JP2008102396A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性、耐高温オフセット性に優れ、かつ現像性に優れたトナーを提供することにある。
【解決手段】結着樹脂、ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、該結着樹脂は2種以上の樹脂A及び樹脂Bを含有し、
該樹脂Aは、縮重合系モノマーの存在下でビニル系モノマーを付加重合させ、付加重合反応が終了後に、該縮重合系モノマーを縮重合させて得られる樹脂、または、ビニル系モノマーを付加重合させて得られるビニル系樹脂の存在下で、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる樹脂であり、
該樹脂Bは、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる縮重合樹脂に、ビニル系モノマーを添加、混合して付加重合させることにより得られる樹脂であり、
該樹脂Aの軟化点が該樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低く、該樹脂Aと該樹脂Bが10:90〜60:40の質量比で含有されていることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電印刷法、及びトナージェット法の如き画像形成方法に用いられるトナーに関するものである。
従来、トナー用結着樹脂としてはポリエステル樹脂の如き縮重合樹脂、及びスチレン系樹脂の如きビニル系樹脂が主に使用されている。ポリエステル樹脂は定着性に優れた性能を有しているが、高分子量化が難しく、高温でのオフセット現象を発生しやすい。
そのために、ポリエステル樹脂を架橋し樹脂の溶融粘度を上げ、高温オフセットの改良を行おうとすると、低温定着性を損なうばかりでなく、トナー粒子の製造時の粉砕性が低下したり、粉砕工程での粒度分布がブロードになって分級収率が低下し、生産性が低下するという問題がある。
また、ポリエステル樹脂はワックス成分を均一に分散することが難しく、ワックスの分散不良による現像性の低下も発生し易い。
一方、スチレン系樹脂の如きビニル系樹脂は、トナー粒子の製造時の粉砕性に優れており、高分子量化が容易なため、耐高温オフセット性に優れており、ワックスの分散性に関してもポリエステル樹脂と比較すると均一に分散させやすい利点を持っている。しかしながら、定着性を向上させるために低分子量化や低Tg化を行うと、耐ブロッキング性や現像性が低下する傾向がある。
特許文献1には、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂を混合した樹脂を含有してなるトナーが開示されている。しかしながら、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂は本質的に相溶性が悪く、トナーに添加される着色剤やワックスの分散性が不十分なものとなるため、現像性に問題を生じやすくなる。
特許文献2には、反応性ポリエステル樹脂の存在下でビニル系単量体を重合して得られる重合体を含有することを特徴とするトナーが開示されているが、ビニル系単量体に対してポリエステル樹脂の含有量が少なく、定着性の改良の効果が小さい。
特許文献3には、飽和ポリエステル樹脂の存在下でスチレン系単量体とアクリル系単量体を重合して得られる重合体を含有することを特徴とするトナーが開示されている。しかしながら、より優れた定着性、高温オフセット性を得るには、結着樹脂の分子量分布を制御する必要があり、ポリエステル樹脂の存在下でスチレン系単量体とアクリル系単量体を重合するだけでは不十分である。
特許文献4には、不飽和ポリエステル樹脂の存在下でスチレン系単量体とアクリル系単量体を重合して得られる重合体を含有することを特徴とするトナーが開示されている。しかしながら、ビニル系単量体に対してポリエステル樹脂の使用量が99.5:0.5〜91:9と少なく、定着性改良の効果が小さい。
特許文献5には、不飽和ポリエステル樹脂にビニル系モノマーをグラフト重合して得られるグラフトポリマーであり、重量平均分子量が8,000〜20,000であり、温度100℃における溶融粘度が104〜106ポイズであり、ガラス転移温度が50〜75℃であるグラフトポリマーを結着樹脂として用いるトナーについて開示されている。しかしながら、更なる定着性、耐高温オフセット性の向上には、トナーの分子量分布をより精密に制御する必要がある。
特許文献6には、酸基を有するスチレン系樹脂とポリエステル樹脂をエステル化した重合体を含むことを特徴とするトナーが開示されている。これらの方法では、ポリエステル樹脂とビニル系共重合体の相溶性は向上するものの、ゲル成分の含有量や、ゲル成分中に含まれるビニル系樹脂成分の分子量を積極的には制御していない為、定着性と耐高温オフセット性をより高度なレベルで満足させるには問題がある。
トナーのTHF可溶分の分子量分布に関し、特許文献7では、トナーの結着樹脂のTHF可溶分におけるGPCの分子量分布における分子量5万以下を示す成分の光散乱法により測定される重量平均分子量とGPCにより測定される重量平均分子量の関係を規定しているトナーが開示されている。しかしながら、低分子側の分子量を規定するだけでは、低分子量成分と高分子量成分の混合性については考慮されていない。低温定着性と耐高温オフセット性とは相反する一面を有するために、耐高温オフセット性能を維持しながらの低温定着性の改良は、充分とは言えないレベルである。
特許文献8では、分子量2,000〜100,000の領域のトナーの結着樹脂における光散乱法により測定される重量平均分子量と慣性半径の関係を規定したトナーが開示されている。更に、特許文献9では、GPCの分子量2,000〜50,000の領域と分子量100,000以上の領域の成分の光散乱法により測定される重量平均分子量と慣性半径との関係を規定している。しかし、近年の高速化したプリンター及び複写機においてはこれらの分岐度は最適とは言えず、より幅広い温度領域での定着性能を達成できる分岐構造の提案が必要である。また、トナーの製造時における、結着樹脂と着色剤や離型剤や他の材料との分散性を考慮すると、より高分子領域の成分についての分岐構造についても考慮する必要がある。
特許文献10では、結着樹脂の残存モノマー低減の為に、結着樹脂と水を100〜300℃の温度で混合する工程を有するトナー用結着樹脂の製造法について開示されている。また、特許文献11には、離型剤を含有する結着樹脂と水を100〜300℃の温度で混合することを特徴とするトナー用結着樹脂の製造法について開示されている。しかし、これらの方法では低温定着性、耐高温オフセット性を高度なレベルで満足しつつ、クリーニングブレードめくれを改良することは困難であった。
このように、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性、現像性の更なる向上が求められており、より優れたトナーの開発が切望されている。
特開昭54−114245号公報 特開昭56−116043号公報 特開昭58−159546号公報 特開昭58−102246号公報 特開平1−156759号公報 特開平2−881号公報 特開平9−6050号公報 特開平9−146305号公報 特開平9−106102号公報 特開2005−350511号公報 特開2006−154528号公報
低温定着性、耐高温オフセット性が良好であり、現像性に優れたトナーを提供することにある。
さらには、粉砕性に優れ、収率が高くて生産性の良いトナーを提供することにある。
さらには、クリーニングブレードめくれや、クリーニング不良の発生を抑制したトナーを提供することにある。
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、少なくとも結着樹脂、ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
該結着樹脂は少なくとも2種以上の樹脂A及び樹脂Bを含有し、
該樹脂Aは、縮重合系モノマーの存在下でビニル系モノマーを付加重合させ、付加重合反応が終了後に、該縮重合系モノマーを縮重合させて得られる樹脂、または、ビニル系モノマーを付加重合させて得られるビニル系樹脂の存在下で、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる樹脂であり、
該樹脂Bは、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる縮重合樹脂に、ビニル系モノマーを添加、混合して付加重合させることにより得られる樹脂であり、
該樹脂Aの軟化点が該樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低く、
該樹脂Aと該樹脂Bが10:90〜60:40の質量比で含有されていることを特徴とするトナーに関する。
上記目的を達成するため、本出願に係る第2の発明は、樹脂Aの軟化点が80〜120℃であり、樹脂Bの軟化点が100〜150℃であることを特徴とするトナーに関する。
上記目的を達成するため、本出願に係る第3の発明は、樹脂A又は樹脂Bのうち、少なくとも一方は重合工程の途中および/または終了後に、重合物と水とを、100〜300℃で混合する工程を有することを特徴とするトナーに関する。
上記目的を達成するため、本出願に係る第4の発明は、樹脂Aはテトラヒドロフラン不溶分の含有量が5質量%未満であり、樹脂Bはテトラヒドロフラン不溶分の含有量が5質量%以上50質量%以下であることを特徴とするトナーに関する。
上記目的を達成するため、本出願に係る第5の発明は、樹脂A又は樹脂Bのうち、少なくとも一方の樹脂はワックスを含有することを特徴とするトナーに関する。
上記目的を達成するため、本出願に係る第6の発明は、樹脂Bは、不飽和ポリエステル樹脂の存在下でビニル系モノマーを塊状重合することにより得られたハイブリッド樹脂を含有しており、該塊状重合が、不飽和ポリエステル樹脂:ビニル系モノマー=50:50〜90:10の質量比で行われたものであることを特徴とするトナーに関する。
上記目的を達成するため、本出願に係る第7の発明は、トナーは、結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分を3〜50質量%含有し、
該テトラヒドロフラン不溶分は、ハイブリッド樹脂を含有し、
該テトラヒドロフラン不溶分を加水分解し、その後、濾過して濾別される成分のテトラヒドロフラン可溶分が、GPCで測定される分子量分布において、分子量10,000〜1,000,000の範囲にメインピークを有することを特徴とするトナーに関する。
上記目的を達成するため、本出願に係る第8の発明は、トナーは、モノアルコールの含有量が300ppm以下であることを特徴とするトナーに関する。
本発明のトナーは、低温定着性、耐高温オフセット性が良好であり、現像性に優れたトナーである。また本発明のトナーは、トナー粒子の製造時における溶融混練物の粉砕性に優れ、トナー粒子の収率が高くて生産性の良いトナーである。さらに本発明のトナーは、高温環境でのクリーニングブレードめくれや、低温環境でのクリーニング不良の発生を抑制したトナーである。
本発明者らは、軟化点が5℃以上異なる2種以上の樹脂A及び樹脂Bを含有する結着樹脂を使用し、樹脂A及び樹脂Bそれぞれの重合工程を最適化することで、低温定着性、耐高温オフセット性が良好であり、現像性に優れたトナーを得られることを見出した。また、該トナーは、トナー粒子の製造時における溶融混練物の粉砕性に優れ、トナー粒子の収率が高くて生産性の良いトナーであることや、さらには、高温環境でのクリーニングブレードめくれや、低温環境でのクリーニング不良の発生を抑制したトナーを得られることも見出した。
本発明で用いられる樹脂Aは、まずビニル系モノマーを付加重合してビニル系樹脂を得て、そのビニル系樹脂の存在下で縮重合モノマーを縮重合して得られることを特徴とする。一方、本発明で用いられる樹脂Bは、縮重合系モノマーを縮重合して得られる縮重合樹脂の存在下で、ビニル系モノマーを付加重合して得られることを特徴とする。更に樹脂Aの軟化点は樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低く、樹脂Aと樹脂Bが10:90〜60:40の質量比で含有されている。このような重合工程と軟化点の異なる2種類の樹脂を結着樹脂に用いることで、トナー粒子中でのビニル系樹脂と縮重合系樹脂の分散状態を最適化することが可能になり、トナー粒子中の着色剤やワックスの分散状態を改良し、トナーの現像性や耐久性を向上させることが可能になる。また、トナー粒子を製造する際の溶融混練物の粉砕性は、溶融混物中の結着樹脂の分散状態に大きく影響を受けるが、本発明の結着樹脂は、ビニル系樹脂と縮重合系樹脂の分散状態が制御可能なために、トナー粒子の製造時の粉砕性が良好で、粉砕工程での粒度分布もシャープである。このため、分級工程での収率が高く、生産性に優れるトナーを得ることができる。
