JP2005266789A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】 高速現像系においても現像耐久性、低温定着性、耐高温オフセット性に優れ、かつ、現像担持体へのトナーの付着(融着)、感光体へのトナー融着等の問題を解決し、さらには飛び散りやゴーストを発生しないトナーを提供することにある。
【解決手段】 少なくともスチレン系樹脂及び着色剤を含有するトナーにおいて、
オルトジクロロベンゼン可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析における粘度検出器により得られる絶対分子量Mwが1.0×10〜1×10であり、
該絶対分子量の1万以下の割合が40〜90質量%で、かつ、100万以上の割合が0〜10質量%未満であり、
粘度検出器から得られる固有粘度が0.10乃至0.80ml/gであることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真法、静電印刷法、磁気記録法、及びトナージェット法の如き画像形成方法に用いられるトナーに関する。
従来、電子写真法においては、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、加熱加圧或いは溶剤蒸気により定着し、トナー画像を得る。
上述の最終工程であるトナー画像を紙の如きシートに定着する方法として、現在最も一般的な定着方法は、加熱ローラーによる圧着加熱方式である。この方法によれば、加熱ローラーの表面と被定着シート上のトナー画像とが加圧下で接触するため、トナー画像を被定着シート上に融着する際の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行うことができる。
しかしながら、加熱ローラー表面とトナー画像とが溶融状態で加圧下で接触する為に、トナー像の一部が定着ローラー表面に付着・転移し、次の被定着シートにこれが再転移してオフセット現象が生じ、被定着シートを汚す、高温オフセットという問題がある。
また、装置の高速化や省エネ、ウエイト時間の短縮に対応する為に、更には定着画像の折り曲げ、粘着テープの画像からの剥がし等の厳しい定着画像への要求が高まってきている。更なる低温定着性の向上が望まれているが、低温定着性を改良しようとするとトナーの機械的強度が弱くなりやすく、現像耐久性が低下し易く、現像担持体へのトナーの付着(融着)、感光体へのトナー融着等の問題を起こし易くなる問題を抱えている。
従って、低温定着性、耐高温オフセット性に優れ、かつ、現像耐久性にも優れ、上記部材(現像剤担持体、感光体)へのトナー付着(融着)が生じないトナーが必要とされている。
従来、トナー用樹脂としてはスチレン系樹脂などのビニル系共重合体及び、ポリエステル樹脂が主に使用されている。
ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が高いにもかかわらず、低軟化点の樹脂を得やすく、加熱溶融した時に、紙等の被定着シートに対する濡れ性がよく、より低温で十分な定着を行うことが可能である。しかし、その反面高温でのオフセット現象を発生しやすいという欠点も合わせもっているため、高温定着時における離型性において多様な離型剤を用いることが必要となる。
たとえば、ポリエステル樹脂を結着樹脂とするトナーの提案もあるが、トナーとしての粉体特性である流動性、凝集性などの面で改善の余地がある。また、粉砕工程を伴う製法においてポリエステル樹脂は粉砕されにくく生産性の面で不利になる(例えば、特許文献1参照)。
一方、高温における離型性に優れる樹脂としてはビニル系の樹脂が挙げられるが、溶融特性として溶融粘度低下の開始温度が比較的高いという高離型性を得やすい特性をもつが、溶融開始温度が比較的高い。このため低温における定着性能を得るために結着樹脂の分子量分布を低分子化させ、溶融粘度の低下開始温度を低くすると必要な離型効果を得られない結果となる。低温定着を図るため低分子化されたビニル系樹脂に離型剤を用いても溶融した樹脂自体の粘度が低くなりすぎ、必要な離型効果を得ることは難しい。
また、これら両樹脂の特性が活かせるように、反応性ポリエステル樹脂の存在下でビニル単量体を重合し、重合の過程で架橋反応、付加反応、グラフト化反応を介して高分子化させた樹脂を用いたトナーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。更には、前記のようなポリエステル樹脂とビニル単量体の共重合体とポリエステル樹脂の両者とからなるトナー用樹脂組成物も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
このような架橋反応で得られたビニル系重合体やゲル分を含有するトナーは、オフセット防止性能を高めることができる。しかし、トナー原材料としてこのような架橋反応により得られたビニル重合体を用いるとトナー製造時の溶融混練時に、重合体へのせん断力が粘弾性の高さにより大きくなる。このために分子鎖の切断が促進し、溶融粘度の低下による定着時のオフセット防止性能が低下する。また、分子鎖の切断による発熱により溶融混練時の重合体自体の温度上昇がおこり、トナーに含有される成分の良好な分散状態を十分に得られないという問題をはらんでいる。
また、分子量分布を調整することに関しても知られており、低分子量と高分子量の2群に分かれたピークに調整された分子量分布を形成し、グリシジル基含有ビニル樹脂を架橋剤としてカルボキシル基含有ビニル樹脂より構成される樹脂組成物を結着樹脂とするトナーが提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。
しかし、これらのトナーは、耐オフセット性の向上に対して優れた効果を奏するが、速度の速いプロセススピードの系へ適用した場合や、定着装置の簡便化や省エネルギー化に適用した場合における低温定着性や耐高温オフセット性の更なる向上については改善の余地が残されている。さらに上記のような架橋樹脂を使用した場合、樹脂粘度が高くなり、トナー中に粗粒が発生する。その結果、スリーブコートむらによる画像不良が生じやすくなり、特に高速現像系ではその影響が顕著である。
また、光散乱法により測定された重量平均分子量とGPCのより測定された重量平均分子量との比を規定したトナーの提案もある。しかしながら、このトナーを特に高速現像系に使用した場合、耐高温オフセット性の更なる向上については改善の余地が残されている(例えば、特許文献6参照)。
このように、省スペース化と高速化、省エネルギー化のすべてを高度に満足できるトナーが未だないのが現状である。
特開昭57−208559号公報 特開昭56−116043号公報 特許第2962809号の特許公報 特開平10−87837号公報 特許第3118341号の特許公報 特開平9−6050号公報
以上説明したように、本発明によれば、上述のごとき問題点を解決したトナーを提供することができる。
すなわち、本発明の目的は、高速現像系においても現像耐久性、低温定着性、耐高温オフセット性に優れたトナーを提供することにある。
本発明の更なる目的は、高速現像系においても現像剤担持体へのトナーの付着(融着)、感光体へのトナー融着等が抑制されており、さらには飛び散りやゴーストの発生が抑制されたトナーを提供することにある。
本発明は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナーにおいて、
該結着樹脂は、ビニル系樹脂を含有しており、
オルトジクロロベンゼン可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析における粘度検出器により得られる絶対分子量の重量平均分子量(Mw)が1.0×10〜1×10であり、
該絶対分子量の1万以下の割合が40〜90%で、かつ、該絶対分子量の100万以上の割合が0〜10%未満であり、
粘度検出器から得られる固有粘度が0.10〜0.80ml/gであることを特徴とするトナーに関する。
高温高湿、低温低湿のような厳しい環境下における高速現像において、長期の使用においても高い現像性を維持し、且つスリーブゴーストや飛び散りを発生しないトナーを提供することができる。また、高速現像装置においても優れた定着性、耐オフセット性能を有するトナーを提供できることができる。
スチレン系樹脂は現像耐久性が優れているものの、溶融開始温度が比較的高いため特に高速現像系においては低温定着性能が劣っていた。これを補うため、結着樹脂の分子量分布を低分子化させ、溶融粘度の低下開始温度を低くしたり、低分子化されたスチレン系樹脂に離型剤を用いる手法がとられてきたが、樹脂粘度が低くなりすぎ、必要な離型効果を得ることは難しかった。
そこで本発明者らが検討したところ、スチレン系樹脂で優れた低温定着性、耐高温オフセット性、現像耐久性を得る為には、少なくともスチレン系樹脂及び着色剤を含有するトナーにおいて、オルトジクロロベンゼン(以下、「ODCB」とも称す)可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析における粘度検出器により得られる絶対分子量の重量平均分子量(Mw)が1.0×10〜1×10であり、該絶対分子量の1万以下の割合が40〜90質量%で、かつ、該絶対分子量の100万以上の割合が0〜10質量%未満であり、粘度検出器から得られる固有粘度が0.10乃至0.80ml/gである場合に、上記の課題を解決することができるということを見出した。
従来、一般的に測定されてきたTHF溶媒を用いたGPCで測定される分子量分布は、分子サイズによる換算分子量であり、そのモノマー本来の分子量を正確には表していない。そのため、トナー性能との相関が十分には取り難く、また溶媒不溶分成分に関しての情報が得られないという欠点を有していた。
一方、オルトジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析における粘度検出器により得られる分子量はポリマーの絶対的な分子量である。
特にオルトジクロロベンゼンにより高温(135℃)で抽出したODCB可溶分は、常温ではODCB不溶分として存在しているゲル成分も一部溶出してくるため、ゲル分も含めた樹脂全体の分子量分布に近いといえる。また、135℃という温度は定着温度に近いため、定着時の温度領域でのポリマー状態を分子量と粘度という観点で測定できるために、定着時のトナー性能をより直接的にみることができ、本特許はこれらを規定するものである。
本発明のトナーに含まれるODCB可溶成分は、常温でも溶解する成分(1)と常温では溶解しないが、高温ODCB中では可溶成分となる成分(2)に分類できる。
成分(1)は低分子量成分であり、定着に有効な成分である。一方、成分(2)は、高分子が絡まり、常温ではゲルとなる成分である。この成分は、低分子量樹脂との軟化点が近く、低温領域においても熱的な挙動を起こし易く、さらに熱による溶解性にも優れているため、定着時の溶融速度が従来樹脂と比べ速くなる。そのため、高速現像装置においても定着性が優れるのである。またやわらかな弾性も持つために低温定着性を損なうことなく、耐高温オフセットも満足する。また、熱によって、からまりがほどけ、磁性体や離型剤などの他成分とも混ざりやすいので、現像性にも優れたトナーとなる。また、従来の硬い不溶分とは違い、強い脆性を有さないために、粉砕性にも優れる。
