本発明者らは鋭意検討の結果、水酸基価(WOHv)が5〜150mgKOH/g(好ましくは10〜100mgKOH/g、より好ましくは20〜90mgKOH/g)であり、エステル価(WEv)が1〜50mgKOH/g(好ましくは1〜20mgKOH/g、より好ましくは5〜20mgKOH/g)であり、その関係が
WOHv>WEv
であるワックスをトナーに用いることにより、低温領域から高温領域までの幅広い温度領域での良好な定着性能を示すことを見出した。
さらに、スルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体の酸価(SAv)が1〜50mgKOH/g(好ましくは10乃至40mgKOH/g,より好ましくは15乃至35mgKOH/g)であり、さらに、該ワックスの水酸基価と該重合体の酸価との比(WOHv/SAv)が0.1乃至150(好ましくは0.5乃至50、より好ましくは1.0乃至10)である該重合体を併用することにより、長期に亘るトナーの帯電安定性やトナーの混合時の帯電均一性を維持しつつ、高温高湿、低温低湿環境下においても良好な現像性を示し、さらにはより良い定着性能も付加するトナーが得られることを見いだした。
つまり、本発明で用いられるワックスは、分子中に適度な水酸基を有していることにより、ワックスが結着樹脂中に微粒子状に分散できるので、適度な可塑効果が得られ、定着性が向上する。さらに、ワックス中のエステル基は結着樹脂成分との親和性が高く、水酸基は紙の如き被定着シートとの親和性が高いので、トナーを定着部材から排出させる効果をもたらし、トナーの定着部材との離型性及び被定着シートヘの排出性が向上し、トナーの定着部材への蓄積に起因する画像汚れを軽減することができる。
さらに、これに、適度な酸価(SAv)を有し、さらには該ワックスの水酸基価との比(WOHv/SAv)を上記範囲になるような該重合体を併用することで、トナー中に存在するスルホン酸基、カルボキシル基、及び水酸基などの極性官能基が静電気的な反発により最適な分散状態をとり、トナーの帯電性が安定し、高速現像においても安定した画像を供給することができる。また、帯電性が安定する事で、スリーブ表面においても均一なトナーコートがなされ、高帯電性を維持しながらも、ブロッチなどの画像欠陥が生じ難くなる。
また、トナー中に存在するスルホン酸基、カルボキシル基と該ワックスの水酸基との間の静電気的な反発力により、該ワックスがトナー中でより微分散し、より良好な定着性が得られる。
さらに、トナー表面においてもこれらの極性官能基が良好な帯電特性と耐湿性とを両立することが可能となり、長期にわたる帯電安定性と環境安定性を実現できるのである。
ワックスの水酸基価が5mgKOH/g未満だと、ワックスが十分に微分散せず、トナーの定着性が低下する。また、ワックスの水酸基価が150mgKOH/gより大きいと、ワックスの可塑効果が大きくなりすぎ、トナーの耐ブロッキング性が低下する。
更に、ワックス中のエステル基はトナーの結着樹脂成分との親和性が高いので、トナー粒子中にワックスを均一に存在させることができ、ワックスの作用を効果的に発揮できるようになる。ワックスのエステル価が1mgKOH/g未満だと、トナーの定着性に対する効果が低下する。また、エステル価が50mgKOH/gより大きいと、ワックスの結着樹脂に対する親和性が高くなりすぎて結着樹脂の劣化が進みやすくなり、長期の使用においてトナーの現像性が劣るようになる。
また、本発明におけるワックスは、水酸基価(WOHv)とエステル価(WEv)を適度に有し、且つ以下の関係を満たすことを特徴とする。
WOHv>WEv
更に、
WOHv>2WEv
の関係を満たすことが好ましい。より好ましくは、WOHv/WEv=2.5〜20である。
該ワックスのエステル価が水酸基価以上だと、ワックスと結着樹脂の親和性が高くなり、ワックスがトナー表面に染み出しにくくなり、ワックスの定着部材との滑り性が悪化し、トナーの定着部材への付着に起因する画像汚れが発生しやすくなる。
本発明のワックスは、酸価(WAV)が1〜30mgKOH/g(好ましくは1〜15mgKOH/g、より好ましくは1〜10mgKOH/g)であることが好ましい。ワックスが酸基を有していることにより、トナーを構成する他の成分との界面接着力が大きくなり、ワックスがトナーを可塑化する効果が高くなり、トナーの定着性が向上する。ワックスの酸価が1mgKOH/g未満だと、トナーを構成する他成分との界面接着力が小さくなり、ワックスの遊離が発生しやすく、ワックスの作用が十分に得られない場合がある。また、ワックスの酸価が30mgKOH/gより大きいと、逆に界面接着力が大きくなりすぎ、トナーの可塑化が大きく進み、十分な離型性を保持できなくなる場合がある。
また、本発明におけるワックスは、酸価(WAV)、水酸基価(WOHv)が以下の関係を満たすことが好ましい。
WOHv>WAV
更に、
WOHv>2WAV
の関係を満たすことが好ましい。より好ましくは、WOHv/WAV=2.5〜20である。
本発明に使用するワックスは、以下の構造を有する炭化水素分子鎖を好ましくは含むものである。少なくとも下記部分構造式Aで表せる二級炭素に水酸基を有する二級アルコールの構造を有する分子鎖及び下記部分構造式Bで表せるエステル結合を有するエステルの構造を有する分子鎖をワックス分子の中に有するもので、一つの分子鎖に両方の構造を有していても良い。
さらに、下記部分構造式C及びDで表せる一級または二級の炭素にカルボキシル基を有する酸基の構造を有する分子鎖をワックス分子の中に有するものも好ましい。また、下記部分構造式Eで表せる一級炭素に水酸基を有する一級アルコールの構造を有する分子鎖を有していても良い。一つの炭化水素鎖に任意の下記部分構造式A、B、C、D及びEの構造を有していても良い。
本発明におけるワックスの水酸基はトナーの滑り性を高めるので、定着部材からのトナーの離型性を高める。また、ワックスのエステル基は結着樹脂との親和性が高く、且つワックスが水酸基を同時に有していることで、トナー中に均一にワックスが存在するようになり、トナーの定着部材との滑り性を良くし、定着部材へのトナーの付着を軽減することができる。
また、ワックスの酸基はトナーの他成分との接着力が高いので、定着部材上のトナー表面にワックス成分が保持される。その結果、トナーと定着部材との界面で効果的にワックスの作用が働くようになる。ワックスの酸価が水酸基価以上だと、ワックスの滑り性が低下し、トナーの定着部材への付着に起因する画像汚れが発生する場合がある。また、ワックスが酸基とエステル基を同時に有していることにより、トナー粒子中で適度な分散径を有することができ、ワックスの作用を効果的に働かせることができる。酸基又はエステル基のどちらかが欠けると、トナー粒子中での分散径が不均一になり、ワックスの作用が十分に働かない場合がある。
また、本発明で使用するワックスは離型作用、また、適度にトナー粒子中で微分散された場合の可塑作用に優れるとともに、本発明においては、ワックスの主鎖が炭素の結合(すなわち、メチレン基の長鎖)を有することで酸基,水酸基,エステル基の各置換基がトナー粒子中で機能しやすくなり、効果的に定着性と離型性を向上させることができる。ワックスの主鎖中に他の元素が含まれている場合、例えば、ポリグリセリンのように酸素が含まれたエーテル結合が存在すると、ワックスの持つ作用効果が小さくなり、更には本発明の特徴とする各置換基の機能が妨げられ、好ましい定着性と離型性を得ることができない。
