JP4136791B2 - トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法及びトナージェット記録法などの記録法に用いられるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機及びレーザービームプリンタの如き電子写真技術を用いた画像形成装置の機能が多様化し、得られたトナー画像の高精細化、高画質化が求められており、それらに適したトナーが用いられる。
【0003】
例えば、架橋剤と分子量調整剤を加えて、適度に架橋されたビニル系重合体からなるトナーが提案されており、更にはビニル系重合体において、Tg、分子量及びゲルコンテントを組み合わせたブレンド系のトナーが多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような架橋されたビニル系重合体あるいはゲル分を含有するトナーは、耐オフセット性においては優れた効果を示す。しかし、これらを含有させるにあたり、トナー原材料としてこの架橋されたビニル重合体を用いると、トナー製造時の溶融混練工程にて、重合体中の内部摩擦が非常に大きくなり、大きなせん断力が重合体にかかる。このために多くの場合、分子鎖の切断が起こり、溶融粘度の低下を招き、耐オフセット性に悪影響を与える。
【0005】
そこで、これを解決するために、カルボン酸を有する樹脂と金属化合物をトナー原材料として用い、これらを溶融混練時に加熱反応させ、架橋重合体を形成してトナー中に含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献2〜特許文献5参照)。
【0006】
また、ビニル系樹脂単量体と更に特異なモノエステル化合物とを必須構成単位とするバインダーと多価金属化合物とを反応させ、金属を介して架橋するという技術が提案されている(例えば、特許文献6及び特許文献7参照)。
【0007】
また、低分子量と高分子量の2群に分かれる分子量分布を有し、低分子量側に含有されたカルボン酸基と多価金属イオンを反応させ架橋させる(溶液重合して得られた溶液に金属化合物の分散液を加え、加温して反応させる)ということも提案されている(例えば、特許文献8〜特許文献11参照)。
【0008】
また、結着樹脂中の低分子量成分と高分子量成分の分子量、混合比、酸価およびその比率を制御し、定着性や耐オフセット性等を改良したトナー用バインダー組成物及びトナーが提案されている(例えば、特許文献12〜特許文献16参照)。
【0009】
また、分子量と樹脂酸価が異なる2種類のビニル系樹脂をブレンドしたトナー用バインダー組成物を用いたトナーもある(例えば、特許文献17参照)。
【0010】
また、トナーの結着樹脂において、カルボキシル基含有ビニル共重合体とエポキシ基含有ビニル共重合体に金属化合物を反応させて架橋させるということも提案されている(例えば、特許文献18〜特許文献21参照)。
【0011】
また、トナーの結着樹脂において、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ樹脂が反応し架橋構造を形成するということが提案されている(例えば、特許文献22及び特許文献23参照)。
【0012】
また、グリシジル基含有樹脂を架橋剤として用い、カルボキシル基含有樹脂より構成される樹脂組成物において、分子量分布、粘弾性、ゲル分、酸価、エポキシ価などを制御し、定着性や耐オフセット性等を改良したトナー用バインダー組成物及びこのようなバインダー組成物を含有するトナーが開示されている(例えば、特許文献23〜特許文献37参照)。
【0013】
以上述べてきたこれらの提案は、耐オフセット性を向上させるという点で、一長一短はあるものの、優れた効果が得られることは事実であるが、その他のトナー構成成分との相溶性が悪化しやすくなるために、高速プリント時や長期耐久後などの過酷な条件では、トナーの帯電分布がブロードとなり、画像品質上の問題を引き起こすことがあった。
【0014】
一方、トナー中に含まれる離型剤を改良することにより、低温定着性と耐オフセット性の両立を図る改良がなされている。例えば、トナー粒子中にアルコール成分を含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献38〜特許文献42参照)。これらのアルコール成分は、トナーの耐オフセット性を向上させる効果は認められるものの、トナーの現像性を低下させる場合があった。
【0015】
また、各種部材材料と極性の異なるワックスをトナーに添加し、定着時に定着ローラー等の部材とトナーの離型性を高めるため、極性を持ったワックスが使用されている。このような技術の例として、トナー粒子中に低分子量ポリオレフィン系ポリオールを含有させる方法がある(例えば、特許文献43参照)。このようなワックスはトナーの離型性には効果を与えるものの、耐ブロッキング性や高温での耐オフセット性が不十分となる場合があった。
【0016】
また、トナー粒子中にポリグリセリン部分エステル化物を含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献44〜特許文献47参照)。このようなポリグリセリン化合物を添加することによっても、目標とする高速機において未だ十分な定着性と耐オフセット性を満足するには至っていない。
【0017】
更には、ある程度の極性基を分子中にもったワックスを用いるトナーも提案されている(例えば、特許文献48及び特許文献49参照)。
【0018】
しかしながら、このようなワックスを用いただけでは、低温定着性と耐高温オフセット性の幅を広げることは可能となったが、現像性と耐久性を高度に満足することはできず、未だ不十分であった。
【0019】
【特許文献1】
特公昭51−23354号公報
【特許文献2】
特開昭55−90509号公報
【特許文献3】
特開昭57−178249号公報
【特許文献4】
特開昭57−178250号公報
【特許文献5】
特開昭60−4946号公報
【特許文献6】
特開昭61−110155号公報
【特許文献7】
特開昭61−110156号公報
【特許文献8】
特開昭63−214760号公報
【特許文献9】
特開昭63−217362号公報
【特許文献10】
特開昭63−217363号公報
【特許文献11】
特開昭63−217364号公報
【特許文献12】
特開平2−168264号公報
【特許文献13】
特開平2−235069号公報
【特許文献14】
特開平5−173363号公報
【特許文献15】
特開平5−173366号公報
【特許文献16】
特開平5−241371号公報
【特許文献17】
特開昭62−9256号公報
【特許文献18】
特開平3−63661号公報
【特許文献19】
特開平3−63662号公報
【特許文献20】
特開平3−63663号公報
【特許文献21】
特開平3−118552号公報
【特許文献22】
特開平7−225491号公報
【特許文献23】
特開平8−44107号公報
【特許文献24】
特開昭62−194260号公報
【特許文献25】
特開平6−11890号公報
【特許文献26】
特開平6−222612号公報
【特許文献27】
特開平7−20654号公報
【特許文献28】
特開平9−185182号公報
【特許文献29】
特開平9−244295号公報
【特許文献30】
特開平9−319410号公報
【特許文献31】
特開平10−87837号公報
【特許文献32】
特開平10−90943号公報
【特許文献33】
特開平11−43535号公報
【特許文献34】
特開平11−282198号公報
【特許文献35】
特開2001−188383号公報
【特許文献36】
特開2002−148864号公報
【特許文献37】
特開2002−189316号公報
【特許文献38】
特開昭63−113558号公報
【特許文献39】
特開昭63−188158号公報
【特許文献40】
特開平2−134648号公報
【特許文献41】
特開平4−97162号公報
【特許文献42】
特開平4−97163号公報
【特許文献43】
特開平1−109359号公報
【特許文献44】
特開平4−184350号公報
【特許文献45】
特開平4−194947号公報
【特許文献46】
特開平4−194946号公報
【特許文献47】
特開平4−194948号公報
【特許文献48】
特開2000−267347号公報
【特許文献49】
特開2001−343781号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、高速機において現像耐久性、定着性、耐オフセット性に優れたトナーを提供することを課題とする。
【0021】
また、本発明は、高温下で保存していてもブロッキングを起こさず、良好な画像濃度を得られるトナーを提供することを課題とする。
【0022】
更に、本発明は、高温下で高速印字を行った際にも、現像剤担持体にトナー融着を起こさないトナーを提供することを課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂とワックスとを含有するトナーであって、
テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量8,000〜30,000の範囲に唯一つの極大値を有し、且つZ平均分子量(Mz)が1,000,000〜10,000,000であり、
前記結着樹脂が、下記式(B)で表される部分構造を分子中に含むビニル系樹脂を少なくとも含有し、且つ1〜30質量%のTHF不溶分を有し、
【0024】
【化2】
前記ワックスは、水酸基価(Hv)が5〜150mgKOH/gであり、エステル価(Ev)が1〜50mgKOH/gであり、下記式(1)の関係を満足することを特徴とするトナーに関する。
【0025】
【数2】
Hv > Ev (1)
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂とワックスとを含有し、結着樹脂が下記式(B)で表される部分構造を分子中に含むビニル系樹脂を少なくとも含有し、且つ1〜30質量%のTHF不溶分を有する。
【0027】
【化3】
また、本発明のトナーに含有されるワックスは、水酸基価(Hv)が5〜150mgKOH/gであり、エステル価(Ev)が1〜50mgKOH/gであり、下記式(1)の関係を満足する。
【0028】
【数3】
Hv > Ev (1)
【0029】
本発明者らは、上記構成のトナーを画像形成方法に用いることにより、低温定着性と耐高温オフセット性の両立を図ることができ、また高速プリント・高度な耐久使用によっても、良好な現像性及び耐久性を達成でき、またかぶりのない鮮明な画像が得られることを見出した。
【0030】
更に、本発明のトナーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量8,000〜30,000の範囲に唯一つの極大値を有し、且つZ平均分子量(Mz)が1,000,000〜10,000,000である。トナーのTHF可溶分のGPCにより測定される重量平均分子量及び数平均分子量をこのような特定の値としたときに、上記の効果を向上させることができる。
【0031】
また、このような本発明のトナーにおいて、ワックスが適度な酸価やDSC融点を有する時、また、水酸基価とエステル価、又は水酸基価と酸価が特定の関係にある時、低温定着性と耐高温オフセット性の範囲幅の拡大を図ることができ、且つ良好な現像性及び耐久性を達成できることを明らかにした。
【0032】
本発明における効果発現の理由について以下に述べる。
【0033】
すなわち、本発明のトナーに用いられる結着樹脂中に上記式(B)で表される部分構造が高分子中に存在し、トナーが特定の分子量ピークを有し且つ結着樹脂中のTHF不溶分量に示されるようにゲル成分をある程度含有し、さらにZ平均分子量が上記範囲を示すような超高分子量成分を含有していることで、高度な定着性能と耐オフセット性を確保しつつ、官能基を有するワックスを微分散させることができるために、トナーの安定した帯電性能を得ることができる。また、トナーに含有される結着樹脂の物性を上記のように調整することで、トナー中におけるワックス成分の遊離・ブルーミングが抑制されるために、トナー接触部材への付着や融着を防止することが可能となる。
