本発明のトナーの製造方法は、重合体と、該重合体と架橋反応する架橋性重合体を含有する樹脂成分とを第1のワックスの存在下に架橋反応させることによって生成したワックス含有架橋重合体組成物と、少なくとも着色剤と第2のワックスとを混合して溶融混練してトナー組成物を生成し、
得られた該トナー組成物を粉砕してトナー粒子を製造することを特徴とする。
この製造方法により得られたトナーを用いることにより、安定した電子写真特性とトナーの低温溶融化に貢献できると共に、高温域での高度な耐オフセット性を達成でき、また、どのような環境下においても、カブリや現像性の悪化に伴う印字濃度の低下を高度に防止・抑制することが可能となった。
また、現像剤担持体や現像剤層厚規制部材である現像ブレードなどのトナー接触部材への融着や固着を防止・抑制することができ、それによって生じる画像スジや濃度低下を防止することができた。
即ち、ワックスを樹脂架橋前と、樹脂架橋後の別工程に分けて添加することにより、架橋成分のある樹脂中でのワックスの分散状態を厳密に制御することが可能となるので、耐オフセット性と低温定着性を同時に満足し、かつ、広範囲な温度領域で離型性を有することができ、トナーの低温溶融化と高温域での高度な耐オフセット性を達成することが可能になる。また、ワックスの不均一分散に起因するカブリや現像性悪化、ワックス遊離による耐オフセット性の低下等を防止・抑制したり、ワックスの樹脂への相溶化に伴う離型性の低下や樹脂弾性の低下を防止・抑制することが可能となった。さらに、ワックスの分散性が低下した場合や遊離ワックスが多く生じてしまった場合には、現像剤担持体や現像剤層厚規制部材へのワックス起因のスジ状のトナー融着・固着が発生しやすくなる。これにより、画像にスジが発生したり、融着部位に対応した部分での濃度低下が発生する。こういった現象を高度な耐久においても防止することが可能となった。
本発明におけるトナーの製造方法について説明する。
先ず、樹脂重合体の構成成分であるモノマーを重合することにより、重合体を所望の分子量で重合する(工程A)。このとき、幅広い定着性・耐オフセット性を得るためには、いくつかの重合体を合成することが好ましい。
さらに、いくつかの重合体をあわせて用いる場合には、これらの重合体を溶液中で混合することが好ましい(工程B)。溶液中で混合することによって、偏りのない混合状態を得ることができ、分子量の違う成分が渾然一体となってふるまうことが可能となる。例えば、高分子量重合体と低分子量重合体を組み合わせて用いた場合には、それぞれの領域における分子量を高度に調節することが可能となり、定着−耐オフセット性において幅広い領域を確保することができると共に、帯電性においても均一性を得られやすくなり、カブリなどの不良画像が生じにくくなり好ましい。
続いて、工程Bによって得られた樹脂ブレンド物と架橋反応をすることができる架橋性重合体を含有する樹脂成分とを混ぜて、架橋反応を起こさせ架橋重合体組成物を得る。架橋反応を起こす方法としては、樹脂ブレンド物と架橋性重合体を含有する樹脂成分とを混合して、溶融混練することが好ましい(工程C)。
樹脂架橋を行う前の状態(工程Cの終了以前)では、樹脂の分子鎖は相互に緩い分子間の相互作用は持つものの、ワックス等の他成分が分子鎖内に取り込まれやすい状態である。そのため、工程A乃至Cのいずれか、もしくは工程A・B・Cのうちの複数の工程で分割してワックスを添加することで、架橋反応が起こる前の状態か、もしくは架橋反応中にワックスが取り込まれるので、架橋で形成される分子鎖のネットワーク内にワックスが取り込まれた状態となり、トナー製造時の粉砕における遊離を有効に防止することが可能となる。即ち、重合体と架橋性重合体との間での架橋反応をワックス(第1のワックス)の存在下で行うことが重要である。
溶融ブレンド時(工程B)でのワックスの添加が、安定的に良好な分散状態を得ることができるという点で、最も好ましい。
重合反応時(工程A)にワックスを添加した場合には、ワックスの分散状態を微分散状態とすることが可能であるが、樹脂成分とワックス成分がグラフト化等の反応を引き起こして相溶化状態となってしまう場合があり、溶融ブレンド時(工程B)にワックスを添加した場合に比べて離型性が劣るようになる場合がある。
また、架橋反応時(工程C)にワックスを加えることも可能であるが、架橋反応の進行状態によってワックスの分散状態が異なってしまうことがあり、制御することが難しくなることもある。
本発明においては、工程Cにより得られたワックス含有架橋重合体組成物と、ワックス(第2のワックス)と着色剤、更には必要に応じて荷電制御剤などの他のトナー原材料と混合せしめた後、溶融混練し(工程D)、粉砕し、その後必要に応じて分級・外添などのトナー化工程を経て、トナーを得る。
工程Dのトナー溶融混練時におけるワックスの添加は、トナー中にワックスを微分散させるという作用は小さいが、架橋構造の分子ネットワークの外側にワックスが分散しやすくなるために、トナーを定着させるプロセスにおいて、溶融加熱されたときにすばやく溶け出し、トナー全体を可塑化させるのに有効に働きやすくなる。
本発明に用いられるワックスとしては、次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;または、それらのブロック共重合体;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステル、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪族と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
本発明に好適に用いられるワックスは、トナー中の分散性や、トナーの帯電性に与える影響から、炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、オレフィンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒等で重合した低分子のポリオレフィン、高分子量のポリオレフィンを熱減成して得られるポリオレフィン、一酸化炭素・水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留成分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素などのフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。酸化防止剤が添加されていても良い。さらに、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行った物が好ましく用いられる。母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用した、一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(原料は石炭であっても、天然ガスであってもかまわない)、例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)、あるいはワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(固定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素や、エチレンなどのオレフィンをチーグラー触媒、メタロセン触媒により重合した炭化水素は分岐が少なく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。
