JP6675244B2 - トナーおよびトナーの製造方法 - Google Patents

トナーおよびトナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、トナーおよびトナーの製造方法に関する。
一般的に、感光体上に形成したトナー画像を記録紙に転写するPPC(Plain Paper Copy)複写機やプリンターにおける電子写真法は、以下のような手順で行われる。まず、感光体上に静電気的潜像を形成する。ついで該潜像をトナーを用いて現像し、紙等の被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールやフィルムで加熱定着する。この方法は、熱ロールやフィルムと被定着シート上のトナーが直接接触した状態で加熱下にて定着が行われるので、迅速でしかも熱効率が極めて良好である。したがって、定着効率が非常によい。
このような電子写真法に使用されるトナーにはバインダー樹脂が使用されている。以下の特許文献1および2には、こうしたトナーの例が記載されている。
特許文献1(国際公開第2008/075463号)には、少なくともカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)と、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを含み、スチレン系単量体とアクリル系単量体との質量比(S/A)が4.6以上8.5未満であるバインダー樹脂を含有するトナーが記載されている。
特許文献2(国際公開第2004/015498号)には、エポキシ当量が1000〜30000である架橋剤(A)と、特定の要件を満たすスチレン・アクリル系樹脂とから得られ、0.1〜50質量%のゲル分を含み、ガラス転移温度が45〜75℃であるトナー用バインダー樹脂を含有するトナーが記載されている。
国際公開第2008/075463号パンフレット 国際公開第2004/015498号パンフレット
しかし、本発明者らの検討によれば、例えば、特許文献1および2等に記載のスチレン・アクリル系共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂をベースとしたバインダー樹脂を用いたトナーは、定着後の画像からトナーが剥がれ落ちやすい場合があり、耐スミア性が十分に満足するものではないことが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐スミア性に優れるトナーを提供するものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、熱可塑性樹脂を含む海相中にエチレン・極性モノマー共重合体樹脂を含む島相を特定の大きさで微分散させることにより、耐スミア性に優れるトナーが得られることを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、以下に示すトナーおよびトナーの製造方法が提供される。
[1]
トナー用バインダー樹脂、着色剤および荷電制御剤を含むトナーであって、
上記トナー用バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂(A)と、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)と、を含み、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相が上記熱可塑性樹脂(A)を含む海相に微分散した海島構造を有し、
上記島相の最大径が0.1μm以上3.0μm以下の範囲内であるトナー。
[2]
上記[1]に記載のトナーにおいて、
上記熱可塑性樹脂(A)がスチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂およびポリエステル系樹脂から選択される少なくとも一種を含むトナー。
[3]
上記[1]または[2]に記載のトナーにおいて、
上記熱可塑性樹脂(A)が架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂を含み、
上記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂がカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、およびこれらの反応物を含むトナー。
[4]
上記[1]乃至[3]いずれか一つに記載のトナーにおいて、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むトナー。
[5]
上記[1]乃至[4]いずれか一つに記載のトナーにおいて、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の示差走査型熱量測定法(DSC)による融点が70℃以上100℃以下であるトナー。
[6]
上記[1]乃至[5]いずれか一つに記載のトナーにおいて、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の環球法による軟化点が60℃以上115℃以下であるトナー。
[7]
上記[1]乃至[6]いずれか一つに記載のトナーにおいて、
上記トナー用バインダー樹脂由来のテトラヒドロフラン(THF)不溶成分を上記トナー全体に対して1質量%以上40質量%以下含有するトナー。
[8]
上記[1]乃至[7]いずれか一つに記載のトナーにおいて、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量が上記トナー全体に対して1.5質量%以上9.5質量%以下であるトナー。
[9]
上記[1]乃至[8]いずれか一つに記載のトナーにおいて、
電子写真用であるトナー。
[10]
熱可塑性樹脂(A)、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)、着色剤および荷電制御剤を含むトナーの製造方法であって、
上記熱可塑性樹脂(A)が、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、およびこれらの反応物を含み、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の存在下で、上記カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)と、上記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)を溶融混練することによって上記カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)と上記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを架橋反応させ、上記熱可塑性樹脂(A)を含む海相に上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相を微分散させる工程と、
着色剤および荷電制御剤を混合する工程と、
を含むトナーの製造方法。
[11]
上記[10]に記載のトナーの製造方法において、
上記溶融混練時の温度が140℃以上230℃以下の範囲内であるトナーの製造方法。
[12]
上記[10]または[11]に記載のトナーの製造方法において、
上記島相の最大径が0.1μm以上3.0μm以下の範囲内であるトナーの製造方法。
[13]
上記[10]乃至[12]いずれか一つに記載のトナーの製造方法において、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むトナーの製造方法。
[14]
上記[10]乃至[13]いずれか一つに記載のトナーの製造方法において、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の示差走査熱量計(DSC)による融点が70℃以上100℃以下であるトナーの製造方法。
[15]
上記[10]乃至[14]いずれか一つに記載のトナーの製造方法において、
上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の環球法による軟化点が60℃以上115℃以下であるトナーの製造方法。
[16]
上記[10]乃至[15]いずれか一つに記載のトナーの製造方法において、
テトラヒドロフラン(THF)不溶成分を上記トナー全体に対して1質量%以上40質量%以下含有するトナーの製造方法。
本発明によれば、耐スミア性に優れるトナーを提供することができる。
以下に、本発明の実施形態について説明する。なお、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、重合という語を共重合の意味で使うことがあり、重合体という語を共重合体の意味で使うことがある。
本実施形態に係るトナーは、トナー用バインダー樹脂、着色剤および荷電制御剤を含むトナーであって、上記トナー用バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂(A)と、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)と、を含み、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相が熱可塑性樹脂(A)を含む海相に微分散した海島構造を有し、島相の最大径が0.1μm以上3.0μm以下の範囲内であり、好ましくは0.1μm以上2.0μm以下の範囲内である。
本実施形態に係るトナーは、上記海島構造を有することにより、耐スミア性を良好にすることができる。
また、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径を上記下限値以上とすることにより、耐スミア性および定着性を良好にすることができる。また、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径を上記上限値以下とすることにより、耐感光体汚染性をより良好にすることができる。
上記海島構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、4000倍〜10000倍の倍率で観察することにより確認できる。ここで、観察面積は、4000倍では、61μm×37μm程度、10000倍では、25.5μm×16μm程度である。測定試料が粒子状のトナーに粉砕する前の混練物(塊状)の場合は、トリミング・面出し後、RuOで染色し、超薄切片を作製して観察を行う。測定試料が粒子状のトナーの場合、エポキシ樹脂埋包後、混練物の場合と同様に観察することにより確認できる。
また、上記手法により観察することで、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径を確認することができる。
具体的には、測定試料が塊状の混練物の場合は、上記手法により、粒子状に粉砕する前の混練物を観察し、得られた画像から、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径を測定する。ここで、倍率4000倍で観察した際の観察視野61μm×37μm程度に存在する各島相の最も長い部分の長さをそれぞれ測定し、観察視野中で最も大きい値を「島相の最大径」とする。
粒子状のトナーの場合は、倍率4000倍で30粒子を観察し、30粒子中の各島相の最も長い部分の長さをそれぞれ測定し、それらの内、最も大きい値を「島相の最大径」とする。
