[1]トナー
本発明者らは、トナーに関する材料設計に関して検討を進め、(a)トナーを25℃でテトラヒドロフラン(THF)溶媒中に24時間放置した時のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析において、メインピークのピークトップにおける慣性二乗半径が1.0〜3.8nmであり、且つ、(b)該トナーの示差走査熱量計により測定されるDSC曲線における昇温時の吸熱メインピークの生成熱ΔH1(J/g)と、該トナーをソッ
クスレー抽出により16時間抽出した時のTHF可溶分の生成熱ΔH2(J/g)との関係が以下の関係式(1)を満たす、排紙接着抑制性、クリーニング性に優れ、又、大量に連続印刷を行った場合においても安定した画像を得ることができる(特に定着面均一性に優れた)トナーを開発した。
即ち、本発明者らは、トナー中に存在する結着樹脂(ポリマー)成分の慣性二乗半径、つまり分子サイズと、同じくトナー中に存在する離型剤のソックスレー抽出有無における生成熱比とを制御することで、トナー中における離型剤の優れた分散状態を得ることを見出した。つまり、特定の分子サイズを有するポリマーへの離型剤の取り込まれ状態を分子レベルで制御することで、トナー中及びトナー表面における離型剤の存在状態を最適化でき、その結果、排紙接着抑制性やクリーニング性の大幅な良化、及び、大量連続印刷を行った場合に安定した画像を得ることができるトナーの製造を可能にした。
通常、トナー中の離型剤分散性を向上させるためには、分散助剤を添加する等の方法が用いられる。しかし、本発明では特定の分子サイズを持つポリマーを用いることで、従来品に比べ、ポリマーと離型剤との分子サイズの差を小さくし、ポリマーと離型剤の相溶性を高めることを可能にし、離型剤分散性に優れたトナーを得ることが出来た。
(1)結着樹脂の分子サイズ
本発明のトナーは、トナーのTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析におけるメインピークのピークトップにおける慣性二乗半径Rtが、以下に記載する特定の範囲内であることを特徴とする。
トナーのTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析におけるメインピークのピークトップにおける慣性二乗半径Rtは1.0nm〜3.8nm(好ましくは1.5nm〜3.7nm、より好ましくは1.5nm〜3.5nm、さらに好ましくは2.0nm〜3.5nm)である。同範囲内であることにより、トナー中における離型剤の均一な分散を可能にし、このようなトナーにより定着面均一性及び安定した画像を得ることが可能である。Rtが1.0nm未満の場合はポリマーの分子が小さくなり過ぎ、他原料との混ざりが悪化し、保存性が悪化する。一方、Rtが3.8nmよりも大きい場合、定着時の熱の伝わりが少なからず均一でなくなるため、定着面への離型剤の溶出が不十分となり得る。このような場合、特に高速大量印刷時に、定着画像にざらつき感が目立ち、定着面均一性及び排紙接着抑制性に悪影響を及ぼす。
本発明で、トナーのGPC−RALLS−粘度計分析におけるメインピークのピークトップにおける慣性二乗半径を規定したのは、トナー中に含まれるポリマー成分のうちトナーに含有される量が最も多い成分がトナー性能を大きく左右し、さらにその成分の慣性二乗半径が排紙接着抑制性、クリーニング性、画像安定性等トナー性能とよく相関する事を見出したためである。トナーのGPC−RALLS−粘度計分析におけるメインピークのピークトップの慣性二乗半径Rtが大きい場合は、トナーがより大きいポリマーに支配的になっている事を表し、反対にRtが小さい場合にはトナーがより小さいポリマーに支配的になっている事を示す。
本発明で使用するGPC−RALLS−粘度計分析装置は、屈折検出器、光散乱検出器及び粘度検出器の3つの異なる検出器を有し、ポリマー種固有の分子サイズ(慣性二乗半径)と絶対分子量が測定できる装置である。よって、トナー中のポリマーの絶対分子量及び分子サイズ、さらには分岐状態について結果が得られる。
従来用いられてきたGPCで測定される分子量分布は、ポリスチレンの分子サイズによる換算分子量であり、ポリマー個々の分子量及び分子サイズを正確には表していない。そのため、分子サイズと分子量との関係を議論する場合は的確であるとはいえず、トナー設計に支障をきたす場面も出てきている。
一方、GPC−RALLS−粘度計分析における分子量及び分子サイズはそのポリマー
種固有の分子量及び分子サイズであるため、得られる情報が軟化点やガラス転移点、離型剤分散性などのトナー物性とうまくマッチングできる。
また、本発明のトナーにおいて、分子サイズの小さい低分子体ポリマーを使用することで、従来に比べトナー内部のポリマーの個数を増やすことにより、トナー中での帯電点を多くし、離型剤成分が多数の帯電点からの電気的反発によりトナー内部に均一に存在する状態を作ることも可能となる。
その結果、従来に比べ、離型剤が、定着時に均一に、しかも素早く溶融することから、定着後のトナー最表面に離型性の高い離型剤を均一に、しかも多く存在させることができ、高温を保ったまま紙が重なり溶融状態になった際にも接着しにくく、排紙接着を防止することが可能となる。
(2)離型剤の溶出し易さ
さらに、本発明のトナーは、熱抽出時の離型剤の溶出し易さとして、ソックスレー抽出有無での生成熱比が、以下に記載する特定の範囲内であることを特徴とする。即ち、本発明のトナーの示差走査熱量計により測定されるDSC曲線における昇温時の吸熱メインピークの生成熱ΔH1(J/g)と、該トナーをソックスレー抽出により16時間抽出した時のTHF可溶分の生成熱ΔH2(J/g)の比が、1.5<ΔH2/ΔH1<2.5、好ましくは1.6<ΔH2/ΔH1<2.4、更に好ましくは1.8<ΔH2/ΔH1<2.4を満たす。
ΔH2/ΔH1の比が大きいということは、熱を加えた場合に離型剤が溶出しやすい状態であることを示し、逆に小さい時は熱を加えても離型剤が溶出しにくいことを表す。
熱を加えて抽出した場合において、離型剤の溶出のし易さは、離型剤分散性の良し悪しと相関性がある。つまり、離型剤の分散性が良いと本発明特有の分子サイズの小さい樹脂ポリマーとの分子運動が連動して起こり、全体として熱が均一に伝わりやすく、溶出し易い状態となる。一方、離型剤が偏在する場合、樹脂ポリマー部分と離型剤部分の全体に熱が伝わる際に、熱伝導率の違いにより、分子運動が連鎖しにくく、熱の伝達速度が低下する。
また、従来のような比較的慣性二乗半径の大きい(分子の広がりの大きい)ポリマーの場合、トナーの内部から離型剤が溶出する際に、広がったポリマーに阻害され、溶出しにくいのに対し、本発明のように分子の広がりの小さいポリマーは、離型剤のトナー内部からの溶出を阻害しないため、定着時に、より表面に溶出し易くなる。
つまり、ΔH2/ΔH1が1.5〜2.5となるような離型剤の分散状態を作りあげることで熱伝導速度が向上し、特に定着ローラーでの加圧高温時には、トナー内部の離型剤がトナー定着表面へ染み出す量を増加させることが可能になり、離型剤の離型効果を十分にトナー表面に発揮することができる。
また、従来では定着時の加熱ローラーに転写材を通す際に、先端と後端で温度差が生じることにより濃度ムラが生じることがあったが、本発明のトナーでは、離型剤成分と樹脂成分の分布が均一であるため、優れたシャープメルト性を示し、定着時に多少の温度差に関わらず均一な定着面を得ることが可能となる。
これまで述べてきた通り、トナー内部の離型剤分散性が飛躍的に向上したことから、熱や圧がかからない状態においても、トナー表面に露出した状態で存在する離型剤の分散均一性も比例して高くなる。つまり、トナー内部の樹脂との電気的反発はトナー表面でも同
様に起こり、表面での離型剤の分散も均一になると考えられる。
また、離型剤のトナー表面での均一性を適正値に制御する、つまりΔH2/ΔH1を1.5〜2.5に制御することで、クリーニングブレードとの摩擦を最適に調整し、大量に連続印刷したような過酷な使用状況においても良好なクリーニング性を発揮する。つまり、クリーニングブレードとトナーとの摩擦が大きすぎる場合に起こるブレード欠けや、摩擦が小さすぎる場合にブレードをすり抜けることにより起こるクリーニング不良に起因するドラム融着などを起こさない、良好なクリーニング安定性を得られるのである。
また、本発明のトナーは、熱や圧がかからない場合にも離型剤特有の適度な摩擦特性(すべり性)を得ることができる。例えばSiドラムのようなクリーニングブレードとの摩擦が少ない系において、通常意図的に摩擦を大きくする(付与する)システム、例えばmagローラーのようなドラムに摩擦付与剤を均一に載せるような機構が必要となる。しかしながら、本発明のようにトナー自体の摩擦特性を最適化することにより、所望の摩擦特性を得ることが可能となり、クリーニング性に優位なトナーを提供できるため、このようなクリーニング機構を省くことができる。
ΔH2/ΔH1が1.5以下の時は、先に述べた通り、ソックスレー抽出によりトナー内部からの離型剤の溶出が少ないことを意味する。これは即ち、離型剤の分散性が悪く、偏在するため、トナー中の全ての離型剤に均等に熱が伝わらず、一部の離型剤は溶融が不十分になっていることを示す。この場合、トナー表面に十分な摩擦特性(すべり性)を得ることが出来ない。つまり、クリーニングブレードとの摩擦が大きくなり過ぎるために、大量連続印刷によりクリーニングブレード欠けなどを誘引し、ドラムクリーニング性に劣る結果となる。更に、熱による効率的な離型剤の溶出が不十分であるため、熱ロール定着時に十分な量の離型剤が溶出せず、高速連続印刷時の排紙接着抑制性に劣る。