本発明の、樹脂A及び樹脂Bにおける縮重合系樹脂成分としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル・ポリアミド等が挙げられるが、低温定着性に優れるポリエステルが好ましい。本発明においては、樹脂A及び樹脂Bの50質量%以上がポリエステルユニットであることが、低温定着性を改良する観点から好ましい。
本発明においてポリエステルユニットとはポリエステルに由来する部分を示し、ビニル系重合体ユニットとはビニル系重合体に由来する部分を示す。
本発明において、ハイブリッド樹脂とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル等のカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットと、ポリエステルユニットとがエステル交換反応によって形成されるもの、不飽和ポリエステルの不飽和基とビニル系モノマーとの付加重合により形成されるものが挙げられる。
さらに好ましくは、ビニル系重合体ユニットを幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(又はブロック共重合体)が挙げられる。
本発明の結着樹脂に含有される樹脂Aは、縮重合系樹脂成分と付加重合系樹脂成分とが部分的に化学結合したハイブリッド樹脂を含有することが好ましい。
樹脂Aに用いられるハイブリッド樹脂の製造方法としては、(1)縮重合系モノマーの存在下でビニル系モノマーを付加重合させ、付加重合反応が終了後に、該縮重合系モノマーを縮重合させる方法、(2)ビニル系モノマーを付加重合させて得られるビニル系樹脂の存在下で、縮重合系モノマーを縮重合させる方法、の二つの方法が挙げられる。
(1)の方法では、縮重合系モノマーはビニル系モノマーの重合開始前に添加することが好ましく、縮重合系モノマー及びビニル系モノマーを混合後に付加重合反応を開始するか、もしくは縮重合系モノマーにビニル系モノマーを滴下しながら縮重合系モノマーの存在下で付加重合反応を行うのが好ましい。ビニル系モノマーの付加重合反応が終了後に、縮重合の反応が進行する条件に重合条件を変更する。このとき、付加重合反応中に縮重合反応が一部並行して進行しても構わない。付加重合反応の終了は、ビニル系モノマーの重合率により判断し、重合率が90%に達した時点(好ましくは95%、より好ましくは98%以上)以降に縮重合反応を行う。
(2)の方法では、ビニル系モノマーを溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法等、公知の方法により付加重合を行ない、付加重合反応が終了後に、得られたビニル系樹脂成分に縮重合系モノマーを添加混合して、縮重合反応を開始する。縮重合系モノマーの添加は、付加重合反応後にビニル系樹脂成分物を反応容器から取り出さずに、付加重合反応を行った反応容器に縮重合系モノマーを添加しても良いが、以下理由により、ビニル系樹脂成分を得る反応と、縮重合を行う反応を独立して行う方法がより好ましく用いられる。
本発明の樹脂Aは、50質量%以上のポリエステルユニットを有することが好ましい為、ビニル系樹脂成分を反応容器から取り出さずに縮重合系モノマーを投入する場合、反応容器に半分容量以下のビニル系モノマーを仕込んで付加重合を行い、その後縮重合系モノマーを投入することになり、生産性が低下しやすい。付加重合反応を独立して行い、得られたビニル系樹脂成分と縮重合系モノマーを反応容器に仕込むという手法をとった方が、効率的に生産できる。例えば付加重合反応と縮重合反応を同じスケールの反応容器で行う場合、具体的には、ビニル系樹脂成分と縮重合系樹脂成分の質量比率を20:80とした場合に、付加重合反応を1回行えば、縮重合系反応5回分のビニル系樹脂を得ることができる。こうすることで、付加重合反応の回数を減らすことが出来、樹脂の生産性を高めることができるので、本発明で好ましく用いられる。
本発明で用いられる樹脂Aの軟化点は、樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低いことが必要である。樹脂Aの軟化点を樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低くすることで、トナー製造時の溶融混練工程で樹脂Aと樹脂Bが混ざりやすくなり、より良好なビニル系樹脂と縮重合系樹脂の分散状態を得られる。樹脂Aの軟化点が樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低くないと、トナー粒子製造時の溶融混練物の粉砕性が低下したり、粉砕工程の粉砕物の粒度分布がブロードになって分級収率が低下したりする場合がある。
さらに、樹脂Aの軟化点は、80℃以上120℃未満が好ましく、80℃以上110℃未満がより好ましい。樹脂Aの軟化点がこの範囲にあることで、より優れた低温定着性を得ることができる。軟化点が80℃未満であると現像性が低下しやすく、120℃以上であると低温定着性改良効果が小さい。
さらに、本発明で用いる樹脂Aは、テトラヒドロフラン不溶分の含有量が5質量%以下(好ましくは3質量%以下、より好ましくは0質量%)であることが好ましい。樹脂Aにテトラヒドロフラン不溶分が5質量%より多く含まれると、トナー粒子製造時の粉砕性が低下する可能性がある。
本発明の樹脂Aは、縮重合系樹脂とビニル系樹脂との質量比が50:50〜95:5であることが、低温定着性を改良する観点から好ましい。
本発明で用いる樹脂Aに含まれるビニル系樹脂成分は、GPCによって測定される分子量分布において、分子量20,000未満(好ましくは分子量15,000未満、より好ましくは分子量10,000未満)の範囲にメインピークP1を有することが好ましい。さらには、重量平均分子量Mw1が3,000〜30,000(好ましくは3,000〜20,000、より好ましくは3,000〜10,000)の範囲であることが好ましい。樹脂Aに含まれるビニル系樹脂成分の分子量がこの範囲であると、優れた現像性と低温定着性を両立させながら、トナー粒子製造時の溶融混練物の粉砕性を改良することができる。メインピーク分子量P1が20,000以上であったり、重量平均分子量Mw1が30,000より大きかったりすると、粉砕性が低下しやすい。また、分子量の大きいビニル系樹脂成分の存在下で縮重合を行うことになる為、ビニル系樹脂成分と縮重合系樹脂との分散性が悪化しやすく、ビニル系樹脂成分と縮重合系樹脂成分が分離してしまう可能性がある。重量平均分子量Mw1が3,000より小さいと、トナー粒子製造時の溶融混練物の粉砕工程で、粉砕物の粒度分布がブロードになり、分級で除去しなければならない、粒径の小さな粉砕物が多量に発生してしまう現象(以下、この現象を過粉砕と称す場合もある)が起こりやすく、トナーの生産性が低下しやすい。
樹脂Aに含まれるビニル系樹脂成分の分子量分布は、付加重合反応終了後にサンプル採取することで測定可能である。あるいは、縮重合の終了後に樹脂Aを加水分解して、樹脂中に含まれるビニル系樹脂成分を分離し、測定することも可能である。樹脂を加水分解してビニル系樹脂成分を分離する方法については後述する。
樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は温度50〜75℃であることが好ましい。ガラス転移温度が温度50℃未満であると保存性が悪化しやすく、温度75℃より大きいと低温定着性が悪化しやすい。
さらに、本発明で用いられる樹脂Aに含まれるビニル系樹脂成分は、ガラス転移温度(Tg)が温度−30〜40℃であることも好ましい形態である。本発明の結着樹脂は、樹脂A及び樹脂Bの組合せにより、トナー粒子中でのビニル系樹脂と縮重合系樹脂の分散状態の制御が可能なため、Tgの低いビニル系樹脂成分を含有していても結着樹脂全体のTgが低くならないため、保存性を悪化させずに低温定着性を大幅に改良することが可能になる。樹脂Aに含まれるビニル系樹脂のガラス転移温度を低くする原料モノマーとしては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
一方、本発明の結着樹脂に含有される樹脂Bは、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる縮重合系樹脂に、ビニル系モノマーを添加、混合して付加重合させることにより得られる樹脂であり、縮重合系樹脂成分とビニル系樹脂成分とが部分的に化学結合したハイブリッド樹脂を含有することが好ましい。
具体的には、縮重合系樹脂製造後に、この縮重合系樹脂にビニル系モノマーを反応させて、縮重合系樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する。
本発明で特に好ましく用いられる樹脂Bの製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(i)フマル酸やマレイン酸の如き不飽和ジカルボン酸を縮重合モノマーの一部として使用し、ビニル系モノマーと反応可能な不飽和ポリエステル樹脂を予め重合する。この不飽和ポリエステル樹脂を、キシレン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトンの如き有機溶剤に溶解し、この溶液にビニル系モノマーと重合開始剤を滴下して重合を行う溶液重合法。
(ii)前記溶液重合法と同様にして得られた不飽和ポリエスエテル樹脂と、重合開始剤とをビニル系モノマーに溶解し、不飽和ポリエステル樹脂とビニル系モノマーと重合開始剤との混合物を水中に懸濁して重合を行う懸濁重合法。(不飽和ポリエステル樹脂をビニル系モノマーに溶解させにくい場合には、必要により溶媒を添加することも可能である。この時溶媒としては、沸点が懸濁重合の温度よりも低く、重合中に溶剤が揮発するものが脱溶剤の工程を簡略化できるので好ましい。)
(iii)前記溶液重合法と同様にして得られた不飽和ポリエステル樹脂をビニル系モノマーに溶解し、このポリエステル樹脂とビニル系モノマーの混合物に重合開始剤を添加して重合を行う塊状重合法。
特に本発明では、ビニル系樹脂成分の分子量を大きくすることができ、ゲル成分中に含まれるビニル系樹脂成分のメインピーク分子量を大きくすることが可能になるため、(iii)の塊状重合法が好ましく用いられる。
塊状重合法は、溶液重合法と比較して溶媒の留去の工程が必要ないため、低コストで結着樹脂を得ることができる。更に、塊状重合法で製造された結着樹脂は、懸濁重合法で製造された結着樹脂と比較して、分散剤の如き不純物が少ない為、トナーの摩擦帯電性への影響が少なく、トナーの結着樹脂として非常に好ましい。
本発明で用いる樹脂Bは、不飽和ポリエステル樹脂を有する低分子量ポリエステル樹脂の存在下でビニル系モノマーを、低分子量ポリエステル樹脂:ビニル系モノマー=50:50〜90:10(好ましくは60:40〜80:20)の質量比で塊状重合することにより得られるハイブリッド樹脂であることが好ましい。低分子量ポリエステル樹脂の質量比が50:50よりも少ないと低温定着性が低下しやすく、90:10よりも多いと耐高温オフセット性が低下しやすい。
不飽和ポリエステル樹脂成分、特に好ましくは不飽和線状ポリエステル樹脂成分の存在下でビニル系モノマーを塊状重合することで、分子量が大きくて直鎖性の高いビニル系樹脂成分を主鎖として、低分子量ポリエステル樹脂成分がビニル系樹脂成分から分岐した形の分子構造を持つ、ハイブリッド樹脂成分を得ることが出来る。更に、この分岐構造を持つハイブリッド樹脂成分中の酸基や水酸基が、分子間でエステル化結合することによりゲル成分を形成する。
こうして得られたゲル成分は、構成単位であるハイブリッド樹脂成分の分子構造が規則的であるために、ゲル成分の分子構造も規則的に構成されやすく、熱によるシャープメルト性に優れ、低温定着性を低下させない。さらには、ビニル系モノマーの塊状重合により、ゲル成分の構成単位であるハイブリッド樹脂成分中のビニル系重合体ユニットの分子量を大きくできるのでゲル成分の分子量も大きくなり、高温でも高い粘度を維持でき、耐高温オフセット性を高めることができる。
本発明に用いられる樹脂Bに含まれるビニル系樹脂成分は、GPCによって測定される分子量分布において、分子量10,000〜1,000,000(好ましくは分子量30,000〜500,000、より好ましくは分子量50,000〜300,000)の範囲にメインピークP2を有することが好ましい。さらには、重量平均分子量Mw2が10,000〜5,000,000(好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは30,000〜500,000)の範囲であることが好ましい。樹脂Bに含まれるビニル系樹脂成分の分子量がこの範囲であると、現像性、低温定着性、耐高温オフセット性を高いレベルで満足でき、さらに、トナー粒子製造時の溶融混練物の粉砕性を改良することができる。樹脂Bに含まれるビニル系重合体ユニットの分子量分布は、樹脂成分を加水分解して得られる、ビニル系樹脂成分を分離し、測定することで可能である。樹脂を加水分解してビニル系重合体ユニットを分離する方法については後述する。
本発明に用いられる樹脂Bは、軟化点が100〜150℃、好ましくは100〜140℃であることが、耐高温オフセット性を満足させつつ、トナー粒子製造時の溶融混練物の粉砕性を高める点で好ましい。樹脂Bの軟化点が100℃未満であると耐高温オフセット性が低下する場合があり、150℃より大きいと粉砕性が低下する場合がある。