本発明のトナーに用いられるワックスのうち、工程A〜Cで主に添加されるワックス(第1のワックス)と、工程Dで主に添加されるワックス(第2のワックス)は、同じ物であっても、或いは、異なるものであっても良いが、以下のような特徴をもつことがより好ましい。尚、工程A〜Cにおいては、第1のワックスより少ない量でその他のワックスが添加されていても構わず、また工程Dにおいて第1のワックスを追加添加しても構わない。
第1のワックスは、トナー中の分散性やトナーの帯電性に与える影響を考慮して、炭化水素系ワックスであることが好ましい。中でも、ポリオレフィンワックス、特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、パラフィンワックス、または、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。
第1のワックスは、GPCにより測定される数平均分子量(Mn)がポリエチレン換算で100〜3000であることが好ましく、300〜2000であることが更に好ましい。Mnが100未満では、離型効果を十分に得ることが困難となり、また、トナー接触部材を汚染しやすくなる。また、Mnが3000を超える場合には、定着性に悪影響を与えるため、好ましくない。
さらに、第1のワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の最大吸熱ピーク温度T1が、好ましくは90乃至150℃の範囲内、好ましくは90乃至120℃、更に好ましくは95乃至115℃範囲であることである。
第1のワックスの最大吸熱ピーク温度T1が90℃未満ならば、高温時の離型性が得られにくくなることがあり、また、150℃を超えるならば、定着性を阻害することがある。
第2のワックスは、酸変性、アルコール変性、アミド変性などの極性基で変性された炭化水素ワックスであることが好ましい。該ワックスは結着樹脂成分との相互作用が大きく、比較的分散しやすいため、トナー中に良好に分散することができる。さらに結着樹脂成分を可塑化する効果が大きいために低温定着性を改良する効果が大きい。
特に、樹脂との相互作用の点からアルコール変性したものが好ましい。アルコール変性炭化水素ワックスの水酸基価(Hv)は、5〜150mgKOH/gであることが好ましく、さらに好ましくは10〜100mgKOH/gであり、特に好ましくは20〜90mgKOH/gである。ワックスの水酸基価が5mgKOH/g未満だと、ワックスの分散不良により可塑効果が得られにくく、トナーの定着性と耐オフセット性が低下したり、上記に述べた分散性に対する効果が得られにくくなる。また、ワックスの水酸基価が150mgKOH/gより大きいと、ワックスが樹脂中に溶解してしまい、可塑効果は得られるが、離型効果が得られなくなり、更にはトナーの耐久性の低下を生じることがある。
また、第2のワックスは酸価を有していることが、低温定着性・ワックス分散性を更に改良する上で好ましい。酸価が1〜30mgKOH/g(より好ましくは1〜15mgKOH/g、更に好ましくは1〜10mgKOH/g)であることが好ましい。ワックスが酸価を有していることにより、トナーを構成する他の成分との界面接着力が大きくなり、ワックスがトナーを可塑化する効果が得られやすく、トナーの定着性が向上する。ワックスの酸価が1mgKOH/g未満だと、トナーを構成する他成分との界面接着力が小さくなり、ワックスの遊離が発生しやすく、ワックスの作用が十分に得られない場合がある。また、ワックスの酸価が30mgKOH/gより大きいと、逆に界面接着力が大きくなりすぎ、トナーの可塑化が大きく進み、十分な離型性を保持できなくなる場合がある。
アルコール変性炭化水素ワックスの製造例としては、例えば脂肪族炭化水素系ワックスを、ホウ酸及び無水ホウ酸の存在下で、分子状酸素含有ガスで液相酸化することにより得られる。触媒としてはホウ酸と無水ホウ酸の混合物を使用することができる。ホウ酸と無水ホウ酸の混合比(ホウ酸/無水ホウ酸)はmol比で1.0〜2.0、好ましくは1.2〜1.7の範囲である。無水ホウ酸の割合が前記範囲より少ないと、ホウ酸の過剰分が凝集減少を引き起こし好ましくない。また、無水ホウ酸の割合が前記範囲より多いと、反応後無水ホウ酸に由来する粉末物質が回収され、また過剰の無水ホウ酸は反応に寄与せず経済的な面からも好ましくない。
使用されるホウ酸と無水ホウ酸の添加量は、その混合物をホウ酸に換算して、原料の脂肪族炭化水素1molに対して0.001〜10mol、特に0.1〜1.0molが好ましい。
反応系に吹き込む分子状酸素含有ガスとしては酸素、空気、又はそれらを不活性ガスで希釈した広範囲のものが使用可能であるが、酸素濃度が1〜30容量%であるのが好ましく、より好ましくは3〜20容量%である。
液相酸化反応は通常溶媒を使用せず、原料の脂肪族炭化水素の溶融状態下で行われる。反応温度は120〜280℃、好ましくは150〜250℃である。反応時間は1〜15時間が好ましい。
ホウ酸と無水ホウ酸はあらかじめ混合して反応系に添加するのが好ましい。ホウ酸のみを単独で添加すると、ホウ酸の脱水反応などが起こり好ましくない。また、ホウ酸と無水ホウ酸の混合溶媒の添加温度は100℃〜180℃がよく、好ましくは110〜160℃であり、100℃より低い場合には系内に残存する水分などに起因して、無水ホウ酸の触媒機能が低下するので好ましくない。
反応終了後、反応混合物に水を加え、生成したワックスのホウ酸エステルを加水分解後、精製して、所望のワックスが得られる。
また、第2のワックスは、GPCにより測定される数平均分子量(Mn)がポリエチレン換算で100〜1000であることが好ましい。Mnが100未満では、トナー中に分散させることが困難となる。また、Mnが1000を超える場合には、定着性を向上させる効果が少なく、好ましくない。
更に、第2のワックスは、示差走査型熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の最大吸熱ピーク温度T2が、60乃至95℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60乃至90℃、更に好ましくは70乃至85℃である。
