本発明者らは鋭意検討の結果、トナーに用いられる結着樹脂にポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分の反応生成物であるハイブリッド樹脂成分を用い、かつトナー粒子の円形度を制御することにより、フェーディングを良化させることができることを見出した。
さらに本発明のトナーは、該トナー粒子の円相当径0.6μm以上3μm未満の平均円形度が0.975以上1.000以下、好ましくは0.980以上1.000以下であり、円相当径3μm以上6μm未満の平均円形度が0.955以上0.980以下、好ましくは0.960以上0.978以下であり、円相当径6μm以上400μm未満の平均円形度が0.925以上0.950以下、好ましくは0.927以上0.950以下であることが好ましい。このような平均円形度分布を有するトナーは、適切な流動性をもつことができる。良好な帯電性をもっており、流動性にも優れているため、トナー同士の凝集が起こりにくく、またトナー収納容器内に付着しにくいため、フェーディングが発生しにくい。
円相当径0.6μm以上3μm未満のトナー粒子における平均円形度が0.975以上1.000以下であり、円相当径3μm以上6μm未満のトナー粒子における平均円形度が0.980以上1.000以下であり、円相当径6μm以上400μm未満のトナー粒子における平均円形度が0.950以上1.000以下である場合、トナーの円形度がかなり高い水準にあるため、より密に詰まった状態を形成しやすくなり、トナー収納容器内に付着しやすくなり、フェーディングが発生する場合がある。さらにトナーがチャージアップを起こし、粒径の大きいトナーが核となり、現像スリーブ上にトナーが過剰に供給されることによってスリーブ上に不均一にトナーがコートされてしまい、結果としてブロッチが発生する場合がある。
円相当径0.6μm以上3μm未満のトナー粒子における平均円形度が0.975未満であり、円相当径3μm以上6μm未満のトナー粒子における平均円形度が0.955未満であり、円相当径6μm以上400μm未満のトナー粒子における平均円形度が0.925未満である場合、トナーの表面には多くの凹凸が存在するため、流動性が低下し、フェーディングが発生する場合があり、さらにトナーに十分な摩擦帯電性を付与することができず、現像性が低下する場合がある。
また、本発明においては、トナー粒子の円相当径0.6μm以上3μm未満のトナー粒子における、円形度分布の標準偏差SDが0.030以下、好ましくは0.027であることが好ましい。特にトナー粒子の円相当径が0.6μm以上3μm未満のように小さい粒子は帯電性に富んでおり、均一な帯電性を持たせることが重要である。上記の範囲の円相当径0.6μm以上3μm未満における円形度分布の標準偏差SDを有するトナー粒子は、形状の均一性が高く、均一な帯電性を有することができ、低温低湿のような厳しい環境下において、長期の使用においてもかぶりを低減することができる。
トナー粒子の円相当径0.6μm以上3μm未満のトナー粒子における、円形度分布の標準偏差SDが0.030超だと、形状の均一性が低くなり、均一な帯電分布を持たせることができず、低温低湿のような厳しい環境下において、長期の使用においてかぶりが悪化する場合がある。
本発明における好ましいトナー粒子製造方法としては、例えば瞬間的にトナー粒子表面に高温の熱風を吹きつけ、直後に冷風によってトナー粒子を冷却することによってトナー粒子の表面改質を行う方法が挙げられる。このような手法によってトナー粒子の表面を改質することは、トナー粒子に過度の熱を加えることがないので原材料成分の変質を防ぎつつトナー粒子の表面改質を行うことができる。またこの方法は、熱風を瞬時に吹き付けるため、粒径の小さいものほど処理が進行しやすく、高い円形度を達成しやすい。逆に粒径が大きいものは、粒径の小さいものよりも温和に処理が進行するため、円形度を適度な範囲に抑えることができる。このように、瞬間的にトナー粒子表面に高温の熱風を吹きつけ、直後に冷風によってトナー粒子を冷却する手法は、本発明のような平均円形度分布を有するトナー粒子を作成する上で非常に有効な手段である。
また、瞬時に冷却するのでトナー粒子同士が過度に合一して、表面改質前のトナー粒径から大きく変動してしまうことがないので、トナー生産工程においても表面改質後のトナーの物性を制御しやすい。トナー粒子の表面改質には例えば図1に示すような表面改質装置を用いることができる。トナー粒子1はオートフィーダー2で供給ノズル3を通じて、一定量で表面改質装置内部4に供給される。表面改質装置内部4はブロワー8で吸引されているので、供給ノズル3から導入されたトナー粒子1は機内に分散する。機内に分散にされたトナー粒子1は、熱風導入口5から導入される熱風で、瞬間的に熱が加えられて表面改質される。本発明ではヒーターにより熱風を発生させているが、トナー粒子の表面改質に十分な熱風を発生させられるものであれば装置は特に限定されない。表面改質されたトナー粒子7は、冷風導入口6から導入される冷風で瞬時に冷却される。本発明では冷風には液体窒素を用いているが、表面改質されたトナー粒子7を瞬時に冷却することができれば、手段は特に限定されない。表面改質されたトナー粒子7はブロワー9で吸引されて、サイクロン8で捕集される。
本発明のような円形度分布を有するトナー粒子を作製するより好ましい方法としては、機械式粉砕で得られた微粉砕物トナー粒子を所望の重量平均粒径となるように分級した後、さらに0.6μm以上3μm未満、3μm以上6μm未満、6μm以上400μm未満の範囲に重量平均粒径が含まれるような粒度分布のトナー粒子を分級によりそれぞれ作製して、別々に熱風処理を施し、処理後に混ぜ合わせることもできる。