ΔH2/ΔH1が2.5以上の時は、ソックスレー抽出によりトナー内部からの離型剤の溶出が多いことを意味する。これは離型剤がトナーの内部よりも、その表面に偏在し、溶出し易い状態にあるか、もしくは単純に離型剤が非常に多く含有されていることを示す。このような場合、離型性は向上するものの、その離型効果が非常に強く表れ過ぎることにより、クリーニングブレードとの摩擦が減少し、クリーニング機構で回収されないトナーがドラムに融着する原因にも成り得る。また、定着面均一性に関し、ΔH2/ΔH1が1.5以下の時、もしくは2.5以上の時はどちらも離型剤と樹脂が不均一に存在することを示しており、樹脂と離型剤の接合性の低さに起因するシャープメルト性の低下を引き起こす。つまり定着時の溶融速度が樹脂と離型剤で異なるため、その差により定着面の先端と後端でムラが生じ易くなり、均一性に欠ける画像となる。
更に、離型剤が表面に露出した状態により、トナーの吸湿性を減少させることが可能となるため、トナー性能の吸湿による劣化を防ぐこともできる。
(3)その他の特徴
本発明のトナーのTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク分子量Mpは、5000〜30000、(より好ましくは9000〜19000、さらに好ましくは11000〜18000)である事が好ましい。ピーク分子量Mpが5000より低い時は耐オフセット性能が悪化し、30000よりも大きい時は定着性能が劣るとともにサイズの大きい分子が定着時の離型剤の溶出を阻害することで、十分な離型剤の離型効果を得ることが難しい。
さらに、本発明のトナーのTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析による全ピーク面積に占める慣性二乗半径5nm以下の部分の面積の割合が60.0〜100.0質量
%であることも好ましい。これはトナー全体の分子サイズを表す指標の一つであり、トナー中の離型剤の良好な分散性を制御する上で重要な指標となる。慣性二乗半径5nm以下の割合が、60.0〜100.0質量%、より好ましくは62.0〜100.0質量%、さらに好ましくは65.0〜100.0質量%である事が好ましい。この割合が60.0質量%よりも小さい場合は、トナー全体が大きい分子もしくは高分子成分により支配的になるため、溶融粘度が上がり、良好な離型剤分散性が得られにくい。
また、本発明のトナーのTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク全体の慣性二乗半径Rgwは、15.0nm以下(より好ましくは13.0nm以下、さらに好ましくは12.0nm以下)である事が好ましい。15.0nm以上の場合は、トナー全体の分子サイズが大きくなるため、上記Rtが大きい場合と同様に濃度の均一性及び耐久安定性が悪化する。
さらに、本発明のトナーのTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク全体における分子量2万以下の割合は、20.0〜90.0質量%(より好ましくは30.0〜80.0質量%、さらに好ましくは35.0〜70.0質量%)である事が好ましい。20.0質量%未満の場合には低分子成分が少ないために、トナー溶融粘度が上昇し、定着性が悪化する。90.0質量%よりも多い場合は耐オフセット性能が低下する。
また、本発明のトナーのTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析による粘度検出器から得られる固有粘度IVwは、0.10〜0.60ml/g(より好ましくは0.15〜0.40ml/g、さらに好ましくは0.15〜0.30ml/g)であることが好ましい。固有粘度IVwが0.10未満の場合には耐オフセット性能が悪化し、0.60より大きい場合には良好な低温定着性を得ることが困難となる。
本発明のトナーは、ガラス転移温度(Tg)は、40〜70℃(より好ましくは45〜65℃、さらに好ましくは50〜60℃)であることが好ましい。Tgが40℃未満の場合、耐ブロッキング性が悪化しやすく、70℃を超える場合は定着性が低下しやすい。
また、定着性及び、耐オフセット性の両立の観点から、トナーの軟化点(Tm)は、90.0〜140.0℃(より好ましくは95〜130℃、さらに好ましくは95〜125℃)である事が好ましい。
[2]構成成分
(1)結着樹脂
本発明に使用される結着樹脂は、少なくともポリエステルユニットを含有するものを用いることができる。即ち、ポリエステルユニットのみからなるポリエステル樹脂、ポリエステルユニットとその他のポリマーユニットとが化学的に結合したハイブリッド樹脂を用いることができる。なお、本発明には、一般的に低温定着性に優れるポリエステルユニットと、耐高温オフセット性に優れ、且つ離型剤との相溶性の高いビニル系共重合ユニットが化学的に結合したハイブリッド樹脂であることが、所望の分岐構造を作製しやすいのでより好ましい。
ハイブリッド樹脂の場合には、ポリエステルユニットとビニル系共重合ユニットの質量比は、50/50〜90/10であることが好ましい。ポリエステルユニットが50質量%より少ない場合には、求める低温定着性が得られず、またポリエステルユニットが90質量%より多い場合には、保存性が悪化するだけでなく、離型剤の分散状態を制御するのが困難であるため好ましくない。
結着樹脂として、軟化点の異なる2種以上の結着樹脂を混合して使用する事が好ましい
。両者のうち特に低分子量樹脂のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク分子量及びピークトップの慣性二乗半径、直鎖ポリスチレンとの比をコントロールする事で、所望の定着性・離型剤分散性を得る事ができる。
その低分子量樹脂としては、以下の物性値が以下の範囲内であることが、グロス・保存性、耐定着オフセット性とのバランスを取る上で好ましい。樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク分子量MpLは、好ましくは5000〜20000(より好ましくは9000〜18000、更に好ましくは10000〜16500)である。また、ピークトップの慣性二乗半径RgLは、好ましくは1.0〜5.0nm(より好ましくは2.0〜4.0nm、更に好ましくは2.5〜3.5nm)である。同じ絶対ピーク分子量を有する直鎖ポリスチレンのピークトップの慣性二乗半径Rgpとの比RgL/Rgpは、好ましくは0.30〜0.95(より好ましくは0.40〜0.90、更に好ましくは0.50〜0.80)である。
また、低分子量樹脂を得るためには、低分子量樹脂全体としての分子量コントロールが重要であり、樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク全体における分子量2万以下の割合が、60.0〜100.0質量%(より好ましくは75.0〜100.0質量%、さらに好ましくは80.0〜100.0質量%、最も好ましくは85.0〜100.0質量%)である事が好ましい。ピーク全体における分子量2万以下の割合が60.0質量%より小さい場合は、所望の定着性を得ることが困難となる。
また、低分子量樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク全体における慣性二乗半径RgwLが、高分子量樹脂との混合性という観点から、好ましくは2.0〜6.0nm(より好ましくは3.0〜5.0nm、さらに好ましくは3.0〜4.0nm)である。同様に、樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク全体に占める慣性二乗半径RgwLが5nm以下の分子の割合が、好ましくは70.0〜100.0質量%(より好ましくは80.0〜100.0質量%、更に好ましくは82.0〜100.0質量%)である。
また、低分子量樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析による粘度検出器から得られる固有粘度IVwLが、0.10〜0.18ml/g(より好ましくは0.10〜0.16ml/g)であることが好ましい。固有粘度IVwLが0.10未満の場合には耐オフセット性能が悪化し、0.18より大きい場合には離型剤との相溶性が悪化し、所望の離型剤分散性を得ることが困難となる。
また、低分子量樹脂のフローテスターによる軟化温度は、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、好ましくは80.0〜105.0℃、より好ましくは90.0℃〜100.0℃)である。
また、低分子量樹脂のガラス転移温度は、定着性、保存性の観点から、好ましくは45.0〜60.0℃、より好ましくは45.0〜58.0℃である。
また、低分子量樹脂の酸価、水酸基価は、離型剤と樹脂の分散性の観点から、酸価は、好ましくは10〜50mgKOH/g、より好ましくは20〜40mgKOH/gであり、水酸基価は、好ましくは40〜70mgKOH/g、より好ましくは50〜65mgKOH/gである。
高分子量樹脂としては、以下の物性値が以下の範囲内であることが、低分子量成分との混合性で向上させる上で好ましい。樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク分子量MpHが10000〜40000、ピークトップの慣性二乗半径RgH
が3.0〜7.0nm、同じ絶対ピーク分子量を有する直鎖ポリスチレンのピークトップの慣性二乗半径Rgpとの比RgH/Rgpが0.30〜0.95である。又、樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク全体における分子量2万以下の割合が好ましくは0.0〜50.0質量%(より好ましくは10.0〜40.0質量%、さらに好ましくは20.0〜40.0質量%)である。