第2のワックスの最大ピーク温度T2が60℃未満ならば、保存性に悪影響を与える恐れがあり、また、トナー接触部材、特に温度が上昇し易いブレード接触部分でのトナー融着を引き起こしやすくなることがある。また、95℃を超えるならば、定着性を向上させる効果が少なくなる場合がある。
更に、示差走査熱量計(DSC)により測定される第1のワックスの融点T1(℃)と第2のワックスの融点T2(℃)とが、以下の式(1)の関係を満たすことが、本発明の異なる工程でワックスを添加する効果を得る上で好ましい。
10≦|T1−T2|≦50 (1)
より好ましくは下記式(2)を満たすことであり、
10≦T1−T2≦50 (2)
さらに好ましくは下記式(3)を満たすことである。
15≦T1−T2≦35 (3)
第1のワックスは、先の工程で投入されることから、分散させるための工程を数多く経ることになり、耐オフセット性能に有効であるが比較的分散されにくい高融点のワックスでも、有効に分散させることが可能となり、安定した帯電性能を得ることができるようになる。逆に、工程D(溶融混練工程)で添加される第2のワックスは、その後、重合や溶媒除去などの反応・熱履歴を受けることがないので、定着性能の改良に有効である低融点のワックスでも添加することが可能である。これらのワックスの融点の差が10℃未満であるならば、それぞれの工程で添加されたワックスによる各々の効果を得にくくなり、また、差が50℃を超えるならば、各々のワックスが互いに分離して挙動しやすくなり、ワックスの遊離や分散不良を招きやすくなる。
〈ワックスの酸価の測定〉
(装置及び器具)
・三角フラスコ(300ml)
・ビュレット(25ml)
・水浴又は熱板
(試薬)
・0.1kmol/m3塩酸
・0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液(標定は、0.1kmol/m3塩酸25mlを全ピペットを用いて三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、中和に要した量からファクターを求める。)
・フェノールフタレイン溶液溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1で混合したもの。これらは、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で中和する。)
(測定法)
(a)ワックス1〜20gを三角フラスコに精秤する。
(b)溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上でワックスが完全に溶けるまで十分に振り混ぜる。
(c)0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときを終点とする。
(計算)
下記式によりワックスの酸価を算出する。
A=5.611×B×f/S
但し、
A:酸価(mgKOH/g)
B:滴定に用いた0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11に用いた水酸化カリウムエタノール溶液の濃度0.1(kmol/m3)をかけた数値
〈ワックスの水酸基価の測定〉
(装置及び器具)
・全量フラスコ(100ml)
・全量ピペット(5ml)
・平底フラスコ(200ml)
・グリセリン浴
(試薬)
・アセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜる。)
・フェノールフタレイン溶液
・0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
(測定法)
(a)ワックスを0.5〜6.0g平底フラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mlを全量ピペットを用いて加える。
(b)フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせる。
(c)1時間後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。
(d)更に、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール(95)5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
(e)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
(f)空試験は、ワックスを入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加えて溶解する。
(計算)
下記式によりワックスの水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
但し、
A:水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
D:酸価
28.05:水酸化カリウムの式量56.11に水酸化カリウムエタノール溶液の濃度0.5(kmol/m3)をかけた数値
本発明における分子量の測定は、以下の方法で行った。
<ワックスのGPC測定条件>
装置 :GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:GMH−HT(東ソー社製)の2連
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min.
試料 :濃度0.15質量%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。更に、ワックスの分子量は、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式で換算することによって算出される。
<ワックスの吸熱ピーク温度(融点)の測定条件>
ワックスの吸熱ピーク温度(融点)の測定は示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−Q1000(日本TAインスツルメンツ社製)を用い、下記の条件にて測定した。
試料 :5〜20mg、好ましくは10mg
測定法 :試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線 :昇温I(20℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
降温I(180℃→10℃、降温速度10℃/min.)