本発明に用いられる樹脂Bは、テトラヒドロフラン不溶分を5〜50質量%(好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%)含有することが、トナーの現像性、耐高温オフセット性を高めるうえで好ましい。
本発明では、樹脂Bに含まれるビニル系樹脂のピーク分子量P2が、樹脂Aに含まれるビニル系樹脂のピーク分子量P1の3倍以上(好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上)の組合せであることが好ましい。2つの樹脂に含まれるビニル系樹脂のピーク分子量がこの関係にあるときに、非常に優れた現像性、低温定着性、及び耐高温オフセット性を発揮し、かつ、トナー粒子の製造時における溶融混練物の粉砕性に優れ、トナー粒子の収率が高くて生産性の良いトナーを得ることができる。この理由は明確になっていないが、以下のように推測される。
樹脂Aに含まれるビニル系樹脂は分子量が小さく、縮重合系樹脂がほとんど存在しない状態で重合されている為、分子量分布がシャープになりやすい。その結果、ワックスとの親和性が高まり、トナー粒子中でのワックスの分散性を向上させ、現像性を向上させる。また、分子量が低いために、トナー粒子の製造時における溶融混練物の粉砕性を向上させる働きも持つ。一方、樹脂Bに含まれるビニル系樹脂は分子量が大きく、縮重合系樹脂の存在下で重合される為に、分子量分布がブロードになる。その結果、耐高温オフセット性や現像性を向上させる働きをするとともに、トナー粒子の製造時における溶融混練物の粉砕工程で、過粉砕を防ぎ、トナーの生産性を格段に向上させる。
また、ピーク分子量P1とP2が上記の関係にあると、トナー粒子の製造時における溶融混練物の粉砕工程で、分級工程で除去することが難しい2μm以下のトナー微粒子が大量に発生することを抑制することができる。この2μm以下のトナー微粒子がトナー中に多く存在すると、クリーニング不良が発生しやすくなる。2μm以下のトナー微粒子は、感光体に現像されても紙などの転写材に転写されずに、感光体上に残りやすい。また、感光体上に残ったトナー微粒子は粒径が小さい為に、クリーニングブレードで掻き取りにくく、すり抜けやすい。その結果、画像上に縦スジとしてクリーニング不良の現象が発生する。特に低温環境では、クリーニングブレードの弾性が高くなり、感光体とクリーニングブレードの摩擦係数が低下しやすいため、顕著となる。本発明のトナーは、粉砕工程で2μm以下のトナー微粒子の過粉砕を抑制し、トナー粒子中に含まれる2μm以下のトナー微粒子を減少させるので、クリーニング不良を改良できる。
さらに本発明では、異なる製造条件で重合した粘度の異なる樹脂Aと樹脂Bを用いる為、2つの樹脂が混ざりやすい。樹脂Aと樹脂Bは、どちらもビニル系共重合体ユニットを幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体を好ましい構造としているが、製造条件が異なる為に分子の枝分かれ構造も異なる。樹脂Bに含まれるビニル系樹脂は分子量が大きく、枝分かれの分岐点間の分子量も大きい為、樹脂Aの分子量の小さなビニル系樹脂が分子構造内に入り込みやすく、樹脂Aと樹脂Bの混合性が向上する。その結果、着色剤やワックスの分散性が向上し、トナーの摩擦帯電性が向上するので、現像性が改良される。
本発明の結着樹脂は、樹脂Aと樹脂Bが10:90〜60:40(好ましくは10:90〜40:60、より好ましくは20:80〜40:60)の質量比で含有されていることが重要である。この比率で樹脂Aと樹脂Bが含有されていることで、トナー粒子の製造時における溶融混練物の粉砕工程で、過粉砕を抑制しながら優れた粉砕性を発揮することが可能になる。樹脂Aと樹脂Bの質量比が10:90より小さい(樹脂Aが少ない)と粉砕性が低下しやすく、60:40より大きい(樹脂Aが多い)と過粉砕が起こりやすい。
さらに本発明で用いる、樹脂A又は樹脂Bのうち、少なくとも一方、より好ましくは両方が、重合工程の途中および/または終了後に、重合物と水とを、100〜300℃で混合する工程を有することが好ましい。本発明では、ビニル系樹脂のTgを調整する目的で、ビニル系モノマーとして、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルを好ましく用いる。さらには、ビニル系樹脂の酸価を調整するモノマーとして、マレイン酸モノアルキルエステルの如き不飽和ジカルボン酸のモノエステル類も好ましく用いる。これらのモノマー、あるいは重合されてビニル系樹脂分子中に組み込まれたモノマーユニットは、縮重合系のモノマーや樹脂とエステル交換反応を起こし、モノアルコールを発生させる。例えば、アクリル酸ブチルを使用するとブチルアルコール、アクリル酸2−エチルヘキシルを使用すると2−エチルヘキシルアルコール、マレイン酸モノメチルを用いればメチルアルコールが発生する。これらモノアルコールは、ポリエステルのような縮重合樹脂との親和性が高く、樹脂から除去することが難しい。本発明者らが検討した結果、樹脂A及び/又は樹脂Bの重合途中、または重合後、あるいは両方の時点で、100〜300℃で重合物と水と混合することで、これらモノアルコールを効率的に除去できることを見出した。より好ましくは、重合物と水の混合は、重合終了後に行うことが、重合を阻害しないという観点で好ましい。重合物と水とを100〜300℃で混合すると、水は沸騰して蒸発する。このとき、モノアルコールは比較的水との親和性が高い為、水との共沸により効率的に重合物からモノアルコールを除去することが可能になる。
水の混合量は、樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは0.3〜40質量部、より好ましくは0.5〜30質量部である。
重合物と水とを混合する際の温度は、100〜300℃(好ましくは120〜260℃、より好ましくは140〜250℃)が好ましい。水の混合は、重合物を撹拌しながら水を滴下し、重合物の表面及び内部全体に水が広がって、水の蒸発による気泡が発生する方法が、モノアルコールを効率的に除去する点で好ましい。
本発明のトナーは、モノアルコールの含有量が300ppm以下(好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下)であることが好ましい。トナー粒子中に含まれるモノアルコールは、高温環境でトナーに含まれる結着樹脂成分を可塑化する働きを持つ。そのため、トナーが高温環境に置かれると劣化しやすくなり、現像性が低下しやすい。さらには、感光体上の転写残トナーをクリーニングする為のクリーニングブレードと感光体とのニップ部では、感光体とクリーニングブレードとの摺擦により摩擦熱が発生するため、転写残トナー中に含まれるモノアルコールがトナーを軟化して粘着性を高め、感光体とクリーニングブレードの摩擦係数を高くしてしまう。その結果、クリーニングブレードがめくれてしまい、クリーニング不良の原因となるクリーニングブレードめくれと言う現象の原因となりやすい。トナー中のモノアルコールの含有量を300ppm以下とすることで、トナーの劣化やクリーニングブレードめくれを抑制することが可能になる。
本発明に用いられるトナー中のモノアルコールの定量方法については、ヘッドスペース法により測定を行うことができる。
ヘッドスペース用バイアル瓶(容積22ml)にトナーならば500mg、樹脂ならば250mgを精秤し、クリンパーを用いてクリンプキャップとテフロン(登録商標)コーティングされた専用セプタムでシールする。このバイアルをヘッドスペースサンプラーにセットし、以下の条件で分析を行ない、GCチャートを得る。
得られたGCチャートのモノアルコール由来のピーク面積値をデータ処理により算出する。一方、トナーや樹脂を封入していない空のバイアルについても、例えばセプタムから揮発する有機揮発成分などをブランクとして測定する。測定されたブランク値を、前記算出されたモノアルコール由来のピーク面積値から差し引いて補正して、トナーや樹脂に含まれるモノアルコール由来のピーク総面積値を算出する。
ヘッドスペースサンプラー:HEWLETT PACKARD 7694
オーブン温度:120℃
サンプル加熱時間:60分
サンプル ループ(Ni):1ml
ループ温度:170℃
トランスファーライン温度:190℃
加圧時間:0.50分
LOOP FILL TIME:0.01分
LOOP EQ TIME:0.05分
INJECT TIME:1.00分
GCサイクル時間:80分
キャリアーガス:He
GC:HEWLETT PACKARD 6890GC(検出器:FID)
カラム:HP−1(内径0.25μm×30m)
キャリアーガス:He
オーブン:35℃で20分ホールド、20℃/分で300℃まで昇温20分ホールド。
INJ:300℃
DET:320℃
スプリットレス、コンスタントプレッシャー(20psi)モード
次に、120℃にてサンプルを60分加熱した際にトナーや樹脂から揮発するモノアルコールの量をトルエンの質量に換算する。すなわち、バイアル中にトルエンのみを精秤したものを数点(例えば0.1μl、0.5μl、1.0μl)準備し、上記と同様の分析条件にてそれぞれ測定を行って(好ましくはトナーや樹脂のサンプルの測定を行なう前に行う)、バイアル中に添加したトルエンの質量と測定されたGCチャートにおけるトルエンのピーク面積値との検量線を作成する。
該検量線から、トナーや樹脂から揮発するモノアルコールのピーク面積値を、トルエンのピーク面積値とした場合のトルエン質量を求めることで、トナーや樹脂から揮発するモノアルコール成分の総量を、トルエンの質量に換算することができる。
このようにして求められるトナーや樹脂から揮発するモノアルコール成分量を、トルエンの質量に換算した場合の質量を、測定対象としたトナーの質量である500mg、または樹脂の質量である250mgで除することにより、トナー質量や樹脂重量を基準としたトルエン換算のモノアルコール成分量が算出される。
さらに、本発明のトナーは、テトラヒドロフランに不溶な樹脂成分を加水分解し、その後、濾過して濾別される成分(以下、「残留物」と称す場合もある。)のテトラヒドロフラン可溶分が、GPCによって測定される分子量分布において、分子量20,000〜1,000,000(好ましくは分子量30,000〜500,000、より好ましくは分子量50,000〜300,000)の範囲にメインピークを有することが好ましい。テトラヒドロフランに不溶な樹脂成分を加水分解した際、分解される成分はエステル結合によってポリマー化されているポリエステルユニットであり、ビニル系重合体ユニットは分解されずに重合体の状態で残存する。そのため、加水分解後の残留物は、主にビニル系重合体ユニットからなるものであり、残留物のテトラヒドロフラン可溶分とはビニル系重合体ユニットのテトラヒドロフラン可溶分のことである。
また、ポリエステル樹脂と分子量20,000〜1,000,000にメインピークを有するようなビニル系樹脂を単に混合して結着樹脂を製造した場合には、そのようなビニル系樹脂はテトラヒドロフラン可溶分になってしまうため、最初の段階でテトラヒドロフラン不溶分中に含まれなくなり、本発明の好ましい構成とはならない。また、ポリエステル樹脂とテトラヒドロフラン不溶分を含有するビニル系樹脂を単に混合して結着樹脂を製造した場合には、ビニル系樹脂がテトラヒドロフラン不溶分中には残るものの、加水分解後もテトラヒドロフラン不溶分のままであるため、やはり本発明の好ましい構成とはならない。
本発明の好ましい構成を満たすような樹脂成分は、例えば、ポリエステル系樹脂と分子量20,000〜1,000,000の範囲にメインピークを有するビニル系樹脂とをハイブリッド化し、ハイブリッド化されることによってテトラヒドロフラン不溶分になった場合に得られるものである。
よって、残留物のテトラヒドロフラン可溶分が分子量20,000〜1,000,000にメインピークを有するということは、分子量の大きい(即ち、分子量20,000〜1,000,000の領域にメインピークを有する)ビニル系重合体ユニットとポリエステル系ユニットとがハイブリッド化されているということを表す。
即ち、樹脂成分に由来するテトラヒドロフラン不溶分を加水分解し、残留物のテトラヒドロフラン可溶分が、GPCによって測定される分子量分布において、分子量20,000〜1,000,000にメインピークを有するような結着樹脂は、分子量が大きく、架橋点間分子量の大きいゲル構造を有しているものである。架橋点間分子量は、樹脂分子が分岐して架橋構造を形成する際の、分岐点間の分子量である。架橋点間分子量が大きいと分岐点間の距離が長くなる為、分子が網目状にお互いを縛り合う力が弱くなる。その結果、加熱により分子運動しやすい、軟らかいゲル成分を得ることができる。そのため、トナーの結着樹脂として用いた場合には、溶融混練を経てトナー粒子を製造した場合であってもゲル分の切断が生じにくく、良好な耐高温オフセット性が得られるようになる。
このようなテトラヒドロフラン不溶分を含有するトナーは、定着時に少ない熱量でもゲル成分であるテトラヒドロフラン不溶分が分子運動をしやすくなり、架橋点間分子量が小さいゲル成分を含有する場合と比較して結着樹脂が熱で軟化しやすくなるため、低温定着性が向上する。さらに、このようなゲル成分は、高温でも高い粘度を維持することが可能になり、耐高温オフセット性を向上させることができる。また、少量のゲル成分でも耐高温オフセット性を維持できる為に、低分子量成分を多く含有させることが出来、更に低温定着性を改良することも可能となる。