また、高分子量樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析によるピーク全体における慣性二乗半径RgwHは、低分子量樹脂との混合性という観点から、好ましくは5.0〜15.0nm(より好ましくは7.0〜13.0nm)である。同様にピーク全体に占める5nm以下の分子の割合は、好ましくは0.0〜50.0質量%(より好ましくは30.0〜50.0質量%)である。
また、高分子量樹脂のTHF可溶分のGPC−RALLS−粘度計分析による粘度検出器から得られる固有粘度IVwHは、0.20〜0.70ml/g(より好ましくは0.30〜0.50ml/g)であることが好ましい。固有粘度IVwが0.20未満の場合には耐オフセット性能が悪化したり、保存性が悪化したりする。一方、0.70より大きい場合には定着性が悪化することがある。
さらに、高分子量樹脂のフローテスターによる軟化温度は、低分子量樹脂との混合性を向上させるために、好ましくは110〜150℃、より好ましくは120℃〜140℃である。
また、高分子量樹脂のガラス転移温度は、定着性、保存性の観点から好ましくは45〜65℃、より好ましくは45〜60℃である。
また、高分子量樹脂の酸価、水酸基価は、帯電安定性、耐高温オフセット性の観点から、酸価は好ましくは10〜40mgKOH/g、より好ましくは10〜30mgKOH/gであり、水酸基価は好ましくは10〜50mgKOH/g、より好ましくは20〜40mgKOH/gである。
高分子量樹脂と低分子量樹脂を混合して使用する場合、低分子量樹脂と高分子量樹脂の比率は離型剤分散性、耐オフセット性、ポリマー混合性の観点から100:0〜20:80の質量比が好ましい。
以下に、本発明で用いられる結着樹脂中のポリエステルユニットに用いられるモノマーについて説明する。ポリエステルの原料モノマーとしては、2価もしくは3価以上のアルコールと、2価もしくは3価以上のカルボン酸もしくはその酸無水物、低級アルキルエステルが用いられる。ここで、分岐ポリマーを作製する場合には、結着樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、3価以上の多官能化合物を使用することにより、それが達せられる。従って、本発明では、原料モノマーとして、3価以上のカルボン酸もしくはその酸無水物、低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含むことが好ましい。
2価のカルボン酸成分としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸が用いられる。
3価以上のカルボン酸もしくはその酸無水物、低級アルキルエステルとしては、例えば1,2,4 −ベンゼントリカルボン酸、2,5,7 −ナフタレントリカルボン酸、1,2,4 −ナフタレントリカルボン酸、1,2,4 −ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3 −ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4 −シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ (メチレンカルボキシル) メタン、1,2,7,8 −オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。これらのうち、特に1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
本発明においては、カルボン酸成分として、これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸等を、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
2価アルコール成分としては、例えばポリオキシプロピレン(2.2) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.0) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0) −ポリオキシエチレン(2.0) −2,2 −ビス
(4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシプロピレン(6) −2,2 −ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2 −プロピレングリコール、1,3 −プロピレングリコール、1,4 −ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4 −ブテンジオール、1,5 −ペンタンジオール、1,6 −ヘキサンジオール、1,4 −シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
これらのうち、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールが用いられる。特にエチレングリコールは樹脂のシャープメルト性を高める上でも好ましい。
3価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6 −ヘキサンテトロール、1,4 −ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4 −ブタントリオール、1,2,5 −ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4 −ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5 −トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。
本発明においては、アルコール成分として、これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールを、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
また、触媒としては、通常ポリエステル化に用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物(ジブチルスズオキサイド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモンなど)が挙げられる。
本発明の結着樹脂に用いられるビニル系共重合ユニットを生成するためのビニル系モノ
マーとしては、例えば、次のようなスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体等が挙げられる。
アクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸及びアクリル酸エステル類や、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類や、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、ビニル系共重合ユニットのモノマーとしては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
本発明においては、ビニル系共重合モノマーとして、これらのモノマーを、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
ビニル系共重合ユニットには、ビニル重合が可能な種々のモノマーを必要に応じて併用することができる。このようなモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸の酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
また、前記ビニル系共重合ユニットは、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。架橋性モノマーには、例えば芳香族ジビニル化合物、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、ポリエステル型ジアクリレート類、及び多官能の架橋剤等が挙げられる。
芳香族ジビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
ポリエステル型ジアクリレート類としては、例えば商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量%に対して、0.01〜10質量%(好ましくは0.03〜5質量%)用いることができる。またこれらの架橋性モノマーのうち、定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)や、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
前記ビニル系共重合ユニットは、重合開始剤を用いて製造された樹脂であっても良い。これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05〜10質量部で用いるのが好ましい。
このような重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロビルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられる。