昇温II(10℃→180℃、昇温速度10℃/min.)
昇温IIで測定される吸熱ピークを用いる。
本発明のトナーの製造方法は、重合体と架橋性重合体を含有する樹脂成分とを架橋反応させる工程(工程C)を持つ。
架橋反応に寄与する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物、エステル交換され易いエステル、水酸基、アミノ基、イミノ基、グリシジル基、エポキシ基、活性メチレン、二重結合、シアノ基、イソシアネート基、ビニル基などがあり、これらの官能基間でのエステル結合、アミド結合、イミノ結合、イミド結合、炭素結合の如き結合反応を、工程Cで生じさせ、ポリマー分子鎖を架橋させる。更に、酸、アルコール、アミン、エポキシ、酸無水物、ケトン、アルデヒド、アミド、イミン、エステル、ラクトン、ラクタム、含窒素複素環化合物などの化合物を介して、官能基間を結合させてポリマー分子鎖を架橋することもできる。更に、金属塩、金属錯体及び有機金属化合物の如き含金属化合物の金属を介した、配位結合やイオン結合、あるいは、含窒素化合物、エポキシ化合物、アルコール化合物、カルボン酸化合物を介したエステル結合、アミド結合、イミノ結合により、架橋反応を施すこともできる。中でも好ましい架橋反応としては、ポリエステル樹脂や、ビニル系樹脂などの重合体中に、カルボキシル基、酸無水物の如き酸基や水酸基、アミノ基、グリシジル基を持たせ、それらと、グリシジル化合物、含窒素化合物、エポキシ化合物、カルボン酸化合物、アルコール化合物、或いは、金属塩、金属錯体、又は、有機金属化合物の金属とを反応させることである。
特に、カルボキシル基の如き酸基を有する樹脂にグリシジル化合物の如きエポキシ系反応性化合物を介して架橋反応を施して架橋する方法が好適に用いられる。
カルボキシル基とエポキシ系反応性化合物の有するエポキシ基との間で架橋反応が生じた場合には、下記式(A)で表される部分構造を分子中に含むことになる。
本発明において、カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂との間で架橋反応を生じさせることが特に好ましい。
カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂との間で架橋反応を生じさせる場合、カルボキシル基を有するビニル樹脂の酸価は、1.0乃至60mgKOH/gが好ましい。更に好ましくは3乃至30mgKOH/g、更により好ましくは5乃至15mgKOH/gである。1.0mgKOH/g未満の場合には、カルボキシル基とエポキシ基との架橋反応部位が少なくなるため、架橋成分が少なく、トナーの耐久性が発現されにくくなるが、このような場合には、エポキシ価の高いエポキシ基を有するビニル樹脂を用いることによりある程度反応性を補うことができるが、残留エポキシ基が現像性に影響を与えたり、架橋構造の制御が難しくなったりする。60mgKOH/gを超える場合には、環境変動の影響を受けやすくなり、画像濃度が低下し、カブリが増加する傾向がある。
本発明において結着樹脂の酸価は、JIS K−0070に準じて測定する。
〈酸価の測定〉
(1)試料の粉砕品0.1〜0.2gを精秤し、その重さをW(g)とする。
(2)20cc三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液10ccを加え溶解する。
(3)指示薬としてフェノールフタレインのアルコール溶液数滴を加える。
(4)0.1規定のKOHのアルコール溶液を用いてフラスコ内の溶液をビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(ml)とする。同時にブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
(5)下記式により酸価を計算する。
酸価=(S−B)×f×5.61/W
(f:KOHのファクター)
カルボキシル基を有するビニル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜70℃が好ましい。Tgが40℃未満の場合、トナーの耐ブロッキング性が低下し、70℃を超える場合はトナーの定着性が低下する傾向にある。
カルボキシル基を有するビニル樹脂において、数平均分子量は、良好な定着性や現像性を達成するために、1,000乃至40,000が好ましく、重量平均分子量は、良好な耐オフセット性、耐ブロッキング性や耐久性を達成するために、10,000乃至10,000,000が好ましい。
カルボキシル基を有するビニル樹脂は、低分子量成分と高分子成分で構成させていることが望ましい。低分子量成分のメインピーク分子量は良好な定着性を達成するために、4,000乃至30,000が好ましく、高分子量成分のメインピーク分子量は、良好な耐オフセット性、耐ブロッキング性や耐久性を達成するために、100,000乃至1,000,000が好ましい。
高分子量成分の合成方法として本発明に用いることのできる重合法として、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果重合濃度が大きく、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であることから、トナー用バインダー樹脂の製造方法として有利な点がある。
しかしながら、添加した乳化剤のために重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには溶液重合及び懸濁重合が好都合である。
溶液重合においては、重合後の溶液状態で、別工程を経ることなく、低分子量成分とのブレンドが行えるので好適に用いられる。
樹脂組成物の調製に使用される樹脂組成物の高分子量成分は、本発明の目的を達成する為に、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
これらのうち、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合エ程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.01〜10質量部用いるのが好ましい。
低分子量成分の合成方法としては、公知の方法を用いることができる。しかしながら、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくいという問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、カルボキシル基を有するビニル樹脂中の低分子量成分を得るには好ましい。
溶液重合で用いる溶媒として、キシレン、トルエン、クメン、酢酸セロソルブ、イソプロピルアルコールまたはベンゼンが用いられる。スチレンモノマーを使用する場合、キシレン、トルエンまたはクメンが好ましい。重合するポリマーによって溶媒は適宜選択される。反応温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、重合するポリマーによって異なるが、通常70〜230℃で行うのが良い。溶液重合においては、溶媒100質量部に対してモノマー30〜400質量部で行うのが好ましい。
本発明のトナーの製造方法において、好ましくは重合終了時に溶液中で他の重合体を混合する工程(工程B)を有する。工程Bにおいては溶液重合に用いられた溶媒をそのまま用いることができるし、また、他の重合法により得られた重合体を溶媒中に溶解させることにより、各々の重合体をブレンドすることも可能である。
本発明で用いられるエポキシ基を有するビニル樹脂中のエポキシ基とは、酸素原子が同一分子内の2原子の炭素と結合している官能基のことであり、環状エーテル構造を有する。エポキシ基を有するビニル樹脂を構成するエポキシ基を有するモノマーとして以下のものが挙げられる。
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、アリルβ−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、一般式(1)で表されるグリシジルモノマーが好ましく用いられる。