本発明におけるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスから該炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを生成し、該炭化水素系ワックスのホウ酸エステルを加水分解して水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成することが好ましい。脂肪族炭化水素系ワックスから水酸基を有する炭化水素系ワックスを生成する一連の工程をアルコール転化と称する。アルコール転化の工程を利用して所望の特性を有する炭化水素系ワックスを得ることが、炭化水素系ワックスの酸基,水酸基,エステル基の転化率をコントロールしやすいという点で好ましい。
脂肪族炭化水素系ワックスとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される数平均分子量(Mn)がポリエチレン換算で100〜3000、好ましくは200〜2000、より好ましくは250〜1000の範囲にある飽和または不飽和の脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。数平均分子量(Mn)がポリエチレン換算で100未満の場合はオフセット性能が悪化し、3000より大きい場合には定着性が悪化する。
本発明においてワックスの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により次の条件で測定される。
(GPC測定条件)
装 置:HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 7.8cmI.D×30cm
2連(東ソー社製)
検出器:高温用RI
温 度:135℃
溶 媒:o−ジクロロベンゼン(0.05%アイオノール添加)
流 速:1.0ml/min
試 料:0.1%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算をすることによって算出される。
脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、1)エチレン重合法または石油系炭化水素の熱分解によるオレフィン化法で得られる二重結合を1個以上有する高級脂肪族不飽和炭化水素、2)石油留分から得られるn−パラフィン混合物、3)エチレン重合法により得られるポリエチレン炭化水素系ワックス、4)フィッシャートロプシュ合成法により得られる高級脂肪族炭化水素の1種または2種以上、などが好ましく用いられる。
本発明におけるワックスの製造例としては、例えば、脂肪族炭化水素系ワックスを、好ましくはホウ酸および無水ホウ酸の存在下で、分子状酸素含有ガスで液相酸化することにより得られる。得られた炭化水素系ワックスは、さらにプレス発汗法による精製、溶剤を使用した精製、水添処理、硫酸での洗浄後に活性白土による処理をおこなってもよい。触媒としてはホウ酸と無水ホウ酸の混合物を使用することができる。ホウ酸と無水ホウ酸との混合比(ホウ酸/無水ホウ酸)はモル比で1〜2、好ましくは1.2〜1.7の範囲が好ましい。無水ホウ酸の割合が前記範囲より少ないと、ホウ酸の過剰分が凝集現象を引き起し好ましくない。また無水ホウ酸の割合が前記範囲より多いと、反応後無水ホウ酸に由来する粉末物質が回収され、また過剰の無水ホウ酸は反応に寄与せず経済的な面からも好ましくない。
使用されるホウ酸と無水ホウ酸の添加量は、その混合物をホウ酸量に換算して、原料の脂肪族炭化水素1モルに対して0.001〜10モル、とくに0.1〜1モルが好ましい。
ホウ酸/ホウ酸無水物以外に、メタホウ酸及びピロホウ酸も使用可能である。また、アルコールとエステルを形成するものとしてホウ素の酸素酸、リンの酸素酸、及びイオウの酸素酸が挙げられる。具体的には、ホウ酸、硝酸、リン酸又は硫酸が挙げられる。
反応系に吹き込む分子状酸素含有ガスとしては酸素、空気、またはそれらを不活性ガスで希釈した広範囲ものが使用可能である。ガスは酸素濃度が1〜30体積%であるのが好ましく、より好ましくは3〜20体積%である。
液相酸化反応は通常溶媒を使用せず、原料の脂肪族炭化水素の溶融状態下で行なわれる。反応温度は120〜280℃、好ましくは150〜250℃である。反応時間は1〜15時間が好ましい。
ホウ酸と無水ホウ酸は予め混合して、反応系に添加するのが好ましい。ホウ酸のみを単独で添加すると、ホウ酸の脱水反応などが起り好ましくない。またホウ酸と無水ホウ酸の混合触媒の添加温度は100〜180℃がよく、好ましくは110〜160℃であり、100℃より低い場合には系内に残存する水分などに起因して、無水ホウ酸の触媒能が低下するので好ましくない。
反応終了後反応混合物に水を加え、生成したワックスのホウ酸エステルを加水分解・精製して、所望の官能基を有するワックスが得られる。
本発明において、ワックスの酸価、水酸基価、エステル価、ケン化価は以下の方法により求める。基本操作はJ1S K 0070に準じる。
酸価の測定
・装置及び器具
三角フラスコ(300ml)
ビュレット(25ml)
水浴又は熱板
・試薬
0.1kmol/m3塩酸
0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液(標定は、0.1kmol/m3塩酸25mlを全ピペットを用いて三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、中和に要した量からファクターを求める。)
フェノールフタレイン溶液
溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1で混合したもの。これらは、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で中和する。)
・測定法
(a)ワックス1〜20gを三角フラスコに精秤する。
(b)溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上でワックスが完全に溶けるまで十分に振り混ぜる。
(c)0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときを終点とする。
・計算
A=5.611×B×f/S
ただし、A:酸価(mgKOH/g)
B:滴定に用いた0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
の量(ml)
f:0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11×1/10
水酸基価の測定
・装置及び器具
メスシリンダー(100ml)
全量ピペット(5ml)
平底フラスコ(200ml)
グリセリン浴
・試薬
アセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜる。)
フェノールフタレイン溶液
0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
・測定法
(a)ワックスを0.5〜6.0g平底フラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mlを全量ピペットを用いて加える。
(b)フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせる。
(c)1時間後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。
(d)更に、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール(95)5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
(e)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