なお、本実施形態では、例えばトナー用バインダー樹脂中に含まれる各樹脂成分の種類や配合量、トナー用バインダー樹脂の調製方法等を適切に選択することにより、上記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径を上記範囲内に制御することが可能である。これらの中でも、例えばエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量や、熱可塑性樹脂(A)の種類、熱可塑性樹脂(A)とエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)との混合条件等が、上記島相の最大径を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
例えば、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂中のエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量を低下させると、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径を小さくすることができる。
また、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂中のエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量を増加させると、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径を大きくすることができる。
また、熱可塑性樹脂(A)として、溶融混練時の混練シェアが適切にかかる樹脂を選択することにより、上記島相の最大径を小さくすることができる。
[トナー用バインダー樹脂]
以下、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂について詳細に説明する。
熱可塑性樹脂(A)の含有量は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、好ましくは65質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上98質量%以下であり、さらに好ましくは75質量%以上98質量%以下である。これにより、定着性、耐オフセット性、および保存性のバランスにより一層優れたトナーが得られる。
また、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上11質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるトナーの耐スミア性および定着性をより良好にすることができる。また、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるトナーの耐感光体汚染性をより良好にすることができる。
本実施形態のトナー用バインダー樹脂は、例えば、後述するカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)由来のカルボキシル基と、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)由来のグリシジル基との反応により生成する架橋成分を含有し、これに由来するTHF不溶成分を含んでいることが好ましい。
THF不溶成分の含有量は、良好な定着性、耐オフセット性、耐久性、トナー生産性のバランスの観点から、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の全体を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは4質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下である。
THF不溶成分を上記下限値以上にすることで、耐オフセット性により優れたトナーとすることができ、さらには、離型剤、荷電制御剤、着色剤、磁性体等のトナー部材と本実施形態のバインダー樹脂を混練・粉砕してトナーにする際に、十分な混練シェアがかかり、トナー部材の分散が良好になり、帯電が均一化し、環境安定性能の低下を抑制して、優れた現像性能を得ることができる。THF不溶成分を上記上限値以下にすることで、定着性能により優れたトナーとなり、低分子成分と架橋体との過剰な分離を防ぎ、耐オフセット性がより一層向上する。また、トナーが固くならないため、トナーの生産性も高めることができる。
以下、トナー用バインダー樹脂の各成分を説明する。
<熱可塑性樹脂(A)>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂(A)は、トナーに要求される各種特性をバランスよく向上させる観点から、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂およびポリエステル系樹脂から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂は構成単量体としてスチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体を含む樹脂であり、少なくとも1種のスチレン系単量体と少なくとも1種の(メタ)アクリル系単量体とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる。
ここで、本実施形態において使用されるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
本実施形態において使用される(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フルフリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N置換アクリルアミド、N置換メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、好ましくはアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルであり、より好ましくはアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチルである。
本実施形態において上記単量体の他に、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル等の不飽和二塩基酸のジエステル類も単量体として使用することができる。
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、トナー用バインダー樹脂として一般的に使用される公知のポリエステル系樹脂を用いることができる。
(架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂(A)は、トナーに要求される定着性、耐オフセット性、耐感光体汚染性、および保存性をより一層バランスよく向上させる観点から、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、およびこれらの反応物を含む架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂を含有することが好ましい。
ここで、架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂が有するゲル分(高分子成分)は、得られるトナーの耐オフセット性を向上させるものの、定着表面の平滑性を損ない、耐スミア性が低下する傾向にある。
しかし、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相が熱可塑性樹脂(A)を含む海相に微分散した海島構造を有するため、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)が有するゴム弾性により、表面の平滑性が低下しても耐スミア性を維持でき、さらに向上させることができる。その結果、耐オフセット性と耐スミア性を両立するトナーを実現することができる。
本実施形態に係る架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂において、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の比率(C/E)は、質量比で85/15〜99/1が好ましく、87/13〜97/3がより好ましい。これにより、耐オフセット性に優れたトナーが得られる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の比率を上記上限値以下にすることで、耐オフセット性により優れたトナーにすることができる。また、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の比率を上記下限値以上にすることで、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の反応により適量の架橋成分が生成するため、耐オフセット性により優れたトナーにすることができる。
なお、本実施形態に係る架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂は、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)を含有しており、さらにカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)由来のカルボキシル基とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)由来のグリシジル基の反応により生成する架橋成分を含んでいる。
(カルボキシル基含有ビニル樹脂(C))
本実施形態に係るカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)は、スチレン系単量体の少なくとも1種と、(メタ)アクリル系単量体の少なくとも1種と、カルボキシル基含有単量体の少なくとも1種とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)に使用されるスチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体としては、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂の説明で例示した単量体を用いることができる。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)に使用されるカルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイヒ酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル等の不飽和二塩基酸のモノエステル類等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチルであり、特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。