(一般式(1)において、R1、R2及びR3は、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す。)
このようなエポキシ基を有するモノマーは単独、あるいは混合して、ビニル系モノマーと公知の重合方法により共重合させることにより該エポキシ基を有するビニル樹脂を得ることができる。
エポキシ基を有するビニル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、好ましくは2,000乃至100,000、より好ましくは2,000乃至50,000、更に好ましくは3,000乃至40,000であることが良い。Mwが2,000未満の場合、結着樹脂中の架橋反応によって分子量が増大して混練工程によって分子の切断が多くなりやすく、耐久性を低下させることがある。Mwが100,000を超える場合には、定着性に影響を及ぼすことがある。
また、エポキシ価は、0.05乃至5.0eq/kgものが好ましい。0.05eq/kg未満の場合、架橋反応が進行しにくく、高分子量成分やTHF不溶分の生成量が少なくなり、トナーの強靭性が小さくなる。5.0eq/kgを超える場合、架橋反応は起こりやすい反面、混練工程において分子切断が多くなりやすく、ワックスの分散性が低下する可能性がある。
本発明のエポキシ基を有するビニル樹脂は、カルボキシル基を有するビニル樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、エポキシ基が0.01乃至10.0当量、好ましくは0.03乃至5.0当量の混合比で用いられることが好ましい。
エポキシ基が0.01当量未満の場合、結着樹脂中において、架橋点が少なくなり、耐久性などの架橋反応による効果が発現しにくくなる。また、10当量を超えると、架橋反応は起こりやすくなる反面、過剰のTHF不溶分の生成などにより、分散性の低下などが生じ、粉砕性の低下、現像の安定性に問題が出てくることがある。
エポキシ基を有するビニル樹脂のエポキシ価は、以下の方法により求める。
<エポキシ価の測定>
基本操作はJIS K−7236に準ずる。
(1)試料を0.5〜2.0(g)を精秤し、その重さをW(g)とする。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、クロロホルム10ml及び酢酸20mlに溶解する。
この溶液に、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mlを加える。0.1mol/lの過塩素酸酢酸溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用い、自動滴定が利用できる。)。この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をB(ml)とする。
次式によりエポキシ価を計算する。fは過塩素酸酢酸溶液のファクターである。
エポキシ価(eq/kg)=0.1×f×(S−B)/W
カルボキシル基を有するモノマー及びエポキシ基を有するモノマーと共重合させることのできるビニルモノマーは以下のものが挙げられる。
例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンのようなスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのようなエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン,イソプレンのような不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルのようなハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルのようなビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−1−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ステアリル、アクリル酸(2−クロルエチル)、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;N−ビニルピロ一ル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンのようなN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
これらの中でもスチレン系共重合体或いはスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましく、この場合、少なくともスチレン系共重合体成分またはスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体成分を65質量%以上含有することが定着性、混合性の点で好ましい。
本発明に係る重合体や樹脂成分として、ビニル系樹脂を用いることに関しては上述したが、以下のような樹脂も用いることができる。例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が使用できる。また、架橋されたスチレン系樹脂も用いることができる。
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のような二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;例えば、マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチル等のような二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のようなビニルエステル類、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のようなエチレン系オレフィン類;例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のようなビニルケトン類;例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のようなビニルエーテル類;等のビニル単量体が単独もしくは組み合わせて用いられる。
本発明においては、ワックス含有架橋重合体組成物は、THF不溶分を1乃至30質量%含有することが好ましく、1乃至15質量%含有することが更に好ましい。THF不溶分が1質量%未満の場合、耐高温オフセット性能が低下する傾向にあり、30質量%を超えた場合、低温定着性能が低下する傾向にある。
本発明において、ワックス含有架橋重合体組成物のTHF不溶分は以下のようにして測定される。
<THF不溶分の測定>
ワックス含有架橋重合体組成物0.5〜1.0gを秤量し(W1(g))、円筒濾紙(例えば東洋濾紙社製No.86R)を入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて10時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分溶液をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2(g))。さらに、ワックス等の樹脂成分以外の不溶成分の質量を測定して(W3(g))とする。
THF不溶分={(W1−W2−W3)/W1−W3}×100
ワックス含有架橋重合体組成物と着色剤等を溶融混練する際(工程D)においては、その他下記の重合体を添加して、トナー組成物を調製することも可能である。
例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、上記したものを用いることができる。
本発明において、樹脂組成物(重合体、架橋性重合体を含有する樹脂成分、ワックス含有架橋重合体組成物)の分子量分布(GPC)は、次の条件によって測定される。
装置 :GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:KF801〜7(ショウデックス社製)の7連
温度 :40℃
溶媒 :THF(テトラヒドロフラン)
流速 :1.0ml/min.