<トナー平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、トナー粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中心値)をci、測定粒子数をmとすると、次式から算出される。
また、円形度標準偏差SDは、平均円形度C、各粒子における円形度ci、測定粒子数をmとすると次式から算出される。
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「Tetora150型」(日科機バイオス社製)を用い、2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
トナー粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径0.6μm以上3μm未満、円相当径3μm以上6μm未満、円相当径6μm以上400μm未満にそれぞれ分割して、各円相当径の範囲におけるトナー粒子の平均円形度を求める。
さらに本発明で用いている測定装置である「FPIA−2100」は、従来よりトナーの形状を算出するために用いられていた「FPIA−1000」と比較して、処理粒子画像の倍率の向上、さらに取り込んだ画像の処理解像度を向上(256×256→512×512)によりトナーの形状測定の精度が上がっており、それにより微粒子のより確実な補足を達成している装置である。従って、本発明のように、より正確に形状を測定する必要がある場合には、より正確に形状に関する情報が得られるFPIA2100の方が有用である。
トナー粒子に外添剤が外添されているトナーにおいて、トナー粒子の円形度を測定する場合は外添剤を取り除く必要があり、具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
1)トナー45mgをサンプル瓶に入れ、メタノールを10ml加える。
2)超音波洗浄機で1分間試料を分散させて外添剤を分離させる。
3)吸引ろ過(10μmメンブランフィルター)してトナー粒子と外添剤を分離する。磁
性体を含むトナーの場合は、磁石をサンプル瓶の底にあててトナー粒子を固定して上
澄み液だけ分離させても構わない。
4)上記2)、3)を計3回行い、得られたトナー粒子を真空乾燥機で室温で十分に乾燥
させる。
外添剤を取り除いたトナー粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、外添剤がなくなっているのを確認した後、円形度の測定をすることができる。外添剤が十分に取り除ききれていない場合には、外添剤が十分に取り除かれるまで2)、3)を繰り返し行う。
2)、3)に代わる外添剤を取り除く他の方法としては、アルカリで外添剤を溶解させる方法が挙げられる。アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
本発明の結着樹脂は、ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分の反応生成物であるハイブリッド樹脂成分を含有することを特徴とする。
ハイブリッド樹脂成分を含有すると、帯電性や定着性、保存安定性の上で特に好ましい。このハイブリッド樹脂は、本来相溶性の悪い2種類の樹脂が均一に分散しているため、両樹脂の特性を活かすことができる。
定着性の観点で見れば、ハイブリッド樹脂を含有することで、ポリエステル樹脂のシャープメルトで低温定着性に有利な点と、ビニル系樹脂の耐高温オフセット性、耐ブロッキング性とを活かしたトナーを得ることができる。また、帯電性の観点で見れば、ポリエステル樹脂の帯電性が高く、立ち上がりの早い点と、ビニル系樹脂の帯電性が安定な点の両方が活かされ、優れた現像性を得ることができる。
本発明のトナーはハイブリッド樹脂成分を含有する。ハイブリッド樹脂成分を含有していると、適切な弾性を有することができ、表面改質の際に本発明の平均円形度分布が得られやすく、フェーディングに対してさらに有効な場合がある。
本発明のトナーは、テトラヒドロフラン(THF)不溶分を結着樹脂に対して5〜30質量%、好ましくは10〜30質量%含有することが良い。THF不溶分の含有量が前記範囲にあることが、定着性と耐オフセット性をバランスよく向上させる上で好ましく、特に良好な離型性を発現させる上で好ましい。
THF不溶分が5質量%未満の場合は、上記の耐オフセット性能が悪化する。THF不溶分が30質量%を超える場合には、定着性が悪化する。
本発明のトナーはTHF可溶分のGPCにより得られるクロマトグラムにおいて、分子量2000〜3万、好ましくは3000〜1万5000の範囲にメインピークを有し、分子量3万〜300万、好ましくは5万〜200万の範囲に少なくともサブピークまたはショルダーを有することが好ましい。分子量2000〜3万の範囲にメインピークを有することで、良好な現像性、定着性及び耐ブロッキング性を達成することができ、分子量3万〜50万の範囲に少なくともサブピークまたはショルダーを有することで、良好な耐オフセットを達成することができる。
メインピークが分子量2000より小さい領域にある場合は、耐オフセットや現像性、耐ブロッキング性が悪化しやすく、メインピークが分子量3万より大きい領域にある場合は定着性が悪化し易い。サブピークまたはショルダーが分子量3万より小さい領域にある場合は耐オフセットが悪化するとともに、結着樹脂がワックスにより可塑化され易くなり、耐低温オフセット性が悪化することがある。サブピークまたはショルダーが分子量50万より大きい領域にある場合は定着性が悪化し易い。
以下に、本発明に用いられる結着樹脂について詳細に説明する。
本発明で用いられる結着樹脂は、ハイブリッド樹脂単独で用いることも可能であるが、少なくともハイブリッド樹脂成分を含有していれば、他の樹脂成分を含有する混合物であっても良い。
