本発明者らは鋭意検討の結果、トナー粒子の円形度を制御し、且つ、トナー粒子の表面粗さを制御することで、トナーの現像特性をコントロールできることを見出した。
本発明のトナーは、円相当径3μm以上400μm以下のトナー粒子において、平均円形度が0.935以上0.970未満、好ましく0.935以上0.965未満、より好ましくは0.935以上0.960未満、より好ましくは0.940以上0.955未満であることにより、画像面積あたりのトナーの消費量を低減することができる。トナー粒子の円形度が高くなると、トナーの流動性が増すので個々のトナーが自由に動きやすくなる。OPC感光体の如き静電荷潜像担持体に形成されている静電荷潜像を現像する際に、トナーは、円形度が高いトナーほど一つ一つのトナー単位で現像される確率が高くなるため、静電荷潜像担持体上でのトナー画像の高さが低くなり、トナーの消費量を低減することができる。この時に、トナー粒子の円形度が十分に高くないと、トナーは凝集体としての挙動を示しやすくなり、凝集体として静電荷潜像担持体上に移行されやすくなる。そのようなトナー画像は高さが高くなり、同じ面積を現像する場合において流動性の優れたトナーよりも多い量のトナーが静電荷潜像担持体に移行し、そのためトナーの消費量が増加する。また、円形度の高いトナー粒子で形成されているトナーは、トナー画像がより密な状態をとりやすい。その結果、静電荷潜像担持体から中間転写体を介して、又は、介さずに転写材へ転写されたトナー画像は、転写材に対するトナーの隠蔽率が高くなり、少ないトナー量でも十分な画像濃度を得ることができる。平均円形度が0.935未満だと、形成されたトナー画像の高さが高くなり、トナーの消費量が増加する。また、トナー粒子間の空隙が増え、形成されたトナー画像上においても十分な隠蔽率が得られないため、必要な画像濃度を得るためにはより多くのトナー量を必要とし、結果的にトナー消費量を増加させてしまう。平均円形度が0.970以上だと、現像スリーブ上にトナーが過剰に供給されることによってスリーブ上に不均一にトナーがコートされてしまい、結果としてブロッチが発生しやすくなる。
より好ましくは、本発明のトナーは、円相当径3μm乃至400μmのトナーにおける平均円形度が0.935以上0.970未満、好ましく0.935以上0.965未満、より好ましくは0.935以上0.960未満、さらに好ましくは0.940以上0.955未満であることにより、トナー画像面積あたりのトナーの消費量を減少できる。これは、円形度の高いトナーは、トナー画像において、より密な状態をとりやすくなるために、転写材に対するトナーの隠蔽率が高くなり、少ないトナー量でも十分な画像濃度を得ることができることによる。
トナーの平均円形度が0.935未満だと、トナーの消費量が増加し、平均円形度が0.970以上だと、ブロッチが発生しやすくなる。
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて23℃、60%RHの環境下で測定を行い、円相当径0.60μm〜400μmの範囲内の粒子を測定し、そこで測定された粒子の円形度を下式(1)により求め、更に円相当径3μm以上400μm以下の粒子において、円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子投影像の周囲長を示す。〕
本発明に用いている円形度はトナー粒子の凹凸の度合い及びのトナーの凹凸の度合い指標であり、トナー粒子及びトナーが完全な球形の場合は1.000を示し、トナー粒子及びトナーの表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各トナー粒子及び各トナー(外添剤を有するトナー粒子)の円形度を算出後、平均円形度の算出にあたって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の値と、各粒子の円形度の総和を用いる算出式によって算出される平均円形度の誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であり、本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、各粒子の円形度の総和を用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA1000」と比較して、処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)することによりトナー粒子及びトナーの形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子及び粒子のより確実な捕捉を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状及び粒度分布を測定する必要がある場合には、より正確に形状及び粒度分布に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水200〜300ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を約0.1〜約0.5g加える。試料を分散した懸濁液は超音波発振器で2分間分散し、分散液濃度を0.2万個/μl〜1.0万個/μlとして粒子の円形度分布を測定する。超音波発振器としては、例えば以下の装置を使用し、以下の分散条件を用いる。
UH−150(株式会社エス・エム・テー社製)
OUTPUT レベル:5
コンスタントモード
測定の概略は、以下の通りである。
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
また、本発明においては、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径0.6μm乃至400μmのトナー粒子における個数基準の粒径分布において0.6μm以上3μm未満のトナー粒子比率が0個数%以上20個数%未満、好ましくは0個数%以上17個数%未満、より好ましくは1個数%以上15個数%未満であることが好ましい。0.6μm以上3μm未満のトナー粒子は、トナーの現像性、特にカブリ特性に大きな影響を与える。このような微粒子トナーは過度に高い帯電性を有しており、トナーの現像時に過剰に現像されやすく、画像上にカブリとして現れやすい。しかしながら、本発明においてはこのような微粒子状のトナー粒子の比率が少ないことによってカブリを低減することができる。
また、本発明のトナーは前述したとおり平均円形度が高いためにトナーがより密に詰まった状態を取りやすいために現像スリーブ上により厚くトナーがコートされ、結果的にスリーブ上のトナー層の上層と下層で帯電量が異なり、連続して広い面積の画像を現像した時に先端の画像濃度よりもスリーブ2周目以降の画像の方が画像濃度が低下してしまうスリーブネガゴーストを発生する場合がある。この時にトナー中に超微粉が多く存在すると、超微粉は他のトナー粒子よりも高い帯電量を有しているために画像濃度差を発生させやすく、スリーブネガゴーストが発生しやすくなる。本発明においては、超微粉量が少ないのでスリーブネガゴーストの発生を抑制することができる。0.6μm以上3μm未満の粒子比率が20個数%以上だと、画像上のカブリが増加し、更にスリーブネガゴーストが悪化する場合がある。
また、本発明のトナー粒子は円形度0.960未満のトナー粒子の個数累積値が20%以上70%未満、好ましくは25%以上65%未満、より好ましくは30%以上65%未満、より好ましくは35%以上65%未満であることが好ましい。トナー粒子の円形度は、個々のトナー粒子によって異なる。円形度が異なるとトナー粒子としての特性も異なるため、適度な円形度のトナー粒子比率が適正な値であることが、トナー粒子の現像性を高める上で好ましい。本発明のトナー粒子は適度な円形度を有しており、且つ適度な円形度分布を有しているため、トナー粒子の帯電分布が均一になり、カブリを低減することができる。円形度0.960未満のトナー粒子の個数累積値が20%未満だと、トナーが耐久時に劣化する場合がある。円形度0.960未満のトナー粒子の個数累積値が70%以上だと、カブリが発生したり、高温高湿環境下での画像濃度が低下する場合がある。
また、本発明においては、トナー粒子の平均面粗さが5.0nm以上35.0nm未満、好ましくは8.0nm以上30.0nm未満、より好ましくは10.0nm以上25.0nm未満であることを特徴とする。トナー粒子が適度な表面粗さを有していることにより、トナー粒子間に適度な空隙が生まれ、トナーの流動性を向上させることができ、より良好な現像性をもたらすことができる。特に、本発明の特徴とする円形度を有するトナー粒子において、該平均面粗さを有していることにより優れた流動性をトナー粒子に付与することができる。また、本発明のトナー粒子は3μm未満の超微粒子が少ないことも流動性の向上に効果的に作用する。即ち、トナー粒子中に超微粒子が多く存在すると、トナー粒子の表面の凹部分に超微粒子が入り込み、見かけ上のトナー粒子の平均面粗さを小さくしてしまい、トナー粒子間の空隙が減り、トナーにより好ましい流動性を付与することを妨げてしまう。トナー粒子の平均面粗さが5.0nm未満だと、トナーに十分な流動性が付与できず、フェーディングを生じて画像濃度が低下する。トナー粒子の平均面粗さが35.0nm以上だと、トナー粒子間の空隙が多くなりすぎることでトナーの飛び散りが生じやすくなる。
さらに、本発明においては、トナーの平均面粗さが10.0nm以上26.0nm未満、好ましくは12.0nm以上24.0nm未満であることが好ましい。
トナーの平均面粗さが10.0nm未満の場合、トナー粒子の凹部に多数の外添剤粒子が埋め込まれている状態となり、十分な流動性が付与しにくく、フェーディングが生じやすく、良好な画像が得られにくい。逆にトナーの平均面粗さが26.0nm以上の場合には、トナー粒子の表面の外添剤粒子が均一にコートされていない状態となり、帯電不良となりやすく、飛び散りの悪化が生じやすくなる。このように、トナーにおいても、適度な表面粗さと円形度を有する事で、より本発明の効果を得られやすくなる。
また、トナー粒子の最大高低差が50nm以上250nm未満、好ましくは80nm以上220nm未満、より好ましくは100nm以上200nm未満であることが好ましく、より良好な流動性をトナーに付与することができる。トナー粒子の最大高低差が50nm未満だと、トナーに十分な流動性を付与しにくく、フェーディングが生じて画像濃度が低下する場合がある。トナー粒子の最大高低差が250nm以上だと、トナーの飛び散りが生じる場合がある。
