JP3706465B2 - トナー用樹脂組成物及びトナー - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真等に使用するトナー用樹脂組成物及びトナーに関し、さらに詳しくは、静電荷像を現像する方法において乾式現像方式に使用するトナー用樹脂組成物及びそれを用いたトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用現像剤は、電子写真法において、帯電及び露光により形成された静電潜像を現像し、可視画像を形成するために、複写機、プリンター、FAX等の分野において広く用いられている。この現像剤には、大別して二成分系現像剤と一成分系トナーとがあり、前者においても、鉄粉、フェライト等の磁性キャリアとトナーとの組み合わせを用いる二成分系磁性現像剤とガラス粒子等の非磁性キャリアとトナーとの組み合わせを用いた二成分系非磁性現像剤があり、後者においても、トナー中に磁性粉を含有させた一成分系磁性トナーと、磁性粉を含有しない一成分系非磁性トナーとが知られている。
これら何れのトナーも、樹脂中に、カーボンブラック、顔料等の着色剤を、必要により電荷制御剤、離型剤、磁性粉等と共に、分散させてなる帯電性微粉末から成る。
【0003】
複写物を得るには、通常、感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に摩擦帯電性のトナーを電気的に付着させて現像し、ここで得られたトナー像を用紙等のシート上に転写し、その後トナーに対して離型性を有する熱圧ローラーで定着させて永久可視像とする。
【0004】
この熱圧ローラー定着法においては、消費電力等の経済性を向上させるため、また、複写速度を上げるため、より低温で定着可能なトナーが要求されている。低温定着性という点から、トナー用樹脂の軟化点を下げることにより、ある程度定着可能温度を低下させることが出来るが、未だ十分ではない。
【0005】
すなわち、このような低い軟化点のトナー用樹脂を用いた静電トナーでは、定着時に像を形成するトナーの一部が熱圧ローラーの表面に移行し、次に送られてくる用紙等のシートに再び移行して画像を汚すという現象(オフセット現象)が発生し易いという問題がある。
【0006】
このような問題を解決する目的で、トナー用樹脂として、特定の低分子量の重合体成分と高分子量の重合体成分とからなるスチレン−アクリル酸エステル系重合体を用いたトナーが提案されている(例えば特開昭56−158340号公報)。
【0007】
また、特開平4−21860号公報、特開平6−308762号公報、特開平8−82954号公報、特開平9−106098号公報等には、トナー用樹脂として、特定のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体に、特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体、オレフィン・無水マレイン酸共重合体、或いは無水マレイン酸等の極性基を導入(グラフト化)したポリオレフィン系樹脂等を含有させたトナーが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案のトナーを用いても、低温定着性と耐オフセット性の良好なバランスを発揮させるには不十分であり、市場においてより効果的な改質剤を用いてのトナーの出現が求められている。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体に相溶性の極めて良好な特定のオレフィン系樹脂を含有させることで、低温定着性と耐オフセット性との良好なバランス性能を発揮せしめることを見出し、本発明に至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)を主成分とし、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)が1〜20重量%含有されていることを特徴とするトナー用樹脂組成物及びこのトナー用樹脂組成物を用いたトナーに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
[作用]
本発明で用いるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(以下スチレン/アクリル系共重合体とも呼ぶ)は、トナー用樹脂として一般的なものであるが、本発明では、種々のオレフィン系樹脂の中でも、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体を選択し、これを改質成分として前記トナー用樹脂中に配合したことが顕著な特徴であり、これにより、低温定着性と耐オフセット性との良好なバランス性能を発揮させることが可能となる。
【0012】
本発明において改質成分として使用する共重合体は、エチレン、不飽和エステル及び一酸化炭素のモノマー成分の組み合わせから誘導されていることが上記バランス性能の点から重要であり、エチレン・一酸化炭素の二元系共重合体を使用したのでは、低温定着性も耐オフセット性も不十分である(後述する比較例1参照)。また、エチレン・不飽和エステルの二元系共重合体を使用したのでは、低温定着性は十分であるが、耐オフセット性が不十分である(後述する比較例2参照)。これに対して、上記三元系共重合体を使用すると、満足すべき低温定着性と耐オフセット性が得られる(後述する実施例1及び2参照)。
【0013】
本発明において、上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)を、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)へ配合したことによる改質効果は、後述する例において行った配合物の溶融特性や分散構造についての実験から、以下のように解析が可能である。
【0014】
即ち、このブレンド物では、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)が連続相及びエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)が分散相となった海−島構造を形成していると共に、この分散相(島)が比較的ミクロな状態で分散化し、しかも連続相(A)と分散化した島相(B)との界面においても良好な密着性が維持されている。この分散構造が良好な低温接着性が発現される理由と考えられる。更に、上記の微細な分散構造の発現により、このブレンド物の溶融粘度は、かなり高い値となっている。これが耐オフセット性が向上する理由と考えられる。
【0015】
[スチレン/アクリル系共重合体]
本発明では、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)を主成分として用いる。
この共重合体(A)を構成するスチレン系単量体の具体例としては、スチレンの他に、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、P−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン等を挙げることができる。これらのスチレン系単量体は、単独でも2種以上の組み合わせでも用いることができる。