本実施形態におけるカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)は、単量体として、必要に応じて2個以上の2重結合を有する架橋性モノマーを使用してもよい。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、等のジアクリレート化合物およびそれらのメタクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等の多官能架橋性モノマーおよびそれらのメタクリレート化合物等が挙げられる。
これら多官能架橋性モノマーを使用する場合は、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)の他のモノマー100質量部に対して0.5質量部以下であることが好ましい。上記上限値以下にすることで、後述するカルボキシル基とグリシジル基の反応により生成する架橋体が、トナー製造の際に切断されにくくなる。
本実施形態に係るカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)の酸価は、0.5〜30mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1〜30mgKOH/gである。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)の酸価が上記下限値以上であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との反応が良好に進行し、耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。
一方、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)の酸価が上記上限値以下であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との過剰な架橋反応が抑制され、その結果、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の反応によって得られる架橋成分が、非架橋成分と相分離し過ぎることに起因すると考えられる耐オフセット性の低下を抑制できる。
なお、本実施形態において、酸価は、樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)は、トナーの定着性、耐オフセット性、耐久性等の総合バランスの観点から、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布において分子量5.0×10以上5.0×10以下の領域にピークを有する高分子量ビニル樹脂(H)と、GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布において分子量1.0×10以上5.0×10未満の領域にピークを有する低分子量ビニル樹脂(L)とを含むことが好ましい。ここで言うピークとはメインピーク(ピークの中で最も強度の大きいピーク)のことを指す。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)が高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)から構成される場合、その比率(H/L)は、トナーの定着性、耐オフセット性、耐久性等の総合バランスの観点から、10/90〜90/10であることが好ましく、10/90〜65/35であることが好ましく、10/90〜50/50であることがより好ましい。
高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記下限値以上とすることで、耐久性や耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーを得ることができる。
(高分子量ビニル樹脂(H))
本実施形態において高分子量ビニル樹脂(H)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量5.0×10以上5.0×10以下の領域にメインピークを有することが好ましく、より好ましくは1.0×10以上3.5×10以下にピークを有することが、優れた定着性、耐オフセット性、耐久性のバランスを実現する上で好ましい。
高分子量ビニル樹脂(H)のメインピークの分子量(以下、ピーク分子量という)を上記下限値以上とすることで、樹脂の強度が向上し、耐久性により優れたトナーを得ることができる。また、後述するグリシジル基との反応による架橋体形成において、架橋形成が良好に進行するため、耐オフセット性に優れたトナーを得ることができる。また、ピーク分子量を上記上限値以下にすることで、高分子量ビニル樹脂が未反応の状態で残っても、定着時のトナーの粘度が上がりにくくなり、定着性により優れたトナーが得られる。また、樹脂の強度も適度になり、生産性にもより優れたトナーとすることができる。
高分子量ビニル樹脂(H)は、酸価(AVH)が3〜35mgKOH/g、より好ましくは5〜27mgKOH/gであることがトナーの定着性、耐オフセット性の面で好ましい。酸価が上記下限値以上であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)と反応しやすく、耐オフセット性により優れたトナーとすることができる。酸価が上記上限値以下であると、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との過剰な架橋反応が抑制され、その結果、トナーの定着温度域での損失弾性率が適度になり、定着性により優れたトナーとすることができる。
高分子量ビニル樹脂(H)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上の高分子量ビニル樹脂を使用してもよい。その場合、高分子量ビニル樹脂(H)全体として上記特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、カルボキシル基含有単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
(低分子量ビニル樹脂(L))
本実施形態において低分子量ビニル樹脂(L)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量1.0×10以上5.0×10未満にメインピークを有することが好ましく、定着性、耐久性およびトナーの生産性の観点から、分子量2.0×10以上3.0×10以下にメインピークを有することがより好ましい。ピーク分子量を上記下限値以上にすることで、耐久性により優れたトナーとすることができる。ピーク分子量が上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーとすることができる。
低分子量ビニル樹脂(L)は、酸価(AVL)が1〜20mgKOH/gであることが好ましく、2〜18mgKOH/gであることが優れた定着性能と耐オフセット性能を発揮する上でより好ましい。酸価(AVL)を上記下限値以上にすることで、高分子量ビニル樹脂(H)との相溶性が良好になり、耐久性、および、耐オフセット性により優れたトナーとなる。上記上限値以下にすることで、低分子量ビニル樹脂(L)によるグリシジル基含有ビニル樹脂(E)と高分子量ビニル樹脂(H)との反応阻害を抑制でき、かつ、低分子量ビニル樹脂(L)自体の高分子量化を抑制できるため、耐オフセット性、および、定着性のバランスに、より優れたトナーを得ることができる。
低分子量ビニル樹脂(L)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上の低分子量ビニル樹脂を使用しても構わない。そのときには、低分子量ビニル樹脂(L)全体として、上述の特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、カルボキシル基含有単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
本実施形態において、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)の製造方法としては、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法およびそれらの組み合わせが採用できる。分子量分布の調整や、高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)の混合性、カルボキシル基やグリシジル基の分布調整の簡便さから溶液重合が好適に採用される。
本実施形態に係るカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)は、高分子量ビニル樹脂(H)と低分子量ビニル樹脂(L)を、それぞれあらかじめ単独で重合し、それらを溶融状態もしくは溶液状態で混合して得ることができる。また、高分子量ビニル樹脂(H)もしくは低分子量ビニル樹脂(L)の一方を単独で重合した後、そのビニル樹脂の存在下に他方のビニル樹脂を重合して得ることもできる。
溶液重合に用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、キュメン等の芳香族炭化水素が挙げられ、これら単独またはこれらの混合物が使用され、好ましくはキシレンが好適である。
重合は、重合開始剤を用いて行ってもよいし、重合開始剤を用いずに、いわゆる熱重合を行ってもよい。重合開始剤としては通常、ラジカル重合開始剤として使用可能なものを使用することができる。例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカーボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチル−プロパン)等のアゾ系開始剤;メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド等のスルホニルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、クミルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソブロピルカーボネート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート等のパーオキシエステル類等が例示できる。これらの開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の種類や量は反応温度、単量体濃度等により適宜選んで使用でき、通常、用いる単量体100質量部に対して0.01〜10質量部使用される。
カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)は、エチレン系炭化水素および/または共役ジエン系炭化水素由来の構成単位の連鎖からなるブロックと、スチレン由来の連鎖からなるブロックとからなるブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物である水素添加ブロック共重合体から選択される少なくとも一種をさらに含有してもよい。
これらのブロック共重合体および水素添加ブロック共重合体の含有量は、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上1.5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上1.0質量部以下である。