また、走査型プローブ顕微鏡で測定されるトナー粒子の表面の1μm四方のエリアを測定した時の表面積が1.03μm2以上1.33μm2未満、好ましくは1.05μm2以上1.30μm2未満、より好ましくは1.07μm2以上1.28μm2未満であることが好ましく、より良好な流動性をトナー粒子に付与することができる。トナー粒子の表面積が1.03μm2未満だと、トナーの流動性が低下し、フェーディングが生じて画像濃度が低下する場合がある。トナー粒子の表面積が1.33μm2以上だと、飛び散りを生じる場合がある。
本発明において、トナー粒子およびトナーの平均面粗さ、トナー粒子の最大高低差、表面積は、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定される。以下に、測定方法の例を示す。
プローブステーション:SPI3800N(セイコーインスツルメンツ(株)製)
測定ユニット:SPA400
測定モード:DFM(共振モード)形状像
カンチレバー:SI−DF40P
解像度:Xデータ数 256
Yデータ数 128
本発明においては、トナー粒子及びトナー(外添剤を有するトナー粒子)の表面の1μm四方のエリアを測定する。測定するエリアは、走査型プローブ顕微鏡で測定されるトナー粒子及びトナー表面の、中央部の1μm四方のエリアとする。測定するトナー粒子及びトナーは、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)に等しいトナー粒子及びトナーをランダムに選択して、そのトナー粒子及びトナーを測定する。測定されたデータは、2次補正を行う。異なるトナー粒子及びトナーを5個以上測定し、得られたデータの平均値を算出して、そのトナー粒子及びトナーの平均面粗さ、トナー粒子の最大高低差、表面積とする。
トナー粒子に外添剤が外添されているトナーにおいて、トナー粒子の表面を走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する場合は外添剤を取り除く必要があり、具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)トナー45mgをサンプル瓶に入れ、メタノールを10ml加える。
(2)超音波洗浄機で1分間試料を分散させて外添剤を分離させる。
(3)吸引ろ過(10μmメンブランフィルター)してトナー粒子と外添剤を分離する。 磁性体を含む磁性トナーの場合は、磁石をサンプル瓶の底にあてて磁性トナー粒子 を固定して上澄み液だけ分離させても構わない。
(4)上記工程(2)及び工程(3)を計3回行い、得られたトナー粒子を真空乾燥機で 室温で十分に乾燥させる。
外添剤を取り除いたトナー粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、外添剤がなくなっているのを確認した後、走査型プローブ顕微鏡でトナー粒子の表面観察をすることができる。外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、外添剤が十分に取り除かれるまで工程(2)及び工程(3)を繰り返し行った後に走査型プローブ顕微鏡でのトナー粒子の表面観察を行う。
工程(2)及び/又は工程(3)に代わる外添剤を取り除く他の方法としては、アルカリで外添剤を溶解させる方法が挙げられる。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
以下に各用語を説明する。
・平均面粗さ(Ra)
JIS B0601で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したもの。基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で次式で表される。
F(X,Y):全測定データの示す面
S
0:指定面が理想的にフラットであると仮定したときの面積
Z
0:指定面内のZデータ(指定面に対して垂直方向のデータ)の平均値
指定面とは、本発明においては1μm四方の測定エリアを意味する。
・最大高低差(P−V)
指定面内におけるZデータの最大値と最小値の差。
・表面積(S)
指定面の表面積。
次に、本発明の特徴とするトナー粒子を得るための好ましい方法として、トナーの構成材料を混合した後に、熱混練機を用いて混練し、冷却固化、粗粉砕を行った後に微粉砕し、その後、表面改質装置を用いてトナー粒子の表面の表面改質及び微粉除去を同時に行うことによって所望のトナー粒子を得る方法が挙げられる。
以下に、表面改質装置を用いてトナー粒子の表面改質をおこなうトナー粒子の製造方法に関し、表面改質工程で使用される表面改質装置の図面を参照しながら具体的に説明する。
本発明において、トナー粒子の表面改質とは、トナー粒子の表面を平滑化することを意味している。
図1は、本発明に係るトナー粒子の製造に好適に使用することのできる表面改質装置の一例を示し、図2は図1において高速回転する回転子の上面図の一例を示す。
図1に示す表面改質装置は、ケーシング、冷却水或いは不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、ケーシング内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク或いは円筒型のピン40を複数個有し、高速で回転する円盤上の回転体である分散ローター36(表面改質手段)、分散ローター36の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられているライナー34(ライナー表面上の溝はなくても構わない)、表面改質された原料を所定粒径に分級するための手段である分級ローター31、冷風を導入するための冷風導入口35、原料を導入するための原料供給口33、表面改質時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁38、処理後の粉体を排出するための粉体排出口37を有している。さらに、表面改質装置は、分級手段である分級ローター31と表面改質手段である分散ローター36とライナー34との間の空間を、分級手段へ導入される前の第一の空間41と、分級手段により微粉を分級除去された粒子を表面改質手段へ導入するための第二の空間42とに仕切る案内手段である円筒形のガイドリング39とを有している。分散ローター36とライナー34との間隙部分が表面改質ゾーンであり、分級ローター31及びローター周辺部分が分級ゾーンである。
分級ローター31の設置方向は図1に示したように縦型でも構わないし、横型でも構わない。また、分級ローター31の個数は図1に示したように単体でも構わないし、複数でも構わない。
以上のように構成してなる表面改質装置では、排出弁38を閉とした状態で原料供給口33から原料であるトナー粒子を投入すると、投入されたトナー粒子は、ブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター31で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉(トナー粒子)は遠心力によりガイドリング39の内周(第二の空間42)に沿いながら分散ローター36により発生する循環流にのり表面改質ゾーンへ導かれる。表面改質ゾーンに導かれたトナー粒子は分散ローター36とライナー34間で機械式衝撃力を受け、トナー粒子は表面改質処理される。表面改質されたトナー粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング39の外周(第一の空間41)に沿いながら分級ゾーンに導かれ、分級ローター31により、微粉は機外へ排出され、粗粉は、循環流にのり、再度表面改質ゾーンに戻され、トナー粒子は繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁38を開とし、排出口37より表面改質されたトナー粒子を回収する。
本発明のトナー粒子の製造においては、トナー粒子の表面改質工程において、トナー粒子の表面改質と同時に微粉を除去することが好ましい。それにより、トナー粒子中に存在する超微粒子がトナー粒子表面に固着することがないか又は抑制され、所望の円形度、平均面粗さ及び超微粒子量が調整されたトナー粒子を効果的に得ることができる。表面改質と同時に微粉を除去することができない場合、表面改質後のトナー粒子中に超微粒子量が多く存在してしまう上に、トナー粒子表面改質工程において、機械的、熱的な影響により、適正な粒径を有するトナー粒子の表面に超微粒子成分が固着してしまう。その結果、トナー粒子の表面に、固着した微粉成分による突起が生成し、所望の円形度及び平均面粗さを有するトナー粒子が得られにくい。
本発明において、「表面改質と同時に微粉成分を除去する」とは、トナー粒子の表面改質及び微粉除去を繰り返し行うことを意味し、それは前記のような単一装置内でそれぞれの工程を実施する装置を用いても良く、また、表面改質と微粉除去を異なる装置によって行い、それぞれの工程を繰り返しおこなっても良い。
本発明者が検討した結果、表面改質装置における表面改質時間(=サイクルタイム)としては、5秒乃至180秒、更に好ましくは、15秒乃至120秒であることが好ましい。表面改質時間が5秒未満の場合、改質時間が短時間過ぎるため、トナー粒子の表面改質が十分におこなわれず、トナー粒子からの微粉の除去が良好におこなわれない場合がある。また、改質時間が180秒を超えると、改質時間が長時間過ぎるため、表面改質時に発生する熱による機内融着の発生、及び処理能力の低下を招く場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該表面改質装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下とすることが好ましい。該表面改質装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下、より好ましくは0℃以下、更に好ましくは−5℃以下、特に好ましくは−10℃以下、最も好ましくは−15℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該表面改質装置内に導入する冷風温度T1が5℃を超えると、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