【0034】
上記式(B)で表される部分構造中には、水酸基が含まれるために、後で述べる特定のエステル価や水酸基価を有するワックスを有効にトナー中に分散させることができるようになり、且つこのような部分構造を介して結着樹脂が架橋剤と架橋結合し、強靭な構造を作ることで、耐オフセット性を向上させることが可能となったのである。
【0035】
結着樹脂において、上記式(B)で表される部分構造を有する分子構造を得る手段としては、予め樹脂重合時に上記部分構造を有する単量体を用いて重合することも可能であるが、有効な架橋構造を得るということでは、カルボキシル基とエポキシ基の反応を利用することが好ましい。この反応は、予めこれらの官能基を含む単量体を重合して熱架橋することも可能であるし、カルボキシル基を含有した重合体と、エポキシ基を含有した重合体とを各々重合し、加熱架橋反応を行うことでも得ることができる。
【0036】
本発明のトナーは、THF可溶分のGPCにより測定される分子量分布において、分子量8,000〜30,000、好ましくは、10,000〜25,000、さらに好ましくは、10,000〜20,000の範囲に唯一つの極大値を有し、且つZ平均分子量(Mz)が1,000,000〜10,000,000、好ましくは、1,500,000〜8,000,000、さらに好ましくは、1,500,000〜5,000,000である。また、本発明に用いる結着樹脂は1〜30質量%のTHF不溶分を有している。トナーの分子量分布を上記範囲とするためには、元々このような分子量分布を有する結着樹脂を用いてもよいが、トナー化したときに架橋反応が生じることにより、該分子量分布が得られるようになることが、他の原材料を微分散させる上で好ましい。
【0037】
トナーの分子量極大値が8,000未満である場合には、粘弾性が極端に低くなった成分がトナー中に多く含有されることになってしまうために、耐オフセット性が損なわれるばかりか、トナー搬送部材・トナー担持体などの接触部材にトナーが融着してしまい、不具合を生じる。更に、樹脂の粘度が低くなりすぎるために、他のトナー原材料、特にワックス成分がトナー中に分散され難くなるために、ワックス遊離・ブルーミングが生じて、帯電性を不均一化しやすくしたり、保存性に悪影響を与えてしまう。また、分子量極大値が30,000を越える場合には定着性が著しく損なわれる。
【0038】
また、この領域以外に更に分子量極大値を持つような場合は、結着樹脂が定着阻害成分となるか、融着助長成分となってしまうために、高度な定着性・現像耐久性を達成することが困難となる。
【0039】
Z平均分子量(Mz)は、分子量分布の超高分子量成分への裾野の拡がりを示す指標となるが、Mzが1,000,000以上であることで本発明の唯一つのピーク分子量からの高分子側への拡がりがあり、結着樹脂が強靭な構造を持つことを示すのである。
【0040】
Mzが1,000,000未満では、強靭な構造を形成する高分子成分の存在量が足りず、十分な耐高温オフセット性を得ることができず、また、トナーの機械的な強度も満たされないために、トナーの変形や、トナーへの外添剤の埋め込み等が起こりやすくなり、高速・高耐久使用時での現像性が損なわれることがある。
【0041】
一方、Mzが10,000,000を越えると、極端に熱的なモビリティが少ない成分を結着樹脂が含有することとなり、定着性に悪影響を与えたり、トナー作製時に極端に粉砕され難い成分となるために、粉砕性の極度な悪化を招き、生産性が悪化するばかりでなく、遊離成分を生じやすくなり、かぶり等の画像弊害を起こしやすくなったりする。
【0042】
また、上述したように、本発明に用いる結着樹脂は1〜30質量%のTHF不溶分を有している。このTHF不溶分の含有量は2〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。THF不溶分が1質量%未満である時には、結着樹脂中の架橋構造が十分形成されておらず、耐高温オフセット性能を満足できなくなってしまうばかりでなく、トナーの堅牢性を損なうために、耐久現像性の低下をもたらす。また、THF不溶分が30質量%を越える時には、定着性が悪化したり、硬い成分が局所的に存在することで、感光体等の部材を傷つけるなどの弊害をもたらしたりすることがある。
【0043】
結着樹脂中のTHF不溶分の含有量を上記範囲に調整する方法としては、結着樹脂の架橋密度を調節することが挙げられる。具体的には、架橋剤量を増減する、架橋剤の架橋点濃度を調整する、架橋反応の進行を制御する、等の方法を用いることができる。
【0044】
また、該トナー中のTHF可溶分のGPCにより測定される分子量分布において、数平均分子量(Mn)が1,000〜40,000であり、重量平均分子量(Mw)が10,000〜10,000,000であることが好ましい。このMnは2,000〜35,000であることがより好ましく、Mwは20,000〜5,000,000であることがより好ましい。また、Mw/Mnの値が、10≦Mw/Mn≦300の範囲であることが好ましい。
【0045】
結着樹脂のMw及びMnを上記範囲に調整する方法としては、各重合体の分子量を重合条件(開始剤濃度・溶剤濃度など)により調節する方法や架橋結合の制御によりTHF可溶分の分子量を調整する方法などを用いることができる。
【0046】
Mn、Mwが上記範囲内にあることにより、定着性に寄与すべき低分子量成分が多く存在することを示し、有効な低温定着性が発揮されやすい。また、Mw/Mnが上記範囲であることは、幅広い分子量分布を有することで、定着性と耐高温オフセット性の温度領域を拡大させることができるのに加え、さらにトナーに堅牢性を与え、耐久時の現像性を良好に保つことを可能にすることができる場合があり、また、トナーの高温時の弾性を保つことができるようになるため、トナー化混練時のワックス等の成分を有効に分散することが可能となるため、均一でシャープな帯電性を得やすくなり、好ましい。
【0047】
Mnが1,000未満であると、トナー接触部材へのトナーの融着が発生しやすくなる場合がある。また、Mnが40,000を越えると、定着性に寄与すべき分子量領域の成分が少なくなり、定着性が悪化しやすくなるため、好ましくない。
【0048】
Mwが10,000未満であると、トナーの堅牢性に欠けることとなりやすく、耐久的な使用時において現像性の低下が見られたり、トナー接触部材へのトナーの融着が見られるようになり、画像濃度の低下等の弊害を生じる場合がある。また、Mwが10,000,000を越えると、定着性を悪化させる可能性がある。
【0049】
本発明において、トナー及び原料樹脂のTHFを溶媒としたGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
【0050】
〈GPCによる分子量分布の測定〉
40℃のヒートチャンバー中でGPCカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製あるいは、昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKguard columnの組み合わせを挙げることができる。
【0051】
また、試料は以下の様にして作製する。
【0052】
試料をTHF中に入れ、数時間後放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時試料のTHF中での放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などが使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0053】
本発明において、トナー中の結着樹脂成分のTHF不溶分及び原料結着樹脂のTHF不溶分は以下のようにして測定される。
【0054】
〈THF不溶分の測定〉
トナー又は結着樹脂1.0〜2.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙社製No.86R)を入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて10時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分溶液をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の焼却残灰分の重さを求める(W3g)。
【0055】
焼却残灰分は以下の手順で求める。あらかじめ精秤した30mlの磁性るつぼに約2.0gの試料を入れ精秤し、試料の質量(Wa)gを精秤する。るつぼを電気炉に入れ約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケータ中に1時間以上放冷し、るつぼの質量を精秤する。ここから、焼却残灰分(Wb)gを求める。得られた焼却残灰分より、下記式を用いて焼却残灰分含有率を求める。
【0056】
【数4】
(Wb/Wa)×100 = 焼却残灰分含有率(質量%)
【0057】
この含有率から試料中の焼却残灰分の質量(W3g)が求められる。THF不溶分は下記式から求められる。
【0058】
【数5】
THF不溶分 = (W1−(W3+W2))/(W1−W3)×100(%)
【0059】
なお、トナー中のTHF不溶分は、実質的には結着樹脂中のTHF不溶分にほぼ等しいので、トナー中のTHF不溶分を結着樹脂中のTHF不溶分と見なすことが可能である。
【0060】
本発明において、トナーは、上記式(B)で表される部分構造を分子中に含むビニル系樹脂を結着樹脂として含有する。
【0061】
特に、このような部分結合を含むビニル系樹脂が、下記式(B)で表される部分構造を含むことが、トナー中でのワックスの分散性の向上、及び架橋結合による樹脂の強靱化のために好ましい。
【0062】
【化4】
【0063】
上記式(B)で表される部分構造を含むビニル系樹脂は、カルボキシル基を有するビニル樹脂(以下、「カルボキシル基含有ビニル樹脂」という)とエポキシ基を有するビニル樹脂(以下、「エポキシ基含有ビニル樹脂」という)を反応させることにより、得ることができる。
【0064】
上記、カルボキシル基含有ビニル樹脂を構成するカルボキシル基を有するモノマーとして以下のものが挙げられる。
【0065】
例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、チグリン酸及びアンゲリカ酸などの不飽和モノカルボン酸、及びこれらのα−あるいはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和ジカルボン酸、そのモノエステル誘導体、無水物及びα−あるいはβ−アルキル誘導体などが挙げられる。
【0066】
このようなカルボキシル基を有するモノマー単独又は2種以上と、他のビニル系モノマーとを、公知の重合方法により共重合させることにより、本発明で用いるカルボキシル基含有ビニル樹脂を得ることができる。
【0067】
カルボキシル基含有ビニル樹脂の酸価は、1.0〜60mgKOH/gが好ましい。1.0mgKOH/g未満の場合には、カルボキシル基とエポキシ基との架橋反応部位が少なくなるため、本発明の分子構造が少なくなり、本発明のような特定の水酸基価及びエステル価を有するワックスを樹脂中に有効に分散させることが難しくなる場合がある。また、60mgKOH/gを超える場合には、トナー粒子の吸湿性が強くなり、画像濃度が低下し、カブリが増加する傾向がある。
【0068】
カルボキシル基含有ビニル樹脂の数平均分子量は、良好な定着性や現像性を達成するために、1,000〜40,000が好ましく、重量平均分子量は、良好な耐オフセット性、耐ブロッキング性や耐久性を達成するために、10,000〜10,000,000が好ましい。
【0069】