【0016】
一方、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体も、単独でも2種以上の組み合わせでも用いることができる。
【0017】
上記スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)において、スチレン系単量体の含有率が60〜90重量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が10〜40重量%のものが好ましい。スチレン系単量体の含有率が少なくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、逆にスチレン系単量体の含有率が多くなると、トナーの定着性が低下する傾向にある。一方、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が少なくなると、トナーの定着性が低下する傾向にあり、逆に(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が多くなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にある。
【0018】
上記のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体においては、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外に、必要に応じて第三成分として、例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、安息香酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル等の単量体を0〜15重量%の範囲で含有することができる。
【0019】
また、本発明に用いるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量において重量平均分子量(Mw)が5,000以上のものが好ましく、特に10,000〜1,000,000のものが好ましい。共重合体の重量平均分子量が小さくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、逆に共重合体の重量平均分子量が大きくなると、トナーの定着性が低下する傾向にある。
【0020】
また、本発明に用いるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)は、トナーの凝集防止の点から、示差走査熱量計(DSC)によって測定されるガラス転移点温度が50℃以上であるものが好ましい。
【0021】
このようなスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の公知の重合方法により製造することができる。
【0022】
[エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体]
この発明においては、上記のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)に、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)が1〜20重量%含有される。
【0023】
エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)としては、エチレンが30〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、不飽和エステルが5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%、一酸化炭素が1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0024】
ここに、不飽和エステルとしては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nブチルのような不飽和カルボン酸エステルなどを例示することができる。中でも、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体の熱安定性を考慮すると、一般には不飽和エステルとしては、不飽和カルボン酸エステルを使用した共重合体を使用することが望ましい。
【0025】
上記共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜1000g/10分、特に1〜300g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0026】
このような共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得る事が出来る。
【0027】
[樹脂組成物及びトナー]
本発明においては、上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)をスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)にブレンドするが、共重合体(B)の含有量は、樹脂組成物の合計基準で、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%である。共重合体(B)の含有量が上記範囲よりも少ないと、低温定着性と耐オフセット性との良好なバランス性能が十分に発現されない傾向があり、一方共重合体(B)の含有量が多いと、逆に共重合体(A)との相溶性が悪化し、具体的には樹脂組成物の耐オフセット性が阻害される等の支障を来たす。
【0028】
本発明のトナーは、上記のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂(A)と、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体樹脂(B)とを含有する限り、その調製手段及び処方等は特に限定されない。
【0029】
本発明のトナーは、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法、重合法等のそれ自体公知の方法で製造し得るが、粉砕分級法が一般的である。
この粉砕分級法の場合、例えば、上記スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂(A)に、エチレン・不飽和スチレン・一酸化炭素共重合体樹脂(B)を配合し、その他着色剤等の従来公知のトナー用添加剤を配合し、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合し、これをロールミル、ニーダー、押出機等を用いて混練した後、冷却して微粉砕化し、必要により分級する方法が採用される。