該表面改質装置内に導入する冷風は、装置内の結露防止という面から、除湿したものであることが好ましい。除湿装置としては公知のものが使用できる。給気露点温度としては、−15℃以下が好ましく、更には−20℃以下が好ましい。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該表面改質装置内は、機内冷却用のジャケットを具備しており、該ジャケットに冷媒(好ましくは冷却水、更に好ましくはエチレングリコールの如き不凍液)を通しながら表面改質処理することが好ましい。該ジャケットによる機内冷却により、トナー粒子の表面改質時における熱による機内融着を防止することができる。
表面改質装置の該ジャケット内に通す冷媒の温度は5℃以下とすることが好ましい。表面改質装置内の該ジャケット内に通す冷媒の温度を5℃以下、より好ましくは、0℃以下、更に好ましくは、−5℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該ジャケット内に導入する冷媒の温度が5℃を超えると、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下とすることが好ましい。該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下、好ましくは50℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2が60℃を超えると、表面改質ゾーンにおいては、それ以上の温度が影響するため、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、表面改質装置内の該分散ローターとライナーとの間の最小間隔が0.5mm乃至15.0mmとすることが好ましく、更には、1.0mm乃至10.0mmとすることが好ましい。また、該分散ローターの回転周速は75m/sec乃至200m/secとすることが好ましく、更には、85m/sec乃至180m/secとすることが好ましい。更に、表面改質装置内の該分散ローター上面に設置されている角型のディスク或いは円筒形のピンの上部と、該円筒型のガイドリングの下部との間の最小間隔が2.0mm乃至50.0mmとすることが好ましく、更には、5.0mm乃至45.0mmとすることが好ましい。
本発明において、該表面改質装置内の分散ローター及びライナーの粉砕面は耐摩耗処理されていることがトナー粒子の生産性上好ましい。耐摩耗処理方法は何ら限定されるものではない。また、該表面改質装置内の分散ローター及びライナーの刃形状に関しても、何ら限定されるものではない。
トナー粒子製造方法としては、あらかじめ所望の粒径付近に微粒子化された原料となるトナー粒子を、気流式分級機を用いて微粉及び粗粉をある程度除去した上で、表面改質装置によってトナー粒子の表面改質及び超微粉成分の除去を行うことが好ましい。あらかじめ微粉を除去しておくことにより、表面改質装置内でのトナー粒子の分散が良好になる。特に、トナー粒子中の微粉成分は、比表面積が大きく、他の大きなトナー粒子と比較して相対的に帯電量が高いために他のトナー粒子からの分離がされにくく、分級ローターで適正に超微粉成分が分級されない場合があるが、あらかじめトナー粒子中の微粉成分を除去しておくことによって、表面改質装置内で個々のトナー粒子が分散しやすくなり、超微粉成分が適正に分級ローターによって分級され、所望の粒度分布を有するトナー粒子を得ることができる。気流式分級機によって微粉を除去されたトナーは、コールターカウンター法を用いて測定される粒度分布において、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値が10%以上50%未満、好ましくは15%以上45%未満、より好ましくは15%以上40%未満であることが好ましく、本発明の表面改質装置によって効果的に超微粉成分を除去することができる。本発明で用いられる気流式分級機としては、エルボージェット(日鉄工業社製)等があげられる。
更に、本発明においては、該表面改質装置内の分散ローター及び分級ローターの回転数を制御することにより、トナー粒子の円形度、及びトナー粒子中の0.6μm以上3μm未満の粒子比率をより適正な値に制御することができる。
本発明においては、メタノール/水混合溶媒に対するトナー粒子の濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した時に、透過率が80%の時のメタノール濃度及び透過率50%の時のメタノール濃度が35〜75体積%、好ましくは40〜70体積%、より好ましくは45〜65体積%、より好ましくは45〜60体積%の範囲内であることが好ましい。このようなメタノール濃度−透過率特性を有するトナー粒子は、本発明の特徴とする表面改質装置を用いて、表面改質処理条件を適切な条件にすることによって得られ、トナー粒子表面における各原材料の露出割合が適切であり、適度且つシャープな帯電性をトナー粒子にもたらすことができる。また、本発明のトナー粒子は平均円形度が0.935以上0.970未満であり、トナーとしたときの流動性に優れる。このように流動性が良く、且つ帯電量分布がシャープであるトナーは、トナー容器内でトナーが均一且つ高い帯電性を有することができ、長期の使用においても良好且つ安定した画像濃度を得ることができる。特に高温高湿環境下のようなトナーが凝集して流動性が悪化したり、また、帯電量が低下しやすい環境下において特に有効に作用する。
トナー粒子の、透過率が80%の時のメタノール濃度及び透過率が50%の時のメタノール濃度が35体積%より低いと、トナーの帯電性が不十分となり、画像濃度が劣るようになる場合がある。また、透過率が80%の時のメタノール濃度及び透過率が50%の時のメタノール濃度が75体積%を超えると、トナーの凝集性が高くなるために十分な流動性が得られなくなり、高温高湿環境下での現像性が不十分となる場合がある。
また、トナー粒子の、透過率が80%の時のメタノール濃度と透過率が50%の時のメタノール濃度の濃度差が10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下であることが好ましく、より良好な現像性をトナーに付与することができる。濃度差が10%を超えると、トナーの表面状態が不均一になり、不正に現像されるトナーが増加してカブリが増加したり、帯電不良によりブロッチが発生しやすくなる。
本発明においては、トナー粒子の濡れ性、即ち疎水特性は、メタノール滴下透過率曲線を用いて測定する。具体的には、その測定装置として、例えば、(株)レスカ社製の粉体濡れ性試験機WET−100Pを用い、下記の条件及び手順で測定したメタノール滴下透過率曲線を利用する。まず、メタノール30〜50体積%と水50〜70体積%とからなる含水メタノール液70mlを容器中に入れ、この中に検体であるトナー粒子を0.1g精秤して添加し、トナー粒子の疎水特性を測定するためのサンプル液を調製する。次に、この測定用サンプル液中に、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定し、図3に示したようなメタノール滴下透過率曲線を作成する。この際に、メタノールを滴定溶媒としたのは、トナー粒子に含有される染料、顔料、荷電制御剤等の溶出の影響が少なく、トナー粒子の表面状態がより正確に観察できるためである。
このように粒子の形状及び表面性を改質する技術においては、表面改質装置の使用に加えて、トナー材料、特に結着樹脂の改良が重要である。結着樹脂の特性により改質性能に違いがでてくるためである。
本発明で使用する結着樹脂は、カルボキシル基とエポキシ基が反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂とを少なくとも含有することを特徴とする。このような結着樹脂は、上記のトナー粒子の表面改質と組み合わせることで、トナーはより高い帯電性能が得られ、画像濃度が低下することなく、長期間にわたり安定した画像が得られるのである。これは、結着樹脂中に負極性をもつ残存カルボキシル基やカルボキシル基とエポキシ基が反応して形成されたエステル部がトナー粒子表面で樹脂同士もしくは負帯電性制御剤と相互作用し、トナー粒子の表面における樹脂および負帯電性制御剤の分散状態を向上させるためである。
さらに、上述したように樹脂および帯電制御剤の分散性が改良される事で、トナーの帯電が均一に安定化し、特に低温低湿環境においては過度なチャージアップを抑制でき、またスリーブネガゴーストを発生させにくくする。
また、通常架橋樹脂を有するトナーは、製造過程において粗粒が発生しやすく、スリーブコートむらによる画像不良を起こしやすいが、上記表面改質工程を行うことで、粗粒を減少させ、高速現像装置においても、良好な画像が得られる。
さらに、こういった表面改質時にはトナー粒子の表面組成が変わり、意図した性能を発揮できない場合があるが、本発明では、より好ましくは結着樹脂の分子量分布を調整する事で、適度な粘度を結着樹脂に付与し、トナー粒子の表面組成を大きく変えることなく、所望の円形度に処理でき、上記効果を得られやすいのである。
具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布において、数平均分子量が1,000乃至40,000であることが好ましく、3,000乃至20,000であることがさらに好ましく、5,500乃至10,000であることが特に好ましい。また重量平均分子量が10,000乃至1,000,000であることが好ましく、50,000乃至500,000であることがさらに好ましく、70,000乃至200,000であることが特に好ましい。本発明のトナーは、上記の平均分子量を示すことが、定着性、耐オフセット性及び耐ブロッキング性のバランスをとる上で好ましい。また表面改質工程を行う上で、表面改質装置に負荷を掛け過ぎず、所望の円形度、超微粉量を得る上で好ましい。数平均分子量が1,000未満の場合、又は重量平均分子量が10,000未満の場合には、耐ブロッキング性が悪化しやすい。また必要以上に円形度が上がり、現像スリーブ上にトナーが過剰に供給されることによってスリーブ上に不均一にトナーがコートされてしまい、結果としてブロッチが発生しやすくなる。数平均分子量が40,000を超える場合、又は重量平均分子量が1,000,000を超える場合には、十分な定着性の向上を得ることが難しくなる。さらに所望の円形度を得られず、トナー消費量が増大する。
本発明のトナーは、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布において、分子量4,000乃至30,000の領域にメインピークを有することが好ましく、分子量5,000乃至25,000の領域にメインピークを有することがさらに好ましく、10,000乃至18,000であることが特に好ましい。本発明のトナーは、前記メインピークを有することが、定着性、耐オフセット性及び耐ブロッキング性を向上させる上で好ましい。メインピークが分子量4,000未満の場合には、耐ブロッキング性が悪化する傾向にあり、分子量30,000を超える場合には、良好な定着性が減少する傾向にある。さらに粉砕時に不均一に粉砕されるため、超微粉量が増加し、カブリが発生しやすくなる。