カルボキシル基含有ビニル樹脂の合成方法としては、公知の方法を用いることができる。しかしながら、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくいという問題点がある。その点、溶液重合法では、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで低分子量重合体を温和な条件で容易に得ることができ、カルボキシル基含有ビニル樹脂中の低分子量成分を得るには好ましい。
【0070】
溶液重合で用いる溶媒として、キシレン、トルエン、クメン、酢酸セロソルブ、イソプロピルアルコール又はベンゼンが用いられる。スチレンモノマーを使用する場合、キシレン、トルエン又はクメンが好ましい。重合するポリマーによって溶媒は適宜選択される。反応温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、重合するポリマーによって異なるが、通常70〜230℃で行うのが良い。溶液重合においては、溶媒100質量部に対してモノマー30〜400質量部で行うのが好ましい。
【0071】
更に、重合終了時に溶液中で他の重合体を混合することも好ましく、数種の重合体を混合できる。
【0072】
本発明で用いられるエポキシ基含有ビニル樹脂中のエポキシ基とは、酸素原子が同一分子内の2原子の炭素と結合している官能基のことであり、環状エーテル構造を有するものである。
【0073】
エポキシ基含有ビニル樹脂を構成するエポキシ基を有するモノマーとして以下のものが挙げられる。
【0074】
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、アリルβ−メチルグリシジルエーテル等が挙げられる。また、下記一般式(C)で表されるグリシジルモノマーが好ましく用いられる。
【0075】
【化5】
[一般式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す。]
【0076】
このようなエポキシ基を有するモノマー単独又は2種以上と、ビニル系モノマーとを、公知の重合方法により共重合させることにより、エポキシ基を有するビニル樹脂を得ることができる。
【0077】
エポキシ基含有ビニル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは2,000〜50,000、更に好ましくは3,000〜40,000であることが良い。Mwが2,000未満の場合、結着樹脂中の架橋構造が不完全になりやすく混練工程によっての分子の切断が多く、耐久性を悪化させる。Mwが100,000を超える場合には、定着性に影響を及ぼす様になる。
【0078】
また、本発明で用いるエポキシ基含有ビニル樹脂は、エポキシ価(「エポキシ当量」ともいう)が0.05〜5.0eq/kgであることが好ましい。0.05eq/kg未満の場合、架橋反応が進行しにくく、高分子量成分やTHF不溶分の生成量が少なく、耐オフセット性やトナーの強靭性が小さくなる。5.0eq/kgを超える場合、架橋反応は起こりやすい反面、混練工程において分子切断が多く、耐オフセット性の効果が半減する。
【0079】
本発明のエポキシ基含有ビニル樹脂は、カルボキシル基含有ビニル樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、エポキシ基が0.01〜10.0当量、好ましくは0.03〜5.0当量の混合比で用いられることが好ましい。
【0080】
エポキシ基が0.01当量未満の場合、結着樹脂中において、架橋点が少なくなり、耐オフセット性などの架橋反応による効果が発現しにくくなる。また、10当量を超えると、架橋反応は起こりやすくなる反面、過剰のTHF不溶分の生成などにより、分散性の悪化などが生じ、粉砕性の悪化、現像の安定性に問題が出てくる。
【0081】
エポキシ基含有ビニル樹脂のエポキシ価は、以下の方法により求める。
【0082】
〈エポキシ価の測定〉
基本操作はJIS K−7236に準ずる。
【0083】
(1)試料を0.5〜2.0(g)を精秤し、その重さをW(g)とする。
【0084】
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、クロロホルム10ml及び酢酸20mlに溶解する。
【0085】
この溶液に、臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液10mlを加える。0.1mol/lの過塩素酸酢酸溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用い、自動滴定が利用できる。)この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時の過塩素酸酢酸溶液の使用量をB(ml)とする。
【0086】
次式によりエポキシ価を計算する。fは過塩素酸酢酸溶液のファクターである。
【0087】
【数6】
エポキシ価(eq/kg) = 0.1×f×(S−B)/W
【0088】
また、本発明において、カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂を樹脂製造時において、予め反応させたものを使用しても良い。反応手段としては、(1)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂を溶液状態で混合し、反応釜内で熱を加えることにより架橋反応を起こさせる、また、(2)カルボキシル基を有するビニル樹脂とエポキシ基を有するビニル樹脂をそれぞれ反応釜から取り出し、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドを行い、2軸押し出し機等で熱溶融混練することにより、架橋反応を起こさせる、などが挙げられる。
【0089】
上記のカルボキシル基含有ビニル樹脂とエポキシ基含有ビニル樹脂とが反応してなるビニル樹脂を用いる場合、THF不溶分を0.1〜30質量%含有する。THF不溶分が上記範囲である場合、製造工程中の混練工程において、樹脂自体が適度な溶融粘度を有することができるため、材料の均一な分散性を達成することができる。THF不溶分が30質量%を超える場合、樹脂自体の溶融粘度が大きくなり、材料の分散性が悪化してしまうことがある。
【0090】
カルボキシル基含有モノマー及びエポキシ基含有モノマーと共重合させるビニルモノマーは以下のものが挙げられる。
【0091】
例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンのようなスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのようなエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンのような不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルのようなハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルのようなビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−1−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ステアリル、アクリル酸(2−クロルエチル)、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロぺニルケトンのようなビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンのようなN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独で又は2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
【0092】
これらの中でもスチレン系共重合体及びスチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましく、この場合、少なくともスチレン系共重合体成分又はスチレン−アクリル系共重合体成分を65質量%以上含有することが定着性、混合性の点で好ましい。
【0093】
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、その他下記の重合体を添加することも可能である。
【0094】
例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。
【0095】
本発明の該結着樹脂は、後に述べる水酸基価とエステル価をもつワックスを有効にトナー中に分散させるために、酸価を有することが好ましい。特に、本発明の如き、唯一つの分子量ピークを有し、高分子側に分子量の広がりをもつような結着樹脂を有するトナーの場合には、ワックスの効果による定着性・耐オフセット性・耐久性への影響が大きいために、更なるワックスの分散性の厳密な制御が必要となるのである。結着樹脂の酸価(RAv)は、後述するワックスの水酸基価(Hv)との関係において、下記式(2)の関係を満足することが好ましい。
【0096】
【数7】
Hv > 2RAv (2)
【0097】
更に好ましくは、HV/RAV=2.5〜20である。
【0098】
樹脂酸価(RAv)が、ワックスの水酸基価(Hv)の1/2以上であるならば、ワックスが結着樹脂に対して親和性を持ち過ぎるようになるために、ワックスの効果を有効に発揮できず、離型効果が減少し、トナー接触部材への汚染を防止しにくくなることがあり、また、樹脂成分を可塑化してしまう効果が大きくなり、トナーの堅牢性が損なわれて、現像耐久性が損なわれることがある。
【0099】
結着樹脂の酸価は、カルボキシル基含有モノマーの組成比率、カルボキシル基と反応するエポキシ基含有モノマーの組成比率、及び、カルボキシル基とエポキシ基の反応率を適宜選択することにより、調整することができる。
【0100】
本発明において結着樹脂の酸価は、JIS K−0070に準じて測定する。
【0101】
〈酸価の測定〉
(1)試料の粉砕品0.1〜0.2gを精秤し、その重さをW(g)とする。
【0102】
(2)20cc三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液10ccを加え溶解する。
【0103】
(3)指示薬としてフェノールフタレインのアルコール溶液数滴を加える。
【0104】
(4)0.1規定のKOHのアルコール溶液を用いてフラスコ内の溶液をビュレットを用いて滴定する。この時のKOH溶液の量をS(ml)とする。同時にブランクテストをし、この時のKOH溶液の量をB(ml)とする。
【0105】
(5)下記式により酸価を計算する。
【0106】
【数8】
酸価 = (S―B)×f×5.61/W
(f:KOHのファクター)
【0107】
本発明のトナーに含有されるワックスは水酸基価(Hv)が5〜150mgKOH/gであることを特徴とする。ワックスの水酸基価は好ましくは10〜100mgKOH/gであり、より好ましくは20〜90mgKOH/gである。また、本発明で用いるワックスは、エステル価が1〜50mgKOH/gであることを特徴とする。ワックスのエステル価は、好ましくは1〜30mgKOH/gであり、より好ましくは1〜15mgKOH/gである。
【0108】
本発明で用いられるワックスは、分子中に適度な水酸基やエステル構造を有していることにより、ワックスが水酸基やエステルを含む構造を持つ結着樹脂に対して、均一に分散できるので、適度な可塑効果が得られ、定着性が向上する。更に、均一に分散していることにより、トナーの加熱定着時のワックス溶融時にトナー表面に迅速に染み出しやすくなり、トナーの低温定着性と耐オフセット性が向上するばかりでなく、帯電性能においても、均一でシャープな分布を持ったものが得られやすくなり、かぶりやゴーストといった画像弊害を生じにくい。
【0109】
また、本発明の如き、THF可溶分のGPCにより測定される分子量分布において、唯一つのピーク分子量を持ち、かつ、Mzが非常に大きいような結着樹脂成分に対して、上記のような樹脂と相互作用を持つようなワックスが分散していることにより、堅牢な結着樹脂成分と、その骨格中に微分散しているワックスの可塑効果がより強調されることになり、相乗的な効果が得られることとなった。
