本発明では、結着樹脂としてある温度における貯蔵弾性率を規定した少なくとも2種類以上の樹脂を用いることを特徴としている。これは低温定着性と耐高温オフセット性・耐ブロッキング性など改良の方向性が従来相反する特性に対して、樹脂の貯蔵弾性率の設計を最適化することにより両立させることを目的としている。
具体的には、ポリエステルユニットを含有する第1の樹脂(A)及び第2の樹脂(B)の温度Tにおける貯蔵弾性率G'A(T)及びG'B(T)について以下の関係が成り立つことを特徴としている:
(1)G'A(100)が104乃至106 Pa・sであり、G'B(100)が102乃至104 Pa・sである;
(2)G'A(50)及びG'B(50)が、108乃至109 Pa・sである;
(3)G'A(50)/ G'A(60)が3乃至10であり、G'B(50)/ G'B(60)が1乃至7である;および
(4)G'A(50)/ G'A(60) >G'B(50)/ G'B(60)。
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明における結着樹脂は、100℃における貯蔵弾性率G'が104乃至106 Pa・sである樹脂(A)と102乃至104 Pa・sである樹脂(B)の少なくとも2種類以上のポリエステルユニットを含有する樹脂を混合したものである。従来の結着樹脂設計の考え方では、G'(100)が高い樹脂(A)は粘度及び軟化点が高く、主にトナーの耐高温オフセット性に高い効果を発揮するが低温定着性に対しては不利であるとされてきた。またG'(100)が低い樹脂(B)は粘度及び軟化点が低く、主に低温定着性に効果を発揮するが耐ブロッキング性に対しては不利であるとされてきた。本発明ではこの2種類を混合して結着樹脂とすることでお互いの長所を活かして幅広い定着領域を達成可能にするだけでなく、以下に示すような設計をすることで樹脂(A)に低温定着性改良効果を、樹脂(B)に耐ブロッキング性改良効果を付与できることを見出した。
具体的には、樹脂(A)及び(B)は以下の関係を満たす。
・G'A(50)及びG'B(50)が、108乃至109 Pa・sである。
・G'A(50)/ G'A(60)が3乃至10であり、G'B(50)/ G'B(60)が1乃至7である。
・G'A(50)/ G'A(60) >G'B(50)/ G'B(60)
我々の検討によれば、結着樹脂の低温側での貯蔵弾性率G'の変化率が低温定着性と耐ブロッキング性に大きく影響を及ぼすことが分かった。特に温度50℃と60℃との貯蔵弾性率の比について、樹脂(B)よりも樹脂(A)の方が大きくなるように設計することで、樹脂(A)に迅速溶融性の効果を、そして樹脂(B)に耐ブロッキング性向上の効果を発揮させることができる。
更に本発明の結着樹脂においては下記式を満たすことが好ましい。
[G'A(50)/ G'A(60)]/[G'B(50)/ G'B(60)]>3
これは樹脂(A)の温度50℃と60℃との貯蔵弾性率の比が、樹脂(B)の温度50℃と60℃との貯蔵弾性率の比の3倍より大きいことを示している。この条件を満たすことによって先に述べたような効果が更に高まるだけでなく、樹脂(A)と樹脂(B)の両樹脂の相溶性が高まり、離型剤など内添剤の分散性が向上し、選択現像や遊離ワックスの発生などが抑制されてトナーの耐久安定性や現像・定着部材などの汚染を防止することができる。
更に本発明の結着樹脂に用いられる樹脂(A)において下記式を満たすことが好ましい。
G'A(120)/G'A(160)<7
これは高軟化点樹脂の温度120℃と160℃との貯蔵弾性率の比が7以下であることを示している。この範囲内にある時、樹脂(A)は優れた迅速溶融性と耐高温オフセット性を有することができる。この比が7より大きい場合は、樹脂の粘度が低くなり低温定着性が向上する代わりに高温オフセット性・ブロッキング性が悪化してしまう。また、トナー製造時の溶融混練時において磁性体や離型剤などの分散性が悪化してしまう。
樹脂(A)の軟化点は120乃至150℃の範囲であることが良く、好ましくは125乃至145℃であることが良い。軟化点が120℃より低い場合には耐高温オフセット性が悪化し、150℃より高い場合には低温定着性の悪化が起こってしまう。
樹脂(B)の軟化点は80乃至120℃の範囲であることが良く、好ましくは85乃至110℃であることが良い。軟化点が80℃より低い場合にはトナーの粘度が低下して現像・定着部材へのトナー融着が発生しやすくなり、120℃より高い場合には求める低温定着性が得られない。
また樹脂(A)と(B)の軟化点の差は20℃以上であることが良く、好ましくは30℃乃至50℃であることが好ましい。軟化点の差が20℃より小さい場合には定着領域が狭まってしまい、50℃より大きい場合には両樹脂の相溶性が悪いために内添剤の分散性が悪化してしまう。
樹脂(A)のガラス転移点は40乃至60℃の範囲であることが好ましく、樹脂(B)のガラス転移点は50乃至70℃の範囲であることが好ましい。それぞれ下限温度より低い場合には耐ブロッキング性が悪化してしまい、上限温度より高い場合には求める低温定着性が得られない。
また樹脂(A)と樹脂(B)のガラス転移点の差は10℃以下であることが良く、好ましくは1乃至7℃であることが好ましい。ガラス転移点の差が10℃より大きい場合にはトナー製造時の溶融混練時において両樹脂の相溶性が悪く、内添剤の分散性が悪化してカブリやトナー融着が発生する。
本発明において樹脂(A)と樹脂(B)の混合比は90/10乃至10/90であることが良く、好ましくは80/20乃至20/70であることが良い。樹脂(A)の混合比が90%より多い場合には、低温定着性が悪化する傾向にあり、10%より少ない場合には耐高温オフセット性、耐ブロッキング性が悪化する傾向にあり好ましくない。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、ポリエステルユニットを含有する樹脂であり、例えばポリエステル樹脂、更にはポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットを含有するハイブリッド樹脂である事が好ましい。
ポリエステルユニットを含有する樹脂とは、多価アルコールと多塩基酸との重縮合により生成する樹脂であり、使用されるポリエステルモノマーとしては以下のものが挙げられる。