本発明における結着樹脂としてより好ましく用いられるハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニット及びビニル系共重合ユニットが直接又は間接的に化学的に結合している樹脂である。そのため、両樹脂のモノマーのいずれとも反応しうる化合物(以下「両反応性化合物」という)を用いて重合を行う。このような両反応性化合物としては、前記の縮重合系樹脂(ポリエステル樹脂)のモノマー及び付加重合系樹脂(ビニル系共重合樹脂)のモノマー中の、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びフマル酸ジメチル等の化合物が挙げられる。これらのうち、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましく用いられる。
両反応性化合物の使用量は、全原料モノマー中0.1 〜20重量%、好ましくは0.2 〜10重量%である。
ハイブリッド樹脂を得る方法としては、ポリエステルユニットの原料モノマーとビニル系共重合ユニットの原料モノマーを同時に、もしくは順次反応させることにより得ることができる。本発明においては、両ユニットのモノマーを同時に反応させる方法において、ビニル系共重合体モノマーと不飽和ポリエステル樹脂(予備重合しておく)を付加重合反応させた後、ポリエステルユニットの原料モノマーを縮重合反応させる事が好ましい。特に縮重合反応においては、温度を2段階に分け、途中で架橋モノマーを添加する事が本発明の分岐型低分子ポリマーを作製する上で好ましい形態である。
付加重合を第一に行う目的としては、所望の低分子量を有する主鎖を得ることである。この主鎖の分子量をコントロールする事で所望のグロスが得られやすくなる。次に縮重合
の第一ステップでは主鎖のポリマーに側鎖のモノマーを重合させ、分岐ポリマーを作製する。この段階ではある程度の分岐度を有するポリマーを作製できる。さらに縮重合の第二ステップではより高温で縮重合反応を行う事で、さらに分岐度を上げた均一な分岐ポリマーを作製する。この段階で初めて他原料との混合性に優れた低分子ポリマーが作製できる。第二段階のない製法により作製した低分子樹脂を有するトナーは、離型剤等との混合性が悪いために、高速現像システムにおいて定着面の均一性が劣ったり、原材料分散悪化による耐久現像性悪化につながる可能性がある。
(2)離型剤
また、本発明のトナーは、示差走査型熱量計(DSC)測定による昇温時の吸熱ピーク温度で規定される融点が60〜120℃(好ましくは65〜105℃、より好ましくは65〜85℃)である離型剤を含有することを特徴とする。本発明では前述したように分岐型低分子成分と上記のような離型剤を組み合わせることで、離型剤をトナー内部及び表面近傍においてより均一に分散させることができ、従来よりもクリーニング性、排紙接着抑制性における優れた効果が得られる。融点が60℃未満の場合はトナーの粘度が低下して離型効果が低下し、耐久による現像部材・クリーニング部材への汚染が発生してしまい、融点が120℃を超える場合は求める低温定着性が得られにくい。
また、離型剤のo-ジクロロベンゼン可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析によるピーク分子量Mpは、800〜3000(より好ましくは1000〜2500、さらに好ましくは1000〜2000)である事が好ましい。Mpの値が、800より低い時は耐オフセット性、クリーニング性、特にスリーブ汚染が悪化し、Mpの値が、3000よりも大きい時は、分散性の悪化により離型剤の偏在を起こしやすく、十分な離型剤の離型効果を得ることが難しい。
また、同じくo-ジクロロベンゼン可溶分の高温GPC−RALLS−粘度計分析による慣性二乗半径Rgwが、1.3〜3.0nm(より好ましくは1.3〜2.4nm)であることが好ましい。Rgwの値が1.3より小さい場合は、離型剤の分子サイズが、トナー中の樹脂ポリマーよりも非常に小さいため、樹脂ポリマー自体の分散性が低くなり、その偏在した樹脂ポリマーが内部に安定的に存在するため、その電気的反発により、離型剤成分は表面近傍に存在し易くなる。この結果、離型効果が強く表れ、クリーニングブレードとの摩擦が低下し、クリーニング不良を引き起こす可能性が高くなる。Rgwの値が3.0より大きい場合は、離型剤の分子サイズが大きいため、離型剤が定着時にトナー内部から溶出する際に、結着樹脂との干渉率が高くなり溶出しにくくなり、十分な離型性を得ることが難しくなる。
また、該離型剤の硬さを表す指標の1つである針入度に関して、JIS K2207で表される試験方法で1〜10(より好ましくは5〜9)であることが望ましい。針入度の値が、1以下の場合、離型剤が硬すぎるため、トナー製造過程での他原材料との相溶性が低く、分散性に劣るため、十分な離型効果を得ることが難しい。針入度の値が、10以上の場合、離型剤が軟らかすぎるためトナー中での安定性に欠け、保存性を維持するのが難しい状態になり得る。
該離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1〜20質量部添加することが好ましい。1質量部未満の場合は望まれる離型効果が十分に得られず、20質量部を超える場合は離型剤のトナー中での分散も悪く、感光体へのトナー付着や、現像部材・クリーニング部材の表面汚染などが起こり、トナー画像が劣化するなどの問題を引き起こし易くなる。
該離型剤としては、例えば、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、マイクロクリスタリン離型剤及びパラフィン離型剤の如き脂肪族炭化水素系離型剤;酸化ポリエチレ
ン離型剤の如き脂肪族炭化水素系離型剤の酸化物;それら脂肪族炭化水素系離型剤のブロック共重合物;カルナバ離型剤、サゾール離型剤及びモンタン酸エステル離型剤の如き脂肪酸エステルを主成分とする離型剤類;脱酸カルナバ離型剤の如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類の如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類:ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系離型剤にスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させた離型剤類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;炭素数12以上の長鎖アルキルアルコール又は長鎖アルキルカルボン酸;等が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素系離型剤の母体としての炭化水素としては、例えば、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);離型剤状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレン等のアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が挙げられる。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましく、特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
更に好ましくは、高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン;チーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン;パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス;石炭、天然ガス等を原料としてジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス;炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス;水酸基、カルボキシル基などの官能基を有する炭化水素系ワックス;炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物において、それらワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法、融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものが用いられる。
使用できる具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200 (三洋化成工業社)、ハイ離型剤400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライス離型剤、キャンデリラ離型剤、カルナバ離型剤(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
更に好ましく用いられるのは、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、メタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン、ポリエチレン重合時に得られる低分子量副生物の蒸留精製物である。
分散性、シャープメルト性の観点からパラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが特に好ましく用いられ、顕著な分散性向上効果が得られ、現像性、耐久安定性に優れる様になる。
プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法、融液晶析法等を利用し精製、分留を精度よく行うことでn−パラフィン率の高いワックスとすることができる。なかでも、ワックスに対する貧溶剤を用いて精製を行う溶剤法を応用した方法が好ましい。たとえば、ベンゼンもしくはトルエンとケトン(アセトンまたはメチルエチルケトン);メチルイソブチルケトン;液化プロパン;トリクロロエチレンとベンゼン;ジクロロエタンとジクロロメタンの如き溶剤が用いられる。
例えば、次のような方法が応用できる。原料ワックスに溶剤を加えて加熱し、ワックス成分を完全に溶解した後、冷却機で冷却してワックスを結晶化させる。目的とするワックスのDSC最大吸熱ピークのピークトップ温度に応じて、所定の温度まで冷却し、ろ過する。このとき、温度制御を厳密に行い、冷却速度に時間をかけることでイソパラフィン、ナフテン、芳香族等を分離して、n−パラフィン率を高めることができる。さらに、ワックスのケークを溶剤で洗い、油分、イソパラフィン、ナフテン、芳香族等を分離する。この工程を繰り返し、n−パラフィン率を高くすることができる。最終的に、溶剤回収装置で溶剤を分離して、ワックスを得る。さらにこのあと、必要に応じて、水素精製、活性白土処理、脱臭処理を行う。また原料ワックスは、真空蒸留、ガス抽出、融液晶析を用いて、予め分子量分布を狭くしたものが、n−パラフィン率を高める上で好ましい。
この溶剤法に好ましく用いられる原料ワックスとしては、石油ワックスから得られるスラックワックスやパラフィンワックス、エチレン重合時に得られる重合副生成物、メタロセンを触媒として重合される低分子量のポリエチレン、石炭や天然ガスを原料として得られるフィッシャートロプシュワックスなどがある。
これら精製されたワックスを用いることで、サイズのばらつきが減り、より均一な分散状態と、より純度が高くなることからシャープメルト性が増し、本発明における定着時の最適な離型効果を得ることが可能となる。
該離型剤を添加するタイミングは、トナー製造中の溶融混練時、または結着樹脂製造時、もしくはその両方法を併用しても良い。又、これらの離型剤は単独で使用しても併用しても良い。
(3)着色剤
本発明のトナーに用いられる着色剤は、以下に示すようなイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用いる事ができる。黒色着色剤としてはカーボンブラック、磁性体を主着色剤として用いる事ができ、下記色材を混合させて色味やトナー抵抗を調整する事も良好な態様の一つである。
なお、本発明のトナーは磁性トナーであっても非磁性トナーであっても良いが、高速機における耐久安定性などの点から磁性トナーであることが好ましい。
本発明で用いられる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトなどの酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bf,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。従来、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛
(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミウム(Cd3Fe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が知られている。特に好適な磁性材料は四三酸化鉄又はγ三二酸化鉄の微粉末である。また上述した磁性材料を単独で或いは2種以上の組合せで選択使用することもできる。
これらの磁性体は795.8kA/m印加での磁気特性が、抗磁力1.6〜12.0kA/m、飽和磁化50〜200Am2/kg(より好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化2〜20Am2/kgのものが好ましい。磁性材料の磁気特性は、25℃,外部磁場795.8kA/mの条件下において振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
該磁性体は、結着樹脂100質量部に対して、10〜200質量部添加するのが好ましい。
非磁性トナーとして用いる場合には、着色剤として以下のような顔料または染料を用いることができる。
着色剤としては、カーボンブラックやその他従来知られている顔料や染料の一種又は二種以上を用いることができる。
顔料としては、例えば、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
染料としては、C.I.ダイレクトレッド1,C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1,C.I.ベーシックレッド1,C.I.モーダントレッド30,C.I.ダイレクトブルー1,C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15,C.I.ベーシックブルー3,C.I.ベーシックブルー5,C.I.モーダントトブルー7,C.I.ダイレクトグリーン6,C.I.ベーシックグリーン4、C.I.べーシックグリーン6等がある。
本発明のトナーをフルカラー画像形成用トナーとして使用する場合には、次の様な着色剤が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
上記マゼンタ顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料を併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28などの塩基性染料が挙げられる。
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45又は下記構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料などである。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,35,73,74,83、C.I.バットイエロー1,3,20などが挙げられる。
着色剤(磁性体以外)は樹脂成分100質量部に対して、0.1〜60質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜50質量部である。
(4)その他
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるために電荷制御剤を用いることができる。電荷制御剤は、その種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1〜10質量部含まれることが好ましく、0.1〜5質量部含まれることがより好ましい。このような電荷制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩;が挙げられる。その他にも、トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩や無水物;エステル類やビスフェノール等のフェノール誘導体;等が挙げられ
る。
トナーを正帯電性に制御するものとしては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート;等が挙げられる。本発明ではこれらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。トナーを正帯電性に制御するものとしては、これらの中でもニグロシン系化合物、四級アンモニウム塩等の電荷制御剤が特に好ましく用いられる。
使用できる具体的な例としては、負帯電用としては好ましいものとしては、例えば
Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89 (オリエント化学社)があげられ、正帯電用としては好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415 (保土谷化学社)、BONTRON(登録商標) N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
また、電荷制御樹脂も用いることができ、上述の電荷制御剤と併用することもできる。
本発明のトナーの帯電性は正負どちらでも構わないが、結着樹脂であるポリエステル樹脂自体は負帯電性が高いため、負帯電性トナーであることが好ましい。
本発明のトナーに流動性向上剤として無機微粉末を使用しても良い。該流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することにより、トナーの流動性が添加前後を比較すると増加し得るものならば使用可能であり、それらの一種又は二種以上を組合せて用いる。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ(ヒュームドシリカ)、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらシリカをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ等がある。好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式製法シリカ又はヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらもシリカとして包含する。シリカ微粉体の粒径は、平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内が良い。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。
