JP3727776B2 - トナー用樹脂組成物及びトナー - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真等に使用するトナー用樹脂組成物及びトナーに関し、さらに詳しくは、静電荷像を現像する乾式現像方式に使用するトナー用樹脂組成物及びそれを用いたトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用現像剤、いわゆる静電トナーは、複写機、プリンター等の電子写真において、帯電露光により形成された静電潜像を現像し、可視画像を形成するために用いられる。この静電トナーは、樹脂中にカーボンブラック、顔料等の着色剤を分散させてなる帯電性微粉末である。また、この静電トナーは、鉄粉、ガラス粒子等のキャリアーと共に用いられる乾式二成分系トナーと、磁性微粉末が分散された乾式磁性一成分系トナーや非磁性一成分系トナーとに大別される。
【0003】
複写物等の画像を得るには、通常、感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に摩擦帯電性のトナーや磁性トナーを電気的に付着させて現像し、ここで得られたトナー像を用紙等のシート上に転写し、その後トナーに対して離型性を有する熱圧ローラーで定着させて永久可視像とする。
【0004】
この熱圧ローラー定着法においては、消費電力等の経済性を向上させるため、及び複写速度を上げるため、より低温で定着可能なトナーが要求されている。その際、低温定着性という点から、トナー用樹脂の軟化点を下げることにより、ある程度定着可能温度を低下させることが出来るが、未だ良好な画像を形成させるという目的に十分ではない。
すなわち、このような低い軟化点のトナー用樹脂を用いた静電トナーは、定着時に像を形成するトナーの一部が熱圧ローラーの表面に移行し、次ぎに送られてくる用紙等のシートに再び移行して、画像を汚すという現象(オフセット現象)が発生し易いという問題がある。
【0005】
このような低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス特性を発現させる目的で、トナー用樹脂として、従来のスチレン−アクリル酸エステル系重合体を用いたトナーに替えて、熱可塑性ポリエステル樹脂を用いたトナーが提案されている(例えば特開平1−156759号公報参照)。
また、更なる定着性の改良を目的として、特開平6−308764号公報、特開平6−342227号公報、特開平7−199542号公報等には、トナー用樹脂として、熱可塑性ポリエステル樹脂に、特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等のポリオレフィン系樹脂を含有させたトナーが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案のトナーを用いても、低温定着性と耐オフセット性の良好なバランスを発揮させるには不十分であり、市場においてより効果的な改質剤を用いてのトナーの出現が求められている。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル樹脂に相溶性の極めて良好な特定組成のオレフィン系樹脂を含有させることで、低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮せしめることを見いだし、本発明に至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とし、エチレンが30〜90重量%、不飽和エステルが5〜60重量%、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルが1〜20重量%の組成のエチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体が1〜20重量%含有されていることを特徴とするトナー用樹脂組成物及びこのトナー用樹脂組成物を用いたトナーに関する。
【0009】
【発明の実施形態】
本発明において、熱可塑性ポリエステル中に配合するエチレン系共重合体は、不飽和エステルと(メタ)アクリル酸グリシジルエステルとの両方を、特定の量比で含有することが顕著な特徴であり、これにより、低温定着性と耐オフセット性とをバランスよく向上させることができる。
【0010】
熱可塑性ポリエステルにエチレン−アクリル酸エチル等の二元共重合体を配合することにより、トナーの機械的耐衝撃性が改善されることは、特公昭54−20345号公報により公知であるが、上記の二元共重合体の配合では、低温定着性が未だ十分とはいえず、オフセット防止にも未だ不満足なものである(比較例2)。
【0011】
また、熱可塑性ポリエステルにエチレン−メタクリル酸グリシジルエステル等の二元共重合体を配合することにより、ワックス類の分散性を改善することは、特開平7−199542号公報により公知であるが、この二元共重合体の配合では、やはり、低温定着性が未だ十分とはいえず、オフセット防止にも未だ不満足なものである(比較例1)。
【0012】
これに対して、本発明に従い、熱可塑性ポリエステルにエチレン−不飽和エステル−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体を配合すると、上記二元共重合体の利点を損なうことなく、低温定着性及びオフセット防止性をバランスよく向上させることが可能となる(実施例1参照)。
【0013】
本発明において、上記三元共重合体の配合により、低温定着性及びオフセット防止性がバランスよく向上する理由は、決してこれに拘束されるものではないが、本発明のトナー用樹脂組成物においては、低温定着性及びオフセット防止性の組み合わせに望ましい相互貫入網目構造が形成されていると信じられる。
即ち、三元共重合体中のエチレン成分は靭性に富むセグメント成分であり、一方この共重合体中の不飽和エステル成分は柔らかいセグメントであって、ゴム状弾性を有している。更に、この共重合体中の(メタ)アクリル酸グリシジルエステル成分は、熱可塑性ポリエステルに架橋点を与えると共に、トナーの定着性にも寄与する官能性成分と考えられる。
かくして、本発明のトナー用樹脂組成物では、主成分である熱可塑性ポリエステルのマトリックス中に上記三元共重合体が相溶し、分散して、熱的にも比較的安定な相互貫入網目構造を形成し、これがオフセット防止に役立つと共に、ポリエステル及び三元共重合体の官能性やゴム的親和性が低温定着性の向上に役立っていると思われる。
【0014】
[熱可塑性ポリエステル]