これらのブロック共重合体を得るために、一般に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン等のエチレン系炭化水素、およびブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系炭化水素から選択される1種以上を使用してよい。これらを用いて公知のリビングアニオン重合やリビングカチオン重合により生成させたブロック共重合体の反応性基を利用し、さらにこれにスチレンをブロックさせる等の方法で製造される。しかしながら、製造方法に制限を受けるものではなく、従来公知のその他の製造方法により製造されたものを使用してもよい。さらに、上記のブロック共重合体の中には不飽和二重結合を有するものもある。これらは公知の方法により不飽和二重結合と水素とを反応させ、水素添加物として使用してもよい。
上記ブロック共重合体としては、市販のものとして、クレイトンポリマー社のクレイトン(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン系ブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系ブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン系ブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン系ブロック共重合体)、株式会社クラレ製セプトン(スチレン−エチレン/プロピレン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体の水添物)、旭化成株式会社製タフプレン(スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体)等が挙げられる。
(グリシジル基含有ビニル樹脂(E))
本実施形態に係るグリシジル基含有ビニル樹脂(E)は、スチレン系単量体の少なくとも1種と、(メタ)アクリル系単量体の少なくとも1種と、グリシジル基含有単量体の少なくとも1種とを用いて公知の重合方法を用いることによって得られる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)に使用されるスチレン系単量体および(メタ)アクリル系単量体としては、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂の説明で例示した単量体を用いることができる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)に使用されるグリシジル基含有単量体としては、アクリル酸グリシジル、アクリル酸βメチルグリシジル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸βメチルグリシジル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸βメチルグリシジルである。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において、好ましくは分子量1.0×10以上1.0×10以下、より好ましくは2.0×10以上8.0×10以下にピークを有する。また、エポキシ価は、0.003〜0.100Eq/100gが好ましく、0.003〜0.080Eq/100gがより好ましい。グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の、ピーク分子量およびエポキシ価が上記下限値以上であると、トナーにした際の耐久性が良好となり、長期連続印刷においてトナー破壊により画像の劣化が起きない、いわゆる現像維持特性がより向上する。また、それと同時に、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)との反応により、高分子量成分の分子量がより増大し、バインダー樹脂に適度な弾性を付与するため、耐オフセット性能がより良好となる。ピーク分子量を上記下限値以上としエポキシ価を上記下限値以上にすることで、バインダー樹脂に適度な弾性を付与し、耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、ピーク分子量を上記上限値以下としエポキシ価を上記上限値以下にすることで、バインダー樹脂の過剰な弾性を抑制でき、定着性により優れたトナーを得ることができる。
なお、本実施形態においてエポキシ価は、樹脂100g中に存在するエポキシ基のモル数であり、その測定はJIS K−7236に準じて行うことができる。
グリシジル基含有ビニル樹脂(E)は、必ずしも単独の重合体である必要はなく、2種以上のグリシジル基含有ビニル樹脂を使用してもよい。その場合、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)全体として上記特性を満たしていることが好ましい。また、単独の重合体を生成する際に、グリシジル基含有単量体を重合途中に添加、若しくは重合初期と後期に分けて添加することも可能である。
(ポリエステル系樹脂)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂(A)として使用するポリエステル系樹脂としては特に限定されないが、トナー用バインダー樹脂として一般的に用いられているポリエステル系樹脂が好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合または共縮重合によって得られるものを用いることができる。アルコール成分およびカルボン酸成分としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アルコール成分としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の2価又は3価以上のアルコール類等が挙げられる。
カルボン酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等の2価のカルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。
また、これらのカルボン酸の酸無水物又は低級アルキルエステル等も使用ことができる。
<エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)>
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・マレイン酸ジメチル共重合体、エチレン・マレイン酸ジエチル共重合体、エチレン・フマル酸ジメチル共重合体、エチレン・フマル酸ジエチル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・クロトン酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびそれらの塩;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体:エチレン・スチレン共重合体等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
これらの中でも、上記エチレン・極性モノマー共重合体としては、その入手容易性と性能とのバランスからエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、特に、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体であり、通常はランダム共重合体である。
上記エチレン・酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有割合は、好ましくは5質量%以上35質量%以下、より好ましくは8質量%以上25質量%以下である。
酢酸ビニル含有量は、JIS K6924−2に準拠して測定可能である。
なお、エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンおよび酢酸ビニルのみからなる二元共重合体が好ましいが、エチレンおよび酢酸ビニルの他に、例えば、ギ酸ビニル、グリコール酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、或いはこれらの塩もしくはアルキルエステル等のアクリル系単重体;等から選択される一種または二種以上の共重合成分として含んでもよい。上記エチレンおよび酢酸ビニル以外の共重合成分を含む場合、エチレン・酢酸ビニル共重合体中の上記エチレンおよび酢酸ビニル以外の共重合成分の量を0.5質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の示差走査型熱量測定法(DSC)による融点が、好ましくは70℃以上100℃以下である。これにより、定着性、保存性および耐感光体汚染性のバランスにより優れたトナーが得られる。
上記融点が上記下限値以上であると、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)がより低温で溶融しにくくなるため、得られるトナーの保存性を向上させることができる。一方、融点が上記上限値以下であると、トナーを定着させる際にエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)が溶融しやすくなるため、定着性の効果にエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)が寄与しやすくなり、定着性を向上させることができる。
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の環球法(JIS K2207に規定された方法)による軟化点が、好ましくは60℃以上115℃以下であり、より好ましくは70℃以上105℃以下である。これにより、定着性、保存性および耐感光体汚染性のバランスにより優れたトナーが得られる。
上記軟化点が上記下限値以上であると、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)がより低温で軟化しにくくなるため、得られるトナーの保存性を向上させることができる。一方、融点が上記上限値以下であると、トナーを定着させる際にエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)が軟化しやすくなるため、定着性の効果にエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)が寄与しやすくなり、定着性を向上させることができる。
<離型剤>
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、より良好な定着性能や耐オフセット性能を発現させるために離型剤をさらに含有してもよい。