粉砕分級法のトナー粒子は不定形であるが、このトナー粒子を熱気流中で溶融し、次いで冷却することによって、球状のトナー粒子を製造することもできる。
【0030】
また、別法として、上記スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂にエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体樹脂をより均一に含有させるために、両者を適当な溶剤に溶解分散した後に脱溶剤したり、或いはスプレー乾燥することによって、球状トナーを製造でき、更にエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体樹脂粒子の存在下でスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした単量体を共重合する方法(重合法)によっても、球状トナーを製造することができる。
【0031】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、アルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、キノリンイエロー、ランプブラック、ローズベンガル、ジアゾイエロー等の顔料または染料が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。
上記着色剤は、定着用の前記樹脂媒質100重量部当り2乃至20重量部、特に5乃至15重量部の量で使用するのがよい。
【0032】
また、電荷制御剤として、それ自体公知の任意の電荷制御剤、例えば、ニグロシンベース、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料や、1:1型或いは2:1型金属錯塩染料、ナフテン酸金属塩、脂肪酸や石鹸、樹脂酸石鹸等をそれ自体公知の処方に従って配合することができる。
【0033】
更に、熱定着に際して離型性を向上させるために、それ自体公知の離型剤、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩等を、公知の処方に従って配合することができる。
【0034】
また、本発明のトナー中には、磁性粉を配合して1成分磁性トナーを得る事もできる。磁性粉としては、マグネタイト、フェライトを始めとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属、合金、または化合物の粉末が配合される。
【0035】
トナーの粒子形状は、不定形でも球状粒子のように定形粒子であってもよく、またトナーの粒径は、一般にコールターカウンターによるメジアン径が5乃至15μm、特に7乃至12μmの範囲内にあるのがよい。
【0036】
トナー粒子の表面には、必要に応じ気相法シリカ、気相法アルミナ、気相法チタニア等の流動性改良剤を、外添により付着させてトナーの流動性を改善することができる。流動性改良剤の量は、トナー当たり0.1乃至2.0重量%の量で外添するのがよい。
【0037】
本発明によるトナーは、単独で非磁性一成分系トナーとして、またトナー中に磁性粉を配合したものは、磁性一成分系トナーとして、静電潜像の現像に用いることができる。
また、このトナーは、磁性キャリアー或いは非磁性キャリアーと混合して、二成分現像剤として使用する。
【0038】
磁性キャリアーとしては、鉄粉や、フェライト系の磁性キャリアー、好適にはフェライト系の磁性キャリアー、特にCu,Zn,Mg,Mn及びNiから成る群より選ばれた金属成分の少なくとも1種、好適には2種以上含有するソフトフェライト、例えば、銅−亜鉛−マグネシウムフェライトの焼結フェライト粒子、特に球状粒子が使用される。磁性キャリアーの表面は、未コートのものでもよいが、一般には、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ウレタン系樹脂等でコートされているのがよい。
【0039】
磁性キャリアーとトナーとの混合比は、一般に98:2乃至90:10の重量比、特に97:3乃至94:6の重量比にあるのがよい。
【0040】
本発明のトナーを用いる静電写真複写法において、静電潜像の形成はそれ自体公知の任意の方式で行うことができ、例えば導電性基板上の光導電層を一様に荷電した後、画像露光して静電潜像を形成させることができる。
静電像の現像は、摩擦等によりトナー粒子が帯電された一成分系トナー或いは二成分系現像剤を静電潜像と接触させることにより容易に行われる。現像により形成されたトナー像は複写紙上に転写され、このトナー像を加熱ロールと接触させることにより定着が行われる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
尚、実施例において、使用したスチレン・アクリル酸nブチル共重合体の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点温度の測定は、下記の方法に従って行った。
【0043】
<重量平均分子量の測定>
溶媒としてo−ジクロロベンゼンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置(ウォーターズ社製)によって温度135℃条件で測定した。単分散ポリスチレン標準試料を用いて予め作成しておいた検量線によって、ポリスチレン換算法で試料の重量平均分子量を求めた。
【0044】
<ガラス転移点温度の測定>
示差走査型熱量計(DSC:デュポン社製)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0045】
また、使用した各種ポリオレフィン系共重合体の樹脂組成、及び190℃で2160g荷重測定条件下(JIS K6760に準拠)でのメルトフローレートは、次の通りである。
【0046】
<エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼>
エチレン含量57重量%、アクリル酸nブチル30重量%、一酸化炭素13重量%の組成で、メルトフローレート12g/10分。
【0047】
<エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲2▼>
エチレン含量63重量%、アクリル酸nブチル27重量%、一酸化炭素10重量%の組成で、メルトフローレート100g/10分。
【0048】
<エチレン・一酸化炭素共重合体>
エチレン含量99重量%、一酸化炭素1重量%の組成で、メルトフローレート1g/10分。
【0049】
<エチレン・アクリル酸エチル共重合体>
エチレン含量75重量%、アクリル酸エチル25重量%の組成で、メルトフローレート20g/10分。
【0050】
また、スチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法、及びこの作成試料を用いての環球法軟化点の測定、溶融開始温度の測定、200℃での溶融粘度の測定、試料の分散状態(モルフォロジー)観察は、下記の方法にて行った。