また、本発明のトナーは、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布において、分子量4,000乃至30,000にメインピークを有し、分子量50,000乃至20,000,000に少なくとも一つ以上のピーク又はショルダーを有することが好ましい。後者の分子量分布については、分子量5.0×104以上の領域の面積が全体の領域の面積に対して、1乃至50%の割合であり、分子量3.0×106以上の領域の面積が全体の面積に対して、0乃至20%の割合であることが好ましい。
本発明のトナーは、上記のピークプロファイルを示すことが、定着性、耐オフセット性及び耐ブロッキング性を向上させる上で好ましい。本発明のトナーでは、分子量4,000乃至30,000にメインピークを有することは、良好な定着性及び耐ブロッキング性を達成する上で有効であり、分子量50,000乃至20,000,000に少なくとも一つ以上のピークまたはショルダーを有することは、良好な耐オフセットを達成する上で有効である。
本発明のトナーは、ピークを有する分子量範囲が複数規定されている場合では、分子量4,000乃至30,000の領域にあるピークが最大のピーク(メインピーク)であることが定着性向上の観点から好ましい。
分子量50,000乃至20,000,000の領域にあるサブピークまたはショルダーは、結着樹脂の架橋反応により生成した成分であることが好ましく、耐オフセット性の向上に有効である。また分子量50,000乃至3,000,000未満の領域にピークを有する場合には、溶融粘度差の大きい分子量4,000乃至30,000の成分と分子量3,000,000乃至20,000,000の成分との分散性や、THF不溶分のトナー中における分散性を良好にして、現像性及び定着特性の向上に有効である。
本発明のトナーは、結着樹脂の質量を基準にして、THF不溶分を0.1乃至60質量%含有することが、耐オフセット性を向上させる上で好ましい。
THF不溶分は、5乃至60質量%であることがより好ましく、7乃至55質量%であることがより一層好ましく、9乃至50質量%であることがさらに一層好ましく、10乃至45質量%であることが最も好ましい。THF不溶分の含有量が前記範囲にあることが、定着性と耐オフセット性をバランスよく向上させる上で好ましく、特に良好な離型性を発現させる上で好ましい。
THF不溶分が5質量%未満の場合は、上記のオフセット性能が悪化し、60質量%を超える場合には、定着性が低下するだけでなく、トナー帯電性が不均一になり易い。また、トナー粒子の製造時に粗粒が発生しやすくなり、トナーの現像スリーブ上でのコート不良が発生しやすくなる。
本発明のトナーは、トナーのテトラヒドロフラン可溶成分の酸価が50mgKOH/g未満、より好ましくは1.0乃至40mgKOH/g、さらに好ましくは1.0乃至35mgKOH/gであることが、より良好な現像性、現像スリーブ及び定着プロセスの汚染を防止する上で好ましい。
本発明のトナーは、ガラス転移温度(Tg)が40〜70℃であることが好ましい。Tgが40℃未満の場合、耐ブロッキング性が悪化しやすく、70℃を超える場合は定着性が低下しやすい。
本発明において、トナーは、カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂を結着樹脂として含有する。さらに、本発明のトナーは、結着樹脂がカルボキシル基を有するビニル樹脂成分を含有していることが好ましい。この場合には、結着樹脂は、カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有し、カルボキシル基を有するビニル樹脂成分が酸価を有している。
結着樹脂として用いられる「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」は、カルボキシル基を有するビニル樹脂成分のカルボキシル基とエポキシ基を有するビニル樹脂成分のエポキシ基とが結合したものであるか、カルボキシル基及びエポキシ基とを有するビニル樹脂におけるカルボキシル基とエポキシ基とが結合したものであることが好ましい。好ましくは、カルボキシル基を有するビニル樹脂成分のカルボキシル基とエポキシ基を有するビニル樹脂成分のエポキシ基とを反応させるのが良い。
「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合」とは、例えば、エポキシ基としてグリシジル基を有する樹脂成分を用いる場合には、
〔式中、P
1はエポキシ基とを有するビニル樹脂成分のポリマー鎖を示し、P
2は、カルボキシル基を有するビニル樹脂成分のポリマー鎖を示す。〕
となり、架橋構造を形成するものである。
本発明に係る「カルボキシル基を有するビニル樹脂」、「カルボキシル基を有するビニル樹脂成分」、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」或いは、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂成分」を得るために用いることのできるカルボキシル基を有する単量体として、以下のものが挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、チグリン酸及びアンゲリカ酸の如き不飽和モノカルボン酸;これらの不飽和モノカルボン酸のα−あるいはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体、無水物及びα−或いはβ−アルキル誘導体が挙げられる。上記のカルボキシル基を有する単量体は、単独あるいは混合して用いることができ、また他のビニル系モノマーと公知の重合方法により共重合させて用いることもできる。
本発明に係る「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の酸価は、1.0乃至60mgKOH/g(より好ましくは1.0乃至50mgKOH/g、さらに好ましくは2.0乃至40mgKOH/g)であることが好ましい。1.0mgKOH/g未満の場合には、カルボキシル基とグリシジル基との架橋反応部位が少なくなるため、架橋構造が十分に発達しなくなり、トナーの耐久性の改良が十分に達成されにくくなる。このような場合には、エポキシ価の高いグリシジル基を有するビニル樹脂を用いることによって、架橋密度をある程度高めることができるが、残留エポキシ基が現像性に影響を与えたり、架橋構造の制御が難しくなったりする。酸価が60mgKOH/gを超える場合には、トナー粒子の吸湿性が強くなり、画像濃度が低下し、カブリが増加する傾向がある。
本発明に係る「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」において、良好な定着性や現像性を達成するために、数平均分子量は1,000乃至4万が好ましく、また、良好な耐オフセット性、耐ブロッキング性や耐久性を達成するために、重量平均分子量は、1万乃至1,000万が好ましい。
本発明に係る「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」は、低分子量領域にピークを有する低分子量成分と高分子量領域にピークを有する高分子量成分とを含有していることが好ましい。低分子量成分のメインピーク分子量は良好な定着性を達成するために、4,000乃至3万が好ましく(より好ましくは5000乃至25000)、高分子量成分のメインピーク分子量は、良好な耐オフセット性、耐ブロッキング性や耐久性を達成するために、10万乃至100万(より好ましくは10万乃至50万)であることが好ましい。
「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」においては、低分子量成分と高分子量成分とを、重量比で低分子量成分:高分子量成分=95:5〜50:50(好ましくは、90:10〜55:45)で用いることが、定着性及びワックス等の他の添加剤の分散性の点から好ましい。
該「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の高分子量成分が得られる合成方法としては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果、高重合度のものが得られる。更に、反応熱の調節が容易であり、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であることから、トナー用の結着樹脂の製造方法として有利な点がある。
しかしながら、添加した乳化剤のために重合体が不純になり易く、重合体を取リ出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
懸濁重合においては、水系媒体100質量部に対して、重合性単量体100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が挙げられ、一般に水系媒体100質量部に対して0.05〜1質量部で用いられる。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する開始剤、目的とするポリマーによって適宜選択される。
該「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の高分子量成分を得る際には、本発明の目的を達成する為に、重合開始剤として、以下に例示する様な多官能性重合開始剤を用いることが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイドの如き1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレートの如き1分子内に、パーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
これらのうち、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、結着樹脂として要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に半減期10時間を得るための分解温度に関して、多官能性重合開始剤の分解温度よりも低い分解温度を有する単官能性重合開始剤と併用することが好ましい。