離型剤としては従来公知のものを使用することができる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうのような植物系ワックス;蜜蝋、ラノリン、鯨ろうのような動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラタムのような鉱物系ワックス;モンタン酸エステル、カスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルの一部または全部を脱酸化したワックス;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、またはさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類のような飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、またはさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールのような飽和アルコール;ソルビトールのような多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N'−ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド;脂肪族炭化水素系ワックスにスチレン系単量体や(メタ)アクリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、グリシジル基含有単量体のようなビニル系単量体を用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪族と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することにより得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物;メタロセン触媒によって合成されたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリヘプテン、ポリオクテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ブテン−プロピレン共重合体や、長鎖アルキルカルボン酸と多価アルコールを縮合したり長鎖アルキルカルボン酸のハロゲン化物と多価アルコールを反応したりして得られるエステル基含有ワックス等が挙げられる。さらには、水酸基やエステル基やカルボキシル基等の官能基を有するワックスが挙げられる。
これらの離型剤は、単独または2種以上組み合わせて使用してもよい。
本実施形態において、離型剤の含有量は、耐オフセット性、保存性のバランスの観点から、熱可塑性樹脂(A)とエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)との合計量100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下がより好ましい。離型剤の含有量を上記下限値以上にすることで、耐オフセット性により優れたトナーとすることができ、上記上限値以下にすることで保存性の悪化や、耐感光体汚染性の悪化を抑制することができる。また、離型剤が偏在しにくくなるため、離型剤がトナーから抜け落ちるのを抑制し、耐久性により優れたトナーとすることができる。
[トナー用バインダー樹脂の製造方法]
次に、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の製造方法は、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の存在下で、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)と、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)を溶融混練することによってカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを架橋反応させる工程を含む。
このような方法は、例えば攪拌機付きの反応容器等にエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、およびグリシジル基含有ビニル樹脂(E)を仕込み、加熱して溶融状態で反応させる方法を採用でき、特に2軸混練機を用いる方法が好ましい。
エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の存在下で、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを溶融混練して架橋反応させることで、熱可塑性樹脂(A)を含む海相中にエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相を微分散させることができる。
この理由は明らかではないが、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)との反応により生成する架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂の極性基による化学的効果や、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とグリシジル基含有ビニル樹脂(E)との架橋反応時の増粘による撹拌シェアの増大等が考えられる。
溶融混練時の温度は、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)やグリシジル基含有ビニル樹脂(E)の官能基量や分子量によって異なるが、140℃〜230℃が好ましく、170℃〜220℃がより好ましい。溶融混練時の温度を上記下限値以上にすることで、架橋体形成が良好となり、かつ、混練のシェアが適度になりエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相をより微分散させることができる。
溶融混練時の温度を上記上限値以下にすることで、架橋反応が過剰に進行するのを防ぎ、架橋成分と非架橋成分との相分離を抑制して、耐オフセット性に優れたトナーを得ることができる。また、解重合を抑制し、バインダー樹脂中の残存揮発分によるトナーの現像維持特性や臭気等の問題が発生する懸念を低減することができる。
2軸混練機を用いて溶融混練する方法においては、2軸混練機に水を注入口から注入し、注入口より出口側に設置した減圧口から減圧することで水および揮発成分を除去する方法もある。この方法によって、十分に水が樹脂に混合され、減圧した際に樹脂中に残存していたモノマーや溶剤等の揮発成分が除去されやすくなる。
このようにして得られた樹脂を冷却・粉砕してトナー用バインダー樹脂とする。冷却・粉砕する方法は従来公知のいかなる方法も採用できる。また、冷却方法として、スチールベルトクーラー等を使用して急冷することも可能である。
[トナー]
次に、本実施形態に係るトナーについて説明する。
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量はトナー全体に対して好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以上9.5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上5質量%以下である。エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、得られるトナーの耐スミア性および定着性をより良好にすることができる。また、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、得られるトナーの耐感光体汚染性をより良好にすることができる。
本実施形態に係るトナーは、トナー用バインダー樹脂由来のテトラヒドロフラン(THF)不溶分をトナー全体に対して1質量%以上40質量%以下含有することが好ましく、2質量%以上25質量%以下含有することがより好ましい。THF不溶分を上記範囲に調整することにより耐スミア性を損なうことなく定着性および耐オフセット性をより向上させることができる。
本実施形態に係るトナーは、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂以外のトナー部材として、着色剤、荷電制御剤を含む。さらに、磁性体、本実施形態に係るバインダー樹脂以外の樹脂、離型剤、および表面処理剤等から選択される一種または二種以上をさらに含んでもよい。
以下、トナー用バインダー樹脂以外のトナー部材を説明する。
着色剤としては、従来公知の顔料および染料を使用することができる。
顔料としては例えば、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、16、17、C.I.アシッドブルー6、C.I.アシッドブルー45またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、185、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。黒色顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162等が挙げられる。
これらの着色剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
着色剤のトナーへの含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.05〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部である。
着色剤の代わりとして磁性体を使用することもできる。磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、ケイ素等の元素を含む金属酸化物等が挙げられ、具体的には四三酸化鉄、三二酸化鉄、酸化鉄亜鉛、酸化鉄イットリウム、酸化鉄カドミウム、酸化鉄ガドリニウム、酸化鉄銅、酸化鉄鉛、酸化鉄ニッケル、酸化鉄ネオジム、酸化鉄バリウム、酸化鉄マグネシウム、酸化鉄マンガン、酸化鉄ランタン、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉等が挙げられる。これらの磁性体は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、その形状としては、球形、八面体、六面体のものを使用することが好ましく、さらには球形のものを使用することが磁性体をトナー中に均一に分散させる点で好ましい。
磁性体の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して4〜200質量部が好ましく、より好ましくは10〜170質量部、さらに好ましくは20〜150質量部である。
また、本実施形態に係るトナーは、必要に応じて本実施形態の効果を阻害しない範囲において、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ロジン、重合ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、芳香族石油樹脂、塩ビ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、クロマン−インデン樹脂、メラミン樹脂等の樹脂を一部添加して使用してもよい。
また、着色剤の分散向上を目的として、着色剤をバインダー樹脂もしくはそれら原料樹脂に予め分散して、いわゆるマスターバッチを製造しておき、それをトナーに添加する方法を行ってもよい。具体的には着色剤20〜60質量%、樹脂成分80〜40質量%を粉体状態で混合し、得られた混合物を二軸混練機、オープンロール混練機や、加圧ニーダー等のバッチ式混練機等で混練し、それを粉砕したものをトナー製造時に使用してもよい。
本実施形態に係るトナーは、正帯電性または負帯電性を保持させるために荷電制御剤を含有する。荷電制御剤としては従来公知のものを使用できる。