テトラヒドロフラン不溶分を加水分解し、その残留物のテトラヒドロフラン可溶分のメインピーク分子量が20,000未満であると、ゲル成分が硬くなりやすく、低温定着性が低下する。また、架橋点間分子量が小さくなるので、ゲル成分に柔軟性がなくなり、トナー粒子の製造時の混練工程での剪断力によりゲル成分が切れやすくなり、耐高温オフセット性が低下する。メインピーク分子量が1,000,000より大きいと、ゲル成分をトナー粒子中に均一に分散させることが難しくなり、結果、トナー粒子に含有される他の成分の均一な分散性が阻害され、トナーとしての摩擦帯電性が低下する。
樹脂A、樹脂B、及びトナーのテトラヒドロフラン不溶分中に含まれるポリエステルユニットを加水分解した、残留物のテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布は、以下のような手順で測定できる。
まず、トナーから結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分を取り出し、このテトラヒドロフラン不溶分をアルカリ性水溶液中で加熱し、ポリエステル系ユニットを加水分解して取り除く。樹脂A及び樹脂Bの測定では、テトラヒドロフラン不溶分を分離せずに、樹脂を加水分解してポリエステル系ユニットを取り除く。
ビニル系重合体ユニットは加水分解されずに樹脂成分として残留するため、残留物を抽出してGPCにより分子量分布を測定する。具体的な測定法を以下に示す。
(1)トナーのテトラヒドロフラン不溶分の分離
トナーを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28mm(高さ)×10mm(直径)東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてテトラヒドロフラン200mlを用いて、テトラヒドロフラン可溶分を16時間抽出する。このとき、テトラヒドロフランの抽出サイクルが約5分に1回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、円筒ろ紙上のトナーのテトラヒドロフラン不溶分を採取する。
トナーが磁性体を含有する磁性トナーの場合、この採取したテトラヒドロフラン不溶分をビーカーに入れ、テトラヒドロフランを加えてに充分に分散させた後、ビーカー底部に磁石を近づけて磁性体をビーカー底部に沈殿、固定させる。この状態でテトラヒドロフランとテトラヒドロフランに分散されたゲル成分を別の容器に移し替えることで磁性体を取り除き、テトラヒドロフランをエバポレートすることで、結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分を分離する。
(2)加水分解による残留物の分離
(1)で得られた、トナーの結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分、又は樹脂A、又は樹脂Bを2mol/リットルのNaOH水溶液に1質量%の濃度で分散させ、耐圧容器を用いて、温度150℃、24時間の条件で加水分解する。この加水分解液から以下のいずれかの手順で加水分解後の残留物を濾別する。
i)テトラヒドロフラン不溶分がエステル構造を有する成分を含有していない場合:
加水分解液をメンブランフィルターを用いて吸引ろ過して残留物を分離する。これにより、ポリエステル系樹脂ユニットの分解物であるモノマー成分はろ液中に除去される。
ii)テトラヒドロフラン不溶分が、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等のエステル構造を有する成分を含有している場合:
加水分解液中に存在する残留物は、ナトリウム塩(−COO-Na+)となっているため、残留物を濾別した後、残留物を水中に再度分散し、分散後、塩酸を加えて水をpH=2に調整して、残留物の有する−COO-基を−COOHとした。その後、メンブランフィルターでろ過分離した。
(3)上記(2)で分離された成分のGPC測定
上記(2)で分離された成分をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより分子量分布の測定を実施する。
また、トナーの結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分としては、ビニル系重合体ユニットを20〜80質量%(好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%)含有していることが好ましい。トナーの結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分中のビニル系重合体ユニットの含有量は以下のようにして測定することができる。
まず、ハイブリッド樹脂の重合に用いたポリエステル系樹脂成分のモノマー組成と同一のモノマー組成でポリエステル樹脂を重合する。また、同様に、ハイブリッド樹脂の重合に用いたビニル系重合体成分のモノマー組成と同一のモノマー組成でビニル系重合体を重合する。このようにして得られたポリエステル樹脂とビニル系重合体を充分に混合したものを検量線サンプルとする。ポリエステル系樹脂とビニル系重合体を任意の比率で変化させた混合サンプルを数点作製し、IR測定により検量線を作成し、この検量線を用いてテトラヒドロフラン不溶分中のビニル系重合体ユニットの含有量を算出する。
例えば、後述する実施例のハイブリッド樹脂製造例6では、ポリエステルのピークとして、フタル酸ユニットのベンゼン環由来のピーク(約730cm-1)とビスフェノール誘導体ユニットのベンゼン環由来のピーク(約830cm-1)の面積の和をポリエステル樹脂部とし、ビニル系重合体のピークとして、スチレンユニットのベンゼン環由来のピーク(約700cm-1)の面積をビニル系重合体部として、検量線を元にビニル系重合体ユニットの含有量を算出した。
本発明の樹脂Aを製造する際に使用する縮重合系モノマーと付加重合系モノマーの質量比(縮重合系樹脂単量体/付加重合系樹脂単量体)は、55/45〜95/5が好ましく、60/40〜95/5がより好ましく、70/30〜90/10がさらに好ましい。
本発明において、樹脂Aは、縮重合系モノマーと付加重合系モノマーの両方と反応するモノマー(以下、両反応性モノマーという)を構成単位として有していることが好ましい。従って、本発明において、縮重合反応と付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下に、行うことが好ましい。これにより、縮重合系樹脂成分と付加重合系樹脂成分とが部分的に両反応性モノマーを介して結合し、縮重合系樹脂成分中に付加重合系樹脂成分がより微細に、かつ均一に分散した樹脂が得られる。
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。両反応性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1〜3)エステルが挙げられる。特に、反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸が好ましい。
本発明において、両反応性モノマーのうち、官能基を2個以上有するモノマー(ポリカルボン酸等)及びその誘導体は縮重合系モノマーとして、官能基を1個有するモノマー(モノカルボン酸等)及びその誘導体は付加重合系モノマーとして扱う。両反応性モノマーの使用量は、官能基を2個以上有するモノマー及びその誘導体については縮重合系モノマー中、官能基を1個有するモノマー及びその誘導体については付加重合系モノマー中、1〜10モル%が好ましく、4〜8モル%がより好ましい。
本発明の樹脂Bの塊状重合法で得られるハイブリッド樹脂に用いられる不飽和ポリエステル樹脂としては、テトラヒドロフラン可溶分のGPC分子量分布において、分子量2,000〜30,000(好ましくは分子量3,000〜20,000、より好ましくは分子量5,000〜15,000)の範囲にメインピークを有するような低分子量の不飽和ポリエステル樹脂であることが好ましい。さらには、ゲル成分を含まない線状の不飽和ポリエステル樹脂であることが特に好ましい。メインピーク分子量が2,000より小さいと現像性が低下しやすく、30,000より大きいと低温定着性が低下しやすい。
また、本発明の樹脂Bで用いられる不飽和ポリエステル樹脂は、酸価が0.1〜30mgKOH/g(好ましくは1〜20mgKOH/g、より好ましくは1〜10mgKOH/g)であることが好ましく、水酸基価が10〜60mgKOH/g(好ましくは20〜60mgKOH/g、より好ましくは30〜50mgKOH/g)であることが、トナーに良好な摩擦帯電性を付与できるため好ましい。
本発明の樹脂A及び樹脂Bのポリエステルユニットを形成する際に用いることのできるモノマーを以下に例示する。
2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
Figure 2008102396
(式中Rは、エチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
また(B)式で示されるジオール類;
Figure 2008102396
2価の酸成分としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、又はその低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、又はその低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、又はその低級アルキルエステル。
特に、低粘度の飽和ポリエステル樹脂には、アルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、又はその低級アルキルエステルの如きジカルボン酸類及びその誘導体を酸モノマーとして用いることが好ましい。これら酸モノマーは、低粘度の飽和ポリエステル樹脂をハイブリッド樹脂になじみやすくする為、ハイブリッド樹脂で構成されるゲル成分中に低粘度の飽和ポリエステル樹脂が入り込みやすくなる。
また、不飽和ポリエステル樹脂を得る為の不飽和結合を持つ酸成分としては、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、又はその低級アルキルエステルが好ましく用いられる。
これら不飽和ジカルボン酸は、ポリエステルモノマーの全酸成分に対して、0.1〜10mol%(好ましくは0.3〜5mol%、より好ましくは0.5〜3mol%)の割合で用いることが好ましい。この範囲で不飽和ジカルボン酸を添加した場合に、低分子量ポリエステル分子中に占める不飽和結合濃度が適当となり、適度な架橋点間距離を有してポリエステル樹脂とビニル系樹脂とのハイブリッド化が生じる。
また必要に応じて3価以上のアルコール成分や3価以上の酸成分を使用することも可能である。
3価以上の多価アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、以下のものが挙げられる。ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、及びこれらの低級アルキルエステル;次式
Figure 2008102396
(式中Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸、及びこれらの無水物、及びこれらの低級アルキルエステルの如き多価カルボン酸類及びその誘導体。なかでも、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸およびこれらの無水物、低級アルキルエステルが好ましい。
ポリエステル系樹脂においては、アルコール成分が40〜60mol%(より好ましくは45〜55mol%)であり、酸成分が60〜40mol%(より好ましくは55〜45mol%)であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の0.1〜60mol%(より好ましくは0.1〜20mol%)であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂は通常一般に知られている縮重合によって得られる。ポリエステル樹脂の重合反応は通常触媒の存在下温度150〜300℃、好ましくは温度170〜280℃の温度条件下で行われる。また反応は常圧下、減圧下、もしくは加圧下のいずれでも行うことができるが、所定の反応率(例えば30〜90%程度)に到達後は反応系を200mmHg以下、好ましくは25mmHg以下、更に好ましくは10mmHg以下に減圧し、反応を行うのが好ましい。
