JP4412632B2 - 電子写真用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像の現像に用いられる電子写真用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真の大きな課題の一つである低温定着性の向上を目的として、結晶性ポリエステルを結着樹脂としたトナーが提案されている。しかしながら、結晶性ポリエステルを含有したトナーは保存性に欠ける傾向がある。
【0003】
トナーの製造過程において、結晶性ポリエステルと内添剤とを予め混練した後に非晶質樹脂を添加し、さらに溶融混練を行う方法が報告されているが(特開平11−15201号公報)、かかる方法で得られるトナーでは、帯電能が低く、十分な保存性が得られない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低温定着性を損なうことなく、優れた保存性及び帯電性を有する電子写真用トナーの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも、結晶性ポリエステル、非晶質樹脂、ワックス、荷電制御剤及び着色剤を溶融混練する工程を有する電子写真用トナーの製造方法であって、前記溶融混練工程に先立って、少なくとも
(a)結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の一部
〔但し、結晶性ポリエステル/非晶質樹脂を重量比で0以上x/y未満(x/yは、原料としての全結晶性ポリエステル/全非晶質樹脂の重量比を示す)となる量をマスターバッチ工程に供する〕、及び
(b)ワックス、荷電制御剤及び着色剤からなる群より選ばれた少なくとも1種を、各原料としての全量の50重量%以上、
を溶融混練するマスターバッチ工程を有する、電子写真用トナーの製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明においては、少なくとも、結晶性ポリエステル、非晶質樹脂、ワックス、荷電制御剤及び着色剤を原料としてトナーを製造する際に、これらの原料の一部を予め溶融混練するマスターバッチ工程を有する点に特徴を有する。一般に、結晶性ポリエステルを添加したトナーの保存性の悪化や帯電性の低下は結晶性ポリエステル自体の熱特性、帯電性によるものと考えられているが、本発明では、予め一部の特定原料を溶融混練するマスターバッチ工程を設けることにより、結晶性ポリエステルの優れた低温定着性を損なうことなく、かつトナーの保存性及び帯電性を向上させることができる。
【0007】
本発明により得られるトナーは、少なくとも結晶性ポリエステルと非晶質樹脂とを結着樹脂とする。結晶性ポリエステルは、炭素数が2〜6、好ましくは4〜6の脂肪族ジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と炭素数が2〜8、好ましくは4〜6、より好ましくは4の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上含有したカルボン酸成分を縮重合させて得られた樹脂が好ましい。
【0008】
炭素数2〜6の脂肪族ジオールとしては、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、特にα,ω−直鎖アルキルジオールが好ましい。
【0009】
炭素数2〜6の脂肪族ジオールは、アルコール成分中に、60モル%以上、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%含有されているのが望ましく、特にその中の1種の脂肪族ジオールが、アルコール成分中の70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85〜95モル%を占めているのが望ましい。
【0010】
アルコール成分には、炭素数2〜6の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分が含有されていてもよく、該多価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物等が挙げられる。
【0011】
炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中ではフマル酸が好ましい。なお、脂肪族ジカルボン化合物とは、前記の如く、脂肪族ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜3)エステルを指すが、これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0012】
炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物は、カルボン酸成分中に、60モル%以上、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%含有されているのが望ましく、特にその中の1種の脂肪族ジカルボン酸化合物が、カルボン酸成分中の80モル%以上、好ましくは90〜100モル%以上を占めているのが望ましい。
【0013】
カルボン酸成分には、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸成分が含有されていてもよく、該多価カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0014】
アルコール成分とカルボン酸成分は、不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒、重合禁止剤等を用いて、120〜230℃の温度で反応させること等により縮重合させることができる。具体的には、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。