(f)空試験は、ワックスを入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加えて溶解する。
・計算
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ただし、A:水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶
液の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
の量(ml)
f:0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
D:酸価
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
エステル価の測定
次の式によって算出する。
(エステル価)=(ケン化価)−(酸価)
ケン化価の測定
・装置及び器具
三角フラスコ(200〜300ml)
空気冷却器(外径6〜8mm,長さ100cmのガラス管又は環流冷却器で、いずれも三角フラスコの口にすりあわせ接続できるもの)
水浴、砂浴又は熱板(約80℃の温度に調節できるもの)
ビュレット(50ml)
全量ピペット(25ml)
・試薬
0.5kmol/m3塩酸
0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
フェノールフタレイン溶液
・測定法
(a)ワックス1.5〜3.0gを三角フラスコに1mgの桁まで精秤する。
(b)0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液25mlを全量ピペットを用いて加える。
(c)三角フラスコに空気冷却器を取り付け、ときどき内容物を振り混ぜながら30分間水浴、砂浴又は熱板上で穏やかに加熱して反応させる。加熱するときは、環流するエタノールの環が空気冷却器の上端に達しないように加熱温度を調節する。
(d)反応が終わった後、直ちに冷却し、内容物が寒天状に固まらないうちに空気冷却器の上から少量の水、又はキシレン:エタノール=1:3混合溶液を吹き付けてその内壁を洗浄した後、空気冷却器を外す。
(e)指示薬としてフェノールフタレイン溶液1mlを加えて、0.5kmol/m3塩酸で滴定し、指示薬の薄い紅色が約1分間現れなくなったときを終点とする。
(f)空試験は、ワックスを入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、予めキシレン、又はキシレン−エタノール混合溶媒を用いて溶解する。
・計算
A={(B−C)×28.05×f}/S
ただし、A:ケン化価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3塩酸の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3塩酸の量(ml)
f:0.5kmol/m3塩酸のファクター
S:ワックスの質量(g)
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
本発明においてトナーに含有されているワックスの酸価、水酸基価、エステル価、ケン化価を測定する場合には、ワックスをトナーから分取した後、上記測定方法に準じて測定を行っても良い。
また、本発明におけるワックスは、融点が60〜130℃、好ましくは60〜110℃、更に好ましくは65〜80℃であることが好ましい。融点が上記範囲であるワックスをトナーに用いることにより、ワックスがトナーを可塑化させる効果を更に向上させることができ、トナーの定着性を高めることができる。また、ワックスの融点が上記範囲内であることで、定着部材が過度に加熱された場合にワックスがトナーから染み出し易くなり、トナーの耐高温オフセット性を高めることができる。ワックスの融点が60℃未満だと、トナーの耐ブロッキング性が低下する場合がある。融点が130℃を超えると、トナーの定着性能に悪影響を与える場合がある。
本発明において、ワックスの融点は示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)、DSC Q−1000(TAインスツルメンツ社製)などを用い、下記の条件にて測定することができる。
ワックスの融点の測定方法
ASTM D3418に準拠して測定する。
試料:0.5〜2mg、好ましくは1mg
測定法:試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる。
温度曲線:昇温I (20℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
降温I (180℃〜10℃、降温速度10℃/min)
昇温II(10℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
上記温度曲線において昇温IIで測定される吸熱ピーク温度を融点とする。
また、本発明におけるワックスは、25℃における針入度が15以下(好ましくは12以下、より好ましくは10以下)であることが、トナーの帯電性能を高め、高温高湿環境下においてもより高い現像性を得るために好ましい。ワックスの25℃における針入度が15よりも大きいと、トナーの耐ブロッキング性が低下する場合がある。本発明において、ワックスの針入度はJIS K−2235−5.4により求められる。
また、本発明におけるワックスは、温度120℃における粘度が500mPa・s以下、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、若しくは温度135℃における粘度が400mPa・s以下、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、若しくは温度150℃における粘度が300mPa・s以下、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下であることが、トナーの溶融粘度を下げ、良好な定着性を達成するという点で好ましい。120℃における粘度が500mPa・sを、若しくは温度135℃における粘度が400mPa・sを、若しくは温度150℃における粘度が300mPa・sを超えると、トナーの定着性が不十分になる場合がある。本発明において、ワックスの粘度はJIS K−6862−7.2により求められる。
また、本発明におけるワックスは、軟化点が60〜120℃、好ましくは65〜100℃、より好ましくは70〜90℃であることが、トナーの良好な定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性を得るという点で好ましい。ワックスの軟化点が60℃よりも低いと、トナーの耐ブロッキング性や耐オフセット性が低下する場合がある。ワックスの軟化点が120℃を超えると、トナーの定着性が不十分になる場合がある。本発明において、ワックスの軟化点はJIS K−2207−6.4により求められる。
本発明におけるワックスのトナーへの好ましい添加量としては、結着樹脂100質量部に対して0.2〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜15質量部の範囲で用いられる。
本発明においては、上記ワックスに加えて、従来技術の説明において述べたものを始めとして、従来よりトナーに一般に用いられる公知のワックスと組み合わせて使用してもよい。例えば、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ポリオレフィンワックス誘導体などである。誘導体としてはビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が挙げられる。