試料 :濃度0.05〜0.6質量%の試料を0.1ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料(東ソー製A−500,A−1000,A−2500,A−5000,F−1,F−2,F−4,F−10,F−20,F−40,F−80,F−128,F−288,F−450,F−850など、10点以上を併用する)により作成した分子量校正曲線を使用する。
本発明のトナーは、荷電制御剤として、有機金属化合物を用いることが好ましく、特に有機化合物を配位子や対イオンとして含有するものが有用である。このような金属錯体としては、帯電性の観点から、金属錯体型モノアゾ化合物が好ましく用いられる。金属錯体型モノアゾ化合物としては、特公昭41−20153号、同42−27596号、同44−6397号、同45−26478号公報などに記載されているモノアゾ染料の金属錯体などがある。
特に分散性・帯電性の面などから、下記一般式(I)で表わされる金属錯体型モノアゾ化合物であることが好ましく、中でも、中心金属が鉄である金属錯体型モノアゾ鉄錯体を用いることが好ましい。さらに好ましくは、下記一般式(II)で表わされるモノアゾ鉄錯体を用いることである。
〔式中、Mは配位中心金属を表し、Cr,Co,Ni,Mn,Fe,Ti及びAlからなる群から選ばれ、Arはフェニル基またはナフチル基であり、ニトロ基、ハロゲン、カルボキシル基、アニリド基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコシキ基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよく、X、X’、Y、Y’は−O−、−CO−、−NH−及び−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)からなる群より選ばれる一種又は二種の連結基であり、Aは水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン又は脂肪族アンモニウムイオンのいずれか或いはそれらの混合物を示す。〕
〔式中、X1及びX2は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲンからなる群より選ばれ、m及びm’は1〜3の整数であり、Y1及びY3は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、スルホン酸アミド、メシル、スルホン酸基、カルボキシエステル、ヒドロキシ、炭素数1〜18のアルコキシ基、アセチルアミノ、ベンゾイル基、アミノ基、ハロゲンからなる群より選ばれ、n及びn’は1〜3の整数であり、Y2及びY4は水素原子又はニトロ基であり、Aはアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、水素イオン又はそれらいずれかの混合物である。〕
負帯電用として好ましいものは、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学工業社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)があげられ、正帯電用としては好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
上記金属錯体型モノアゾ化合物の含有量は、結着樹脂100質量部に対し、0.05〜5質量部が好ましく、特に0.2〜3質量部が好ましい。該金属錯体型モノアゾ化合物の含有量が多過ぎると、トナーの流動性が低下し、カブリが生じやすく、一方、少な過ぎると充分な帯電量が得られにくい。
本発明において着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が使用される。トナー着色剤は周知であって、例えば顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.2〜10質量部添加される。また同様の目的で、さらに染料を用いることもできる。例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料等があり樹脂100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.3〜10質量部添加される。
本発明のトナーは、磁性材料を含有した磁性トナーとして用いられることが好ましい。磁性材料を用いる場合には、磁性材料に着色剤としての役割を兼ねさせることもできる。使用できる磁性材料としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素などの元素を含む金属酸化物などがある。これら磁性粒子は、窒素吸着法によるBET比表面積が好ましくは1〜20m2/g、特に2.5〜12m2/g、更にモース硬度が5〜7の磁性粉が好ましい。磁性体の形状としては、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが好ましい。等方性の形状を有するものは、本発明の如き、結着樹脂・ワックスに対しても、良好な分散を達成することができるからである。磁性体の個数平均粒径としては0.05〜1.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.6μm、さらには、0.1〜0.4μmが好ましい。
上記磁性材料は、結着樹脂100質量部に対し40〜200質量部添加するのが好ましく、特に好ましくは50〜150質量部である。40質量部未満ではトナーの搬送性が不十分で現像剤担持体上の現像剤層にムラが生じ、画像ムラとなる傾向であり、さらに現像剤の帯電の過剰な上昇に起因する画像濃度の低下が生じ易い傾向であった。また、200質量部を超える場合には現像剤の帯電が充分には得られなくなるために、画像濃度低下が生じやすくなる。
また、本発明のトナーには、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上のため、無機微粉体または疎水性無機微粉体が混合されていることが好ましい。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体は、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−等の製造残渣の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等、他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、本発明におけるシリカ微粉体としては、それらも包含する。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルのごとき有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30〜1000mm2/sのものが用いられ、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
シリコーンオイル処理の方法としては、例えばシラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合してもよいし、ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法を用いてもよい。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法でもよい。
