JP2019211518A - トナー用バインダー樹脂、トナー用樹脂組成物、トナーおよび現像剤 - Google Patents
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Abstract
Description
これに対して、特許文献3に記載されているような、高分子量ビニル樹脂成分と低分子量ビニル樹脂成分を含み、さらに樹脂成分の架橋物を含むバインダー樹脂は耐久性と定着性を両立しながら、さらに耐オフセット性も良好であった。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献3に記載されているような、高分子量ビニル樹脂成分と低分子量ビニル樹脂成分を含み、さらに樹脂成分の架橋物を含むバインダー樹脂を用いたトナーは、印刷部分の光沢性の観点において改善の余地があった。特に、黒色トナーと異なり、カラートナーでは、より鮮やかな発色が求められるため、光沢性は重要である。
本発明者らは上記知見をもとにさらに鋭意検討した。その結果、高分子量樹脂成分と低分子量樹脂成分の分子量ピークの位置と比率を特定の範囲にすることにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーが得られることを見出し、本発明に至った。
ビニル樹脂を含むトナー用バインダー樹脂であって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布曲線において、
分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有し、
分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有し、
上記ピーク(A)の微分分子量(a)と上記ピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であり、
分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であるトナー用バインダー樹脂。
[2]
上記[1]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
150℃における貯蔵弾性率が、測定周波数6.28ラジアン/秒において、2000Pa以下であるトナー用バインダー樹脂。
[3]
上記[1]または[2]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有する低分子量ビニル樹脂(L)と、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有する高分子量ビニル樹脂(H)と、
を含むトナー用バインダー樹脂。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂において、
上記ビニル樹脂がスチレン系重合体を含むトナー用バインダー樹脂。
[5]
上記[4]に記載のトナー用バインダー樹脂において、
上記スチレン系重合体が、ポリスチレンおよびスチレン・(メタ)アクリル系共重合体から選択される少なくとも一種を含むトナー用バインダー樹脂。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂を含むトナー用樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を含むトナー。
[8]
上記[7]に記載のトナーにおいて、離型剤をさらに含むトナー。
[9]
上記[8]に記載のトナーおよびキャリアを含む現像剤。
ここで、上記分子量分布曲線において、横軸は分子量であり、縦軸は微分分子量(dW/dlogM)を意味する。
また、本実施形態において、分子量が特定の範囲の領域にピーク(A)またはピーク(B)を有するとは、それぞれ、分子量が特定の範囲の領域にピーク(A)のピークトップまたはピーク(B)のピークトップが位置していることを意味する。
また、本実施形態において、ピーク(A)の微分分子量(a)およびピーク(B)の微分分子量(b)は、それぞれ、ピーク(A)のピークトップにおける微分分子量およびピーク(B)のピークトップにおける微分分子量を意味する。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、バインダー樹脂が樹脂成分の架橋物や、非常に分子量の大きい高分子量成分を含むと、トナーの弾性が強くなりすぎて、トナーが紙に定着した後に、定着したトナーの形状が変化して入射光が散乱してしまい、その結果、印刷部分の光沢が劣ってしまうことを知見した。
本発明者らは上記知見をもとにさらに鋭意検討した。その結果、高分子量樹脂成分と低分子量樹脂成分の分子量ピークの位置と比率を特定の範囲にすることにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーが得られることを見出した。
すなわち、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂によれば、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)および高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有し、上記ピーク(A)の微分分子量(a)と上記ピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であり、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であることにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーを実現できる。
まず、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)を有することによって、定着性に効果がある低分子量樹脂成分を含むことになり、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の定着性を良好にできる。
また、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有することによって、適度な弾性を得ることができ、耐オフセット性および光沢性のバランスを向上させることができる。