二価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また下記(ア)式で表されるビスフェノール誘導体、及び下記(イ)式で示されるジオール類が挙げられる。
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
また、二価のカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等のベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;またさらに炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸若しくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂のその他のモノマーとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、さらには例えばノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル等の多価アルコール類;トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸類等が挙げられる。
本発明の結着樹脂においては、求める軟化点、ガラス転移点、貯蔵弾性率の調整のためにモノマー構成を以下のようにすることが好ましい。
樹脂(A)及び樹脂(B)を構成するモノマーの1つとして、主鎖又は側鎖に炭素数4以上のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族カルボン酸を含有することが好ましく、更に樹脂(A)の方が樹脂(B)よりもこのモノマーの含有量が多いことが好ましい。すなわち、該モノマーの、樹脂(A)中の含有量(モル%)および樹脂(B)中の含有量(モル%)をそれぞれA(C4)およびB(C4)としたとき、A(C4)>B(C4)であることが好ましい。該モノマーはその骨格から、離型剤との相溶性に優れるだけでなく、芳香族系に比べてポリマー中でソフトセグメントとして存在するために50〜60℃での貯蔵弾性率G'を低くする効果がある。この効果は主鎖又は側鎖の炭素数が多いほど大きく、添加量を調整することでG'の値を調整することができる。このようなモノマーを含有することにより樹脂中への離型剤の分散性が向上して低温定着性や離型効果が改良される。また、樹脂(A)により多く含有することで50〜60℃での貯蔵弾性率G'を低く調整することができ、樹脂(B)との相溶性も高まりトナーの耐久性が向上する。
また本発明の結着樹脂のうち少なくとも樹脂(B)は芳香族ジカルボン酸を含有することが好ましく、樹脂(A)中の芳香族ジカルボン酸含有量A(Di)、樹脂B中の含有量B(Di)について下記式を満たすことが好ましい。
A(Di)=0、B(Di)<40又は0.1<A(Di)/B(Di)<0.5
これは樹脂(B)の方が樹脂(A)よりも芳香族ジカルボン酸を多く含有し、樹脂(B)中にのみ40モル%以下含有すること、又は樹脂(A)と樹脂(B)中の含有量の比が0.1乃至0.5の範囲内にあることを示している。該モノマーは熱的に安定で50〜60℃での貯蔵弾性率G'を高くする効果があるため、低軟化点の樹脂(B)中に多く含有することで耐ブロッキング性の向上が可能になる。樹脂(A)中の含有量が多くA(Di)/B(Di)が0.5以上になる場合には、低温定着性の悪化や耐ブロッキング性の悪化が起こりやすくなる。
また樹脂(A)中における、主鎖及び側鎖に炭素数4以上のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族カルボン酸の含有量A(C4)と芳香族ジカルボン酸の含有量A(Di)について以下の関係式を満たすことが好ましい。
A(Di)=0、A(C4)<40又はA(C4)/A(Di)≧3
これは樹脂(A)において、芳香族ジカルボン酸を含有せず脂肪族カルボン酸を40モル%より少なく含有すること、又は脂肪族カルボン酸の含有量が芳香族ジカルボン酸の含有量の3倍以上であることを示している。従来粘度が高く低温定着性に不利とされている樹脂(A)中に芳香族ジカルボン酸に比べてソフトセグメントである脂肪族カルボン酸を多く含有させることで迅速溶融性を付与することができ、この2つのモノマー量を調整することによって求める貯蔵弾性率とガラス転移点、軟化点を制御することができる。芳香族ジカルボン酸が多く、A(C4)/A(Di)が3未満になる場合には樹脂(A)の粘度が高くなって50℃と60℃とにおけるG'の比が小さくなり、低温定着性の悪化や樹脂(B)との相溶性悪化による内添剤の分散性悪化が起こりやすくなる。
また本発明における樹脂(A)及び(B)が3価以上の芳香族カルボン酸を含有することが好ましく、更に樹脂(A)中の芳香族カルボン酸の含有量A(Ar)と樹脂(B)中の含有量B(Ar)について下記式を満たすことが好ましい。
0.3<B(Ar)/A(Ar)<0.9
これは樹脂(A)の方が樹脂(B)よりも3価以上の芳香族カルボン酸を多く含有することを示している。該モノマーはポリマー中に枝分かれ構造を導入することができるため分子量とガラス転移点の設計がしやすく、特に樹脂(A)中において分子量を高く保ちつつガラス転移点を下げることができる。更に含有量の比が0.3乃至0.9の範囲内にある時、求める貯蔵弾性率の値が得られ低温定着性と耐高温オフセット性の両立が可能となる。
3価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
本発明の結着樹脂としてより好ましく用いられるハイブリッド樹脂において、ビニル系重合体成分を生成するためのビニル系モノマーとしては次のようなスチレン系モノマーおよびアクリル酸系モノマーを挙げることができる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体が挙げられる。
アクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸及びアクリル酸エステル類や、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類や、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、ビニル系重合体のモノマーとしては、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