本発明のトナーには、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の外部添加剤を添加してもよい。
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子などである。
例えばポリフッ化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのごとき滑剤、中でもポリフッ化ビニリデンが好ましい。あるいは酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。あるいは例えば酸化チタン、酸化アルミニウム等の流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。ケーキング防止剤、あるいは例えばカーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ等の導電性付与剤、また、逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
トナー粒子(外添前のトナー母粒子)と混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体などは、トナー粒子100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは0.1〜3質量部)使用するのがよい。
本発明の製造方法で得られたトナーは、重量平均粒径(D4)が2.5〜10.0μmであることが好ましく、より好ましくは5.0〜9.0μm、更に好ましくは6.0〜8.0μmであり、この場合に十分な効果が発揮される。
トナーの重量平均粒径(D4)及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量平均粒径(D4)を算出する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明の製造方法で得られたトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることもできる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される体積平均粒径20〜300μmの粒子がキャリア粒子として使用される。
キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質を付着または被覆されているものが好ましい。
本発明のトナーは、トナー構成材料をボールミルのごとき混合機により充分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのごとき熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉し、冷却固化後粉砕及び厳密な分級を行うことにより生成することができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社製);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
<ワックス>
本実施例に用いたワックスを下記の表1に示す。
<工程A>(重合工程)
(高分子量成分の製造例A−1)
・スチレン 76.0質量部
・アクリル酸n−ブチル 22.0質量部
・メタクリル酸 2.0質量部
・2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン 0.7質量部
4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し、120℃に昇温させた後、上記成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了した。このようにして高分子量成分A−1を含有する溶液を得た。
(高分子量成分の製造例A−2)
4つ口フラスコ内に脱気水180質量部とポリビニルアルコールの2質量%水溶液20質量部を投入した後、スチレン70.0質量部、アクリル酸n−ブチル25.0質量部、マレイン酸モノブチル5.0質量部、及び2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.1質量部の混合液を加え、懸濁液とし、フラスコ内を十分に窒素で置換してから、85℃まで昇温して、24時間保持した後、濾別・水洗し、乾燥して高分子量成分A−2を得た。
(高分子量成分の製造例A−3)
高分子量成分の製造例A−1において、モノマー処方をスチレン78.0質量部、アクリル酸n−ブチル21.6質量部、メタクリル酸0.4質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.8質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−3を含有する溶液を得た。
これらの高分子量成分A−1〜A−3の処方及び分析値を表2に示す。
(低分子量成分の製造例B−1)
・スチレン 79.1質量部
・アクリル酸n−ブチル 20.0質量部
・メタクリル酸 0.9質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1.4質量部
上記原材料をキシレン200質量部中に4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で重合を完了した。このようにして低分子量成分B−1を含有する溶液を得た。
(低分子量成分の製造例B−2)
低分子量成分の製造例B−1のキシレン溶媒中に3.0質量部のワックスW−1を溶かしてから、モノマーの滴下を行った以外は、製造例B−1と同様にして、低分子量成分B−2を含有する溶液を得た。
(低分子量成分の製造例B−3)
低分子量成分の製造例B−1において、樹脂成分をスチレン80.0質量部、アクリル酸n−ブチル19.5質量部、メタクリル酸0.5質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド4.5質量部に代えた以外は、上記製造例B−1と同様の方法を用いて、低分子量成分B−3を含有する溶液を得た。
(低分子量成分溶液の製造例B−4)
低分子量成分の製造例B−1のキシレン溶媒中に3.0質量部のワックスW−4、及び3.0質量部のワックスW−7を溶かしてから、モノマーの滴下を行った以外は、製造例B−1と同様にして、低分子量成分B−4を含有する溶液を得た。
これらの低分子量成分の処方及び分析値を表3に示す。
(架橋性樹脂成分(架橋性重合体を含有する樹脂成分)の製造例C−1)
・スチレン 79.2質量部
・アクリル酸n−ブチル 19.8質量部
・メタクリル酸グリシジル 1.0質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 5.0質量部
4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し、120℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このように得られた樹脂成分を架橋性樹脂成分C−1とする。
(架橋性樹脂成分の製造例C−2)
架橋性樹脂成分の製造例C−1において、モノマー処方をスチレン72.0質量部、アクリル酸n−ブチル18.0質量部、メタクリル酸グリシジル10.0質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド5.0質量部に代えた以外は、上記製造製C−1と同様の方法を用いて架橋性樹脂成分C−2を得た。