本発明の樹脂組成物において、主体となる熱可塑性ポリエステルとしては、2価のカルボン酸成分を主体とする多価カルボン酸類と、2価の水酸基含有化合物を主体とする多価水酸基含有化合物類とから誘導された熱可塑性ポリエステルが使用される。
【0015】
多価カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸等の脂肪族カルボン酸や、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸等の脂環族カルボン酸等が、単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
一方、多価水酸基含有化合物としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA等が、単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
【0016】
熱可塑性ポリエステルは、ホモポリエステル或いはコポリエステルの単独でも、或いはこれらの2種以上から成るブレンド物であってもよい。
【0017】
本発明において、トナー用樹脂組成物の主成分として用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂は、トナー用樹脂として通常使用されているものであれば、特に制限されるものではないが、ゲルパーミエーョンクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量において、重量平均分子量(Mw)が5,000以上のものが好ましく、特に10,000〜1,000,000のものが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が小さくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、逆に重量平均分子量が大きくなると、トナーの定着性が低下する傾向にある。
また、特定の低分子量の縮重合体成分と高分子量の縮重合体成分とからなる2山の分子量分布曲線を有するタイプ、或いは1山の単分子量分布曲線を有するタイプ何れのタイプの熱可塑性ポリエステル樹脂であっても差し支えない。
【0018】
また、本発明に用いる熱可塑性ポリエステル樹脂は、トナーの凝集防止の点から、示差走査熱量計(DSC)によって測定されるガラス転移点温度が50℃以上であるものが好ましい。熱可塑性ポリエステルのガラス転移点は、ポリエステルを構成する反復単位中の芳香族成分の含有量に影響される。多価カルボン酸成分及び多価水酸基含有化合物成分の少なくとも一方が芳香族成分を主体とするものからなる熱可塑性ポリエステルが好適である。
【0019】
[エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体]この発明においては、上記の熱可塑性ポリエステル樹脂に、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体が1〜20重量%含有される。
【0020】
ここに、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体としては、エチレンが30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、不飽和エステルが5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルが1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%の量で含まれていることが望ましい。尚、(メタ)アクリル酸とは、それ自体よく用いられているように、アクリル酸及びメタアクリル酸の両方を意味するものである。
【0021】
本発明に用いる共重合体は、不飽和エステルと(メタ)アクリル酸グリシジルエステルとの両方を前述した特定の量比で含有することが重要である。即ち、不飽和エステル成分及び(メタ)アクリル酸グリシジルエステル成分の共重合比には、熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性に関して一定のバランスがあり、上記範囲を外れると、ポリエステルとの相溶性が悪化し、その結果、トナー用樹脂組成物として採用した場合、目的とする低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮することが出来ない。
【0022】
上記共重合体における不飽和エステルとしては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nブチルのような不飽和カルボン酸エステルなどを例示することができる。中でも、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体の熱安定性を考慮すると、一般には不飽和エステルとしては、不飽和カルボン酸エステルを使用した共重合体を使用することが望ましい。
【0023】
上記共重合体としては、また、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜1000g/10分、特に1〜300g/10分のものを使用するのが好ましい。
このような共重合体は、上記の構成単量体を高温、高圧下のラジカル共重合によって得る事が出来る。
【0024】
[トナー用樹脂組成物及びトナー]
上記エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体の熱可塑性ポリエステル樹脂への添加含有量は、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%の範囲にある。
共重合体の含有割合が少ないと、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体による熱可塑性ポリエステル樹脂のトナー特性(低温定着性と耐オフセット性)の良好なバランス性能の発現改質効果が小さく、一方含有割合が多いと、逆に熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性が悪化し、具体的には耐オフセット性が大幅に阻害される等の支障を来たす傾向がある。
【0025】
本発明のトナーは、上記の熱可塑性ポリエステル(A)と、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂(B)とを含有する限り、その調製手段及び処方等は特に限定されない。
【0026】
