JP4385517B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真方式や静電印刷方式等を採用したプリンターや複写機に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
フルカラー画像形成装置においては一般に、定着時においてトナー画像の一部が定着部材に移行して非画像領域を汚染するオフセット現象や被転写体が定着部材に巻きつく現象を防止するために、定着部材に離型性オイルが塗布されるが、ランニングコストの低減およびフルカラー画像の光沢向上の観点から、上記オイルの塗布量を低減させる試みがなされている。そのような試みの一つとして、例えば、トナー粒子中にワックス等の離型剤を含有させる方法があるが、当該方法ではワックスを比較的多量に含有させる必要があるため、高画質化の観点からトナーを小径化すると、トナーの耐熱保管性が低下するという問題が生じていた。また、上記のトナーでは帯電性(帯電立ち上がり性および帯電安定性)に悪影響が及んで問題となっていた。特に、トナーの消費量が多く、トナー補充の機会が多いフルカラー画像形成装置において、トナーの帯電立ち上がり性が悪いと、補充されてきたトナーが所定の帯電量まで素早く帯電されず、トナーの帯電量にバラツキが生じるため、カブリが発生した。また、帯電性に劣る低帯電、逆帯電トナーが存在すると、トナーの長期使用に伴いキャリアや帯電部材がトナー成分により汚染されトナーに対する帯電付与能が低下してトナー帯電量にバラツキが生じるため、上記したようなカブリの問題が生じた。
【0003】
トナーは、バインダー樹脂および着色剤等を溶融、混練し、冷却した後、粗粉砕および微粉砕し、所望により分級して得るのが一般的である。そこで、上記の耐熱保管性を向上させるために、ガラス転移点の比較的高いバインダー樹脂を用いると、当該樹脂が硬くなるため、粉砕効率が低下し、小径トナー粒子を効率良く生産することは困難であった。
【0004】
混練前のトナー組成物にいわゆる粉砕助剤(バインダー樹脂より脆い樹脂)を添加すると、トナー組成物の粉砕性が向上することが知られている。例えば、特開平4-257868号公報ではスチレン-ブタジエン系樹脂等の結着樹脂にC7〜C10の芳香族石油樹脂を含有させる技術が、特開平8-278658号公報ではバインダー樹脂に水素添加率が50%以上の水添石油樹脂を含有させる技術が、特開平11-65161号公報では結着樹脂にスチレン系モノマーとインデン系モノマーとを含む共重合体を含有させる技術が、特開平11-72956号公報では結着樹脂に脂肪族炭化水素と炭素数9以上の芳香族炭化水素とを含む共重合体を含有させる技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記のような技術では、耐熱保管性が低下したり、定着性が低下したりした。定着性が低下すると、オフセット現象(耐オフセット性)が発生したり、被転写体が定着部材へ巻きつく現象(分離性)が発生したり、自動原稿送り時あるいは両面複写時に片面に既に画像が形成された用紙の紙送りの際にローラで画像が擦られて画像ににじみや汚れ等の画質低下を起こす現象(スミア性)が発生したりする。さらに、上記のような技術ではトナー組成物は粉砕され易いものの、微小粒子や大径粒子が発生し易いために所望粒径のトナー粒子が効率よく得られ難く、トナー生産性(収率)に問題があった。また、上記技術によって得られるトナーは実機内において人体に有害な揮発成分を含むことが多く、安全性に問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、離型性オイルの塗布量が低減された定着方式に適用されても、優れた定着性、耐熱保管性、安全性、帯電性、生産性および画質性を有する静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、数平均分子量2000〜5000および重量平均分子量/数平均分子量5〜30のバインダー樹脂(A)、重量平均分子量1000〜3000および重量平均分子量/数平均分子量2.0以下の重合体(B)、離型剤および着色剤を含むトナー粒子を含んでなる静電荷像現像用トナーに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーを構成するトナー粒子はバインダー樹脂(A)中に少なくとも特定の重合体(B)と離型剤ならびに着色剤が分散されてなる。このような本発明のトナーにおいては、トナー粒子中における離型剤の分散性が極めて良好であるため、離型性オイルの塗布量が低減された定着方式、好ましくはオイルレス定着方式に適用されても、耐熱保管性や帯電性の低下を引き起こすことなく、優れた定着性(耐オフセット性、分離性およびスミア性)を確保できる。
【0009】
本発明のトナーにおいて重合体(B)および離型剤は平均粒径1.5μm以下で分散されていることが好ましく、このとき重合体(B)の平均粒径が離型剤の平均粒径より小さいことがより好ましい。より好ましい態様において本発明のトナー粒子中では通常、重合体(B)が平均粒径0.05〜1.0μm、好ましくは0.08〜0.8μm、より好ましくは0.1〜0.5μmで分散され、離型剤が平均粒径0.2〜1.5μm、好ましくは0.4〜1.5μm、より好ましくは0.8〜1.5μmで分散され、かつ重合体(B)の平均粒径が離型剤の平均粒径より小さい。このような構成とすることにより、トナー製造時において過粉砕を発生させることなく良好な生産性をより有効に確保できる。また、上記構成によって、離型性オイルが低減された定着方式、好ましくはオイルレス定着方式でのトナーの定着性(耐オフセット性、分離性およびスミア性)、帯電性、耐熱保管性および流動性をより有効に確保できる。現像器中のストレスによるトナー粒子からの離型剤粒子の遊離が有効に防止され、さらには離型剤がトナー粒子表面に露出する確率が有効に低減されるためと考えられる。
【0010】
トナー粒子中における重合体(B)および離型剤の分散粒径は以下の方法により測定することができる。トナー粒子をミクロトームにより、スライスした後、オスニウム染色し、TEM(透過型電子顕微鏡)にて10000倍の写真を撮影し、この写真画像をイメージアナライザー(ルーゼックス5000:日本レギュレータ社製)に取り込んで、粒子中における重合体(B)および離型剤の粒径分布を測定する。重合体(B)と離型剤との区別は、あらかじめ樹脂中に重合体(B)、離型剤(必要であれば着色剤等)を単独で分散し、各々のオスミウム染色した後のTEM写真を観察し、染色のされ方の違いを明確にしておくことにより可能である。詳しくは、重合体(B)はオスニウムによって灰色に染色され、離型剤は重合体(B)より濃く染色され、またラメラ構造を有する為、重合体(B)と離型剤とを区別することが可能である。
【0011】
本発明のさらに好ましい態様において、重合体(B)は上記平均粒径を達成しながら、トナー粒子中心部と比較してトナー粒子表層部に密に分散され、好ましくはトナー粒子表面に露出し、一方で離型剤は上記平均粒径を達成しながら、トナー粒子中で均一に分散されている。このような構成とすることによって、離型性オイルの塗布量が低減された定着方式、好ましくはオイルレス定着方式においても、優れた定着性と耐熱保管性および帯電性とをさらに有効に確保できる。これは、上記構成によって、所望の粉砕性を確保しながら重合体(B)の使用量を低減でき、さらにはトナー粒子表面での離型剤の露出や遊離がより有効に抑制されるためと考えられる。また、上記構成のトナー粒子は長期使用時におけるトナー粒子の破壊が抑制され、さらにトナー粒子からの重合体(B)粒子の剥離(脱離)が現像装置内で起こるのを抑制できるため、トナー粒子片や脱離粒子のキャリア(2成分現像剤)や現像スリーブおよび規制ブレード(1成分現像剤)等へのスペントや固着をより有効に防止でき、より安定した帯電能が確保できると考えられる。
