JP3880325B2 - 磁性トナー、画像形成方法およびプロセスカートリッジ - Google Patents

磁性トナー、画像形成方法およびプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電印刷法、磁気記録法、及びトナージェット法の如き画像形成方法に用いられる磁性トナー、及び該磁性トナーを用いる画像形成方法、プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術を用いた装置は、オリジナル原稿を複写する複写機だけでなく、コンピュータの出力としてのプリンター、ファクシミリなどの分野でも広く使われている。
【0003】
近年このような装置には、より小型、より軽量そしてより高速、より高信頼性がきびしく追求されてきており、機械は種々な点でよりシンプルな要素で構成されるようになってきている。その結果、トナーに要求される性能はより高度になり、トナーの性能向上が達成できなければ、よりすぐれた機械が成り立たなくなってきている。
【0004】
トナーの特定溶媒に対する疎水特性を制御することで、トナーの現像性や耐久性を向上させる技術に関して、数々の提案が行われてきている。特開平11−194533号公報にはトナーをエチルアルコール/水混合溶液に分散させてその時の吸光度を測定する技術が、また、特開2000−242027号公報にはトナーが有する疎水特性をエタノール滴下透過率曲線で表してエタノール含有率に対する透過率を測定する技術が開示されている。また、電子写真の現像方法において、種々の現像方法が実用化されてきており、中でもシンプルな構造の現像器でトラブルが少なく、寿命も長く、メンテナンスが容易であることから、磁性トナーを用いた一成分現像法が好ましく用いられている。このような現像方法では、磁性トナーの性能により画像形成の品質が大きく左右される。また、磁性トナーにおいては、磁性酸化鉄を含有させることでトナーに磁性を持たせている。
【0005】
以上述べてきたものはそれぞれ良好な現像性を示しているが、高速での現像システムに適用した場合に更なる現像性や耐久性の改良が望まれ、また、高速現像におけるスリーブゴーストなどのトナーの流動性、帯電性に起因した諸問題についてはまだ改良の余地がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の如き問題点を解決した磁性トナー、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、高速現像システムにおいても良好な現像性及び耐久性が得られる磁性トナー、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0008】
本発明の目的は、スリーブゴーストを生じない磁性トナー、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、低温低湿、高温高湿環境下においても良好な現像性及び耐久性が得られる磁性トナー、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0010】
本発明の目的は、長期の放置後においても良好な現像性が得られる磁性トナー、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有する磁性トナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
該磁性トナーのゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有するものであることを特徴とする磁性トナーに関する。
【0012】
また、本発明は、トナー収納スペース内に少なくとも1つの撹拌部材を有しており、該撹拌部材が弾性変形可能なシート材で構成されており、容器の一部と接触可能な長さに設定されているトナー容器を備えた装置により形成される画像形成方法であり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とする画像形成方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
感光体ドラムと;前記感光体ドラムに形成された静電潜像を現像するための現像部材と;前記現像部材によって、前記静電潜像の現像に用いられる現像剤を収納するための現像剤収納部を有するトナー収納枠体と;前記感光体ドラムを支持するドラムフレームと;前記現像部材を支持する現像フレームを持っており、
前記トナー収納枠体が揺動可能に現像フレームと結合されているプロセスカートリッジを用いる画像形成方法であり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とする画像形成方法に関する。
【0014】
さらに本発明は、トナー収納スペース内に少なくとも1つの撹拌部材を有しており、該撹拌部材が弾性変形可能なシート材で構成されており、容器の一部と接触可能な長さに設定されているトナー容器を備えた装置を備えたプロセスカートリッジであり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0015】
さらに本発明は、画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
感光体ドラムと;前記感光体ドラムに形成された静電潜像を現像するための現像部材と;前記現像部材によって、前記静電潜像の現像に用いられる現像剤を収納するための現像剤収納部を有するトナー収納枠体と;前記感光体ドラムを支持するドラムフレームと;前記現像部材を支持する現像フレームを持っており、
前記トナー収納枠体が揺動可能に現像フレームと結合されているプロセスカートリッジであり、
該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、従来の問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、ある特定の分子量分布を持つ重合体成分を含有した磁性トナーであり、且つ、該磁性トナーの特定溶媒に対する濡れ性を制御することにより、磁性トナーの現像性、耐久性、流動性に極めて優れ、また、高速現像においても優れた現像性が得られることを見出した。
【0017】
さらに、トナー収納スペース内に弾性変形可能なシート材よりなる撹拌部材が、容器の一部と接触可能な長さに設定されているトナー収納容器を備えた装置による画像形成方法、プロセスカートリッジやトナー収納枠体が揺動可能に現像フレームと結合している装置を用いた画像形成方法、プロセスカートリッジにおいて、高度に適応可能であることを見出した。
【0018】
本発明の磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した時に、その透過率におけるメタノール/水混合溶媒中のメタノール濃度が特定の濃度領域に属していることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、磁性トナーのメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、図1に示したように、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であることにより、磁性トナーの帯電特性が安定化し、低温低湿、高温高湿などの各環境下においても優れた現像性を示す。
【0020】
磁性トナーのメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性は、そのトナーの表面材料組成及びその存在状態により大きな影響を受ける。磁性トナーの表面に、磁性酸化鉄の露出が少ないほど、即ち結着樹脂成分によって磁性トナー表面が覆われている割合が多くなるほど高いメタノール濃度でトナーが濡れるようになる。磁性トナー表面の結着樹脂成分の比率が多くなるほど磁性トナーの帯電性が向上し、より高い現像性が得られるようになる。しかし逆に磁性酸化鉄の露出が少なすぎると磁性トナーが適正な帯電性能を得られなくなり好ましくない。
【0021】
本発明においては、磁性トナーのメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%、好ましくは65〜77体積%、より好ましくは65〜75体積%の範囲内であることにより、磁性トナー粒子の表面に露出した結着樹脂と磁性酸化鉄の割合が適正な範囲内となり、磁性トナーが適正な帯電量を保てることとなる。露出が適正な範囲とは、即ち、結着樹脂成分が十分に且つ適度に磁性トナー粒子表面に存在して磁性トナーの帯電能力を高め、更に磁性酸化鉄も適度に露出することで磁性トナーが過剰に帯電することを防ぐということを表している。
【0022】
透過率が80%の時のメタノール濃度が65体積%よりも低いと、表面に磁性酸化鉄が多く露出している磁性トナー粒子が数多く存在しているということとなり、磁性トナーが十分に帯電できず現像性に劣るようになる。
【0023】
透過率が80%の時のメタノール濃度が80体積%を超えると、磁性酸化鉄の表面への露出が少ない磁性トナー粒子が数多く存在しているということになり、磁性トナーが過剰に帯電して適正な帯電量を保てなくなることで画像濃度が低下しカブリが増加する。更には、トナー収納容器内に容器の一部と接触可能な長さの弾性変形可能なシート材による撹拌部材を有するような画像形成方法に用いた場合、トナー容器内で過剰な帯電を起こし、トナーの静電凝集を引き起こし、トナー搬送を妨げるようになってしまい、画像が白抜けしてしまう現象(以下、フェーディング現象と呼ぶ)を発生してしまう。
【0024】