上記触媒としては、ポリエステル化に用いられる以下の触媒が挙げられる。スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウムの如き金属;これら金属を含有する化合物(ジブチルスズオキサイド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン)。
本発明では、重合反応の制御のしやすさや、ビニル系モノマーとの反応性の高さからチタン化合物が好ましく用いられる。特に好ましいものとしてテトライソプロピルチタネート、シュウ酸チタニル二カリウムが挙げられる。この際、結着樹脂の着色防止として酸化防止剤(特にリン系酸化防止剤)や、反応促進剤として助触媒(マグネシウム化合物が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい)を添加することが特に好ましい。
反応物の性質(例えば酸価、軟化点等)が所定の値に到達した時点、あるいは反応機の攪拌トルクまたは攪拌動力が所定の値に到達した時点で反応を停止させることによって本発明のポリエステル系樹脂を得ることができる。
本発明において、ビニル系樹脂とは、ビニル系ホモポリマーもしくはビニル系コポリマーを意味するものである。
ビニル系樹脂を得る為のモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン,イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合せが好ましい。
さらに、樹脂の酸価を調整するモノマーとして、以下のものが挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸の如きアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水マレイン酸。このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の結着樹脂を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価をコントロールする上で好ましい。
より具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルの如きα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルの如きアルケニルジカルボン酸のモノエステル類;フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル、フタル酸モノブチルエステルの如き芳香族ジカルボン酸のモノエステル類。
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、ビニル系重合体ユニットを合成する際に用いられる全モノマーに対し0.1〜30質量%用いるのが好ましい。
本発明のゲル成分中に含まれるビニル系重合体ユニットは、直鎖性が高いものが好ましい為、架橋性モノマーは含有しないものがより好ましい。本発明の目的を達成する為に、以下に例示する様な架橋性モノマーを添加しても良い。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグルコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))。多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤は、他のビニル系モノマー成分100質量部に対して、0.001〜1質量部で用いることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いられる。
ビニル系樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤を単独で、あるいは多官能性重合開始剤と単官能性重合開始剤とを併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−アミルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス−(ネオデカノールパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(2−エチルヘキサノールパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(m−トルオールパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−アミルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロドデカン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロイソフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジーt−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイドの1分子内に2つ以上のパーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレートの如き、1分子内に、パーオキサイド基の如き重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤。
これらの内、より好ましいものとしては、以下のものが挙げられる。1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン。
これらの多官能性重合開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.01〜10質量部用いるのが好ましい。
さらに、これらの多官能性重合開始剤を単官能性重合開始剤と併用する場合には、半減期が10時間となる温度(10時間半減期温度)が該多官能性重合開始剤よりも低い単官能性重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、以下のものが挙げられる。ベンゾイルパーオキシド、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジーt−ブチルパーオキシドの如き有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼンの如きアゾおよびジアゾ化合物。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程においてビニル系モノマーの重合添加率が50%以上に達した後に添加するのが好ましい。
本発明に係わる樹脂Bは、上述した如く、前記のような不飽和ポリエステル樹脂存在下で、溶媒を使わずにビニル系モノマーを重合する、塊状重合法によりハイブリッド樹脂を得ることが好ましい。特に、重合開始剤として、10時間半減期温度が100〜150℃のものを用い、重合開始剤の10時間半減期温度よりも30℃低い温度から、10時間半減期温度よりも10℃高い温度の範囲で、ビニル系モノマーの重合転化率が60%、好ましくは80%に達するまで重合反応を行い、塊状重合により生成するビニル系重合体ユニットの分子量を大きくすることが好ましい。さらに、重合転化率が60%(好ましくは80%)に達した後に、10時間半減期温度よりも10℃以上高い温度で重合反応を行い、反応を終了させることが良い。
本発明の樹脂A及び樹脂Bは、酸価が0.1〜60mgKOH/g(好ましくは1〜50mgKOH/g、より好ましくは1〜40mgKOH/g)、水酸基価が5〜100mgKOH/g(好ましくは5〜80mgKOH/g、より好ましくは10〜70mgKOH/g)の範囲であることが、トナーの摩擦帯電性を安定させる点で好ましい。
本発明に用いられる樹脂A及び樹脂Bのガラス転移温度(Tg)は、50〜75℃であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度が50℃未満であると、トナーの保存安定性が不十分となることがあり、75℃よりも大きいとトナーの低温定着性が不十分となることがある。
本発明のトナーは、離型剤としてワックスを含有する。
本発明に用いられるワックスには次のようなものがある。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したワックス。更に、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いは更に長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
ワックスの具体的な例としては、以下のものが挙げられる。ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)。これらワックスは必要に応じて樹脂製造時に添加し、更に分散性を改良することも好ましい形態である。
本発明では、融点が温度60〜100℃の低融点ワックスを含有することが好ましい。本発明の結着樹脂はワックス分散性に優れる為、低融点のワックスを添加して低温定着性を改良しても、現像性が悪化しない。
更に本発明では、前記低融点ワックスと、融点が温度100〜140℃の高融点ワックスを併用することが耐高温オフセット性を改良できるのでより好ましい。
本発明では、樹脂Aまたは樹脂B、好ましくは両方がワックスを含有することも好ましい形態である。樹脂中に予めワックスを含有させることにより、トナー粒子中のワックスの分散性は飛躍的に向上する。ワックスと樹脂の混合方法は、ワックスの存在下で樹脂を重合する方法や、樹脂とワックスを溶融混練する方法などが挙げられるが、本発明ではワックスの存在下で樹脂を重合する方法がより好ましく用いられる。また、縮重合樹脂の重合反応は、通常、ビニル系樹脂の重合反応よりも高温、かつ減圧状態で行うため、低融点のワックスを存在させるとワックスが昇華し易い。そのため、低融点ワックスは樹脂Bの、ビニル系モノマーを付加重合する際に存在させることが好ましい。高融点ワックスは縮重合反応の条件でも昇華しにくいため、樹脂Aのビニル系モノマーの付加重合時に存在させておくことが好ましい。
本発明のトナーは更に磁性体(例えば磁性酸化鉄)を含有させ磁性トナーとしても使用しうる。この場合、磁性体は着色剤の役割をかねることもできる。
本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性体としては、以下のものが挙げられる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルの如き金属或はこれらの金属と、アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムの如き金属の合金及びその混合物。
これらの磁性体は個数平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.05〜0.5μmのものが好ましい。トナー中に含有させる量としては結着樹脂100質量部に対し20〜200質量部であることが好ましく、特に好ましくは樹脂成分100質量部に対し40〜150質量部である。
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,グラフト化カーボンや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物が用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。
非磁性の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。非磁性の着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1〜20質量部添加して用いられる。
本発明のトナーには、荷電制御剤を含有させることが好ましい。トナーを負荷電性に制御するものとして下記物質がある。
有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物。他には、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体、あるいは芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類がある。
また、負帯電性の荷電制御剤としては、次に示した一般式(1)で表されるアゾ系金属化合物、一般式(2)で表されるオキシカルボン酸金属化合物が好ましい。
Figure 2008102396
〔式中、Mは配位中心金属を表し、Sc、Ti、V、Cr、Co、Ni、Mn、又はFeを示す。Arはアリール基であり、フェニレン基、ナフチレン基を示し、置換基を有してもよい。この場合の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アニリド基および炭素数1〜18のアルキル基、またはアルコキシ基である。X,X’、Y,及びY’は−O−、−CO−、−NH−、−NR−(Rは炭素数1〜4のアルキル基)である。A+は水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、それらの混合物を表すが、A+は存在しない場合もある。〕