このような、両成分が最適な状態で混ざり合うことで、スチレン系樹脂の中でも特に低粘度を有する樹脂となり、高速の画像形成装置においても、低温定着性、現像耐久性、製造安定性が優れるのである。
本発明のトナーは、オルトジクロロベンゼン可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析における粘度検出器により得られる絶対分子量の重量平均分子量(Mw)が1.0×10〜1.0×10、好ましくは5.0×10〜5.0×10、より好ましくは8.0×10〜3.0×10であることが好ましい。絶対分子量の重量平均分子量(Mw)が1.0×10未満の場合には樹脂粘度が低くなりすぎ、耐オフセット性能が劣るようになる。一方、絶対分子量の重量平均分子量(Mw)が1.0×10超の場合には定着性能が劣るようになる。
また、該絶対分子量の1万以下の割合が40〜90質量%(好ましくは45〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%)で、かつ、該絶対分子量の100万以上の割合が0〜10質量%未満(好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%)であることも特徴である。絶対分子量の1万以下の割合が40質量%未満の場合には、低分子量成分が少ないため、定着性能に劣るようになり、90質量%よりも多い場合には、スリーブ融着による耐久濃度低下が生じやすくなる。一方、該絶対分子量の100万以上の割合が10質量%以上の場合には、定着性能が低下する。
さらに、本発明のトナーは、粘度検出器から得られる固有粘度が0.10〜0.80ml/g(好ましくは0.20〜0.60ml/g、より好ましくは0.30〜0.50ml/g)であることを特徴とする。固有粘度が0.10ml/g未満の場合には特に高温高湿環境において、トナーの耐ブロッキング性が低下し、流動性が低下し、高画質な画像が得られにくくなる。0.80ml/gよりも大きい場合には、硬質なトナーが現像スリーブに傷をつけ易くなり、スリーブコートムラによる画像劣化が発生しやすくなる。
更に本発明のより好ましい形態としては、トナーの高温GPC−RALLS−粘度計分析における粘度検出器により得られる分子サイズRw(慣性半径)が1nm以上20nm未満(より好ましくは3nm以上15nm未満)であることが好ましい。
分子サイズRw(慣性半径)はその分子の広がりを示しており、他の分子量成分との絡み合い、混合性、即ちトナーとしての耐高温オフセット性及び現像性に大きく関与している。
絶対分子量1.0×10〜1.0×10の範囲でありながら、分子サイズ(慣性半径)が1nm未満であるということは、高分子のランダムコイルが密であり、架橋密度が高いということを表しており、他の分子量成分との絡み合いや、樹脂以外の他成分との混合が生じにくくなるため、トナーとしての耐高温オフセット性及び現像性が低下する。また、強い脆性を有するようになるために、粉砕性が悪くなり、製造安定性に劣る。
一方、絶対分子量1.0×10〜1.0×10の範囲でありながら、分子サイズ(慣性半径)が20nm以上であるということは、分子が直鎖状に近いということを示すものであり、高温での弾性に劣るようになりやすい。そのため、本発明の目的の一つである高温オフセット性に関して、若干劣る傾向にある。
本発明のトナーは、結着樹脂に対し、ODCB不溶分を0.1〜20質量%(好ましくは0.3〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%)含有することが好ましい。この成分は、強い脆性を有する高架橋成分であるため、熱安定性に優れている。そのため、トナー中に少量存在することで、高温高湿のような厳しい環境においても、高品質の画像を長期間に渡って維持できる。ODCB不溶分量が20質量%を超えると、トナーの低温定着性に影響を与え、低分子量樹脂と混ざり難くなり、さらに粉砕性に劣るようになり、遊離樹脂粉が増加する傾向にあり好ましくない。また0.1質量%未満の場合には、高温高湿環境において、画像濃度が低下しやすくなるなどの弊害がでる。
本発明のトナーは、テトラヒドロフラン可溶成分の酸価が0.5〜50mgKOH/g未満、より好ましくは1.0〜40mgKOH/g、さらに好ましくは2.0〜30mgKOH/gであることが、より良好な帯電特性を得る上で好ましい。所望の酸価を有しない場合にはトナー帯電性が悪化し、トナーの飛び散りや、ゴーストが発生しやすくなる。
本発明のトナーは、ガラス転移温度(Tg)が40〜70℃であることが好ましい。Tgが40℃未満の場合、耐ブロッキング性が悪化しやすく、70℃を超える場合は定着性が低下しやすい。
本発明において、トナーは、「カルボキシル基を有するビニル樹脂」と「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」とを結着樹脂として含有する。このような樹脂を含有することで、より高い帯電性能が得られ、画像濃度が低下することなく、長期間にわたり安定した画像が得られるのである。これは、結着樹脂中に負極性をもつ残存カルボキシル基やカルボキシル基とエポキシ基が反応して形成されたエステル部がトナー粒子表面で樹脂同士もしくは、任意で添加される負帯電性制御剤と相互作用し、トナー表面における樹脂或いは負帯電性制御剤の分散状態を向上させるためである。また帯電が均一に安定化するため、特に低温低湿環境においては過度なチャージアップを抑制でき、スリーブネガゴーストを発生させにくくする。
結着樹脂として用いられる「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」は、カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂におけるカルボキシル基とエポキシ基とが結合したものであるか、カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂におけるカルボキシル基とエポキシ基とが結合したものであることが好ましく、中でも、前者のほうがより好ましい。
「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合」とは、例えば、エポキシ基としてグリシジル基を有する化合物を用いる場合には、
Figure 2005266789
となり、架橋構造を形成するものである。
このような分子構造制御を行うことで、架橋点間距離が長くなり、従来の三次元的なゲルではない、からまり成分によるゲルが生成しやすくなるのである。
本発明に係る「カルボキシル基を有するビニル樹脂」、或いは「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得るために用いることのできるカルボキシル基を有する単量体として、以下のものが挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、チグリン酸及びアンゲリカ酸の如き不飽和モノカルボン酸;これらの不飽和モノカルボン酸のα−あるいはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体、無水物及びα−或いはβ−アルキル誘導体が挙げられる。上記のカルボキシル基を有する単量体は、単独あるいは混合して用いることができ、また他のビニル系モノマーと公知の重合方法により共重合させて用いることもできる。
本発明に係る「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の酸価は、1.0〜60mgKOH/g(より好ましくは1.0〜50mgKOH/g、さらに好ましくは2.0〜40mgKOH/g)であることが好ましい。1.0mgKOH/g未満の場合には、カルボキシル基とグリシジル基との架橋反応部位が少なくなるため、架橋構造が十分に発達しなくなり、トナーの耐久性の改良が十分に達成されにくくなる。このような場合には、エポキシ価の高いグリシジル基を有するビニル樹脂を用いることによって、架橋密度をある程度高めることができるが、残留エポキシ基が現像性に影響を与えたり、架橋構造の制御が難しくなったりする。酸価が60mgKOH/gを超える場合には、トナー粒子の吸湿性が強くなり、画像濃度が低下し、カブリが増加する傾向がある。
本発明に係る「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」において、THF可溶分の数平均分子量は、良好な定着性や現像性を達成するために、1,000〜4万が好ましく、THF可溶分の重量平均分子量は、良好な耐オフセット性、耐ブロッキング性や耐久性を達成するために、1万〜1,000万が好ましい。
本発明に係る「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」は、低分子量成分と高分子量成分とを含有していることが好ましい。低分子量成分のメインピーク分子量は良好な定着性を達成するために、4,000〜3万が好ましく(より好ましくは5,000〜25,000)、高分子量成分のメインピーク分子量は、良好な耐オフセット性、耐ブロッキング性や耐久性を達成するために、10万〜100万であることが好ましい(より好ましくは10万〜50万)。
「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」においては、低分子量成分と高分子量成分とを、質量比で低分子量成分:高分子量成分=95:5〜50:50(好ましくは、90:10〜55:45)で用いることが、定着性及びワックス等の添加剤の分散性が高まるという点から好ましい。
該「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の高分子量成分を得るための合成方法としては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果、高重合度のものが得られる。更に、反応熱の調節が容易であり、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であることから、トナー用バインダー樹脂の製造方法として有利な点がある。
しかしながら、添加した乳化剤のために重合体が不純になり易く、重合体を取リ出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
懸濁重合においては、水系媒体100質量部に対して、重合性単量体100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が挙げられ、一般に水系媒体100質量部に対して0.05〜1質量部で用いられる。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する開始剤や、目的とするポリマーによって適宜選択される。
該「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の高分子量成分を得る際には、本発明の目的を達成する為に、重合開始剤として、以下に例示する様な多官能性重合開始剤を用いることが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイドの如き1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレートの如き1分子内に、パーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
