本発明者らは鋭意検討の結果、トナー、トナー粒子の円形度を制御し、且つ、トナー、トナー粒子の表面粗さを制御し、さらに160℃及び190℃の粘弾特性を制御することで、トナーの現像特性・耐久性能を向上させることができることを見出した。
本発明のトナーは、160℃における貯蔵弾性率G’(160℃)が8.0×102〜1.2×104Pa、好ましくは1.0×103〜1.0×104Pa、更に好ましくは2.0×103〜8.0×103Paであり、160℃における損失弾性率G”(160℃)が4.0×102〜6.0×103Pa、好ましくは5.0×102〜5.0×103Pa、更に好ましくは7.0×102〜3.0×103Paであり、160℃における損失正接tanδ(160℃)=G”(160℃)/G’(160℃)が0.1〜1.5、好ましくは0.1〜1.0、更に好ましくは0.2〜0.8であることから、低温定着性、耐低温オフセット性、及び、現像耐久性に優れている。
トナーの160℃での粘弾性特性は、特に高速あるいは低温での定着性に影響を及ぼす。すなわち、トナーと加熱定着部材との接触時間が短いために、トナーが迅速に溶融し、かつ、低温オフセットを起こさない程度の弾性を有していることが要求される。本発明のトナーは160℃において上記粘弾特性を有していることにより、高速系の定着システムあるいは低温時においても良好な定着性を与える。
G’(160℃)が8.0×102Pa未満の場合には、加熱され軟化したトナーのゴム弾性が低いため、定着部材とトナーが十分に分離されず、定着部材へのトナーの低温オフセットを生じる。G’(160℃)が1.2×104Paを超えると、低温定着性が悪化する。
G”(160℃)が4.0×102Pa未満の場合には、より低温からトナーの軟化が進んでしまうために凝集しやすくなり、粗粒の発生を引き起こし、その粗粒が現像部材との摺擦によって筋状の融着が部材に発生するといった問題を発生しやすくなる。特にトナー形状が球形に近く、表面が平滑である場合に、トナー同士が細密に充填されやすくなるために、上記現象が顕著となる。G”(160℃)が6.0×103Paを超えると、良好な低温定着性が得られない。
tanδ(160℃)が0.1未満の場合には、損失弾性率に対して貯蔵弾性率が大き過ぎるために、トナーとして弾性体としての性質が強くなりすぎ、耐低温オフセット性は向上するが、十分な低温定着性は得られない。tanδ(160℃)が1.5を超えると、トナーの粘性が高く、かつトナーのゴム弾性が比較的低いために、現像器内での摺擦や現像ブレードと現像スリーブの摩擦熱でトナーが凝集化しやすくなり、現像部材への融着を生じるようになる。特にトナーが球形に近く、かつ、表面が平滑である場合にトナーが現像器内やブレード・スリーブ間などに細密に充填されやすくなるために凝集・固化しやすくなり、上記現象が生じやすくなる。更にトナー微粉が多い場合にこのような現象が加速される。
更に本発明のトナーは、190℃における貯蔵弾性率G’(190℃)が6.0×102〜1.0×104Pa、好ましくは8.0×102〜8.0×103Pa、更に好ましくは1.0×103〜6.0×103Paであり、190℃における損失弾性率G”(190℃)が2.0×102〜4.0×103Pa、好ましくは3.0×102〜3.0×103Pa、更に好ましくは4.0×102〜2.0×103Paであり、190℃における損失正接tanδ(190℃)=G”(190℃)/G’(190℃)が0.05〜1.2、好ましくは0.06〜1.0、更に好ましくは0.08〜0.8であることから、定着性、耐高温オフセット性に優れている。
トナーの190℃での粘弾性特性は、特に低速あるいは高温での定着性に影響を及ぼす。すなわち、低速系の定着システムではトナーが定着部材と接触している時間が長くなるために、被定着シート上で上層のトナーが加熱ローラーに付着して高温オフセットを発生しやすい。そこで高温でも加熱ローラーと分離できるだけの十分な弾性を有し、かつ被定着シートとの定着性を得られるだけの粘性を有したトナーが要求される。本発明のトナーは190℃において上記粘弾性特性を有していることにより、低速系での定着システムあるいは高温時においても良好な定着性を与える。
G’(190℃)が6.0×102Pa未満の場合には、加熱され軟化したトナーのゴム弾性が低いため、定着部材とトナーが十分に分離されず、定着部材へのトナーの高温オフセットを生じる。G’(190℃)が1.0×104Paを超えるとトナーのゴム弾性が高くなりすぎるため、トナーの被定着シートへの定着性が悪化する。
G”(190℃)が2.0×102Pa未満の場合には、トナーが定着部材を通過する際にトナーの粘性が下がりすぎてしまうために定着部材にトナーが付着しやすくなり、定着部材への被定着シートの巻きつきを生じる。G”(190℃)が4.0×103Paを超えると、良好な定着性が得られない。
tanδ(190℃)が0.05未満の場合には、損失弾性率に対して貯蔵弾性率が大きくなりすぎるために、トナーとして弾性体としての性質が強くなりすぎ、耐高温オフセット性は向上するが、十分な定着性は得られない。tanδ(190℃)が1.2を超えると、トナーの粘性が高く、かつトナーのゴム弾性が比較的低いために被定着シートへのトナーの定着性及び定着部材とのトナーの離型性が十分に得られなくなり、トナーの定着部材への高温オフセットを生じる。
更に本発明のトナーは、G’(160℃)/G’(190℃)が0.5〜2.0(好ましくは0.6〜1.8、更に好ましくは0.7〜1.5)であることから、被定着シートの定着部材への巻き付きを効果的に防止することができる。
被定着シート上のトナーの、被定着シート側と定着部材側では定着部材側の方が加熱されやすいため、トナーの動的粘弾性が温度によって差があると、被定着シート上のトナーが加熱、加圧された時にトナー層の上下で偏って定着してしまい、その結果定着画像がカールして定着部材への定着画像の巻き付きを起こすことがある。特に、本発明の如き、トナー形状が球形に近く、表面が平滑である場合には、トナー同士の接触点が点接触に近くなるために、トナー同士の熱伝達の影響が大きく現れやすくなる。更に、超微粉量が少ない時にはトナー粒子間の間隙が生じやすくなるので、更に影響が大きくなりやすくなる。本発明のトナーは160℃と190℃でのG’の値の変化が小さいのでそのような定着部材への巻き付きを起こさない。
G’(160℃)/G’(190℃)が0.5未満だと、定着部材への巻きつきは防止されるが定着画像の下カールが激しくなる。G’(160℃)/G’(190℃)が2.0を超えると、定着部材上ローラー(加熱ローラー)側への定着画像の巻き付きを起こす。これらの定着画像の下カール、巻き付きは、ベタ黒画像などの画像濃度比率の高い画像を定着させた時に特に顕著である。
更に本発明のトナーは、tanδ(160℃)>tanδ(190℃)であることから、定着部材へのトナーの付着を防止することができる。
トナーが定着部材を通過する際に、定着性の良好なトナーであっても若干のトナーが定着部材へオフセットしてしまうのは避けられない。そのオフセットしたトナーは定着部材に保持されることで通常トナーを定着させる温度よりも高い温度になるが、その時にトナーのG’が通常定着時の貯蔵弾性率を維持していることによりトナーの弾性体としての性質も同様に維持され、トナーが定着部材から離れやすくなる。同時に、トナーのG”が通常定着時の損失弾性率よりも低くなっていることでトナーの粘性が下がり、トナーが定着部材から離れやすくなる。
tanδ(160℃)≦tanδ(190℃)の場合には、定着部材の長期の使用によってトナーが定着部材表面に蓄積され、その部分の画像が白く抜けるという定着画像の白抜けを引き起こす。
更に本発明のトナーは、80〜200℃の間でG”/G’が極小値を持たないことが好ましく、より効果的に定着部材へのトナー付着を防止することができる。
本発明のトナーの粘弾性特性の測定方法を以下に示す。
・トナーの粘弾性特性の測定
粘弾性測定装置(レオメーター)RDA−II型(レオメトリックス社製)を用いて測定を行う。
測定治具:直径7.9mmのパラレルプレートを使用する。
測定試料:トナーまたは結着樹脂を加熱,溶融後に直径約8mm,高さ2〜5mmの円柱状試料に成型して使用する。
測定周波数:6.28ラジアン/秒
測定歪の設定:初期値を0.1%に設定し、自動測定モードにて測定を行う。
試料の伸長補正:自動測定モードにて調整。
測定温度:35℃より200℃まで毎分2℃の割合いで昇温する。
本発明の上述した特定の粘弾性特性を有するトナーを調製するための手段としては、例えば、結着樹脂のポリマー鎖を適度に架橋させることであり、これは架橋構造の異なる複数の架橋反応を組み合せる方法を用いることができる。
本発明に用いることのできる架橋反応としては、例えば、多官能性モノマーを用いて共重合反応を行うタイプ;少なくとも一方が多官能性であるモノマーを用いて重縮合反応を行うタイプ;官能基を有するポリマーと、この官能基と反応し得る反応性化合物とを用い、この官能基間を反応性化合物を介して反応させるタイプ;官能基を有する第1のポリマーと、この第1のポリマーの官能基と反応し得る官能基を有する第2のポリマーとを用い、第1のポリマーの官能基と第2のポリマーの官能基とを反応させるタイプ;及び重合開始剤を用いてグラフト反応させるタイプ;付加重合物に対し重縮合により架橋するタイプ;重縮合物に対し付加重合により架橋するタイプが挙げられる。
架橋反応の種類によって得られる架橋構造の架橋度、熱分解特性、架橋点間距離、架橋の長さ、及び架橋の柔軟性(架橋鎖の動き易さ)の如き各特性に差が生じることから、上述した本発明のトナーが有する特定の粘弾性特性、即ち、特定の弾性率及び損失正接また高温時の温度上昇に伴う貯蔵弾性率の維持、損失正接の減少という特性が得られるようにトナーの調製を行うことが好ましい。