また、磁性トナーのメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%、好ましくは65〜77体積%、より好ましくは65〜75体積%の範囲内であることにより、磁性トナーの表面における結着樹脂と磁性酸化鉄の露出割合が適正な範囲となり、磁性トナーが適正な帯電量を保てることとなる。露出の適正な範囲とは、即ち、結着樹脂成分が十分且つ適度に磁性トナー表面に存在して磁性トナーの帯電能力を高め、更に磁性酸化鉄も適度に露出することで磁性トナーが過剰に帯電することを防ぐということを表している。
【0025】
透過率が10%の時のメタノール濃度が65体積%よりも低いと、磁性トナー中のほとんどの磁性トナー粒子において、表面に露出している磁性酸化鉄の割合が多くなり、磁性トナーが十分に帯電できず現像性に劣るようになる。更には、トナー収納容器内に容器の一部と接触可能な長さの弾性変形可能なシート材による撹拌部材を有するような画像形成方法に用いた場合、露出した酸化鉄により、弾性撹拌部材が傷つけられてしまい、撹拌に異常をきたし、適正なトナー搬送・撹拌ができなくなり、フェーディング画像を発生してしまう。また、更には、トナー収納枠体と現像フレームが揺動可能な可撓性シールにより結合されている画像形成方法で用いた場合、可撓性のシートをトナー表面に露出した酸化鉄が傷つけ、破損し、トナー漏れ等の不具合を生じることがある。
【0026】
透過率が10%の時のメタノール濃度が80体積%を超えると、表面に適正に磁性酸化鉄が露出した磁性トナーの割合が少ないということであり、磁性トナーが過剰に帯電して適正な帯電量を保てなくなることで画像濃度が低下しカブリが増加する。
【0027】
高速現像システムにおける連続現像においては、現像剤担持体、所謂現像スリーブ上で、規制ブレードによって規制された磁性トナーが迅速且つ均一に帯電することが特に求められる。それにより、高速な現像システムにおいても常に良好な画像を提供することができるのだが、磁性トナーが不均一に帯電し、帯電量の分布にばらつきがあると、高い印字面積の画像を連続で現像した時に、後の画像を現像する際に現像スリーブ上に供給された磁性トナーが十分に帯電しておらず、結果的に後の画像の画像濃度が低下して画像上に濃淡差が生じてしまう所謂ゴースト画像が発生してしまうことがある。磁性トナーの帯電量分布は、磁性トナーの表面の材料分散性に大きな影響を受け、材料分散性の均一性が増すほど帯電量分布も均一になる。磁性トナーの表面の材料分散性は、磁性トナーのメタノール/水混合溶媒に対する濡れ性の挙動を測定することによって知ることができる。表面の材料分散性が均一なほど、磁性トナーがメタノール/水混合溶媒に対して濡れ始めてから濡れ終わるまでのメタノールの濃度差が小さくなる。本発明においてはメタノール/水混合溶媒に対する磁性トナーの濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であることにより、透過率が80%の時のメタノール濃度と透過率が10%の時のメタノール濃度の濃度差が小さくなり、即ち磁性トナーの帯電量分布が均一化し、磁性トナーに均一且つ高い帯電性を付与することができる。
【0028】
透過率が80%の時のメタノール濃度が65体積%よりも低い、もしくは透過率が10%の時のメタノール濃度が65体積%よりも低いと、磁性トナーが十分に帯電できなくなる、もしくは磁性酸化鉄の帯電量分布がブロードになり、現像性に劣り、スリーブゴーストが悪化する。透過率が80%の時のメタノール濃度が80体積%を超える、もしくは透過率が10%の時のメタノール濃度が80体積%を超えると、磁性酸化鉄の帯電が過剰になる、もしくは磁性トナーの帯電量分布がブロードになり、不均一に帯電した磁性トナー粒子が存在することとなり、スリーブゴーストが悪化する。
【0029】
本発明においては、磁性トナーの濡れ性、即ち疎水特性は、メタノール滴下透過率曲線を用いて測定する。具体的には、その測定装置として、例えば、(株)レスカ社製の粉体濡れ性試験機WET−100Pを用い、下記の条件及び手順で測定したメタノール滴下透過率曲線を利用する。まず、メタノール60体積%と、水40体積%とからなる含水メタノール液70mlを容器中に入れ、この中に検体である磁性トナーを、目開き150μmのメッシュで振るい、メッシュを通った磁性トナーを0.1g精秤して添加し、磁性トナーの疎水特性を測定するためのサンプル液を調製する。次に、この測定用サンプル液中に、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定し、図1に示したようなメタノール滴下透過率曲線を作成する。この際に、メタノールを滴定溶媒としたのは、磁性トナー粒子に含有される染料、顔料、荷電制御剤等の溶出の影響が少なく、磁性トナーの表面状態がより正確に観察できるためである。
【0030】
上記の濡れ性を達成する製造法としての一つとして、本発明においては、図2、図3及び図4に示したような機械式粉砕機を用いることが、粉体原料の粉砕処理及び表面処理を行うことができるので効率向上が図られ、好ましい。この粉砕機において、粉砕時の温度を調整することで、磁性トナーの表面の磁性酸化鉄の量を制御できる。
【0031】
以下、図2、図3及び図4に示した機械式粉砕機について説明する。図2は、本発明において使用される機械式粉砕機の一例の概略断面図を示しており、図3は図2におけるD−D’面での概略的断面図を示しており、図4は図2に示す回転子214の斜視図を示している。該装置は、図2に示されているように、ケーシング213、ジャケット216、ディストリビュータ220、ケーシング213内にあって中心回転軸215に取り付けられた回転体からなる高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子214、回転子214の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられている固定子210、更に、被処理原料を導入するための原料投入口211、処理後の粉体を排出するための原料排出口202とから構成されている。
【0032】
これら機械式粉砕機の回転子214や固定子210の母材には、S45Cなどの炭素鋼やSCM材などのクロムモリブデン鋼などが用いられることが多いが、耐摩耗性能に問題があり、回転子および固定子の交換頻度が高いという問題があるため、これらの表面を、耐摩耗性を有するめっきでコーティングして用いることが安定したトナー表面の性質を得る上で好ましい。
【0033】
耐摩耗性を有するめっきでコーティングすることにより、表面硬さが大きく、耐摩耗性が高くなり、長寿命の回転子や固定子となる。めっきにより表面を均一かつ滑らかに仕上げ、摩擦係数を小さくして耐摩耗性を向上させることが可能となり、また、粉砕されるトナーの品質においても、より均一性の高い品質のトナーを得ることが可能となる。めっき処理した後、回転子や固定子の表面粗さを整えるために、バフ研磨の如き研磨処理やショットブラストの如きブラスト処理を施しても良い。
【0034】
前記回転子および/または固定子の表面硬さはHV400乃至1300(ビッカース硬さ400乃至1300)であることが好ましい。更に好ましい表面硬さはHV500乃至1250であり、特に好ましくはHV900乃至1230である。本発明における表面硬さは、荷重0.4903Nを30秒間保持する条件で測定した。
【0035】
表面硬さがHV400乃至1300の範囲であることにより、粉砕面の摩耗量を極力少なくすることができ、回転子や固定子の交換頻度を少なくすることができる。表面硬さがHV400未満では耐摩耗性が低下し始め、また粉砕能力を向上させることができなくなり、また、トナーの表面性が不均一なものになりやすくなる。表面硬さがHV1300を超える場合には表面が硬すぎて脆くなるため剥離・クラックが生じやすくなり、回転子や固定子の交換頻度が増加し始める。
【0036】
上述のような、回転子および/または固定子の表面が、耐摩耗性を有するめっきでコーティングされている機械式粉砕機によって粉砕すると、回転子および/または固定子の粉砕面の摩耗を少なくし、その寿命を長くするだけでなく、トナー品質、特にトナー表面に起因する帯電性や環境安定性をより安定化させることが可能となる。
【0037】
通常、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕する際には機械式粉砕機の渦巻室212の温度T1や後室230の温度T2の温度を制御し、樹脂のTg以下で粉砕を行い、表面改質を行わない方法を選択している。しかし、本発明の特徴とする性質の磁性トナーを得るために、202排出口の温度をTgから−25〜−5℃に設定し、実際の粉砕状態ではTgの−20〜±0℃の温度にして、粉砕後磁性トナー表面に存在する磁性酸化鉄の一部を樹脂が覆う状態となるように粉砕を行う。それにより、磁性トナー表面での原材料の存在分布が適正な値となりやすく、本発明の特徴とする疎水特性を磁性トナーに付与することができる。
【0038】
本発明のトナーは、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104、好ましくは5×103乃至2×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106、好ましくは1×105乃至2×106、さらに好ましくは3×105乃至2×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とする。
【0039】