例えば、ハイブリッド樹脂とビニル系樹脂との混合物、又はハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、又はポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系樹脂の混合物などが挙げられる。
ハイブリッド樹脂は、ポリエステル系樹脂成分と(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマー成分を重合したビニル系重合体成分とがエステル交換反応によって形成されるもの、ポリエステル系樹脂成分と(メタ)アクリル酸の如きカルボン酸基を有するモノマー成分を重合したビニル系重合体成分とがエステル化反応によって形成されるもの、あるいはフマル酸のような不飽和基を持つモノマーを用いて重合された不飽和ポリエステル樹脂成分の存在下でビニル系樹脂成分を重合して形成されるものなどがある。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂は、ビニル系樹脂成分及び/又はポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうち、ビニル系樹脂成分と反応し得るものとしては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂成分とポリエステル樹脂成分の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂成分及びポリエステル樹脂成分のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含む重合体が存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明において、ハイブリッド樹脂成分を含有する結着樹脂の製造方法としては、例えば以下の(a)〜(g)に示す製造方法を挙げることができる。
(a)ビニル系樹脂成分とポリエステル系樹脂成分を別々に製造した後、有機溶剤に溶解/膨潤させ、エステル化触媒に必要に応じてアルコール類を添加して、加熱することによりエステル化反応又は/及びエステル交換反応を行った後有機溶媒を留去して製造する方法である。また、この工程でワックス類を添加しても良い。
(b)ビニル系樹脂成分の存在下に、ポリエステル系モノマーを添加し重合とビニル系重合体とのエステル化反応又は/及びエステル交換反応をして製造する方法である。この時必要に応じて、更にビニル系樹脂成分を添加し重合しても良い。また、この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。また、この工程でワックス類を添加しても良い。
(c)ポリエステル系樹脂成分の存在下に、ビニル系モノマーを添加し重合並びにエステル化反応又は/及びエステル交換反応をして製造する方法である。この時必要に応じて更にポリエステル系樹脂成分を添加し重合しても良い。また、この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。また、この工程でワックス類を添加しても良い。
(d)ビニル系樹脂成分及びポリエステル樹脂存在下に、ビニル系モノマー及び/又はポリエステル系モノマーを添加し重合並びにエステル化反応又は/及びエステル交換反応をして製造する方法である。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。また、この工程でワックス類を添加しても良い。
(e)ビニル系モノマー及びポリエステル系モノマーを混合して付加重合及び縮重合反応並びにエステル化反応又は/及びエステル交換反応をして製造する方法である。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。また、この工程でワックス類を添加しても良い。
(f)上記(a)〜(e)で製造されたハイブリッド樹脂成分を含有する樹脂を、更にビニル系樹脂成分及び/又はポリエステル系樹脂成分と、例えば有機溶剤に溶解/膨潤させる等して混合して有機溶剤を留去して製造する方法である。
(g)上記(a)〜(e)で製造されたハイブリッド樹脂成分を含有する樹脂の存在下に、更にビニル系モノマー及び/又はポリエステル系モノマーを添加し重合並びにエステル化反応又は/及びエステル交換反応をして製造する方法である。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。また、この工程でワックスを添加しても良い。
本発明において、結着樹脂を製造するのに使用されるポリエステル系樹脂成分の割合が、全モノマー成分を基準として50%以上95%未満、好ましくは60%以上85%未満であると良い。ポリエステル系樹脂成分の割合を上記範囲にすることにより、上述した両樹脂の特性を生かし、優れた定着性をトナーに付与することができる。さらに本発明の効果を得るのに好ましい帯電性をトナーに付与することができる。ポリエステル系樹脂成分が50%未満である場合には、トナーの粘度が大きくなり、低温定着性が悪化したり、帯電分布が不均一になることがある。また、ポリエステル系樹脂成分が95%以上である場合には、トナーの粘度が小さくなり、耐オフセット性が悪化することがある。また、帯電量の変動が大きくなり、カブリや濃度低下などを起こしやすくなることがある。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
また(B)式で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また、不飽和ポリエステル樹脂を得る為の不飽和基を持つ酸成分として、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル等が好ましく用いられる。