架橋反応に寄与する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物、エステル交換され易いエステル、水酸基、アミノ基、イミノ基、グリシジル基、エポキサイド基、活性メチレン、ダブルボンド、シアノ基、イソシアネート基、ビニル基などがあり、これらの官能基間でのエステル結合、アミド結合、イミノ結合、イミド結合、炭素結合の如き結合反応を、結着樹脂製造時またはトナー溶融混練時に生じさせ、ポリマー分子鎖を架橋し、本発明の特徴とする粘弾性特性を引き出すことができる。更に、酸、アルコール、アミン、エポキサイド、酸無水物、ケトン、アルデハイド、アミド、イミン、エステル、ラクトン、ラクタム、含窒素複素環化合物などの化合物を介して、官能基間を結合させてポリマー分子鎖を架橋することもでき、これは結着樹脂製造時またはトナー溶融混練時に架橋反応を施すこともできる。更に、金属塩、金属錯体及び有機金属化合物の如き含金属化合物の金属を介した、配位結合やイオン結合、あるいは、含窒素化合物、エポキシ化合物、アルコール化合物、カルボン酸化合物を介したエステル結合、アミド結合、イミノ結合により、トナー溶融混練時に架橋反応を施すこともできる。中でも好ましい架橋反応としては、ポリエステル樹脂や、ビニル系樹脂などの結着樹脂中に、カルボキシル基、酸無水物の如き酸基や水酸基、アミノ基、グリシジル基を持たせ、グリシジル化合物、含窒素化合物、エポキシ化合物、カルボン酸化合物、アルコール化合物を介したもの、或いは、金属塩、金属錯体、又は、有機金属化合物の金属を介したものである。
本発明の上述した特定の粘弾性特性及び分子量分布を有するトナーを調製するための手段として特に好ましいものは、酸基を有する樹脂にグリシジル化合物の如き反応性化合物を介して架橋反応を施して架橋する方法である。
グリシジル化合物を介した架橋反応を施す製造方法としては、例えばグリシジル基を含有するビニル単量体とスチレン系単量体とを構成成分として含む共重合体と、カルボキシル基及び酸無水物の如き酸基を含有するビニル単量体とスチレン系単量体とを構成成分として含む酸基含有共重合体とを溶液重合した結着樹脂或いは溶融混練した結着樹脂を用いることにより、所望の粘弾性特性を有するトナーが得られる。グリシジル基を含有する共重合体は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、重量平均分子量4000〜100000の範囲で用いられるのが好ましく、5000〜50000の範囲で用いられるのが特に好ましい。
本発明において、トナーのTHF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPCによるクロマトグラムの分子量分布は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、たとえば、東ソー社製あるいは、昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なおカラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、たとえば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL),G2000H(HXL),G3000H(HXL),G4000H(HXL),G5000H(HXL),G6000H(HXL),G7000H(HXL),TSKguard columnの組み合わせを挙げることができる。
試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、たとえば、マイショリディスクH−25−2 東ソー社製などが利用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
グリシジル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、アリルβ−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
本発明に用いられるグリシジル化合物は、酸基などの官能基1モルに対してグリシジル化合物が0.05〜10当量、好ましくは0.1〜5当量用いられるのがよい。
架橋を施す含金属化合物としては金属塩もしくは金属錯体があり、次の金属イオンを含むものが使用できる。1価の金属イオンとして、Na+、Li+、K+、Cs+、Ag+、Hg+、Cu+が挙げられる。2価の金属イオンとして、Be2+、Ba2+、Mg2+、Ca2+、Hg2+、Sn2+、Pb2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Zn2+が挙げられる。3価のイオンとしては、Al3+、Sc3+、Fe3+、V3+、Co3+、Ce3+、Ni3+、Cr3+、Y3+が挙げられる。4価のイオンとしてはTi4+、Zr4+が挙げられる。
このような含金属化合物のうちでも有機金属化合物が重合体との相溶性や分散性に優れ、含金属化合物による架橋が重合体中でより均一に進むので、より優れた結果を与える。
上記のような有機金属化合物のうちでも、気化性や昇華性に富む有機化合物を配位子や対イオンとして含有するものが有用である。金属イオンと配位や対イオンを形成する有機化合物のうちで上記のような性質を有するものとしては、例えば、サリチル酸、サリチルアミド、サリチルアミン、サリチルアルデヒド、サリチロサリチル酸、ジターシャリーブチルサリチル酸の如きサリチル酸及びその誘導体;例えば、アセチルアセトン、プロピオンアセトンの如きβ−ジケトン類;例えば、酢酸塩やプロピオン酸の如き低分子カルボン酸塩;ハイドロキシカルボン酸;ジカルボン酸が挙げられる。
その他の配位子としては、結着樹脂への相溶性や現像性への影響から、アゾ化合物誘導体、イミダゾール誘導体のような複素環化合物、芳香族化合物が好ましく用いられる。
本発明に用いられる含金属化合物は、結着樹脂100質量部に対して0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部用いられるのがよい。
含金属化合物の使用量が0.01質量部未満の場合には他の架橋構造が利用できないと十分な架橋構造をとることが難しく、20質量部を超える場合には帯電性が不安定になり易く、現像性の耐久安定性が得られ難くなる。
反応性化合物を介した架橋反応を施す方法としては、例えば、官能基を有する重合体を反応性化合物存在下で高シェアをかけて溶融混練する、あるいは架橋高分子成分を有する重合体を反応性化合物存在下で溶融混練することであり、これらによる架橋構造は、種々の架橋構造の組み合わせをトナーが有することになり、所望の粘弾性特性を有するトナーが得られる。
その他に重合時に架橋を施す架橋性モノマーとしては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有するビニルモノマーを用いることができる。このような架橋性モノマーによる架橋を同時に用いることも好ましい。
架橋性モノマーとしては、芳香族ジビニル化合物、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;ポリエステル型ジアクリレート化合物類、例えば、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
重縮合により架橋を施す成分としては、3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分がある。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンが挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;下記式(C)で表わされるテトラカルボン酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
(式中、Xは炭素数1以上の側鎖を1個以上有する炭素数1〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
グラフト架橋に使用する開始剤としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシα−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シランが挙げられ、これらが単独あるいは併用して使用できる。
官能基を有する樹脂成分としては、例えば、ビニル系重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、テルペン樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、フラン樹脂などが利用できる。これらは、単独または混合して用いられ、それらの結着樹脂中の一部または全部の樹脂成分中に官能基を持たせることができる。中でも、ビニル系重合体、ポリエステル樹脂が特に好ましく用いられる。
例えば、ビニル系結着樹脂に酸成分を持たせるには、カルボン酸モノマー、カルボン酸誘導体モノマーを用いれば良く、その例としてはマレイン酸、シトラコン酸、ジメチルマレイン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸及びこれらの無水物;フマル酸、メサコン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸のモノエステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸及びこれらの無水物;上記α,β−不飽和酸間の無水物及び低級脂肪酸との無水物の如きα,β−不飽和酸、これらの無水物モノマー;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸及びこれらの無水物、モノエステル;が挙げられる。
