JP2005308995A - トナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性に優れ、かつ良好な粉砕性及び保存性を有するトナーを製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】2種以上のポリエステルを含有した原料の溶融混練工程、加熱処理工程、粉砕工程及び分級工程を含むトナーの製造方法であって、前記2種以上のポリエステルが少なくとも1種の非晶質ポリエステルを含有してなり、前記加熱処理工程を、下記式(a)及び(b)を満足する温度t(℃)及び時間h(hour)で行うトナーの製造方法。
Tg1 ≦t≦Tm−10 (a)
h≧100/(t−30)〔但し、t>30〕 (b)
(式中、Tg1 は加熱処理工程前の溶融混練物のガラス転移温度(℃)、Tmは2種以上のポリエステルの軟化点の中で最も低い軟化点(℃)である)
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの製造方法に関する。
近年、装置の高速化、小型化の観点から、より低温定着可能なトナーが要望されており、低軟化点非晶質樹脂と、結晶性樹脂(特許文献1参照)等との併用が検討されている。
一方、相互に非相溶な結晶性ポリエステルと非晶質ビニル樹脂とが化学的に結合した共重合体を結着樹脂として用いる場合に、熱処理工程の付与が結晶性の向上に有効であることが知られている(特許文献2、3参照)。
特開2001−222138号公報(請求項1) 特開昭64−35456号公報(請求項1) 特開平1−163757号公報(請求項1)
非晶質樹脂を結晶性樹脂と併用することは、低温定着性の向上には有効であるものの、非晶質樹脂のガラス転移温度に比べトナーのガラス転移温度が低下するため、粉砕性や保存性が不十分となりやすい。
トナーの製造における熱処理工程の付与については、特許文献3の比較例(比較例3)で示されるように、樹脂の単なる混合物では熱処理の効果が無く、グラフト重合を行う必要がある。即ち、樹脂同士を単に混合して低下したガラス転移温度を回復させる方法は知られていない。
本発明の課題は、低温定着性に優れ、かつ良好な粉砕性及び保存性を有するトナーを製造し得る方法を提供することにある。
本発明は、
2種以上のポリエステルを含有した原料の溶融混練工程、加熱処理工程、粉砕工程及び分級工程を含むトナーの製造方法であって、前記2種以上のポリエステルが少なくとも1種の非晶質ポリエステルを含有してなり、前記加熱処理工程を、下記式(a)及び(b)を満足する温度t(℃)及び時間h(hour)で行うトナーの製造方法に関する。
Tg1 ≦t≦Tm−10 (a)
h≧100/(t−30)〔但し、t>30〕 (b)
(式中、Tg1 は加熱処理工程前の溶融混練物のガラス転移温度(℃)、Tmは2種以上のポリエステルの軟化点の中で最も低い軟化点(℃)である)
本発明により、低温定着性に優れ、かつ良好な粉砕性及び保存性を有するトナーを製造することができる。
通常、樹脂は、いずれも基本的には結晶性部分と非晶質部分とを有しているが、そのうち、結晶性の高いものを結晶性樹脂と称している。一方、樹脂のガラス転移温度とは非晶質部分に起因する物性であるため、結晶化度100%の結晶性樹脂は非晶質部分に起因するガラス転移温度は有していないが、結晶化度が低下するとガラス転移温度が現れる。
一方、ガラス転移温度は、全体として結晶性が高い樹脂ほど高くなり、結晶性が低い樹脂ほど低くなることが知られている。結晶性樹脂と非晶質樹脂とを混合する際には、樹脂間の相溶性がガラス転移温度に大きく影響し、相溶性が高いほど可塑化効果により樹脂全体のガラス転移温度は低くなり、場合によっては、個々の樹脂のガラス転移温度よりも低下する傾向がある。特に、組み合わせる樹脂が、非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルのように、同種類の樹脂である場合はその傾向が顕著であり、粉砕性及び保存性が大幅に低下してしまう。
一方、トナーの製造工程に、特定の温度で加熱処理する工程を付加することにより、結晶性樹脂の結晶化度を向上させることは公知であるが、熱処理工程により、非晶質樹脂の(又は非晶質部分に起因する)ガラス転移温度が高くなることは知られていない。
そこで、本発明者らは、低温定着性に有効なポリエステルを結着樹脂として用いてトナーを製造するにあたり、樹脂の混合により低下したガラス転移温度を元に戻すことのできる方法について検討した結果、後述する特定の温度、時間で加熱処理を行う工程を加えることにより、個々の樹脂が安定化し、可塑化効果が減少して、それぞれの樹脂の特性を十分に発揮させることができることを見出した。さらに、本発明によれば、低温定着性の向上には有効であるものの、粉砕性及び保存性との両立が困難な結晶性ポリエステルを非晶質樹脂と組み合わせた場合であっても、非晶質ポリエステル同士の場合以上に顕著な効果が奏されるという驚くべき知見が得られた。
以下、本発明のトナーの製造方法における各工程を順に説明する。
本発明において、溶融混練に供される原料には、少なくとも、2種以上のポリエステルが結着樹脂として用いられ、かかるポリエステルは少なくとも1種の非晶質ポリエステルを含むものである。