正帯電性の荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジシクロヘキシル錫オキサイドのようなジオルガノ錫オキサイド;ジブチル錫ボレート、ジオクチル錫ボレート、ジシクロヘキシル錫ボレートのようなジオルガノ錫ボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;イミダゾリウム塩類;さらにはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとスチレン系単量体と必要により(メタ)アクリル系単量体を共重合した後にパラトルエンスルホン酸アルキルエステルで四級化する等の手法によって得られる四級アンモニウム塩基含有共重合体が挙げられる。
負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸金属錯体、芳香族ジカルボン酸金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族モノカルボン酸や芳香族ポリカルボン酸およびその金属塩や無水物やエステル類、ビスフェノールのようなビスフェノール誘導体があり、さらには配位中心金属がSc、Ti、V、Cr、Co、Ni、Mn、Feから選択され、かつ、カチオンが水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンから選択されるアゾ系金属化合物や、配位中心金属がCr、Co、Ni、Mn、Fe、Ti、Zr、Zn、Si、B、Alから選択され、かつ、カチオンが水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムから選択される芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体や芳香族ポリカルボン酸誘導体の金属化合物(芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体および芳香族ポリカルボン酸は置換基としてアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、カルバモイル基を有していてもよい)、スルホン酸基含有アクリルアミド系単量体とスチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体の共重合体のようなスルホン酸基含有単量体を構成成分とする重合体等が挙げられる。これらの荷電制御剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
荷電制御剤のトナーへの含有量は、帯電量とトナーの流動性のバランスから、バインダー樹脂100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。また、添加方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法やそれらを組み合わせたものが適用できる。
本実施形態に係るトナーは、より良好な定着性能や耐オフセット性能を発現させる為に離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の説明で例示した離型剤を用いることができる。
本実施形態において、トナーに含有させる離型剤の含有量は、トナー全体を100質量%としたとき、耐オフセット性、保存性のバランスの観点から、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましい。離型剤の含有量を上記下限値以上にすることで、耐オフセット性により優れたトナーとすることができ、上記上限値以下にすることで保存性の悪化や、耐感光体汚染性の悪化を抑制することができる。また、離型剤が偏在しにくくなるため、離型剤がトナーから抜け落ちるのを抑制し、耐久性により優れたトナーとすることができる。
本実施形態において、トナー中の離型剤の含有量は、トナー用バインター樹脂に含まれる離型剤とトナー調製時に別途添加される離型剤の合計量である。
本実施形態に係るトナーは、トナーの表面に対して表面処理剤を添加することによって、トナーとキャリア、あるいはトナー相互の間に該表面処理剤を存在させることが好ましい。表面処理剤を添加することにより、粉体流動性、保存性、帯電安定性、および環境安定性が向上され、かつさらに現像剤の寿命をも向上させることができる。
表面処理剤としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、およびそれらの疎水化物等が挙げられる。シリカ微粉体は、湿式シリカ、乾式シリカ、乾式シリカと金属酸化物の複合体等が使用でき、さらに、これらを有機ケイ素化合物等で疎水化処理されたものが使用できる。疎水化処理は、例えば、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体をシラン化合物で処理し、有機ケイ素化合物で処理する方法等が挙げられる。疎水化処理に用いられるシラン化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α―クロルエチルトリクロルシラン、β―クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1、3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1、3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。疎水化処理に用いられる有機ケイ素化合物としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル類が挙げられる。また、酸化チタン微粉末にオイル処理したものや、0.03μm〜1μmのビニル樹脂の微粒子等も使用してもよい。
これら以外の表面処理剤として、ポリフッ化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンのような滑剤、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、磁性粉、アルミナ等の研磨剤、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫等の導電性付与剤等も使用してもよい。さらには、表面処理剤の形状として、粒径が100nm未満の小粒径の粒子、粒径が100nm以上の大粒径の粒子、八面体状、六面体状、針状、繊維状等様々な形状のものを使用してもよい。表面処理剤は単独または2種以上を組み合わせて使用してよい。
該表面処理剤の添加量は、トナー100質量部中、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
本実施形態に係るトナーを二成分現像剤として使用する場合、キャリアとして従来公知のものを使用できる。例えば、表面酸化または未酸化の鉄、コバルト、マンガン、クロム、銅、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、リチウム、希土類のような金属およびそれらの合金または酸化物からなる個数平均粒径15〜300μmの粒子が使用できる。これらのキャリアはスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂等により表面コートされているものを使用してもよい。さらには、樹脂に磁性微粒子が分散されてなる磁性微粒子分散型コアと該磁性微粒子分散型コアの表面を被覆する被覆樹脂を含有する被覆層を有する磁性キャリアを使用してもよい。
本実施形態に係るトナーは、公知の種々の現像プロセスに用いることができる。例えば、特に限定されないが、カスケード現像法、磁気ブラシ法、パウダー・クラウド法、タッチダウン現像法、キャリアとして粉砕法によって製造された磁性トナーを用いる所謂マイクロトーニング法、磁性トナー同士の摩擦帯電によって必要なトナー電荷を得る所謂バイポーラー・マグネチックトナー法等が挙げられる。また、本実施形態に係るトナーは、従来公知のファーブラシ法、ブレード法等の種々のクリーニング方法にも用いることができる。また、本実施形態に係るトナーは、従来公知の種々の定着方法に用いることができる。具体的には、オイルレスヒートロール法、オイル塗布ヒートロール法、熱ベルト定着法、フラッシュ法、オーブン法、圧力定着法等が例示される。また、電磁誘導加熱方式を採用した定着装置に使用してもよい。さらには中間転写工程を有する画像形成方法に用いてもよい。
[トナーの製造方法]
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、上記トナー用バインダー樹脂を得る工程と、トナー用バインダー樹脂と着色剤と荷電制御剤とを混合する工程と、を含む。トナー用バインダー樹脂と着色剤と荷電制御剤とを混合する工程において、トナー用バインダー樹脂以外のトナー部材も混合してもよい。
本実施形態に係るトナーは、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂を用いて、トナー用バインダー樹脂と着色剤と荷電制御剤とを混合して製造される。混合する方法は、従来公知の方法でよい。例えば、バインダー樹脂、着色剤と荷電調整剤、離型剤等のトナー部材をヘンシェルミキサー等の粉体混合機により充分に混合した後、2軸混練機、オープンロール混練機等の混練機を用いて溶融、混練して各構成成分を充分に混合する。これを冷却後、粉砕、分級を行って、通常4〜15μmの範囲の粒子を集め、粉体混合法により表面処理剤をまぶしてトナーを得る方法が挙げられる。
また、必要に応じて、表面処理装置等により、トナーを球形化処理してもよい。表面処理の方法としては、例えば、高温空気噴流中に流入させトナーを球形化する方法や機械的な衝撃によりトナーの角を取る方法が挙げられる。画質の向上等を目的として、これらの表面処理を行って、フロー式粒子像測定装置(例えばシスメックス社製 FIPA−3000)によって測定される平均円形度を0.960以上に調整してもよい。
本実施形態に係るトナーは、電子写真、静電記録、静電印刷等における、静電荷像を現像するための電子写真用トナーに好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。また、データの測定法および判定法は次の通りである。さらに、表中、Stはスチレン、Macはメタクリル酸、BAはアクリル酸n−ブチル、GMAはメタクリル酸グリシジルを表す。
<酸価>
本実施例における酸価(AV)は、以下の通り算出した。キシレン:n―ブタノール=1:1質量比の混合溶媒に精秤した試料を溶解した。予め標定されたN/10水酸化カリウムのアルコール(特級水酸化カリウム7gにイオン交換水5g添加し、1級エチルアルコールで1L(リットル)とし、N/10塩酸と1%フェノールフタレイン溶液にて力価=Fを標定したもの)で滴定し、その中和量から次式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(N/10KOH滴定量(ml)×F×5.61)/(試料g×0.01)
<ピーク分子量>
本実施例におけるピーク分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めたものであり、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。測定条件は下記の通りである。
GPC装置:SHODEX(登録商標) GPC SYSTEM−21(昭和電工株式会社製)
検出器:SHODEX(登録商標) RI SE−31 (昭和電工株式会社製)
カラム:SHODEX(登録商標) GPC KF−Gを1本、 GPC KF−807Lを3本、およびGPC KF−800Dを1本(昭和電工株式会社製)、をこの順番に直列に連結して用いた。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.2ml/分
サンプル濃度:0.002g−resin/ml−THF