ビニル系重合体成分には、ビニル重合が可能な種々のモノマーを必要に応じて併用することができる。このようなモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸の酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
また、前記ビニル系重合体成分は、必要に応じて以下に例示するような架橋性モノマーで架橋された重合体であってもよい。架橋性モノマーには、例えば芳香族ジビニル化合物、アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類、ポリエステル型ジアクリレート類、及び多官能の架橋剤等が挙げられる。
芳香族ジビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えばポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類としては、例えば商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
これらの架橋性モノマーは、他のモノマー成分100質量%に対して、0.01〜10質量%(さらに好ましくは0.03〜5質量%)用いることができる。またこれらの架橋性モノマーのうち、定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)や、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
前記ビニル系重合体成分は、重合開始剤を用いて製造された樹脂であっても良い。このような重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロビルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
前記ハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニット及びビニル系重合体成分が直接又は間接的に化学的に結合している樹脂であり、上述のポリエステルユニット、ビニル系重合体成分、及びこれらの樹脂成分の両方と反応し得るモノマー成分から構成される。ポリエステルユニットを構成するモノマーのうちビニル系重合体成分と反応し得るものとしては、例えばフマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
ビニル系重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステルユニットと反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ハイブリッド樹脂を得る方法としては、先に挙げたポリエステルユニット及びビニル系重合体成分のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方若しくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
本発明の所期効果を発揮するためには、ハイブリッド樹脂中にポリエステルユニットを50乃至90質量%含有することが好ましい。
本発明のトナーは、示差走査型熱量計(DSC)測定による昇温時の吸熱ピーク温度で規定される融点が60〜120℃である離型剤を含有することができる。離型剤の融点は好ましくは70〜115℃、更に好ましくは80〜110℃であることが良い。融点が60℃未満の場合はトナーの粘度が低下して離型効果が低下し、耐久による現像部材・クリーニング部材への汚染が発生してしまい、融点が120℃を超える場合は求める低温定着性が得られない。
該離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1乃至30質量部添加することが好ましい。1質量部未満の場合は望まれる離型効果が十分に得られず、30質量部を超える場合はトナー中での分散も悪く、感光体へのトナー付着や、現像部材・クリーニング部材の表面汚染などが起こり、トナー画像が劣化するなどの問題を引き起こし易くなる。
該離型剤としては例えば、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス及びパラフィンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;それら脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス及びモンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類の如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類:ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;炭素数12以上の長鎖アルキルアルコール又は長鎖アルキルカルボン酸;等が挙げられる。
本発明において特に好ましく用いられる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合し、又は低圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したもの;が挙げられる。
前記脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、例えば、金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレン等のアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素;が挙げられる。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましく、特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