なお、本発明において、「非晶質ポリエステル」とは、軟化点と吸熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が1.3より大きく4以下、好ましくは1.5〜3であることをいい、また「結晶性ポリエステル」とは、軟化点と吸熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.6〜1.3、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1、さらに好ましくは0.98〜1.05であることをいう。軟化点と吸熱の最大ピーク温度の比は、原料モノマーの種類とその比率、分子量、製造条件(例えば、冷却速度)の等により調整される。
非晶質ポリエステルは、原料モノマーとしてアルコール成分とカルボン酸成分とを用い、それらを縮重合させて得られる。
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の式(I):
Figure 2005308995
(式中、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyは正の数を示し、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5.0である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の等の脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
前記アルコール成分の中では、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール等の樹脂の非晶質化を促進するモノマーが好ましく、さらに強度及び帯電性の観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量が、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましい。
また、カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。なお、本発明においてカルボン化合物とは、ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指す。
さらに、アルコール成分及びカルボン酸成分には、分子量調整等の観点から、1価のアルコール及び1価のカルボン酸化合物が適宜含有されていてもよい。
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で行うことができる。
非晶質ポリエステルのガラス転移温度は、粉砕性及び保存性の観点から、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。
非晶質ポリエステルの軟化点は、70〜170℃が好ましく、80〜160℃がより好ましく、100〜150℃がさらに好ましく、酸価は、1〜50mgKOH/gが好ましく、10〜30mgKOH/gがより好ましい。
非晶質ポリエステルは、低温定着性と耐オフセット性の両立の観点から、軟化点が好ましくは10℃以上、より好ましくは20〜60℃異なる2種類の非晶質ポリエステルからなることが好ましい。低軟化点ポリエステルの軟化点は、低温定着性の観点から、好ましくは80〜120℃、より好ましくは85〜110℃であり、高軟化点ポリエステルの軟化点は、耐オフセット性の観点から、好ましくは120℃〜160℃、より好ましくは130〜155℃である。高軟化点ポリエステルの低軟化点ポリエステルに対する重量比(高軟化点ポリエステル/低軟化点ポリエステル)は、20/80〜80/20が好ましい。
さらに、本発明で用いられるポリエステルは、前記非晶質ポリエステルに加えて、少なくとも1種の結晶性ポリエステルを含むものであることが好ましい。本発明では、低温定着性の向上には極めて有効であるものの、粉砕性及び保存性との両立が困難な結晶性ポリエステルを組み合わせる場合であっても、非晶質ポリエステルのガラス転移温度を回復させることができる。
結晶性ポリエステルも、非晶質ポリエステルと同様にアルコール成分とカルボン酸成分との縮重合により得られるが、アルコール成分には、炭素数2〜8の脂肪族ジオール等の樹脂の結晶性を促進させるモノマーが含有されていることが好ましい。
炭素数2〜8の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等が挙げられ、特にα,ω−直鎖アルカンジオールが好ましい。
炭素数2〜8の脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、70モル%以上が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。特に、その中の1種の脂肪族ジオールが、アルコール成分中の70モル%以上、好ましくは80〜95モル%を占めているのが望ましい。なかでも、1,4−ブタンジオールが、アルコール成分中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは80〜100モル%含有されているのが望ましい。