AEROSiL(日本アエロジル杜)
130
200
300
380
TT600
MOX170
MOX80
COK84
Ca−O−SiL(CABOT Co.社)
M−5
MS−7
MS−75
HS−5
EH−5
Wacker HDK N 20
(WACKER−CHEMIE GNBH社)
V15
N20E
T30
T40
D−CFine Silica(ダウコーニングCo.社)
Fransol(Francil社)
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることが好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって滴定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することが挙げられるそのような有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1−ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、末端に位置する単位のSiにそれぞれ1個水酸基が結合したジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
該無機微粉体は、シリコーンオイル処理されても良く、また、上記疎水化処理と併せて処理されても良い。
好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30〜1000mm2/sのものが用いられ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
シリコーンオイル処理の方法としては、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法;シリカ微粉体とシランカップリング剤とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法;ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法;あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法;を用いることが可能である。シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させることがより好ましい。
シランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザンや窒素原子を有するアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミンの如きシランカップリング剤が単独あるいは併用して使用される。好ましいシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
本発明においては、シリカをあらかじめ、カップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、または、シリカをカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法によって処理されたものが好ましい。
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対して流動性向上剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部を使用するのが良い。
また、本発明のトナーには必要に応じて帯電性向上剤、流動性向上剤以外の外部添加剤を添加しても良い。
例えば、滑剤、研磨剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、帯電補助剤、導電性付与剤、現像性向上剤、導電性付与剤、ケーキング防止剤、研磨剤などの働きをする樹脂微粒子や無機微粒子などである。このようなものとしては、例えば、テフロン(登録商標)、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデンが好ましい。あるいは、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。あるいは、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。あるいはケーキング防止剤や、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズなどの導電性付与剤、また、逆極性の微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの一種又は二種以上を組合せて用いることができる。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体などは、トナー100質量部に対して、0.1〜5質量部使用するのが好ましい。
[3]トナーの製造方法
本発明のトナーは、画像濃度、解像度などの点から、重量平均粒径が3〜9μmであることが好ましい。
本発明のトナーを作製するには、結着樹脂、離型剤(結着樹脂の製造時に添加していない場合)、着色剤、必要に応じてその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後粉砕及び分級を行い、更に必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合し、本発明のトナーを得ることができる。
例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサ一(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
上記製造条件の中でも溶融混練工程は、本発明特有の離型剤の分散状態を最適化するための重要な工程である。図1に本発明に好適に用いられる混練装置の概略図を、図2に本発明に好適に用いられる混練装置におけるパドルの詳細図を示す。この図に示すようにニーディング部は2か所以上有することが好適であり、2か所以上のニーディング部を通過させることによって混練物を完全に溶融状態にすることができ、最適なトナー原材料と離型剤分散性を達成することができる。
ここで本発明のトナーを得るためには、供給口に近い方の第1ニーディング部を高温にし、押出口に近い方の第2ニーディング部を低温にする事がより好ましい。特に、両ニーディング部間の温度差が10℃以上である事が好ましい。このような構成にする事で、離型剤成分をトナー中により均一に微分散させることができ、本発明の効果を得られやすくなる。つまり高温の第1ニーディング部では離型成分が一旦完全に溶融しトナー全体に広がり、低温の第2ニーディング部ではある程度の広がりと分散状態を保ったままトナー中に取り込まれ、本発明特有の離型剤の分散状態を得易くなるのである。
この温度差が無い場合、離型剤が、トナー中に取り込まれた状態でも比較的動くことができる状態にあるため、微分散した離型剤同士が引き寄せあい、トナー中で偏在しやすくなる。
また、2軸押出機は、温度を一定に保つ加熱シリンダーの中に2本のパドルと呼ばれる回転軸が通っており、この回転軸内に冷却水を通す事もできる(主軸冷却)。この主軸冷却を行うと、加熱シリンダーとパドルとの間に温度差が生じ、ある程度トナーにシェアをかけることができる。そのため、離型剤の微分散を保つことができ、本発明の効果を得る上でさらに好ましい。
[3]測定方法
以下に、本発明に係る物性の測定方法の例を示す。
(1)GPC−RALLS−粘度計分析
(i)前処理
トナー0.1g(樹脂0.05g)を、THF 10mlとともに20ml試験管に入れる。これを25℃で24時間溶解させる。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などが使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。
(ii)分析条件
装置 :HLC−8120GPC 東ソー(株)社製
DAWN EOS(Wyatt Technology社製)
高温差圧粘度検出器(Viscotek社製)
カラム :KF-807,806M,805,803(昭和電工社製)の4連カラムの組合せ
検出器1 :多角度光散乱検出器 Wyatt DAWN EOS
検出器2 :高温差圧粘度検出器
検出器3 :ブライス型示差屈折計
温度 :40℃
溶媒 :THF
流速 :1.0ml/min
注入量 :400μl
本測定においては、絶対分子量に基づく分子量分布及び慣性二乗半径、固有粘度が、直接出力されるが、その測定理論は以下の通りである。
(iii)測定理論
(dn/dc):本明細書ではハイブリット樹脂含有トナーは0.089ml/g、ポリエステル樹脂のみ含有トナーは0.078ml/g、直鎖ポリスチレンは0.185ml/gとした。
(2)高温GPC−RALLS−粘度計分析
(i)前処理
ワックス0.2gを専用のろ過容器(例えば東ソー製溶解ろ過容器 ポアサイズ10μm)に入れ、ODCB(o-ジクロロベンゼン) 10mlとともに15ml試験管に入れる。これを溶液ろ過装置(例えば東ソー製DF−8020)を用い、150℃で12時間溶解させる。12時間後、下記装置を用い、分析を行った。
(ii)分析条件
装置 :HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
DAWN EOS(Wyatt Technology社製)
高温差圧粘度検出器(Viscotek社製)