単官能性重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)べンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼンの如きアゾおよびジアゾ化合物が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合エ程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加することが好ましい。
これらの重合開始剤は、効率の点から重合性単量体100質量部に対し0.01〜10質量部用いるのが好ましい。
「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いることのできる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」の低分子量成分の合成方法としては、公知の方法を用いることができる。塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくいという問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、カルボキシル基を有するビニル樹脂中の低分子量成分を得るには好ましい。
溶液重合で用いる溶媒としては、キシレン、トルエン、クメン、酢酸セロソルブ、イソプロピルアルコールまたはベンゼンを用いることができる。重合性単量体としてスチレンモノマーを使用する場合、溶媒としてはキシレン、トルエンまたはクメンが好ましい。溶媒は、重合する単量体或いは得られる重合体によって適宜選択される。反応温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、得られるポリマーによって異なるが、通常70〜230℃で行うのが良い。溶液重合においては、溶媒100質量部に対して重合性単量体30〜400質量部で行うのが好ましい。更に、重合終了時に溶液中で他の重合体を混合することも好ましく、数種の重合体を混合できる。
次に、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いられるエポキシ基を有するビニル樹脂について説明する。本発明におけるエポキシ基とは、酸素原子が同一分子内の異なる炭素原子と結合し、環状エーテル構造を形成している官能基である。
本発明において用いることのできるエポキシ基を有する単量体としては、以下のものが挙げられる。
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、アリルβ−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、一般式(1)で表されるグリシジルモノマーが好ましく用いられる。
〔一般式(1)において、R
1、R
2及びR
3は、同一でも異なっていても良く、それぞれ水素原子、又は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基及びアルコシキカルボニル基からなるグループより選ばれる官能基を示す。〕
このようなエポキシ基を有する単量体は、単独であるいは複数種を混合して重合を行っても良く、また、他のビニル系単量体と公知の重合方法により共重合させることによって、エポキシ基を有するビニル樹脂を得ることができる。
本発明に係る結着樹脂を得る際に用いることのできる「エポキシ基を有するビニル樹脂」は、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは2,000乃至10万、より好ましくは2,000乃至5万、更に好ましくは3,000乃至4万であることが好ましい。Mwが2,000未満の場合、結着樹脂中の架橋構造が不完全になりやすく、混練工程において分子の切断が生じやすく、耐久性を低下させやすい。Mwが10万を超える場合には、定着性を低下させる傾向にある。
また、エポキシ価は、0.05乃至5.0eq/kgものが好ましく、より好ましくは0.05乃至2.0eq/kgである。0.05eq/kg未満の場合、架橋反応が進行しにくく、高分子量成分やTHF不溶分の生成量が少なく、耐オフセット性やトナーの強靭性が小さくなる。5.0eq/kgを超える場合、架橋反応は起こりやすい反面、混練工程において分子切断が多く、耐オフセット性の効果が半減する。
本発明に係る「エポキシ基を有するビニル樹脂」は、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を得る際に用いる「カルボキシル基を有するビニル樹脂」及び「その他に含有されているカルボキシル基を有するビニル樹脂」中の合計のカルボキシル基1当量に対して、エポキシ基が0.01乃至10.0当量、好ましくは0.03乃至5.0当量の混合比で用いられることが好ましい。エポキシ基が0.01当量未満の場合、結着樹脂中において、架橋点が少なくなり、耐オフセット性などの架橋反応による効果が発現しにくくなる。また、10.0当量を超えると、架橋反応は起こりやすくなる反面、過剰のTHF不溶分の生成などにより、分散性の低下や粉砕性の低下が生じ、また現像の安定性も低下してしまう傾向にある。
また、「エポキシ基を有するビニル樹脂」は、カルボキシル基1当量に対して、エポキシ基を0.03乃至1当量未満、特には0.03乃至0.5当量用いることが好ましい。カルボキシル基1当量に対して、エポキシ基を1当量未満となるようにそれぞれのビニル樹脂を用いた場合、カルボキシル基を有するビニル樹脂が、エポキシ基との架橋を形成しない状態で残存するようになるため、結着樹脂及びトナーとしての所望の酸価が容易に得られるようになる。
また、本発明に係る結着樹脂を得るに際して、カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂を用いる場合には、数平均分子量は、良好な定着性を達成するために、1,000乃至4万が好ましい。また、重量平均分子量は、良好な耐オフセット性及び耐ブロッキング性を達成するため、1万乃至1,000万が好ましい。
カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂は、カルボキシル基を有するモノマーとエポキシ基を有するモノマーを混合し、他のビニルモノマーと公知の重合方法により共重合させることにより得られる。
本発明において、カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂を得る手段としては、(1)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂を溶液状態で混合し、反応釜内で熱を加えることにより架橋反応を起こさせる、また、(2)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂をそれぞれ反応釜から取り出し、ヘンシェルミキサーの如き混合機でドライブレンドを行い、2軸押し出し機等で熱溶融混練する事により、カルボキシル基とエポキシ基の反応を起こし、架橋させても良い。カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂を用いる場合も同様に、2軸押し出し機に如き混練機で熱溶融混練することにより、カルボキシル基とエポキシ基とを反応させることができる。
本発明において、結着樹脂として用いられる「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」は、THF不溶分を0.1乃至60質量%含有することが好ましい。THF不溶分が上記範囲である場合、製造工程中の混練工程において、樹脂自体が適度な溶融粘度を有することができるため、材料の均一な分散性を達成することができる。THF不溶分が60質量%を超える場合、樹脂自体の溶融粘度が大きくなり、材料の分散性が低下してしまう傾向にある。
カルボキシル基を有するモノマー及びエポキシ基を有するモノマーと共重合させることのできるビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられる。例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−1−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ステアリル、アクリル酸(2−クロルエチル)、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロ一ル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
これらの中でもスチレン重合体及びスチレン−(メタ)アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましく、この場合、少なくともスチレン重合体成分またはスチレン−(メタ)アクリル系共重合体成分を65質量%以上含有することが定着性、混合性の点で好ましい。
本発明に係る結着樹脂は、カルボキシル基を有するビニル樹脂を含有している。カルボキシル基を有するビニル樹脂を含有することにより、本発明に係る結着樹脂が酸価を有するようになる。カルボキシル基を有する樹脂が、ビニル系樹脂であることによって、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」との良好な相溶性が得られる。結着樹脂中に含有される「カルボキシル基を有するビニル樹脂」としては、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を製造する時に用いるビニル樹脂と同じものを用いることができる。
また、本発明に係る結着樹脂には、i)エポキシ基を有するビニル樹脂、ii)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂との樹脂混合物、あるいは、iii)カルボキシル基及びエポキシ基を有するビニル樹脂が含有されていても良い。これらのビニル樹脂としては、「カルボキシル基とエポキシ基とが反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂」を製造する時に用いるビニル樹脂と同じものを用いることができる。