また、結晶性ポリエステルのカルボン酸成分には、結晶化度の観点から、脂肪族ジカルボン酸化合物が含有されていることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。
なお、結晶性ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、結晶性ポリエステルの高分子量化を図る際には、カルボン酸成分よりもアルコール成分が多い方が好ましく、さらに減圧反応時、アルコール成分の留去によりポリエステルの分子量を容易に調整できる観点からは、0.9以上1未満が好ましく、0.95以上1未満がより好ましい。
結晶性ポリエステルを製造するにあたり、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させる温度は120〜230℃が好ましい。アルコール成分とカルボン酸成分の縮重合は非晶質ポリエステルと同様に行うことができるが、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。
さらに高分子量化した結晶性ポリエステルを得るためには、前記のようにカルボン酸成分とアルコール成分のモル比を調整したり、反応温度を上げる、触媒量を増やす、減圧下、長時間脱水反応を行う等の反応条件を選択すればよい。なお、高い攪拌所要動力下では、高分子量化した高粘度の結晶性ポリエステルを製造することもできるが、製造設備を特に選択せずに製造する際には、原料モノマーを非反応性低粘度樹脂や溶媒とともに反応させる方法も有効な手段である。
結晶性ポリエステルの軟化点は、低温定着性の観点から、70〜140℃が好ましく、105〜130℃がより好ましい。
非晶質ポリエステルの結晶性ポリエステルに対する重量比(非晶質ポリエステル/結晶性ポリエステル)は、低温定着性、粉砕性及び保存性の観点から、95/5〜50/50が好ましく、80/20〜60/40がより好ましい。
本発明では、結着樹脂として、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリエステル以外の結着樹脂が用いられていてもよいが、ポリエステルの総含有量は、結着樹脂総量中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
さらに、本発明のトナーの原料には、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が、適宜含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらのなかでは、離型性及び安定性の観点から、脂肪族炭化水素系ワックスが好ましい。
離型剤の融点は、耐オフセット性及び耐久性の観点から、60〜150℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル酸のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜2重量部がより好ましい。
ポリエステル等を含有した原料は、ヘンシェルミキサー等を用いて混合した後、溶融混練工程に供することが好ましい。
原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機の公知の混練機を用いて行うことができ、溶融混練の際の温度は、各原料が十分に混ざり合える程度の温度であれば特に限定されないが、好ましくは(Ta−30)℃以上(Ta+40)℃以下、より好ましくは(Ta−10)℃以上(Ta+30)℃以下である。ここで、Taとは2種以上の各結着樹脂の軟化点を荷重平均して求めた重量平均軟化点(℃)である。
次いで、通常の方法では、得られた溶融混練物を粉砕可能な硬度に達するまで冷却し、粉砕工程に供するが、本発明では、溶融混練工程後、粉砕工程の前に、加熱処理工程を行う。
本発明において、加熱処理工程は、トナー添加剤の分散維持と樹脂分子の再配列性の観点から、下記式(a)及び(b)を満足する温度t(℃)及び時間h(hour)で行う。
Tg1 ≦t≦Tm−10 (a)
h≧100/(t−30)〔但し、t>30〕 (b)
(式中、Tg1 は加熱処理工程前の溶融混練物のガラス転移温度(℃)、Tmは2種以上のポリエステルの軟化点の中で最も低い軟化点(℃)である)
式(a)は、
好ましくは、Tg1 +10≦t≦Tm−20であり、
より好ましくは、Tg1 +15≦t≦Tm−30である。
また、式(b)は、
好ましくは、h≧150/(t−30)〔但し、t>30〕であり、
より好ましくは、h≧200/(t−30)〔但し、t>30〕である。
なお、h(hour)は、トナー添加剤の分散維持の観点から、1000以下が好ましく、700以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。
本発明では、加熱処理工程を、前記温度で、かつ前記時間行うことにより、溶融混練物中の樹脂の再配列を促し、一旦低下したガラス転移温度の回復により保存性が向上するものと推定される。さらに、可塑部分、即ち低ガラス転移温度の部分は、粉砕の際、衝撃を吸収しやすく、粉砕効率の低下の原因となるが、本発明では、粉砕工程前の加熱処理工程において可塑化が抑制されるため、粉砕性も向上させることができる。