これらのうち、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に半減期10時間を得るための分解温度に関して、多官能性重合開始剤の分解温度よりも低い分解温度を有する単官能性重合開始剤と併用することが好ましい。
単官能性重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)べンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼンの如きアゾおよびジアゾ化合物が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加することが好ましい。
これらの重合開始剤は、効率の点から重合性単量体100質量部に対し0.01〜10質量部用いるのが好ましい。
「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の低分子量成分の合成方法としては、公知の方法を用いることができる。塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくいという問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、カルボキシル基を有するビニル樹脂中の低分子量成分を得るには好ましい。
溶液重合で用いる溶媒としては、キシレン、トルエン、クメン、酢酸セロソルブ、イソプロピルアルコールまたはベンゼンを用いることができる。重合性単量体としてスチレンモノマーを使用する場合、溶媒としてはキシレン、トルエンまたはクメンが好ましい。溶媒は、重合する単量体或いは得られる重合体によって適宜選択される。反応温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、得られるポリマーによって異なるが、通常70〜230℃で行うのが良い。溶液重合においては、溶媒100質量部に対して重合性単量体30〜400質量部で行うのが好ましい。更に、重合終了時に溶液中で他の重合体を混合することも好ましく、数種の重合体を混合できる。
次に、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いられるエポキシ基を有するビニル樹脂について説明する。本発明におけるエポキシ基とは、酸素原子が同一分子内の異なる炭素原子と結合し、環状エーテル構造を形成している官能基である。
本発明において用いることのできるエポキシ基を有する単量体としては、以下のものが挙げられる。
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、アリルβ−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、一般式(1)で表されるグリシジルモノマーが好ましく用いられる。
Figure 2005266789
(一般式(1)において、R、R及びRは、水素原子、又は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基及びアルコシキカルボニル基からなるグループより選ばれる官能基を示す。)
このようなエポキシ基を有する単量体は、単独であるいは複数種を混合して重合を行っても良く、また、他のビニル系単量体と公知の重合方法により共重合させることによって、エポキシ基を有するビニル樹脂を得ることができる。
本発明に係る結着樹脂を得る際に用いることのできる「エポキシ基を有するビニル樹脂」は、THF可溶分の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは2,000〜10万、より好ましくは2,000〜5万、更に好ましくは3,000〜4万であることが好ましい。Mwが2,000未満の場合、結着樹脂中の架橋構造が不完全になりやすく、混練工程において分子の切断が生じやすく、耐久性を低下させやすい。Mwが10万を超える場合には、定着性を低下させる傾向にある。
また、エポキシ価は、0.05〜5.0eq/kgものが好ましく、より好ましくは0.05〜2.0eq/kgである。0.05eq/kg未満の場合、架橋反応が進行しにくく、高分子量成分の生成量が少なく、耐オフセット性やトナーの強靭性が小さくなる。5.0eq/kgを超える場合、架橋反応は起こりやすい反面、混練工程において分子切断が多く、耐オフセット性の効果が半減する。
本発明に係る「エポキシ基を有するビニル樹脂」は、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」及び「その他に含有されているカルボキシル基を有するビニル樹脂」中の合計のカルボキシル基1当量に対して、エポキシ基が0.01〜5.0当量の混合比で用いられることが好ましく、より好ましくは0.03〜1.0当量、更に好ましくは0.03〜0.5当量の混合比である。エポキシ基が0.01当量未満の場合、結着樹脂中において、架橋点が少なくなり、耐オフセット性などの架橋反応による効果が発現しにくくなる。また、5.0当量を超えると、架橋反応は起こりやすくなる反面、樹脂粘度上昇による分散性の低下や粉砕性の低下が生じ、また現像の安定性も低下してしまう傾向にある。
また、本発明に係る結着樹脂を得るに際して、「カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂」を用いる場合には、THF可溶分の数平均分子量は、良好な定着性を達成するために、1,000〜4万が好ましい。また、THF可溶分の重量平均分子量は、良好な耐オフセット性及び耐ブロッキング性を達成するため、1万〜1,000万が好ましい。
「カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂」は、カルボキシル基を有するモノマーとエポキシ基を有するモノマーを混合し、他のビニルモノマーと公知の重合方法により共重合させることにより得られる。
本発明において、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る手段としては、(1)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂を溶液状態で混合し、反応釜内で熱を加えることにより架橋反応を起こさせる、また、(2)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂をそれぞれ反応釜から取り出し、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドを行い、2軸押し出し機等で熱溶融混練することにより、カルボキシル基とエポキシ基の反応を起こし、架橋させても良いが、本発明の特性を得る上では、(1)の手段がより好ましい。これは、溶融混練を行う時に比べ、架橋成分の分子切断を抑えられ、さらには絡まり成分を作製しやすいためである。また特に架橋反応終了後、ゆっくり冷却することがより好ましい。具体的には反応終了後、1℃/min以下の降温速度で降温し、途中一定温度(好ましくは、結着樹脂の軟化点〜軟化点+20℃の温度)で数時間(好ましくは、1〜8時間)保持し、その後室温まで下げることがより好ましい。これはこの一定温度で保持される間に不溶分がゆっくりと絡み合い、からまり密度が増加するためである。保持時間が短い場合、からまり密度が小さくなるため、十分な耐オフセット性能が発揮されない。また、降温速度が1℃/minより大きい急冷を行った場合、三次元的なゲル成分が生成しやすくなり、低温定着性を損なわせる。
また、カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂の混合は、カルボキシル基を有するビニル樹脂が溶解されている溶液に、反応温度を変えながら、数回に分けてエポキシ基を有するビニル樹脂溶液を加えることによって行うことが好ましい。例えば、反応開始時の160℃のカルボキシル基を有するビニル樹脂溶液にエポキシ基を有するビニル樹脂溶液を添加量の半分を加え、2時間反応後、180℃に昇温し、残りのエポキシ基を有するビニル樹脂溶液を加え、4時間反応後、反応終了とする。このように二段階で反応を進めることで、本発明特有の絡まりのあるゲルが生成しやすくなる。つまり初めの段階ではより緩やかな絡まりゲルが生成し、後段階で絡まりの強いゲルが生成することで、2種の絡まりゲルと低分子量成分、ODCB不溶成分とが最適な状態で混合し、それぞれの成分が連動しやすくなることで、本発明の低温定着性と耐オフセット性能を得やすくなるのである。一方、一度に反応を進めようとすると、架橋反応が急激に起こり、三次元的なより硬いゲル成分になりやすく、好ましくない。
本発明において、結着樹脂として用いられる「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」は、THF不溶分を0.1〜60質量%含有することが好ましい。THF不溶分が上記範囲である場合、製造工程中の混練工程において、樹脂自体が適度な溶融粘度を有することができるため、材料の均一な分散性を達成することができる。THF不溶分が60質量%を超える場合、樹脂自体の溶融粘度が大きくなり、材料の分散性が低下してしまう傾向にある。
カルボキシル基を有するモノマー及びエポキシ基を有するモノマーと共重合させることのできるビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられる。例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−1−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ステアリル、アクリル酸(2−クロルエチル)、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロ一ル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
これらの中でもスチレン系重合体及びスチレン−(メタ)アクリル系共重合体となるようなスチレンモノマーを用いた共重合体とすることが好ましく、本発明に係る、結着樹脂は、スチレンに由来するユニットを主構成成分とするスチレン系樹脂であることが好ましい。更には、少なくともスチレン系樹脂成分またはスチレン−(メタ)アクリル系共重合体成分を65質量%以上含有することが定着性、混合性の点で好ましい。
また、本発明に係る結着樹脂は、カルボキシル基を有するビニル樹脂を含有している。カルボキシル基を有するビニル樹脂を含有することにより、本発明に係る結着樹脂が酸価を有するようになる。カルボキシル基を有する樹脂が、ビニル系樹脂であることによって、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」との良好な相溶性が得られる。結着樹脂中に含有される「カルボキシル基を有するビニル樹脂」としては、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を製造する時に用いるビニル樹脂と同じものを用いることができる。