【0012】
本発明において使用される重合体(B)は重量平均分子量(Mw)が1000〜3000、好ましくは1000〜2800、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が2.0以下、好ましくは1.9以下であり、耐熱保管性の確保の観点から、さらにガラス転移点(Tg)50〜85℃、好ましくは60〜80℃、軟化点(Tm)が100〜160℃、好ましくは110〜150℃、より好ましくは120〜145℃を有することが望ましい。
重合体(B)のMwが1000未満であると、トナーの保管性(耐熱保管性)が悪化するだけでなく、トナー粒子中における離型剤の分散性が低下するため定着性能が悪化する。また、Mwが小さすぎると、当該重合体中に揮発成分、例えば、アセトン、ベンゼン、モノマー等が残留し易いため、トナー製造時や画像形成時に当該成分が揮発して安全性や臭気が問題となる。すなわち、重合体(B)樹脂のトータルVOCが1000ppmを超え、実用的に使用することが困難となる。一方、Mwが3000を越えると、本材料自身の粉砕性が悪くなり、本材料を用いることによる粉砕性の向上効果が認められなくなるだけでなく、トナー粒子中における離型剤の分散性が低下するため定着性が悪化する。
Mw/Mnが大きすぎると、粉砕性能が低下する。
【0013】
本明細書中、重合体または樹脂のMwおよびMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(807-IT型;日本分光工業社製)によって測定された値を用いている。重合体または樹脂のガラス転移点は示差走査熱量計(DSC−200:セイコー電子社製)を用いて、リファレンスをアルミナとし、10mgの試料を昇温速度10℃/minの条件で20〜120℃の間で測定し、メイン吸熱ピークのショルダー値をガラス転移点としている。
また、軟化点はフローテスター(CFT-500:島津製作所社製)を用い、ダイスの細孔(径1mm、長さ1mm)、加圧20kg/cm2、昇温速度6℃/minの条件下で1cm3の試料を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点の高さの1/2に相当する温度を軟化点としている。
【0014】
そのような重合体(B)は粉砕性指数0.1〜1.0、好ましくは0.2〜0.6を有することが望ましい。粉砕性指数とは粉砕され易さを表すひとつの指標であり、当該値が小さいほど粉砕され易いことを意味する。
【0015】
本明細書中、粉砕性指数は以下に従って測定された値を用いている。体積平均粒径2mm程度の試料を機械式粉砕機(KTM-0型:川崎重工業社製)で処理量F(5kg/h)、KTM回転数12000(rpm)にて粉砕する際に、試料通過無し時の負荷動力値W0と試料を通過させた時の負荷動力値W1を記録する。その後、KTM粉砕で得られた粉砕物の体積平均粒径D(μm)をコールタマルチサイザーII(コールターベックマン社製)にて測定する。得られた値から下記式に基づいて粉砕性指数を算出する。
粉砕性指数=(D×(W1-W0))/F
【0016】
重合体(B)は、バインダー樹脂(A)と溶融混練されても相溶せず、かつバインダー樹脂(A)と粉砕性が異なる、公知のスチレン系モノマーの単独重合体または共重合体である。ここで「バインダー樹脂(A)と粉砕性が異なる」とは、重合体(B)の粉砕性指数がバインダー樹脂(A)の粉砕性指数より0.5以上、好ましくは0.7以上小さいことを意味する。後述するようなスチレン系モノマーと他のモノマー、例えば、イソプレンおよびブタジエン等の不飽和脂肪族モノマー、またはインデン等のインデン系モノマーとの共重合体を用いると、トナー粒子中における離型剤の分散性が低下し、耐熱保管性や帯電性が低下する。また、揮発成分が残留し易いため、安全性や臭気が問題となる。
【0017】
スチレン系モノマーとしては一般式(1);
【化1】
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基であり、好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、またはメチル基であり、より好ましくは水素原子、またはメチル基である)で表されるモノマーが挙げられる。
【0018】
スチレン系モノマーの具体例としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、β−メチルスチレン、1−プロペニルトルエン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、α−ブロモスチレン、β−ブロモスチレン等が挙げられ、好ましくはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエン、β−メチルスチレン、1−プロペニルトルエン、より好ましくはスチレン、α−メチルスチレンである。
【0019】
上記のようなモノマーからなる重合体(B)の中でも、1のモノマーからなる単独重合体を用いることが好ましく、特にポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレンを用いることが好ましい。
【0020】
重合体(B)としてポリスチレンを用いる場合、その重量平均分子量は1000〜2000であることがさらに好ましい。
また重合体(B)としてポリ-α-メチルスチレンを用いる場合、その重量平均分子量は2000〜2800であることがさらに好ましい。
【0021】
上記のような重量平均分子量を有するポリスチレンまたはポリ-α-メチルスチレンとして、石油類のスチームクラッキングによりエチレン、プロピレンなどを製造するプラントから副生された分解油留分に含まれるジオレフィンおよびモノオレフィンを原料として合成されたスチレンまたはα-メチルスチレンを用いたものが好適に使用できる。そのような重合体(B)は原料純度を高くすることが可能であるため、含有される揮発成分(VOC)の量が比較的少ない。
【0022】
重合体(B)の使用量は、得られるトナーの定着性、耐熱保管性、帯電性および生産性のさらなる向上の観点から、後述のバインダー樹脂(A)100重量部に対して1.5〜25重量部、2〜15重量部、好ましくは2.5〜10重量部が望ましい。重合体(B)は2種以上組み合わせて使用されてよく、その場合はそれらの合計量が上記範囲内になればよい。
【0023】
離型剤としてはワックスを使用する。ワックスを含有させることにより、オイル塗布量が低減された定着方式、好ましくはオイルレス定着方式においての定着性、特に耐オフセット性および分離性を向上させ、さらに広い温度範囲で光沢ムラを発生させることなく適度の光沢範囲に制御することが可能となる。このようなワックスとしては静電荷像現像用トナーの分野で公知のワックスが使用可能であり、例えば、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックス等のポリオレフィン系ワックス、カルナバワックスおよびライスワックス等の天然ワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィン系ワックス等を挙げることができる。本発明においては軟化点が60〜150℃の離型剤を用いることが好ましい。