カラム :TSKgel GMHHR−H HT 7.8cm I.D×30cm 2連
(東ソー社製)
検出器1 :多角度光散乱検出器 Wyatt DAWN EOS
検出器2 :高温差圧粘度検出器
検出器3 :ブライス型デュアルフロー式示差屈折計
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.05%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min
注入量 :400μl
本測定において直接出力される絶対分子量に基づく分子量分布及び固有粘度の測定理論は上記GPC−RALLS−粘度計分析と同様である。
なお、光学定数における(dn/dc)は、本明細書ではワックスは0.078ml/gとした。
(3)樹脂及びトナーの軟化点測定方法
JIS K 7210にのっとり、高化式フローテスターにより測定されるものを指す。具体的な測定方法を以下に示す。高化式フローテスター(島津製作所製)を用いて1cm3の試料を昇
温速度4℃/minで加熱しながら、プランジャーにより980N/m2(10kg/cm2)の荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これにより、プランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
(4)樹脂及びトナーのガラス転移温度(Tg)及び離型剤の融点、生成熱ΔH1、ΔH2の測定
測定装置 :示差走査型熱量計(DSC)、MDSC−2920(TA Instruments社製)
ASTM D3418-82に準じて測定する。
測定試料は2〜10mg、好ましくは3mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いて、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下測定を行う。2回目の昇温過程で得られる、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線をもって解析を行う。
ガラス転移温度(Tg)については、得られたDSC曲線より中点法で解析を行った値を用いる。また、離型剤の融点ついては、得られたDSC曲線の吸熱メインピークの温度値を用いる。また、ΔH1、ΔH2については吸熱メインピークの面積を積分した値を用いる。吸熱メインピークの面積とは、図3でいえば斜線部分に示される面積のことである。
(5)結着樹脂の酸価
本発明において、結着樹脂の酸価(JIS酸価)は、以下の方法により求めることができる。尚、ここで結着樹脂の酸価は、原料樹脂のTHF可溶分の酸価を意味する。
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
1) 試料は予め結着樹脂のTHF不溶分を除去して使用する。試料の粉砕品0.5〜2.0(g)を精秤し、可溶成分の重さをW(g)とする。
2) 300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
3) 0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる。)。
4) この時のKOH溶液の使用量をS〔ml〕とする。また、同時に試料を用いないブランク試験を行い、この時のKOH溶液の使用量をB〔ml〕とする。
5) 次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
(6)水酸基価
本発明において、結着樹脂の水酸価(JIS水酸価)は、以下の方法により求めることができる。
基本操作はJ1S K 0070に準じる。
・装置及び器具
メスシリンダー(100ml)
全量ピペット(5ml)
平底フラスコ(200ml)
グリセリン浴
・試薬
アセチル化試薬(無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振り混ぜる。)
フェノールフタレイン溶液
0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液
・測定法
(a)試料を0.5〜6.0g平底フラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mlを全量ピペットを用いて加える。
(b)フラスコの口に小さな漏斗を置き、温度95〜100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。フラスコの首がグリセリン浴の熱を受けて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円板をフラスコの首の付け根にかぶせる。
(c)1時間後フラスコをグリセリン浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。
(d)更に、分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エタノール(95%)5mlで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
(e)フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときを終点とする。(f)空試験は、試料を入れないで(a)〜(e)を行う。
(g)試料が溶解しにくい場合は、少量のピリジンを追加するか、キシレン又はトルエンを加えて溶解する。
・計算
(7)針入度
JIS K2207法に準じ測定した。
以下に実施例を用いて、本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<結着樹脂aの製造例>
ポリエステルモノマー(Lp-1)
エトキシ化ビスフェノールA(2.2mol付加物):46.6mol%(Lp-1 100mol%中)
エチレングリコール:3.1mlo%(Lp-1 100mol%中)
テレフタル酸:42.8mol%(Lp-1 100mol%中)
無水トリメリット酸:4.0mol%(Lp-1 100mol%中)
アクリル酸:3.5mol%(Lp-1 100mol%中)
ビニル系共重合モノマー(Ls-1)
スチレン:90.3mol%(Ls-1及び重合開始剤 100mol%中)
2エチルヘキシルアクリレート:7.6mol%(Ls-1及び重合開始剤 100mol%中)
上記ポリエステルモノマー(Lp-1)より後に添加する無水トリメリット酸:1.0mol%を除いたものを4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で攪拌した。そこに、ビニル系共重合モノマー(Ls-1)(Lp-1:Ls-1(質量比)は80:20である)と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド2.1mol%(Ls-1及び重合開始剤 100mol%中)を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。その後、160℃で5時間反応した後、230℃に昇温して重合開始剤としてジブチル錫オキシドを0.2質量%(Lp-1 100質量%に対して)添加し、6時間縮重合反応を行った。さらに240℃に温度を上昇させ、無水トリメリット酸1.0mlo%(Lp-1
100mol%中)を添加し、さらに2時間縮重合反応を行った。反応終了後、産物を容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂aを得た。この結着樹脂aの諸物性については表7に示した通りである。
<結着樹脂b〜dの製造例>
表2〜3に記載のモノマーを用い、結着樹脂aの製造方法に、表6に記載のように条件の変更を加えて樹脂の製造を行い、結着樹脂b〜dを得た。これらの諸物性については表7に示した通りである。
<結着樹脂eの製造例>
ポリエステルモノマー(Lp-4)
プロポキシ化ビスフェノールA(2.2mol付加物):52.3mol%(Lp-4 100mol%中)
テレフタル酸:18.0mol%(Lp-4 100mol%中)
アジピン酸:5.7mol%(Lp-4 100mol%中)
イソフタル酸:24.0mol%(Lp-4 100mol%中)
ビニル系共重合モノマー(Ls-3)
スチレン:99.7mol%(Ls-4及び重合開始剤 100mol%中)
上記ポリエステルモノマー(Lp-4)及びジブチル錫オキシド0.2質量%(Lp-4 100質量%に対して)を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて230℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後、産物を容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂70質量部を再度フラスコに入れ、180℃に昇温して溶解したところに、ビニル系共重合モノマー(Ls-3)に重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.3mol%を混合したもの(Lp-4に対して、30質量部)を滴下ロートから4.8時間かけて滴下した。180℃に保持したまま2時間反応を行った後、150℃で3時間かけて減圧蒸留することで残存するモノマーを除去すると同時にスチレン樹脂と飽和ポリエステル間のハイブリッド化を行った。反応終了後、産物を容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂eを得た。この結着樹脂eの諸物性については表7に示した通りである。
<結着樹脂f〜gの製造例>