【0015】
なお、本発明において、「結晶性」とは、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が0.9以上1.1未満、好ましくは0.98〜1.05であることをいい、また「非晶質」とは、軟化点と融解熱の最大ピーク温度の比(軟化点/ピーク温度)が1.1〜4.0、好ましくは1.5〜3.0であることをいう。
【0016】
結晶性ポリエステルの軟化点は、好ましくは85〜150℃、より好ましくは100〜140℃、特に好ましくは110〜130℃であり、融解熱の最大ピーク温度は、好ましくは77〜150℃、より好ましくは90〜140℃、特に好ましくは110〜130℃である。
【0017】
なお、結晶性ポリエステルが2種以上の樹脂からなる場合は、その少なくとも1種、好ましくはそのいずれもが以上に説明した結晶性ポリエステルであるのが望ましい。
【0018】
非晶質樹脂としては、非晶質ポリエステル、ポリエステルポリアミド、スチレンアクリル樹脂等のいずれであってもよいが、本発明では、定着性や結晶性ポリエステルとの相溶性の観点から、非晶質ポリエステルが好ましい。
【0019】
非晶質ポリエステルは、原料モノマーとして、多価アルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の多価カルボン酸成分とを縮重合させて得られる。非晶質ポリエステルの原料モノマーとしては、結晶性ポリエステルの原料モノマーとして例示した多価アルコール成分や多価カルボン酸成分が挙げられる。
【0020】
非晶質ポリエステルも、結晶性ポリエステルと同様にして製造することができる。
【0021】
非晶質樹脂の軟化点は、好ましくは70〜180℃、より好ましくは100〜160℃、融解熱の最大ピーク温度は、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜75℃、ガラス転移点は、好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜75℃、クロロホルム不溶分率は、好ましくは0〜50重量%である。なお、ガラス転移点は非晶質樹脂に特有の物性であり、融解熱の最大ピーク温度とは区別される。
【0022】
なお、非晶質樹脂が2種以上の樹脂からなる場合は、その少なくとも1種、好ましくはそのいずれもが以上に説明した物性を有する非晶質樹脂であるのが望ましい。
【0023】
結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の重量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)は、保存性及び低温定着性の観点から、1/99〜40/60が好ましく、10/90〜35/65がより好ましい。
【0024】
ワックスとしては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、アルコール系ワックス、エステル系ワックス等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を併用してもよく、またこれらのなかでは、結着樹脂との相溶性の観点から、カルナウバワックス及びポリエチレンワックスが好ましい。
【0025】
ワックスの融点は、結晶性ポリエステルの軟化点(ただし、2種以上の結晶性ポリエステルを使用する場合は、最も低い軟化点を有する結晶性ポリエステルの軟化点)よりも10℃以上、好ましくは10〜50℃低いことが望ましく、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましい。
【0026】
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等の正帯電性荷電制御剤及び含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ベンジル誘導体のホウ素錯体等の負帯電性荷電制御剤が挙げられる。荷電制御剤の使用量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
【0027】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナー、フルカラートナーのいずれにも使用することができる。着色剤の使用量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0028】
さらに、本発明では、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を、適宜使用してもよい。
【0029】
本発明では、マスターバッチ工程において、少なくとも
(a)結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の一部
〔但し、結晶性ポリエステル/非晶質樹脂を重量比で0以上x/y未満、好ましくは0〜x/2y、より好ましくは0〜x/5y、特に好ましくは0(x/yは、原料としての全結晶性ポリエステル/全非晶質樹脂の重量比を示す)となる量をマスターバッチ工程に供する〕、及び
(b)ワックス、荷電制御剤及び着色剤からなる群より選ばれた少なくとも1種を、各原料としての全量の50重量%以上、
を溶融混練する。
【0030】
少なくとも(a)、(b)の原料をマスターバッチ工程で予め溶融混練することにより、結晶性ポリエステルとワックス、荷電制御剤、着色剤等の添加剤とが必要以上に相溶化せず、結晶性ポリエステルの優れた物性を残すことができ、かつ添加剤が良好にトナー中に分散して、トナーの保存性及び帯電性を向上させることができる。
【0031】