分子量分布において、トナーがこのような分子量分布を持つことにより、定着・耐オフセット性のバランスが良好に保たれることはもちろん、トナーの表面被覆作用とその被覆層の強度が程よく、構成することができるのである。すなわち、低分子側の分子量が3×103未満では耐オフセット性が損なわれ、また、表面被覆層の強度が保たれず、耐久により、磁性体露出が起こり、帯電性に悪影響が出る。また、トナー収納容器内に容器の一部と接触可能な長さの弾性変形可能なシート材による撹拌部材を有するような画像形成方法に用いた場合、撹拌部材が容器と接触している部分でトナーの融着が生じ、トナー撹拌・搬送に不具合を生じ、フェーディングなどの画像弊害が発生する。更には、トナー収納枠体と現像フレームが揺動可能な可撓性シールにより結合されている画像形成方法で用いた場合、揺動部分でのトナーの融着が生じ、揺動部分の動きが妨げられてカートリッジにゆがみが生じやすくなったり、現像部分へのトナー圧力が高まったりするなどして、画像濃度の低下を引き起こしやすくなる。
【0040】
また、低分子側の分子量が3×104より大きければ、定着性に悪影響を与え、また、樹脂の粘度が上がるためにトナー表面の樹脂被覆作用が行われにくい。さらに、高分子側の分子量5×104より小さい場合には、耐オフセット性に悪影響を与え、また、表面被覆樹脂層の強度が落ちるために、耐久による磁性体露出が顕著となり、帯電性に悪影響を与える。また、高分子量側の分子量が3×106より大きければ、定着性に悪影響を与え、また、樹脂中の低分子量成分と分子量がかけ離れてしまうため、樹脂の不均一性が増し、帯電性等に悪影響を及ぼす。
【0041】
ここで、本発明のトナーまたは結着樹脂のTHF(テトラハイドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は例えば次の条件で測定することができる。
【0042】
まず、40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料のTHF溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0043】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製または昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良い。例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL),G2000H(HXL),G3000H(HXL),G4000H(HXL),G5000H(HXL),G6000H(HXL),G7000H(HXL),TSKguardcolumnの組み合わせを挙げることができる。
【0044】
分子量分布測定のための試料は次のようにして作製する。トナーの試料をTHFに入れ、数時間放置した後、十分振とうしてTHFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。このときTHF中への試料の放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、マイショリディスクH−25−5東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンス ジャパン社製などが利用できる)を通過させたものを、GPCの測定試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0045】
本発明のトナーに使用される結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が挙げられる。
【0046】
本発明の磁性トナーの結着樹脂は、スチレン系樹脂であることが好ましく,該結着樹脂の構成モノマー中に占めるスチレンの割合が80乃至99質量%、好ましくは85乃至99質量%、更に好ましくは、90乃至99質量%であることがトナー濡れ性をコントロールする上で好ましい。
【0047】
スチレン成分が80質量%未満では、トナーを樹脂被覆したときに疎水性表面を形成しにくく、帯電制御が困難となり、カブリ・ゴーストが悪化しやすくなり、好ましくない。また、99質量%を超えると樹脂のガラス転移温度と分子量の関係から好ましいものを得られにくくなり、また、表面の帯電制御が困難となりやすく、過剰な帯電をする傾向となり、カブリ・ゴースト等に悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。
【0048】
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体;アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸;マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸エステル;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル;酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは併用して用いられる。
【0049】
トナーの結着樹脂は、トナーの保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が45〜80℃、好ましくは50〜70℃である。Tgが上記範囲よりも低すぎると、高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなる。また、Tgが上記範囲よりも高すぎると、定着性が低下する傾向にある。
【0050】
本発明の結着樹脂の合成方法として用いることの出来る重合法として、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
【0051】
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さい。その結果、重合速度を大きくすることができ、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であること等の理由から、トナー用の結着樹脂の製造方法として有利な点がある。
【0052】
しかし、乳化重合法では添加した乳化剤のため生成重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
【0053】
懸濁重合においては、水系溶媒100質量部に対して、モノマー100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が用いられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05〜1質量部使用される。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する重合開始剤、生成するポリマーによって適宜選択される。
【0054】
本発明に用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤を用いて生成することが好ましい。
【0055】
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタンおよび各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内にパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
【0056】
これらのうち、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
【0057】
これらの多官能性重合開始剤は、トナーの結着樹脂として要求される種々の性能を満足するためには、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得るための分解温度よりも低い、半減期10時間を得るための分解温度を有する重合開始剤と併用することが好ましい。このような単官能性重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼンの如きアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
【0058】
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つためには、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
【0059】
これらの開始剤は、効率の点から、モノマー100質量部に対し0.05〜2質量部で用いるのが好ましい。
【0060】
また、結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
【0061】
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);さらにはポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0062】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.00001〜1質量部、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0063】
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性,耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0064】
その他の合成方法としては、塊状重合方法、溶液重合方法を用いることが出来る。塊状重合法は高温で重合させて停止反応速度を速めることで、任意の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくい問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、本発明で用いる結着樹脂を含む組成物中の低分子量体を得るには好ましい。特に、開始剤使用量を最小限に抑え、開始剤が残留することによる影響を極力抑えるという点で、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