これらの中でも、マレイン酸、フマル酸、コハク酸の如き構造をもつα,β−不飽和二塩基酸のモノエステル類;アクリル酸又はメタクリル酸;が本発明の結着樹脂を得るモノマーとして特に好ましく用いられる。このようなモノマーとしては、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニル;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチル、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
酸成分を有するビニル系重合体を合成するカルボン酸(誘導体)モノマーに対するコモノマーとしては、次のようなビニル系モノマーが挙げられる。
例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレンおよびその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;が単独もしくは2つ以上で用いられる。
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
さらに、酸成分を有するビニル系重合体を合成するカルボン酸(誘導体)モノマーに対するコモノマーとしては、2個以上の重合可能な二重結合を有するビニル系モノマーを用いることができる。
この2個以上の重合可能な二重結合を有するビニル系モノマーとしては、前述の架橋性モノマーとしての例示物質を用いることができる。
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜5.00質量部程度(さらに好ましくは0.03〜3.00質量部程度)用いることが好ましい。
架橋性モノマーの使用量が0.01質量部未満の場合には、他の架橋構造が利用できない場合に十分な架橋構造をとることができず前述の種々の問題を生じることがある。5.00質量部を超える場合には、架橋成分が多くなり定着性や他材料の分散性の悪化を招きやすくなる。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;下記(B)で表されるジオール類が挙げられる。
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
2価の酸成分としては、ジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられ、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステルが挙げられる。
架橋成分としても働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;下記式(C)で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステルの如き多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
(式中、Xは炭素数1以上の側鎖を1個以上有する炭素数1〜30のアルキレン基又はアルケニレンを示す。)
本発明に用いられるアルコール成分としては、アルコール成分と酸成分の総量基準で40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては、アルコール成分と酸成分の総量基準で60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。
三価以上の多価の成分は、全成分中の5〜60mol%であることが好ましい本発明に用いられる結着樹脂の合成方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法が適用可能である。
使用する開始剤としてはt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ−t−ブチルパーオキシα−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグルタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シランが挙げられ、これらが単独あるいは併用して使用できる。
開始剤使用量はモノマー100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1〜15質量部の濃度で用いられる。
本発明のトナー粒子は、粒径3μm以上400μm以下のトナー粒子において、平均円形度が0.935以上0.970未満、好ましく0.935以上0.965未満、より好ましくは0.935以上0.960未満、より好ましくは0.940以上0.955未満であることにより、画像面積あたりのトナーの消費量を低減することができる。トナー粒子の円形度が高くなると、トナーの流動性が増すので個々のトナーが自由に動きやすくなる。紙などの転写材上に現像されたトナーは、円形度が高いトナーほど一つ一つのトナー単位で現像される確率が高くなるため、転写材上での画像高さが低くなり、トナーの消費量を低減することができる。この時に、トナー粒子の円形度が十分に高くないと、トナーは凝集体としての挙動を示しやすくなり、凝集体として転写材上に現像されやすくなる。そのような画像は転写材からの画像高さが高くなり、同じ面積を現像する場合において流動性の優れたトナーよりも多くのトナーが現像されてしまい、トナーの消費量が増加する。また、円形度の高いトナー粒子からなるトナーは現像された画像においてより密な状態をとりやすい。その結果、転写材に対するトナーの隠蔽率が高くなり、少ないトナー量でも十分な画像濃度を得ることができる。平均円形度が0.935未満だと、現像された画像の高さが高くなり、トナーの消費量が増加する。また、トナー間の空隙が増え、現像された画像上においても十分な隠蔽率が得られないため、必要な画像濃度を得るためにはより多くのトナー量を必要とし、結果的にトナー消費量を増加させてしまう。平均円形度が0.970以上だと、トナーの長期の使用時に現像性が低下する。
本発明のトナーは、粒径3μm以上400μm以下のトナーにおいて、平均円形度が0.935以上0.970未満、好ましく0.935以上0.965未満、より好ましくは0.935以上0.960未満、より好ましくは0.940以上0.955未満であることにより、画像面積あたりのトナーの消費量を低減することができる。これは、円形度の高いトナーは現像された画像においてより密な状態をとりやすくなるために、転写材に対するトナーの隠蔽率が高くなり、少ないトナー量でも十分な画像濃度を得ることができるようになるためである。平均円形度が0.935未満だとトナー消費量が増加し、平均円形度が0.970以上だとブロッチが発生しやすくなる。
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて23℃,60%RHの環境下で測定を行い、円相当径0.60μm〜400μmの範囲内の粒子を測定し、そこで測定された粒子の円形度を下式(1)により求め、更に円相当径3μm以上400μm以下の粒子において、円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子投影像の周囲長を示す。〕
本発明に用いている円形度はトナー及びトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナー及びトナー粒子が完全な球形の場合1.000を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出にあたって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の値と、各粒子の円形度の総和を用いる算出式によって算出される平均円形度の誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であり、本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、各粒子の円形度の総和を用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナー及びトナー粒子の形状を算出するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)することによりトナー及びトナー粒子の形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子のより確実な捕捉を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状及び粒度分布を測定する必要がある場合には、より正確に形状及び粒度分布に関する情報が得られるFPIA−2100の方が有用である。
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水200〜300ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波発振器で2分間分散し、分散液濃度を0.2〜1.0万個/μlとして粒子の円形度分布を測定する。超音波発振器としては、例えば以下の装置を使用し、以下の分散条件を用いる。
UH−150(株式会社エス・エム・テー社製)
OUTPUT レベル:5
コンスタントモード
測定の概略は、以下の通りである。
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