【0024】
ポリオレフィン系ワックスとしては定着時にワックス自身が溶融し、定着装置とトナーとの離型性を確保する観点から低分子量のポリプロピレンおよびポリエチレンが好ましく用いられるが、低分子量のポリオレフィン系ワックスは硬度が小さい為、トナーの流動性を低下させる欠点を持っており、この欠点を改良する為に、カルボン酸または酸無水物で変性したものが好ましい。特に、低分子量ポリプロピレン系樹脂を(メタ)アクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群から選ばれる1種以上の酸モノマーで変性した変性ポリプロピレン樹脂が好適に使用できる。該変性ポリプロピレンは、例えばポリプロピレン系樹脂に(メタ)アクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の酸モノマーを過酸化物触媒存在下もしくは無触媒下でグラフトあるいは付加反応することにより得られる。変性ポリプロピレンを使用する場合には、酸価が0.5〜30KOHmg/g好ましくは1〜20KOHmg/gであることが望ましい。上記酸化型ポリプロピレンワックスとしては、市販されているものでは、三洋化成工業社製のビスコール200TS(軟化点140℃,酸化3.5),ビスコール100TS(軟化点140℃,酸価3.5),ビスコール110TS(軟化点140℃,酸価3.5)等が使用できる。
【0025】
ポリエチレンワックスとしては、酸化型ポリエチレンとして市販されているものが使用でき、例えば、三洋化成工業社製のサンワックスE300(軟化点103.5℃,酸価22),サンワックスE250P(軟化点103.5℃,酸価19.5),サンワックスE310(酸価15),三井石油化学工業社製のハイワックス4053E(軟化点145℃,酸価25),405MP(軟化点128℃,酸価1.0),310MP(軟化点122℃,酸価1.0),320MP(軟化点114℃,酸価1.0),210MP(軟化点118℃,酸価1.0),220MP(軟化点113℃,酸価1.0),220MP(軟化点113℃,酸価1.0),4051E(軟化点120℃,酸価12),4052E(軟化点115℃,酸価20),4202E(軟化点107℃,酸価17),2203A(軟化点111℃,酸価30)等が使用できる。
【0026】
カルナバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が0.5〜10KOHmg/g、好ましくは1〜6KOHmg/gであることが望ましい。
モンタンワツクスは、一般的に鉱物より精製されたモンタン系エステルワックスを指し、カルナバワックスと同様に微結晶のものが良く、酸価が1〜20KOHmg/g、好ましくは3〜15KOHmg/gであることが望ましい。
ライスワックスは米ぬかワックスを空気酸化したものであり、酸価が5〜30KOHmg/gであることが好ましい。
【0027】
フィッシャー・トロプシュワックスは、石炭より合成石油を炭化水素合成法により製造する際、副生するワックスであり、例えばサゾール社製の商品名「サゾールワックス」として市販されているものである。またこれとは別に天然ガスを出発原料とするフィッシャー・トロプシュワックスも低分子量成分が少なくトナーに用いた場合の耐熱性に優れる為、好適に使用できる。
フィッシャー・トロプシュワックスの酸価としては、0.5〜30KOHmg/gの物が使用でき、サゾールワックスの中では、特に酸価が3〜30KOHmg/gを有する酸化タイプのもの(商品名、サゾールワックスA1,A2等)が好適に使用できる。
【0028】
本発明において離型剤は、軟化点の異なる2種以上のワックスを併用して使用することが好ましい。例えば、軟化点が60〜110℃のワックス(以下、低軟化点ワックスという)と軟化点が110〜150℃のワックス(以下、高軟化点ワックスという)を使用することが好ましい。軟化点の異なる2種のワックスを併用することにより、広い温度範囲において定着装置(定着部材)とメディア(被転写体)との分離性を確保しやすくなる。また、オフセットが発生しない定着温度範囲(非オフセット域)を広げることができる。このとき、2種のワックスの軟化点は、少なくとも20℃以上、好ましくは30℃以上異なることが好ましい。
【0029】
高軟化点ワックスの種類は特に制限されないが、耐オフセット性等のさらなる向上の観点からは、ポリプロピレンワックスを用いることが好ましい。そのようなポリプロピレンワックスとしては160℃における溶融粘度が50〜300cps、および酸価が1〜20KOHmg/gであるポリプロピレンワックスを用いることがより好ましい。上記溶融粘度、軟化点および酸価を有するポリプロピレンワックスは後述のバインダ樹脂(A)に対する分散性が特に優れており、遊離ワックスによる問題を有効に防止しながら耐オフセット性の向上を有効に達成できる。特にポリエステル樹脂をバインダ樹脂として使用する場合には、酸化型ポリプロピレンワックスを使用することが好ましい。
【0030】
低軟化点ワックスの種類は特に制限されないが、スミア性(自動原稿送り時あるいは両面複写時に片面に既に画像が形成された用紙の紙送りの際にローラで画像が擦られて画像ににじみや汚れ等の画質低下を起こす現象)をさらに向上させる観点から、各種天然ワックス(カルナバワックス、ライスワックス)、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、パラフィン系ワックス、低分子量ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)が好適に使用され、それらの中でもモンタンワックス、ポリエチレンワックスを使用することが好ましい。より好ましくはポリエチレンワックスを用いる。そのようなポリエチレンワックスとしては140℃における溶融粘度が200〜1000cps、および酸価が0〜20KOHmg/gであるポリエチレンワックスを用いることがより好ましい。上記溶融粘度、軟化点および酸価を有するポリエチレンワックスもバインダー樹脂に対する分散性が優れており、遊離ワックスによる問題を有効に防止しながら定着画像表面の摩擦係数を低減させてスミア性の向上を有効に達成できる。
【0031】
ワックスの溶融粘度はブルックフィールド型粘度計により測定された値である。
ワックスの軟化点は上述した重合体または樹脂の軟化点の測定方法と同様の方法により測定された値を用いている。
ワックスの酸価は後述する樹脂の酸価の測定方法と同様の方法により測定された値を用いている。
【0032】
離型剤の添加量はバインダ樹脂(A)100重量部に対して2〜20重量部、好ましくは3〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部添加することが望ましい。離型剤として2種以上のワックスを使用する場合は、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0033】