【0110】
ワックスの水酸基価が5mgKOH/g未満だと、ワックスの分散不良により可塑効果が得られず、トナーの定着性と耐オフセット性が低下したり、上記に述べた帯電性能に対する効果が得られにくくなる。また、ワックスの水酸基価が150mgKOH/gより大きいと、ワックスが樹脂中に溶解してしまい、可塑効果は得られるが、離型効果が得られなくなり、更にはトナーの耐久性の低下を生じることがある。
【0111】
ワックスのエステル価が1mgKOH/g未満だと、結着樹脂中の上記構造に対する親和性が得られにくくなり、トナーの定着性に対するワックスの効果やワックスの分散性が低下することがある。また、ワックスのエステル価が50mgKOH/gより大きいと、ワックスの結着樹脂に対する親和性が高くなりすぎ、トナーの堅牢性が損なわれるようになり、耐久性が得られにくくなる。
【0112】
また、本発明におけるワックスは、水酸基価(Hv)とエステル価(Ev)を適度に有し、且つ下記式(1)で表される関係を満足する。
【0113】
【数9】
Hv > Ev (1)
【0114】
これら水酸基価及びエステル価は、下記式(3)の関係を満足することが好ましい。
【0115】
【数10】
Hv > 2Ev (2)
【0116】
より好ましくは、Hv/Ev=2.5〜20である。
【0117】
本発明におけるワックスが水酸基とエステル構造を同時に有していることで、定着部材とトナー中に均一にワックスが存在するようになり、トナーの定着部材との滑り性を良くし、高温定着時でのオフセット現象を防ぐことができる。ワックスの水酸基価(Hv)がエステル価(Ev)よりも大きいことにより、トナー接触部材への付着・融着を軽減させることができる。ワックス中の水酸基はトナーの滑り性を高めるので、トナー接触部材からのトナーの離型性を高める。また、ワックス中のエステル基は結着樹脂との親和性が高く、且つワックスが水酸基を同時に有していることで、トナー接触部材とトナー中に均一にワックスが存在するようになり、トナーとトナー接触部材との滑り性を良くし、トナー接触部材へのトナー融着を軽減することができる。ワックスのエステル価が水酸基価以上だと、本発明の如き、唯一つのGPCピークを有するような結着樹脂に対しては、親和性が高くなりすぎて、トナーの耐久使用での堅牢さを損なう場合があり、トナーと摩擦接触するトナー搬送部材や担持部材に対して、融着などの不具合を起こすことがある。
【0118】
本発明のワックスは、酸価(AV)が1〜30mgKOH/g(より好ましくは1〜15mgKOH/g、更に好ましくは1〜10mgKOH/g)であることが好ましい。ワックスが酸基を有していることにより、トナーを構成する他の成分との界面接着力が大きくなり、本発明の如き、Mzの大きな結着樹脂に対しても、ワックスがトナーを可塑化する効果が得られやすく、トナーの定着性が向上する。ワックスの酸価が1mgKOH/g未満だと、トナーを構成する他成分との界面接着力が小さくなり、ワックスの遊離が発生しやすく、ワックスの作用が十分に得られない場合がある。また、ワックスの酸価が30mgKOH/gより大きいと、逆に界面接着力が大きくなりすぎ、トナーの可塑化が大きく進み、十分な離型性を保持できなくなる場合がある。
【0119】
また、本発明におけるワックスは、酸価(Av)と水酸基価(Hv)とが下記式(4)の関係を満足することが好ましい。
【0120】
【数11】
Hv > 2Av (4)
【0121】
より好ましくは、Hv/Av=2.5〜20となることである。
【0122】
ワックスの酸基はトナーの他の成分との接着力が高いので、トナー搬送部材・トナー担持部材等に保持されたトナーにもワックス成分が保持される。その結果、トナーとトナー接触部材との界面で効果的にワックスの作用が働くようになる。酸価(Av)が水酸基価(Hv)よりも大きい場合には、ワックスがトナーを可塑化する効果よりも、他のトナー構成成分に対しての界面接着力が大きくなり過ぎて有効な定着性が得られなかったり、ワックスの滑り性が不十分となり、離型性が得られ難くなることがある。また、ワックスが酸基とエステル基を同時に有していることにより、ワックスがトナー中で適度な分散径を有することができ、ワックスの作用を効果的に働かせることができる。酸基又はエステル基のどちらかが欠けると、ワックスのトナー中での分散径が不均一となり、ワックスの作用が十分に働かない場合がある。
【0123】
また、本発明で使用するワックスは、離型作用及び適度にトナー粒子中で微分散された場合の可塑作用に優れるとともに、本発明においては、ワックスの主鎖が炭素の結合(すなわち、メチレン基の長鎖)を有することで酸基、水酸基、エステル基の各置換基が本発明の如き結着樹脂の分子構造に対して作用を与えるために、効果的に定着性と耐オフセット性を向上させることができる。ワックスの主鎖中に他の元素が含まれている場合、例えば、ポリグリセリンのように酸素が含まれたエーテル結合が存在すると、ワックスの持つ作用効果が小さくなり、更には本発明の特徴とする各置換基の機能が妨げられ、好ましい定着性と耐オフセット性を得ることができない。
【0124】
ワックスの水酸基価、エステル価、酸価を調整する方法としては、グラフト化や末端変性などにより導入させる各反応基(水酸基・エステル基・酸基)の反応度や、導入するワックスの分子量を変えることによって調整する、などが挙げられる。
【0125】
本発明におけるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックスをアルコール転化して得られるワックスであることが、所望の特性を得られやすく、ワックスの酸基、水酸基、エステル基の転化率をコントロールしやすいという点で好ましい。
【0126】
脂肪族炭化水素系ワックスとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される数平均分子量(Mn)がポリエチレン換算で100〜3,000、好ましくは200〜2,000、より好ましくは250〜1,000の範囲にある飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。
【0127】
本発明においてワックスの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により次の条件で測定される。
【0128】
〈GPC測定条件〉
装置 :HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 7.8cmI.D×30cm2連(東ソー社製)
検出器:高温用RI
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.05%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min
試料 :0.1%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算をすることによって算出される。
【0129】
上記アルコール転化に供される脂肪族炭化水素ワックスとしては、例えば、(A)エチレン重合法又は石油系炭化水素の熱分解によるオレフィン化法で得られる二重結合を1個以上有する高級脂肪族不飽和炭化水素、(B)石油留分から得られるn−パラフィン混合物、(C)エチレン重合法により得られるポリエチレンワックス、(D)フィッシャートロプシュ合成法により得られる高級脂肪族炭化水素の1種又は2種以上、などが好ましく用いられる。
【0130】
本発明に使用するワックスは、好ましくは下記式(D)〜(H)で表される部分構造を有する炭化水素分子鎖を含むものである。例えば、下記式(D)の部分構造を有する場合とは、二級炭素に水酸基を有する二級アルコールの部分構造を有する分子鎖をワックス分子が有することであり、また下記式(E)で表される部分構造を有する場合とは、エステル結合を有するエステル構造を有する分子鎖をワックス分子が有することである。本発明で用いるワックスは、一つの分子鎖に式(D)及び(E)で表される部分構造の両方を有していてもよい。
【0131】
また、ワックスは、下記式(H)で表されるような、一級炭素に水酸基を有する一級アルコールの部分構造を有する分子鎖を有していても良い。
【0132】
更に、下記式(F)及び(G)で表されるような、一級又は二級の炭素にカルボキシル基を有する酸基の部分構造を有する分子鎖をワックス分子の中に有するものも好ましい。一つの炭化水素鎖に任意の下記部分構造式(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)の構造を有していても良い。
【0133】
【化6】
【0134】
本発明に用いられるワックスの製造例としては、例えば脂肪族炭化水素系ワックスを、ホウ酸及び無水ホウ酸の存在下で、分子状酸素含有ガスで液相酸化することにより得られる。触媒としてはホウ酸と無水ホウ酸の混合物を使用することができる。ホウ酸と無水ホウ酸の混合比(ホウ酸/無水ホウ酸)はmol比で1.0〜2.0好ましくは1.2〜1.7の範囲である。無水ホウ酸の割合が前記範囲より少ないと、ホウ酸の過剰分が凝集減少を引き起こし好ましくない。また、無水ホウ酸の割合が前記範囲より多いと、反応後無水ホウ酸に由来する粉末物質が回収され、また過剰の無水ホウ酸は反応に寄与せず経済的な面からも好ましくない。
【0135】
使用されるホウ酸と無水ホウ酸の添加量は、その混合物をホウ酸に換算して、原料の脂肪族炭化水素1molに対して0.001〜10mol、特に0.1〜1.0molが好ましい。
【0136】
反応系に吹き込む分子状酸素含有ガスとしては酸素、空気、又はそれらを不活性ガスで希釈した広範囲のものが使用可能であるが、酸素濃度が1〜30容量%であるのが好ましく、より好ましくは3〜20容量%である。
【0137】
液相酸化反応は通常溶媒を使用せず、原料の脂肪族炭化水素の溶融状態下で行われる。反応温度は120〜280℃、好ましくは150〜250℃である。反応時間は1〜15時間が好ましい。
【0138】
ホウ酸と無水ホウ酸はあらかじめ混合して反応系に添加するのが好ましい。ホウ酸のみを単独で添加すると、ホウ酸の脱水反応などが起こり好ましくない。また、ホウ酸と無水ホウ酸の混合溶媒の添加温度は100℃〜180℃がよく、好ましくは110〜160℃であり、100℃より低い場合には系内に残存する水分などに起因して、無水ホウ酸の触媒機能が低下するので好ましくない。反応終了後、反応混合物に水を加え、生成したワックスのホウ酸エステルを加水分解後、精製して、所望のワックスが得られる。
【0139】
本発明において、ワックスの酸価、水酸基価、エステル価、ケン化価は以下の方法により求める。基本操作はJ1S K−0070に準じる。
【0140】
〈ワックスの酸価の測定〉
(装置及び器具)
・三角フラスコ(300ml)
・ビュレット(25ml)
・水浴又は熱板
(試薬)
・0.1kmol/m3塩酸
・0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液(標定は、0.1kmol/m3塩酸25mlを全ピペットを用いて三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、中和に要した量からファクターを求める。)
・フェノールフタレイン溶液溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1で混合したもの。これらは、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で中和する。)
【0141】
(測定法)
(a)ワックス1〜20gを三角フラスコに精秤する。
【0142】
(b)溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水浴上でワックスが完全に溶けるまで十分に振り混ぜる。
【0143】
(c)0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときを終点とする。