本発明のトナーは、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法等のそれ自体公知の方法で製造し得るが、粉砕分級法が一般的である。
この粉砕分級法の場合、例えば、上記熱可塑性ポリエステル(A)に、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体(B)を配合し、その他着色剤等の従来公知のトナー用添加剤を配合し、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合し、これをロールミル、ニーダー、押出機等を用いて混練した後、冷却して微粉砕化し、必要により分級する方法が採用される。
粉砕分級法のトナー粒子は不定形であるが、このトナー粒子を熱気流中で溶融し、次いで冷却することによって、球状のトナー粒子を製造することもできる。
【0027】
また、別法として、上記熱可塑性ポリエステルにエチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂をより均一に含有させるために、両者を適当な溶剤に溶解分散した後に脱溶剤したり、或いはスプレー乾燥することによって、球状トナーを製造でき、更に、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂粒子の存在下で多価カルボン酸単量体と多価アルコール単量体とを構成単位として熱可塑性ポリエステル樹脂を縮重合する方法も採用される。
【0028】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、アルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、キノリンイエロー、ランプブラック、ローズベンガル、ジアゾイエロー等の顔料または染料が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。
上記着色剤は、定着用の前記樹脂媒質100重量部当り2乃至20重量部、特に5乃至15重量部の量で使用するのがよい。
【0029】
また、電荷制御剤として、それ自体公知の任意の電荷制御剤、例えば、ニグロシンベース、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料や、1:1型或いは2:1型金属錯塩染料、ナフテン酸金属塩、脂肪酸や石鹸、樹脂酸石鹸等をそれ自体公知の処方に従って配合することができる。
【0030】
更に、熱定着に際して離型性を向上させるために、それ自体公知の離型剤、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩等を、公知の処方に従って配合することができる。
【0031】
また、本発明のトナー中には、磁性粉を配合して1成分磁性トナーを得る事もできる。磁性粉としては、マグネタイト、フェライトを始めとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属、合金、または化合物の粉末が配合される。
【0032】
トナーの粒子形状は、不定形でも球状粒子のように定形粒子であってもよく、またトナーの粒径は、一般にコールターカウンターによるメジアン径が5乃至15μm、特に7乃至12μmの範囲内にあるのがよい。
【0033】
トナー粒子の表面には、必要に応じ気相法シリカ、気相法アルミナ、気相法チタニア等の流動性改良剤を、外添により付着させてトナーの流動性を改善することができる。流動性改良剤の量は、トナー当たり0.1乃至2.0重量%の量で外添するのがよい。
【0034】
本発明によるトナーは、単独で非磁性一成分系トナーとして、またトナー中に磁性粉を配合したものは、磁性一成分系トナーとして、静電潜像の現像に用いることができる。
また、このトナーは、磁性キャリアー或いは非磁性キャリアーと混合して、二成分現像剤として使用する。
【0035】
磁性キャリアーとしては、鉄粉や、フェライト系の磁性キャリアー、好適にはフェライト系の磁性キャリアー、特にCu,Zn,Mg,Mn及びNiから成る群より選ばれた金属成分の少なくとも1種、好適には2種以上含有するソフトフェライト、例えば、銅−亜鉛−マグネシウムフェライトの焼結フェライト粒子、特に球状粒子が使用される。磁性キャリアーの表面は、未コートのものでもよいが、一般には、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ウレタン系樹脂等でコートされているのがよい。
【0036】
磁性キャリアーとトナーとの混合比は、一般に98:2乃至90:10の重量比、特に97:3乃至94:6の重量比にあるのがよい。
【0037】
本発明のトナーを用いる静電写真複写法において、静電潜像の形成はそれ自体公知の任意の方式で行うことができ、例えば導電性基板上の光導電層を一様に荷電した後、画像露光して静電潜像を形成させることができる。
静電像の現像は、摩擦等によりトナー粒子が帯電された一成分系トナー或いは二成分系現像剤を静電潜像と接触させることにより容易に行われる。現像により形成されたトナー像は複写紙上に転写され、このトナー像を加熱ロールと接触させることにより定着が行われる。
【0038】
なお、本トナー用樹脂組成物には、この発明の目的及び効果を達成し得る範囲内で、その他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、可塑剤、その他添加剤等が配合されていてもよい。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例において、使用した熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点温度の測定は、下記の方法に従って行った。
【0040】
<重量平均分子量の測定>
溶媒としてヘキサフルオロプロパノールを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置(ウオーターズ社製)によって温度23℃条件で測定し、試料の重量平均分子量を求めた。
<ガラス転移点温度の測定>
示差走査型熱量計(DSC:デュポン社製)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0041】
また、使用した各種ポリオレフィン系共重合体の樹脂組成、及び190℃で2160g荷重測定条件下(JIS K6760に準拠)でのメルトフローレートは、次の通り。
<エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体>