【0065】
本発明の結着樹脂を得るためのモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレンおよびその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン;ブタジエン等の不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等の如きビニルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニル系モノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
【0066】
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0067】
結着樹脂を製造する方法として、溶液重合法により高分子量重合体と低分子量重合体を別々に合成した後にこれらを溶液状態で混合し、次いで脱溶剤する溶液ブレンド法、また、押出機等により溶融混練するドライブレンド法、溶液重合法等により得られた低分子量重合体を溶解した高分子量重合体を構成するモノマーに溶解し、懸濁重合を行い、洗浄・乾燥し、樹脂組成物を得る二段階重合法等も挙げられる。しかしながら、ドライブレンド法では、均一な分散・相溶の点で問題がある。また、二段階重合法は均一な分散性等に利点が多いが、溶液ブレンド法は低分子量分を高分子量分以上に増量することができ、低分子量重合体成分の存在下で分子量の大きい高分子量重合体の合成ができ、不必要な低分子量重合体が副生成する等の問題が少ないことから、該溶液ブレンド法が最も好適である。本発明の特徴とする分子量分布をトナーに付与するためには、低分子量成分と高分子量成分を別の過程で合成し、その後に溶液中でブレンドする方法が好ましい。
【0068】
本発明の磁性トナーの結着樹脂が、少なくとも、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量3×103乃至3×104の領域に極大値を有する低分子側成分(L成分)と、分子量5×104乃至3×106の領域に極大値を有する高分子側成分の混合物からなるものであり、そのうち、L成分の構成モノマーに占めるスチレンの割合が90乃至100質量%、好ましくは95乃至100質量%であることが好ましい。
【0069】
L成分はより粘度が小さい成分であるために、トナーの樹脂被覆表面に対する影響が大きく、その成分のスチレンの割合が大きいことがトナー濡れ性をコントロールする観点から好ましく、L成分のスチレンの割合が90質量%未満ならば、トナー表面の疎水性が下がり、好ましい帯電性を得にくくなり、カブリ・ゴースト等に悪影響を及ぼすことがある。
【0070】
また、本発明において結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
【0071】
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体が挙げられる。
【0072】
【化1】
Figure 0003880325
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
【0073】
さらに、2価のアルコール成分として式(B)で示されるジオールが挙げられる。
【0074】
【化2】
Figure 0003880325
【0075】
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸又はその無水物又はその低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸もしくはアルキルコハク酸、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸又はその無水物又はその低級アルキルエステル等のジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。
【0076】
また、架橋成分としても働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
【0077】
3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0078】
また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
【0079】
【化3】
Figure 0003880325
(式中、Xは炭素数1以上の側鎖を1個以上有する炭素数1〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸及びこれらの無水物及びそれらの低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
【0080】
アルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。また3価以上の多価アルコールの成分は、全成分中の1〜60mol%であることが好ましい。上記ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
【0081】
本発明の磁性トナーに使用できる磁性酸化鉄粒子としては、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは1〜20m2/g、特に2.5〜12m2/g、更にモース硬度が5〜7の磁性粉が好ましい。磁性体の形状としては、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが好ましい。等方性の形状を有するものは、結着樹脂・ワックスに対しても、良好な分散を達成することができるからである。磁性体の平均粒径としては0.05〜1.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.6μm、さらには0.1〜0.4μmが好ましい。
【0082】
上記磁性材料は、トナー結着樹脂100質量部に対し40〜200質量部添加するのが好ましく、特に好ましくは50〜150質量部である。40質量部未満では、トナーの搬送性が不十分で現像剤担持体上の現像剤層にムラが生じ、画像ムラとなる傾向であり、さらに現像剤の帯電の過剰な上昇に起因する画像濃度の低下が生じ易い傾向であった。また、200質量部を超える場合には、現像剤の帯電が充分には得られなくなるために、画像濃度低下が生じやすくなる。
【0083】
本発明において、磁性酸化鉄の各物性は以下の方法により測定される。
【0084】
(1)磁性酸化鉄の粒径及び形状:
透過型電子顕微鏡(TEM)H−700H、H−800、H−7500(いずれも日立製作所製)又は走査型電子顕微鏡(SEM)S−800又はS−4700(いずれも日立製作所製)を用い、磁性酸化鉄を20,000〜200,000倍で撮影し、1〜10倍の焼き付け倍率として、任意の倍率で試料を観察することができる。粒径は、0.03μm以上の粒子100個をランダムに選び出して、各粒子の最大長(μm)を計測し、その平均をもって個数平均粒径とする。
【0085】
(2)BET比表面積:
BET比表面積は、湯浅アイオニクス(株)製、全自動ガス吸着量測定装置:オートソーブ1を使用し、吸着ガスに窒素を用い、BET多点法により求める。なお、サンプルの前処理としては、50℃で1時間の脱気を行う。
【0086】
本発明の磁性トナーは、示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線に少なくとも一つの吸熱ピークを有し、該吸熱ピークが120〜160℃、好ましくは120〜150℃、より好ましくは125〜145℃に存在することが好ましい。吸熱ピークは2つ以上存在していてもよいが、その場合は120〜160℃に少なくとも1つの吸熱ピークを有することが好ましい。昇温時のDSC曲線からは、磁性トナーの吸熱に伴う融解挙動を見ることができる。吸熱ピークが120〜160℃に存在することで磁性トナーが摩擦熱に対して強くなり、長時間の使用においてトナーに滑り性を確保できる。吸熱ピークが160℃を超えた温度に存在すると、磁性酸化鉄の分散性が不十分となり、カブリが悪化する場合がある。
【0087】
本発明の磁性トナーの吸熱ピークは、磁性トナーに含有されるワックスに起因するものであり、適当なワックスを選択して磁性トナーに含有させることによって所望の吸熱ピークを得ることができる。このような吸熱ピークを磁性トナーに付与することができるワックスは、その溶融特性から、磁性トナー表面において高い疎水性を磁性トナーに付与しやすく、本発明の特徴とする濡れ性を磁性トナーに効果的に付与することができる。
【0088】
本発明においては、磁性トナーのDSC曲線は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、例えばDSC−7(パーキンエルマー社製)やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定を行う。DSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、昇温速度10℃/minで昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
【0089】