また、本発明においては、フロー式粒子像測定装置で計測される円相当径0.6μm以上400μm以下のトナー粒子における個数基準粒径分布において0.6μm以上3μm未満のトナー粒子比率が0個数%以上20個数%未満、好ましくは0個数%以上17個数%未満、より好ましくは1個数%以上15個数%未満であることが好ましい。0.6μm以上3μm未満のトナー粒子は、トナーの現像性、特にカブリ特性に大きな影響を与える。このような微粒子トナーは過度に高い帯電性を有しており、トナーの現像時に過剰に現像されやすく、画像上にカブリとして現れる。しかし本発明においてはこのような微粒子トナーの比率が少ないことによってカブリを低減することができる。
また、本発明のトナーは前述したとおり平均円形度が高いためにトナーがより密に詰まった状態を取りやすいために現像スリーブ上により厚くトナーがコートされ、結果的にスリーブ上のトナー層の上層と下層で帯電量が異なり、連続して広い面積の画像を現像した時に先端の画像濃度よりもスリーブ2周目以降の画像の方が画像濃度が低下してしまう、所謂スリーブネガゴーストを発生する場合がある。この時にトナー粒子中に超微粉が多く存在すると、超微粉は他のトナー粒子よりも高い帯電量を有しているために画像濃度差を発生させやすく、スリーブネガゴーストを悪化させるが、本発明においては超微粉量が少ないのでスリーブネガゴーストの悪化を抑制することができる。0.6μm以上3μm未満の粒子比率が20個数%以上だと、画像上のカブリが増加し、更にスリーブネガゴーストが悪化する場合がある。
また、本発明のトナー粒子は円形度0.960未満のトナー粒子の個数累積値が20個数%以上70個数%未満、好ましくは25個数%以上65個数%未満、より好ましくは30個数%以上65個数%未満、より好ましくは35個数%以上65個数%未満であることが好ましい。トナー粒子の円形度は、個々のトナー粒子によって異なる。円形度が異なるとトナー粒子としての特性も異なるため、適度な円形度のトナー粒子比率が適正な値であることが、トナー粒子の現像性を高める上で好ましい。本発明のトナー粒子は適度な円形度を有しており、且つ適度な円形度分布を有しているため、トナー粒子の帯電分布が均一になり、カブリを低減することができる。円形度0.960未満のトナー粒子の個数累積値が20個数%未満だと、トナー粒子が耐久時に劣化する場合がある。円形度0.960未満のトナー粒子の個数累積値が70個数%以上だと、カブリが悪化したり、高温高湿環境下での画像濃度が低下する場合がある。
また、本発明においては、トナー粒子の平均面粗さが5.0nm以上35.0nm未満、好ましくは8.0nm以上30.0nm未満、より好ましくは10.0nm以上25.0nm未満であることを特徴とする。トナー粒子が適度な表面粗さを有していることにより、トナー間に適度な空隙が生まれ、トナーの流動性を向上させることができ、より良好な現像性をもたらすことができる。特に本発明の特徴とする円形度を有するトナー粒子において、前記平均面粗さを有していることにより優れた流動性をトナー粒子に付与することができる。また、本発明のトナー粒子は3μm未満の超微粒子が少ないことも流動性の向上に効果的に作用する。即ち、トナー粒子中に超微粒子が多く存在すると、トナー表面の凹部分に超微粒子が入り込み、見かけ上のトナー平均面粗さを小さくしてしまい、トナー粒子間の空隙が減り、トナーにより好ましい流動性を付与することを妨げてしまう。トナー粒子の平均面粗さが5.0nm未満だと、トナーに十分な流動性が付与できず、フェーディングを生じて画像濃度が低下する。トナー粒子の平均面粗さが35.0nm以上だと、トナー粒子間の空隙が多くなりすぎることでトナーの飛び散りを生じる。
また、本発明においては、外添剤が添加されたトナーに関しても、粒径3μm以上400μm以下のトナーにおいて平均円形度が0.935以上0.970未満であって、平均面粗さが10.0nm以上26.0nm未満であることが好ましく、より好ましくは12.0nm以上24.0nm未満である。トナーの平均面粗さが10.0nm未満の場合、トナー凹部に多数の外添剤粒子が埋め込まれている状態と思われ、流動性に劣るようになり、フェーディングを生じて良好な画像が得られにくい。トナーの平均面粗さが26.0nm以上の場合、トナー表面の外添剤粒子が均一にコートされていない状態と思われ、帯電不良により飛び散りが生じやすくなる。このようにトナーにおいても、適度な表面粗さと円形度を有することで、本発明の効果を得られやすくなる。
また、トナー粒子の最大高低差が50nm以上250nm未満、好ましくは80nm以上220nm未満、より好ましくは100nm以上200nm未満であることが好ましく、より良好な流動性をトナーに付与することができる。トナー粒子の最大高低差が50nm未満だと、トナーに十分な流動性を付与できず、フェーディングを生じて画像濃度が低下する場合がある。トナー粒子の最大高低差が250nm以上だと、トナーの飛び散りを生じる場合がある。
また、トナー粒子の走査型プローブ顕微鏡で測定される、トナー粒子の表面の1μm四方のエリアを測定した時の表面積が1.03μm2以上1.33μm2未満、好ましくは1.05μm2以上1.30μm2未満、より好ましくは1.07μm2以上1.28μm2未満であることが好ましく、より良好な流動性をトナー粒子に付与することができる。トナー粒子の表面積が1.03μm2未満だと、トナーに十分な流動性を付与できず、フェーディングを生じて画像濃度が低下する場合がある。トナー粒子の表面積が1.33μm2以上だと、飛び散りを生じる場合がある。
本発明において、トナー粒子の平均面粗さ、最大高低差、表面積は、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定される。以下に、測定方法の例を示す。
プローブステーション:SPI3800N(セイコーインスツルメンツ(株)製)
測定ユニット:SPA400
測定モード:DFM(共振モード)形状像
カンチレバー:SI−DF40P
解像度:Xデータ数 256
Yデータ数 128
本発明においては、トナー粒子の表面の1μm四方のエリアを測定する。測定するエリアは、走査型プローブ顕微鏡で測定されるトナー粒子表面の、中央部の1μm四方のエリアとする。測定するトナー粒子は、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)に等しいトナー粒子をランダムに選択して、そのトナー粒子を測定する。測定されたデータは、2次補正を行う。異なるトナー粒子を5個以上測定し、得られたデータの平均値を算出して、そのトナー粒子の平均面粗さ、最大高低差、表面積とする。
トナー粒子に外添剤が外添されているトナーにおいて、トナー粒子の表面を走査型プローブ顕微鏡を用いて測定する場合は外添剤を取り除く必要があり、具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
1)トナー45mgをサンプル瓶に入れ、メタノールを10ml加える。
2)超音波洗浄機で1分間試料を分散させて外添剤を分離させる。
3)吸引ろ過(10μmメンブランフィルター)してトナー粒子と外添剤を分離する。磁性体を含むトナーの場合は、磁石をサンプル瓶の底にあててトナー粒子を固定して上澄み液だけ分離させても構わない。
4)上記2)、3)を計3回行い、得られたトナー粒子を真空乾燥機で室温で十分に乾燥させる。
外添剤を取り除いたトナー粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、外添剤がなくなっているのを確認した後、走査型プローブ顕微鏡でトナー粒子の表面観察をすることができる。外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、外添剤が十分に取り除かれるまで2)、3)を繰り返し行った後に走査型プローブ顕微鏡でのトナー粒子の表面観察を行う。
2)、3)に代わる外添剤を取り除く他の方法としては、アルカリで外添剤を溶解させる方法が挙げられる。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
以下に各用語を説明する。
・平均面粗さ(Ra)
JIS B0601で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したもの。基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で次式で表される。
F(X,Y):全測定データの示す面
S0:指定面が理想的にフラットであると仮定したときの面積
Z0:指定面内のZデータの平均値
指定面とは、本発明においては1μm四方の測定エリアを意味する。
・最大高低差(P−V)
指定面内におけるZデータの最大値と最小値の差
・表面積(S)
指定面の表面積
次に、本発明の特徴とするトナー粒子を得るための好ましい方法として、表面改質工程を用いたトナー粒子製造方法について説明する。以下に、表面改質工程で使用される表面改質装置及び表面改質装置を利用したトナー粒子の製造方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
尚、本発明において表面改質とは、トナー粒子の表面を平滑化することを意味する。
図1は、本発明に使用する表面改質装置の一例を示し、図2は図1において高速回転する回転子の上面図の一例を示す。