【0144】
(計算)
下記式によりワックスの酸価を算出する。
【0145】
【数12】
A = 5.611×B×f/S
但し、
A:酸価(mgKOH/g)
B:滴定に用いた0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.1kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
5.611:水酸化カリウムの式量56.11×1/10
【0146】
〈ワックスの水酸基価の測定〉
(装置及び器具)
・メスシリンダー(100ml)
・全量ピペット(5ml)
・平底フラスコ(200ml)
・ グリセリン浴
(試薬)
・アセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜる。)
・フェノールフタレイン溶液
・0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
【0147】
(測定法)
(a)ワックスを0.5〜6.0g平底フラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mlを全量ピペットを用いて加える。
【0148】
(b)フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせる。
【0149】
(c)1時間後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。
【0150】
(d)更に、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール(95)5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
【0151】
(e)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。
【0152】
(f)空試験は、ワックスを入れないで(a)〜(e)を行う。
【0153】
(g)試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加えて溶解する。
【0154】
(計算)
下記式によりワックスの水酸基価を算出する。
【0155】
【数13】
A = [{(B−C)×28.05×f}/S]+D
但し、
A:水酸基価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:ワックスの質量(g)
D:酸価
28.05:水酸化カリウムの式量56.11×1/2
【0156】
〈ワックスのエステル価の測定〉
下記式によりエステル価を算出する。
【0157】
【数14】
(エステル価) = (ケン化価)−(酸価)
【0158】
〈ワックスのケン化価の測定〉
(装置及び器具)
・三角フラスコ(200〜300ml)
・空気冷却器(外径6〜8mm、長さ100cmのガラス管又は環流冷却器で、いずれも三角フラスコの口にすりあわせ接続できるもの)
・水浴、砂浴又は熱板(約80℃の温度に調節できるもの)
・ビュレット(50ml)
・全量ピペット(25ml)
(試薬)
・0.5kmol/m3塩酸
・0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液
・フェノールフタレイン溶液
【0159】
(測定法)
(a)ワックス1.5〜3.0gを三角フラスコに1mgの桁まで精秤する。
【0160】
(b)0.5kmol/m3水酸化カリウムエタノール溶液25mlを全量ピペットを用いて加える。
【0161】
(c)三角フラスコに空気冷却器を取り付け、ときどき内容物を振り混ぜながら30分間水浴、砂浴又は熱板上で穏やかに加熱して反応させる。加熱するときは、環流するエタノールの環が空気冷却器の上端に達しないように加熱温度を調節する。
【0162】
(d)反応が終わった後、直ちに冷却し、内容物が寒天状に固まらないうちに空気冷却器の上から少量の水、又はキシレン:エタノール=1:3混合溶液を吹き付けてその内壁を洗浄した後、空気冷却器を外す。
【0163】
(e)指示薬としてフェノールフタレイン溶液1mlを加えて、0.5kmol/m3塩酸で滴定し、指示薬の薄い紅色が約1分間現れなくなったときを終点とする。
【0164】
(f)空試験は、ワックスを入れないで(a)〜(e)を行う。
【0165】
(g)試料が溶解しにくい場合は、予めキシレン、又はキシレン−エタノール混合溶媒を用いて溶解する。
【0166】
(計算)
下記式によりワックスの水酸基価を算出する。
【0167】
【数15】
A = {(B−C)×28.05×f}/S
但し、
A:ケン化価(mgKOH/g)
B:空試験に用いた0.5kmol/m3塩酸の量(ml)
C:滴定に用いた0.5kmol/m3塩酸の量(ml)
f:0.5kmol/m3塩酸のファクター
S:ワックスの質量(g)
28.05:水酸化カリウムの式量 56.11×1/2
【0168】
本発明においてトナーに含有されているワックスの酸価、水酸基価、エステル価、ケン化価を測定する場合には、ワックスをトナーから分取した後、上記測定方法に準じて測定を行っても良い。
【0169】
また、本発明におけるワックスは、融点が65〜130℃、好ましくは65〜100℃、更に好ましくは65〜90℃であることが好ましい。融点が上記範囲であるワックスをトナーに用いることにより、架橋構造を持つような樹脂においても、ワックスがトナーを可塑化させる効果を更に向上させることができ、分子量ピークが唯一つであることにより高められたトナーの定着性をさらに高めることができる。また、ワックスの融点が上記範囲内であることで、定着部材が過度に加熱された場合にワックスがトナーから染み出し易くなり、本発明の結着樹脂の如く、Mzの大きな樹脂において高められたトナーの耐高温オフセット性をさらに高めることができる。ワックスの融点が65℃未満だと、トナーの耐ブロッキング性が低下する場合がある。融点が130℃を超えると、トナーの定着性能に効果が得られない。
【0170】
本発明において、ワックスの融点は示差熱分析測定装置(DSC測定装置)、DSC−7(パーキンエルマー社製)、DSC−TA(TAインスツルメンツ)、又は、DSC−Q1000(TAインスツルメンツ)を用い、下記の条件にて測定することができる。
【0171】
(ワックスの融点の測定方法)
ASTM D3418に準拠して測定する。
【0172】
試料:0.5〜2mg、好ましくは1mg
測定法:試料をアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いる
温度曲線:昇温I(20℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
降温I(180℃〜10℃、降温速度10℃/min)
昇温II(10℃〜180℃、昇温速度10℃/min)
上記温度曲線において昇温IIで測定される吸熱ピーク温度を融点とする。
【0173】
また、本発明におけるワックスは、25℃における針入度が15以下(好ましくは12以下、より好ましくは10以下)であることが、トナーの帯電性能を高め、高温高湿環境下においてもより高い現像性を得るために好ましい。ワックスの25℃における針入度が15よりも大きいと、トナーの耐ブロッキング性が低下する場合がある。本発明において、ワックスの針入度はJIS K−2235−5.4により求められる。
【0174】
本発明におけるワックスのトナーへの好ましい添加量としては、結着樹脂100質量部に対して0.5〜15質量部、好ましくは1〜15質量部の範囲で用いられる。
【0175】
また、本発明におけるワックスは、120℃における粘度が500mPa・s以下、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下であることが、トナーの溶融粘度を下げ、良好な定着性を達成するという点で好ましい。120℃における粘度が500mPa・sを超えると、トナーの定着性が不十分になる場合がある。本発明において、ワックスの粘度はJIS K−6862−7.2により求められる。
【0176】
また、本発明におけるワックスは、軟化点が65〜140℃、好ましくは70〜120℃、より好ましくは70〜100℃であることが、トナーの良好な定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性を得るという点で好ましい。ワックスの軟化点が65℃よりも低いと、トナーの耐ブロッキング性や耐オフセット性が低下する場合がある。ワックスの軟化点が140℃を超えると、トナーの定着性が不十分になる場合がある。本発明において、ワックスの軟化点はJIS K−2207−6.4により求められる。
【0177】
本発明におけるワックスは、従来技術の説明において述べたものを始めとして、従来よりトナーに一般に用いられる公知のワックスと組み合わせて使用してもよい。例えば、パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体などである。誘導体としては酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が挙げられる。
【0178】
これらの任意のワックスは、結着樹脂100質量部に対して0.2〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜15質量部の範囲で用いられる。
【0179】
本発明のトナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。トナーを負荷電性に制御するものとして下記化合物が挙げられる。
【0180】
例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類などがある。
【0181】
中でも、下記一般式(I)で表されるアゾ系金属錯体が好ましい。
【0182】
【化7】
[式中、Mは配位中心金属を表し、Sc、Ti、V、Cr、Co、Ni、Mn又はFeが挙げられる。Arはアリール基であり、フェニル基又はナフチル基が挙げられ、置換基を有していてもよい。この場合の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のアルコキシ基が挙げられる。X、X'、Y及びY'は−O−、−CO−、−NH−又は−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)である。A+はカウンターイオンを示し、水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又は脂肪族アンモニウム或いはそれらの混合イオンを示す。]
【0183】
上記一般式(I)において、特に、中心金属としてはFeが好ましく、置換基としてはハロゲン、アルキル基又はアニリド基が好ましく、カウンターイオンとしては水素、アルカリ金属、アンモニウム又は脂肪族アンモニウムが好ましい。またカウンターイオンの異なる錯塩の混合物も好ましく用いられる。
【0184】
あるいは下記一般式(J)で表される塩基性有機酸金属錯体も負帯電性を与える荷電制御剤として好ましい。
【0185】
【化8】
【0186】
上記一般式(J)において、特に、中心金属としてはFe、Cr、Si、Zn又はAlが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素、アンモニウム、脂肪族アンモニウムが好ましい。
【0187】
トナーを正荷電性に制御するものとして下記の化合物がある。ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で、或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また下記一般式(K)で表されるモノマーの単重合体又は該一般式(K)で表されるモノマーと前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部又は一部)としての作用をも有する。