本発明のトナーは、荷電制御剤として、有機金属化合物を用いることが好ましく、特に有機化合物を配位子や対イオンとして含有するものが有用である。このような金属錯体としては、帯電性の観点から、金属錯体型モノアゾ化合物が好ましく用いられる。金属錯体型モノアゾ化合物としては、特公昭41−20153号、同42−27596号、同44−6397号、同45−26478号公報などに記載されているモノアゾ染料の金属錯体などがある。特に分散性・帯電性の面などから、下記一般式(I)で表わされる金属錯体型モノアゾ化合物であることが好ましく、中でも、中心金属が鉄である金属錯体型モノアゾ鉄錯体を用いることが好ましい。さらに好ましくは、下記一般式(II)で表わされるモノアゾ鉄錯体を用いることである。
【0090】
【化4】
Figure 0003880325
【0091】
【化5】
Figure 0003880325
[式中、X1,X2;水素原子,低級アルキル基,低級アルコキシ基,ニトロ基,ハロゲン原子
m,m’;1〜3の整数
1,Y3;水素原子,C1〜C18のアルキル,アルケニル,スルホン
アミド,メシル,スルホン酸,カルボキシエステル,ヒドロキシ,C1〜C18のアルコキシ,アセチルアミノ,ベンゾイル,アミノ基,ハロゲン原子
n,n’;1〜3の整数
2,Y4;水素原子,ニトロ基
(上記のX1とX2,mとm’,Y1とY3,nとn’,Y2とY4は同一でも異なっていても良い。)
+;アンモニウムイオン,アルカリ金属イオン、水素イオンの混合よりなる。]
【0092】
上記金属錯体型モノアゾ化合物の含有量は、トナー結着樹脂100質量部に対し、0.05〜5質量部が好ましく、特に0.2〜3質量部が好ましい。該金属錯体型モノアゾ化合物の含有量が多過ぎると、トナーの流動性が悪化し、カブリが生じやすく、一方、少な過ぎると充分な帯電量が得られにくい。
【0093】
本発明において着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が使用される.トナー着色剤は周知であって、例えば顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。また同様の目的で、さらに染料が用いられる。例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料等があり樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
【0094】
本発明のワックスは、示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線に少なくとも一つの吸熱ピークを有し、該吸熱ピークが120〜160℃、好ましくは120〜150℃、より好ましくは125〜145℃に存在することが好ましい。吸熱ピークは2つ以上存在していてもよいが、その場合は120〜160℃に少なくとも1つの吸熱ピークを有することが好ましい。ワックスが上記温度領域に吸熱ピークを有することで、磁性トナーに好ましい吸熱特性を付与することができる。
【0095】
本発明の磁性トナーに含有されるワックスは、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、オレフィンの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類の如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0096】
好ましく用いられるワックスとしては、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒又はその他の触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;アルキレンポリマーを重合する際に副生する低分子量アルキレンポリマーを分離精製したもの;一酸化炭素及び水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいは、これらを水素添加して得られる合成炭化水素などから、特定の成分を抽出分別したワックスが挙げられる。これらワックスには酸化防止剤が添加されていてもよい。さらに、直鎖状のアルコール、脂肪酸、酸アミド、エステルあるいは、モンタン系誘導体で形成されるワックスが挙げられる。また、脂肪酸等の不純物を予め除去してあるものも好ましい。
【0097】
特に好ましいワックスは、メタロセン触媒により重合されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体である。これらによりトナーに耐摩擦性が付与され好ましい。
【0098】
本発明に使用されるワックスは、結着樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜12質量部添加されるのが効果的であり、また、複数のワックスを併用することも好ましい。
【0099】
本発明の磁性トナーは、無機微粉体を含有する。無機微粉体は磁性トナーに外添されていることが好ましい。無機微粉体は疎水性無機微粉体であることが好ましい。無機微粉体の例としては、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
【0100】
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ及び水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
【0101】
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0102】
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0103】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
【0104】
特に好ましい方法としては、ジメチルシリコーンオイルで処理する方法が挙げられる。ジメチルシリコーンオイルで疎水化処理されたシリカ微粉体は、適度な疎水性を有し、且つ滑り性にも優れるため、長期の使用において磁性トナーが現像スリーブに融着して画像濃度が低下することを効果的に防ぐことができる。特に本発明の磁性トナーのように、高い帯電性を有する磁性トナーに用いた時に効果的である。
【0105】
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカヘシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
【0106】
シリカ微粉体の好ましい疎水化処理として、ジメチルジクロロシランで処理し、次いでヘキサメチルジシラザンで処理し、次いでシリコーンオイルで処理することにより調製する方法が挙げられる。
【0107】
上記のようにシリカ微粉体を2個以上のシラン化合物で処理し、後にオイル処理することが疎水化度を効果的に上げることができ、好ましい。
【0108】
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体に施したものも、シリカ系同様に好ましい。
【0109】
本発明のトナーには、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の添加剤を外添してもよい。
【0110】
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
【0111】
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル,メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
【0112】
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
【0113】
その他の微粒子としては、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
【0114】
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは、0.1〜3質量部)使用するのが良い。
【0115】
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。
【0116】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
【0117】
本発明のトナーを製造する方法としては、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後、機械的に粉砕し、粉砕粉を分級することによってトナーを得る方法が好ましい。他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法トナー製造法;コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法;結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥することによりトナーを得る方法が挙げられる。更に必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合し、本発明のトナーを製造することができる。
【0118】
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、造粒機としては、ローラーコンパクター(ターボ工業社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0119】