エチレン含量77重量%、アクリル酸nブチル28重量%、メタクリル酸グリシジルエステル5重量%の組成で、メルトフローレート12g/10分。
<エチレン・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体>
エチレン含量94重量%、メタクリル酸グリシジルエステル6重量%の組成で、メルトフローレート3g/10分。
<エチレン・アクリル酸エチル共重合体>
エチレン含量75重量%、アクリル酸エチル25重量%の組成で、メルトフローレート20g/10分。
【0042】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法、及びこの作成試料を用いての溶融開始温度の測定、環球法軟化点の測定、180℃での溶融粘度の測定は、下記の方法にて行った。
【0043】
<熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法>
所定量の熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体とを160℃に調整した回転数60min-1のブラベンダーミキサーに投入し、15分間掛けて溶融混合(窒素雰囲気下)を行い、試料を作成した。
【0044】
<熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の溶融開始温度の測定>
フローテスター(島津製作所製)を用い、JIS K7210を参考に、等速昇温試験法(プランジャー:1cm2 、ダイ径:1.0mm、ダイ長:1.0mm、荷重:20Kg、測定開始温度:90℃、昇温速度:6℃/分の条件)にて、試料の溶融開始温度(プランジャーの降下開始温度)の測定を行った。
【0045】
<熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の環球法軟化点の測定>
JIS K2207に準拠して測定を行った。
<熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の180℃での溶融粘度の測定>
JIS K6862(B法)に準拠して測定を行った。
【0046】
また、上記熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料を用いてトナーを調製し、下記の方法にて二成分系現像剤を作成し、この現像剤を用いて実際にトナーの特性(定着画像の定着性、耐オフセット現象)の評価を行った。
【0047】
<二成分系現像剤の作成>
熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料85重量部、カーボンブラック(三菱化学製:ダイヤブラックSH)9重量部、金属含有染料(BASF製:ザボンファーストブラックB)2重量部、及びポリプロピレンワックス(三井化学製:ハイワックスNP055)4重量部を、スーパーミキサーで混合し、二軸混練機で溶融混練後、ジェットミルで粉砕し、その後分級して平均粒径12〜15μmのトナーを調製した。このトナー120重量部に対して、キャリアーとして平均粒径50〜80μmの鉄粉を100重量部の割合で配合して二成分系現像剤を調製した。
【0048】
<二成分系現像剤の定着画像の定着性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られた画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した定着ローラーと、表面をシリコンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、定着ローラーの温度を160℃に調整して画像を形成させた。次いで、得られた定着画像の表面を、500gの荷重を載せた砂消しゴム(接地面積:15mm×7.5mm)で5回摩擦して画像の残存状態を目視観察した。
【0049】
<二成分系現像剤の耐オフセット性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られた画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した200℃の定着ローラーと、表面をシリコーンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、画像を定着させる複写工程を繰り返し行った。5000回複写工程を繰り返した後に、オフセット現象の有無を目視観察した。
【0050】
[実施例1]
熱可塑性ポリエステル樹脂(フマル酸とビスフェノールAとの縮重合タイプ、重量平均分子量(Mw)100,000、ガラス転移点温度65℃)90重量部に、エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂10重量部を上記条件にて溶融混練を行い、試料を作成し、次に、得られた試料の溶融開始温度の測定、環球法軟化点の測定、180℃での溶融粘度の測定を行った。結果を表1に示す。
また、試料を用いて、上記条件下にて二成分現像剤を作成し、定着画像の定着性、及び耐オフセット性の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステルをエチレン・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体をエチレン・アクリル酸エチル共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例3]
実施例1において、エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体を配合せず、熱可塑性ポリエステル樹脂単一系の配合処方に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、従来汎用の熱可塑性ポリエステル樹脂にエチレン・不飽和エステル・(メタ)アタリル酸グリシジルエステル共重合体を1〜20重量%添加含有することで、両者の良相溶化を図り、その結果低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮せしめることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真等に使用するトナー用樹脂組成物及びトナーに関し、さらに詳しくは、静電荷像を現像する乾式現像方式に使用するトナー用樹脂組成物及びそれを用いたトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用現像剤、いわゆる静電トナーは、複写機、プリンター等の電子写真において、帯電露光により形成された静電潜像を現像し、可視画像を形成するために用いられる。この静電トナーは、樹脂中にカーボンブラック、顔料等の着色剤を分散させてなる帯電性微粉末である。また、この静電トナーは、鉄粉、ガラス粒子等のキャリアーと共に用いられる乾式二成分系トナーと、磁性微粉末が分散された乾式磁性一成分系トナーや非磁性一成分系トナーとに大別される。