また、本発明に係る結着樹脂は、酸価1〜50mgKOH/gであり、より好ましくは1〜40mgKOH/gであり、さらに好ましくは2〜40mgKOH/gである。このような酸価を有する結着樹脂を用いることによって、トナー中のTHF可溶分の酸価を所望の範囲に調整することができる。また、トナー中にワックスを含有している場合、ワックスと結着樹脂との静電的な引力を高めることができるという点でも好ましい。
また、その他にも、本発明に係る結着樹脂としては、下記の如き重合体を含有していても良い。例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレンーメタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が使用できる。本発明において、これらの任意成分の樹脂としては、結着樹脂中、30質量%以下(より好ましくは、20質量%以下)の含有量で含有されていてもよい。
本発明のトナーは、荷電制御剤を含有することが好ましい。トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、その他にも、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。また、トナーを負帯電性に制御する荷電制御剤としては、下記一般式(2)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
上記一般式(2)で表される荷電制御剤では、特に、中心金属としてはFe又はCrが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基、アニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
またトナーを負帯電性に制御する荷電制御剤としては、例えば下記一般式(3)で表される塩基性有機酸金属錯体が挙げられる。
上記一般式(3)で表される荷電制御剤では、特に、中心金属としてはFe、Cr、Si、Zn、Alが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
上記一般式(3)で表される荷電制御剤の中でもアゾ系金属錯体がより好ましく、さらには下記一般式(4)で表されるアゾ系鉄錯体が最も好ましい。
上記一般式(4)で表されるアゾ系金属錯体の具体例を下記構造式(5)〜(10)を以下に示す。
本発明のトナーを正帯電性に制御するものとしては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
また、下記一般式(11)で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部又は一部)としての作用をも有する。
前記正帯電性の荷電制御剤としては、特に下記一般式(12)で表される化合物が好ましい。
具体的な商品名として、負帯電用としては、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)があげられ、正帯電用としては好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
本発明のトナーはワックスを含有してもよい。本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えばパラフィンワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックスおよびその誘導体などである。誘導体には酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200 (三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜15質量部で用いられ、好ましくは0.5〜12質量部で用いるのが効果的である。
これらのワックスは、示差熱分析測定装置(DSC)を用いて測定される融点が65℃以上130℃未満、好ましくは70℃以上120℃未満、更に好ましくは70℃以上110℃であることが好ましい。トナー粒子中にこのような融点を有するワックスは適度な硬さを有しており、トナー粒子の表面改質工程において所望の円形度、粒度分布、表面面粗さを有するトナー粒子を効果的に得ることができる。ワックスの融点が65度未満の場合、トナーの保存性が悪化する場合がある。ワックスの融点が130℃を超えると、トナー粒子が硬くなりすぎて表面改質されたトナーの生産性が悪化する場合がある。
本発明のトナーは着色剤を含有する。
着色剤の役割を兼ねて、磁性体を用いることもできる。トナーに使用される磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2〜40m2/g(より好ましくは4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20〜200質量部で用いられる。好ましくは40〜150質量部で用いられる。
個数平均径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明のトナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーが挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
本発明のトナー粒子には、無機微粒子が外添される。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
シリカ微粉体の好ましい疎水化処理として、ヘキサメチルジシラザンで処理し、次いでシリコーンオイルで処理することにより調製する方法が挙げられる。
上記のようにシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、後にオイル処理することが疎水化度を効果的に上げることができ、好ましい。
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体に施したものも、シリカ系同様に好ましい。
本発明のトナー粒子には、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の添加剤を外添してもよい。
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.01〜5質量部(好ましくは0.01〜3質量部)使用するのが良い。
本発明のトナーは、好ましくは重量平均粒径を2.5〜10.0μm、好ましくは5.0〜9.0μm、より好ましくは6.0〜8.0μmとした場合に十分な効果が発揮され、好ましい。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明のトナーは、磁性キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20〜300μmの粒子がキャリア粒子として使用される。
キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質を付着または被覆されているものが好ましい。
本発明に係るトナー粒子は、結着樹脂と着色剤と、必要に応じてその他の成分を含有する組成物を溶融混練(混練工程)し、得られた混練物を粉砕(粉砕工程)することによって得られたものであることが好ましい。トナー粒子の構成材料は、ボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱混練機を用いてよく混練することが好ましい。また粉砕工程は、粗粉砕工程と微粉砕工程に分かれていても良く、またその後に、分級(分級工程)を行っても良い。更に、本発明に係るトナー粒子の平均円形度及び平均面粗さを満たすために、上述したような表面改質装置を用いてトナー粒子の表面改質を行う方法が好ましく、特には分級工程後に表面改質を行うことが好ましい。また、微粉除去を、表面改質と同時に行うことが好ましい。
混練工程を経てトナーを製造した場合、トナー粒子の構成材料が粒子中で均一、且つ微細に分散させることができる。また、構成材料が良好に分散された混練物を粉砕することにより、トナー粒子表面における構成材料の分布が好適なものとなり、その結果、本発明の特徴とする特定の平均面粗さ、平均円形度を有するトナー粒子の効果を十分に発揮することができる。混練工程、粉砕工程を経ずにトナー粒子を製造した場合、トナー粒子表面における構成材料の分布の制御が困難となり、トナー粒子が適正な平均面粗さ、平均円形度を有していたとしても、十分な効果を発揮しにくくなる傾向にある。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩いが挙げられる。
本発明に係るトナー及び各成分の物性は、以下の方法で測定される。
(I)トナー及び原料樹脂の分子量分布
本発明において、トナー及び原料樹脂のTHF可溶分のGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製あるいは、昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることができる。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや;東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSK guard columnの組み合わせを挙げることができる。
また、THF試料溶液は以下の様にして作製する。
試料をTHF中に入れ、数時間後放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時、THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などが使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
(II)THF不溶分含有量
試料約2.0gを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×100mm東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、溶媒の抽出サイクルが約4分〜5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を秤量する。不溶分は、初めに投入した樹脂成分の質量をW1gとし、抽出残分中の樹脂成分の質量をW2gとしたときに、(W2/W1)×100(質量%)で表したものである。例えば、磁性トナーでは試料トナー質量から磁性体及び顔料の如き樹脂以外のTHF不溶成分の質量を差し引いた質量(W1g)と、抽出残分質量から磁性体及び/又は顔料の如きTHF不溶成分の質量を差し引いた質量(W2g)とから上記式より計算することができる。