注入量:100μL
サンプル溶液は、測定直前にフィルターを用い、THFに不溶な成分を除去した。
<融点>
離型剤およびエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の融点は、示差走査型熱量測定法(DSC)に従い、DSC−20(セイコー電子工業社製)によって測定した。試料約10mgを−20℃から200℃まで10℃/分で昇温し、得られたカーブの吸熱ピークより融点を求めた。
<酢酸ビニル含有量>
酢酸ビニル含有量はJIS K6924−2に準拠して測定し、算出した。
<エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の軟化点>
エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の軟化点は環球法(JIS K2207に規定された方法)に準拠して測定し、算出した。
<エポキシ価>
エポキシ価は以下の手順で計算した。樹脂試料0.2〜5gを精秤し、200mlの三角フラスコに入れた。その後、ジオキサン25mlを加えて溶解させた。1/5規定の塩酸溶液(ジオキサン溶媒)25mlを加え、密栓して十分に混合した。その後、30分間静置した。次に、トルエン‐エタノール混合溶液(1:1容量比)50mlを加えた後、クレゾールレッドを指示薬として1/10規定水酸化ナトリウム水溶液で滴定した。滴定結果に基づいて、下記式にしたがってエポキシ価(Eq/100g)を計算した。
エポキシ価(Eq/100g)=[(B−S)×N×F]/(10×W)
ここで、Wは試料採取量(g)、Bは空試験に要した水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)、Sは試料の試験に要した水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)、Nは水酸化ナトリウム水溶液の規定度、およびFは水酸化ナトリウム水溶液の力価である。
<THF不溶分>
本実施例におけるバインダー樹脂のTHF不溶分は以下の通り求めた。
樹脂0.4g、THF39.5gを50ml蓋付ガラス製サンプル管に投入し、このサンプル管を回転数50rpm、22℃の条件で48時間攪拌した後、22℃で48時間静置した。その後、サンプル管の上澄み液5gを150℃で1時間乾燥させた後の質量を測定し、その質量をXgとして以下の式にてTHF不溶分率(質量%)を計算した。
Figure 0006675244
本実施例におけるトナーのTHF不溶分は、バインダー樹脂の不溶分と同様にしてトナーのTHF可溶性分量を測定し、その質量をXgとする。トナー中のバインダー樹脂以外の成分量をYgとして、下記式よりTHF不溶分率(質量%)を計算した。
Figure 0006675244
<エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相の最大径の測定>
透過型電子顕微鏡H−7000(日立社製)を用いて、4000倍の倍率でエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の分散状態を確認した。観察面積は、4000倍で、61μm×37μmとした。
粒子状の複数のトナーをエポキシ樹脂で包埋した後、トリミング・面出し後、RuOで染色し、超薄切片を作成して観察を行い、61μm×37μm程度の視野で、トナー30粒子中のエチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相を撮影した。得られた画像から、各粒子中の各島相の最も長い部分の長さをそれぞれ測定し、それらの内、最も大きい値を島相の最大径とした。
<トナーの評価>
次に、以下に本実施例で行ったトナーの評価方法を記載する。
1.定着評価
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した。その後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ローラー定着装置を用いて、熱ローラーの定着速度を190mm/秒とし、それぞれ130℃、150℃の温度で定着させた。得られた定着画像を砂消しゴム(株式会社トンボ鉛筆製)により、1.0kgfの荷重をかけ、6回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。摩擦後の画像濃度÷摩擦前の画像濃度×100を変化率とした。画像の濃度を変えて同様に変化率を測定し、変化率の最も低い数値を各温度での最低変化率とした。130℃、150℃でのそれぞれの最低変化率の平均値を定着率として算出し、下記評価基準で判定した。なお、ここで用いた熱ローラー定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものであった。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃、相対湿度55%)とした。
(評価基準)
○ : 65%≦定着率
△ : 60%<定着率<65%
× : 定着率≦60%
2.耐オフセット性
上記定着評価の測定に準じて行った。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した。その後、上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行い、非画像部分にトナー汚れが生ずるか否かを観察した。上記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を100℃から5℃ずつ順次250℃まで上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じない設定温度の幅をもって耐オフセット温度幅とした。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
○ : 100℃≦耐オフセット温度幅
△ : 80℃≦耐オフセット温度幅<100℃
× : 耐オフセット温度幅<80℃
3.耐スミア性
上記定着評価の測定に準じて5cm×5cmの0.6mg/cmの未定着画像を作成し、定着速度を190mm/秒として150℃で定着させた。この試験片を学振型染色物摩擦堅牢度試験機(6連式)(日本TMC(株)製)を用いて、200gの荷重をかけ市販のOA紙(マイペーパー、株式会社NBSリコー製)で10回磨耗し、摩擦側試験紙の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。
(評価基準)
○ : 摩擦側試験紙の画像濃度≦0.9
△ : 0.9<摩擦側試験紙の画像濃度≦1.1
× : 1.1<摩擦側試験紙の画像濃度
4.保存性
温度50℃、相対湿度60%の環境条件下、トナー5gを24時間放置した。これを150メッシュのふるいにのせ、パウダーテスター(細川粉体工学研究所社製)の加減抵抗機の目盛りを3にして、1分間振動を加えた。振動後の150メッシュのふるいの上に残った質量を測定し、残存質量比を求めた。
(評価基準)
○ : 残存質量比<25%
△ : 25%≦残存質量比<30%
× : 30%≦残存質量比
5.耐感光体汚染性
上記複写機にて、22℃、相対湿度55%で20000枚の連続複写を行った。その後の感光体の汚染性を目視評価した。
(評価基準)
○ : 全く汚れていない。
△ : 汚れがわずかに確認できる。
× : 汚れが多く確認できる。
[グリシジル基含有ビニル樹脂(E)の製造例]
(製造例E−1)
キシレン50質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表1記載の単量体100質量部にジ−t−ブチルパーオキサイド0.5質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温130℃に保ち、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、重合液を得た。これを160℃、1.33kPaの容器中にフラッシュして溶剤等を留去し、樹脂E−1を得た。その物性値を表1に示す。
(製造例E−2、E−3)
表1に示す組成で、製造例E−1と同様にして、樹脂E-2、E−3を得た。それらの物性値を表1に示す。
Figure 0006675244
[低分子量ビニル樹脂(L)の製造例]
(製造例L−1)
キシレン100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表2記載の単量体100質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温98℃に保ち、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L−1の重合液を得た。物性値を表2に示す。
(製造例L−2)
キシレン75質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表2記載の単量体100質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温98℃に保ち、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3質量部を加えて1時間反応を継続し、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L−2の重合液を得た。物性値を表2に示す。
(製造例L−3)
キシレン75質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表2記載の単量体100質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温98℃に保ち、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、さらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L−3の重合液を得た。物性値を表2に示す。
Figure 0006675244
[高分子量ビニル樹脂(H)の製造例]
(製造例H−1)
表3記載の単量体100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を3時間行った。次いで、キシレン30質量部を加え、ジビニルベンゼン0.2質量部を加えた後、130℃に昇温した。予め混合溶解しておいたジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部、キシレン70質量部を130℃に保ちながら5.5時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続した。その後、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加え10時間反応を継続して重合を完結し、H−1の重合液を得た。物性値を表3に示す。
(製造例H−2)
表3に示す仕込み組成で、製造例H−1と同様の方法で、H−2の重合液を得た。物性値を表3に示す。
(製造例H−3)