本発明においては、高分散性を維持しつつ離型剤を高充填する方策として、離型剤をバインダー樹脂の合成時に予め内添する手段、バインダー樹脂、特にポリエステル樹脂にビニル系樹脂をグラフト/ブロック重合させる手段、離型剤成分をバインダー樹脂とグラフト/ブロック重合させる手段、離型剤成分の一部にバインダー樹脂、特にポリエステル樹脂となじみがでる官能基を有するモノマーおよび/またはコポリマーをグラフト/ブロック重合させる手段を採用してもよい。上記のような手段を採用することにより、離型剤のバインダー樹脂中での分散粒径を安定的に制御することが容易となる。また、離型剤自身をビニル系樹脂等をグラフト/ブロック重合することにより、バインダー樹脂との分散性能を向上させる効果があり、離型剤高充填系においての分散粒径制御を容易にする。なお、上記のグラフト/ブロック重合は、離型剤がバインダー樹脂中でドメイン状態で分散する程度に行なう。離型剤はバインダー樹脂中、ドメイン状態で分散しているが故に定着時にトナー表面にすばやくしみ出し離型効果を生み出すのであって、バインダー樹脂と完全に相溶すると離型効果は低下するためである。
【0034】
バインダー樹脂(A)は数平均分子量が2000〜5000、好ましくは2000〜4000、より好ましくは2000〜3500、重量平均分子量/数平均分子量が5〜30、好ましくは7〜28であり、耐熱保管性のさらなる向上、ドット再現性の向上、オイルレス定着性能(定着強度、ローラーからの分離性能)、さらにフルカラートナーとしての色再現性の向上の観点から、さらにガラス転移点50〜70℃、好ましくは55〜65℃、軟化点95〜160℃、好ましくは100〜150℃を有することが望ましい。
Mnが大きすぎると、充分な定着強度が得られず、また、実用的な定着温度でのフルカラー画像としての色再現性、光沢特性が悪化する。Mnが小さすぎると、実用的な定着での分離性、非オフセット温度領域が確保できない。。
Mw/Mnが大きすぎると、フルカラー画像としての色再現性、光沢度が得られない。Mw/Mnが小さすぎると、オイルレス定着での分離性、非オフセット温度領域が確保できなくなる。
【0035】
バインダー樹脂(A)の種類としては、上記したような重合体(B)との不相溶性および粉砕性の関係を有する限り特に制限されず、静電潜像現像用トナーの分野で公知のバインダー樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0036】
本発明においては、離型性オイルの塗布量が低減された定着方式、好ましくはオイルレス定着方式に使用されるトナーとしての定着性(耐オフセット性、分離性およびスミア性)をより向上させるため、ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
【0037】
ポリエステル系樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分を重縮合させることにより得られたポリエステル樹脂が使用可能である。
多価アルコール成分のうち2価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0038】
また、多価カルボン酸成分のうち2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物あるいは低級アルキルエステルが挙げられる。
【0039】
3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸,1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0040】
また、本発明においてはトナー粒子中における離型剤の分散性のさらなる向上の観点から、ポリエステル系樹脂として、ポリエステル樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとの混合物を用い、同一容器中でポリエステル樹脂を得る縮重合反応およびビニル系樹脂を得るラジカル重合反応を並行して行わせて得られた樹脂も好適に使用可能である。なお、両方の樹脂の原料モノマーと反応するモノマーとは、換言すれば縮重合反応およびラジカル重合反応の両反応に使用し得るモノマーである。即ち縮重合反応し得るカルボキシ基とラジカル重合反応し得るビニル基を有するモノマーであり、例えばフマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂の原料モノマーとしては上述した多価アルコール成分および多価カルボン酸成分が挙げられる。
またビニル系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレンまたはスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3−(メチル)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3−(メチル)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルおよびビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。ビニル系樹脂の原料モノマーを重合させる際の重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、特にオイルレス定着用トナーとしての定着性をより向上させるため、さらには透光性を必要とするフルカラートナーにおいて画像の光沢性をより有効に制御するために、ポリエステル系樹脂として軟化点の異なる2種類のポリエステル系樹脂を使用することがより好ましい。分離性をより向上させるために軟化点が90〜115℃の第1ポリエステル系樹脂を使用し、耐オフセット性をより向上させるために軟化点が130〜160℃の第2ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。また第1および第2ポリエステル系樹脂のガラス転移点は、耐熱保管性および定着強度のさらなる向上の観点から、50〜75℃、好ましくは55〜70℃とすることが望ましい。このようにバインダー樹脂として2種類の樹脂を使用する場合においては、それらの混合樹脂のMn、Mw/Mn、TgおよびTmが前記範囲内であればよい。
【0043】
第1ポリエステル系樹脂としては、上述した2価アルコール成分と2価カルボン酸成分を重縮合させて得られたポリエステル樹脂、特に2価アルコール成分としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を主成分とし、2価カルボン酸成分としてテレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸、ベンゼントリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として得られたポリエステル樹脂が好ましい。
【0044】
第2ポリエステル系樹脂としては、上述した2価アルコール成分と3価カルボン酸成分を含む多価カルボン酸成分とを重縮合させて得られたポリエステル樹脂、特に2価アルコール成分としてビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を主成分とし、3価カルボン酸成分としてトリメリット酸を用い、2価カルボン酸成分としてテレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸、ベンゼントリカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種を主成分として得られたポリエステル樹脂が好ましい。3価カルボン酸成分の重合モル比は全モノマーに対して0.5〜5mol%、好ましくは1〜3mol%が望ましい。