これら不飽和ジカルボン酸は、ポリエステル系樹脂成分の全酸成分に対して、0.1〜10mol%(好ましくは0.3〜5mol%、より好ましくは0.5〜3mol%)の割合で添加することが好ましい。この範囲で不飽和ジカルボン酸を添加した場合に、低分子量ポリエステル分子中に占める不飽和基濃度が最適となる。
また架橋成分として働く3価以上のアルコール成分や3価以上の酸成分を使用することも可能である。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。なかでも、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸およびこれらの無水物、低級アルキルエステルが好ましい。
本発明に用いられるアルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の0.1〜60mol%であることが好ましい。
該ポリエステル樹脂は通常一般に知られている縮重合によって得られる。ポリエステル樹脂の重合反応は通常触媒の存在下150〜300℃、好ましくは170〜280℃程度の温度条件下で行われる。また反応は常圧下、減圧下、もしくは加圧下で行うことができるが、所定の反応率(例えば30〜90%程度)に到達後は反応系を200mmHg以下、好ましくは25mmHg以下、更に好ましくは10mmHg以下に減圧し、反応を行うのが望ましい。
上記触媒としては、通常ポリエステル化に用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物(ジブチルスズオキサイド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモンなど)が挙げられる。
本発明では、重合反応の制御のしやすさや、ビニル系樹脂成分との反応性の高さからチタン化合物が好ましく用いられ、特に好ましいものとしてテトラブチルチタネート、シュウ酸チタン酸二カリウム、テレフタル酸チタン酸カリウムが挙げられる。この際、結着樹脂の着色防止として酸化防止剤(特にリン系酸化防止剤)や、反応促進剤として助触媒(マグネシウム化合物が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい)を添加することが特に好ましい。
反応物の性質(例えば酸価、軟化点等)が所定の値に到達した時点、あるいは反応機の攪拌トルクまたは攪拌動力が所定の値に到達した時点で反応を停止させることによって本発明のポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明において、ビニル系樹脂成分とは、ビニル系ホモポリマーもしくはビニル系コポリマーを意味するものである。
ビニル系樹脂成分を得る為のモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン,イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレンアクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
さらに、結着樹脂の酸価を調整するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水マレイン酸などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の結着樹脂を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価をコントロールする上で好ましい。
より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルなどのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類;フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル、フタル酸モノブチルエステルなどのような芳香族ジカルボン酸のモノエステル類;などが挙げられる。
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、ビニル系樹脂成分を構成している全モノマーに対し0.1〜30質量%添加すればよい。
本発明のゲル成分中に含まれるビニル系樹脂成分は、直鎖性が高いものが好ましい為、架橋性モノマーは含有しないものがより好ましいが、本発明の目的を達成する為に、以下に例示する様な架橋性モノマーを添加することも可能である。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグルコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のビニル系樹脂成分100質量部に対して、1質量部以下、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
結着樹脂の調製に使用されるビニル系樹脂成分は、本発明の目的を達成する為に以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジーt−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
これらの内、より好ましいものは、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジーt−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジーt−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05〜2質量部用いるのが好ましい。