また、本発明に係る結着樹脂には、i)エポキシ基を有するビニル樹脂、ii)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂との樹脂混合物、あるいは、iii)カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂が含有されていても良い。これらのビニル樹脂としては、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を製造する時に用いるビニル樹脂と同じものを用いることができる。
また、本発明に係る結着樹脂は、酸価1〜50mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1〜40mgKOH/gであり、さらに好ましくは2〜40mgKOH/gである。このような酸価を有する結着樹脂を用いることによって、特に高温高湿環境下におけるトナーの帯電性を良好にコントロールすることができる。
また、その他にも、本発明に係る結着樹脂としては、下記の如き重合体を含有していても良い。例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレンーメタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が使用できる。本発明において、これらの任意成分の樹脂としては、結着樹脂中、30質量%以下(より好ましくは、20質量%以下)の含有量で含有されていてもよい。
また、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピークに関し、吸熱ピークにおける立ち上がり温度が80℃以上であり、吸熱におけるオンセット温度が105℃以下であり、吸熱ピーク温度が100〜120℃の範囲にあり、かつ、120℃における粘度が100mPa・s以下である炭化水素ワックス(a)を含有することが好ましい。このようなワックスと本発明の低粘度樹脂とを組み合わせることで、相溶しやすくなり、ワックス分散性が向上し、帯電安定によって耐久濃度が安定する。
吸熱ピークの立ち上がりが80℃以上であるようなワックスをトナーに含有させた場合、トナーの耐ブロッキング性に与える影響が小さいため、耐ブロッキング性に優れたトナーが得られる。80℃未満であるものは、比較的低温からトナーが長時間レンジでの塑性変化をしはじめ、保存性に劣ったり、昇温に対して現像性の劣化を生じやすい。更に、吸熱のオンセット温度が105℃以下(好ましくは、90〜102℃の範囲)であることを特徴とし、これにより、低粘度樹脂との混ざりがよくなり、定着時に悪影響を及ぼさなくなる。105℃を超える場合には、短時間レンジでの塑性変化の温度が高くなり、低温定着時に低分子成分の分子運動を阻害し、定着性を損なわせる。
また、吸熱ピーク温度が100〜120℃(好ましくは、102〜115℃)の範囲にあることを特徴とし、これにより、良好な耐高温オフセット性が得られる。100℃未満では、高温にならないうちに結着樹脂中にワックス成分が溶解してしまい、高温時に十分な耐オフセット性を得ることが困難である。120℃を超える場合には、樹脂成分との混ざりが悪くなり、遊離ワックスとして存在し、帯電安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明におけるDSC測定では、熱のやり取りを測定しその挙動を観測するので、測定原理から、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定する必要がある。例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7または、DSC−TA(セイコーインスツルメンツ)または、DSC Q−1000(TAインスツルメンツ社製)などが利用できる。
測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/min、温度0〜200℃の範囲で降温、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる(図1参照)。各温度の定義は次のように定める。
・ピークの立ち上がり温度(LP):ベースラインより明らかにピーク曲線が離れたと認められる温度。すなわち、ピーク曲線の微分値が正で、微分値の増加が大きくなりはじめる温度あるいは微分値が負から正になる温度をいう。
・吸熱のオンセット温度(OP):ピーク曲線の微分値が最大となる点において曲線の接線を引き接線とベースラインとの交点の温度。ワックスを含有するトナーにおいては、温度70℃以上にピークを有する吸熱ピークを対象とする。
・吸熱ピークの温度(PP):ピークトップの温度。
炭化水素ワックス(a)は、120℃における粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは80mPa・s以下である。溶融粘度が100mPa・sを超えるようになると、可塑性、離型性に劣るようになり、優れた定着性、耐オフセット性に影響を及ぼすようになる。また、粘度の差異から、本発明の樹脂との混ざりが悪くなり、遊離ワックスが発生し、現像不良が起こりやすい。本発明において、炭化水素ワックスの粘度はJIS K−6862−7.2により求められる。
本発明に用いられる炭化水素ワックス(a)は、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒で重合した低分子量のアルキレンポリマー、高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー、一酸化炭素及び、水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分を水素添加して得られる合成炭化水素などから、特定の成分を抽出分別した炭化水素ワックスが用いられる。プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留を利用した分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別が行われる。すなわちこれらの方法で、低分子量分を除去したもの、低分子量分を抽出したものや、更にこれらから低分子量分を除去したものなどである。
母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用した、一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの、例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)、あるいはワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(固定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素(最終的には、水素添加し目的物とする)や、エチレンなどのアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が、分岐が少なくて小さく、飽和の長鎖直鎖状炭化水素であるので好ましい。特に、アルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素ワックスがその構造や分別しやすい分子量分布であることから好ましいものである。
また、分子量分布で好ましい範囲は、数平均分子量(Mn)が550〜1200,好ましくは600〜1000、重量平均分子量(Mw)が800〜3600、好ましくは900〜3000、Mw/Mnが3以下、好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。また、分子量700〜2400(好ましくは分子量750〜2000、特に好ましくは分子量800〜1600)の領域にピークが存在することである。このような分子量分布を持たせることにより、トナーに好ましい熱特性を持たせることができる。すなわち、上記範囲より分子量が小さくなると熱的影響を過度に受けやすく、耐ブロッキング性、現像性に劣るようになり、上記範囲より分子量が大きくなると、外部からの熱を効果的に利用できず、優れた定着性、耐オフセット性を得ることができない。
この炭化水素ワックス(a)は水酸基価(Hv)が5mgKOH/g未満、エステル価(Ev)が1mgKOH/g未満であり、好ましくは水酸基価が1mgKOH/g未満、エステル価が1mgKOH/g未満、酸価(Av)が1mgKOH/g未満であることが好ましい。
また、上記炭化水素ワックス(a)に加えて、水酸基価(Hv)が5〜150mgKOH/gであり、かつ、120℃における粘度が80mPa・s以下であり、該結着樹脂の酸価(Av)と該炭化水素ワックスの水酸基価(Hv)とが下記式
0.05≦(Av)/(Hv)≦3.5
を満足する炭化水素系ワックス(b)を含有することも好ましい。
本発明に使用する炭化水素ワックス(b)は、以下の構造を有する炭化水素分子鎖を好ましくは含むものである。少なくとも下記部分構造式Aで表せる二級炭素に水酸基を有する二級アルコールの構造を有する分子鎖及び下記部分構造式Bで表せるエステル結合を有するエステルの構造を有する分子鎖を炭化水素系ワックス分子の中に有するもので、一つの分子鎖に両方の構造を有していても良い。
さらに、下記部分構造式C及びDで表せる一級または二級の炭素にカルボキシル基を有する酸基の構造を有する分子鎖を炭化水素ワックス分子の中に有するものも好ましい。また、下記部分構造式Eで表せる一級炭素に水酸基を有する一級アルコールの構造を有する分子鎖を有していても良い。一つの炭化水素鎖に任意の下記部分構造式A、B、C、D及びEの構造を有していても良い。
Figure 2005266789
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本発明で用いられる炭化水素ワックス(b)は、分子中に適度な水酸基を有していることにより、炭化水素ワックス(b)が結着樹脂中に微粒子状に分散できるので、適度な可塑効果が得られ、定着性が向上する。炭化水素ワックス(b)の水酸基価が5mgKOH/g未満だと、炭化水素ワックス(b)が十分に微分散せず、トナーの定着性が低下する。また、炭化水素ワックス(b)の水酸基価が150mgKOH/gより大きいと、炭化水素ワックス(b)の可塑効果が大きくなりすぎ、トナーの耐ブロッキング性が低下する。
また、本発明に係る炭化水素ワックス(b)は、酸価(Av)が1〜30mgKOH/g(好ましくは1〜15mgKOH/g、より好ましくは1〜10mgKOH/g)であることが好ましい。ワックスが酸基を有していることにより、トナーを構成する他の成分との界面接着力が大きくなり、ワックスがトナーを可塑化する効果が高くなり、トナーの定着性が向上する。ワックスの酸価が1mgKOH/g未満だと、トナーを構成する他成分との界面接着力が小さいため、ワックスの遊離が発生しやすく、ワックスの作用が十分に得られない場合がある。また、ワックスの酸価が30mgKOH/gより大きいと、逆に界面接着力が大きくなりすぎ、トナーの可塑化が大きく進み、十分な離型性を保持できなくなる場合がある。