図1に示す表面改質装置では、ケーシング、冷却水或いは不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、表面改質手段である、ケーシング内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク或いは円筒型のピン40を複数個有し、高速で回転する円盤上の回転体である分散ローター36、分散ローター36の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられているライナー34(尚、ライナー表面上の溝はなくても構わない)、更に、表面改質された原料を所定粒径に分級するための手段である分級ローター31、更に、冷風を導入するための冷風導入口35、被処理原料を導入するための原料供給口33、更に、表面改質時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁38、処理後の粉体を排出するための粉体排出口37、更に、分級手段である分級ローター31と表面改質手段である分散ローター36−ライナー34との間の空間を、分級手段へ導入される前の第一の空間41と、分級手段により微粉を分級除去された粒子を表面改質手段へ導入するための第二の空間42に仕切る案内手段である円筒形のガイドリング39とから構成されている。分散ローター36とライナー34との間隙部分が表面改質ゾーンであり、分級ローター31及びローター周辺部分が分級ゾーンである。
尚、分級ローター31の設置方向は図1に示したように縦型でも構わないし、横型でも構わない。また、分級ローター31の個数は図1に示したように単体でも構わないし、複数でも構わない。
以上のように構成してなる表面改質装置では、排出弁38を閉とした状態で原料供給口33から原料トナー粒子を投入すると、投入された原料トナー粒子は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター31で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉は遠心力によりガイドリング39の内周(第二の空間42)に沿いながら分散ローター36により発生する循環流にのり表面改質ゾーンへ導かれる。表面改質ゾーンに導かれた原料は分散ローター36とライナー34間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング39の外周(第一の空間41)に沿いながら分級ゾーンに導かれ、分級ローター31により、再度微粉は機外へ排出され、粗粉は、循環流にのり、再度表面改質ゾーンに戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁38を開とし、排出口37より表面改質粒子を回収する。
トナー粒子表面改質工程において、トナー粒子の表面改質と同時に微粉成分を除去することが好ましい。それにより、トナー粒子中に存在する超微粒子がトナー粒子表面に固着することがなく、所望の円形度、平均面粗さ及び超微粒子量を有するトナー粒子を効果的に得ることができる。表面改質と同時に微粉を除去することができない場合、表面改質後のトナー粒子中の超微粒子量が多く存在してしまう上に、トナー粒子表面改質工程において、機械的、熱的な影響により、適正な粒径を有するトナー粒子の表面に超微粒子成分が固着してしまう。その結果、トナー粒子の表面に、固着した微粉成分による突起が生成し、所望の円形度及び平均面粗さを有するトナー粒子が得られない。
尚、本発明において、「表面改質と同時に微粉成分を除去する」とは、トナー粒子の表面改質及び微粉除去を繰り返し行うことを意味し、それは前記のような単一装置内でそれぞれの工程を有する装置を用いても良く、また、表面改質と微粉除去を異なる装置によって行い、それぞれの工程を繰り返し行うことによっても良い。
本発明者が検討した結果、表面改質装置における表面改質時間(=サイクルタイム、原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)としては、5秒以上180秒以下、更に好ましくは15秒以上120秒以下であることが好ましい。表面改質時間が5秒未満の場合、改質時間が短時間過ぎるため、表面改質トナー粒子が十分に得られない場合がある。また、改質時間が180秒を超えると、改質時間が長時間過ぎるため、表面改質時に発生する熱による機内融着の発生、及び処理能力の低下を招く場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該表面改質装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下とすることが好ましい。該表面改質装置内に導入する冷風温度T1を5℃以下、より好ましくは0℃以下、更に好ましくは−5℃以下、特に好ましくは−10℃以下、最も好ましくは−15℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該表面改質装置内に導入する冷風温度T1が5℃を超えると、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
尚、該表面改質装置内に導入する冷風は、装置内の結露防止という面から、除湿したものであることが好ましい。除湿装置としては公知のものが使用できる。給気露点温度としては、−15℃以下が好ましく、更には−20℃以下が好ましい。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該表面改質装置内は、機内冷却用のジャケットを具備しており、該ジャケットに冷媒(好ましくは冷却水、更に好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通しながら表面改質処理することが好ましい。該ジャケットによる機内冷却により、トナー粒子表面改質時における熱による機内融着を防止することができる。
尚、表面改質装置の該ジャケット内に通す冷媒の温度は5℃以下とすることが好ましい。表面改質装置内の該ジャケット内に通す冷媒の温度を5℃以下、より好ましくは0℃以下、更に好ましくは−5℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該ジャケット内に導入する冷媒の温度が5℃を超えると、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下とすることが好ましい。該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2を60℃以下、好ましくは50℃以下とすることにより、表面改質時に発生する熱による機内融着を防止することができる。該表面改質装置内の分級ローター後方の温度T2が60℃を超えると、表面改質ゾーンにおいては、それ以上の温度が影響するため、表面改質時に発生する熱による機内融着を起こす場合がある。
更に、本発明のトナー粒子の製造方法においては、表面改質装置内の該分散ローターとライナーとの間の最小間隔が0.5mm乃至15.0mmとすることが好ましく、更には、1.0mm乃至10.0mmとすることが好ましい。また、該分散ローターの回転周速は75m/sec乃至200m/secとすることが好ましく、更には、85m/sec乃至180m/secとすることが好ましい。更に、表面改質装置内の該分散ローター上面に設置されている角型のディスク或いは円筒形のピンの上部と、該円筒型のガイドリングの下部との間の最小間隔が2.0mm乃至50.0mmとすることが好ましく、更には、5.0mm乃至45.0mmとすることが好ましい。
本発明において、該表面改質装置内の分散ローター及びライナーの粉砕面は耐摩耗処理されていることがトナー粒子の生産性上好ましい。尚、耐摩耗処理方法は何ら限定されるものではない。また、該表面改質装置内の分散ローター及びライナーの刃形状に関しても、何ら限定されるものではない。
本発明のトナー粒子製造方法としては、あらかじめ所望の粒径付近に微粒子化された原料トナー粒子を、気流式分級機を用いて微粉及び粗粉をある程度除去した上で、表面改質装置によってトナー粒子の表面改質及び超微粉成分の除去を行うことが好ましい。あらかじめ微粉を除去しておくことにより、表面改質装置内でのトナー粒子の分散が良好になる。特に、トナー粒子中の微粉成分は、比表面積が大きく、他の大きなトナー粒子と比較して相対的に帯電量が高いために他のトナー粒子からの分離がされにくく、分級ローターで適正に超微粉成分が分級されない場合があるが、あらかじめトナー粒子中の微粉成分を除去しておくことによって、表面改質装置内で個々のトナー粒子が分散しやすくなり、超微粉成分が適正に分級ローターによって分級され、所望の粒度分布を有するトナー粒子を得ることができる。気流式分級機によって微粉を除去されたトナーは、コールターカウンター法を用いて測定される粒度分布において、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値が10%以上50%未満、好ましくは15%以上45%未満、より好ましくは15%以上40%未満であることが好ましく、本発明の表面改質装置によって効果的に超微粉成分を除去することができる。本発明で用いられる気流式分級機としては、エルボージェット(日鉄工業社製)等があげられる。
更に本発明においては、該表面改質装置内の分散ローター及び分級ローターの回転数等を制御することにより、トナー粒子の円形度、及びトナー粒子中の0.6μm以上3μm未満の粒子比率をより適正な値に制御することができる。