次に本発明の画像形成方法、プロセスカートリッジの一例に関して図5を用いて説明する。図5は実施例に使用したプロセスカートリッジの断面図を示している。11は感光体ドラム、14はクリーニング装置、12は帯電部材である。
【0120】
現像装置はトナー、現像容器、及び、現像スリーブ18、現像ブレード26で構成される。現像スリーブ18はアルミニウム芯金にカーボンコートしたものを使用する。不図示のマグネットを現像スリーブ内に設けることにより、マグネタイトを含有する黒トナーを現像スリーブ18上に引き付け、26の現像ブレードにより現像スリーブ18上にトナーを均一にコートする。
【0121】
一方、トナー容器16は下に三つこぶの円形底を形成し、各こぶの中に3つの撹拌部材34a、34b、34cを備える。そして、各撹拌部材は仕切り部材35−1、35−2によってそれぞれトナー撹拌領域を形成する。仕切り部材35とトナー容器との間に形成される開口の幅は15mmとした。
【0122】
前記撹拌部材は弾性変形するシート材を用いて構成され、前記シート材はトナーが充填されているときには攪拌部材の回転により弾性変形し、撹拌作用が減少するとともに、撹拌部材の周辺に小さなトナー循環を形成する。トナーが消費され、トナー残量が少なくなると、前記撹拌部材のシート材は円形に構成される容器底部を擦り、容器内に残るトナーを現像装置の方へ搬送する。
【0123】
また、シート材のヤング率は現像装置に最も近い方が小さくなるように設定する。これにより現像装置に近いトナー循環スペースはシート材の変形量が増加し、トナーの攪拌能力が低下するため、現像装置付近のトナーの立ち上がりが速くなる。
【0124】
また、撹拌部材の回転数は、現像装置に最も近い方が他の撹拌部材より速くなるように設定する。これにより現像装置に近いトナー循環スペースはシート材の変形量が増加し、トナーの攪拌能力が他の攪拌部材より低下するため、現像装置付近のトナーの立ち上がりが速くなる。
【0125】
また、現像装置に最も近い撹拌部材の回転数を他の撹拌部材の回転数より速く、かつシート材のヤング率を低く設定するかもしくはシート材の厚さを薄くすることにより、現像装置に最も近いトナー循環スペースのシート材の変形量が増加し、トナーの攪拌能力が低下することにより現像装置付近のトナーの立ち上がりが速くなる。
【0126】
トナー容器16内には1500gのトナーを充填した。各攪拌部材は攪拌軸にシート材を設けた構成であり、本実施例において34aは厚さ50μm(ヤング率:3GPa)のPPSシートを採用し、回転半径20mmで0.167s-1の速度で回転する。また、34b、34cは厚さ100μm(ヤング率:3GPa)のPPSシートを採用し、回転半径30mmで0.0333s-1の速度で回転する。また、PPSシートの容器に対する進入量は3mmとした。
【0127】
また、本発明に用いられる別の画像形成方法、プロセスカートリッジの一例に関して図6を用いて説明する。
【0128】
図6に示すように本発明に用いられるプロセスカートリッジ15は、感光ドラム11の周囲に帯電部材である帯電ローラ12、現像装置として、現像部材としての現像ローラ18、現像ブレード26、及び、クリーニング部材としてのクリーニングブレード14を配置している。そしてこれらの各部材をハウジングで覆って一体的にプロセスカートリッジ15としている。
【0129】
ここでトナー収納枠体16と現像枠体17は、シール部材21等のフレキシブルな材料、例えば発泡ウレタンフィルム、エステル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルムなどの可撓性のシールにより、揺動可能に結合されている。これにより、トナー収納枠体中のトナー量の減量に伴う質量差によって生じるひずみをこの揺動的結合によって吸収したり、トナーの押し付け圧力が現像スリーブ等の現像部に対して過剰に掛かることを防ぐことができる。
【0130】
【実施例】
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0131】
<樹脂製造例>
(高分子量重合体の合成例)
高分子量重合体(H−1)の合成:
4ツ口フラスコに脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン70質量部、アクリル酸−n−ブチル20質量部、マレイン酸モノブチル10質量部、ジビニルベンゼン0.001質量部、及び、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(半減期10時間温度92℃)0.1質量部の溶液の混合液を加え、撹拌し懸濁液とした。
【0132】
フラスコ内を充分に窒素で置換した後、85℃まで昇温して、重合を開始した。同温度に24時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド(半減期10時間温度92℃)0.1質量部を追加添加した。さらに、12時間保持して重合を完了した。これを瀘別し、水洗、乾燥し、高分子量重合体(H−1)を得た。
【0133】
該高分子量重合体(H−1)を瀘別し、水洗、乾燥した後、分析したところ、Mw=90万、PMw=83万、Mw/Mn=2.3、Tg=62℃であった。
【0134】
高分子量重合体(H−2)の合成:
4ツ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、撹拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させる。
【0135】
この還流下で、スチレン65質量部、アクリル酸−n−ブチル30質量部、マレイン酸モノブチル5質量部、ジビニルベンゼン0.001質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド0.5質量部の混合液を4時間かけて滴下後、2時間保持し重合を完了し、高分子量重合体(H−2)溶液を得た。
【0136】
この重合体溶液の一部をサンプリングし、減圧下で乾燥させ、得られた高分子量重合体(H−2)を分析したところ、Mw=23万、PMw=12万、Mw/Mn=2.9、Tg=55℃であった。
【0137】
(低分子量重合体の合成例)
低分子量重合体(L−1)の合成:
4ツ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させる。
【0138】
この還流下で、スチレン91質量部、アクリル酸−n−ブチル8.8質量部、マレイン酸モノブチル0.2質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3質量部の混合液を4時間かけて滴下後、2時間保持し重合を完了し、低分子量重合体(L−1)溶液を得た。
【0139】
この重合体溶液の一部をサンプリングし、減圧下で乾燥させ、得られた低分子量重合体(L−1)の分析を行なったところ、Mw=10000、PMw=8500、Mw/Mn=2.2、Tg=61℃であった。
【0140】
低分子量重合体(L−2)の合成:
スチレン100質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド9質量部とした以外は、低分子量重合体(L−1)と同様に重合を行い、低分子量重合体(L−2)溶液を得た。
【0141】
この重合体溶液の一部をサンプリングし、減圧下で乾燥させ、得られた低分子量重合体(L−2)の分析を行なったところ、Mw=4300、PMw=4000、Mw/Mn=2.4、Tg=60℃であった。
【0142】
低分子量重合体(L−3)の合成:
スチレン95質量部、アクリル酸−n−ブチル5質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド5質量部とした以外は、低分子量重合体(L−1)と同様に重合を行い、低分子量重合体(L−3)溶液を得た。
【0143】
この重合体溶液の一部をサンプリングし、減圧下で乾燥させ、得られた低分子量重合体(L−3)の分析を行なったところ、Mw=7500、PMw=6000、Mw/Mn=2.2、Tg=59℃であった。
【0144】
低分子量重合体(L−4)の合成:
スチレン87質量部、アクリル酸−n−ブチル13質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド2質量部とした以外は、低分子量重合体(L−1)と同様に重合を行い、低分子量重合体(L−4)溶液を得た。
【0145】
この重合体溶液の一部をサンプリングし、減圧下で乾燥させ、得られた低分子量重合体(L−4)の分析を行なったところ、Mw=19000、PMw=17500、Mw/Mn=2.3、Tg=68℃であった。
【0146】
低分子量重合体(L−5)の合成:
スチレン75質量部、アクリル酸−n−ブチル25質量部、及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド1.5質量部とした以外は、低分子量重合体(L−1)と同様に重合を行い、低分子量重合体(L−5)溶液を得た。
【0147】
この重合体溶液の一部をサンプリングし、減圧下で乾燥させ、得られた低分子量重合体(L−5)の分析を行なったところ、Mw=35000、PMw=30100、Mw/Mn=2.1、Tg=50℃であった。
【0148】
次に、表1に示すような割合で高分子量重合体と低分子量重合体を混合した。方法は、キシレン100質量部に、高分子量重合体と低分子量重合体の合計が100質量部となるようにして投入し、昇温して還流下で撹拌し、12時間保持した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却、固化後、粉砕してトナー用樹脂組成物を得た。
【0149】
【表1】
Figure 0003880325
【0150】
[実施例1]
樹脂成分とワックス成分を表1に示した処方とし、下記の如くして磁性トナーを得た。