表3記載の単量体100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を8時間行った。次いで、キシレン50質量部を加え、テトラエチレングリコールジアクリレート0.2質量部を加えた後、110℃に昇温した。予め混合溶解しておいた1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの0.35質量部、キシレン60質量部を110℃に保ちながら9時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続した。その後、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.21質量部を加え2時間反応を継続し、さらに1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.52質量部を加え2時間反応を継続して重合を完結し、H−3の重合液を得た。物性値を表3に示す。
Figure 0006675244
[カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とエチレン・酢酸ビニル共重合体と離型剤の混合物の製造例]
(製造例C−1)
高分子量ビニル樹脂(H)、低分子量ビニル樹脂(L)、表4に記載のエチレン・酢酸ビニル共重合体、および表5に記載の離型剤を表6に示す仕込み組成となるように混合した。その後、キシレン還流下において30分間混合し、これを190℃、1.33kPaのベッセル(容器)中にフラッシュして溶剤等を留去し、樹脂C−1を得た。
(製造例C−2〜C−15)
表6に示す仕込み組成で、製造例C−1と同様の方法で、C−2〜C−15の樹脂を得た。
Figure 0006675244
Figure 0006675244
Figure 0006675244
[バインダー樹脂(R)の製造例]
(製造例R−1〜R−16)
カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)とエチレン・酢酸ビニル共重合体と離型剤の混合物と、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)との質量比が表7に記載の比率となるように各樹脂を混合した。その後、表7に記載の混練温度に温度設定した2軸混練機(KEXN S−40型、栗本鐵工所社製)にて、25kg/hr、モーター回転数1400rpmで混練反応した。この混練物をスチールベルトクーラー(NR3−Hiダブルクーラ、日本ベルティング株式会社製)を使用して冷却水温10℃、冷却水量90L/分、ベルトスピード6m/分の条件で急冷した後、粉砕し、バインダー樹脂R−1〜R−16を得た。物性値を表7に示す。
(製造例R−PE)
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)501質量部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.0モル)196質量部、テレフタル酸180質量部、ドデセニルコハク酸64質量部、無水トリメリット酸58質量部および酸化ジブチル錫0.5質量部を窒素雰囲気下230℃で攪拌して脱水重縮合を行い、軟化点が145℃に達するまで反応させた。得られた樹脂のガラス転移点は63℃、ピーク分子量は10,000であった。得られた樹脂を樹脂PE−Aと呼ぶ。
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)543質量部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.0モル)165質量部、テレフタル酸292質量部および酸化ジブチル錫0.5質量部を窒素雰囲気下230℃で攪拌して8時間反応させた。得られた樹脂のガラス転移点は58℃、ピーク分子量は5,000であった。得られた樹脂を樹脂PE−Bとする。PE−AとPE-Bをそれぞれ粉砕した後、PE−A60質量%、PE−B40質量%で混合し、バインダー樹脂R-PEを得た。
Figure 0006675244
[電子写真トナー(T)の製造例]
(製造例T−1〜T−18)
表7に記載のバインダー樹脂、添加剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体、カーボンブラック(MA100;三菱化学株式会社製)、および荷電制御剤(T−77;保土谷化学工業社製)を表8に記載の組成となるようにヘンシェルミキサーにて混合した。その後、2軸混練機(PCM−30型、池貝機械社製)にて、2軸混錬機吐出部樹脂温度120℃、滞留時間30秒で混練させた。次いで、冷却・粉砕・分級後、トナー粒子100質量部に対して疎水性シリカ微粉体(R−812、日本アエロジル株式会社製)0.5質量部、疎水性酸化チタン(NKT−90、日本アエロジル株式会社製)0.2質量部添加し、コールターカウンターにて測定した体積中位径D50が約7.5μmのトナーT−1〜T−18を得た。物性値を表8に示す。
Figure 0006675244
(実施例1〜16および比較例1〜2)
表8に記載のトナー3質量%に対し、キャリア(パウダーテック株式会社製、F−150)97質量%を混合して現像剤とし、各種評価を行った。結果を表9に示す。
Figure 0006675244
表9の結果から明らかなように、本実施例により製造されたトナーはいずれも、種々の特性のバランスに優れたものであった。

Claims (16)

  1. トナー用バインダー樹脂、着色剤および荷電制御剤を含むトナーであって、
    前記トナー用バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂(A)と、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)と、を含み、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相が前記熱可塑性樹脂(A)を含む海相に微分散した海島構造を有し、
    前記島相の最大径が0.1μm以上3.0μm以下の範囲内であり、
    前記熱可塑性樹脂(A)が架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂を含み、
    前記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂がカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、およびこれらの反応物を含むトナー。
  2. トナー用バインダー樹脂、着色剤および荷電制御剤を含むトナーであって、
    前記トナー用バインダー樹脂は、熱可塑性樹脂(A)と、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)と、を含み、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相が前記熱可塑性樹脂(A)を含む海相に微分散した海島構造を有し、
    前記島相の最大径が0.1μm以上3.0μm以下の範囲内であり、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むトナー。
  3. 請求項に記載のトナーにおいて、
    前記熱可塑性樹脂(A)がスチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂およびポリエステル系樹脂から選択される少なくとも一種を含むトナー。
  4. 請求項またはに記載のトナーにおいて、
    前記熱可塑性樹脂(A)が架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂を含み、
    前記架橋型スチレン・(メタ)アクリル系共重合体樹脂がカルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、およびこれらの反応物を含むトナー。
  5. 請求項1乃至4いずれか一項に記載のトナーにおいて、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の示差走査型熱量測定法(DSC)による融点が70℃以上100℃以下であるトナー。
  6. 請求項1乃至5いずれか一項に記載のトナーにおいて、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の環球法による軟化点が60℃以上115℃以下であるトナー。
  7. 請求項1乃至6いずれか一項に記載のトナーにおいて、
    前記トナー用バインダー樹脂由来のテトラヒドロフラン(THF)不溶成分を前記トナー全体に対して1質量%以上40質量%以下含有するトナー。
  8. 請求項1乃至7いずれか一項に記載のトナーにおいて、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の含有量が前記トナー全体に対して1.5質量%以上9.5質量%以下であるトナー。
  9. 請求項1乃至8いずれか一項に記載のトナーにおいて、
    電子写真用であるトナー。
  10. 熱可塑性樹脂(A)、エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)、着色剤および荷電制御剤を含むトナーの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂(A)が、カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)、グリシジル基含有ビニル樹脂(E)、およびこれらの反応物を含み、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の存在下で、前記カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)と、前記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)を溶融混練することによって前記カルボキシル基含有ビニル樹脂(C)と前記グリシジル基含有ビニル樹脂(E)とを架橋反応させ、前記熱可塑性樹脂(A)を含む海相に前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)を含む島相を微分散させる工程と、
    着色剤および荷電制御剤を混合する工程と、
    を含むトナーの製造方法。
  11. 請求項10に記載のトナーの製造方法において、
    前記溶融混練時の温度が140℃以上230℃以下の範囲内であるトナーの製造方法。
  12. 請求項10または11に記載のトナーの製造方法において、
    前記島相の最大径が0.1μm以上3.0μm以下の範囲内であるトナーの製造方法。
  13. 請求項10乃至12いずれか一項に記載のトナーの製造方法において、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)はエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むトナーの製造方法。
  14. 請求項10乃至13いずれか一項に記載のトナーの製造方法において、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の示差走査熱量計(DSC)による融点が70℃以上100℃以下であるトナーの製造方法。
  15. 請求項10乃至14いずれか一項に記載のトナーの製造方法において、
    前記エチレン・極性モノマー共重合体樹脂(B)の環球法による軟化点が60℃以上115℃以下であるトナーの製造方法。
  16. 請求項10乃至15いずれか一項に記載のトナーの製造方法において、
    テトラヒドロフラン(THF)不溶成分を前記トナー全体に対して1質量%以上40質量%以下含有するトナーの製造方法。
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