本発明のトナーは、ワックスを含有してもよい。
本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いは更に長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系樹脂成分を用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
離型剤として使用できるワックスの具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
また、本発明におけるワックスは、融点が50〜130℃好ましくは70〜110℃であることが良い。融点が上記範囲であるワックスをトナーに用いることにより、トナー粒子に熱処理を施してもワックスの分散状態を適切に維持することができ、良好な帯電性を持たせることができ、さらにフェーディングや耐ブロッキング性に対しても有効である。
これらワックスは更に分散性を改良するために、必要に応じて樹脂製造時に添加することも好ましい形態である。
本発明のトナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。
トナーを負荷電性に制御するものとして下記化合物が挙げられる。
例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類などがある。
中でも、下記一般式(1)で表わされるアゾ系金属錯体が好ましい。
特に中心金属としてはFeが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基又はアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
あるいは次の一般式(2)に示した塩基性有機酸金属錯体も負帯電性を与える荷電制御剤として好ましい。
特に中心金属としてはFe,Cr,Si,Zn又はAlが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の化合物がある。
ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で或いは2種類以上組合せて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また一般式(3)
で表わされるモノマーの単重合体:前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部または一部)としての作用をも有する。
特に下記一般式(4)で表わされる化合物が本発明の正荷電制御剤として好ましい。
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法とトナー粒子の外部に外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
本発明のトナーは磁性体を含有する。磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。トナーに使用される磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2〜40m2/g(より好ましくは4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、50〜150質量部で用いられるのが好ましい。
個数平均径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明のトナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
本発明のトナー粒子には、無機微粒子が外添される。無機微粒子は疎水性無機微粉体であることが好ましい。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
シリカ微粉体の好ましい疎水化処理として、ヘキサメチルジシラザンで処理し、次いでシリコーンオイルで処理することにより調製する方法が挙げられる。
上記のようにシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、後にオイル処理することが疎水化度を効果的に上げることができ、好ましい。
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体に施したものも、シリカ系同様に好ましい。
本発明のトナーは、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の添加剤を外添してもよい。
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.01〜5質量部(好ましくは0.01〜3質量部)使用するのが良い。
本発明のトナーは、好ましくは重量平均粒径を2.5〜10.0μm、好ましくは5.0〜9.0μm、より好ましくは6.0〜8.0μmとした場合に十分な効果が発揮され、好ましい。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20〜300μmの粒子がキャリア粒子として使用される。
キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質を付着または被覆されているものが好ましい。