さらに、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、ピーク(A)の微分分子量(a)とピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であることによって、低分子量樹脂成分と高分子量樹脂成分のバランスが適度となり、定着性、耐オフセット性および光沢性のバランスを良好にすることができる。
さらに、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂は、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であることにより、トナーの弾性を過度に上げてしまう、非常に分子量の大きい高分子量成分の量を少なくすることができ、これにより定着したトナーの形状が変形して入射光が散乱してしまうことを抑制できるため、光沢性を向上させることができる。
すなわち、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂によれば、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)および高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有することによる効果と、ピーク(A)の微分分子量(a)とピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が1.0以上3.0以下であることによる効果と、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であることの効果と、の相乗効果によって、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスに優れるトナーを実現できる、と推察される。
分子量1×106以上の領域の含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、0.001質量%以上である。
ここで、分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して上記上限値以下または未満であることは、前述した樹脂成分の架橋物や、非常に分子量の大きい高分子量成分の含有量が少ないことを意味していると考えられる。
こうすることで、低分子量樹脂成分に相当するピーク(A)および高分子量樹脂成分に相当するピーク(B)を有する本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂を得ることが容易となる。
150℃における貯蔵弾性率が上記上限値以下であると、得られるトナーの弾性をより適度にすることができるため、定着したトナーの形状が変形して入射光が散乱してしまうことを抑制でき、その結果、トナーの光沢性をより一層向上させることができる。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂において、150℃における貯蔵弾性率の下限値は特に限定されないが、例えば、10Pa以上であり、好ましくは100Pa以上であり、さらに好ましくは200Pa以上である。
本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂としては、トナーに要求される各種特性をバランスよく向上させることができ、さらに得られるトナーの粉砕性に優れ、トナーの生産性を向上できる点から、ビニル樹脂を含む。ここで、本実施形態におけるビニル樹脂とは、単量体として、ビニル化合物を重合して得られる樹脂をいう。
また、本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体において、(メタ)アクリル系単量体の含有量は、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体の全体を100質量%としたとき、0質量%を超えて50質量%以下が好ましく、0.5質量%以上40質量%以下がより好ましく、2質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。
また、本実施形態に係るスチレン・(メタ)アクリル系共重合体において、カルボキシル基含有単量体の含有量は、スチレン・(メタ)アクリル系共重合体の全体を100質量%としたとき、0質量%以上15質量%以下が好ましく、0質量%以上10質量%以下がより好ましい。
高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記下限値以上とすることで、耐久性や耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、高分子量ビニル樹脂(H)の比率を上記上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーを得ることができる。
本実施形態において高分子量ビニル樹脂(H)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量5×104以上1×106未満の領域にメインピークを有することが好ましく、分子量8×104以上5×105以下にメインピークを有することがより好ましく、分子量1×105以上3×105以下にメインピークを有することがさらに好ましい。これにより、定着性、耐オフセット性、耐久性のバランスをより一層向上させることができる。
高分子量ビニル樹脂(H)のメインピークの分子量(以下、ピーク分子量という)を上記下限値以上とすることで、樹脂の強度が向上し、耐久性や耐オフセット性により優れたトナーを得ることができる。また、ピーク分子量を上記上限値以下にすることで、得られるトナーの光沢性をより向上させることができる。
本実施形態において低分子量ビニル樹脂(L)は、THF可溶分がGPCにより測定される分子量分布において分子量1×103以上5×104未満にメインピークを有することが好ましく、分子量2×103以上2×104以下にメインピークを有することがより好ましく、分子量3×103以上9×103以下にメインピークを有することがさらに好ましい。ピーク分子量を上記下限値以上にすることで、耐久性により優れたトナーとすることができる。ピーク分子量が上限値以下にすることで、定着性や生産性により優れたトナーとすることができる。