【0003】
複写物等の画像を得るには、通常、感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像に摩擦帯電性のトナーや磁性トナーを電気的に付着させて現像し、ここで得られたトナー像を用紙等のシート上に転写し、その後トナーに対して離型性を有する熱圧ローラーで定着させて永久可視像とする。
【0004】
この熱圧ローラー定着法においては、消費電力等の経済性を向上させるため、及び複写速度を上げるため、より低温で定着可能なトナーが要求されている。その際、低温定着性という点から、トナー用樹脂の軟化点を下げることにより、ある程度定着可能温度を低下させることが出来るが、未だ良好な画像を形成させるという目的に十分ではない。
すなわち、このような低い軟化点のトナー用樹脂を用いた静電トナーは、定着時に像を形成するトナーの一部が熱圧ローラーの表面に移行し、次ぎに送られてくる用紙等のシートに再び移行して、画像を汚すという現象(オフセット現象)が発生し易いという問題がある。
【0005】
このような低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス特性を発現させる目的で、トナー用樹脂として、従来のスチレン−アクリル酸エステル系重合体を用いたトナーに替えて、熱可塑性ポリエステル樹脂を用いたトナーが提案されている(例えば特開平1−156759号公報参照)。
また、更なる定着性の改良を目的として、特開平6−308764号公報、特開平6−342227号公報、特開平7−199542号公報等には、トナー用樹脂として、熱可塑性ポリエステル樹脂に、特定のエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等のポリオレフィン系樹脂を含有させたトナーが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案のトナーを用いても、低温定着性と耐オフセット性の良好なバランスを発揮させるには不十分であり、市場においてより効果的な改質剤を用いてのトナーの出現が求められている。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル樹脂に相溶性の極めて良好な特定組成のオレフィン系樹脂を含有させることで、低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮せしめることを見いだし、本発明に至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とし、エチレンが30〜90重量%、不飽和エステルが5〜60重量%、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルが1〜20重量%の組成のエチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体が1〜20重量%含有されていることを特徴とするトナー用樹脂組成物及びこのトナー用樹脂組成物を用いたトナーに関する。
【0009】
【発明の実施形態】
本発明において、熱可塑性ポリエステル中に配合するエチレン系共重合体は、不飽和エステルと(メタ)アクリル酸グリシジルエステルとの両方を、特定の量比で含有することが顕著な特徴であり、これにより、低温定着性と耐オフセット性とをバランスよく向上させることができる。
【0010】
熱可塑性ポリエステルにエチレン−アクリル酸エチル等の二元共重合体を配合することにより、トナーの機械的耐衝撃性が改善されることは、特公昭54−20345号公報により公知であるが、上記の二元共重合体の配合では、低温定着性が未だ十分とはいえず、オフセット防止にも未だ不満足なものである(比較例2)。
【0011】
また、熱可塑性ポリエステルにエチレン−メタクリル酸グリシジルエステル等の二元共重合体を配合することにより、ワックス類の分散性を改善することは、特開平7−199542号公報により公知であるが、この二元共重合体の配合では、やはり、低温定着性が未だ十分とはいえず、オフセット防止にも未だ不満足なものである(比較例1)。
【0012】
これに対して、本発明に従い、熱可塑性ポリエステルにエチレン−不飽和エステル−(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体を配合すると、上記二元共重合体の利点を損なうことなく、低温定着性及びオフセット防止性をバランスよく向上させることが可能となる(実施例1参照)。
【0013】
本発明において、上記三元共重合体の配合により、低温定着性及びオフセット防止性がバランスよく向上する理由は、決してこれに拘束されるものではないが、本発明のトナー用樹脂組成物においては、低温定着性及びオフセット防止性の組み合わせに望ましい相互貫入網目構造が形成されていると信じられる。
即ち、三元共重合体中のエチレン成分は靭性に富むセグメント成分であり、一方この共重合体中の不飽和エステル成分は柔らかいセグメントであって、ゴム状弾性を有している。更に、この共重合体中の(メタ)アクリル酸グリシジルエステル成分は、熱可塑性ポリエステルに架橋点を与えると共に、トナーの定着性にも寄与する官能性成分と考えられる。
かくして、本発明のトナー用樹脂組成物では、主成分である熱可塑性ポリエステルのマトリックス中に上記三元共重合体が相溶し、分散して、熱的にも比較的安定な相互貫入網目構造を形成し、これがオフセット防止に役立つと共に、ポリエステル及び三元共重合体の官能性やゴム的親和性が低温定着性の向上に役立っていると思われる。
【0014】
[熱可塑性ポリエステル]
本発明の樹脂組成物において、主体となる熱可塑性ポリエステルとしては、2価のカルボン酸成分を主体とする多価カルボン酸類と、2価の水酸基含有化合物を主体とする多価水酸基含有化合物類とから誘導された熱可塑性ポリエステルが使用される。
【0015】