表2〜3に記載のモノマーを用い、結着樹脂aの製造方法に、表6に記載のように条件の変更を加えて樹脂の製造を行い、結着樹脂f〜gを得た。これらの樹脂の諸物性については表7に示した通りである。
<結着樹脂hの製造例>
ポリエステルモノマー(Lp-6)
プロポキシ化ビスフェノールA(2.2mol付加物):47.1mol%(Lp-6 100mol%中)
テレフタル酸:49.6mol%(Lp-6 100mol%中)
無水トリメリット酸:3.3mol%(Lp-6 100mol%中)
ポリエステルモノマー(Lp-6)及びジブチル錫オキシド0.2質量%(Lp-6 100質量%に対して)を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて230℃に昇温して縮重合反応を行った。反応終了後、産物を容器から取り出し、冷却、粉砕してポリエステル樹脂hを得た。
<結着樹脂-Aの製造例>
表4〜5に記載のモノマーを用い、表8に記載の条件で製造し、結着樹脂Aを得た。これらの樹脂の諸物性については表9に示した通りである。
<結着樹脂-Bの製造例>
表4に記載のモノマーを用い、表8に記載の条件で製造し、結着樹脂Bを得た。これらの樹脂の諸物性については表9に示した通りである。
以下の実施例及び比較例で使用したワックス1〜4を表1に示した。
以下の実施例及び比較例で使用した荷電制御剤―1〜2を以下に示す。
[実施例1]
・結着樹脂a 60質量部
・結着樹脂A 40質量部
・磁性酸化鉄粒子A 90質量部
(平均粒径0.14μm、Hc=11.5kA/m、σs=90Am2/kg、σr=16Am2/kg、外部磁場795.8kA/m印加)
・ ワックス1 5質量部
・荷電制御剤−1 2質量部
上記混合物をヘンシェルミキサーで前混合した後、混練装置の第1ニーディング部の加熱温度を150℃、第2ニーディング部の加熱温度を130℃、パドルの回転数を200rpmで、主軸冷却を行いながら溶融混練し(混練条件1)、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕してトナー粗粉砕物を得た。
得られた粗粉砕物を、ターボミルで粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径7.3μmのトナー粒子を得た。トナー粒子100質量部に対し、疎水性シリカ微粉体(BET140 m2/g)を1.0質量部とチタン酸ストロンチウム3.0質量部を外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー1を得た。トナーの物性値を表11に記す。
このトナー1を、市販の複写機(IR−6010 キヤノン製)を1.7倍のプリントスピードに改造した複写機にて、常温・低湿環境(23℃,5%RH)と、常温・常湿環境(23℃,60%RH)と、高温・高湿環境(32℃,80%RH)で、連続プリント試験を行い、トナーの以下の特性を試験した。
(1)排紙接着抑制性
高温・高湿環境(32℃、80%RH)下で、印字比率4%のテストチャートを用いて、100枚印刷した時の100枚目の5点の平均透過濃度をマクベス濃度計で測定した時の値をD1とした。次に、10000枚耐久後、積み重なった紙の中から100枚目をはがしとり、上記と同様に濃度測定した。この時の値をD2とする。D1−D2の値を計算し、その差に応じ、以下のようにランク分けを行った。結果を表12に示す。
A:濃度低下0.1未満
(A1:剥がれ白抜け点無し、A2:1mm以下の剥がれ白抜け点が一点有り、A3:2mm以下の白抜け点が一点あり)
B:濃度低下0.1以上〜0.2未満
C:濃度低下0.2以上
(2)ドラム融着
高温・高湿環境(32℃、80%RH)における画像評価において、ドラムヒーターを49℃まで高めた状態で、印字比率4%のテストチャートを用いて、40万枚耐久を行なった後のベタ黒画像上に生ずる白点の発生程度を以下の判定基準に従って評価した。結果を表12に示す。
A:全く発生しなかった。
B:10点未満発生。
C:10点以上発生。
(3)クリーニングブレード欠け
常温・低湿環境下(23℃、5%RH)で、印字比率4%のテストチャートを用いて、A4用紙300K枚の耐刷試験を行った後、クリーニングブレードの状態とそれに起因する黒スジ等の画像不良とから、ブレード欠けを判定した。結果を表12に示す。
ブレード欠けの判定基準は、下記の通りである。
A:ブレード欠け無し。
B:ブレード欠けは3箇所以内。
C:ブレード欠けが3箇所より多い。
(4)耐久定着面安定性
常温・常湿環境(23℃,60%RH)で一辺20mmの正方形を3段3列で9個並べた画像を用いて、30万枚の連続プリント試験を行った。この画像をマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度測定を行い、5mm角の画像を測定し、初期画像の9点の標準偏差と耐久後の画像の9点の標準偏差の差を計算した。初期画像と耐久後画像の標準偏差の差から耐久定着面安定性を判定した。結果を表12に示す。耐久定着面安定性の判定基準は、下記の通りである。
A:初期と耐久後の反射濃度標準偏差の差が0.1以内
B:初期と耐久後の反射濃度標準偏差の差が0.2以内
C:初期と耐久後の反射濃度標準偏差の差が0.2より大きい
(5)高温高湿保存性
約10gのトナーを100mlポリカップに入れ、温度40℃、湿度90%の環境下で3日放置した後、目視で評価した。結果を表12に示す。高温高湿保存性の判定基準は、以下の通りである。
A:凝集物は見られない。
B:凝集物は見られるが、容易に崩れる。
C:凝集物をつかむことができ、容易に崩れない。
(6)画像濃度
高温・高湿環境(32℃,80%RH)と常温・低湿環境(23℃,5%RH)環境下で一辺20mmの正方形を3段3列で9個並べた画像を用いて、30万枚の連続プリント試験を行った。マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度測定を行い、5mm角の画像を測定した。カブリは反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて行い、画像形成後の白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drをカブリ量としてカブリの評価を行った。数値の少ない方がカブリ抑制が良い。これらの評価を、初期、300000枚時に行った。結果を表13、14に示す。
これらの試験の結果、本発明のトナーは、従来のトナーに比べ、定着時に均一に、しかも素早くワックスが溶融してくることから、定着後のトナー最表面に離型性の高いワックスを均一に、しかも多く存在させることができ、排紙接着に対して優れた抑制効果を得ることが可能となった。さらにクリーニング性に関しても、トナー表面近傍でのワックス量(均一性)の適正化により、優れた効果を得ることができた。また、耐久定着面均一性に関し、離型剤と樹脂とが均一存在することでそれらの接合性を高めることにより、定着面先端と後端の多少の温度差に関わらず優れたシャープメルト性によるムラの無い画像を得ることが可能となった。高温高湿保存性に関しても、表面近傍に離型剤が均一に存在することにより、優れた疎水性を得ることが可能となった。
[実施例2]
表10に記載の処方のように、ワックスを変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー2を作製した。トナー2の物性値を表11に、実施例1と同様にして行ったトナー特性試験の結果を表12〜14に示す。
[実施例3、4]
表10に記載の処方のように、結着樹脂を変更した以外は、実施例1と同様にして、トナー3,4を作製した。トナー3,4の物性値を表11に、実施例1と同様にして行ったトナー特性試験の結果を表12〜14に示す。
[実施例5]
表10に記載の処方のように結着樹脂を変更し、また、混練条件について、第1ニーディング部の加熱温度を150℃、第2ニーディング部の加熱温度を150℃、パドルの回転数を200rpmで主軸冷却なし(混練条件2)にした以外は、実施例1と同様にしてトナー5を作製した。トナー5の物性値を表11に、実施例1と同様にして行ったトナー特性試験の結果を表12〜14に示す。
[実施例6]
表10に記載の処方のように結着樹脂及びその添加量を変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー6を作製した。トナー6の物性値を表11に、実施例1と同様にして行ったトナー特性試験の結果を表12〜14に示す。
[比較例1〜5]
表10に記載の処方のように結着樹脂(及びその添加量)並びにワックスを変更した以外は、実施例5と同様にして、トナー7〜11を作製した。トナー7〜11の物性値を表11に、実施例1と同様にして行ったトナー特性試験の結果を表12〜14に示す。
[実施例7]
(トナー12の調製)
・結着樹脂a 60質量部
・結着樹脂A 40質量部
・電荷制御剤−2 2質量部
・カーボンブラック 5質量部
・フィッシャートロプシュワックス(融点105℃) 4質量部
上記処方を用いて、実施例1と同様にして、トナー12を作製した。さらに、カーボンブラックの代わりにピグメントレッド57を用いたマゼンタトナーと、カーボンブラックの代わりにピグメントイエロー74を用いたイエロートナーと、カーボンブラックの代わりにピグメントブルー15:3を用いたシアントナーとを作製した。これらのカラートナー及びトナー12を用いて、実施例1と同様にして、YMCKフルカラー一成分現像評価を行った。
上記カラートナー及びトナー12は、上記評価項目に関しても良好であった。さらにトランスペアレンシーフィルムに形成したカラー画像をオーバーヘッドプロジェクター(OHP)に投影したOHT画像の透明性も良好なものであった。