次に、本実施形態に係るトナー用樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係るトナー用樹脂組成物は、必須成分として、前述した本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂を含んでいる。
本実施形態に係るトナー用樹脂組成物中の本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂の含有量は、本実施形態に係るトナー用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。これにより、光沢性、定着性および耐オフセット性のバランスにより一層優れたトナーが得られる。
次に、本実施形態に係るトナーについて説明する。
顔料としては、例えば、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が挙げられる。マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、16、17、C.I.アシッドブルー6、C.I.アシッドブルー45またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、185、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。黒色顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。染料としては、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162等が挙げられる。
これらの着色剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの離型剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
正帯電性の荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジシクロヘキシル錫オキサイドのようなジオルガノ錫オキサイド;ジブチル錫ボレート、ジオクチル錫ボレート、ジシクロヘキシル錫ボレートのようなジオルガノ錫ボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;イミダゾリウム塩類;さらにはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとスチレン系単量体と必要により(メタ)アクリル系単量体を共重合した後にパラトルエンスルホン酸アルキルエステルで四級化する等の手法によって得られる四級アンモニウム塩基含有共重合体が挙げられる。
カラートナーにおいては、トナー画像の色調や透光性に影響の与えない無色や白色または淡色の荷電制御剤が好ましい。
負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸誘導体金属、カリックスアレーン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物等がある。
正帯電性の荷電制御剤としては、例えば、官能基として4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂等がある。
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、本実施形態に係るトナー用バインダー樹脂と着色剤とを混合する工程を含む。トナー用バインダー樹脂と着色剤とを混合する工程において、トナー用バインダー樹脂以外のトナー部材も混合してもよい。
また、表面処理装置等により、トナーを球形化処理してもよい。表面処理の方法としては、例えば、高温空気噴流中に流入させトナーを球形化する方法や機械的な衝撃によりトナーの角を取る方法が挙げられる。画質の向上等を目的として、これらの表面処理を行って、フロー式粒子像測定装置(例えばシスメックス社製 FIPA−3000)によって測定される平均円形度を0.960以上に調整してもよい。
また、高温空気噴流中に流入させトナーを球形化する方法では、粒子状のトナーを熱風で加熱処理する。このときの温度は200℃以上400℃以下であることが好ましい。
本実施形態に係る現像剤は、本実施形態に係るトナーおよびキャリアを含む。
キャリアとして従来公知のものを使用できる。例えば、表面酸化又は未酸化の鉄、コバルト、マンガン、クロム、銅、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、リチウム、希土類のような金属及びそれらの合金又は酸化物からなる個数平均粒径15〜300μmの粒子が使用できる。これらのキャリアはスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂などにより表面コートされているものを使用してもよい。さらには、樹脂に磁性微粒子が分散されてなる磁性微粒子分散型コアと該磁性微粒子分散型コアの表面を被覆する被覆樹脂を含有する被覆層を有する磁性キャリアを使用してもよい。
本実施例および比較例におけるピーク分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めたものであり、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。測定条件は下記の通りである。
GPC装置:SHODEX(登録商標)GPC−101(昭和電工株式会社製)
検出器:SHODEX(登録商標)RI−71S(昭和電工株式会社製)
カラム:SHODEX(登録商標)GPC KF−Gを1本、GPC KF−807Lを3本、およびGPC KF−800Dを1本(昭和電工株式会社製)、をこの順番に直列に連結して用いた。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.2ml/分
サンプル濃度:0.002g−resin/ml−THF
注入量:100μL
サンプル溶液は、測定直前にフィルターを用い、THFに不溶な成分を除去した。