【0188】
【化9】
[式中、R1はH又はCH3を示し、R2及びR3は置換又は未置換のアルキル基(好ましくはC1〜C4)を示す。]
【0189】
本発明で用いられる正帯電性の荷電制御剤としては、特に下記一般式(L)で表される化合物が好ましい。
【0190】
【化10】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、又は置換若しくは未置換のアリール基を表し、R7、R8及びR9は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、A-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、リン酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機リン酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオン又はテトラフルオロボレートから選択される陰イオンを示す。]
【0191】
電荷制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法とトナー粒子の外部に外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
【0192】
本発明のトナーは磁性材料をトナー粒子中に含有させ磁性トナーとして使用しうる。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。磁性トナーに使用される磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
【0193】
これらの磁性体は個数平均粒径が0.05〜1.0μmであることが好ましく、更には0.1〜0.5μmのものが好ましい。磁性体はBET比表面積が2〜40m2/g(より好ましくは4〜20m2/g)のものが好ましく用いられる。形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100質量部に対し、20〜200質量部が用いられる。好ましくは結着樹脂100質量部に対し、40〜150質量部が用いられる。
【0194】
個数平均径は、透過電子顕微鏡等により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
【0195】
本発明のトナーに使用し得るその他の着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等が挙げられる。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要充分な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン染料、キサンテン系染料、メチン系染料等が挙げられる。染料は結着樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
【0196】
本発明のトナーは、無機微粉体又は疎水性無機微粉体をトナー粒子に外添して有することが好ましい。例えば、シリカ微粉体、アルミナ微粉体、酸化チタン微粉体又はそれらの疎水化物が挙げられる。それらは、単独あるいは併用して用いることが好ましい。
【0197】
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
【0198】
さらに無機微粉体は疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理するには、無機微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体をシラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時にシリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0199】
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0200】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ30〜1,000mm2/sのものが用いられる。例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが好ましい。
【0201】
シリコーンオイル処理の方法は、シラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合しても良いし、べースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散させた後、べースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去して作製しても良い。
【0202】
上記シリカ微粉体における疎水化処理、更には、オイル処理を酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体に施したものも、シリカ微粉体と同様に好ましい。
【0203】
本発明のトナーは、必要に応じてシリカ微粉体又は酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体以外の添加剤をトナー粒子に外添して有していてもよい。
【0204】
例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ロール定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
【0205】
樹脂微粒子としては、その平均粒径が0.03〜1.0μmのものが好ましい。その樹脂を構成する重合性単量体としては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレンの如きスチレン誘導体;アクリル酸;メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。
【0206】
重合法としては、懸濁重合、乳化重合、ソープフリー重合が挙げられる。より好ましくは、ソープフリー重合によって得られる粒子が良い。
【0207】
その他の微粒子としては、弗素樹脂、ステアリン酸亜鉛、ポリ弗化ビニリデンの如き滑剤(中でもポリ弗化ビニリデンが好ましい);酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウムの如き研磨剤(中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい);酸化チタン、酸化アルミニウムの如き流動性付与剤(中でも特に疎水性のものが好ましい);ケーキング防止剤;カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズの如き導電性付与剤が挙げられる。さらに、トナーと逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いても良い。
【0208】
トナーと混合される樹脂微粒子又は無機微粉体又は疎水性無機微粉体は、トナー100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは0.1〜3質量部)を使用するのが良い。
【0209】
本発明のトナーは、好ましくは重量平均粒径を2.5〜10μmとした場合に十分な効果が発揮され、好ましい。
【0210】
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンター法を用いて行うが、例えばコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いることが可能である。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上の粒径のトナー粒子の体積・個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。それから本発明に係る体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)を算出する。チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
【0211】
本発明のトナーは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像剤に用いられるキャリアとしては、従来知られているものが使用可能である。具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属及びそれらの合金又は酸化物で形成される、平均粒径20〜300μmの粒子がキャリア粒子として使用される。
【0212】
キャリア粒子の表面は、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き物質が付着したもの又は該物質により被覆されているものが好ましい。
【0213】
本発明に係るトナーを作製するには、上述したようなトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いてよく混練し、冷却固化後、機械的な粉砕・分級によってトナー粒子を得る方法が好ましく、他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合トナー製造法;あるいはコア材、シェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいてコア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法;結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥によりトナーを得る方法等が応用出来る。このようにして得られたトナー粒子に更に必要に応じて無機微粉体及び/又は他の所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機により十分混合し、本発明のトナーを製造することができる。
【0214】
トナー製造に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所杜);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0215】
本発明の実施態様の例を以下に列挙する。
【0216】
(1)少なくとも結着樹脂とワックスとを含有するトナーであって、
テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量8,000〜30,000の範囲に唯一つの極大値を有し、且つZ平均分子量(Mz)が1,000,000〜10,000,000であり、
前記結着樹脂が、下記式(B)で表される部分構造を分子中に含むビニル系樹脂を少なくとも含有し、且つ1〜30質量%のTHF不溶分を有し、
【0217】
【化11】
【0218】
前記ワックスは、水酸基価(Hv)が5〜150mgKOH/gであり、エステル価(Ev)が1〜50mgKOH/gであり、下記式(1)の関係を満足することを特徴とするトナー。
【0219】
【数16】
Hv > Ev (1)
【0220】
(2)前記テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布において、数平均分子量(Mn)が1,000〜40,000であることを特徴とする(1)のトナー。
【0221】
(3)前記テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が10,000〜10,000,000であることを特徴とする(1)又は(2)のトナー。
【0222】