【0051】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法>
所定量のスチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体とを160℃に調整した回転数60min-1のブラベンダーミキサーに投入し、15分間かけて溶融混合を行い、試料を作成した。
【0052】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の環球法軟化点の測定>
JIS K2207に準拠して測定を行った。
【0053】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の溶融開始温度の測定>
フローテスター(島津製作所製)を用い、JIS K7210を参考に、等速昇温試験法(プランジャー:1cm2 、ダイ径:1.0mm、ダイ長:1.0mm、荷重:20Kg、測定開始温度:90℃、昇温速度:6℃/分の条件)にて、試料の溶融開始温度(プランジャーの降下開始温度)の測定を行った。
【0054】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の200℃での溶融粘度の測定>
JIS K6862(B法)に準拠して測定を行った。
【0055】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の分散状態の観察>
試料を用いて、160℃プレス成形条件下で2mmのシート片を作成し、シート断面部を−60℃で超ミクロトーム使用にてスライスし、四酸化ルテニウム染色処理後、走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所製)による断面部の分散状態(モルフォロジー)観察を行い、ポリオレフィン系共重合体粒子相(島相)の分散粒子径の測定、及びスチレン・アクリル酸nブチル共重合体相(海相)との密着性の観察を行った。
【0056】
また、上記スチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料を用いて、下記の方法にてトナー及び二成分系現像剤を作成し、この現像剤を用いて実際にトナーの特性(定着画像の定着性、耐オフセット現象)の評価を行った。
【0057】
<トナー及び二成分系現像剤の作成>
スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料85重量部、カーボンブラック(三菱化学製:ダイヤブラックSH)9重量部、金属含有染料(BASF製:ザボンファーストブラックB)2重量部、及びポリプロピレンワックス(三井石油化学工業製:ハイワックスNP055)4重量部を、スーパーミキサーで混合し、二軸混練機で溶融混練後、ジェットミルで粉砕し、その後分級して平均粒径12〜15μmのトナーを調製した。このトナー5重量部にキャリヤーとして平均粒径50〜80μmの鉄粉を95重量部配合して二成分系現像剤を調製した。
【0058】
<トナーの定着画像の定着性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られたトナー画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した定着ローラーと、表面をシリコーンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、定着ローラーの温度を160℃に調整して画像を形成させた。次いで、得られた定着画像の表面を、500gの荷重を載せた砂消しゴム(接地面積:15mm×7.5mm)で5回摩擦して画像の残存状態を目視観察した。
【0059】
<トナーの耐オフセット性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られたトナー画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した200℃の定着ローラーと、表面をシリコーンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、画像を定着させる複写工程を繰り返し行った。5000回複写工程を繰り返した後に、オフセット現象の有無を目視観察した。
【0060】
(実施例1)
スチレン・アクリル酸nブチル共重合体(スチレン含量70重量%、アクリル酸nブチル含量30重量%、重量平均分子量(Mw)150,000、ガラス転移点温度60℃)90重量部に、エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体樹脂▲1▼10重量部を上記条件にて溶融混練を行い、試料を作成し、次に、得られた試料の環球法軟化点の測定、溶融開始温度の測定、200℃での溶融粘度の測定、SEMによる分散状態(分散粒子径、粒子密着性)の目視観察を行った。結果を表1に示す。
また、試料を用いて、上記条件下にて二成分静電トナーを作成し、定着画像の定着性、及び耐オフセット性の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例2)
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼を別組成のエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲2▼に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼をエチレン・一酸化炭素共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼をエチレン・アクリル酸エチル共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
実施例1において、エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼を配合せず、スチレン・アクリル酸nブチル共重合体のみの配合処方に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、従来汎用のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂(A)に、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)を1〜20重量%添加含有することで、両者の良相溶化を図り、その結果低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮せしめることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真等に使用するトナー用樹脂組成物及びトナーに関し、さらに詳しくは、静電荷像を現像する方法において乾式現像方式に使用するトナー用樹脂組成物及びそれを用いたトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用現像剤は、電子写真法において、帯電及び露光により形成された静電潜像を現像し、可視画像を形成するために、複写機、プリンター、FAX等の分野において広く用いられている。この現像剤には、大別して二成分系現像剤と一成分系トナーとがあり、前者においても、鉄粉、フェライト等の磁性キャリアとトナーとの組み合わせを用いる二成分系磁性現像剤とガラス粒子等の非磁性キャリアとトナーとの組み合わせを用いた二成分系非磁性現像剤があり、後者においても、トナー中に磁性粉を含有させた一成分系磁性トナーと、磁性粉を含有しない一成分系非磁性トナーとが知られている。