使用できる具体的な例としては、ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200 (三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋ペトロライト社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)等があげられる。
該離型剤を添加するタイミングは、トナー製造中の溶融混練時において添加しても良いが結着樹脂製造時であることが好ましい。結着樹脂中の炭素数4以上のアルキル基及び/又はアルケニル基が相溶化剤的な効果を発揮して低融点ワックスをより均一に分散させることができる。あらかじめ離型剤を分散させておくと、トナー溶融混練時における磁性体など他の内添剤の分散効果が高まるので好ましい。
本発明のトナーは磁性トナーであっても非磁性トナーであっても良いが、高速機における耐久安定性などの点から磁性トナーであることが好ましい。
本発明で用いられる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトなどの酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む磁性酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bf,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。従来、四三酸化鉄(Fe3O4)、三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、酸化鉄亜鉛(ZnFe2O4)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe5O12)、酸化鉄カドミウム(Cd3Fe2O4)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe5O12)、酸化鉄銅(CuFe2O4)、酸化鉄鉛(PbFe12O19)、酸化鉄ニッケル(NiFe2O4)、酸化鉄ネオジム(NdFe2O3)、酸化鉄バリウム(BaFe12O19)、酸化鉄マグネシウム(MgFe2O4)、酸化鉄マンガン(MnFe2O4)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が知られている。特に好適な磁性材料は四三酸化鉄又はγ三二酸化鉄の微粉末である。また上述した磁性材料を単独で或いは2種以上の組合せで選択使用することもできる。
これらの磁性体は795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力1.6〜12.0kA/m飽和磁化、50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化2〜20Am2/kgのものが好ましい。磁性材料の磁気特性は、25℃,外部磁場769kA/mの条件下において振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
該磁性体は、結着樹脂100質量部に対して、10乃至200質量部添加するのが好ましい。
非磁性トナーとして用いる場合には、着色剤として以下のような顔料または染料を用いることができる。
着色剤としては、カーボンブラックやその他従来より知られているあらゆる顔料や染料の一種又は二種以上を用いることができる。
染料としては、C.I.ダイレクトレッド1,C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1,C.I.べーシックレッド1,C.I.モーダントレッド30,C.I.ダイレクトブルー1,C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15,C.I.べーシックブルー3,C.I.べーシックブルー5,C.I.モーダントトブルー7,C.I.ダイレクトグリーン6,C.I.べーシックグリーン4、C.I.べーシックグリーン6等がある。顔料としては、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
本発明のトナーをフルカラー画像形成用トナーとして使用する場合には、次の様な着色剤が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
上記マゼンタ顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料を併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40、C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28などの塩基性染料が挙げられる。
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45又は下記構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料などである。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,35,73,83、C.I.バットイエロー1,3,20などが挙げられる。
着色剤は樹脂成分100質量部に対して、0.1〜60質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜50質量部である。
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるために電荷制御剤を用いることができる。電荷制御剤は、その種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1〜10質量部含まれることが好ましく、0.1〜5質量部含まれることがより好ましい。このような電荷制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種又は二種以上用いることができる。
トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効で、その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩;が挙げられる。その他にも、トナーを負帯電性に制御するものとしては、例えば芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩や無水物;エステル類やビスフェノール等のフェノール誘導体;等が挙げられ
