、ポリマーCA−1が145g得られた。乾燥後の酸価は0.086meq/gであった。
アクリルアミド:30g、3−メルカプトプロピオン酸:3.8gをエタノール:70gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合開始剤2,2−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN):300mgを加えて6時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄して、末端カルボン酸ポリマーCA−3を30.8g得た(酸価0.787meq/g、分子量1.29×103)。
アクリルアミド30g、3−メルカプトプロピオン酸3.8gをエタノール70gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合開始剤2,2−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)300mgを加えて6時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを30.8g得た(酸価0.787meq/g、分子量1.29×103)。得られたプレポリマー20gをジメチルスルホキシド62gに溶解し、グリシジルメタクリレート6.71g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)504mg、ハイドロキノン(重合禁止剤)62.4mgを加え、窒素雰囲気下140℃で7時間反応した。反応溶液をアセトンに加え、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートアクリルアミドマクロモノマー(A−1)を23.4g得た(重量平均分子量:1400)。1H−NMR(D2O)6.12、5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークと、酸価(0.057meq/g)の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。
メタクリル酸3−スルホプロピルエステルカリウム塩 147.8g、メルカプトプロピオン酸 3.82g、和光純薬社製重合開始剤VA−044 0.582gを水151.5gに溶解し得られた水溶液を窒素雰囲気下、50℃に保たれた水151.5g中へ2時間で滴下し、更に滴下後、50℃で2時間、60℃で2時間攪拌し、冷却後、アセトン4.5Lへ徐々に滴下すると、白色の固体が析出する。
得られた固体をろ過し、乾燥し、ポリマーAが145g得られた。乾燥後の酸価は0.086meq/gであった。
ポリマーAを80gをアセトン/水(容量で1/2)の溶媒240gに溶解し、αブロモメチルメタクリレート6.17g、トリエチルアミン3.48gを加え、室温で10時間攪拌した。攪拌後、アセトン4Lへ滴下すると、白色の固体が析出する。得られた固体をろ過し、乾燥し、ポリマー(S−1)が82g得られた。酸価は0.004meq/g、1H−NMR(D2O)で6.36、6.90ppm付近に二重結合由来のピークが確認できたことから末端に重合性基が導入できたことを確認した。
(1)支持体の作成
<アルミニウム板>
Al:99.5質量%以上、Fe:0.30質量%、Si:0.10質量%、Ti:0.02質量%、Cu:0.013質量%を含有し、残部は不可避不純物のJIS A1050アルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理としては、溶湯中の水素等の不要なガスを除去するために脱ガス処理し、更に、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊の表面を10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。ついで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中、500℃で60秒間、中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、厚さ0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。得られたアルミニウム板を、以下に示す表面処理に供した。
ついで、画像記録層と支持体との密着性を良好にし、かつ、非画像部に保水性を与えるため、粗面化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、硝酸1質量%および硝酸アルミニウム0.5質量%を含有する水溶液(液温45℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度20A/dm2、duty比1:1の交番波形で、アルミニウム板が陽極時の電気量が240C/dm2となるように電解して、電気化学的粗面化処理を施した。
更に、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で30秒間、エッチング処理を施し、その後、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和およびスマット除去処理を施した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、1.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で15秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2であった。その後、水洗して、支持体を得た。得られた支持体の中心線平均粗さRaは0.25μmであった。
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液をバー塗布した後、140℃、10分でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.4g/m2の架橋親水層を形成して平版印刷版用原版1を作製した。
・水 100g
・前記片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーCA−1 4.0g
・下記架橋剤(1) 3.0g
・下記架橋剤(2) 1.5g
・界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルナトリウム塩) 0.2g