本発明に係るトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロール,ニーダー,エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後粗粉砕を行った後に微粉砕、分級を行った後に表面改質装置を用いてトナー粒子の表面改質を行う方法が好ましい。さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明に係るトナーを製造することができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
本発明のトナーに係る各種物性の測定について以下に説明する。
1)トナー及び原料樹脂の分子量分布
本発明において、トナー及び原料樹脂のTHF可溶分のGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製あるいは、昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いることができる。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSK guard columnの組み合わせを挙げることができる。
また、THF試料溶液は以下の様にして作製する。
試料をTHF中に入れ、数時間後放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時、THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などが使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
2)THF不溶分含有量
試料約2.0gを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×100mm東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、溶媒の抽出サイクルが約4分〜5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を秤量する。不溶分は、初めに投入した樹脂成分の質量をW1gとし、抽出残分中の樹脂成分の質量をW2gとしたときに、(W2/W1)×100(質量%)で表したものである。例えば、磁性トナーでは試料トナー質量から磁性体及び顔料の如き樹脂以外のTHF不溶成分の質量を差し引いた質量(W1g)と、抽出残分質量から磁性体及び/又は顔料の如きTHF不溶成分の質量を差し引いた質量(W2g)とから上記式より計算することができる。
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
〜結着樹脂1の製造例(ハイブリッド樹脂)〜
結着樹脂1のハイブリッド樹脂の製法は上記製造方法の(e)に準ずる。
ポリエステル系樹脂成分としては、
テレフタル酸 ・・・0.400mol
イソフタル酸 ・・・0.390mol
フマル酸 ・・・0.012mol
ドデセニル琥珀酸・・・0.190mol
前記式(A)で示されるビスフェノール誘導体
(プロピレンオキサイド2.2mol付加物)・・・1.150mol
であり、ビニル系樹脂成分としては、結着樹脂全体を100質量部として
・スチレン 18質量部
・アクリル酸n−ブチル 6.5質量部
・マレイン酸モノブチル 0.5質量部
・2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3
0.08質量部
である。
上記ポリエステル系樹脂成分を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて,これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量部を添加し、130℃で保持し攪拌しながら、上記ビニル系樹脂成分及び重合開始剤、ワックス(パラフィンワックス:融点76℃、樹脂100質量部に対して4質量部)を滴下した。220℃に昇温して重合反応を行い、結着樹脂1を得た。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が9000、サブピーク分子量が85万、THF不溶分を23質量%含有していた。得られた結着樹脂の物性を表1に示す。
〜結着樹脂2の製造例(ハイブリッド樹脂)〜
結着樹脂2のハイブリッド樹脂の製法は上記製造方法の(e)に準ずる。
ポリエステル系樹脂成分としては、
テレフタル酸 ・・・0.350mol
イソフタル酸 ・・・0.340mol
フマル酸 ・・・0.060mol
ドデセニル琥珀酸・・・0.240mol
前記式(A)で示されるビスフェノール誘導体
(プロピレンオキサイド2.2mol付加物)・・・1.150mol
であり、ビニル系樹脂成分としては、結着樹脂全体を100質量部として
・スチレン 18質量部
・アクリル酸n−ブチル 6.5質量部
・マレイン酸モノブチル 0.5質量部
・2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3
0.02質量部
である。
上記ポリエステル系樹脂成分を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて,これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量%を添加し、130℃で保持し攪拌しながら、上記ビニル系樹脂成分及び重合開始剤、ワックス(パラフィンワックス:融点68℃、樹脂100質量部に対して4質量部)を滴下した。220℃に昇温して重合反応を行い、結着樹脂2を得た。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が35000、サブピーク分子量が310万、THF不溶分を41質量%含有していた。得られた結着樹脂の物性を表1に示す。