また本発明のワックスをより効果的に作用させるために、酸価(SAv)が1乃至50mgKOH/g(好ましくは10乃至40mgKOH/g,より好ましくは15乃至35mgKOH/g)のスルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体を該ワックスとともにトナー中に添加していることが特徴である。上記のこのスルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体を用いることにより、該ワックスの微分散性がさらに向上するとともに、帯電立ち上がりの良さを保持しつつ、高湿環境においても高い帯電量を得、低湿環境においても帯電過剰となることのないトナーを得ることができる。該重合体の酸価(SAv)が1mgKOH/g未満である場合、帯電立ち上がりが十分ではなく、初期画像濃度が劣る。また、50mgKOH/gよりも大きい場合、チャージアップしやすくなり、スリーブゴーストが悪化する。
また、該ワックスの水酸基価と該重合体の酸価との比が
0.1≦WOHv/SAv≦150
(好ましくは0.5≦WOHv/SAv≦50、より好ましくは1.0≦WOHv/SAv≦10)
で表される上記式を満足することを特徴とする。
この範囲でワックスの水酸基価とスルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体の酸価とを制御することで、トナー中において、ワックスの微分散性がさらに向上し、最適な可塑効果が得られ、定着性が一層向上する。また、トナー中においても静電気的な反発力によりワックスと該重合体とが最適な分散構造を有するため、帯電性が安定し、長期にわたる帯電安定性と環境安定性を実現できるのである。
このワックスの水酸基価と該重合体の酸価との比(WOHv/SAv)が上記式を満足しない場合には、最適な微分散構造をとれず、定着性能が悪化する。さらに、帯電性も不均一になり、スリーブ上に不均一にトナーがコートされてしまうため、結果としてブロッチが発生する。
該重合体の「酸価」は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
尚、酸価は試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。
(1)試薬
(a)溶剤:エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)で、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬としてN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/10水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作:試料1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後、これをN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
(3)計算式:次の式によって酸価を算出する。
A=5.611×B×f/S
A:酸価
B:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
本発明において使用される荷電制御樹脂に使用される単量体としては、スチレン−アクリル系樹脂を生成するためのビニル系モノマーの中から適宜選択される。好ましくはスチレンとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとの組み合わせが挙げられる。
またスルホン酸基含有単量体としては、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2,2,4−トリメチルペンタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルフェニルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(4−クロロフェニル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−カルボキシメチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−(2−ピリジル)プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、3−アクリルアミド−3−メチルブタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−デカンスルホン酸、2−メタクリルアミド−n−テトラデカンスルホン酸などを挙げることができる。好ましくは2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。
荷電制御樹脂を合成する際に使用される重合開始剤としては、下述のスチレン−アクリル系樹脂を生成する際に使用される開始剤の中から適宜選択される。好ましくは過酸化物開始剤が使用される。
また荷電制御樹脂の合成方法としては、特に制限はなく、溶液重合、懸濁重合、塊状重合などいずれの方法も使用可能であるが、低級アルコールを含む有機溶剤中で共重合させる溶液重合が好ましい。
またスチレン−アクリル系単量体とスルホン酸基含有単量体との共重合比は98:2〜80:20が好ましい。スルホン酸基含有単量体の割合が2質量%より少なくなると、帯電特性に対する効果が不十分なものとなり、かぶりが悪化する。20質量%超になると、耐湿性などの環境安定性が悪化する。
またスルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体の重量平均分子量は2500乃至100000(好ましくは5000乃至50000、より好ましくは20000乃至40000)の重合体であることが好ましい。2500未満であると高湿環境下において帯電量の低下を招き、さらには耐オフセット性も悪化する。また重量平均分子量が100000超になると、樹脂との相溶性が悪化し、トナーの小粒径化により環境変動や経時により安定した帯電性が得られなくなる。
またガラス転移温度が40乃至90℃(好ましくは50乃至80℃、より好ましくは60乃至80℃)の重合体であることが好ましい。40℃未満となるとトナーの保存安定性が悪化し、90℃超になると低温定着性の悪化を招く。
さらに該スルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体の下記粘弾性測定における貯蔵弾性率G’が1×103乃至1×106Pa(好ましくは1×103乃至1×105Pa、より好ましくは5×103乃至5×104Pa)及び損失弾性率G”が1×103乃至1×106Pa(好ましくは5×103乃至5×105Pa、より好ましくは7×103乃至1×105Pa)であることが、当該重合体と上記粘度を有するワックスとの相溶性を向上させ、均一な帯電特性を得る上で好ましい。貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”が1×103未満の場合は、重合体がシャープメルト過ぎ、溶融混練時にシェアがかかり難くなるため、ワックスなどの微分散性を低下させる。また、トナー化した時に耐ブロッキング性が悪くなり、耐久性に悪影響を及ぼす。一方、1×106Paより大きい場合には該重合体とワックスとの相溶性が低下するので、トナー中での分散性が不均一になり、トナーの帯電量分布が広がり、画像かぶりが発生しやすくなる。