更に、炭化水素ワックス(b)中に、上記(B)の如くエステル構造を存在させた場合には、トナーの結着樹脂成分との親和性が高いので、トナー粒子中に炭化水素ワックス(b)を均一に近い状態で存在させることができ、炭化水素ワックス(b)の作用を効果的に発揮できるようになる。炭化水素ワックス(b)の有するエステル価としては、1〜50mgKOH/gであることが好ましい。炭化水素ワックス(b)のエステル価が1mgKOH/g未満だと、トナーの定着性に対する炭化水素ワックス(b)の効果が低下する。また、炭化水素ワックス(b)のエステル価が50mgKOH/gより大きいと、炭化水素ワックス(b)の結着樹脂に対する親和性が高くなりすぎて結着樹脂の劣化が進みやすくなり、長期の使用においてトナーの現像性が劣るようになる。
また、本発明における炭化水素ワックス(b)は、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピークに関し、吸熱ピーク温度が65〜140℃、好ましくは70〜130℃、より好ましくは70℃以上100℃未満であることが、トナーの良好な定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性を得るという点で好ましい。
また、炭化水素ワックス(b)は、温度120℃における粘度が80mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは50mPa・s以下、更に好ましくは30mPa・s以下である。炭化水素ワックス(b)の温度120℃における粘度が、所定の値以下である場合には、トナーの溶融粘度を下げることができ、良好な定着性を達成できるという点で好ましい。120℃における粘度が80mPa・sを超えると、トナーの定着性が不十分になる場合がある。また、本発明のトナーに係る樹脂および炭化水素ワックス(a)との混ざりが悪くなることで、トナー中で分散されにくくなり、結果、帯電不良による画像濃度の低下が生じる。
また、上記炭化水素ワックス(a)及び(b)の両ワックスを併用することが、トナー性能を向上させる上でより好ましい。本発明においては炭化水素ワックス(b)が適度にトナー中に微分散し、且つ炭化水素ワックス(b)は炭化水素ワックス(a)との親和性が高いため、炭化水素ワックス(a)に関しても、炭化水素ワックス(a)を単独で用いた場合に比べてより微分散を達成することができ、定着時にトナーから炭化水素ワックス(a)が迅速にトナー表面へと染み出すことができるようになり、高速の定着システムにおいても良好な耐オフセット性をトナーに付与することができる。
また、炭化水素ワックス(b)は結着樹脂との親和性に優れ、高い可塑性を有しているために、トナーの劣化を促進させる場合があり、特に高温高湿環境下での長期の使用において、トナー現像装置内でのストレスなどによりトナーの劣化が進みやすい。しかし本発明においては炭化水素ワックス(a)の結着樹脂との離型作用により炭化水素ワックス(b)の過度な可塑作用を抑制することができ、トナーの良好な現像性を長期に渡って維持することができる。
さらに120℃における炭化水素ワックス(a)の粘度(ηa)と炭化水素ワックス(b)の粘度(ηb)との関係が、
ηa>ηb
を満たすことで、炭化水素ワックス(a)と炭化水素ワックス(b)との凝集を抑えることができ、トナー中においても微分散されるのである。
また、本発明における炭化水素ワックス(a)及び炭化水素ワックス(b)は、25℃における針入度が15以下(好ましくは12以下、より好ましくは10以下)であることが、トナーの帯電性能を高め、高温高湿環境下においてもより高い現像性を得るために好ましい。炭化水素ワックスの25℃における針入度が15よりも大きいと、トナーの耐ブロッキング性が低下する場合がある。本発明において、炭化水素系ワックスの針入度はJIS K−2235−5.4により求められる。
本発明における炭化水素ワックス(a)及び炭化水素ワックス(b)の含有量の比率は、炭化水素ワックス(a)の含有量を1としたときに炭化水素ワックス(b)の含有量が0.05〜20、好ましくは0.07〜15、より好ましくは0.1〜10であることが好ましい。炭化水素ワックス(a)と炭化水素ワックス(b)の含有量の比率が前記範囲を外れると、トナーの定着性及び耐オフセット性が不十分となる場合がある。
本発明で用いられる上記ワックスは樹脂重合時、樹脂架橋時、トナー溶融混練時のいずれの場合に添加してもよいが、トナー溶融混練時に添加することが好ましい。
本発明に用いられるワックスには上記以外にも次のようなものがある。例えばパラフィンワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックスおよびその誘導体などである。誘導体には酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜15質量部で用いられ、好ましくは0.5〜12質量部で用いるのが効果的である。
本発明のトナーは、荷電制御剤を含有することが好ましい。トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、その他にも、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。また、トナーを負帯電性に制御する荷電制御剤としては、下記一般式(2)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
Figure 2005266789
〔式中、Mは配位中心金属を表し、Sc、Ti、V、Cr,Co,Ni,Mn及びFeからなる群から選ばれ、Arはフェニル基またはナフチル基であり、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシル基、アニリド基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコシキ基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよく、X、X’、Y、Y’は−O−、−CO−、−NH−及び−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)からなる群より選ばれる一種又は二種の連結基であり、Aは水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン又は脂肪族アンモニウムイオンのいずれか或いはそれらの混合物を示す。〕
上記一般式(2)で表される荷電制御剤では、特に、中心金属としてはFe又はCrが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基、アニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
またトナーを負帯電性に制御する荷電制御剤としては、例えば下記一般式(3)で表される塩基性有機酸金属錯体が挙げられる。
Figure 2005266789
上記一般式(3)で表される荷電制御剤では、特に、中心金属としてはFe、Cr、Si、Zn、Alが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
上記一般式(2)で表される荷電制御剤の中でもアゾ系金属錯体がより好ましく、更には下記一般式(4)で表されるアゾ系鉄錯体が最も好ましい。
Figure 2005266789
上記一般式(4)で表されるアゾ系金属錯体の具体例を下記構造式(5)〜(10)を以下に示す。
Figure 2005266789
Figure 2005266789
本発明のトナーを正帯電性に制御するものとしては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
また、下記一般式(11)で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部又は一部)としての作用をも有する。
Figure 2005266789
[式中、RはH又はメチル基を示し、R及びRは置換または未置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)を示す。]
前記正帯電性の荷電制御剤としては、特に下記一般式(12)で表される化合物が好ましい。
Figure 2005266789
具体的な商品名として、負帯電用としては、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)があげられ、正帯電用としては好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
本発明のトナーは磁性体を含有してもよい。磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。トナーに使用される磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2〜40m/g(より好ましくは4〜20m/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am/kg(より好ましくは70〜100Am/kg)、残留磁化が1〜100Am/kg(より好ましくは2〜20Am/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20〜200質量部で用いられる。好ましくは40〜150質量部で用いられる。
磁性体の個数平均粒径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明のトナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
本発明のトナー粒子には、無機微粉体または疎水性無機微粉体が外添されることが好ましい。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
シリカ微粉体の好ましい疎水化処理として、ヘキサメチルジシラザンで処理し、次いでシリコーンオイルで処理することにより調製する方法が挙げられる。
上記のようにシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、後にオイル処理することが疎水化度を効果的に上げることができ、好ましい。
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体に施したものも、シリカ微粉体の場合と同様に好ましい。
本発明のトナー粒子には、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の添加剤を外添してもよい。
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.01〜5質量部(好ましくは0.01〜3質量部)使用するのが良い。
本発明のトナーは、好ましくは重量平均粒径(D4)を2.5〜10.0μm、好ましくは5.0〜9.0μm、より好ましくは6.0〜8.0μmとした場合に十分な効果が発揮され、好ましい。