平版印刷版原版1の作製に用いた架橋親水層塗布液(1)における片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーCA−1をアクリル酸/アクリルアミド(50/50)Mw=70,000に代えた以外は同様に架橋親水層を形成し、平版印刷版原版C−1を得た。
架橋親水層塗布液(2)
上記ポリマーA−1(前記合成例3で得られたもの) 4g
エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート(日本化薬社製 SR−9035)
2.7g
イルガキュア2959(チバガイギー(株)社製) 0.5g
水 100g
上記親水性層を有する基板をバットに入れ、上面をフォーラップ(リケンテクノス(株)社製)で封じ、窒素で置換し、400w高圧水銀灯(UVL−400P,理工科学産業(株)製)を使用し、10分照射した。得られた親水性硬化膜を有する基板をイオン交換水に浸漬、洗浄を行い、100℃、1分乾燥させ、支持体表面に架橋親水層を形成して平版印刷版原版5を得た。
以下にインクジェット用インクの調製方法を記載する。
(イエロー色材分散物1)
C.I.ピグメントイエロー12 10質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 85質量部
(マゼンタ色材分散物1)
C.I.ピグメントレッド57:1 15質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 80質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 20質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 75質量部
C.I.ピグメントブラック7 20質量部
高分子分散剤(Zeneca社製 Solsperseシリーズ) 5質量部
ステアリルアクリレート 75質量部
上記のように調製した各色材分散物1を用いて、下記に記載の方法に従い各色のインク
ジェット記録用インクを調製した。
イエロー色材分散物1 20質量部
ステアリルアクリレート 60質量部
2官能芳香族ウレタンアクリレートA(分子量1500) 10質量部
6官能芳香族ウレタンアクリレートB(分子量1000) 5質量部
増感色素A 1質量部
重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、CGI 784) 3質量部
共増感剤F 1質量部
マゼンタ色材分散物1 20質量部
ステアリルアクリレート 60質量部
2官能芳香族ウレタンアクリレートA(分子量1500) 10質量部
6官能芳香族ウレタンアクリレートB(分子量1000) 5質量部
増感色素B 1質量部
重合開始剤(LD−1) 3質量部
共増感剤A 1質量部
シアン色材分散物1 15質量部
ステアリンアクリレート 60質量部
2官能芳香族ウレタンアクリレートA(分子量1500) 10質量部
6官能芳香族ウレタンアクリレートB(分子量1000) 5質量部
増感色素C 1質量部
重合開始剤A 3質量部
共増感剤B 1質量部
ブラック色材分散物1 15質量部
ステアリンアクリレート 60質量部
2官能芳香族ウレタンアクリレートA(分子量1500) 10質量部
6官能芳香族ウレタンアクリレートB(分子量1000) 5質量部
増感色素D 1質量部
重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、CGI−7460)3質量部
共増感剤C 1質量部
以上のようにして調製した実施例のインクジェット組成物を用いて、画像印字を行った。
画像印字は、ピエゾ型インクジェットノズルを有する市販のインクジェット記録装置を用いて、前記平版印刷版実施例1〜6,C−1,C−2へ記録して、実施例1〜6,比較例1,2の平版印刷版を作製した。
インクジェット記録装置のインクジェット組成物供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前の供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インクジェット組成物供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱および加温を行った。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に70℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。着弾後はピーク波長395nmのUV−LED光を露光面照度100mW/cm2、に集光し、被記録媒体上にインク着弾した0.1秒後に照射が始まるよう露光系、主走査速度及び射出周波数を調整した。また、露光時間を可変とし、露光エネルギーを照射した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
前記のようにして得られた実施例1〜6、比較例1、2の平版印刷版の評価を以下のように行った。
(1)地汚れ
刷りだし500枚の時点で、印刷物上の非画像部におけるインキ付着量を目視評価した。インキが全く付着せず地汚れしていない状態を○、インキが少しでも付着している状態を×とした。
(2)インキ払い
上に記載した方法で印刷を行い、インキ払い枚数を計測した。親水性に優れる親水層ほど、インキ払い枚数が少ない。
(3)耐刷性
ハイデルKOR−D機で印刷後、非画像部が摩耗して地汚れが発生した時点を刷了とし、刷了枚数を耐刷性の指標として相対比較した(実施例1を100とした)。数値が大きいものほど高耐刷であり好ましい。
結果を表1に示す。
Claims (2)
- 支持体上に、片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと架橋剤とを熱又は光により硬化させて、架橋親水層を形成する工程と、形成された架橋親水層に、インクジェット組成物を射出し、熱又は光によりインクジェット組成物を硬化させて疎水性の画像を形成する工程とを有することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
- 前記架橋親水層の形成に複数の架橋剤を用い、複数の架橋剤のうち、少なくとも2種の架橋剤は互いに反応しうるものであり、且つ、複数の架橋剤のうち少なくとも1種は、前記片末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと共有結合及び/又はイオン結合を形成しうる官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の作製方法。
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