これら何れのトナーも、樹脂中に、カーボンブラック、顔料等の着色剤を、必要により電荷制御剤、離型剤、磁性粉等と共に、分散させてなる帯電性微粉末から成る。
【0003】
複写物を得るには、通常、感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に摩擦帯電性のトナーを電気的に付着させて現像し、ここで得られたトナー像を用紙等のシート上に転写し、その後トナーに対して離型性を有する熱圧ローラーで定着させて永久可視像とする。
【0004】
この熱圧ローラー定着法においては、消費電力等の経済性を向上させるため、また、複写速度を上げるため、より低温で定着可能なトナーが要求されている。低温定着性という点から、トナー用樹脂の軟化点を下げることにより、ある程度定着可能温度を低下させることが出来るが、未だ十分ではない。
【0005】
すなわち、このような低い軟化点のトナー用樹脂を用いた静電トナーでは、定着時に像を形成するトナーの一部が熱圧ローラーの表面に移行し、次に送られてくる用紙等のシートに再び移行して画像を汚すという現象(オフセット現象)が発生し易いという問題がある。
【0006】
このような問題を解決する目的で、トナー用樹脂として、特定の低分子量の重合体成分と高分子量の重合体成分とからなるスチレン−アクリル酸エステル系重合体を用いたトナーが提案されている(例えば特開昭56−158340号公報)。
【0007】
また、特開平4−21860号公報、特開平6−308762号公報、特開平8−82954号公報、特開平9−106098号公報等には、トナー用樹脂として、特定のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体に、特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体、オレフィン・無水マレイン酸共重合体、或いは無水マレイン酸等の極性基を導入(グラフト化)したポリオレフィン系樹脂等を含有させたトナーが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案のトナーを用いても、低温定着性と耐オフセット性の良好なバランスを発揮させるには不十分であり、市場においてより効果的な改質剤を用いてのトナーの出現が求められている。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体に相溶性の極めて良好な特定のオレフィン系樹脂を含有させることで、低温定着性と耐オフセット性との良好なバランス性能を発揮せしめることを見出し、本発明に至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)を主成分とし、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)が1〜20重量%含有されていることを特徴とするトナー用樹脂組成物及びこのトナー用樹脂組成物を用いたトナーに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
[作用]
本発明で用いるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(以下スチレン/アクリル系共重合体とも呼ぶ)は、トナー用樹脂として一般的なものであるが、本発明では、種々のオレフィン系樹脂の中でも、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体を選択し、これを改質成分として前記トナー用樹脂中に配合したことが顕著な特徴であり、これにより、低温定着性と耐オフセット性との良好なバランス性能を発揮させることが可能となる。
【0012】
本発明において改質成分として使用する共重合体は、エチレン、不飽和エステル及び一酸化炭素のモノマー成分の組み合わせから誘導されていることが上記バランス性能の点から重要であり、エチレン・一酸化炭素の二元系共重合体を使用したのでは、低温定着性も耐オフセット性も不十分である(後述する比較例1参照)。また、エチレン・不飽和エステルの二元系共重合体を使用したのでは、低温定着性は十分であるが、耐オフセット性が不十分である(後述する比較例2参照)。これに対して、上記三元系共重合体を使用すると、満足すべき低温定着性と耐オフセット性が得られる(後述する実施例1及び2参照)。
【0013】
本発明において、上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)を、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)へ配合したことによる改質効果は、後述する例において行った配合物の溶融特性や分散構造についての実験から、以下のように解析が可能である。
【0014】
即ち、このブレンド物では、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)が連続相及びエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)が分散相となった海−島構造を形成していると共に、この分散相(島)が比較的ミクロな状態で分散化し、しかも連続相(A)と分散化した島相(B)との界面においても良好な密着性が維持されている。この分散構造が良好な低温接着性が発現される理由と考えられる。更に、上記の微細な分散構造の発現により、このブレンド物の溶融粘度は、かなり高い値となっている。これが耐オフセット性が向上する理由と考えられる。
【0015】
[スチレン/アクリル系共重合体]
本発明では、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)を主成分として用いる。
この共重合体(A)を構成するスチレン系単量体の具体例としては、スチレンの他に、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、P−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン等を挙げることができる。これらのスチレン系単量体は、単独でも2種以上の組み合わせでも用いることができる。
【0016】
一方、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体も、単独でも2種以上の組み合わせでも用いることができる。