【0045】
また、第2ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル樹脂の原料モノマーと、ビニル系樹脂の原料モノマーと、両方の樹脂の原料モノマーと反応する両反応性モノマーとの混合物を用い、同一容器中でポリエステル樹脂を得る縮重合反応およびビニル系樹脂を得るラジカル重合反応を並行して行わせて得られたポリエステル系樹脂を用いても良い。このような樹脂は、ワックスの分散性、トナーの強靭性、分離性、耐オフセット性を向上させる観点から好ましい。この場合、第2ポリエステル系樹脂中のビニル系樹脂の含有量は5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%が望ましい。離型剤をトナー粒子中、より有効に分散させることができるためである。
【0046】
第1ポリエステル系樹脂と第2ポリエステル系樹脂との重量比は80:20〜5:95、好ましくは70:30〜20:80、より好ましくは60:40〜30:70)とすることが好ましい。第1ポリエステル系樹脂と第2ポリエステル系樹脂とをこのような範囲で使用することにより、トナーとして定着時のつぶれによる広がりが小さくドット再現性に優れており、さらに低温定着性に優れ低速および高速の画像形成装置においても優れた定着性を確保することができる。また、両面画像形成時(定着機を2度通過時)にも優れたドット再現性を維持することができる。
【0047】
本発明においては、バインダー樹脂としてビニル系樹脂を含有させてもよい。ビニル系樹脂を含有させることにより離型剤の分散粒径を好適に制御することができるためである。ビニル系樹脂の添加量としては、バインダー樹脂の5〜40重量%が望ましい。
【0048】
上記のようなバインダー樹脂(A)は酸価が5〜50KOHmg/g、好ましくは5〜40KOHmg/gであることが望ましい。特に、ポリエステル系樹脂を用いる場合このような酸価を有する樹脂を用いることによって、カーボンブラックや各種着色剤および重合体(B)、離型剤等の分散性を向上させるとともに、十分な帯電量を有するトナーとすることができる。また、環境変動、特に湿度変動に対する帯電安定性が確保される。すなわち、酸価が大きすぎると特にHH環境下での帯電量低下が問題となる。バインダー樹脂として2種類の樹脂を使用する場合においては、それらの混合樹脂の酸価が上記範囲内であればよい
【0049】
酸価は、10mgの試料をトルエン50mlに溶解し、0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用いて、予め標定されたN/10水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、N/10水酸化カリウム/アルコール溶液の消費量から算出した値である。
【0050】
その他、本発明においては、バインダー樹脂(A)の一部あるいは全部としてエポキシ系樹脂を使用することもできる。本発明で使用されるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの重縮合物などが好適に使用できる。例えば、エポミックR362、R364、R365、R367、R369(以上、三井石油化学工業社製)、エポトートYD−011、YD−012、YD−014、YD−904、YD−017(以上、東都化成社製)、エピコート1002、1004、1007(以上、シェル化学社製)等、市販のものも使用できる。
【0051】
本発明で使用される着色剤としては、従来からフルカラートナー用の着色剤として使用されている公知の顔料及び染料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、銅フタロシアニン、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー185、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を挙げることができる。
【0052】
マゼンタ、シアンおよびイエローのトナー中の着色剤の含有量としてはバインダー樹脂(A)100重量部に対し、2〜15重量部の範囲が好ましい。特に、小径化によりトナーの消費量を減らす目的で着色力を上げるため、着色剤の充填量を上げて使用することが好ましい。このときの着色剤の含有量は種類によって異なるが、バインダー樹脂(A)100重量部に対して4〜15重量部が好ましい。なお、マゼンタ、シアンおよびイエローのトナーに使用される着色剤は、使用されるバインダー樹脂(A)と予め溶融混練した後、粉砕して得られるマスターバッチとして使用されることが好ましく、そのときの使用量は得られるトナー中の着色剤含有量が上記範囲内になればよい。
【0053】
また、黒トナーにおいては、各種カーボンブラック、活性炭、チタンブラック等の着色剤の一部または全部を磁性体と置き換えることができる。本発明において非磁性黒トナー中の着色剤の含有量としてはバインダー樹脂(A)100重量部に対し、3〜15重量部の範囲が好ましい。また磁性体としては、例えば、フェライト、マグネタイト、鉄等、公知の磁性体微粒子が使用可能である。
【0054】
本発明のトナーを得るに際しては、まず、上記のバインダー樹脂(A)、重合体(B)、離型剤、および着色剤ならびにその他の添加剤、例えば、帯電制御剤等をヘンシェルミキサー等の公知の混合装置によって混合した後、公知の混練装置によって溶融混練し、冷却して、混練物を得る。混練装置としては、1または2以上の回転軸(スクリュー、ロータ、ロール等)を有するものが使用されるが、連続生産性、長期耐久性等の点からスクリュー押出機が主に使用できる。
【0055】
本発明においては混練物中、重合体(B)がバインダー樹脂(A)中に均一に分散されており、かつその平均分散粒径は0.05〜2.5μm、好ましくは0.08〜2μm、より好ましくは0.1〜1.5μmに制御さていることが好ましい。より好ましくは重合体(B)の分散粒子の95%以上が粒径2μm以下で分散している。混練物中における重合体(B)の分散状態を上記のように制御することによって、その後の粉砕工程において上記混練物は重合体(B)の分散粒子を結ぶように粉砕面が形成されながら粉砕され、結果として重合体(B)がトナー粒子中心部と比較してトナー粒子表層部に密に分散され、好ましくはトナー粒子表面に露出し、一方で離型剤がトナー粒子中で均一に分散された構成のトナー粒子を生産性よく得ることができるためである。混練物中における上記粒径の重合体(B)粒子が存在するところでは、粉砕はバインダー樹脂(A)と重合体(B)粒子との接触面(界面)ではなく、重合体(B)粒子の内部を通って起こるため、当該粉砕面は重合体(B)によって構成され、結果として得られるトナー粒子は上記のような構成を有すると考えられる。
【0056】
上記混練物中における重合体(B)の分散粒径が大きすぎると、表層部に重合体(B)が密に分散してなるトナー粒子を得ることができない。混練物中における重合体(B)の分散粒子の連なりが確保され難いため、混練物を粉砕に供したとき、重合体(B)の粒子を結ぶような粉砕が起こらず、重合体(B)の粒子を中心起点とした粉砕が起こり、粉砕面を制御することが不可能となるためと考えられる。そこで、混練物中における重合体(B)の分散粒子の連なりを確保するために重合体(B)の使用量を多くすることも考えられるが、当該使用量を増加させると、粉砕工程において過粉砕が起こり、所望とするトナー粒径分布が得られず、生産時の直行収率が低下する。一方、重合体(B)の分散粒径があまりに小さ過ぎても、表層部に重合体(B)が密に分散してなるトナー粒子を得ることができない。分散粒径が小さ過ぎると混練物中における重合体(B)の分散粒子の繋がりが特定化(制御)できない状態に陥り、さらには粉砕時において重合体(B)粒子の内部での粉砕が達成できなくなって、粉砕面の制御ができなくなるためと考えられる。