〜結着樹脂3の製造例(ハイブリッド樹脂)〜
結着樹脂3のハイブリッド樹脂の製法は上記製造方法の(e)に準ずる。
ポリエステル系樹脂成分としては、
テレフタル酸 ・・・0.390mol
イソフタル酸 ・・・0.400mol
フマル酸 ・・・0.025mol
ドデセニル琥珀酸・・・0.190mol
前記式(A)で示されるビスフェノール誘導体
(プロピレンオキサイド2.2mol付加物)・・・1.150mol
であり、ビニル系樹脂成分としては、結着樹脂全体を100質量部として
・スチレン 18質量部
・アクリル酸n−ブチル 6.5質量部
・マレイン酸モノブチル 0.5質量部
・2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3
0.02質量部
ワックス(フィッシャートロプシュワックス:融点105℃)・・・樹脂100質量部に対して4質量部
である。
上記ポリエステル系樹脂成分を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて,これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量%を添加し、130℃で保持し攪拌しながら、上記ビニル系樹脂成分及び重合開始剤、ワックス(フィッシャートロプシュワックス:融点105℃、樹脂100質量部に対して4質量部)を滴下した。220℃に昇温して重合反応を行い、結着樹脂3を得た。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が12000、サブピーク分子量が320万、THF不溶分を43質量%含有していた。得られた結着樹脂の物性を表1に示す。
〜結着樹脂4の製造例(ビニル系樹脂)〜
(高分子量成分の製造例)
・スチレン 75.3質量部
・アクリル酸n−ブチル 20質量部
・マレイン酸モノブチル 4.7質量部
・ジビニルベンゼン 0.008質量部
・2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン
0.150質量部
上記原材料を4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を高分子量成分とする。
(低分子量成分の製造例)
・スチレン 69.5質量部
・アクリル酸n−ブチル 22質量部
・マレイン酸モノブチル 8.5質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1.1質量部
上記原材料をキシレン200質量部中に4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を低分子量成分とする。
上記のようにして得られた、高分子量成分及び低分子量成分を、キシレン200質量部に対して、高分子量成分/低分子量成分を20質量部/80質量部の割合で混合溶解させ、さらにワックス(ポリエチレンワックス:融点120℃)を樹脂100質量部に対して4質量部添加して、昇温して還流下で12時間、撹拌混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷延・固化後、粉砕して、結着樹脂4を得た。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が35000、サブピーク分子量が230万、THF不溶分を33質量%含有していた。得られた結着樹脂の物性を表1に示す。
〜結着樹脂5の製造例(ポリエステル樹脂)〜
ポリエステル系樹脂成分を下記比率で混合する。
テレフタル酸 ・・・0.400mol
イソフタル酸 ・・・0.390mol
フマル酸 ・・・0.012mol
ドデセニル琥珀酸・・・0.170mol
トリメリット酸 ・・・0.02mol
前記式(A)で示されるビスフェノール誘導体
(プロピレンオキサイド2.2mol付加物)・・・1.150mol
ワックス(ポリエチレンワックス:融点120℃)・・・樹脂100質量部に対して4質量部
上記ポリエステル系樹脂成分及びワックスを4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて,これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量%を添加し、220℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル樹脂を得た。この樹脂は、THF可溶分のGPC分子量分布において、メインピーク分子量が31000、サブピーク分子量が340万、THF不溶分を50質量%含有していた。得られた結着樹脂の物性を表1に示す。
磁性体は表2に示した物性のものを用いた。
[トナー1の調製]
・結着樹脂1 100質量部
・磁性体1 95質量部
・モノアゾ鉄錯体 2質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、110℃に加熱された2軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製;回転子および固定子の表面に炭化クロムを含有したクロム合金めっきでコーティング(めっき厚150μm、表面硬さHV1050))を用いて機械式粉砕させて微粉砕し、得られた微粉砕物をコアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で微粉及び粗粉を同時に分級除去した。そこで得られたトナー粒子のコールターカウンター法で測定される重量平均粒径(D4)は6.3μmであった。