【0017】
上記スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)において、スチレン系単量体の含有率が60〜90重量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が10〜40重量%のものが好ましい。スチレン系単量体の含有率が少なくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、逆にスチレン系単量体の含有率が多くなると、トナーの定着性が低下する傾向にある。一方、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が少なくなると、トナーの定着性が低下する傾向にあり、逆に(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が多くなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にある。
【0018】
上記のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体においては、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外に、必要に応じて第三成分として、例えば(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、安息香酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル等の単量体を0〜15重量%の範囲で含有することができる。
【0019】
また、本発明に用いるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量において重量平均分子量(Mw)が5,000以上のものが好ましく、特に10,000〜1,000,000のものが好ましい。共重合体の重量平均分子量が小さくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、逆に共重合体の重量平均分子量が大きくなると、トナーの定着性が低下する傾向にある。
【0020】
また、本発明に用いるスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)は、トナーの凝集防止の点から、示差走査熱量計(DSC)によって測定されるガラス転移点温度が50℃以上であるものが好ましい。
【0021】
このようなスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の公知の重合方法により製造することができる。
【0022】
[エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体]
この発明においては、上記のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)に、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)が1〜20重量%含有される。
【0023】
エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)としては、エチレンが30〜90重量%、好ましくは50〜80重量%、不飽和エステルが5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%、一酸化炭素が1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の量で含まれていることが望ましい。
【0024】
ここに、不飽和エステルとしては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nブチルのような不飽和カルボン酸エステルなどを例示することができる。中でも、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体の熱安定性を考慮すると、一般には不飽和エステルとしては、不飽和カルボン酸エステルを使用した共重合体を使用することが望ましい。
【0025】
上記共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜1000g/10分、特に1〜300g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0026】
このような共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得る事が出来る。
【0027】
[樹脂組成物及びトナー]
本発明においては、上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)をスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)にブレンドするが、共重合体(B)の含有量は、樹脂組成物の合計基準で、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%である。共重合体(B)の含有量が上記範囲よりも少ないと、低温定着性と耐オフセット性との良好なバランス性能が十分に発現されない傾向があり、一方共重合体(B)の含有量が多いと、逆に共重合体(A)との相溶性が悪化し、具体的には樹脂組成物の耐オフセット性が阻害される等の支障を来たす。
【0028】
本発明のトナーは、上記のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂(A)と、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体樹脂(B)とを含有する限り、その調製手段及び処方等は特に限定されない。
【0029】
本発明のトナーは、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法、重合法等のそれ自体公知の方法で製造し得るが、粉砕分級法が一般的である。
この粉砕分級法の場合、例えば、上記スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂(A)に、エチレン・不飽和スチレン・一酸化炭素共重合体樹脂(B)を配合し、その他着色剤等の従来公知のトナー用添加剤を配合し、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合し、これをロールミル、ニーダー、押出機等を用いて混練した後、冷却して微粉砕化し、必要により分級する方法が採用される。
粉砕分級法のトナー粒子は不定形であるが、このトナー粒子を熱気流中で溶融し、次いで冷却することによって、球状のトナー粒子を製造することもできる。
【0030】