る。
トナーを正帯電性に制御するものとしては、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート;等が挙げられる。本発明ではこれらの一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。トナーを正帯電性に制御するものとしては、これらの中でもニグロシン系化合物、四級アンモニウム塩等の電荷制御剤が特に好ましく用いられる。
使用できる具体的な例としては、Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89 (オリエント化学社)があげられ、正帯電用としては好ましいものとしては、例えばTP−302、TP−415 (保土谷化学社)、BONTRON(登録商標) N−01、N−04、N−07、P−51(オリエント化学社)、コピーブルーPR(クラリアント社)が例示できる。
また、電荷制御樹脂も用いることができ、上述の電荷制御剤と併用することもできる。
本発明のトナーの帯電性は正負どちらでも構わないが、結着樹脂であるポリエステル樹脂自体は負帯電性が高いため、負帯電性トナーであることが好ましい。
本発明のトナーに流動性向上剤として無機微粉末を使用しても良い。該流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものならば使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらシリカをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ等がある。好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらもシリカとして包含する。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。
AEROSiL(日本アエロジル杜)
130
200
300
380
TT600
MOX170
MOX80
COK84
Ca−O−SiL(CABOT Co.社)
M−5
MS−7
MS−75
HS−5
EH−5
Wacker HDK N 20
(WACKER−CHEMIE GNBH社)
V15
N20E
T30
T40
D−CFine Silica(ダウコーニングCo.社)
Fransol(Francil社)
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることが好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって滴定された疎水化度が30乃至80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1−ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
該無機微粉体は、シリコーンオイル処理されても良く、また、上記疎水化処理と併せて処理されても良い。
好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30〜1000mm2/sのものが用いられ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が特に好ましい。
シリコーンオイル処理の方法としては、例えばシランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法;べースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法;あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法;を用いることが可能である。シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させることがより好ましい。
窒素原子を有するアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジルアミンの如きシランカップリング剤も単独あるいは併用して使用される。好ましいシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
本発明においては、シリカをあらかじめ、カップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、または、シリカをカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法によって処理されたものが好ましい。
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー粒子100質量部に対して流動性向上剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用するのが良い。
また、本発明のトナーには必要に応じて帯電性向上剤以外の外部添加剤を添加しても良い。
例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、離型剤、滑剤、研磨剤などの働きをする樹脂微粒子や無機微粒子などである。このようなものとしては、例えば、テフロン(登録商標)、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデンが好ましい。あるいは、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。あるいは、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。あるいはケーキング防止剤や、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズなどの導電性付与剤、また、逆極性の微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
トナーと混合される樹脂微粒子または無機微粉体または疎水性無機微粉体などは、トナー100質量部に対して、0.1乃至5質量部使用するのが好ましい。