特に、中心金属としてはFeが好ましく、置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アニリド基が好ましい。
Figure 2008102396
特に、中心金属としてはFe,Si,Zn,Zr,又はAlが好ましく、置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲンが好ましく、カウンターイオンは水素イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオンが好ましい。
そのうちでも、式(1)で表されるアゾ系金属化合物がより好ましく、とりわけ、下記式(3)で表されるアゾ系鉄化合物が最も好ましい。
Figure 2008102396
次に、該化合物の具体例を示す。
Figure 2008102396
Figure 2008102396
正荷電性の荷電制御剤としては下記の物質が例示される。ニグロシン及び脂肪酸金属塩による変成物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;グアニジン化合物、イミダゾール化合物。これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
また、一般式(4)
Figure 2008102396
〔式中、R1はH又はCH3を示し、R2及びR3は置換または未置換のアルキル基(好ましくは、C1〜C4)を示す〕
で表されるモノマーの単重合体;前述したスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの如き重合性モノマーとの共重合体を正荷電性制御剤として用いることができる。この場合これらの荷電制御剤は、結着樹脂(の全部または一部)としての作用をも有する。
特に下記一般式(5)で表される化合物が本発明の構成においては好ましい。
Figure 2008102396
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表し、R7、R8及びR9は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表し、A-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、りん酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機りん酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオン又はテトラフルオロボレートから選択される陰イオンを示す。〕
負帯電用として好ましい制御剤として、以下のものが挙げられる。Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学工業(株))。正帯電用として好ましい制御剤として以下のものが挙げられる。TP−302、TP−415(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学工業(株))、コピーブルーPR(クラリアント社)。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
本発明のトナーには、流動性向上剤を添加しても良い。流動性向上剤は、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものである。このような流動性向上剤としては、以下のものが挙げられる。フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフウルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシラン化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理微粉末;酸化亜鉛、酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物等。
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、シリカとしてはそれらも包含する。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用することが好ましい。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、以下のものが挙げられる。AEROSIL(日本アエロジル社)130、200、300、380、TT600、MOX170、MOX80、COK84、Ca−O−SiL(CABOT Co.社)M−5、MS−7、MS−75、HS−5、EH−5、Wacker HDK N 20(WACKER−CHEMIE GMBH社)V15、N20E、T30、T40、D−C Fine Silica(ダウコーニングCo.社)、Fransol(Fransil社)、本発明ではこれらも好適に用いることができる。
更には、本発明に用いられる流動性向上剤としては、前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。前記処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化処理の方法としては、シリカ微粉体と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理する方法が挙げられる。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
前記有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン。さらに、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは一種或いは二種以上の混合物で用いられる。
前記流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが好ましい。外添前のトナー粒子100質量部に対して流動性向上剤を総量で0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用することが良い。
本発明のトナーは、前記流動性向上剤以外にも、必要に応じてさらに他の外添剤(例えば荷電制御剤等)を添加して用いることができる。
また、本発明のトナーは、一成分現像剤、或いは、キャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像剤に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものがすべて使用可能であるが、具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の、平均粒径20〜300μmの粒子が好ましくは使用される。
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂の如き樹脂を付着又は被覆させたもの等が好ましく使用される。
本発明のトナーを製造するには、結着樹脂及び着色剤、必要に応じて磁性体やワックス、荷電制御剤、その他の添加剤をヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して、結着樹脂中にワックスや磁性体を分散せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行ってトナーを得ることができる。
本発明のトナーは、公知の製造装置を用いて製造することができ、例えば、以下の製造装置を用いることができる。
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)。
分級機としては、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボジェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い。
本発明のトナーに係る各種物性の測定について以下に説明する。本発明では、トナー、及び結着樹脂のテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布、テトラヒドロフラン不溶分の含有量、及び軟化点は、以下に示す方法によって測定することができる。
(1)テトラヒドロフラン可溶分の分子量の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流す。カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを挙げることができるが、特に昭和電工社製のshodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連カラムの組み合せが好ましい。
一方で、トナー、結着樹脂、或いはトナーのテトラヒドロフラン不溶分中に含まれるポリエステル系樹脂成分を加水分解し、残留物として得られるビニル系樹脂成分をテトラヒドロフランに分散し溶解後、1晩静置した後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ約0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)で濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として樹脂成分が5mg/mlとなるように調整したトナーのテトラヒドロフラン溶液を100μl注入して測定する。なお、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
(2)テトラヒドロフラン不溶分量
結着樹脂又はトナーを秤量し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28mm×10mm 東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてテトラヒドロフラン200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、テトラヒドロフランの抽出サイクルが約5分に1回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、秤量することによって結着樹脂又はトナーの不溶分を得る。
トナーが樹脂成分以外のテトラヒドロフラン不溶分(例えば、磁性体、顔料、ワックス、荷電制御剤)を含有している場合、円筒ろ紙に入れたトナーの質量をW1gとし、抽出されたTHF可溶樹脂成分の質量をW2gとし、トナーに含まれている樹脂成分以外のテトラヒドロフラン不溶成分の質量をW3gとすると、トナー中の樹脂成分のテトラヒドロフラン不溶分の含有量は下記式から求められる。
テトラヒドロフラン不溶分(質量%)=[{W1−(W3+W2)}/(W1−W3)]×100
(3)樹脂の酸価の測定法
本発明における結着樹脂の酸価の測定は、下記のように実施することができる。基本操作はJIS K0070に準ずる。
1)結着樹脂の粉砕品0.5乃至2.0(g)を精秤し、結着樹脂の重さW(g)とする。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1mol/リットルのKOHのメタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットとを用いての自動滴定が利用できる。)。
4)この時のKOH溶液の使用量S(ml)とし、同時にブランクを測定しこの時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式により結着樹脂の酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=((S−B)×f×5.61)/W
(4)樹脂の水酸基価の測定法
本発明における結着樹脂の水酸基価の測定は、下記のように実施することができる。
(A)試薬
(a)アセチル化試薬:無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる。アセチル化試薬は、湿気、炭酸ガス及び酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95vol%)100mlに溶かす。
(c)0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液:水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1リットルとし、2〜3日間放置後ろ過する。標定はJIS K8006によって行う。
(B)操作