Figure 0003880325
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、130℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕して磁性トナー粗粉砕物を得た。
【0151】
得られた粗粉砕物を、回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティングし(めっき厚150μm、表面硬さHV1050)、回転子と固定子の最小間隙を1.5mmに設定したターボミル(ターボ工業社製)を用いて、表2の条件に基づき、エアー温度を調整して機械式粉砕させて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉、超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して、重量平均粒径(D4)6.7μmの負帯電性磁性トナー粒子を得た。更に、分級において発生した微粉、超微粉及び粗紛を、ローラーコンパクター(ターボ工業社製)にて造粒して、前記原材料全体の20質量%を前記原材料に添加し、前記製造方法と同様の方法によって重量平均粒径(D4)6.7μmの負荷電性磁性トナー粒子を得た。
【0152】
この磁性トナー粒子100質量部と、ジメチルジクロロシラン処理した後、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性磁性トナー1を調製した。
【0153】
[実施例2〜、比較例1〜]
実施例1と同様にして、表1のトナー処方に基づき、更にターボミルの微粉砕条件を表2に示すように代えて、実施例2〜、及び、比較例1〜の磁性トナーを得た。
【0154】
次に、調製された磁性トナーを以下に示すような方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0155】
図5に示したトナー収納容器内に容器の一部と接触可能な長さの弾性変形可能なシート材による撹拌部材を有しており、且つ、図6に示したトナー収納枠体と現像フレームが揺動可能な可撓性シールにより結合されているプロセスカートリッジに、上記磁性トナーを1600g充填し、キヤノン製レーザービームプリンターLBP−950を前記カートリッジが入るよう改造し、更にA4横送りで32枚/分から50枚/分に改造し、更に定着器の加熱ローラーと加圧ローラー間の総圧を333N(34kg)、ニップを9mmに設定した。この時のプロセススピードは235mm/secであった。
【0156】
以上の設定条件で高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)及び低温低湿環境下(15℃,10%RH)において2枚/20secのプリント速度で30000枚の画出し試験を行い、得られた画像を下記の項目について評価した。また、高温高湿環境下においては、15000枚の画出し試験の後、同一環境下において2日間放置し、更に15000枚の画出し試験を行った。画出し試験において、磁性トナー残量が100gより少なくなった時点で、磁性トナーを500gずつ補給して、30000枚の画出し試験を続けた。トナー補給に際しては、カートリッジ上部のトナー容器部分に切り込みを設け、そこからトナーを補給した。
【0157】
(1)画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に30000枚プリントアウトし、高温高湿環境下では2日間の放置後の朝一及び耐久終期の画像濃度、低温低湿環境下では耐久終期の画像濃度の評価を行った。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
【0158】
(2)カブリ
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、低温低湿下(15℃,10%RH)で30000枚プリントアウトし、開始時及び終了時のカブリの評価を行った。リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
【0159】
(3)スリーブゴースト
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、低温低湿下(15℃,10%RH)で30000枚プリントアウトし、10000枚ごとにスリーブゴーストの評価を行った。ゴーストに関する画像評価には、スリーブ一周分だけベタ黒の帯を出力した後ハーフトーンの画像を出力した。パターンの概略図を図7に示す。評価方法は、一枚のプリント画像のうち、スリーブ2周目で、1周目で黒画像が形成された場所(黒印字部)と、されない場所(非画像部)での、マクベス濃度反射計により測定された反射濃度の差を下記のごとく算出した。
【0160】
ゴーストは、一般的にネガゴーストとポジゴーストがあり、ネガゴーストはスリーブ2周目で出る画像において、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が、スリーブ1周目に非画像部だった部分の画像濃度よりも低く、1周目で出したパターンの形がそのまま現れるゴースト現象であり、また、ポジゴーストは逆にスリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度がスリーブ1周目に非画像部だった部分の画像濃度より高くなるゴースト現象である。ここの濃度差を、反射濃度差を測定することにより評価を行った。
反射濃度差=|反射濃度(像形成されない場所)−反射濃度(像形成された場所)|
【0161】
その平均値を表3に示す。反射濃度差が小さいほどゴーストの発生はなくレベルは良い。ゴーストの総合評価として○、○△、△、△×、×の5段階にわけ評価した。
反射濃度差
○ :0.00〜0.02の場合
○△:0.02〜0.04の場合
△ :0.04〜0.06の場合
△×:0.06〜0.08の場合
× :0.08〜 の場合
【0162】
(4)画像品質
通常環境(23℃,60%RH)において、図8に示すチェッカー模様をプリントアウトし、ドット再現性を以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:非常に良好(欠損2個以下/100個)
○:良好(欠損3〜5個/100個)
△:普通(欠損6〜10個/100個)
×:悪い(欠損11個以上/100個)
【0163】
(5)フェーディング
高温高湿(32.5℃,80%RH)環境下において、1000枚ごとにベタ黒画像をとりながら、4%印字パターンを2枚/6秒の割合で間欠的に30000枚耐久画出しし、ベタ黒画像の均一性により、フェーディングの有無をチェックした。
【0164】
【表2】
Figure 0003880325
【0165】
【表3】
Figure 0003880325
【0166】
【発明の効果】
高温高湿、低温低湿のような厳しい環境下においても長期の使用において高い現像性を維持し、且つスリーブゴーストやフェーディング等の画像弊害を起こさない磁性トナー、画像形成方法、及び、プロセスカートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】メタノール濃度に対する透過率を示したグラフである。
【図2】本発明の磁性トナーの粉砕工程において使用され得る機械式粉砕機の概略断面図である。
【図3】図3におけるD−D’面での概略的断面図である。
【図4】図3に示す回転子の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態を示すプロセスカートリッジの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す別のプロセスカートリッジの断面図である。
【図7】スリーブゴーストを評価するためのパターンの説明図である。
【図8】ドット再現性の評価に用いたチェッカー模様の説明図である。
【符号の説明】
k 折り目
t トナー
5 除去トナー溜め(除去現像剤収納部)
11 感光体ドラム
12 帯電ローラ(帯電部材)
13 クリーニング枠体
14 クリーニングブレード
15 プロセスカートリッジ
16 トナー収納枠体(トナー容器)
17 現像枠体
18 現像スリーブ
21 シール部材
26 現像ブレード
113/114 撹拌部材
34a/34b/34c 撹拌部材
35−1/35−2 仕切り部材
201 機械式粉砕機
210 固定子
212 渦巻室
213 ケーシング
214 回転子
215 回転軸
216 ジャケット
219 パイプ
220 ディストリビュータ
222 バグフィルター
224 吸引ブロワー
229 捕集サイクロン
235 定量供給機

Claims (22)

  1. 少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
    該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
    該磁性トナーのテトラハイドロフラン(THF)可溶成分のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とする磁性トナー。
  2. 該磁性トナーの結着樹脂の構成モノマー中に占めるスチレンの割合が80乃至99質量%であることを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
  3. 該磁性トナーの結着樹脂が、少なくとも、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量3×103乃至3×104の領域に極大値を有する低分子側成分(L成分)と、分子量5×104乃至3×106の領域に極大値を有する高分子側成分の混合物からなるものであり、そのうち、L成分の構成モノマーに占めるスチレンの割合が90乃至100質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性トナー。