【0057】
溶融混練後、冷却して得られる混練物中の重合体(B)の分散状態は、使用される重合体(B)の体積平均粒径、混練前の混合条件、および混練条件等を適宜変更することによって制御され得る。すなわち、使用される重合体(B)の粒径を小さくすると、混練物中における重合体(B)の分散粒径は小さくなる。また、混合条件および混練条件を強めると、混練物中における重合体(B)の平均分散粒径は小さくなる。具体的には、例えば、体積平均粒径1〜5mmの重合体(B)を他のトナー材料とともにヘンシェルミキサーで混合し、2軸押し出し混練機(PCM-30:池貝鉄工社製)で溶融混練する場合、通常、ヘンシェルミキサーの混合速度を周速20〜50m/sに、混合時間を2〜10分間に、混練機の混練温度を120〜200℃に、混練機における被処理物の通過時間を1〜5分間に設定することによって、重合体(B)が上記分散粒径で均一に分散された混練物が得られる。
【0058】
混練物中の重合体(B)の分散粒径は測定し難いことから、後述の粉砕工程において体積平均粒径約2mmに粉砕されたトナー粗粉砕物の粒子中における重合体(B)の分散粒径が上記範囲内であればよい。なお、混練物中の重合体(B)の分散粒径と体積平均粒径約2mmに粉砕されたトナー粗粉砕物の粒子中における重合体(B)の分散粒径は変わらない。体積平均粒径約2mmに粉砕されたトナー粗粉砕物の粒子中における重合体(B)の分散粒径はトナー粒子中における重合体(B)の分散粒径の測定方法と同様の方法で測定され得る。
【0059】
次いで、上記のようにして得られた混練物を、粉砕、分級し、所望により表面改質処理する。粉砕工程においては、通常、混練物をフェザーミル等により粗粉砕した後、クリプトロンシステム(KTM:川崎重工業社製)、イノマイザーシステム(ホソカワミクロン社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業社製)およびターボミル(ターボ工業社製)等の高速気流中衝撃法を応用した機械式粉砕装置ならびに/または衝突板やトナー粒子同士をジェット気流に乗せて粉砕する、I型ジェットミル、PJM(共に日本ニューマチック工業社製)およびAFG(ホソカワミクロン社製)等のジェットミルにより微粉砕する。好ましくは、混練物を体積平均粒径約2mmまでフェザーミルにより粗粉砕した後、一旦、体積平均粒径10μm程度までクリプトロンシステム(KTM:川崎重工業社製)等の機械式粉砕装置により微粉砕し、さらにジェット粉砕機(IDS;日本ニューマチック社製)等のジェットミルにより微粉砕する。本発明においては、最終的に粒子の体積平均粒径が4〜8μm、好ましくは5〜7μmになるように粉砕されることが望ましい。
【0060】
分級工程で使用される分級装置としては、粉砕物を所望粒径に分級できれば公知の分級装置が使用可能であり、例えば、エルボージェット(日鉄鉱業社製)、DS分級機(日本ニューマチック工業社製)、ティープレックス型分級機(ホソカワミクロン社製)等を用いることができる。被処理粒子を球形化できる分級装置であるティープレックス型分級機(ホソカワミクロン社製)等を用いることが好ましい。
【0061】
本発明のトナーに必要に応じて添加される帯電制御剤としては、従来から静電荷像現像用トナーの分野で帯電性を制御するために添加されている公知の帯電制御剤が使用可能である。例えば、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属錯体、アゾ系金属化合物のような含金属染料、マレイン酸を単量体成分として含む共重合体の如き高分子酸等を使用することができる。これらの中でもサリチル酸金属錯体が好ましく、特に、ホウ素元素を含有したサリチル酸金属錯体が本発明に好適に使用できる。添加する量については、他の材料構成ならびに使用するプロセスにより異なるが、バインダー樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜3重量部の範囲で使用する。なお、本発明のトナーが、重合体(B)がトナー粒子中心部と比較してトナー粒子表層部に密に分散された構成を有する場合においては、重合体(B)は負帯電性を有しているため、当該トナーは上記帯電制御剤を添加されなくても実用上十分帯電機能を有する。しかしながら、必要に応じて帯電制御剤を添加することにより各種プロセスに応じた帯電設計が可能となる。
【0062】
また、負帯電性に効果のあるスルホン酸基、フッ素含有基、ケイ素含有基等の極性官能基を有する各種樹脂(荷電制御樹脂)をトナーに添加しても良い。この荷電制御樹脂(CCR)は、極性官能基を有するモノマーを単独であるいはこれら同士を組み合わせて重合させたものであっても、また、このような極性官能基を有するモノマー成分と、例えばスチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー等の単官能性モノマーおよび/または多官能性モノマーとの共重合により得られたものであっても、あるいはまた単官能性モノマーおよび/または多官能性モノマーを重合させてなる重合体と極性官能基を有するモノマーを含む重合体とのポリマーブレンドであっても良い。荷電制御樹脂を添加する場合、その添加量はバインダー樹脂(A)100重量部に対して0.1〜5重量部であることが望ましい。
【0063】
本発明のトナーには、トナー粒子を調製した後の流動性調整剤として、各種有機/無機の微粒子を添加することが好ましい。無機の微粒子としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト等の各種非磁性無機微粒子を単独あるいは組み合わせて用いることができる。特にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛等の無機微粒子は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンワニス等の従来から使用されている疎水化処理剤、さらにはフッ素系シランカップリング剤、またはフッ素系シリコーンオイル、さらにアミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤、変性シリコーンオイル等の処理剤を用いて公知の方法で表面処理されていることが好ましい。さらにはクリーニング助剤等の目的で乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、非水分散重合法等の湿式重合法、気相法等により造粒した、スチレン系、(メタ)アクリル系、ベンゾグアナミン、メラミン、テフロン、シリコン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種有機微粒子を用いることもできる。チタン酸金属塩等の比較的大径の無機微粒子ならびに各種有機微粒子は、疎水化処理してもしなくても良い。これら微粒子は、トナー粒子100重量部に対して、0.1〜6重量部、好ましくは、0.5〜3重量部添加される。上記微粒子は2種以上組み合わせて使用されてよく、この場合にはそれらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0064】