試料0.5gを丸底フラスコに正しくはかりとり、これにアセチル化試薬5mlを正しく加える。フラスコの口に小さな漏斗をかけ、95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首が浴の熱を受けて温度の上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円盤をフラスコの首の付根にかぶせる。1時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エチルアルコール5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗い、フェノールフタレイン溶液を指示薬として0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。なお、本試験と並行して空試験を行う。
(C)計算式
次式によって結着樹脂の水酸基価を算出する。
A=[{(B+C)×f×28.05}/S]+D
但し、
A:樹脂の水酸基価
B:空試験の0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:本試験の0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.5mol/リットル−水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
D:樹脂の酸価
(4)軟化点
本発明の軟化点とは、以下の方法により測定された値である。高化式フローテスター((株)島津製作所製、CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするときh/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)とする。
[結着樹脂製造例]
(ハイブリッド樹脂製造例1)
4つ口フラスコ内にキシレン300重量部を投入し、攪拌しながら容器内を充分に窒素で置換した後、昇温して還流させた。この還流下で、スチレン82質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル16質量部と、アクリル酸2質量部と、ワックスとしてフィッシャートロプシュワックス(DSCの吸熱ピーク温度105℃)10質量部と、重合開始剤としてジ−tert−ブチルパーオキサイド2質量部との混合液を4時間かけて滴下した後、2時間保持し、重合率が98%を越えたことを確認し、付加重合を完了した。この重合体溶液を減圧下で有機溶剤を留去して重合体を取り出し、ビニル系樹脂成分1を得た。このビニル系樹脂成分は、GPCによって測定される分子量分布において、分子量7,400にメインピークを有し、重量平均分子量が8,700、ガラス転移温度(Tg)が59℃であった。
次に、4つ口フラスコにポリエステルモノマーを下記比率で混合した。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基,x+yの平均値:2.2)
1.150mol
・テレフタル酸 0.430mol
・イソフタル酸 0.400mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.170mol
このポリエステルモノマー混合物100質量部に、ビニル系樹脂成分1を20質量部添加して混合し、これらに混合物に触媒としてテトラブチルチタネート0.5質量%を添加し、温度230℃で縮合重合して、ビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が一部化学的に結合したハイブリッド樹脂を重合した。さらに、重合後のハイブリッド樹脂を温度230℃で撹拌を続け、水3質量部を滴下し、2時間減圧蒸留を行ってハイブリッド樹脂A−1を得た。
このハイブリッド樹脂A−1は、水滴下前には480ppmの2−エチルヘキシルアルコールが含有されていたが、水を滴下して減圧蒸留を行った後には30ppmに減少していた。ハイブリッド樹脂A−1はTg=58℃、軟化点=87℃、酸価=11mgKOH/g、水酸基価=44mgKOH/gであり、テトラヒドロフラン不溶分を含まなかった。
(ハイブリッド樹脂製造例2)
ワックスを添加しない以外はハイブリッド樹脂製造例1と同様にして、ハイブリッド樹脂A−2を得た。ハイブリッド樹脂A−2の物性を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例3)
4つ口フラスコにポリエステルモノマーを下記比率で混合した。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基,x+yの平均値:2.2)
1.150mol
・テレフタル酸 0.430mol
・イソフタル酸 0.400mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.170mol
このポリエステルモノマー混合物を170℃で攪拌しつつ、ポリエステルモノマー混合物100質量部に対し、ビニル系モノマーとして、スチレン16質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル3.5質量部と、アクリル酸0.5質量部と、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.8質量部の混合物を、1時間かけて滴下し、付加重合を行った。温度170℃でさらに3時間付加重合反応を進め、ビニル系モノマーの重合率が97%に達した時点で、エステル化触媒としてオクチル酸スズ1質量部を加え、230℃まで昇温して縮重合反応を行い、ビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が一部化学的に結合したハイブリッド樹脂を重合した。さらに、重合後のハイブリッド樹脂を温度230℃で撹拌を続け、水1質量部を滴下し、2時間減圧蒸留を行ってハイブリッド樹脂A−3を得た。
このハイブリッド樹脂A−3は、水滴下前には540ppmの2−エチルヘキシルアルコールが含有されていたが、水を滴下して減圧蒸留を行った後には45ppmに減少していた。ビニル系モノマーの重合率が97%に達した時点でのビニル系樹脂成分の物性は、GPCによって測定される分子量分布において、分子量5,800にメインピークを有し、重量平均分子量が6,100、ガラス転移温度(Tg)が55℃であった。ハイブリッド樹脂A−3の物性を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例4)
4つ口フラスコにポリエステルモノマーを下記比率で混合した。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基,x+yの平均値:2.2)
1.150mol
・テレフタル酸 0.400mol
・イソフタル酸 0.380mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.200mol
・無水トリメリット酸 0.020mol
このポリエステルモノマー混合物を140℃で攪拌しつつ、ポリエステルモノマー混合物100質量部に対し、ビニル系モノマーとして、スチレン14質量部と、アクリル酸n−ブチル5.5質量部と、アクリル酸0.5質量部と、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.2質量部の混合物を、1時間かけて滴下し、付加重合を行った。温度140℃でさらに5時間付加重合反応を進め、ビニル系モノマーの重合率が95%に達した時点で、エステル化触媒としてオクチル酸スズ1質量部を加え、230℃まで昇温して縮重合反応を行い、ビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が一部化学的に結合したハイブリッド樹脂を重合した。さらに、重合後のハイブリッド樹脂を温度230℃で撹拌を続け、水0.5質量部を滴下し、1時間減圧蒸留を行ってハイブリッド樹脂A−4を得た。
このハイブリッド樹脂A−4は、水滴下前には970ppmのn−ブタノールが含有されていたが、水を滴下して減圧蒸留を行った後には65ppmに減少していた。ビニル系モノマーの重合率が95%に達した時点でのビニル系樹脂成分の物性は、GPCによって測定される分子量分布において、分子量15,300にメインピークを有し、重量平均分子量が17,100、ガラス転移温度(Tg)が57℃であった。ハイブリッド樹脂A−4の物性を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例5)
ハイブリッド樹脂重合後に、水を滴下せず、減圧蒸留も行わないこと以外はハイブリッド樹脂製造例4と同様にして、ハイブリッド樹脂A−5を得た。ハイブリッド樹脂A−5の物性を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例6)
ポリエステルモノマーを下記比率で混合する。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基,x+yの平均値:2.2)
1.150mol
・テレフタル酸 0.430mol
・イソフタル酸 0.390mol
・フマル酸 0.010mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.170mol
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.5質量%を添加し、230℃で縮合重合して、不飽和ポリエステル樹脂(Tg=58℃、メインピーク分子量=7800、数平均分子量(Mn)=4600、Mw/Mn=2.1、酸価=5mgKOH/g、水酸基価=37mgKOH/g)を得た。
この不飽和ポリエステル樹脂75質量部と、ワックスとしてフィッシャートロプシュワックス(DSC吸熱ピーク105℃)2質量部とパラフィンワックス(DSC吸熱ピーク76℃)7質量部、ビニル系モノマーとして、スチレン:18質量部、アクリル酸n−ブチル:6.5質量部、マレイン酸モノn−ブチル:0.5質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3(10時間半減期温度128℃):0.08質量部とを混合した。このビニル系モノマー/ワックス/不飽和ポリエステル樹脂混合物を120℃で20時間かけてビニル系モノマーの重合転化率が97%に達するまで重合後、さらに150℃に温度を上げて5時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合させて、ハイブリッド樹脂を得た。さらに、重合後のハイブリッド樹脂を撹拌を続けながら温度を180℃まで昇温し、水3質量部を滴下し、2時間減圧蒸留を行ってハイブリッド樹脂B−1を得た。このハイブリッド樹脂B−1は、水滴下前には270ppmのn−ブタノールが含有されていたが、水を滴下して減圧蒸留を行った後には15ppmに減少していた。
得られたハイブリッド樹脂B−1は、テトラヒドロフラン不溶分を31質量%含有していた。テトラヒドロフラン不溶分を加水分解し、濾過し、濾別される成分のテトラヒドロフラン可溶分を分析したところ、ビニル系樹脂のピーク分子量は136,500、重量平均分子量は346,000であった。ハイブリッド樹脂B−1のその他の物性を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例7)
ワックスを添加しないこと以外はハイブリッド樹脂製造例6と同様にして、ハイブリッド樹脂B−2を得た。ハイブリッド樹脂B−2の物性を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例8)
ポリエステルモノマーを下記比率で混合する。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基,x+yの平均値:2.2)
1.150mol
・テレフタル酸 0.430mol
・イソフタル酸 0.380mol
・フマル酸 0.020mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.170mol
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.5質量%を添加し、230℃で縮合重合して、不飽和ポリエステル樹脂(Tg=60℃、メインピーク分子量=8900、数平均分子量(Mn)=4700、Mw/Mn=2.2、酸価=3mgKOH/g、水酸基価=28mgKOH/g)を得た。
この不飽和ポリエステル樹脂70質量部と、ビニル系モノマーとして、スチレン:26質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル:6.5質量部、マレイン酸モノn−ブチル:0.5質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキシン−3(10時間半減期温度128℃):0.08質量部とを混合した。このビニル系モノマー/ワックス/不飽和ポリエステル樹脂混合物を130℃で10時間かけてビニル系モノマーの重合転化率が95%に達するまで重合後、さらに150℃に温度を上げて5時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合させて、ハイブリッド樹脂B−3を得た。ハイブリッド樹脂B−3の物性を表1に示す。