これらの架橋性樹脂成分C−1及びC−2の処方及び物性を表4に示す。
(工程B)(樹脂溶液ブレンド工程)
上記のようにして得られた高分子量成分、低分子量成分、及びワックスを、キシレン200質量部に対して、表5に示す割合で混合溶解させ、昇温して還流下で12時間、撹拌混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却・固化後、粉砕して、原料樹脂R−1〜R−10を得た。尚、いずれの原料樹脂においても、THF不溶分は実質的に含有されていなかった。
(原料樹脂R−11の製造例)
・スチレン 70質量部
・アクリル酸n−ブチル 24質量部
・マレイン酸モノブチル 6質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1質量部
上記原材料をキシレン200質量部中に4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で重合を完了した。このようにして下記の物性を有する樹脂成分を含有する溶液を得た。
メインピーク分子量 21000
ガラス転移温度(Tg) 60℃
酸価 17mgKOH/g
この溶液(樹脂成分100質量部含有)にワックスW−1を3質量部混合溶解させ、昇温し環流下で12時間、撹拌混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却・固化後、粉砕して、原料樹脂R−11を得た。尚、THF不溶分は実質的に含有されていなかった。
重量平均分子量 21万
個数平均分子量 8000
メインピーク分子量 21000
ガラス転移温度(Tg) 60℃
酸価 16.5mgKOH/g
(工程C)(樹脂架橋工程)
上記各原料樹脂と架橋性樹脂成分とを、表6に示す割合でヘンシェルミキサーに入れて混合し、この混合物を200℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混合させることにより、カルボキシル基とエポキシ基とを反応させ、架橋させた。得られた樹脂を冷却・固化後、粉砕して、トナー用結着樹脂M−1〜M−12を得た。得られた樹脂を分析したところ、10質量%前後のTHF不溶分を含有しており、架橋が生じていることが確認された。また、下記の部分構造式(A)
を有していることもあわせて確認された。尚、製造例M−8の場合のみ、ワックスW−1を原料樹脂と架橋性樹脂成分との合計100部に対して3部加えた。得られたトナー用樹脂の組成及び分析値を表6に示す。
(工程D)(トナー化工程)
(トナー1の調製)
・トナー用樹脂M−1 100質量部
・球形磁性酸化鉄(個数平均粒径0.21μm) 95質量部
・モノアゾ鉄錯体(下記式) 2質量部
・ワックスW−2 3質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、90℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物を、ジェットミルで微粉砕した後、得られた粉砕物を風力分級し、分級粉を得た。得られた分級粉のコールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)は6.6μm、4μm未満のトナー粒子の個数分布の累積値は25.2%であった。
この分級粉100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.4質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合してトナー1を調製した。
(トナー2〜18の調製)
用いる結着樹脂、ワックスを表7のようにした以外はトナー1と同様にしてトナー2〜17を調製した。なお、トナー6においては、工程D(トナー化工程)において、W−1(3質量部)及びW−2(3質量部)の2種類のワックスを加えた。また、トナー18においては、工程D(トナー化工程)において、W−4(3質量部)及びW−7(3質量部)の2種類のワックスを加えた。
<実施例1〜14、比較例1及び2>
次に、調製されたトナーを用いて、以下に示すような方法によって評価を行った。評価結果を表8及び表9に示す。
尚、実施例1〜14で得られたトナーは、高融点ワックス(第1のワックス)が架橋構造中に取り込まれており、トナー粒子からのワックスの遊離が抑制されたものであった。また、下記評価結果に示されるように、実施例1〜14で得られたトナーは、定着性に優れており、低融点ワックス(第2のワックス)に関しても、良好な分散性を有するものであった。
(1)画像濃度、カブリ
常温常湿環境下(23℃,60%RH)、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下で、Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet2300をプロセススピード210mm/秒に改造し、印字比率4%で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に1枚/10秒のプリント速度で間欠画出し試験を行い、トナーが無くなった時にはトナー容器にトナーを新たに補給することによって、12000枚の画出し試験を行った。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
低温低湿環境下(15℃,10%RH)における画出し試験中に、カブリの測定を行った。カブリは、リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(2)スリーブ上トナースジ
(1)の試験で、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)で4000枚毎に現像スリーブを観察し、スリーブ上のトナースジの発生を下記評価基準に従い評価した。
A:発生していない。
B:1〜2条のスジが見られるが、紙で擦ると簡単に消える。
C:1〜5条のスジが見られ、紙で擦っても消えず、融着しているが、画像には影響が見られない。
D:6条以上のスジがあり、融着が明らかに発生している。
(3)定着性
定着性は、90g/m2の坪量の複写機用普通紙を用いて、低温低湿環境(7.5℃,10%RH)で、Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet1300をプロセススピード150mm/秒となるように改造して用い、立ち上げ直後に得られた画像を4.9kPaの圧力をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を測定し、下記評価基準に従い評価した。なお、画像上のトナーの載り量を5g/m2とした。
A:2%未満
B:2〜4%未満
C:4〜8%未満
D:8〜12%未満
E:12%超
(4)耐オフセット性
耐オフセット性は、Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet1300を用いて、画像面積率約5%のサンプル画像を低温低湿環境(15℃,10%RH)でA5サイズの紙で10枚プリントアウトし、その後A4サイズの紙を通紙し、その時の画像上の汚れの程度を下記評価基準に従い評価した。試験紙として複写機用普通紙(64g/m2)を使用した。
A:オフセットが未発生。
B:良く見るとわずかにオフセットが発生している。
C:オフセットはしているが、見た目は気にならない程度。
D:明らかにオフセット発生。