加熱処理工程には、オーブン等を用いることができる。例えば、オーブンを用いる場合、溶融混練物をオーブン内で、一定温度に保持することにより、加熱処理工程を行うことができる。
加熱処理工程を行う態様は特に限定されないが、例えば、
態様1:溶融混練工程後、得られた溶融混練物を冷却する際に、溶融混練物を前記加熱処理条件下に保持し、次いで粉砕可能な硬度に達するまで冷却し、粉砕工程に供する態様
態様2:溶融混練工程後、得られた溶融混練物を粉砕可能な硬度まで一旦冷却した後、冷却した溶融混練物を前記加熱処理工程に供し、次いで溶融混練物を再び冷却し、粉砕工程に供する態様
がある。本発明ではいずれの態様で加熱処理工程を行ってもよいが、トナー中の添加剤の分散性の観点から、態様2が好ましい。
本発明において、加熱処理工程後の加熱処理物のガラス転移温度は、保存性、粉砕性及び低温定着性の観点から、50〜75℃が好ましく、55〜70℃がより好ましい。さらに、加熱処理工程後の加熱処理物のガラス転移温度は、トナーの保存性の観点から、加熱処理工程前の溶融混練物のガラス転移温度よりも5℃以上高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことがさらに好ましい。
加熱処理工程後の加熱処理物は、粉砕可能な硬度まで冷却した後、粉砕工程及び分級工程に供する。
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、加熱処理工程後の加熱処理物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ジェットミル、衝突板式ミル、回転型機械ミル等が挙げられる。
分級工程に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよい。
以上の工程によりトナーが得られるが、さらに得られたトナー表面に疎水性シリカ等の無機微粒子や樹脂微粒子を外添してもよい。トナーの重量平均粒径(D4 )は3〜15μmが好ましく、4〜8μmがより好ましい。
本発明により得られたトナーは、一成分現像用トナー及びキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーのいずれにも用いることができるが、耐熱性がより要求される一成分現像用トナーとしてより好適に用いられる。
〔軟化点〕
高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
〔吸熱の最大ピーク温度、ガラス転移温度及び融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを、再度、速度10℃/分で昇温し、吸熱の最大ピーク温度及び該最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度を測定する。本発明では、非晶質樹脂を主成分として含むサンプルを用いる場合、後者の温度をガラス転移温度と呼び、また離型剤をサンプルとして用いる場合の前者の温度を融点と呼ぶ。
〔酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。
非晶質ポリエステルの製造例1
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びオクチル酸錫6gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに210℃にて無水トリメリット酸を添加し、所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂Aを得た。
非晶質ポリエステルの製造例2
表1に示す原料モノマー及びオクチル酸錫6gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに210℃で、所望の軟化点に達するまで反応させて、樹脂B、Cを得た。
Figure 2005308995
結晶性ポリエステルの製造例1
表2に示す原料モノマー及びハイドロキノン2gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。さらに8.3kPaにて1時間反応させて、樹脂aを得た。
結晶性ポリエステルの製造例2
表2に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、200℃でテレフタル酸の粒が観測されなくなるまで反応させた後、さらに8.3kPaにて3時間反応させて、樹脂bを得た。
Figure 2005308995
実施例1、3〜9及び比較例1〜4
表3に示す結着樹脂及び離型剤、カーボンブラック「Regal 330」(キャボット社製)4重量部、及び荷電制御剤「T−77」(保土谷化学工業社製)0.5重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30−30)を用いて溶融混練した。バレル内の加熱温度は100℃、スクリュー回転速度は150回転/分、混合物の供給速度は10kg/時、平均滞留時間は約18秒であった。
得られた溶融混練物を冷却ロールで圧延し、20℃以下に冷却した後、オーブン内にて、表3に示す温度、時間で加熱処理した。