また、別法として、上記スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂にエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体樹脂をより均一に含有させるために、両者を適当な溶剤に溶解分散した後に脱溶剤したり、或いはスプレー乾燥することによって、球状トナーを製造でき、更にエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体樹脂粒子の存在下でスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした単量体を共重合する方法(重合法)によっても、球状トナーを製造することができる。
【0031】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、アルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、キノリンイエロー、ランプブラック、ローズベンガル、ジアゾイエロー等の顔料または染料が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。
上記着色剤は、定着用の前記樹脂媒質100重量部当り2乃至20重量部、特に5乃至15重量部の量で使用するのがよい。
【0032】
また、電荷制御剤として、それ自体公知の任意の電荷制御剤、例えば、ニグロシンベース、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料や、1:1型或いは2:1型金属錯塩染料、ナフテン酸金属塩、脂肪酸や石鹸、樹脂酸石鹸等をそれ自体公知の処方に従って配合することができる。
【0033】
更に、熱定着に際して離型性を向上させるために、それ自体公知の離型剤、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩等を、公知の処方に従って配合することができる。
【0034】
また、本発明のトナー中には、磁性粉を配合して1成分磁性トナーを得る事もできる。磁性粉としては、マグネタイト、フェライトを始めとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属、合金、または化合物の粉末が配合される。
【0035】
トナーの粒子形状は、不定形でも球状粒子のように定形粒子であってもよく、またトナーの粒径は、一般にコールターカウンターによるメジアン径が5乃至15μm、特に7乃至12μmの範囲内にあるのがよい。
【0036】
トナー粒子の表面には、必要に応じ気相法シリカ、気相法アルミナ、気相法チタニア等の流動性改良剤を、外添により付着させてトナーの流動性を改善することができる。流動性改良剤の量は、トナー当たり0.1乃至2.0重量%の量で外添するのがよい。
【0037】
本発明によるトナーは、単独で非磁性一成分系トナーとして、またトナー中に磁性粉を配合したものは、磁性一成分系トナーとして、静電潜像の現像に用いることができる。
また、このトナーは、磁性キャリアー或いは非磁性キャリアーと混合して、二成分現像剤として使用する。
【0038】
磁性キャリアーとしては、鉄粉や、フェライト系の磁性キャリアー、好適にはフェライト系の磁性キャリアー、特にCu,Zn,Mg,Mn及びNiから成る群より選ばれた金属成分の少なくとも1種、好適には2種以上含有するソフトフェライト、例えば、銅−亜鉛−マグネシウムフェライトの焼結フェライト粒子、特に球状粒子が使用される。磁性キャリアーの表面は、未コートのものでもよいが、一般には、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ウレタン系樹脂等でコートされているのがよい。
【0039】
磁性キャリアーとトナーとの混合比は、一般に98:2乃至90:10の重量比、特に97:3乃至94:6の重量比にあるのがよい。
【0040】
本発明のトナーを用いる静電写真複写法において、静電潜像の形成はそれ自体公知の任意の方式で行うことができ、例えば導電性基板上の光導電層を一様に荷電した後、画像露光して静電潜像を形成させることができる。
静電像の現像は、摩擦等によりトナー粒子が帯電された一成分系トナー或いは二成分系現像剤を静電潜像と接触させることにより容易に行われる。現像により形成されたトナー像は複写紙上に転写され、このトナー像を加熱ロールと接触させることにより定着が行われる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
尚、実施例において、使用したスチレン・アクリル酸nブチル共重合体の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点温度の測定は、下記の方法に従って行った。
【0043】
<重量平均分子量の測定>
溶媒としてo−ジクロロベンゼンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置(ウォーターズ社製)によって温度135℃条件で測定した。単分散ポリスチレン標準試料を用いて予め作成しておいた検量線によって、ポリスチレン換算法で試料の重量平均分子量を求めた。
【0044】
<ガラス転移点温度の測定>
示差走査型熱量計(DSC:デュポン社製)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0045】
また、使用した各種ポリオレフィン系共重合体の樹脂組成、及び190℃で2160g荷重測定条件下(JIS K6760に準拠)でのメルトフローレートは、次の通りである。
【0046】
<エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼>
エチレン含量57重量%、アクリル酸nブチル30重量%、一酸化炭素13重量%の組成で、メルトフローレート12g/10分。
【0047】
<エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲2▼>
エチレン含量63重量%、アクリル酸nブチル27重量%、一酸化炭素10重量%の組成で、メルトフローレート100g/10分。
【0048】
<エチレン・一酸化炭素共重合体>
エチレン含量99重量%、一酸化炭素1重量%の組成で、メルトフローレート1g/10分。
【0049】
<エチレン・アクリル酸エチル共重合体>
エチレン含量75重量%、アクリル酸エチル25重量%の組成で、メルトフローレート20g/10分。
【0050】
また、スチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法、及びこの作成試料を用いての環球法軟化点の測定、溶融開始温度の測定、200℃での溶融粘度の測定、試料の分散状態(モルフォロジー)観察は、下記の方法にて行った。
【0051】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法>
所定量のスチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体とを160℃に調整した回転数60min-1のブラベンダーミキサーに投入し、15分間かけて溶融混合を行い、試料を作成した。