以上のようにして得られる本発明のトナーは比較的高い円形度を有し、形状が比較的揃っており、また微小粒子や大径粒子をほとんど含まない。このため、帯電立ち上がり性が向上し、また帯電量分布のシャープ化が達成でき、結果としてかぶり等のノイズが少ない画像を提供できる。
【0065】
また本発明のトナーは過粉砕を起こすことなく、低粉砕エネルギーで製造され得るため、直行収率が比較的高いレベルで確保され得る。すなわち、本発明のトナーの直行収率は70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。
【0066】
また重合体(B)は負帯電性を有するため、本発明のトナーは、帯電制御剤を添加されなくても、重合体(B)をトナー粒子表面層にリッチに存在させることにより、効果的に負帯電性を確保でき、逆帯電性トナーの発生を抑制できる。また、重合体(B)をトナー粒子表面層にリッチに存在させることにより、バインダー樹脂(A)のガラス転移温度が比較的低くても重合体(B)のガラス転移温度を高めに設定することにより耐熱保管性を有効に確保できる。
【0067】
さらに本発明のトナーは耐久性に優れたフッ素系樹脂表層剤を有する定着装置(ベルト、ローラー定着等の方式)やポリイミドからなるサーフ定着方式においても有効である。本発明のトナーは、耐久性に優れたフッ素系表層剤に対しての分離性・耐オフセット性に優れており、通常のモノクロ機に使用されているテフロン製のハードローラーやフッ素系材料を表層構成に用いたシフトローラー等において特に有効である。
【0068】
本発明のトナーは負帯電性トナーであることが好ましく、キャリアと混合した2成分現像剤、またはキャリアを用いない非磁性1成分現像剤あるいは磁性1成分現像剤であってもよい。
【0069】
【実施例】
(バインダー樹脂(ポリエステル樹脂)の製造)
温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を取り付けたガラス製4つ口フラスコに、表1および表2に示すモル比でアルコール成分および酸成分を重合開始剤(ジブチル錫オキサイド)とともに入れた。これをマントルヒーター中で窒素雰囲気下にて、加熱、攪拌しながら反応させた。そして、この反応の進行は、酸価を測定することにより追跡した。所定の酸価に達した時点でそれぞれ反応を終了させて室温まで冷却し、ポリエステル樹脂L1〜L5およびH1〜H5を得た。得られたポリエステル樹脂を1mm以下に粗砕したものを単独でまたは組み合わせて、表3に示すバインダー樹脂A-1〜A-15を得、これらをトナーの製造に用いた。ここで得られた各ポリエステル樹脂は表1および表2に示す通りの物性を有し、各バインダー樹脂は表3に示す通りの物性を有していた。なお、表中、POはポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを、EOはポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを、TPAはテレフタル酸を、TMAはトリメリット酸を、FAはフマル酸を表す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
(重合体(B)の製造)
・樹脂B-1
スチレン(純度99.9%)150gおよびトルエン150gをオートクレーブに仕込み攪拌下に温度を5℃に保ちながらBF3−フェノール錯体1.5gを少量ずつ約10分間で添加した。その後、更に3時間攪拌を続行した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液50mlを加えて30分間激しく攪拌して触媒を分解した後、水層を分離し、更に重合油を中性になるまで水洗した後、未反応成分および溶媒であるトルエンを留去し、残渣としてポリスチレンを得た。当該ポリマーを樹脂B-1とし、物性を表4に示した。
【0074】
・樹脂B-2
α−メチルスチレン(純度99.8%)150gおよびトルエン150gをオートクレーブに仕込み攪拌下に温度を5℃に保ちながらBF3−フェノール錯体1.5gを少量ずつ約10分間で添加した。その後、更に3時間攪拌を続行した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液50mlを加えて30分間激しく攪拌して触媒を分解した後、水層を分離し、更に重合油を中性になるまで水洗した後、未反応成分および溶媒であるトルエンを留去し、残渣としてポリ-α-メチルスチレンを得た。当該ポリマーを樹脂B-2とし、物性を表4に示した。
【0075】
・樹脂B-3
反応時間を2時間とした以外は、樹脂B-1と同じ製法でポリスチレンを得た。当該ポリマーを樹脂B-3とし、物性を表4に示した。
・樹脂B-4
反応時間を4.5時間とした以外は、樹脂B-2と同じ製法でポリ-α−メチルスチレンを得た。当該ポリマーを樹脂B-4とし、物性を表4に示した。
【0076】
・樹脂B-5
イソプロペニルトルエンとインデン(モル比40/60;総量500ml)およびトルエン500mlをオートクレーブに仕込み攪拌下に温度を5℃に保ちながらBF3−フェノール錯体1.5gを少量ずつ約10分間で添加した。その後、更に3時間攪拌を続行した。次に5%水酸化ナトリウム水溶液50mlを加えて30分間激しく攪拌して触媒を分解した後、水層を分離し、更に重合油を中性になるまで水洗した後、未反応成分および溶媒であるトルエンを留去し、残渣としてイソプロペニルトルエン-インデン共重合体を得た。当該ポリマーを樹脂B-5とし、物性を表4に示した。樹脂B-5は臭気が問題となった。また、トータルVOC量をヘッドスペースガスクロマトグラフィ法において測定したところ510ppmとなった。
【0077】
【表4】
【0078】
(顔料マスターバッチの製造)
フルカラートナーの製造に使用する顔料は以下の方法によって得られる顔料マスターバッチとして用いた。各実施例、参考例または比較例で使用するバインダー樹脂と顔料を重量比(樹脂:顔料)7:3の割合で加圧ニーダーに仕込み、120℃で1時間混練した。冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色の顔料含有率30重量%顔料マスターバッチを得た。顔料としてはC.I.Pigment Yellow180(ヘキスト社製)、C.I.Pigment Blue15-3(大日本インキ社製)、C.I.Pigment Red184(大日本インキ社製)を用いた。
【0079】
トナーの製造
実施例1:トナーY-1