その得られたトナー粒子を、さらに同様の装置を用いて分級を行い、重量平均粒径(D4)がそれぞれ4.8μm、6.3μm、7.7μmのものを得た。これらのトナー粒子を別々に図1に示す表面改質装置により表面改質を行った。いずれも表面改質時の条件は、原料供給速度はいずれも2kg/hr、熱風流量はいずれも700L/min、熱風の吐出温度はいずれも300℃で行った。それぞれ処理後のトナー粒子を再び混合し、重量平均粒径(D4)6.8μmのトナー粒子1を得た。トナー粒子1の物性を表3に示す。
このトナー粒子100質量部と、ヘキサメチルジシラザン処理し、次いでジメチルシリコーンオイル処理を行った疎水性シリカ微粉体1.35質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性トナー1を調製した。負帯電性トナー1の物性を表3に示す。
[トナー2〜8の調製]
用いる結着樹脂、磁性体を表3のようにして、更に表面改質条件を表3に示すように変更した以外はトナー1と同様にしてトナー2〜8を得た。トナー粒子2〜8及びトナー2〜8の物性を表3に示す。
[トナー9〜10の調製]
用いる結着樹脂、磁性体を表3のようにして、更に表面改質条件を行わなかった以外はトナー1と同様にしてトナー9〜10を得た。トナー粒子9〜10及びトナー9〜10の物性を表3に示す。
<実施例1〜6、比較例1〜4>
次に、調製されたトナーを用いて、以下に示すような方法によって評価を行った。評価結果を表4に示す。
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて以下の評価を行った。
(1)画像濃度、カブリ
常温常湿環境下(23℃,60%RH)、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下で、2枚/10秒のプリント速度、印字比率5%で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に10000枚の画出し試験を行い、一日放置して再び10000枚、計20000枚の画出し試験を行った。画出し試験においては上記プリンターを改造して、スリーブに当接している弾性ブレードの厚みを30%増したものに変えることで、ブレードの当接圧力を29.4N/m(30g/cm)から49N/m(50g/cm)としたものを用いた。結果を表6に示す。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(2)ブロッチ
低温低湿環境下での耐久において、画出し中の現像スリーブ上のトナーコート状態及びプリント画像から、ブロッチの評価を行った。ブロッチの評価では、上記プリンターを改造して、現像スリーブに当接している弾性ブレードの厚みを15%減らしたものに変えることでブレードの当接圧力を29.4N/m(30g/cm)から19.6N/m(20g/cm)とした。
A 現像スリーブ上にブロッチが全く見られない。
B 現像スリーブ上にわずかに見られるが、画像上にはその影響は現れない。
C 現像スリーブ上に見られ、画像上にもその影響がかすかに現れる。
D 現像スリーブ上にブロッチが見られ、画像上に著しくその影響が現れる。
(3)定着試験
低温定着性については、前記評価装置の定着ユニットを取り出し通常の1.3倍のプロセススピードにおいて評価できるよう改造を加えた。加熱定着装置において150〜240℃温度範囲で加熱用ヒータの温度を5℃おきに制御し、定着ローラーの表面の温度が一定になってから、未定着トナー像が形成された記録材を定着ニップ部に挿入し、得られた画像を、4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦を行い、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる定着温度を低温定着性とした。この温度が低いほど低温定着性に優れたトナーである。未定着画像としては、普通紙(75g/m2)を用い、紙上のトナー現像量を0.6mg/cm2に設定したベタ黒画像の定着を行った。
耐高温オフセット性については、上記の定着条件と同様に、定着ローラー表面が十分に加熱された状態で記録材を挿入し、評価を行った。上半分が100μm幅の横線パターン(横幅100μm、間隔100μm)、およびベタ黒、下半分が白の画像をプリントし、白画像上の汚れの発生しない最高温度を示した。試験紙としてオフセットの発生しやすい複写機用普通紙(60g/m2)を使用した。評価は高温オフセット現象による画像上の汚れを目視で確認し、発生した温度を耐高温オフセット性とした。この温度が高いほど高温オフセット性に優れたトナーである。
(4)ブロッキング試験
約10gのトナーを100ccのポリカップに入れ、50℃で3日間放置した時の凝集具合を目視で判断した。
A 凝集物は見られない。
B 凝集物は見られるが、容易に崩れる。
C 凝集物は見られるが、振れば崩れる。
D 凝集物をつかむことができ、容易につかめない。
(5)フェーディング評価
高温高湿環境下の耐久で、初期及び20000枚のプリントアウトを終了した後に、ベタ黒画像をプリントアウトして、画像上で帯状に発生した濃度薄の部分と濃度の正常画像部の濃度との差で評価した。フェーディング評価には、上記プリンターを改造して、ブレードの当接圧力を30g/cmから50g/cmとし、さらに現像スリーブに最も近い攪拌部材のシート材の厚さを通常の0.9倍にして評価を行った。
A 濃度薄発生部分が全く見られない。(濃度差が0.02未満)
B 軽微な濃度薄発生部分が見られる。(濃度差が0.02以上、0.08未満)
C 濃度薄発生部分が見られるものの、実用画像では問題ないレベル。(濃度差が0.0
8以上、0.2未満)
D 顕著な濃度差が見られ、実用画像でも問題とされるレベル。(濃度差が0.2以上)