(III)トナーのTHF可溶分及び原料結着樹脂の酸価
本発明において、トナーのTHF可溶分及び原料結着樹脂の酸価(JIS酸価)は、以下の方法により求める。原料結着樹脂の酸価も、原料結着樹脂のTHF可溶分の酸価を意味する。
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予めトナー及び原料結着樹脂のTHF不溶分を除去して使用するか、上記のTHF不溶分の測定で得られるソックスレー抽出器によるTHF溶媒によって抽出された可溶成分を試料として使用する。試料の粉砕品0.5〜2.0(g)を精秤し、可溶成分の重さをW(g)とする。
(2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる。)。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS〔ml〕とする。また、同時に試料を用いないブランク試験を行い、この時のKOH溶液の使用量をB〔ml〕とする。
(5)次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
(IV)トナーのガラス転移温度(Tg)
トナーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)、DSC Q−1000(TAインスツルメンツ社製)などを用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。それをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、常温常湿下(25℃/60%)において、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。この昇温過程における比熱変化を測定し、温度40℃〜100℃の範囲における比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)とする。
(V)エポキシ価
基本操作はJIS K−7236に準ずる。
(1)試料を0.5〜2.0gを精秤し、その重さをW〔g〕とする。
(2)300mlのビーカーに試料を入れ、クロロホルム10ml及び酢酸20mlに溶解する。
(3)(2)の溶液に、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液(臭化テトラエチルアンモニウム100gを酢酸400mlに溶かしたもの)10mlを加え、0.1mol/lの過塩素酸酢酸溶液を用いて、電位差滴定装置(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置ATー400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用い、自動滴定が利用できる。)を用いて滴定する。この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をS(ml)とし、同時に試料を用いないブランク測定を行い、この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をB(ml)とする。次式によりエポキシ価を計算する。fは過塩素酸酢酸溶液のファクターである。
エポキシ価(eq/kg)=0.1×f×(S−B)/W
(VI)ワックスの分子量分布
本発明においてワックスの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、次の条件で測定される。
GPC測定条件
装置:HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 7.8cmI.D×30cm2
連(東ソー社製)
検出器:高温用RI
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.05%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min
試料:0.1%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算をすることによって算出される。
(VII)ワックスの融点
本発明において、ワックスの融点は示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)、DSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)、DSC Q−1000(TAインスツルメンツ社製)などを用い、下記の条件にて測定することができる。基本的には、ASTM D3418に準拠して測定する。
試料:0.5〜2mg、好ましくは1mg
測定法:試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる
温度曲線:昇温I (20℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
降温I (180℃〜10℃、降温速度10℃/min)
昇温II(10℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
上記温度曲線において昇温IIで測定される吸熱ピーク温度を融点とする。
以下、実施例を示して、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
本発明に使用するワックス種と融点を表1に示す。
以下、樹脂製造方法について示す。
高分子量成分の製造例A−1
・スチレン 78.0質量部
・アクリル酸n−ブチル 20.0質量部
・メタクリル酸 2.0質量部
・2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン
0.8質量部
上記各成分を、4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で10時間保持し、重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を高分子量成分A−1とする。得られた樹脂の物性を表2に示す。
高分子量成分の製造例A−2乃至A−4
製造例A−1において、処方を表2に示すように変更した以外は製造例A−1と同様にして、高分子量成分A−2乃至A−4を得た。
カルボキシル基を有するビニル樹脂の製造例B−1
・高分子量成分A−1 30質量部
・スチレン 55.5質量部
・アクリル酸n−ブチル 13.8質量部
・メタクリル酸 0.7質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1.4質量部
キシレン200質量部を200℃に昇温させた後、上記処方のうち高分子量成分A−1を除く化合物をキシレン中に4時間かけて滴下し、更にキシレン還流下で1時間保持し、重合を完了した。そして、キシレン溶液中に高分子量成分A−1を加えてよく混合した後、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂をB−1とする。得られた樹脂の物性を表3に示す。
カルボキシル基を有するビニル樹脂の製造例B−2、B−3
製造例B−1において、処方を表3に示すように変更した以外は製造例B−1と同様にして、ビニル樹脂B−2、B−3を得た。得られた樹脂の物性を表3に示す。
カルボキシル基を有しないビニル樹脂の製造例B−4
製造例B−1において、処方を表3に示すように変更した以外は製造例B−1と同様にして、ビニル樹脂B−4を得た。得られた樹脂の物性を表3に示す。
エポキシ基を有するビニル樹脂の製造例C−1
・スチレン 75.2質量部
・アクリル酸n−ブチル 19.0質量部
・メタクリル酸グリシジル 5.6質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 5.0質量部
4つ口フラスコにキシレン200質量部を加え、容器内を十分に窒素で置換し、撹拌しながら170℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去し、このように得られた樹脂をC−1とする。得られた樹脂の物性を表4に示す。
エポキシ基を有するビニル樹脂の製造例C−2及びC−3
製造例C−1において、処方を表4に示すように変更した以外は製造例C−1と同様にして、ビニル樹脂C−2及びC−3を得た。得られた樹脂の物性を表4に示す。
結着樹脂の製造例1(本発明)
カルボキシル基を有するビニル樹脂B−1を90質量部及びエポキシ基を有するビニル樹脂C−1を10質量部をヘンシェルミキサーにて混合後、二軸混練押し出し機を用いて180℃で混練し、冷却後、粉砕し、結着樹脂1を得た。カルボキシル基とエポキシ基が反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂成分が形成され、その結果結着樹脂1中にTHF不溶成分が発生した。
樹脂物性を表5に示す。
結着樹脂の製造例2〜5(本発明)、結着樹脂の製造例6及び7(比較例)
表5に示すように変更した以外は製造例1と同様にして、結着樹脂2〜7を得た。結着樹脂2乃至5においても、カルボキシル基とエポキシ基が反応して形成された結合を部分構造として有するビニル樹脂成分が形成され、その結果結着樹脂2乃至5中にTHF不溶成分が発生した。得られた樹脂の物性を表5に示す。
実施例1
・結着樹脂1 100質量部
・球形磁性酸化鉄
[平均粒径:0.21μm、79.58kA/m(1kエルステッド)
の磁場における磁気特性〔σr:5.1Am2/kg、σs:69.6Am2/kg〕]
95質量部
・ワックス1 5質量部
・負荷電性制御剤(鉄アゾ化合物、保土ヶ谷化学社製:T−77) 2質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕して粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル〔ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050)〕を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。そこで得られた原料トナー粒子のコールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)は6.6μm、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値は24.8%であった。