  4. 該磁性トナーの示差走査型熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線において、120乃至160℃の温度領域に少なくとも1つの吸熱ピークを有するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性トナー。
  5. トナー収納スペース内に少なくとも1つの撹拌部材を有しており、該撹拌部材が弾性変形可能なシート材で構成されており、容器の一部と接触可能な長さに設定されている画像形成方法であり、
    該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
    該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
    該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とする画像形成方法。
  6. 該磁性トナーの結着樹脂の構成モノマー中に占めるスチレンの割合が80乃至99質量%であることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
  7. 該磁性トナーの結着樹脂が、少なくとも、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量3×103乃至3×104の領域に極大値を有する低分子側成分(L成分)と、分子量1×105乃至3×106の領域に極大値を有する高分子側成分の混合物からなるものであり、そのうち、L成分の構成モノマーに占めるスチレンの割合が90乃至100質量%であることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成方法。
  8. 該磁性トナーの示差走査型熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線において、120乃至160℃の温度領域に少なくとも1つの吸熱ピークを有するものであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の画像形成方法。
  9. 画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
    感光体ドラムと;前記感光体ドラムに形成された静電潜像を現像するための現像部材と;前記現像部材によって、前記静電潜像の現像に用いられる現像剤を収納するための現像剤収納部を有するトナー収納枠体と;前記感光体ドラムを支持するドラムフレームと;前記現像部材を支持する現像フレームを持っており、
    前記トナー収納枠体が揺動可能に現像フレームと結合されているプロセスカートリッジを用いる画像形成方法であり、
    該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
    該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
    該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とする画像形成方法。
  10. 前記現像フレームと前記トナー収納枠体は、可撓性のシールで結合されており、かつ、前記可撓性のシールは、前記現像フレームと前記トナー収納枠体とに貼り付けられているプロセスカートリッジを用いることを特徴とする請求項9に記載の画像形成方法。
  11. 該磁性トナーの結着樹脂の構成モノマー中に占めるスチレンの割合が80乃至99質量%であることを特徴とする請求項9又は10に記載の画像形成方法。
  12. 該磁性トナーの結着樹脂が、少なくとも、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量3×103乃至3×104の領域に極大値を有する低分子側成分(L成分)と、分子量1×105乃至3×106の領域に極大値を有する高分子側成分の混合物からなるものであり、そのうち、L成分の構成モノマーに占めるスチレンの割合が90乃至100質量%であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の画像形成方法。
  13. 該磁性トナーの示差走査型熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線において、120乃至160℃の温度領域に少なくとも1つの吸熱ピークを有するものであることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の画像形成方法。
  14. トナー収納スペース内に少なくとも1つの撹拌部材を有しており、該撹拌部材が弾性変形可能なシート材で構成されており、容器の一部と接触可能な長さに設定されているプロセスカートリッジであり、
    該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
    該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
    該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
  15. 該磁性トナーの結着樹脂の構成モノマー中に占めるスチレンの割合が80乃至99質量%であることを特徴とする請求項14に記載のプロセスカートリッジ。
  16. 該磁性トナーの結着樹脂が、少なくとも、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量3×103乃至3×104の領域に極大値を有する低分子側成分(L成分)と、分子量1×105乃至3×106の領域に極大値を有する高分子側成分の混合物からなるものであり、そのうち、L成分の構成モノマーに占めるスチレンの割合が90乃至100質量%であることを特徴とする請求項14又は15に記載のプロセスカートリッジ。
  17. 該磁性トナーの示差走査型熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線において、120乃至160℃の温度領域に少なくとも1つの吸熱ピークを有するものであることを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  18. 画像形成装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
    感光体ドラムと;前記感光体ドラムに形成された静電潜像を現像するための現像部材と;前記現像部材によって、前記静電潜像の現像に用いられる現像剤を収納するための現像剤収納部を有するトナー収納枠体と;前記感光体ドラムを支持するドラムフレームと;前記現像部材を支持する現像フレームを持っており、
    前記トナー収納枠体が揺動可能に現像フレームと結合されているプロセスカートリッジであり、
    該トナーが少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体を有する磁性トナーであり、
    該磁性トナーは、メタノール/水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長光の透過率で測定した場合、透過率が80%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、また、透過率が10%の時のメタノール濃度が65〜80体積%の範囲内であり、
    該磁性トナーのTHF可溶成分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量3×103乃至3×104の領域にメインピークを有し、且つ、分子量5×104乃至3×106の領域にサブピークまたはショルダーを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
  19. 前記現像フレームと前記トナー収納枠体は、可撓性のシールで結合されており、かつ、前記可撓性のシールは、前記現像フレームと前記トナー収納枠体とに貼り付けられているプロセスカートリッジを用いることを特徴とする請求項18に記載のプロセスカートリッジ。
  20. 該磁性トナーの結着樹脂の構成モノマー中に占めるスチレンの割合が80乃至99質量%であることを特徴とする請求項18又は19に記載のプロセスカートリッジ。
  21. 該磁性トナーの結着樹脂が、少なくとも、THF可溶成分のGPCにより測定される分子量3×103乃至3×104の領域に極大値を有する低分子側成分(L成分)と、分子量1×105乃至3×106の領域に極大値を有する高分子側成分の混合物からなるものであり、そのうち、L成分の構成モノマーに占めるスチレンの割合が90乃至100質量%であることを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
  22. 該磁性トナーの示差走査型熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線において、120乃至160℃の温度領域に少なくとも1つの吸熱ピークを有するものであることを特徴とする請求項18乃至21のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
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