本実施例および比較例における粘弾性測定は以下の測定によって求めた。
粘弾性装置:モジュラー・コンパクト・レオメーターMCR302(株式会社アントンパールジャパン社製)
測定温度範囲:50〜200℃
昇温速度:2℃/分
周波数:1Hz(6.28ラジアン/秒)
ギャップ:1mm
プレート:パラレルプレート
応力歪み:1%
サンプル形状:厚さ1mm、直径約20mmの円柱状
次に、以下に本実施例および比較例で行ったトナーの評価方法を記載する。
1.光沢性
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した。その後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ベルト定着装置を用いて、熱ローラーの定着速度を125mm/秒とし、150℃の温度で定着させた。このとき定着画像の画像濃度は、マクベス式反射濃度計で測定し、1.4となるように調整した。得られた定着画像を、変角光沢計GM‐3D(村上色彩技術研究所製)を用い、入射角75°で光沢度を測定した。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
○ : 25%≦光沢度
△ : 20%≦光沢度<25%
× : 光沢度<20%
市販の電子写真複写機を改造した複写機にて未定着画像を作成した。その後、この未定着画像を市販の複写機の定着部を改造した熱ローラー定着装置を用いて、熱ローラーの定着速度を190mm/秒とし、それぞれ150℃、160℃および170℃の温度で定着させた。得られた定着画像を砂消しゴム(株式会社トンボ鉛筆製)により、1.0kgfの荷重をかけ、6回摩擦させ、この摩擦試験前後の画像濃度をマクベス式反射濃度計により測定した。摩擦後の画像濃度÷摩擦前の画像濃度×100をその温度での変化率とした。150℃、160℃、および170℃でのそれぞれの変化率の平均値を定着率として算出し、下記評価基準で判定した。なお、ここで用いた熱ローラー定着装置はシリコーンオイル供給機構を有しないものであった。また、環境条件は、常温常圧(温度22℃、相対湿度55%)とした。
(評価基準)
○ : 67%≦定着率
△ : 63%<定着率<67%
× : 定着率≦63%
上記定着評価の測定に準じて行った。すなわち、上記複写機にて未定着画像を作成した。その後、上述の熱ローラー定着装置により定着処理を行い、非画像部分にトナー汚れが生ずるか否かを観察した。上記熱ローラー定着装置の熱ローラーの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた最低の設定温度をもってオフセット発生温度とした。また、上記複写機の雰囲気は、温度22℃、相対湿度55%とした。
(評価基準)
○ : 180℃≦オフセット発生温度
△ : 160℃≦オフセット発生温度<180℃
× : オフセット発生温度<160℃
(製造例L−1)
キシレン100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表1記載の単量体100質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続した。その後、内温98℃に保ち、更にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、更にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L−1の重合液を得た。物性値を表1に示す。
キシレン100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め表1記載の単量体100質量部にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10質量部を混合溶解しておいた混合液を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続した。その後、内温98℃に保ち、更にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて1時間反応を継続し、更にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5質量部を加えて2時間反応を継続し、L−2の重合液を得た。物性値を表1に示す。
(製造例H−1)
スチレン67.5質量部、アクリル酸n−ブチル23.5質量部、キシレン15質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温110℃に昇温した。そこに、スチレン5質量部、メタクリル酸4質量部、キシレン85質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3質量部を混合溶解しておいた混合液を7時間かけて連続添加し、さらに1時間反応を継続した。その後、130℃に昇温し、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加えて2時間反応を継続し、更にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加えて2時間反応を継続して重合を完結し、H−1の重合液を得た。物性値を表2に示す。
表2記載の単量体100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を6時間行った。ついで、キシレン40質量部を加え、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート0.23質量部を加えた後、130℃に昇温した。予め混合溶解しておいたジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部、キシレン60質量部を130℃に保ちながら8時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続し、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加え2時間反応を継続し、更にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加え2時間反応を継続して重合を完結し、H−2の重合液を得た。物性値を表2に示す。