加熱処理後の加熱処理物を機械式粉砕し、分級して、重量平均粒径(D4 )が7.5μmの粉体を得た。
得られた粉体100重量部に、外添剤として疎水性シリカ「R−972」(日本アエロジル社製)1重量部及び疎水性シリカ「NAX−50」(日本アエロジル社製)1重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合してトナーを得た。
実施例2
カーボンブラックの代わりに、着色剤として「スーパーマジェンタR」(大日本インキ社製、ピグメント・レッド122)6重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
複写機「AR−505」(シャープ(株)製)にトナーを実装し、トナー付着量が0.5mg/cm2 の未定着画像(2cm×12cm)を得た。
得られた未定着画像を、複写機「AR−505」(シャープ(株)製)の定着機をオフラインで定着が可能なように改造した定着機(定着速度:100mm/sec)を用いて、90℃から240℃へと5℃づつ順次上昇させながら定着試験を行った。定着紙には、「CopyBond SF−70NA」(シャープ社製、75g/m2 )を使用した。
得られた定着画像を、500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に70%を超える定着ロールの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準により低温定着性を評価した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
◎: 最低定着温度が140℃未満である。
○: 最低定着温度が140℃以上160℃未満である。
×: 最低定着温度が160℃以上である。
試験例2〔粉砕性〕
ロートプレックスに3mmメッシュを装着して砕いたトナーを、I−2型粉砕機(日本ニューマチック社製)で0.5Paの粉砕圧で粉砕し、以下の評価基準にしたがって、粉砕性を評価した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
◎: 粉砕効率が3kg/hr以上である。
○: 粉砕効率が2kg/hr以上3kg/hr未満である。
△: 粉砕効率が1kg/hr以上2kg/hr未満である。
×: 粉砕効率が1kg/hr以下である。
試験例3〔保存性〕
トナー4gを温度50℃、相対湿度60%の環境下で148時間放置した後、トナーの状態を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、保存性を評価した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
◎: 凝集が全く認められない。
○: 凝集がほとんど認められない。
△: 凝集がわずかに認められる。
×: 一塊になる。
Figure 2005308995
以上の結果から、所定の加熱処理工程を経て製造した実施例のトナーは、定着性、粉砕性及び保存性のいずれにも優れていることが分かる。特に実施例1〜7のトナーから、非晶質ポリエステルを結晶性ポリエステルと併用する場合において、加熱処理工程前後でのガラス転移温度の差が大きく、顕著な効果が奏されていることが明らかである。
一方、比較例1、2では、結晶性ポリエステルを併用しているため定着性は良好であるものの、粉砕性及び保存性が不十分となってる。
また、実施例8と比較例3や、実施例9と比較例4の対比から、非常に軟化点の低い樹脂や、低融点のワックスを使用していても、所定の加熱処理を行うことにより、粉砕性、保存性を向上させることができることが分かる。
本発明により得られるトナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (5)

  1. 2種以上のポリエステルを含有した原料の溶融混練工程、加熱処理工程、粉砕工程及び分級工程を含むトナーの製造方法であって、前記2種以上のポリエステルが少なくとも1種の非晶質ポリエステルを含有してなり、前記加熱処理工程を、下記式(a)及び(b)を満足する温度t(℃)及び時間h(hour)で行うトナーの製造方法。
    Tg1 ≦t≦Tm−10 (a)
    h≧100/(t−30)〔但し、t>30〕 (b)
    (式中、Tg1 は加熱処理工程前の溶融混練物のガラス転移温度(℃)、Tmは2種以上のポリエステルの軟化点の中で最も低い軟化点(℃)である)
  2. 2種以上のポリエステルがさらに、少なくとも1種の結晶性ポリエステルを含有してなる請求項1記載の製造方法。
  3. 非晶質ポリエステルのガラス転移温度が40〜80℃であり、結晶性ポリエステルの軟化点が70〜140℃である請求項2記載の製造方法。
  4. 非晶質ポリエステル/結晶性ポリエステルで表される重量比が95/5〜50/50である請求項2又は3記載の製造方法。
  5. 加熱処理工程後の加熱処理物のガラス転移温度が、加熱処理工程前の溶融混練物のガラス転移温度よりも5℃以上高い請求項1〜4いずれか記載の製造方法。
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