多価カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸等の脂肪族カルボン酸や、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸等の脂環族カルボン酸等が、単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
一方、多価水酸基含有化合物としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA等が、単独或いは2種以上の組み合わせで使用される。
【0016】
熱可塑性ポリエステルは、ホモポリエステル或いはコポリエステルの単独でも、或いはこれらの2種以上から成るブレンド物であってもよい。
【0017】
本発明において、トナー用樹脂組成物の主成分として用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂は、トナー用樹脂として通常使用されているものであれば、特に制限されるものではないが、ゲルパーミエーョンクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量において、重量平均分子量(Mw)が5,000以上のものが好ましく、特に10,000〜1,000,000のものが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が小さくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、逆に重量平均分子量が大きくなると、トナーの定着性が低下する傾向にある。
また、特定の低分子量の縮重合体成分と高分子量の縮重合体成分とからなる2山の分子量分布曲線を有するタイプ、或いは1山の単分子量分布曲線を有するタイプ何れのタイプの熱可塑性ポリエステル樹脂であっても差し支えない。
【0018】
また、本発明に用いる熱可塑性ポリエステル樹脂は、トナーの凝集防止の点から、示差走査熱量計(DSC)によって測定されるガラス転移点温度が50℃以上であるものが好ましい。熱可塑性ポリエステルのガラス転移点は、ポリエステルを構成する反復単位中の芳香族成分の含有量に影響される。多価カルボン酸成分及び多価水酸基含有化合物成分の少なくとも一方が芳香族成分を主体とするものからなる熱可塑性ポリエステルが好適である。
【0019】
[エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体]この発明においては、上記の熱可塑性ポリエステル樹脂に、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体が1〜20重量%含有される。
【0020】
ここに、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体としては、エチレンが30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、不飽和エステルが5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルが1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%の量で含まれていることが望ましい。尚、(メタ)アクリル酸とは、それ自体よく用いられているように、アクリル酸及びメタアクリル酸の両方を意味するものである。
【0021】
本発明に用いる共重合体は、不飽和エステルと(メタ)アクリル酸グリシジルエステルとの両方を前述した特定の量比で含有することが重要である。即ち、不飽和エステル成分及び(メタ)アクリル酸グリシジルエステル成分の共重合比には、熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性に関して一定のバランスがあり、上記範囲を外れると、ポリエステルとの相溶性が悪化し、その結果、トナー用樹脂組成物として採用した場合、目的とする低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮することが出来ない。
【0022】
上記共重合体における不飽和エステルとしては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nブチルのような不飽和カルボン酸エステルなどを例示することができる。中でも、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体の熱安定性を考慮すると、一般には不飽和エステルとしては、不飽和カルボン酸エステルを使用した共重合体を使用することが望ましい。
【0023】
上記共重合体としては、また、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜1000g/10分、特に1〜300g/10分のものを使用するのが好ましい。
このような共重合体は、上記の構成単量体を高温、高圧下のラジカル共重合によって得る事が出来る。
【0024】
[トナー用樹脂組成物及びトナー]
上記エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体の熱可塑性ポリエステル樹脂への添加含有量は、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%の範囲にある。
共重合体の含有割合が少ないと、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体による熱可塑性ポリエステル樹脂のトナー特性(低温定着性と耐オフセット性)の良好なバランス性能の発現改質効果が小さく、一方含有割合が多いと、逆に熱可塑性ポリエステル樹脂との相溶性が悪化し、具体的には耐オフセット性が大幅に阻害される等の支障を来たす傾向がある。
【0025】
本発明のトナーは、上記の熱可塑性ポリエステル(A)と、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂(B)とを含有する限り、その調製手段及び処方等は特に限定されない。
【0026】
本発明のトナーは、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法等のそれ自体公知の方法で製造し得るが、粉砕分級法が一般的である。
この粉砕分級法の場合、例えば、上記熱可塑性ポリエステル(A)に、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体(B)を配合し、その他着色剤等の従来公知のトナー用添加剤を配合し、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合し、これをロールミル、ニーダー、押出機等を用いて混練した後、冷却して微粉砕化し、必要により分級する方法が採用される。