本発明における樹脂の貯蔵弾性率、損失弾性率は、レオメトリックス社製レオメーターRDA−II型を用いて、試料を200℃、周波数100rad/sec、歪量1%で10分間せん断を行った後、徐々に温度を下げ、80℃まで測定することにより、150℃における貯蔵弾性率及び損失弾性率を求めたものである。
尚、スルホン酸又はスルホン酸塩又はスルホン酸エステルを有する重合体のトナーからの抽出は特に制限されるものではなく、任意の方法が扱える。
スルホン酸又はスルホン酸塩又はスルホン酸エステルを有する重合体の「GPCによる分子量及び分子量分布」は以下の方法で測定される。
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製或いは、昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H(HXL),G2000H(HXL),G3000H(HXL),G4000H(HXL),G5000H(HXL),G6000H(HXL),G7000H(HXL),TSKguardcolumnの組み合わせが挙げられる。
試料は以下のようにして作製する。
試料をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしてTHFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、さらに12時間以上静置する。この時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えば、東ソー社製「マイショリディスクH−25−5」、ゲルマン サイエンス ジャパン社製「エキクロディスク25CR」などが利用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
該スルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体の「ガラス転移点」はDSC測定により求められる。
DSC測定では、測定原理から、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)、DSC Q−1000(TAインスツルメンツ社製)などが利用できる。
測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。測定は、1回昇温、降温させ、前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
さらに、本スルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体は、そのまま使用することができるが、公知の粉砕手段により粉砕して粒径を揃えることが、他材料との相溶性・分散性向上となり好ましい。粉砕粒子径としては、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下とすることで、他材料との分散が良好となり、画質面で特にカブリが抑制できる。
この該スルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体は、結着樹脂100質量部あたり0.1〜10質量部の割合で含有される。0.1質量部より少ないと、帯電特性に対する効果が不十分なものとなり、耐久画像安定性も好ましいものとはならない。10質量部より多くなると、トナーの定着性に対して悪影響を及ぼすようになり、さらには結着樹脂との相溶性も低下するために、トナーを小粒径化した場合には、環境変動や経時などにより安定した帯電特性が得られなくなる。
トナー中のスルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体の含有量は、キャピラリー電気泳動法等を用いて測定することができる。
本発明に使用される結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニール、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂又は石油系樹脂が挙げられる。
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸;マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸エステル;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
本発明で使用する結着樹脂又は樹脂組成物は、保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が45〜80℃、好ましくは50〜70℃である。Tgが45℃より低いと高温雰囲気下でのトナーの劣化や定着時でのオフセットの原因となりやすい。また、Tgが80℃を超えると、定着性が低下する傾向にある。
本発明の結着樹脂の重合法としては、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であるから停止反応速度が小さく、その結果重合速度が大きく、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造において、着色剤及び荷電制御剤その他の添加物との混合が容易であること等の理由から、トナー用バインダー樹脂の製造方法として有利な点がある。
しかし、添加した乳化剤のため生成重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
懸濁重合においては、水系溶媒100質量部に対して、モノマー100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が用いられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05〜1質量部で用いられる。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する開始剤、目的とするポリマーによって適宜選択される。
本発明に用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイドの1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤;及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤から選択される。
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
これらの重合開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05〜2質量部で用いるのが好ましい。
結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.00001〜1質量部、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性,耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物が挙げられる。
その他の合成方法としては、塊状重合方法や溶液重合方法を用いることができる。しかし、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくい問題点がある。その点、溶液重合法は、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで、所望の分子量の重合体を温和な条件で容易に得ることができるので好ましい。特に、重合開始剤使用量を最小限に抑え、重合開始剤が残留することによる影響を極力抑えるという点で、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