本発明においては、メタノール/水混合溶媒に対するトナー粒子の濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した時に、透過率が80%の時のメタノール濃度及び透過率50%の時のメタノール濃度が35〜75体積%、好ましくは40〜70体積%、より好ましくは45〜65体積%、より好ましくは45〜60体積%の範囲内であることが好ましい。このようなメタノール濃度−透過率特性を有するトナー粒子は、本発明の特徴とする表面改質装置を用いて、表面改質処理条件を適切な条件にし、かつ、粘弾性特性をコントロールすることによって得られ、トナー粒子表面における各原材料の露出割合、特に着色剤がバインダー樹脂から露出する状態やワックス成分の表面への染み出しが精密にコントロールすることができ、適度且つシャープな帯電性をトナー粒子にもたらすことができる。また、本発明のトナー粒子は平均円形度が0.935以上0.970未満であり、トナーとしたときの流動性に優れる。このように流動性が良く、且つ帯電量分布がシャープであるトナーは、トナー容器内でトナーが均一且つ高い帯電性を有することができ、長期の使用においても良好且つ安定した画像濃度を得ることができる。特に高温高湿環境下のようなトナーが凝集して流動性が悪化したり、また、帯電量が低下しやすい環境下において特に有効に作用する。
トナー粒子の、透過率が80%の時のメタノール濃度及び透過率が50%の時のメタノール濃度が35体積%より低いと、トナーの帯電性が不十分となり、画像濃度が劣るようになる場合がある。また、透過率が80%の時のメタノール濃度及び透過率が50%の時のメタノール濃度が75体積%を越えると、トナーの凝集性が高くなるために十分な流動性が得られなくなり、高温高湿環境下での現像性が不十分となる場合がある。
また、トナー粒子の、透過率が80%の時のメタノール濃度と透過率が50%の時のメタノール濃度の濃度差が10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下であることが好ましく、より良好な現像性をトナーに付与することができる。濃度差が10%を越えると、トナーの表面状態が不均一になり、不正に現像されるトナーが増加してカブリが増加する場合がある。
本発明においては、トナー粒子の濡れ性、即ち疎水特性は、メタノール滴下透過率曲線を用いて測定する。具体的には、その測定装置として、例えば、(株)レスカ社製の粉体濡れ性試験機WET−100Pを用い、下記の条件及び手順で測定したメタノール滴下透過率曲線を利用する。まず、メタノール30〜50体積%と水50〜70体積%とからなる含水メタノール液70mlを容器中に入れ、この中に検体であるトナー粒子を0.1g精秤して添加し、トナー粒子の疎水特性を測定するためのサンプル液を調製する。次に、この測定用サンプル液中に、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定し、図3に示したようなメタノール滴下透過率曲線を作成する。この際に、メタノールを滴定溶媒としたのは、トナー粒子に含有される染料、顔料、荷電制御剤等の溶出の影響が少なく、トナー粒子の表面状態がより正確に観察できるためである。
本発明のトナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。
トナーを負荷電性に制御するものとして下記化合物が挙げられる。
例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類などがある。
中でも、下記一般式(1)で表わされるアゾ系金属錯体が好ましい。
特に中心金属としてはFeが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基又はアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
あるいは次の一般式(2)に示した塩基性有機酸金属錯体も負帯電性を与える荷電制御剤として好ましい。
特に中心金属としてはFe,Cr,Si,Zn又はAlが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の化合物がある。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で或いは2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また一般式(3)
[式中、R
1はH又はCH
3を示し、R
2及びR
3は置換または未置換のアルキル基(好ましくはC
1〜C
4)を示す。]
で表わされるモノマーの単重合体:前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部または一部)としての作用をも有する。
特に下記一般式(4)で表わされる化合物が本発明の正荷電制御剤として好ましい。
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法とトナー粒子の外部に外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
本発明のトナーはワックスを含有してもよい。本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えばパラフィンワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックスおよびその誘導体などである。誘導体には酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。
本発明のトナーにおいては、これらのワックス総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.1〜15質量部で用いられ、好ましくは0.5〜12質量部で用いるのが効果的である。
これらのワックスは、示差熱分析測定装置(DSC)を用いて測定される融点が65℃以上130℃未満、好ましくは70°以上120℃未満、更に好ましくは70℃以上110℃未満、更に好ましくは75℃以上100℃未満であることが好ましい。トナー粒子中にこのような融点を有するワックスは適度な硬さを有しており、トナー粒子の表面改質工程において所望の円形度、粒度分布、表面面粗さを有するトナー粒子を効果的に得ることができる。ワックスの融点が65度未満の場合、トナーの保存性が悪化する場合がある。ワックスの融点が130℃を超えると、トナー粒子が硬くなりすぎて表面改質されたトナーの生産性が悪化する場合がある。
<ワックスの融点の測定方法>
試料:0.5〜2mg、好ましくは1mg
測定法:試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線:昇温I(20℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
降温I(180℃〜10℃、降温速度10℃/min)
昇温II(10℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
上記温度曲線において昇温IIで測定される吸熱ピーク温度を融点とする。
本発明のトナーは磁性体を含有する場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。トナーに使用される磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2〜40m2/g(より好ましくは4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20〜200質量部で用いられる。好ましくは40〜150質量部で用いられる。
個数平均径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明のトナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
本発明のトナー粒子には、無機微粉体または疎水性無機微粉体が外添されることが好ましい。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、べースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、べースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
シリカ微粉体の好ましい疎水化処理として、ヘキサメチルジシラザンで処理し、次いでシリコーンオイルで処理することにより調製する方法が挙げられる。
上記のようにシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、後にオイル処理することが疎水化度を効果的に上げることができ、好ましい。
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体に施したものも、シリカ系同様に好ましい。
本発明のトナー粒子には、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の添加剤を外添してもよい。
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.01〜5質量部(好ましくは0.01〜3質量部)使用するのが良い。
本発明のトナーは、好ましくは重量平均粒径を2.5〜10.0μm、好ましくは5.0〜9.0μm、より好ましくは6.0〜8.0μmとした場合に十分な効果が発揮され、好ましい。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20〜300μmの粒子がキャリア粒子として使用される。
キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質を付着または被覆されているものが好ましい。