粉砕分級法のトナー粒子は不定形であるが、このトナー粒子を熱気流中で溶融し、次いで冷却することによって、球状のトナー粒子を製造することもできる。
【0027】
また、別法として、上記熱可塑性ポリエステルにエチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂をより均一に含有させるために、両者を適当な溶剤に溶解分散した後に脱溶剤したり、或いはスプレー乾燥することによって、球状トナーを製造でき、更に、エチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂粒子の存在下で多価カルボン酸単量体と多価アルコール単量体とを構成単位として熱可塑性ポリエステル樹脂を縮重合する方法も採用される。
【0028】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、アルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、キノリンイエロー、ランプブラック、ローズベンガル、ジアゾイエロー等の顔料または染料が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても用いられる。
上記着色剤は、定着用の前記樹脂媒質100重量部当り2乃至20重量部、特に5乃至15重量部の量で使用するのがよい。
【0029】
また、電荷制御剤として、それ自体公知の任意の電荷制御剤、例えば、ニグロシンベース、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料や、1:1型或いは2:1型金属錯塩染料、ナフテン酸金属塩、脂肪酸や石鹸、樹脂酸石鹸等をそれ自体公知の処方に従って配合することができる。
【0030】
更に、熱定着に際して離型性を向上させるために、それ自体公知の離型剤、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩等を、公知の処方に従って配合することができる。
【0031】
また、本発明のトナー中には、磁性粉を配合して1成分磁性トナーを得る事もできる。磁性粉としては、マグネタイト、フェライトを始めとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属、合金、または化合物の粉末が配合される。
【0032】
トナーの粒子形状は、不定形でも球状粒子のように定形粒子であってもよく、またトナーの粒径は、一般にコールターカウンターによるメジアン径が5乃至15μm、特に7乃至12μmの範囲内にあるのがよい。
【0033】
トナー粒子の表面には、必要に応じ気相法シリカ、気相法アルミナ、気相法チタニア等の流動性改良剤を、外添により付着させてトナーの流動性を改善することができる。流動性改良剤の量は、トナー当たり0.1乃至2.0重量%の量で外添するのがよい。
【0034】
本発明によるトナーは、単独で非磁性一成分系トナーとして、またトナー中に磁性粉を配合したものは、磁性一成分系トナーとして、静電潜像の現像に用いることができる。
また、このトナーは、磁性キャリアー或いは非磁性キャリアーと混合して、二成分現像剤として使用する。
【0035】
磁性キャリアーとしては、鉄粉や、フェライト系の磁性キャリアー、好適にはフェライト系の磁性キャリアー、特にCu,Zn,Mg,Mn及びNiから成る群より選ばれた金属成分の少なくとも1種、好適には2種以上含有するソフトフェライト、例えば、銅−亜鉛−マグネシウムフェライトの焼結フェライト粒子、特に球状粒子が使用される。磁性キャリアーの表面は、未コートのものでもよいが、一般には、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ウレタン系樹脂等でコートされているのがよい。
【0036】
磁性キャリアーとトナーとの混合比は、一般に98:2乃至90:10の重量比、特に97:3乃至94:6の重量比にあるのがよい。
【0037】
本発明のトナーを用いる静電写真複写法において、静電潜像の形成はそれ自体公知の任意の方式で行うことができ、例えば導電性基板上の光導電層を一様に荷電した後、画像露光して静電潜像を形成させることができる。
静電像の現像は、摩擦等によりトナー粒子が帯電された一成分系トナー或いは二成分系現像剤を静電潜像と接触させることにより容易に行われる。現像により形成されたトナー像は複写紙上に転写され、このトナー像を加熱ロールと接触させることにより定着が行われる。
【0038】
なお、本トナー用樹脂組成物には、この発明の目的及び効果を達成し得る範囲内で、その他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、可塑剤、その他添加剤等が配合されていてもよい。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例において、使用した熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点温度の測定は、下記の方法に従って行った。
【0040】
<重量平均分子量の測定>
溶媒としてヘキサフルオロプロパノールを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置(ウオーターズ社製)によって温度23℃条件で測定し、試料の重量平均分子量を求めた。
<ガラス転移点温度の測定>
示差走査型熱量計(DSC:デュポン社製)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0041】
また、使用した各種ポリオレフィン系共重合体の樹脂組成、及び190℃で2160g荷重測定条件下(JIS K6760に準拠)でのメルトフローレートは、次の通り。
<エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体>
エチレン含量77重量%、アクリル酸nブチル28重量%、メタクリル酸グリシジルエステル5重量%の組成で、メルトフローレート12g/10分。
<エチレン・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体>
エチレン含量94重量%、メタクリル酸グリシジルエステル6重量%の組成で、メルトフローレート3g/10分。