トナーの重量平均粒径(D4)及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量平均粒径(D4)を算出する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20〜300μmの粒子がキャリア粒子として使用される。
キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質を付着または被覆されているものが好ましい。
本発明に係るトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロール,ニーダー,エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後粗粉砕を行った後に微粉砕、分級を行った後に表面改質装置(例えばホソカワミクロン社製Faculty F−600)を用いてトナー粒子の表面改質を行ってもよい。さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明に係るトナーを製造することができる。
上記製造条件の中でも溶融混練工程は、本発明特有のゲル質にするための重要な工程である。図2に本発明における混練装置の概略図を、図3に混練装置におけるパドルの詳細図を示す。この図に示すようにニーディング部は2か所以上有することが好適であり、2か所以上のニーディング部を通過させることによって混練物を完全に溶融状態にすることができ、最適なゲル質および良好な原材料分散性を達成することができる。
ここで本発明のトナーを得るためには、供給口に近い方の第1ニーディング部を高温にし、押出口に近い方の第2ニーディング部を低温にする事がより好ましい。特に、両ニーディング部間の温度差が10℃以上ある事が好ましい。このような構成にする事で、ゲルにより広がりをもたせ、本発明の効果を得られやすくなる。つまり高温の第1ニーディング部ではゲルが広がり、低温の第2ニーディング部ではある程度の広がりをもったままゲルが絡まり、本発明特有のゲルがより生成しやすくなるのである。
また、2軸押出機は、温度を一定に保つ加熱シリンダーの中に2本のパドルと呼ばれる回転軸が通っており、この回転軸内に冷却水を通す事もできる(主軸冷却)。この主軸冷却を行うと、加熱シリンダーとパドルとの間に温度差が生じ、ある程度トナーにシェアをかけることができる。そのため、ゲルの絡まり密度を増加させることができ、本発明の効果を得る上でさらに好ましい。
製造装置としては、例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボジェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。また、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
トナーの樹脂のTHF可溶分の分子量及び分子量分布、THF不溶分の含有量、ワックス成分のピークトップ温度および分子量、分子量分布の測定法は以下に示すとおりである。
(1)高温GPC−RALLS−粘度計分析
(i)前処理
トナー0.2gを専用のろ過容器(例えば東ソー製溶解ろ過容器 ポアサイズ10μm)に入れ、ODCB 10mlとともに15ml試験管に入れる。これを溶液ろ過装置(例えば東ソー製DF−8020)を用い、150℃で12時間溶解させる。
12時間後、下記装置を用い、分析を行った。
(ii)[分析条件]
装置 :HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
DAWN EOS(Wyatt Technology社製)
高温差圧粘度検出器(Viscotek社製)
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 7.8cm I.D×30cm 2連(東ソー社製)
検出器1:多角度光散乱検出器 Wyatt DAWN EOS
検出器2:高温差圧粘度検出器
検出器3:ブライス型デュアルフロー式示差屈折計
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.05%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min
注入量 :300μl
本測定においては、絶対分子量に基く分子量分布及び固有粘度が、直接出力されるが、その測定理論は以下の通りである。
[測定理論]
90=R(θ90)/KC・・・レイリー方程式
90:90°における分子量
R(θ90):散乱角90°でのレイリー比
K:光学定数(=2π/λ ・(dn/dc)
C:溶液濃度
=(1/6)1/2([η]M90/φ)1/3・・・Flory Fox式
:慣性半径
η:固有粘度
φ:形状要素
絶対分子量:M=R(θ)/KC
R(θ)=R(θ90)/P(θ90
P(θ90)=2/X・(e−X−(1−X)) (X=4πn/λ・R
λ:波長
(dn/dc):本特許では0.068ml/gとした。
(2)トナーのODCB不溶分量
トナー約2.0gを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ20×90mm東洋ろ紙社製)に入れ、これを上部に冷却器を連結したなす型フラスコ内に立てかける。溶媒としてオルトジクロロベンゼン(ODCB)200mlを用いて、185℃にて6時間抽出する。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、150℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を秤量する。不溶分は、初めに投入したトナー中の樹脂成分の質量をW1gとし、抽出残分中の樹脂成分の質量をW3gとしたときに、
(W3/W1)×100(質量%)
で表したものである。
トナー中の樹脂成分の質量(W1)は、磁性トナーでは、試料トナー質量から磁性体、顔料およびワックスの如き樹脂以外のオルトジクロロベンゼン(ODCB)不溶分の質量を差し引いた質量となり、非磁性トナーでは、試料トナー質量から顔料の如き樹脂以外のODCB不溶成分の質量を差し引いた質量となる。また、抽出残分中の樹脂成分の質量(W3)は、抽出残分質量から磁性体顔料およびワックスの如き樹脂以外のODCB不溶分の質量を差し引いた質量となる。これらの値を用いて上記式より計算することができる。
(3)樹脂のTHF可溶分の分子量測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。樹脂をTHFに分散し溶解後、24時間静置した後、0.2μmフィルターで濾過し、その濾過を試料として用いる。試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10,2.1×10,4×10,1.75×10,5.1×10,1.1×10,3.9×10,8.6×10,2×10,4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
カラムとしては、10〜2×10の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのが良く、昭和電工社製のshodex KF−801,802,803,804,805,806,807の7連カラムの組合せが好ましい。
(4)樹脂のTHF不溶分量
樹脂を秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×10mm 東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、THFの抽出サイクルが約4〜5分に1回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、秤量することによって樹脂の不溶分を得る。不溶分は、初めに投入した質量をW1gとし、抽出残分中の質量をW3gとしたときに、
(W3/W1)×100(質量%)
から求められる。
(5)トナーのTHF可溶分及び原料結着樹脂の酸価
本発明において、トナーのTHF可溶分及び原料結着樹脂の酸価(JIS酸価)は、以下の方法により求める。尚、原料結着樹脂の酸価も、原料樹脂のTHF可溶分の酸価を意味する。
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
1)試料は予めトナー及び原料結着樹脂のTHF不溶分を除去して使用するか、上記のTHF不溶分の測定で得られるソックスレー抽出器によるTHF溶媒によって抽出された可溶成分を試料として使用する。試料の粉砕品0.5〜2.0(g)を精秤し、可溶成分の重さをW(g)とする。
2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる。)。
4)この時のKOH溶液の使用量をS〔ml〕とする。また、同時に試料を用いないブランク試験を行い、この時のKOH溶液の使用量をB〔ml〕とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
(6)トナーのガラス転移温度(Tg)
トナーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)、DSC Q−1000(TAインスツルメンツ社製)などを用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。それをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、常温常湿下(25℃/60%)において、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。この昇温過程における比熱変化を測定し、温度40〜100℃の範囲における比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)とする。
(7)エポキシ価
基本操作はJIS K−7236に準ずる。
1)試料を0.5〜2.0gを精秤し、その重さをW〔g〕とする。
2)300mlのビーカーに試料を入れ、クロロホルム10ml及び酢酸20mlに溶解する。
3)上記2)の溶液に、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液(臭化テトラエチルアンモニウム100gを酢酸400mlに溶したもの)10mlを加え、0.1mol/lの過塩素酸酢酸溶液を用いて、電位差滴定装置(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用い、自動滴定が利用できる。)を用いて滴定する。この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をS(ml)とし、同時に試料を用いないブランク測定を行い、この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をB(ml)とする。次式によりエポキシ価を計算する。fは過塩素酸酢酸溶液のファクターである。
エポキシ価(eq/kg)=0.1×f×(S−B)/W
(8)ワックスの分子量分布
本発明においてワックスの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、次の条件で測定される。
(GPC測定条件)