マスターバッチ工程で使用する非晶質樹脂は、非晶質樹脂全量の1〜60重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。また、結晶性ポリエステルは、結晶性ポリエステル全量の50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、0重量%が特に好ましい。
【0032】
マスターバッチ工程では、ワックス、荷電制御剤及び着色剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を、各原料としての全量の50重量%以上、好ましくは80重量%、特に好ましくは100重量%使用する。なかでも、ワックス及び/又は荷電制御剤を所定量でマスターバッチ工程に供することが好ましいが、少なくとも1種を所定量使用していれば、他の添加剤の使用量は特に限定されない。しかし、添加剤の結晶性ポリエステルとの相溶化を防ぐため、できるだけ多量の添加剤がマスターバッチ工程に供されるのが好ましく、添加剤の全量がマスターバッチ工程に供されるのが特に好ましい。
【0033】
マスターバッチ工程における溶融混練温度は、混練効率を上げるため、非晶質樹脂の軟化点より0〜100℃低い温度が好ましく、30〜70℃低い温度がより好ましい。
【0034】
マスターバッチ工程で得られた混練物は、残りの原料とともに溶融混練工程に供する。なお、溶融混練工程では、残りの原料を分割添加して、複数回に分けて溶融混練を行ってもよい。
【0035】
溶融混練工程では、過混練を抑制するため、マスターバッチ工程よりも高い温度、より好ましくは5℃以上、特に好ましくは10〜50℃高い温度で溶融混練を行うことが好ましい。
【0036】
原料の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、連続式二本ロール型混練機等を用いて行うことができる。なお、マスターバッチ工程及び溶融混練工程に供する原料は、ヘンシェルミキサー等で予め攪拌混合するのが好ましく、マスターバッチ工程で得られた混練物は、そのまま溶融混練工程に供してもよいが、冷却、粉砕した後に、溶融混練工程に供する原料と攪拌混合して溶融混練するのが好ましい。
【0037】
溶融混練工程により得られた混練物は、常法により、冷却、粉砕、分級して、トナーとすることができる。さらに、トナーの表面には、必要に応じて流動性向上剤等を添加してもよい。このようにして得られるトナーの体積平均粒子径は、好ましくは3〜15μmである。
【0038】
本発明のトナーの軟化点は、保存性及び定着性の観点から、90〜160℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。
【0039】
本発明により得られる電子写真用トナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として、また磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、もしくはキャリアと混合して二成分系現像剤として使用される。
【0040】
【実施例】
〔軟化点〕
高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
【0041】
〔融解熱の最大ピーク温度及びガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で測定し、融解熱の最大ピーク温度を求める。また、ガラス転移点は、前記測定で最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分から、ピークの頂点まで、最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0042】
結晶性ポリエステルの製造例
表1に示す原料モノマー及びハイドロキノン2gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、160℃で5時間かけて反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させ、さらに8.3kPaにて1時間反応させた。得られた樹脂を樹脂aとする。
【0043】
【表1】
【0044】
非晶質樹脂の製造例1
表2に示す原料モノマー及び酸化ジブチル錫4gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、220℃で8時間かけて反応させた後、さらに8.3kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させた。得られた樹脂を樹脂Aとする。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例1
樹脂a20重量部、樹脂A80重量部、ワックス「カルナバワックス No.1」(加藤洋行社製、融点:83℃)1重量部、荷電制御剤「T−77」(保土谷化学工業社製、含金属アゾ染料)1重量部及び着色剤「MOGUL L」(キャボット社製、カーボンブラック)4重量部を使用し、同方向回転二軸押出機(混練部分の全長:1560mm、スクリュー径:42mm、バレル内径:43mm)を用いて混練条件Aで溶融混練した後、冷却、粗粉砕した。溶融混練の際の押出機への原料供給速度は10kg/時、平均滞留時間は約18秒であった。
その後、ジェットミルにより粉砕し分級して、体積平均粒子径が7.5μmの粉体を得た。得られた粉体100重量部に、外添剤として「アエロジル R−972」(日本アエロジル(株)製)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
【0047】
実施例2
荷電制御剤として「T−77」の代わりに「LR−147」(日本カーリット社製、ベンジル酸誘導体のホウ素錯体)1重量部を使用し、着色剤として「MOGUL L」の代わりに「ECB−301」(大日精化社製、青色顔料)4重量を使用した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0048】