<エチレン・アクリル酸エチル共重合体>
エチレン含量75重量%、アクリル酸エチル25重量%の組成で、メルトフローレート20g/10分。
【0042】
また、熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法、及びこの作成試料を用いての溶融開始温度の測定、環球法軟化点の測定、180℃での溶融粘度の測定は、下記の方法にて行った。
【0043】
<熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体との溶融混練試料の作成方法>
所定量の熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体とを160℃に調整した回転数60min-1のブラベンダーミキサーに投入し、15分間掛けて溶融混合(窒素雰囲気下)を行い、試料を作成した。
【0044】
<熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の溶融開始温度の測定>
フローテスター(島津製作所製)を用い、JIS K7210を参考に、等速昇温試験法(プランジャー:1cm2 、ダイ径:1.0mm、ダイ長:1.0mm、荷重:20Kg、測定開始温度:90℃、昇温速度:6℃/分の条件)にて、試料の溶融開始温度(プランジャーの降下開始温度)の測定を行った。
【0045】
<熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の環球法軟化点の測定>
JIS K2207に準拠して測定を行った。
<熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料の180℃での溶融粘度の測定>
JIS K6862(B法)に準拠して測定を行った。
【0046】
また、上記熱可塑性ポリエステル樹脂と各種ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料を用いてトナーを調製し、下記の方法にて二成分系現像剤を作成し、この現像剤を用いて実際にトナーの特性(定着画像の定着性、耐オフセット現象)の評価を行った。
【0047】
<二成分系現像剤の作成>
熱可塑性ポリエステル樹脂/ポリオレフィン系共重合体溶融混練試料85重量部、カーボンブラック(三菱化学製:ダイヤブラックSH)9重量部、金属含有染料(BASF製:ザボンファーストブラックB)2重量部、及びポリプロピレンワックス(三井化学製:ハイワックスNP055)4重量部を、スーパーミキサーで混合し、二軸混練機で溶融混練後、ジェットミルで粉砕し、その後分級して平均粒径12〜15μmのトナーを調製した。このトナー120重量部に対して、キャリアーとして平均粒径50〜80μmの鉄粉を100重量部の割合で配合して二成分系現像剤を調製した。
【0048】
<二成分系現像剤の定着画像の定着性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られた画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した定着ローラーと、表面をシリコンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、定着ローラーの温度を160℃に調整して画像を形成させた。次いで、得られた定着画像の表面を、500gの荷重を載せた砂消しゴム(接地面積:15mm×7.5mm)で5回摩擦して画像の残存状態を目視観察した。
【0049】
<二成分系現像剤の耐オフセット性の評価>
二成分系現像剤を用いて、電子写真法によりセレン感光体上にテスト画像の複写及び現像を行った。得られた画像を転写紙に転写し、表面をポリテトラフルオロエチレンで形成した200℃の定着ローラーと、表面をシリコーンゴムで形成した圧着ローラーとを用い、画像を定着させる複写工程を繰り返し行った。5000回複写工程を繰り返した後に、オフセット現象の有無を目視観察した。
【0050】
[実施例1]
熱可塑性ポリエステル樹脂(フマル酸とビスフェノールAとの縮重合タイプ、重量平均分子量(Mw)100,000、ガラス転移点温度65℃)90重量部に、エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体樹脂10重量部を上記条件にて溶融混練を行い、試料を作成し、次に、得られた試料の溶融開始温度の測定、環球法軟化点の測定、180℃での溶融粘度の測定を行った。結果を表1に示す。
また、試料を用いて、上記条件下にて二成分現像剤を作成し、定着画像の定着性、及び耐オフセット性の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステルをエチレン・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例2]
実施例1において、使用したエチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体をエチレン・アクリル酸エチル共重合体に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例3]
実施例1において、エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸グリシジルエステル共重合体を配合せず、熱可塑性ポリエステル樹脂単一系の配合処方に変更して実施し、同様の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、従来汎用の熱可塑性ポリエステル樹脂にエチレン・不飽和エステル・(メタ)アタリル酸グリシジルエステル共重合体を1〜20重量%添加含有することで、両者の良相溶化を図り、その結果低温定着性と耐オフセット性の良好なバランス性能を発揮せしめることができる。
Claims (2)
- 熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とし、エチレンが30〜90重量%、不飽和エステルが5〜60重量%、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルが1〜20重量%の組成のエチレン・不飽和エステル・(メタ)アクリル酸グリシジルエステル共重合体が1〜20重量%含有されていることを特徴とするトナー用樹脂組成物。
- 請求項1記載のトナー用樹脂組成物を用いることを特徴とするトナー。
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