結着樹脂組成物を製造する方法として、溶液重合法により高分子量重合体と低分子量重合体を別々に合成した後にこれらを溶液状態で混合し、次いで脱溶剤する溶液ブレンド法、また、押出機等により溶融混練するドライブレンド法、溶液重合法等により得られた低分子量重合体を溶解した高分子量重合体を構成するモノマーに溶解し、懸濁重合を行い、洗浄・乾燥し、樹脂組成物を得る二段階重合法等が挙げられる。但し、ドライブレンド法では、均一な分散・相溶の点で改善すべき点がある。二段階重合法だと均一な分散性等に利点が多いが、低分子量分を高分子量分以上に増量することができ、分子量の大きい高分子量重合体の合成ができ、不必要な低分子量重合体が副生成するという問題が少ないことから、溶液ブレンド法が最も好適である。また、低分子量重合体成分に所定の酸価を導入する方法としては、水系媒体を使用する重合法に比べて酸価の設定が容易である溶液重合が好ましい。
本発明で、結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂の組成の例を以下に示す。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
式(B)で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、又は低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸もしくはアルキルコハク酸、又はその無水物、又は低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物、又は低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また、架橋成分として働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
また、本発明における三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−シカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中、Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基である。)
で表わされるテトラカルボン酸、及びこれらの無水物、又は低級アルキルエステルの如き多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
アルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが好ましい。
また三価以上の多価の成分は、全成分中の5〜60mol%であることが好ましい。該ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
本発明のトナーは磁性材料を含有してもよい。磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。トナーに使用される磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2〜40m2/g(より好ましくは4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20〜200質量部で用いられる。好ましくは40〜150質量部で用いられる。
個数平均径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
本発明のトナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
本発明のトナーは、上記スルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体と下記荷電制御剤とを併用して使用してもよい。
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、その他にも、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。一方、正帯電性に制御するものとしては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
具体的な商品名として、負帯電用としては、例えばSpilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学社)があげられ、正帯電用としては好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの荷電制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
本発明のトナーには、無機微粉体または疎水性無機微粉体が外添されることが好ましい。例えば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
さらにシリカ微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
シリカ微粉体の好ましい疎水化処理として、ジメチルジクロロシランで処理し、次いでヘキサメチルジシラザンで処理し、次いでシリコーンオイルで処理することにより調製する方法が挙げられる。
上記のようにシリカ微粉体を2個以上のシラン化合物で処理し、後にオイル処理することが疎水化度を効果的に上げることができ、好ましい。
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体に施したものも、シリカ系同様に好ましい。
本発明のトナーには、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体以外の添加剤を外添してもよい。
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン,m−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−メトキシスチレン,p−エチルスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸n−プロピル,アクリル酸n−オクチル,アクリル酸ドデシル,アクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸2−クロルエチル,アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル,メタクリル酸イソブチル,メタクリル酸n−オクチル,メタクリル酸ドデシル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
その他の微粒子としては、ポリ弗化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは0.1〜3質量部)使用するのが良い。
本発明のトナーは、好ましくは重量平均粒径を2.5〜10μmとした場合に十分な効果が発揮され、好ましい。
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化または未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金または酸化物で形成される平均粒径20〜300μmの粒子がキャリア粒子として使用される。
キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質を付着または被覆されているものが好ましい。
本発明に係るトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロール,ニーダー,エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後、機械的な粉砕・分級によってトナーを得る方法が好ましく、他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合トナー製造法、あるいはコア材,シェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいてコア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法、結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥によりトナーを得る方法等が応用出来る。さらに必要に応じ所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明に係るトナーを製造することができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
以上本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例にもとづいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。実施例中の部数は質量部である。
ワックスの合成例
合成例1:
原料物質としてパラフィンワックス〔数平均分子量(Mn)410,平均炭素数29.1〕1000gをガラス製の円筒反応器に入れ、窒素ガスを少量(3.5リットル/分)吹き込みながら、140℃まで昇温した。ホウ酸/無水ホウ酸=1.54(モル比)の混合触媒27.1gを加えた後、空気(20リットル/分)と窒素(15リットル/分)を吹き込みながら、180℃で2時間反応を行った。反応終了後反応混合物に等量の温水(95℃)を加え、反応混合物を加水分解後、静置して上層に分離したワックスを分取し、分取したワックスを水洗いしてワックス(1)を得た。ワックス(1)の水酸基価は62.0mgKOH/g、エステル価は14.0mgKOH/g、酸価は7.1mgKOH/g、融点は73℃、針入度は8、粘度は12.0mPa・s、軟化点は76℃、Mnは520であった。また、ワックス(1)は、前記部分構造式(A)、(B)、(C)、(D)を有していた。ワックス(1)の物性を表1に示す。
合成例2:
原料物質としてポリエチレンワックス(Mn=816)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(2)を得た。ワックス(2)の物性を表1に示す。
合成例3:
原料物質としてパラフィンワックス(Mn=314)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(3)を得た。ワックス(3)の物性を表1に示す。
合成例4:
原料物質としてフィッシャートロプシュワックス(Mn=680)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(4)を得た。ワックス(4)の物性を表1に示す。
合成例5:
原料物質としてポリエチレンワックス(Mn=1222)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(5)を得た。ワックス(5)の物性を表1に示す。
合成例6:
原料物質としてパラフィンワックス(Mn=354)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(6)を得た。ワックス(6)の物性を表1に示す。
合成例7:
原料物質としてポリエチレン(Mn=2014)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(7)を得た。ワックス(7)の物性を表1に示す。
合成例8:
原料物質としてパラフィンワックス(Mn=321)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(8)を得た。ワックス(8)の物性を表1に示す。
合成例9:
原料物質としてフィッシャートロプシュワックス(Mn=800)1000gを用い、合成条件をかえた以外は合成例1と同様にしてワックス(9)を得た。ワックス(9)は、前記部分構造式(A)、(B)を有していた。ワックス(9)の物性を表1に示す。
さらに、後述の比較例5で使用したワックス(10)(ポリプロピレンワックス(Mn=8500))の物性も表1に併記する。
[スルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体製造例]
(製造例1)
・メタノール : 300g
・トルエン : 100g
・スチレン : 504g
・2−エチルヘキシルアクリレート : 48g
・2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 : 48g
・ラウロイルパーオキサイド : 3g
上記原料をフラスコに仕込み、攪拌装置、温度測定装置、窒素導入装置を装着して、窒素雰囲気下65℃で溶液重合させ、10時間保持して重合反応を終了させた。得られた重合物を減圧乾燥、粉砕して、重量平均分子量27000、ガラス転移温度76℃のスルホン酸基含有重合体1を得た。
以下、表2に示すようにモノマーの種類及び量を変更することによりスルホン酸基又はスルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体(以下スルホン酸基含有重合体)2〜8を得た。
<実施例1>
スチレン−アクリル酸エステル共重合体 100部
(ピーク分子量12000、Tg60℃)
球形磁性酸化鉄
(平均粒径:0.20μm、79.58kA/m(1kエルステッド)の磁場における磁気特性〔σr:6.5Am2/kg、σs:83.1Am2/kg〕 95部
スルホン酸基含有重合体1 4部
ワックス(1) 5部
上記混合物を、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕粉を固定壁型風力分級機で分級して分級粉を生成した。さらに、得られた分級粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して重量平均粒径(D4)6.8μmの負帯電性磁性トナーを得た。
この磁性トナー100部と疎水性シリカ微粉体1.2部とをヘンシェルミキサーで混合してトナー1を調製し、評価を行った。評価結果を表4に示す。
<実施例2〜3>
用いるスルホン酸基含有重合体を表3に示すとおりに変えた以外はトナー1と同様にしてトナー2〜3を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
<実施例4>
ポリエステル樹脂 100部
(ピーク分子量7500、Tg65℃)
球形磁性酸化鉄
(平均粒径:0.20μm、79.58kA/m(1kエルステッド)の磁場における磁気特性〔σr:6.5Am2/kg、σs:83.1Am2/kg〕 95部
スルホン酸基含有重合体4 4部
ワックス(4) 5部
上記混合物を、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕粉を固定壁型風力分級機で分級して分級粉を生成した。さらに、得られた分級粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して重量平均粒径(D4)6.8μmの負帯電性磁性トナーを得た。