また本発明のトナーは、画像濃度、解像度などの点から、重量平均粒径が3乃至9μmであることが好ましい。
本発明のトナーを作製するには、まず結着樹脂、着色剤及び/または磁性体(磁性粉)、離型剤、荷電制御剤またはその他の添加物を、ヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により、充分混合する。その混合物をニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、混練して樹脂類を互いに相溶せしめ、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級して本発明のトナー得ることができる。さらに、流動性向上剤及び/または他の外添剤とトナーをヘンシェルミキサーの如き混合機により充分混合し、トナー粒子表面に流動性向上剤及び/または他の外添剤を有するトナーを得ることができる。
以下にトナー製造用装置として一般的に使用されるものを示すが、これらに限定されるものではない。
(1)トナー製造用粉砕装置例:
装置名称 製造メーカー
カウンタージェットミル ホソカワミクロン
ミクロンジェット ホソカワミクロン
IDS型ミル 日本ニューマチック工業
PJMジェット粉砕機 日本ニューマチック工業
クロスジェットミル 栗本鉄工所
ウルマックス 日曹エンジニアリング
SKジェット・オー・ミル セイシン企業
クリプトロン 川崎重工業
ターボミル ターボ工業
イノマイザ ホソカワミクロン
(2)トナー製造用分級装置例:
装置名称 製造メーカー
クラッシール セイシン企業
マイクロンクラッシファイアー セイシン企業
スペディッククラッシファイアー セイシン企業
ターボクラシファイアー 日清エンジニアリング
ミクロンセパレータ ホソカワミクロン
ターボプレックス(ATP) ホソカワミクロン
TSPセパレータ ホソカワミクロン
エルボージェット 日鉄鉱業
ディスパージョンセパレータ 日本ニューマチック工業
YMマイクロカット 安川商事
(3)トナー製造用篩装置例:
装置名称 製造メーカー
ウルトラソニック 晃栄産業
レゾナシープ 徳寿工作所
バイブラソニックシステム ダルトン
ソニクリーン 新東工業
ジャイロシフター 徳寿工作所
円形振動篩 メーカー多数
ターボスクリナー ターボ工業
ミクロシフター 槙野産業
(4)トナー製造用混合装置例:
装置名称 製造メーカー
ヘンシェルミキサ 三井鉱山
スーパーミキサ カワタ
リボコーン 大川原製作所
ナウタミキサー ホソカワミクロン
スパイラルピンミキサ 太平洋機工
レーディゲミキサ マツボー
タービュライザー ホソカワミクロン
サイクロミックス ホソカワミクロン
(5)トナー製造用混練装置例:
装置名称 製造メーカー
KRCニーダー 栗本鉄工所
ブス・コ・ニーダー Buss
TEM形押出機 東芝機械
TEX2軸混練機 日本製鋼所
PCM混練機 池貝鉄工所
3本ロールミル 井上製作所
ミキシングロールミル 井上製作所
ニーダー 井上製作所
ニーデックス 三井鉱山
MS式加圧型ニーダー 森山製作所
ニダールーダー 森山製作所
バンバリーミキサー 神戸製鋼所
次に本発明のトナー及び原材料の物性測定方法を以下に示す。
(1)樹脂の貯蔵弾性率の測定方法
樹脂サンプルを直径8mm、厚さ約2〜3mmの円板状の試料に加圧成形する。次にパラレルプレートにセットし、30〜200℃の温度範囲内で徐々に昇温させ、温度分散測定を行う。昇温速度は2℃/minとし、角周波数(ω)は6.28rad/sに固定し、歪率は自動とする。横軸に温度、縦軸に貯蔵弾性率(G')を取り、各温度における値を読み取る。測定にあたっては、RDA-II(レオメトリックス社製)を用いる。
(2)樹脂の軟化点測定方法
JIS K 7210にのっとり、高化式フローテスターにより測定されるものを指す。具体的な測定方法を以下に示す。高化式フローテスター(島津製作所製)を用いて1cm3の試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1960N/m2(20kg/cm2)の荷重を与え、直径1mm,長さ1mmのノズルを押し出すようにし、これにより、プランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、そのS字曲線の高さをhとするとき、h/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を軟化点とする。
(3)樹脂のガラス転移温度(Tg)及びワックスの融点の測定
測定装置 :示差走査型熱量計(DSC)、MDSC−2920(TA Instruments社製)
ASTM D3418-82に準じて測定する。
測定試料は2〜10mg、好ましくは3mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用いて、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下測定を行う。2回目の昇温過程で得られる、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線をもって解析を行う。
ガラス転移温度(Tg)については、得られたDSC曲線より中点法で解析を行った値を用いる。また、ワックスの融点ついては、得られたDSC曲線の吸熱メインピークの温度値を用いる。
(4)粒度分布の測定
測定装置 :コールターマルチサイザーIIe(ベックマン・コールター社製)
電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて、1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R II(ベックマン・コールター社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1乃至5ml加え、更に測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して、体積分布と、個数分布とを算出した。それから、本発明に係る重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)(それぞれ各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。