表2記載の単量体100質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を6時間行った。ついで、キシレン50質量部を加えた後、110℃に昇温した。予め混合溶解しておいた1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.515質量部、キシレン50質量部を110℃に保ちながら3時間かけて連続添加した後、1時間反応を継続し、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.206質量部を加え1.5時間反応を継続し、更に1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.515質量部を加え2時間反応を継続し、更に1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.515質量部を加え2時間反応を継続して重合を完結し、H−3の重合液を得た。物性値を表2に示す。
スチレン71質量部、アクリル酸n−ブチル24質量部、キシレン15質量部、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート0.19質量部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温109℃に昇温した。そこに、スチレン5質量部、キシレン85質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3質量部、ポリ(エチレングリコール)ジアクリラート0.1質量部を混合溶解しておいた混合液を7時間かけて連続添加し、さらに2時間反応を継続した。その後、130℃に昇温し、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.1質量部を加えて1時間反応を継続し、更にジ−t−ブチルパーオキサイド0.2質量部を加えて3時間反応を継続して重合を完結し、H−4の重合液を得た。物性値を表2に示す。
(製造例C−1)
高分子量ビニル樹脂(H)および低分子量ビニル樹脂(L)を表3に示す仕込み組成となるように混合した後、その後、これを190℃、1.33kPaのベッセル(容器)中にフラッシュして溶剤等を留去し、樹脂C−1を得た。物性値を表4に示す。
表3に示す仕込み組成で、製造例C−1と同様の方法で、樹脂C−2〜C−7を得た。物性値を表4に示す。
(製造例T−1〜T−7)
表3に記載のバインダー樹脂(C)100質量部に対し、ワックス(SX105;Shell社製)3質量部、着色剤としてカーボンブラック(REGAL 330R;キャボット社製)6質量部、荷電制御剤(T−77;保土谷化学工業社製)0.5質量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合した。その後、2軸混練機(PCM−30型、池貝機械製)にて、2軸混錬機吐出部樹脂温度100℃、滞留時間30秒で混練させた。次いで、この溶融混練物を冷却後、ジェット式粉砕機(IDS−2UR型、日本ニューマチック工業社製)で体積中位径D50が7.6μmに粉砕した。続いて、上記粉砕物を分級機(DSX−2型、日本ニューマチック工業社製)で微粉をカットし、体積中位径D50が8.4μmのトナー粒子を得た。次に上記トナー粒子100質量部に対して疎水性シリカ微粉体(AEROSIL R972、日本エアロジル株式会社製)0.5質量部添加し、コールターカウンターにて測定した体積中位径D50が約8.5μmのトナーT−1〜T−7を得た。
上記のトナー3質量%に対し、キャリア(パウダーテック株式会社製、F−150)97質量%を混合して現像剤とした。得られた現像剤について各種評価を行った。結果を表5に示す。
Claims (9)
- ビニル樹脂を含むトナー用バインダー樹脂であって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるテトラヒドロフラン(THF)可溶分の分子量分布曲線において、
分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有し、
分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有し、
前記ピーク(A)の微分分子量(a)と前記ピーク(B)の微分分子量(b)との比率(a/b)が、1.0以上3.0以下であり、
分子量1×106以上の領域の含有量がTHF可溶分全体に対して1.0質量%以下であるトナー用バインダー樹脂。 - 請求項1に記載のトナー用バインダー樹脂において、
150℃における貯蔵弾性率が、測定周波数6.28ラジアン/秒において、2000Pa以下であるトナー用バインダー樹脂。 - 請求項1または2に記載のトナー用バインダー樹脂において、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量1×103以上5×104未満の領域にピーク(A)を有する低分子量ビニル樹脂(L)と、
GPCにより測定されるTHF可溶分の分子量分布曲線において、分子量5×104以上1×106未満の領域にピーク(B)を有する高分子量ビニル樹脂(H)と、
を含むトナー用バインダー樹脂。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂において、
前記ビニル樹脂がスチレン系重合体を含むトナー用バインダー樹脂。 - 請求項4に記載のトナー用バインダー樹脂において、
前記スチレン系重合体が、ポリスチレンおよびスチレン・(メタ)アクリル系共重合体から選択される少なくとも一種を含むトナー用バインダー樹脂。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂を含むトナー用樹脂組成物。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー用バインダー樹脂および着色剤を含むトナー。
- 請求項7に記載のトナーにおいて、離型剤をさらに含むトナー。
- 請求項8に記載のトナーおよびキャリアを含む現像剤。
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