比較例1、2
混練条件を、比較例1では混練条件Bに、比較例2では混練条件Cに変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0049】
比較例3
樹脂aを使用せず、樹脂Aの使用量を100重量部に変更し、混練条件Aにおいて、マスターバッチ工程で樹脂Aを30重量部、溶融混練工程で樹脂Aを70重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0050】
比較例4
樹脂aを使用せず、樹脂Aの使用量を100重量部に変更し、混練条件を混練条件Bに変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0051】
〔混練条件A〕
(1)マスターバッチ工程
樹脂A30重量部、ワックス1重量部、荷電制御剤1重量部及び着色剤4重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、ロール回転速度200回転/分、ロール内の加熱温度100℃で溶融混練を行い、冷却、粗砕する。
(2)溶融混練工程
得られた粗砕物と、樹脂A50重量部及び樹脂a20重量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、ロール回転速度200回転/分、ロール内の加熱温度120℃で溶融混練を行う。
【0052】
〔混練条件B〕
全原料をヘンシェルミキサーにて混合し、ロール回転速度200回転/分、ロール内の加熱温度100℃で溶融混練を行う。
【0053】
〔混練条件C〕
(1)マスターバッチ工程
樹脂a20重量部、ワックス1重量部、荷電制御剤1重量部及び着色剤4重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、ロール回転速度200回転/分、ロール内の加熱温度100℃で溶融混練を行い、冷却、粗砕する。
(2)溶融混練工程
得られた粗砕物と樹脂A80重量部とをヘンシェルミキサーにて混合し、ロール回転速度200回転/分、ロール内の加熱温度120℃で溶融混練を行う。
【0054】
試験例1〔帯電性〕
トナー4重量部と、シリコンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製、平均粒子径:90μm)96重量部とを10分間ターブラーミキサーにて混合して得られた現像剤の帯電量を、「q/m Meter MODEL 210HS」(TREK社製)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0055】
試験例2〔低温定着性〕
トナー4重量部と、シリコンコートフェライトキャリア(関東電化工業社製、平均粒子径:90μm)96重量部とを10分間ターブラーミキサーにて混合し、現像剤を得た。次いで、複写機「AR−505」(シャープ社製)を改造した装置に実装し、定着ロールの温度を90℃から順次上昇させながら、普通紙「CopyBond SF−70NA」(シャープ社製、75g/m2 )に画像出しを行った。
【0056】
各定着温度で得られた画像を、500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(マクベス社製)を用いて測定した。両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に70%を超える定着ローラーの温度を最低定着温度とし、以下の評価基準により、低温定着性を評価した。結果を表3に示す。
【0057】
〔評価基準〕
○:最低定着温度が140℃未満
×:最低定着温度が140℃以上
【0058】
試験例3〔保存性〕
トナー4gを、20cc容のポリビン中、温度40℃、湿度60%の環境下で72時間放置し、凝集の状態を目視により判断して、以下の評価基準で保存安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0059】
〔評価基準〕
○:凝集が全く認められない。
×:一部凝集が認められる。
××:全体的に凝集している。
【0060】
【表3】
【0061】
以上の結果より、実施例1、2では、帯電性、低温定着性及び保存性のいずれにも優れているのに対し、全原料を一度に溶融混練した比較例1、非晶質樹脂をマスターバッチ工程に用いていない比較例2では、低温定着性は良好であるものの、保存性及び帯電性に欠けている。また、結晶性ポリエステルを使用していない比較例3、4では、混練方法にかかわらず、低温定着性が不十分である。
【0062】
【発明の効果】
本発明により、低温定着性を損なうことなく、優れた保存性を有する電子写真用トナーの製造方法を提供することができる。
Claims (3)
- 少なくとも、結晶性ポリエステル、非晶質樹脂、ワックス、荷電制御剤及び着色剤を溶融混練する工程を有する電子写真用トナーの製造方法であって、前記結晶性ポリエステルと前記非晶質樹脂の重量比(結晶性ポリエステル/非晶質樹脂)が1/99〜40/60であり、前記溶融混練工程に先立って、少なくとも
(a)結晶性ポリエステルと非晶質樹脂の一部〔但し、結晶性ポリエステル/非晶質樹脂を重量比で0〜x/5y(x/yは、原料としての全結晶性ポリエステル/全非晶質樹脂の重量比を示す)となる量をマスターバッチ工程に供する〕、及び
(b)ワックスの全量の80重量%以上、荷電制御剤の全量の80重量%以上及び着色剤の全量の80重量%以上、
を溶融混練するマスターバッチ工程を有する、電子写真用トナーの製造方法。 - 非晶質樹脂の全量の1〜60重量%をマスターバッチ工程に供する請求項1記載の製造方法。
- 溶融混練工程を、マスターバッチ工程よりも高い温度で行なう請求項1又は2記載の製造方法。
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