この磁性トナー100部と疎水性シリカ微粉体1.2部とをヘンシェルミキサーで混合してトナー4を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
<実施例5>
スチレン−メタクリル酸エステル共重合体 100部
(ピーク分子量13500、Tg58℃)
球形磁性酸化鉄
(平均粒径:0.20μm、79.58kA/m(1kエルステッド)の磁場における磁気特性〔σr:6.5Am2/kg、σs:83.1Am2/kg〕 95部
スルホン酸基含有重合体3 4部
ワックス(3) 5部
上記混合物を、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕粉を固定壁型風力分級機で分級して分級粉を生成した。さらに、得られた分級粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して重量平均粒径(D4)6.8μmの負帯電性磁性トナーを得た。
この磁性トナー100部と疎水性シリカ微粉体1.2部とをヘンシェルミキサーで混合してトナー5を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
<実施例6>
用いるワックス及びスルホン酸基含有重合体を表3に示すものに変えた以外はトナー5と同様にしてトナー6を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
<参考例1〜4>
用いるワックス及びスルホン酸基含有重合体の種類及び添加量を表3に示すとおりに変えた以外はトナー1と同様にしてトナー7〜10を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
<比較例1〜5>
用いるワックス及びスルホン酸基含有重合体の種類及び添加量を表3に示すとおりに変えた以外はトナー1と同様にしてトナー11〜15を調製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例、比較例における評価方法を以下に示す。
(評価機)
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて以下の評価を行った。
<低温定着性、耐高温オフセット性>
上記トナーをプロセスカートリッジに入れ、市販のHewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nの定着器を取り外し、外部駆動及び定着器の温度制御装置を取り付けた定着試験装置にて定着ローラーの表面温度を120〜250℃まで外部から変更できるようにし、さらに、プリントスピードを1.1倍に改造し、ベタ黒画像を通紙して、定着させた。設定温度を5℃刻みに変更させながら常温常湿環境下(25℃,60%RH)にて画像サンプルのプリントアウトを行った。
(1)低温定着性
4.9kPa(50g/cm2)の加重をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)が10%以下である最低の温度を最低定着温度として評価を行った。なお、試験紙として定着性に厳しい複写機用普通紙(90g/m2)を使用した。
(2)耐高温オフセット性
上半分が100μm幅の横線パターン(横幅100μm、間隔100μm)、およびベタ黒、下半分が白の画像をプリントし、白画像上の汚れの発生しない最高温度を示した。試験紙としてオフセットの発生しやすい複写機用普通紙(60g/m2)を使用した。
(3)画像濃度、カブリ
Hewlett−Packard社製レーザービームプリンターLaser Jet4300nを用いて、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下で、1枚/10秒のプリント速度、印字比率4%で複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に4500枚の画出し試験を4日間行い、計18000枚の画出し試験を行った。
画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
(4)環境安定性
上記、低温低湿環境下(15℃,10%RH)、高温高湿環境下(32.5℃,80%RH)の各環境下での画出し試験において、18000枚目の環境間における画像濃度差を測定することにより評価を行った。
環境安定性=反射濃度(LL環境)−反射濃度(HH環境)
反射濃度差が小さいほど環境安定性が良い。
A:反射濃度差 0.00以上0.03未満
B:反射濃度差 0.03以上0.06未満
C:反射濃度差 0.06以上0.10未満
D:反射濃度差 0.10以上
(5)定着部材への磁性トナー付着に起因する画像黒ポチ評価
低温低湿環境下(温度15℃,10%RH)で18000枚プリントアウトした後の加圧ローラー及び画像を目視で評価した。
A 黒ポチは見られない。
B 定着ローラーに磁性トナー付着が見られるが、画像上には現れない。
C 画像上に1〜2点の黒ポチが見られる。
D 画像上に3点以上の黒ポチが見られる。
(6)スリーブゴースト
通常の複写機用普通紙(A4サイズ:75g/m2)に、低温低湿環境下(15℃,10%RH)で上記プリンタを用いて、18000枚プリントアウトし、4500枚ごとにスリーブネガゴーストの評価を行った。ゴーストに関する画像評価には、スリーブ一周分だけベタ黒の帯を出力した後ハーフトーンの画像を出力した。パターンの概略図を図1に示す。評価方法は、一枚のプリント画像のうち、スリーブ2周目で、1周目で黒画像が形成された場所(黒印字部)と、されない場所(非画像部)での、マクベス濃度反射計により測定された反射濃度の差を下記のごとく算出した。ネガゴーストは、一般的にスリーブ2周目で出る画像において、スリーブ1周目に黒印字部だった部分の画像濃度が、スリーブ1周目に非画像部だった部分の画像濃度よりも低く、1周目で出したパターンの形がそのまま現れるゴースト現象である。ここの濃度差を、反射濃度差を測定することにより評価を行った。
反射濃度差=反射濃度(像形成されない場所)−反射濃度(像形成された場所)
反射濃度差が小さいほどゴーストの発生はなくレベルは良い。ゴーストの総合評価としてA、B、C、Dの4段階で評価し、4500枚ごとの評価の中での最悪の評価結果を示す。
A:反射濃度差 0.00以上0.02未満
B:反射濃度差 0.02以上0.04未満
C:反射濃度差 0.04以上0.06未満
D:反射濃度差 0.06以上
(7)耐ブロッキング性
トナー10gをポリプロビレンのカップに量り、表面を平らにならした後、薬包紙をしきその上に10gの鉄粉キャリアをのせ、50℃,0%RH環境で5日間放置し、トナーのブロッキング状態を評価した。
A:カップを傾けるとトナーがさらさらと流れる
B:カップを回していると、トナー表面が少しずつ崩れだし、さらさらの粉になる。
C:カップを回しながら外から力を加えるとトナー表面が崩れ、そのうちさらさらと流れ
だす。
D:ブロッキング球が発生。先のとがったものでつつくと崩れる。
E:ブロッキング球が発生。つついても崩れにくい。
(8)ブロッチ
低温低湿環境下での耐久において、画出し中の現像スリーブ上のトナーコート
状態及びプリント画像から、ブロッチの評価を行った。
A 現像スリーブ上にブロッチが全く見られない。
B 現像スリーブ上にわずかに見られるが、画像上にはその影響は現れない。
C 現像スリーブ上に見られ、画像上にもその影響がかすかに現れる。
D 現像スリーブ上にブロッチが見られ、画像上に著しくその影響が現れる。