装置:HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 7.8cmI.D×30cm 2連(東ソー社製)
検出器:高温用RI
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.05%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min
試料:0.1%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算をすることによって算出される。
(9)ワックスの酸価、水酸基価、エステル価及びケン化価
本発明において、ワックスの酸価、水酸基価、エステル価、ケン化価は以下の方法により求める。基本操作はJ1S K 0070に準じる。
(酸価の測定)
・装置及び器具
・三角フラスコ(300ml)
・ビュレット(25ml)
・水浴又は熱板
・試薬
・0.1mol/l塩酸
・0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液(標定は、0.1mol/l塩酸25mlを全量ピペットを用いて三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を加え、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、中和に要した量からファクターを求める。)
・フェノールフタレイン溶液溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1で混合したもの。これらは、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で中和する。)
・測定法
(a)ワックス1〜20gを三角フラスコに精秤する。
(b)溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上でワックスが完全に溶けるまで十分に振り混ぜる。
(c)0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときを終点とする。
・計算
A=5.611×B×f/S
ただし、A:酸価(mgKOH/g)
B:滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11×1/10
(水酸基価の測定)
・装置及び器具
メスシリンダー(100ml)
全量ピペット(5ml)
平底フラスコ(200ml)
グリセリン浴
・試薬
アセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜる。)
フェノールフタレイン溶液
0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液
・測定法
(a)ワックスを0.5〜6.0g平底フラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mlを全量ピペットを用いて加える。
(b)フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせる。
(c)1時間後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。
(d)更に、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール(95%)5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
(e)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
(f)空試験は、ワックスを入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加えて溶解する。
・計算
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ただし、A:水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
C:滴定に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
D:酸価
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
(エステル価の測定)
次の式によって算出する。
(エステル価)=(ケン化価)−(酸価)
(ケン化価の測定)
・装置及び器具
三角フラスコ(200〜300ml)
空気冷却器(外径6〜8mm,長さ100cmのガラス管又は環流冷却器で、いずれも三角フラスコの口にすりあわせ接続できるもの)
水浴、砂浴又は熱板(約80℃の温度に調節できるもの)
ビュレット(50ml)
全量ピペット(25ml)
・試薬
0.5mol/l塩酸
0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液
フェノールフタレイン溶液
・測定法
(a)ワックス1.5〜3.0gを三角フラスコに1mgの桁まで精秤する。
(b)0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液25mlを全量ピペットを用いて加える。
(c)三角フラスコに空気冷却器を取り付け、ときどき内容物を振り混ぜながら30分間水浴、砂浴又は熱板上で穏やかに加熱して反応させる。加熱するときは、環流するエタノールの環が空気冷却器の上端に達しないように加熱温度を調節する。
(d)反応が終わった後、直ちに冷却し、内容物が寒天状に固まらないうちに空気冷却器の上から少量の水、又はキシレン:エタノール=1:3混合溶液を吹き付けてその内壁を洗浄した後、空気冷却器を外す。
(e)指示薬としてフェノールフタレイン溶液1mlを加えて、0.5mol/l塩酸で滴定し、指示薬の薄い紅色が約1分間現れなくなったときを終点とする。
(f)空試験は、ワックスを入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、予めキシレン、又はキシレン−エタノール混合溶媒を用いて溶解する。
・計算
A={(B−C)×28.05×f}/S
ただし、A:ケン化価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5mol/l塩酸の量(ml)
C:滴定に用いた0.5mol/l塩酸の量(ml)
f:0.5mol/l塩酸のファクター
S:ワックスの質量(g)
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
本発明においてトナーに含有されているワックスの酸価、水酸基価、エステル価、ケン化価を測定する場合には、ワックスをトナーから分取した後、上記測定方法に準じて測定を行っても良い。
以上本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例にもとづいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用したワックス(a),(b)を表1,2に示した。ワックス(a)のDSC測定結果を図1に示す。
Figure 2005266789
Figure 2005266789
<高分子量成分の製造例A−1>
・スチレン 80.0質量部
・アクリル酸n−ブチル 18.0質量部
・メタクリル酸 2.0質量部
・2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロへシル)プロパン 0.8質量部
上記各成分を、4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で10時間保持し、重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を高分子量成分A−1とする。得られた樹脂の物性を表3に示す。
<高分子量成分の製造例A−2乃至A−4>
製造例A−1において、処方を表3に示すように変更した以外は製造例A−1と同様にして、高分子量成分A−2乃至A−4を得た。得られた樹脂の物性を表3に示す。
Figure 2005266789
<カルボキシル基を有するビニル樹脂の製造例B−1>
・高分子量成分A−1 30質量部
・スチレン 56.5質量部
・アクリル酸n−ブチル 12.8質量部
・メタクリル酸 0.7質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1.4質量部
オートクレーブ内にキシレン200質量部を投入し、窒素ガスを導入して充分に脱気する。次に容器を密閉して200℃まで加熱しその温度を保持しつつ上記処方のうち高分子量成分A−1を除く化合物をキシレン中に4時間かけて滴下し、更にキシレン還流下で1時間保持し、重合を完了した。そして、キシレン溶液中に高分子量成分A−1を加えてよく混合し、樹脂B−1を含有する樹脂溶液を得た。樹脂B−1の物性を表4に示す。
<カルボキシル基を有するビニル樹脂の製造例B−2〜B−5>
製造例B−1において、処方を表4に示すように変更した以外は製造例B−1と同様にして、樹脂B−2〜B−5を含有する樹脂溶液を得た。樹脂B−2〜B−5の物性を表4に示す。
<カルボキシル基を有しないビニル樹脂の製造例B−6>
製造例B−1において、処方を表4に示すように変更した以外は製造例B−1と同様にして、樹脂B−6を含有する樹脂溶液を得た。樹脂B−6の物性を表4に示す。
Figure 2005266789
<エポキシ基を有するビニル樹脂の製造例C−1>
・スチレン 76.2質量部
・アクリル酸n−ブチル 18.0質量部
・メタクリル酸グリシジル 5.6質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 5.0質量部
オートクレーブ内にキシレン200質量部を投入し、窒素ガスを導入して充分に脱気する。次に容器を密閉して170℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、樹脂C−1を含有する樹脂溶液を得た。樹脂C−1の物性を表5に示す。
<エポキシ基を有するビニル樹脂の製造例C−2及びC−3>
製造例C−1において、処方を表5に示すように変更した以外は製造例C−1と同様にして、樹脂C−2及びC−3を含有する樹脂溶液を得た。樹脂C−2及びC−3の物性を表5に示す。
Figure 2005266789
<結着樹脂の製造例1>
オートクレーブ内にカルボキシル基を有するビニル樹脂溶液B−1(樹脂成分90質量部含有)を加え、窒素ガスを導入して充分に脱気する。次に容器を密閉して160℃に昇温させ、エポキシ基を有するビニル樹脂C−1溶液(樹脂成分5質量部含有)を添加し、2時間反応を行った。その後、180℃に昇温し、更にエポキシ基を有するビニル樹脂C−1溶液(樹脂成分5質量部含有)を加え、4時間反応後、1℃/minの降温速度で降温し、150℃で4時間保持し、その後室温まで下げ(1℃/minの降温速度)、反応終了とした。その後、減圧下で溶媒を蒸留除去した。(反応条件i)
樹脂物性を表6に示す。尚、得られた結着樹脂1の軟化点は、140℃であった。
<結着樹脂の製造例2〜9>