(4)前記ワックスの酸価(Av)が1〜30mgKOH/gであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかのトナー。
【0223】
(5)前記ワックスの融点が65〜130℃であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのトナー。
【0224】
(6)前記ワックスが、脂肪族炭化水素系ワックスをアルコール転化して得られたワックスであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのトナー。
【0225】
(7)前記結着樹脂の酸価(RAv)と前記ワックスの水酸基価(Hv)とが、下記式(2)の関係を満足することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかのトナー。
【0226】
【数17】
Hv > 2RAv (2)
【0227】
(8)前記ワックスの水酸基価(Hv)とエステル価(Ev)とが、下記式(3)の関係を満足することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかのトナー。
【0228】
【数18】
Hv > 2Ev (3)
【0229】
(9)前記ワックスの水酸基価(Hv)と酸価(Av)とが、下記式(4)の関係を満足することを特徴とする(4)〜(8)のいずれかのトナー。
【0230】
【数19】
Hv > 2Av (4)
【0231】
(10)前記ワックスが、結着樹脂100質量部に対して0.5〜15質量部の割合でトナーに含有されることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかのトナー。
【0232】
【実施例】
以下、具体的実施例をもって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0233】
まず、実施例に用いられるワックスの合成例を示す。
【0234】
〈ワックス合成例1〉
原料物質として、パラフィンワックス(数平均分子量(Mn)=512)1000gをガラス製の円筒反応器にいれ、窒素ガスを少量(3リットル/分)吹き込みながら、140℃まで昇温した。ホウ酸/無水ホウ酸=1.45(モル比)の混合触媒26.3g(0.41モル)を加えた後、空気(21リットル/分)と窒素(16リットル/分)を吹き込みながら、180℃で2.5時間反応を行った。反応終了後反応混合物に当量の温水(95℃)を加え、反応混合物を加水分解後、静置して上層に分離したワックスを分取し、分取したワックスを水洗いしてワックス1を得た。ワックス1の酸価は9mgKOH/g、水酸基価は66mgKOH/g、エステル価は10mgKOH/g、融点は69.8℃、針入度は7、軟化点は77.0℃、粘度(120℃)は5mPa・s、Mnは442であった。ワックス1の物性を表1に示す。
【0235】
〈ワックス合成例2〉
原材料物質としてフィッシャートロプッシュワックス(Mn=720)1000gを用い、ホウ酸/無水ホウ酸混合触媒の添加量を0.41mol、反応時間を1時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス2(Mn=620)を得た。ワックス2の物性を表1に示す。
【0236】
〈ワックス合成例3〉
原料物質としてポリエチレンワックス(Mn=1620)1000gを用い、ホウ酸/無水ホウ酸混合触媒の添加量を0.22mol、反応時間を1.0時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス3(Mn=1410)を得た。ワックス3の物性を表1に示す。
【0237】
〈ワックス合成例4〉
原料物質としてポリエチレンワックス(Mn=1130)1000gを用い、ホウ酸/無水ホウ酸混合触媒の添加量を0.33mol、反応時間を1.0時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス4(Mn=1010)を得た。ワックス4の物性を表1に示す。
【0238】
〈ワックス合成例5〉
原料物質としてポリプロピレンワックス(Mn=1650)1000gを用い、ホウ酸/無水ホウ酸混合触媒の添加量を0.83mol、反応時間を3.0時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス5(Mn=1550)を得た。ワックス5の物性を表1に示す。
【0239】
〈ワックス合成例6〉
原料物質としてポリエチレンワックス(Mn=800)1000gを用い、ホウ酸/無水ホウ酸混合触媒の添加量を1.5mol、反応時間を2.5時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス6(Mn=690)を得た。ワックス6の物性を表1に示す。
【0240】
〈ワックス合成例7〉
原料物質としてパラフィンワックス(Mn=310)1000gを用い、ホウ酸触媒の添加量を0.44mol、反応時間を2.5時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス7(Mn=280)を得た。ワックス7の物性を表1に示す。
【0241】
〈ワックス合成例8〉
原料物質として酸化型ポリエチレンワックス(Mn=600)1000gを用い、ホウ酸触媒の添加量を0.33mol、反応時間を1.0時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス8(Mn=550)を得た。ワックス8の物性を表1に示す。
【0242】
〈ワックス合成例9〉
原料物質としてポリエチレンワックス(Mn=920)1000gを用い、ホウ酸触媒の添加量を1.50mol、反応時間を2.5時間とした以外は、ワックス合成例1と同様の方法を用いてワックス9(Mn=850)を得た。ワックス9の物性を表1に示す。
【0243】
〈ワックス合成例10〉
熱分解型ポリプロピレンワックス(Mn=3000)400gと無水マレイン酸12gを混合し、195℃で10時間反応させることにより、酸変性したポリプロピレンワックス10(Mn=2750)を得た。ワックス10の物性を表1に示す。
【0244】
【表1】
【0245】
トナー用結着樹脂の製造方法を以下に示す。
【0246】
4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し120℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を高分子量成分A−1とする。
【0247】
〈高分子量成分の製造例A−2〉
高分子成分の製造例A−1において、樹脂成分をスチレン78.6質量部、アクリル酸n−ブチル19.6質量部、アクリル酸0.8質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.8質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−2を得た。
【0248】
〈高分子量成分の製造例A−3〉
高分子成分の製造例A−1において、樹脂成分をスチレン73.2質量部、アクリル酸n−ブチル18.8質量部、アクリル酸8.0質量部、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.8質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−3を得た。
【0249】
〈高分子量成分の製造例A−4〉
高分子成分の製造例A−1において、樹脂成分をスチレン80質量部、アクリル酸n−ブチル20質量部2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン1質量部に代えた以外は、上記製造例A−1と同様の方法を用いて高分子量成分A−4を得た。
【0250】
得られた高分子量成分A−1〜A−4の物性を表2に示す。
【0251】
【表2】
【0252】
〈低分子量成分の製造例B−1〉
・スチレン 79.1質量部
・アクリル酸n−ブチル 19.9質量部
・メタクリル酸 1.0質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 1.4質量部
上記原材料をキシレン200質量部中に4時間かけて滴下した。更に、キシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このようにして得られた樹脂を低分子量成分B−1とする。
【0253】
〈低分子量成分の製造例B−2〉
低分子量成分の製造例B−1において、樹脂成分をスチレン75.4質量部、アクリル酸n−ブチル18.9質量部、アクリル酸5.7質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド5.0質量部に代えた以外は、上記製造例B−1と同様の方法を用いて、低分子量成分B−2を得た。
【0254】
〈低分子量成分の製造例B−3〉
低分子量成分の製造例B−1において、樹脂成分をスチレン80質量部、アクリル酸n−ブチル20質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.0質量部に代えた以外は、上記製造例B−1と同様の方法を用いて低分子量成分B−3を得た。
【0255】
得られた低分子量成分B−1〜B−4の物性を表3に示す。
【0256】
【表3】
【0257】
〈原料樹脂の製造〉
上記のようにして得られた、高分子量成分及び低分子量成分を、キシレン200質量部に対して、表4に示す割合で混合溶解させ、昇温して還流下で12時間、撹拌混合した後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷延・固化後、粉砕して、原料樹脂C−1〜C−4を得た。原料樹脂C1〜C4の物性を表4に示す。
【0258】
【表4】
【0259】
〈エポキシ基を有するビニル樹脂の製造例D−1〉
・スチレン 79.2質量部
・アクリル酸n−ブチル 19.8質量部
・メタクリル酸グリシジル 1質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド 5質量部
4つ口フラスコ内でキシレン200質量部を撹拌しながら容器内を十分に窒素で置換し、120℃に昇温させた後、上記各成分を4時間かけて滴下した。更にキシレン還流下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去した。このように得られた樹脂をエポキシ基含有ビニル樹脂D−1とする。
【0260】
〈エポキシ基を有するビニル樹脂の製造例D−2〉
ビニル樹脂の製造例D−1において、樹脂成分をスチレン72質量部、アクリル酸n−ブチル18質量部、メタクリル酸グリシジル10質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド5質量部に代えた以外は、上記製造製D−1と同様の方法を用いてエポキシ基含有ビニル樹脂D−2を得た。
【0261】
エポキシ基含有ビニル樹脂D−1及びD−2の物性を表5に示す。
【0262】
【表5】
【0263】
〈トナー用結着樹脂の製造例〉
上記各原料樹脂C−1〜C−3とエポキシ基含有ビニル樹脂D−1及びD−2とを、表6に示す割合でヘンシェルミキサーに入れて混合し、この混合物を200℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混合させることにより、カルボキシル基とエポキシ基を反応させた。得られた樹脂を冷延・固化後、粉砕して、トナー用結着樹脂E−1〜E−4を得た。得られた結着樹脂E−1〜E−4の物性を表6に示す。なお、得られた結着樹脂E−1〜E−4はいずれも上記式(B)で表される部分構造を有していた。
【0264】
【表6】
【0265】
〈実施例1〉
・トナー用結着樹脂E−1 100質量部
・球形磁性酸化鉄(平均粒径0.21μm) 95質量部
・ワックス1 5質量部