得られた原料トナー粒子を、図1に示す表面改質装置で表面改質及び微粉除去を行った。その際、本実施例においては、分散ローター上部に角型のディスクを16個設置し、ガイドリングと分散ローター上角型ディスクの間隔を60mm、分散ローターとライナーとの間隔を4mmとした。また分散ローターの回転周速を140m/secとし、ブロワー風量を30m3/minとした。原料トナー粒子の投入量を300kg/時とし、サイクルタイムを45secとした。またジャケットに通す冷媒の温度を−15℃、冷風温度T1を−20℃とした。更に、分級ローターの回転数を制御することにより、0.6μm以上3μm未満の粒子比率を所望の値とした。
以上の工程を経て、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)6.8μm、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値が18.6%の負帯電性トナー粒子1を得た。トナー粒子1の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に、メタノール濃度−透過率曲線を図3示す。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性のトナー1を調製し、評価を行った。
このトナー1の、FPIA2100で測定された円相当径3μm以上400μm以下のトナーにおける平均円形度は0.949であり、走査型プローブ顕微鏡で測定されるトナー1の平均面粗さは18.6nmであった。
実施例2〜9
用いる結着樹脂、ワックスを表6のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置の条件を表6に示すようにした以外はトナー1と同様にして負帯電性のトナー2〜9を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
比較例1〜2
用いる結着樹脂、ワックスを表6のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置の条件を表6に示すようにした以外はトナー1と同様にしてトナー10〜11を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
このうちトナー10の、FPIA2100で測定された円相当径3μm以上400μm以下のトナーにおける平均円形度は0.931であり、走査型プローブ顕微鏡で測定されるトナー10の平均面粗さは27.1nmであった。
比較例3
用いる結着樹脂、ワックスを表6のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、得られたトナー粒子を300℃の熱風中を瞬間的に通過させる処理を行った以外はトナー1と同様にしてトナー12を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
比較例4
用いる結着樹脂、ワックスを表6のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置による表面改質を行わなかった以外はトナー1と同様にしてトナー13を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
比較例5
用いる結着樹脂、ワックスを表6のようにして、機械式粉砕機を用いずにジェット気流式粉砕機を用い、更に多分割分級装置での分級条件を変更し、得られたトナー粒子を300℃の熱風中を瞬間的に通過させる処理を行った以外はトナー1と同様にしてトナー14を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
比較例6
用いる結着樹脂、ワックスを表6のようにして、機械式粉砕機を用いずにジェット気流式粉砕機を用い、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置による表面改質を行わなかった以外はトナー1と同様にしてトナー15を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
次に、調製されたトナーを用いて、以下に示すような方法によって評価を行った。評価結果を表8に示す。
評価機
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて以下の評価を行った。
(1)トナー消費量
常温常湿環境下(23℃,60%RH)で印字比率4%の画像で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に18000枚の画出し試験を行う前後で、トナー容器内のトナー量を測定し、画像1枚あたりのトナー消費量を測定した。
(2)粗粒チェック
目開き38μm、メッシュ径75mmの試験用篩いの下部に吸引ホースを付け、篩い上にのせたトナー100gを吸引する。凝集体がある場合にはスパチュラ等で解しながら、吸引する。篩い上のすべてのトナーが吸引されたことを確認後、篩い表面に残存する粗粒子をマイラーテープでテーピングし、複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に貼り、マイクロスコープ(例えばワイド・スタンド・マイクロスコープ、拡大率100倍、測定範囲1.2mm)により観察し、評価した。
A:視野中に粗粒がほとんどない
B:視野中にわずかに存在する
C:視野中に数個存在する
D:視野中に十数個存在する
E:視野中に数百個存在する
低温定着性、耐高温オフセット性
上記トナーをプロセスカートリッジに入れ、市販のHewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nの定着器を取り外し、外部駆動及び定着器の温度制御装置を取り付けた定着試験装置にて定着ローラーの表面温度を120〜250℃まで外部から変更できるようにし、さらに、プリントスピードを1.1倍に改造し、ベタ黒画像を通紙して、定着させた。設定温度を5℃刻みに変更させながら常温常湿環境下(25℃,60%RH)にて画像サンプルのプリントアウトを行った。
(3)低温定着性
4.9kPa(50g/cm2)の加重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)が10%以下である最低の温度を最低定着温度として評価を行った。なお、試験紙として定着性に厳しい複写機用普通紙(90g/m2)を使用した。
(4)耐高温オフセット性
上半分が100μm幅の横線パターン(横幅100μm、間隔100μm)、およびベタ黒、下半分が白の画像をプリントし、白画像上の汚れの発生しない最高温度を示した。試験紙としてオフセットの発生しやすい複写機用普通紙(60g/m2)を使用した。
(5)耐ブロッキング性
トナー10gをポリプロビレンのカップに量り、表面を平らにならした後、薬包紙をしきその上に10gの鉄粉キャリアをのせ、50℃,0%RH環境で5日間放置し、トナーのブロッキング状態を評価した。
A:カップを傾けるとトナーがさらさらと流れる
B:カップを回していると、トナー表面が少しずつ崩れだし、さらさらの粉になる。
C:カップを回しながら外から力を加えるとトナー表面が崩れ、そのうちさらさらと流れ だす。
D:ブロッキング球が発生。先のとがったものでつつくと崩れる。
E:ブロッキング球が発生。つついても崩れにくい。
(6)画像濃度、カブリ
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下で、1枚/10秒のプリント速度、印字比率4%で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に4500枚の画出し試験を4日間行い、計18000枚の画出し試験を行った。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(7)スリーブネガゴースト
通常の複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に、低温低湿環境下(15℃,10%RH)で上記プリンタを用いて、18000枚プリントアウトし、4500枚ごとにスリーブネガゴーストの評価を行った。ゴーストに関する画像評価には、スリーブ一周分だけベタ黒の帯を出力した後ハーフトーンの画像を出力した。パターンの概略図を図4に示す。評価方法は、一枚のプリント画像のうち、スリーブ2周目で、1周目で黒画像が形成された場所(黒印字部)と、されない場所(非画像部)での、マクベス濃度反射計により測定された反射濃度の差を下記のごとく算出した。ネガゴーストは、一般的にスリーブ2周目で出る画像において、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が、スリーブ1周目に非画像部だった部分の画像濃度よりも低く、1周目で出したパターンの形がそのまま現れるゴースト現象である。ここの濃度差を、反射濃度差を測定することにより評価を行った。
反射濃度差=〔反射濃度(像形成されない場所)〕−〔反射濃度(像形成された場所)〕
反射濃度差が小さいほどゴーストの発生はなくレベルは良い。ゴーストの総合評価としてA、B、C、Dの4段階で評価し、4500枚ごとの評価の中での最悪の評価結果を示す。
A:反射濃度差 0.00以上0.02未満
B:反射濃度差 0.02以上0.04未満
C:反射濃度差 0.04以上0.06未満
D:反射濃度差 0.06以上
(8)飛び散り
低温低湿環境下での耐久において、初期と18000枚時に100μm(静電荷潜像)ラインでの格子パターン(1cm間隔)をプリントし、その飛び散りを光学顕微鏡を用いて目視で評価した。
A:ラインが非常にシャープで飛び散りはほとんどない
B:わずかに飛び散っている程度でラインは比較的シャープ
C:飛び散りがやや多くラインがぼんやりした感じになる
D:Cのレベルに満たない
(9)ブロッチ
低温低湿環境下での耐久において、画出し中の現像スリーブ上のトナーコート状態及びプリント画像から、ブロッチの評価を行った。
A 現像スリーブ上にブロッチが全く見られない。
B 現像スリーブ上にわずかに見られるが、画像上にはその影響は現れない。
C 現像スリーブ上に見られ、画像上にもその影響がかすかに現れる。
D 現像スリーブ上にブロッチが見られ、画像上に著しくその影響が現れる。