【0052】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の環球法軟化点の測定>
JIS K2207に準拠して測定を行った。
【0053】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の溶融開始温度の測定>
フローテスター(島津製作所製)を用い、JIS K7210を参考に、等速昇温試験法(プランジャー:1cm2 、ダイ径:1.0mm、ダイ長:1.0mm、荷重:20Kg、測定開始温度:90℃、昇温速度:6℃/分の条件)にて、試料の溶融開始温度(プランジャーの降下開始温度)の測定を行った。
【0054】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の200℃での溶融粘度の測定>
JIS K6862(B法)に準拠して測定を行った。
【0055】
<スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の分散状態の観察>
試料を用いて、160℃プレス成形条件下で2mmのシート片を作成し、シート断面部を−60℃で超ミクロトーム使用にてスライスし、四酸化ルテニウム染色処理後、走査型電子顕微鏡(SEM:日立製作所製)による断面部の分散状態(モルフォロジー)観察を行い、ポリオレフィン系共重合体粒子相(島相)の分散粒子径の測定、及びスチレン・アクリル酸nブチル共重合体相(海相)との密着性の観察を行った。
【0056】
また、上記スチレン・アクリル酸nブチル共重合体と各種ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料を用いて、下記の方法にてトナー及び二成分系現像剤を作成し、この現像剤を用いて実際にトナーの特性(定着画像の定着性、耐オフセット現象)の評価を行った。
【0057】
<トナー及び二成分系現像剤の作成>
スチレン・アクリル酸nブチル共重合体/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料85重量部、カーボンブラック(三菱化学製:ダイヤブラックSH)9重量部、金属含有染料(BASF製:ザボンファーストブラックB)2重量部、及びポリプロピレンワックス(三井石油化学工業製:ハイワックスNP055)4重量部を、スーパーミキサーで混合し、二軸混練機で溶融混練後、ジェットミルで粉砕し、その後分級して平均粒径12〜15μmのトナーを調製した。このトナー5重量部にキャリヤーとして平均粒径50〜80μmの鉄粉を95重量部配合して二成分系現像剤を調製した。
【0058】
<トナーの定着画像の定着性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られたトナー画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した定着ローラーと、表面をシリコーンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、定着ローラーの温度を160℃に調整して画像を形成させた。次いで、得られた定着画像の表面を、500gの荷重を載せた砂消しゴム(接地面積:15mm×7.5mm)で5回摩擦して画像の残存状態を目視観察した。
【0059】
<トナーの耐オフセット性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られたトナー画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した200℃の定着ローラーと、表面をシリコーンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、画像を定着させる複写工程を繰り返し行った。5000回複写工程を繰り返した後に、オフセット現象の有無を目視観察した。
【0060】
(実施例1)
スチレン・アクリル酸nブチル共重合体(スチレン含量70重量%、アクリル酸nブチル含量30重量%、重量平均分子量(Mw)150,000、ガラス転移点温度60℃)90重量部に、エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体樹脂▲1▼10重量部を上記条件にて溶融混練を行い、試料を作成し、次に、得られた試料の環球法軟化点の測定、溶融開始温度の測定、200℃での溶融粘度の測定、SEMによる分散状態(分散粒子径、粒子密着性)の目視観察を行った。結果を表1に示す。
また、試料を用いて、上記条件下にて二成分静電トナーを作成し、定着画像の定着性、及び耐オフセット性の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例2)
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼を別組成のエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲2▼に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼をエチレン・一酸化炭素共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼をエチレン・アクリル酸エチル共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
実施例1において、エチレン・アクリル酸nブチル・一酸化炭素共重合体▲1▼を配合せず、スチレン・アクリル酸nブチル共重合体のみの配合処方に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、従来汎用のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体樹脂(A)に、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)を1〜20重量%添加含有することで、両者の良相溶化を図り、その結果低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮せしめることができる。
Claims (2)
- スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを構成単位とした共重合体(A)を主成分とし、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(B)が1〜20重量%含有されていることを特徴とするトナー用樹脂組成物。
- 請求項1記載のトナー用樹脂組成物を用いることを特徴とするトナー。
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1997
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