・鉄アゾ化合物(負荷電制御剤) 2質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで十分に前混合した後、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕した後、得られた粉砕物を風力分級し、重量平均径(D4)が6.9μmの分級粉を得た。
【0266】
この分級粉100質量部に対し、疎水化処理シリカ微粉体1.2質量部を乾式混合外添し、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表7に示す。
【0267】
得られたトナー1について以下の評価を行った。
[プリントアウト試験]
高温高湿(32.5℃・80%RH)・常温常湿(23℃・50%RH)・低温低湿(15℃・10%RH)の各環境下で、市販のレーザービームプリンターLaserJet4200(HP社製)を用い、プロセスカートリッジに700gのトナーを充填し、各環境下に1日放置して湿度と温度をトナーになじませた後、プリントアウト試験を行った。得られた画像を下記の項目について評価した。
【0268】
(1)画像濃度
高温高湿環境(32.5℃・80%RH)・常温常湿(23℃・50%RH)・低温低湿(15℃・10%RH)の各環境において、通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、4,000枚/日で3日間プリントアウトし、初期、2日目4,000枚目、3日目8,000枚目と12,000枚終了時の画像濃度維持により評価した。画像をチェックする時以外は、5%印字率の格子パターンを2枚通紙後2秒間欠するモードで耐久試験を行った。なお、画像濃度は「マクベス反射濃度計」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
【0269】
(2)かぶり
リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、低温低湿(15℃・10%RH)環境下において、1,000枚耐久画出しした後のベタ白をプリント後の転写紙の白色度との比較からカブリを算出した。
【0270】
(3)定着性
定着性は、90g/m2の坪量の複写機用普通紙を用いて、低温低湿環境(15℃・10%RH)でLBPを立ち上げ直後に得られた画像を4.9kPaの圧力をかけ、柔和な薄紙により定着画像を摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を測定し、下記評価基準に従い評価した。なお、画像上のトナーの載り量を5g/m2とした。
【0271】
A:2%未満
B:2〜4%
C:4〜8%
D:8〜12%
E:12%超
【0272】
(4)耐オフセット性
耐オフセット性は、画像面積率約5%のサンプル画像を低温低湿環境(15℃・10%RH)でA5サイズの紙で100枚プリントアウトし、その後A4サイズの紙を通紙し、その時の画像上の汚れの程度を下記評価基準に従い評価した。試験紙として複写機用普通紙(64g/m2)を使用した。
【0273】
A:未発生
B:良く見るとわずかに発生している
C:オフセットはしているが、見た目は気にならない程度
D:明らかにオフセット発生
【0274】
(5)ブロッキング
トナー10gをポリプロピレンなどのカップに量り、表面を平らにならした後、薬包紙をしき、その上に10gの鉄粉キャリアをのせ、50℃環境で5日間放置し、トナーのブロッキング状態を下記評価基準に従い評価した。
【0275】
A:カップを傾けるとトナーがさらさらと流れる。
B:カップを回していると、トナー表面が少しずつ崩れだし、さらさらの粉になる。
C:カップを回しながら外から力を加えるとトナー表面が崩れ、そのうちさらさらと流れ出す。
D:ブロッキング球が発生。先のとがったものでつつくと崩れる。
E:ブロッキング球が発生。つついても崩れにくい。
【0276】
(6)スリーブ融着
高温高湿環境(32.5℃・80%RH)で5%印字率の格子パターンを1枚通紙毎に2秒間欠するモードで12,000枚プリントし、1,000枚毎にスリーブの状態をチェックし、下記評価基準に従ってスリーブへのトナー融着の評価を行った。
【0277】
A:スリーブ融着は発生しない
B:10,000枚以降に僅かにトナー融着が見られるが、画像上には全く影響なし
C:5,000枚以降にスリーブ融着が発生し、画像濃度低下発生
D:5,000枚に達する以前にスリーブ融着が発生し、著しい画像濃度低下が見られた
【0278】
〈実施例2〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス2を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー2を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0279】
〈実施例3〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス3を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー3を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0280】
〈実施例4〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス4を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー4を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0281】
〈実施例5〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス5を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー5を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0282】
〈実施例6〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス6を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー6を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0283】
〈実施例7〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス7を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー7を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0284】
〈実施例8〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス8を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー8を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0285】
〈実施例9〉
実施例1において、トナー用結着樹脂E−1の代わりにトナー用結着樹脂E−2を100質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー9を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0286】
〈実施例10〉
実施例1において、トナー用結着樹脂E−1の代わりにトナー用結着樹脂E−4を100質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー10を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0287】
〈比較例1〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス9を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー11を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0288】
〈比較例2〉
実施例1において、ワックス1の代わりにワックス10を5質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー12を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0289】
〈比較例3〉
実施例7において、トナー用結着樹脂E−1の代わりにトナー用結着樹脂E−3を100質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー13を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0290】
〈比較例4〉
実施例7において、トナー用結着樹脂E−1の代わりに原料樹脂C−4を100質量部用いた以外は同様の方法を用いてトナー14を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0291】
トナー1〜14の物性を表7に、評価結果を表8に、それぞれ示す。
【0292】
【表7】
【0293】
【表8】
【0294】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の部分構造を有するビニル系樹脂を含み且つ特定のTHF不溶分を有する結着樹脂を含有し、水酸基価及びエステル価が特定の範囲であるワックスを含有し、更に特定の分子量分布を有するトナーを用いることにより、低温定着性に優れるとともに、高速印刷時の耐オフセット性を満足することができ、高温下での長期保存に耐え、現像剤担持体へのトナーの融着による画像欠陥を起こさないトナーを得ることができる。
Claims (10)
- 少なくとも結着樹脂とワックスとを含有するトナーであって、
テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量8,000〜30,000の範囲に唯一つの極大値を有し、且つZ平均分子量(Mz)が1,000,000〜10,000,000であり、
前記結着樹脂が、下記式(B)で表される部分構造を分子中に含むビニル系樹脂を少なくとも含有し、且つ1〜30質量%のTHF不溶分を有し、
- 前記テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布において、数平均分子量(Mn)が1,000〜40,000であることを特徴とする、請求項1に記載のトナー。
- 前記テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が10,000〜10,000,000であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のトナー。
- 前記ワックスの酸価(Av)が1〜30mgKOH/gであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記ワックスの融点が65〜130℃であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記ワックスが、脂肪族炭化水素系ワックスをアルコール転化して得られたワックスであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記ワックスが、結着樹脂100質量部に対して0.5〜15質量部の割合でトナーに含有されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のトナー。
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