表6に示すように変更した以外は製造例1と同様にして、結着樹脂2〜9を得た。得られた樹脂の物性を表6に示す。尚、反応条件i及びiiとは、下記の条件である。
(反応条件ii)
オートクレーブ内にカルボキシル基を有するビニル樹脂溶液Bを加え、窒素ガスを導入して充分に脱気する。次に容器を密閉して180℃に昇温させ、エポキシ基を有するビニル樹脂溶液Cを添加し(結着樹脂9においては添加せず)、6時間反応を行い、その後、1℃/minの降温速度で室温まで下げ、反応終了とした。その後、減圧下で溶媒を蒸留除去した(各樹脂成分種と添加量比については表6に示す。尚、樹脂溶液B及びCは、表6に記載されたB/C比率を満たすように、それぞれの樹脂成分を含有する量だけ用いた。)。
(反応条件iii)
溶媒除去したカルボキシル基を有するビニル樹脂90質量部と、溶媒除去したエポキシ基を有するビニル樹脂10質量部とをヘンシェルミキサーにて混合後、二軸混練押し出し機を用いて160℃で混練し、冷却後、粉砕し、結着樹脂を得た。
Figure 2005266789
<実施例1>
・上記結着樹脂1 102質量部
・球形磁性酸化鉄(平均粒径:0.21μm、79.58kA/m(1kエルステッド)の磁場における磁気特性〔σr:5.1Am/kg、σs:69.6Am/kg〕) 95質量部
・ワックス(a−1) 2質量部
・ワックス(b−1) 5質量部
・負荷電性制御剤(鉄アゾ化合物、保土ヶ谷化学社製:T−77) 2質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、第1ニーディング部の加熱温度を130℃、第2ニーディング部の加熱温度を110℃、パドルの回転数を200rpmで、主軸冷却を行いながら溶融混練し(混練条件1))、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に分級除去し、トナー粒子を得た。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー1を調製し、評価を行った。トナー物性を表7に示す。
<実施例2>
用いる結着樹脂を表7のように変更した以外はトナー1と同様にしてトナー2を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
<実施例3>
用いる結着樹脂を表7のように変更し、混練条件について第1ニーディング部の加熱温度を110℃、第2ニーディング部の加熱温度を130℃、パドルの回転数を200rpmで主軸冷却なし(混練条件2))にした以外はトナー1と同様にしてトナー3を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
<実施例4〜6>
用いる結着樹脂,ワックスを表7のように変更し、混練条件について第1,2ニーディングともに加熱温度を130℃、パドルの回転数を200rpmで主軸冷却なし(混練条件3))にした以外はトナー1と同様にしてトナー4〜6を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
<比較例1〜5>
用いる結着樹脂、ワックスを表7のようにし、混練条件を3)に変更した以外はトナー1と同様にしてトナー7〜11を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
次に、調製されたトナーを用いて、以下に示すような方法によって評価を行った。評価結果を表8に示す。
(評価機)
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて以下の評価を行った。
<低温定着性、耐高温オフセット性>
上記トナーをプロセスカートリッジに入れ、市販のHewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nの定着器を取り外し、外部駆動及び定着器の温度制御装置を取り付けた定着試験装置にて定着ローラーの表面温度を120〜250℃まで外部から変更できるようにし、さらに、プリントスピードを1.2倍に改造し評価に用いた。
(1)低温定着性
温度15℃,湿度10%環境下でPremium Multipurpose4024(XEROX社製)紙にベタ黒画像を作成した。この画像を2つ折り曲げ、温度のかかっていない上記定着器を通過させた。更に画像を広げ逆方向に折り曲げ同様に外部定着器を通過させた。折り曲げ試験の前後で折り曲げ線の中心を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率を測定した。
(2)耐高温オフセット性
上半分が100μm幅の横線パターン(横幅100μm、間隔100μm)、およびベタ黒、下半分が白の画像をプリントし、白画像上の汚れの発生しない最高温度を示した。試験紙としてオフセットの発生しやすい複写機用普通紙(60g/m)を使用した。
(3)耐ブロッキング性
トナー10gをポリプロビレンのカップに量り、表面を平らにならした後、薬包紙をしきその上に10gの鉄粉キャリアをのせ、50℃,0%RH環境で5日間放置し、トナーのブロッキング状態を評価した。
A:カップを傾けるとトナーがさらさらと流れる
B:カップを回していると、トナー表面が少しずつ崩れだし、さらさらの粉になる。
C:カップを回しながら外から力を加えるとトナー表面が崩れ、そのうちさらさらと流れだす。
D:ブロッキング球が発生。先のとがったものでつつくと崩れる。
E:ブロッキング球が発生。つついても崩れにくい。
(4)画像濃度、カブリ
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300n(A4、45枚/分:プロセススピード256m/sec)を用いて、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下で、1枚/10秒のプリント速度、印字比率4%で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m)に4500枚の画出し試験を行い、1日環境試験室に放置後、また4500枚の画出し試験を行う。これを繰り返し、計18000枚の画出し試験を行った。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(5)スリーブネガゴースト
通常の複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m)に、低温低湿環境下(15℃,10%RH)で上記プリンタを用いて、18000枚プリントアウトし、4500枚ごとにスリーブネガゴーストの評価を行った。ゴーストに関する画像評価には、スリーブ一周分だけベタ黒の帯を出力した後ハーフトーンの画像を出力した。パターンの概略図を図4に示す。評価方法は、一枚のプリント画像のうち、スリーブ2周目で、1周目で黒画像が形成された場所(黒印字部)と、されない場所(非画像部)での、マクベス濃度反射計により測定された反射濃度の差を下記のごとく算出した。ネガゴーストは、一般的にスリーブ2周目で出る画像において、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が、スリーブ1周目に非画像部だった部分の画像濃度よりも低く、1周目で出したパターンの形がそのまま現れるゴースト現象である。ここの濃度差を、反射濃度差を測定することにより評価を行った。
反射濃度差=反射濃度(像形成されない場所)−反射濃度(像形成された場所)
反射濃度差が小さいほどゴーストの発生はなくレベルは良い。ゴーストの総合評価としてA、B、C、Dの4段階で評価し、4500枚ごとの評価の中での最悪の評価結果を示す。
A:反射濃度差 0.02未満
B:反射濃度差 0.02以上0.04未満
C:反射濃度差 0.04以上0.06未満
D:反射濃度差 0.06以上
(6)飛び散り
低温低湿環境下での耐久において、初期と18000枚時に100μm(潜像)ラインでの格子パターン(1cm間隔)をプリントし、その飛び散りを光学顕微鏡を用いて目視で評価した。
A:ラインが非常にシャープで飛び散りはほとんどない。
B:わずかに飛び散っている程度でラインは比較的シャープである。
C:飛び散りがやや多くラインがぼんやりした感じになる。
D:Cのレベルに満たない。
Figure 2005266789
Figure 2005266789
昇温時のDSC曲線の吸熱ピーク部分を示す図である。 本発明に好適な混練装置の概略図である。 図2の混練装置におけるパドルの詳細図である。 スリーブゴーストを評価するためのパターンの説明図である。

Claims (7)

  1. 少なくとも結着樹脂及び着色剤を含有するトナーにおいて、
    該結着樹脂は、ビニル系樹脂を含有しており、
    該トナーは、オルトジクロロベンゼン可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析における粘度検出器により得られる絶対分子量の重量平均分子量Mwが1.0×10〜1×10であり、
    該絶対分子量の1万以下の割合が40〜90質量%で、かつ、100万以上の割合が0〜10質量%未満であり、
    粘度検出器から得られる固有粘度が0.10〜0.80ml/gであることを特徴とするトナー。
  2. 該ビニル系樹脂が、スチレンに由来するユニットを主構成成分とするスチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 該トナーは、トナー中の樹脂成分に対して、オルトジクロロベンゼン不溶分を0.1乃至20質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 該結着樹脂は、カルボキシル基を有するビニル系樹脂とカルボキシル基とエポキシ基が反応して形成された結合を部分構造として有するビニル系樹脂とを少なくとも含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
  5. 該トナーは、炭化水素ワックス(a)を含有しており、該炭化水素ワックス(a)が示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸熱ピークに関し、吸熱ピークにおける立ち上がり温度が80℃以上であり、吸熱におけるオンセット温度が105℃以下であり、吸熱ピーク温度が100〜120℃の範囲にあり、かつ、120℃における粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
  6. 該トナーは、炭化水素ワックス(a)に加えて、炭化水素ワックス(b)を含有しており、該炭化水素ワックス(b)の水酸基価(Hv)が5〜150mgKOH/gで、かつ、120℃における粘度が80mPa・s以下であり、
    該結着樹脂の酸価(Av)と該炭化水素ワックス(b)の水酸基価(Hv)とが下記式
    0.05≦(Av)/(Hv)≦3.5
    を満足することを特徴とする請求項5に記載のトナー。
  7. 120℃における炭化水素ワックス(a)の粘度(ηa)と炭化水素ワックス(b)の粘度(ηb)との関係が
    ηa>ηb
    となることを特徴とする請求項6に記載のトナー。
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