本発明に係るトナー粒子は、結着樹脂と着色剤と、必要に応じてその他の成分を含有する組成物を溶融混練(混練工程)し、得られた混練物を粉砕(粉砕工程)することによって得られるものである。トナー粒子の構成材料は、ボールミルその他の混合機により予め十分混合した後、熱混練機を用いて混練することが好ましい。また粉砕工程は、粗粉砕工程と微粉砕工程に分かれていても良く、またその後に、分級(分級工程)を行っても良い。更に、本発明に係るトナー粒子の平均円形度及び平均面粗さを満たすために、上述したように表面改質装置を用いてトナー粒子表面を改質することが好ましく、特には、分級工程後に表面改質を行うことが好ましい。また、微粉除去を、表面改質と同時に行うことが好ましい。
本発明の如く、混練工程を経てトナーを製造した場合、トナー粒子の構成材料が粒子中で均一、且つ微細に分散させることができる。また、構成材料が良好に分散された混練物を粉砕することにより、トナー粒子表面における構成材料の分布が好適なものとなり、その結果、本発明の特徴とする特定の平均面粗さ、平均円形度を有するトナー粒子の効果を十分に発揮することができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
トナー用結着樹脂の製造方法を以下に示す。
(高分子量成分の製造例A−1)
・スチレン 75質量部
・アクリル酸n−ブチル 23質量部
・メタクリル酸 2質量部
・2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン
0.8質量部
4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を高分子量成分A−1とする。
(高分子量成分の製造例A−2)
高分子量成分の製造例A−1において、樹脂成分をスチレン78質量部、アクリル酸n−ブチル21.2質量部、アクリル酸0.8質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.8質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−2を得た。
(高分子量成分の製造例A−3)
高分子量成分の製造例A−1において、樹脂成分をスチレン73質量部、アクリル酸n−ブチル19質量部、アクリル酸8.0質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.8質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−3を得た。
(高分子量成分の製造例A−4)
高分子量成分の製造例A−1において、樹脂成分をスチレン77質量部、アクリル酸n−ブチル22.8質量部、メタクリル酸0.2質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.8質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−4を得た。
(高分子量成分の製造例A−5)
4つ口フラスコ内に脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン70質量部、アクリル酸n−ブチル25質量部、マレイン酸モノブチル4.7質量部、ジビニルベンゼン0.3質量部及び2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.1質量部の混合液を加え、懸濁液とし、フラスコ内を十分に窒素で置換してから、85℃まで昇温して、24時間保持した後、濾別・水洗し、乾燥して高分子量成分A−5を得た。
(高分子量成分の製造例A−6)
高分子量成分の製造例A−1において、樹脂成分をスチレン80質量部、アクリル酸n−ブチル20質量部2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン1質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−6を得た。
(低分子量成分の製造例B−1)
・スチレン 79質量部
・アクリル酸n−ブチル 20質量部
・メタクリル酸 1質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1.4質量部
上記原材料をキシレン200質量部中に4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を低分子量成分B−1とする。
(低分子量成分の製造例B−2)
低分子量成分の製造例B−1において、樹脂成分をスチレン75質量部、アクリル酸n−ブチル19.3質量部、アクリル酸5.7質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド5.0質量部に代えた以外は、上記製造例B−1と同様の方法を用いて、低分子量成分B−2を得た。
(低分子量成分の製造例B−3)
低分子量成分の製造例B−1において、樹脂成分をスチレン79質量部、アクリル酸n−ブチル20.7質量部、メタクリル酸0.3質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.4質量部に代えた以外は、上記製造例B−1と同様の方法を用いて、低分子量成分B−3を得た。
(低分子量成分の製造例B−4)
低分子量成分の製造例B−1において、樹脂成分をスチレン80質量部、アクリル酸n−ブチル20質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.0質量部に代えた以外は、上記製造例B−1と同様の方法を用いて低分子量成分B−4を得た。
(原料樹脂の製造)
上記のようにして得られた、高分子量成分及び低分子量成分を、キシレン200質量部に対して、表1に示す割合で混合溶解させ、昇温して還流下で12時間、撹拌混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷延・固化後、粉砕して、原料樹脂C−1〜C−7を得た。
(ビニル樹脂の製造例D−1)
・スチレン 79質量部
・アクリル酸n−ブチル 20質量部
・メタクリル酸グリシジル 1質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 5質量部
4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し、120℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このように得られた樹脂をビニル樹脂D−1とする。
(ビニル樹脂の製造例D−2)
ビニル樹脂の製造例D−1において、樹脂成分をスチレン72質量部、アクリル酸n−ブチル18質量部、メタクリル酸グリシジル10質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド5質量部に代えた以外は、上記製造製D−1と同様の方法を用いてビニル樹脂D−2を得た。
ビニル樹脂D−1及びD−2の物性を表2に示す。
(トナー用結着樹脂の製造例)
上記各原料樹脂C−1〜C−4とビニル樹脂D−1及びD−2とを、表3に示すの割合でヘンシェルミキサーに入れて混合し、この混合物を200℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混合させることにより、カルボキシル基とエポキシ基を反応させた。得られた樹脂を冷延・固化後、粉砕して、トナー用結着樹脂E−1〜E−5を得た。
磁性体を表4に、ワックスを表5に示す。
(トナー1の調製)
・トナー用結着樹脂E−1 100質量部
・磁性体1 95質量部
・モノアゾ鉄錯体 2質量部
・ワックス1 4質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、110℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050)を用いて、表6の条件表に基づき、エアー温度を調整して機械式粉砕させて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。そこで得られた原料トナー粒子のコールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)は6.6μm、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値は25.2%であった。
その原料トナー粒子を、図1に示す表面改質装置で表面改質及び微粉除去を行った。その際、本実施例においては、分散ローター上部に角型のディスクを16個設置し、ガイドリングと分散ローター上角型ディスクの間隔を60mm、分散ローターとライナーとの間隔を4mmとした。また、分散ローターの回転周速を140m/secとし、ブロワー風量を30m3/minとした。また、微粉砕品の投入量を300kgとし、サイクルタイムを45secとした。また、ジャケットに通す冷媒の温度を−15℃、冷風温度T1を−20℃とした。更に、分級ローターの回転数を制御することにより、0.6μm以上3μm未満の粒子比率を所望の値とした。以上の工程を経て、コールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)6.8μm、4μm未満のトナー粒子の個数平均分布の累積値が18.1%の負帯電性トナー粒子1を得た。トナー粒子1の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に、メタノール濃度−透過率曲線を図3示す。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー1を調製した。このトナーのFPIA2100で測定された3μm以上400μm以下の平均円形度は0.948であった。また、このトナーの走査型プローブ顕微鏡により測定された平均面粗さは、22.5nmであった。
このトナーの粘弾性特性を表8に示す。