(ハイブリッド樹脂製造例9)
ポリエステルモノマーを下記比率で混合する。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基2.2モル付加)
1.100mol
・テレフタル酸 0.440mol
・イソフタル酸 0.380mol
・フマル酸 0.020mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.160mol
これらに触媒としてテトラブチルチタネート1.0質量%を添加し、230℃で縮合重合して、不飽和ポリエステル樹脂(Tg=56℃、メインピーク分子量=5400、数平均分子量(Mn)=3100、Mw/Mn=2.4、酸価=15mgKOH/g、水酸基価=45mgKOH/g)を得た。
キシレン300重量部に、この不飽和ポリエステル樹脂65質量部を加えて昇温して還流させた。この還流下で、スチレン:27質量部、アクリル酸n−ブチル:7質量部、マレイン酸モノブチル:1質量部及び、ジ−tert−ブチルパーオキサイド:2質量部の混合液を4時間かけて滴下後、2時間保持し重合を完了した。その後、有機溶剤を留去し、ハイブリッド樹脂B−4を得た。ハイブリッド樹脂B−4の物性を表1に示す。
(比較樹脂製造例10)
4つ口フラスコにポリエステルモノマーを下記比率で混合した。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基,x+yの平均値:2.2)
1.150mol
・テレフタル酸 0.400mol
・イソフタル酸 0.350mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.200mol
・無水トリメリット酸 0.100mol
このポリエステルモノマー混合物を140℃で攪拌しつつ、ポリエステルモノマー混合物100質量部に対し、ビニル系モノマーとして、スチレン16質量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル3.5質量部と、アクリル酸0.5質量部と、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.2質量部の混合物を、1時間かけて滴下し、付加重合を行った。温度140℃でさらに5時間付加重合反応を進め、ビニル系モノマーの重合率が90%に達した時点で、エステル化触媒としてジブチル錫1質量部を加え、230℃まで昇温して縮重合反応を行い、比較樹脂C−1を重合した。比較樹脂C−1の物性を表1に示す。
(比較樹脂製造例2)
4つ口フラスコにポリエステルモノマーを下記比率で混合した。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R:プロピレン基,x+yの平均値:2.2)
1.150mol
・テレフタル酸 0.350mol
・イソフタル酸 0.350mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.200mol
・無水トリメリット酸 0.100mol
このポリエステルモノマー混合物に、エステル化触媒としてジブチル錫1質量部を加え、230℃まで昇温して縮重合反応を行い、ポリエステル樹脂C−2を重合した。ポリエステル樹脂C−2の物性を表1に示す。
(実施例1)
・ハイブリッド樹脂A−1 20質量部
・ハイブリッド樹脂B−1 80質量部
・マグネタイト(個数平均粒径0.18μm) 100質量部
・前記アゾ系鉄化合物(1)(カウンターイオンはNH4 +) 2質量部
上記原材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、温度130℃、回転数200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)によって混練した。得られた溶融混練物を冷却し、冷却された溶融混練物をカッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて、排気温度が45℃になるようエアー温度を調整して微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、磁性トナー粒子1を得た。
磁性トナー粒子1は、重量平均粒子径(D4)が5.7μm、個数分布における粒径2.00μm以上3.17μm以下の粒子の含有量が3.9個数%であった。さらに、この磁性トナー粒子1の100質量部と、疎水性シリカ微粉体(乾式シリカ(BET:200m2/g)100質量部をヘキサメチルジシラザン10質量部で表面処理し、次いでこの処理シリカ100質量部にジメチルシリコーンオイル10質量部で処理を行ったもの)1.2質量部とを、ヘンシェルミキサーで混合してトナー1を調製した。トナー1の物性を表2に示す。
このトナーを以下の項目について評価した。評価結果を表2に示す。
[粉砕性試験]
粗粉砕物を30kg/hの割合で、粉砕機(ターボミルT−250;ターボ工業社製)に供給し、排気温度が45℃になるようにエアー温度を調整しながら微粉砕した。微粉砕物の重量平均粒径(D4)が5.5μmになるように粉砕ローターの周速を調整し、その時の粉砕ローターの周速で実施例のトナーの粉砕性を以下の基準で判断した。より低い周速で微粉砕物の重量平均粒径(D4)が5.5μmになるものほど、粉砕性が良い。
A:粉砕ローター周速91.7m/s未満
B:粉砕ローター周速91.7m/s以上104.8m/s未満
C:粉砕ローター周速104.8m/s以上117.9m/s未満
D:粉砕ローター周速117.9m/s以上131.0m/s未満
E:粉砕ローター周速131.0m/s以上
[分級収率]
粉砕性試験で得られた微粉砕物を、分級機(エルボージェット分級機EJ−LABO;日鉄鉱業社製)を用いて重量平均粒径(D4)が5.5μm、個数分布における粒径2.00μm以上3.17μm以下の粒子の含有量が5個数%のトナー粒子になるように分級を行ない、供給した微粉砕物の量と得られたトナー粒子の量から分級収率を算出した。分級収率が高いほど、微粉砕物の粉砕粒径の分布がシャープであり、生産性が高いことを示し、以下の基準で判断した。
分級収率(%)=トナー粒子収量(kg)/微粉砕物供給量(kg)×100
A:分級収率90%以上
B:分級収率80%以上90%未満
C:分級収率70%以上80%未満
D:分級収率70%未満
[定着試験]
ヒューレットパッカード社製レーザービームプリンタ:LaserJet4350の定着器を取り出し、定着装置の定着温度を任意に設定できるようにし、かつプロセススピードを400mm/secとなるようにした外部定着器を用いた。この外部定着器を温度140〜220℃の範囲で温度140℃から温度5℃おきに温調し、普通紙(75g/m2)紙に現像したベタ黒未定着画像(紙上トナー量を0.6mg/cm2に設定)の定着を行った。得られた定着画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着温度とした。この温度が低いほど低温定着性に優れたトナーである。
また、プロセススピードを100mm/secにし、温度150〜240℃の範囲で温度150℃から温度5℃おきに温調し、未定着画像の定着を行った。定着画像上のオフセット現象による汚れを目視で確認し、発生した温度を耐高温オフセット性とした。この温度が高いほど耐高温オフセット性に優れたトナーである。
[現像試験]
市販のレーザービームプリンタLaserJet 4350(ヒューレットパッカード社製)を65枚機に改造して、常温常湿(23℃、60%RH)環境にて、A4サイズの75g/m2の転写紙を用いて画出し試験を行った。画像データとしては、画像面積率が2%の原稿データを用いた。この条件で、500枚及び30,000枚通紙時のベタ黒画像濃度とカブリの測定を行った。
画像濃度の測定は、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して反射濃度を測定することにより行い、5点平均で算出した。
カブリの測定は、リフレクトメーター(東京電色(株)製)により測定した転写紙の白色度と、ベタ白をプリントした後の転写紙の白色度との差からカブリを算出した。
[クリーニング不良]
上記現像試験で用いた改造機を使用し、温度0℃の低温環境にて、A4サイズの75g/m2の転写紙を用いて、1,000枚の印字試験を行ない、以下の基準でクリーニング不良を評価した。
A:発生なし
B:トナーがクリーニングブレードをすり抜けたことによる軽微なスジが画像上に見られる
C:スジが画像上にはっきりと見られる
D:画像全面にスジが発生し、印字に影響する
[クリーニングブレードめくれ]
上記現像試験で用いた改造機を使用し、温度35℃の高温環境にて、A4サイズの75g/m2の転写紙を用いて、連続で両面印字の印字試験を行ない、以下の基準でクリーニングブレードめくれを評価した。
A:発生なし
B:10,000枚以上の印字枚数でクリーニングブレードめくれが発生する
C:5,000枚以上10,000枚未満の印字枚数でクリーニングブレードめくれが発生する
D:1,000枚以上5,000枚未満の印字枚数でクリーニングブレードめくれが発生する
E:1,000枚未満の印字枚数でクリーニングブレードめくれが発生する
(実施例2〜6、比較例1〜3)
ハイブリッド樹脂A−1、及びハイブリッド樹脂B−1を、表2の樹脂の組合せ及び比率に変更し、ワックスとしてフィッシャートロプシュワックス(DSCの吸熱ピーク温度105℃)2質量部と、パラフィンワックス(DSC吸熱ピーク76℃)5質量部を添加すること以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6、比較例1〜3のトナー2〜9を得た。トナー2〜9の物性及び評価結果を表2に示す。
Figure 2008102396
Figure 2008102396

Claims (8)

  1. 少なくとも結着樹脂、ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
    該結着樹脂は少なくとも2種以上の樹脂A及び樹脂Bを含有し、
    該樹脂Aは、縮重合系モノマーの存在下でビニル系モノマーを付加重合させ、付加重合反応が終了後に、該縮重合系モノマーを縮重合させて得られる樹脂、または、ビニル系モノマーを付加重合させて得られるビニル系樹脂の存在下で、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる樹脂であり、
    該樹脂Bは、縮重合系モノマーを縮重合させることにより得られる縮重合樹脂に、ビニル系モノマーを添加、混合して付加重合させることにより得られる樹脂であり、
    該樹脂Aの軟化点が該樹脂Bの軟化点よりも5℃以上低く、
    該樹脂Aと該樹脂Bが10:90〜60:40の質量比で含有されていることを特徴とするトナー。
  2. 該樹脂Aの軟化点が80〜120℃であり、該樹脂Bの軟化点が100〜150℃であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 該樹脂A又は該樹脂Bのうち、少なくとも一方は重合工程の途中および/または終了後に、重合物と水とを、100〜300℃で混合する工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 該樹脂Aはテトラヒドロフラン不溶分の含有量が5質量%未満であり、該樹脂Bはテトラヒドロフラン不溶分の含有量が5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のトナー。
  5. 該樹脂A又は該樹脂Bのうち、少なくとも一方の樹脂はワックスを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
  6. 該樹脂Bは、不飽和ポリエステル樹脂の存在下でビニル系モノマーを塊状重合することにより得られたハイブリッド樹脂を含有しており、該塊状重合が、不飽和ポリエステル樹脂:ビニル系モノマー=50:50〜90:10の質量比で行われたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のトナー。
  7. 該トナーは、結着樹脂由来のテトラヒドロフラン不溶分を3〜50質量%含有し、
    該テトラヒドロフラン不溶分は、ハイブリッド樹脂を含有し、
    該テトラヒドロフラン不溶分を加水分解し、その後、濾過して濾別される成分のテトラヒドロフラン可溶分が、GPCで測定される分子量分布において、分子量10,000〜1,000,000の範囲にメインピークを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のトナー。
  8. 該トナーは、モノアルコールの含有量が300ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のトナー。
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