(トナー2〜10及び12〜14の調製)
用いる結着樹脂、磁性体、ワックスを表6のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置の条件を表6に示すようにした以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子2〜10及び12〜14を得た。トナー粒子2〜10及び12〜14の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に示す。
これらのトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー2〜10及び12〜14を調製した。
これらのトナーの粘弾性特性を表8に示す。
(トナー11の調製)
表6の結着樹脂、磁性体、ワックスに加えて下式に示すジターシャリブチルサリチル酸アルミニウム錯体を0.5質量部を添加して、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置の条件を表6に示すようにした以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子11を得た。トナー粒子11の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に示す。
これらのトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー11を調製した。
このトナーの粘弾性特性を表8に示す。
(トナー15の調製)
用いる結着樹脂、磁性体、ワックスを表6のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、得られたトナー粒子を300℃の熱風中を瞬間的に通過させる処理を行った以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子15を得た。トナー粒子9の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に示す。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー15を調製した。このトナーのFPIA2100で測定された3μm以上400μm以下の平均円形度は0.975であった。また、このトナーの走査型プローブ顕微鏡により測定された平均面粗さは、8.9nmであった。
このトナーの粘弾性特性を表8に示す。
(トナー16の調製)
用いる結着樹脂、磁性体、ワックスを表6のようにして、更にターボミルの微粉砕条件を表6に示すように変更し、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置による表面改質を行わなかった以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子16を得た。トナー粒子16の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に示す。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー16を調製した。
このトナーの粘弾性特性を表8に示す。
(トナー17の調製)
用いる結着樹脂、磁性体、ワックスを表6のようにして、機械式粉砕機を用いずにジェット気流式粉砕機を用い、更に多分割分級装置での分級条件を変更し、得られたトナー粒子を300℃の熱風中を瞬間的に通過させる処理を行った以外はトナー粒子1と同様にしてトナー17を得た。トナー粒子17の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に示す。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー17を調製した。
このトナーの粘弾性特性を表8に示す。
(トナー18の調製)
用いる結着樹脂、磁性体、ワックスを表6のようにして、機械式粉砕機を用いずにジェット気流式粉砕機を用い、多分割分級装置での分級条件を変更し、更に表面改質装置による表面改質を行わなかった以外はトナー粒子1と同様にしてトナー粒子18を得た。トナー粒子18の、FPIA2100で測定された物性、及び780nmの波長光の透過率に対するメタノール濃度の値、及び走査型プローブ顕微鏡測定値を表7に示す。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー18を調製した。
このトナーの粘弾性特性を表8に示す。
<実施例1〜12、比較例1〜6>
次に、調製されたトナーを用いて、以下に示すような方法によって評価を行った。評価結果を表9に示す。
(1)画像濃度、カブリ
常温常湿環境下(23℃,60%RH)、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下で、Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて、印字比率4%で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に1枚/10秒のプリント速度で間欠画出し試験を9000枚行い、一日放置して再び9000枚、計18000枚の画出し試験を行った。結果を表9に示す。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(2)スリーブ上トナースジ
(1)の試験で、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)で4500枚毎に現像スリーブを観察し、スリーブ上のトナースジの発生を下記評価基準に従い評価した。
A:発生していない
B:1〜2条のスジが見られるが、紙で擦ると簡単に消える
C:1〜5条のスジが見られ、紙で擦っても消えず、融着している
D:6条以上のスジがあり、融着している
(3)定着ローラー巻き付き試験
(1)の試験で、常温常湿環境下(23℃,60%RH)で耐久試験を行うにおいて、定着ローラーへの巻きつきの評価を下記基準に従い行った。
A:定着排紙において、スムーズに排紙する。
B:分離爪にたよるが排紙は問題ない。
C:定着排紙において、紙先端に折れが生じる。
D:定着排紙において、紙詰まりが発生する。
(4)トナー消費量
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4200nを用いて、常温常湿環境下(23℃,60%RH)で印字比率4%の画像で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に12000枚を連続画出し(33枚/分)試験を行う前後で、トナー容器内のトナー量を測定し、画像1枚あたりのトナー消費量を測定した。
(5)スリーブネガゴースト
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて、通常の複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に、低温低湿環境下(15℃,10%RH)で18000枚連続プリントアウト(43枚/分)し、4500枚ごとにスリーブネガゴーストの評価を行った。ゴーストに関する画像評価には、スリーブ一周分だけベタ黒の帯を出力した後ハーフトーンの画像を出力した。パターンの概略図を図4に示す。評価方法は、一枚のプリント画像のうち、スリーブ2周目で、1周目で黒画像が形成された場所(黒印字部)と、されない場所(非画像部)での、マクベス濃度反射計により測定された反射濃度の差を下記のごとく算出した。ネガゴーストは、一般的にスリーブ2周目で出る画像において、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が、スリーブ1周目に非画像部だった部分の画像濃度よりも低く、1周目で出したパターンの形がそのまま現れるゴースト現象である。ここの濃度差を、反射濃度差を測定することにより評価を行った。
反射濃度差=反射濃度(像形成されない場所)−反射濃度(像形成された場所)
反射濃度差が小さいほどゴーストの発生はなくレベルは良い。ゴーストの総合評価としてA、B、C、Dの4段階で評価し、4500枚ごとの評価の中での最悪の評価結果を表9に示す。
反射濃度差 0.00以上0.02未満:A
0.02以上0.04未満:B
0.04以上0.06未満:C
0.06以上:D
(6)定着性
定着性は、90g/m2の坪量の複写機用普通紙を用いて、低温低湿環境(7.5℃・10%RH)で、Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて、立ち上げ直後に得られた画像を4.9kPaの圧力をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を測定し、下記評価基準に従い評価した。なお、画像上のトナーの載り量を5g/m2とした。
A:2%未満
B:2〜4%
C:4〜8%
D:8〜12%
E:12%超
(7)耐オフセット性
耐オフセット性は、Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet2300(プリント速度24枚/分・A4)を用いて、画像面積率約5%のサンプル画像を低温低湿環境(15℃,10%RH)でA5サイズの紙で100枚プリントアウトし、その後A4サイズの紙を通紙し、その時の画像上の汚れの程度を下記評価基準に従い評価した。試験紙として複写機用普通紙(64g/m2)を使用した。
A:未発生
B:良く見るとわずかに発生している
C:オフセットはしているが、見た目は気にならない程度
D:明らかにオフセット発生