バインダー樹脂A-3および顔料マスターバッチを、バインダー樹脂A-3;100重量部およびC.I.Pigment Yellow180;7.0重量部となるように用い、これに樹脂B-2を5重量部、酸化型ポリエチレンワックス(サンワックスE250P;三洋化成工業社製、軟化点103.5℃、酸価19.5KOHmg/g)を5重量部、酸化型ポリプロピレンワックス(ビスコール110TS;三洋化成工業社製、軟化点140℃、酸価3.5KOHmg/g)を3重量部添加し、ヘンシェルミキサーで周速40m/sにて材料温度が45℃以上にならないように制御しながら5分間混合した後、2軸押し出し混練機(PCM-30:池貝鉄工社製)の排出部を取り外したものを使用して最高温度200℃にて高温溶融混練した。被処理物の通過時間は約1分間であった。得られた混練物を冷却プレスローラーで2mm厚に圧延し、冷却ベルトで冷却した後、フェザーミル(目開き2mmパス)で粗粉砕した。その後、機械式粉砕機(KTM:川崎重工業社製)で平均粒径約10μmまで粉砕し、さらに、ジェット粉砕機(IDS:日本ニューマチック工業社製)で平均粒径5.8μmまで微粉砕、粗粉分級した後、微粉分級をロータ型分級機(ティープレックス型分級機タイプ:100ATP:ホソカワミクロン社製)を使用して行い、体積平均粒径6.1μm、体積平均粒径(D)の2倍(2D)以上の粒径を有する粒子の含有割合が0重量%、かつ2.5μm以下の粒径を有する粒子の含有割合が0体積%のイエロートナー粒子を得た。また、本トナー粒子の平均円形度は0.962、円形度の標準偏差が0.037であった。このトナー粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(H-2000;クラリアント社製)0.5重量部と、酸化チタン(STT30A:チタン工業社製)1.0重量部、チタン酸ストロンチウム(平均粒径0.2μm)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで(周速40m/sec, 60秒間)混合処理した後、目開き90μmの篩でふるいイエロートナー(Y-1)を得た。
【0080】
実施例2, 3:トナーC-1, M-1
顔料マスターバッチを変更し、バインダー樹脂A-3および顔料マスターバッチを、バインダー樹脂A-3;100重量部およびC.I.Pigment Blue15-3;5.0重量部、またはバインダー樹脂A-3;100重量部およびC.I.Pigment Red184;4.5重量部となるように用いたこと以外は、実施例1においてと同様の方法により、トナーC-1, M-1を得た。
【0081】
実施例4,比較例1〜3:トナーC-2〜C-5
樹脂B-2をそれぞれB-1、B-3〜B-5に代えて用いる以外は、実施例2においてと同様の方法により、トナーC-2〜C-5を得た。
実施例5〜6、参考例1、比較例4、実施例7、参考例2、実施例8、比較例5〜10および12:トナーC-6〜C-18、C-22
バインダー樹脂A-3をそれぞれA-1、A-2、A-4〜A-15に代えて用いる以外は、実施例2においてと同様の方法により、トナーC-6〜C-18、C-22を得た。
実施例9、比較例11:トナーC-19〜C-20
樹脂B-2の添加量をそれぞれ8重量部、0(添加無し)重量部に変更する以外は実施例2においてと同様の方法により、C-19〜C-20を得た。
【0082】
実施例10:トナーC-21
ポリエチレンワックスを添加しないこと以外は、実施例2においてと同様の方法により、トナーC-21を得た。
実施例11:Bk-1
顔料マスターバッチを酸性カーボンブラック(モーガルL;キャボット社製;pH2.5;平均1次粒径24nm)に変更し、バインダー樹脂A-3および酸性カーボンブラックを、バインダー樹脂A-3;100重量部および酸性カーボンブラック;8.0重量部となるように用いたこと以外は、実施例1においてと同様の方法により、トナーBk-1を得た。
【0083】
トナーの製造条件および物性を以下の表に示す。
【表5】
【0084】
・トナーの体積平均粒径、体積平均粒径(D)の2倍(2D)以上の粒径を有する粒子の含有割合および2.5μm以下の粒径を有する粒子の含有割合はコールターマルチサイザーII(コールタカウンタ社製)を用いて、アパチャーチューブ50μmを用いて測定した。
・円形度は「相当円の周囲長/粒子投映像の周囲長」で表される。平均円形度はフロー式粒子像解析装置(FPIA-2000:シスメックス社製)を用いて水分散系で測定した。併せて、円形度の標準偏差(円形度SD)についても解析を行った。
・トナー収率は、使用されたトナー材料の全重量および得られたトナーの重量を測定し、以下の式に従って算出した。
収率=(得られたトナーの重量)/(トナー材料の全重量)×100
【0085】
・使用された量の重合体(B)におけるVOC(揮発成分)量の測定は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィ法により測定した。揮発成分としてはアセトン、ベンゼン、トルエン、残存モノマー成分が検出された。評価は以下の項目について行い、最も悪かった評価結果を示した。
トータルVOC量について
400ppm以下:◎、400〜700ppm:○、700〜1000ppm:△、1000ppm以上:×
アセトン量について
1ppm以下:◎、1〜3ppm:○、3〜5ppm:△、5ppm以上:×
ベンゼン量について
検出しない:◎、検出される:×
【0086】
得られたトナーを各種項目について評価し、その評価結果を表に示す。
【表6】
【0087】
(耐熱保管性)
100ccのガラス製のスクリュウ管にトナー20gを秤量し、60℃にて5時間放置保管した後、トナーの凝集状態をランク付け評価した。
○:凝集トナーがなく、全く問題無なかった;
△:軽い軟凝集が存在するが、軽い力で直ぐ解れ、実使用上問題無かった;
×:強い凝集塊が存在し、容易に解れず、実使用上問題有あった。
【0088】
(重合体(B)および離型剤の分散粒径)
トナー粒子をミクロトームにより、スライスした後、オスニウム染色し、TEM(透過型電子顕微鏡)にて10000倍の写真を撮影し、この写真画像をイメージアナライザー(ルーゼックス5000:日本レギュレータ社製)に取り込んで、粒子中における重合体(B)および離型剤の粒径分布を測定した。なお、分散形状が完全球形で無い場合は、その分散粒子の断面積の円相当粒径で算出した。
【0089】
・1成分現像剤としての評価
(固着状態)
プリンタ(Intercolor LP 3000C;セイコーエプソン社製)のトナーカートリツジに各トナーを入れ、BW比6%の画像を1000枚印字した後、規制ブレード表面の固着状態を観察した。
1成分現像剤としてトナーの評価を行う場合において、各トナーは、後処理で用いる疎水性シリカH-2000(クラリアント社製)0.5重量部をTS-500(キャボット社製)0.5重量部に変更して用いた。なお、その他の後処理剤は2成分現像剤としてのトナーにおいてと同様であった。
【0090】
・2成分現像剤としての評価
上記実施例、参考例ならびに比較例で得られたトナーを2成分系現像剤として評価に供するため、バインダ型キャリアを製造した。
(バインダ型キャリアの製造)
ポリエステル系樹脂(花王社製:NE-1110)100重量部、磁性粒子(マグネタイト;EPT-1000:戸田工業社製)700重量部およびカーボンブラック(モーガルL;キャボット社製)2重量部をヘンシェルミキサーで十分混合し、二軸押出混練機でシリンダ部180℃、シリンダヘッド部170℃に設定し、溶融混練した。この混練物を冷却し、その後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェット粉砕機で微粉砕、分級して、体積平均粒径35μmのバインダ型キャリアを得た。キャリアの粒径はコールターマルチサイザーII(コールタカウンタ社製)を用いアパチャーチューブ150μmを用いて測定した。
【0091】
(帯電性)
2成分現像剤の帯電立ち上がり特性を評価するため、トナーとキャリアをトナー混合比7重量%で調合し、1分, 5分, 30分の帯電量を電解分離法により測定した。
またこれとは別に耐久時の帯電安定性を評価するため、トナーとキャリアをトナー混合比14重量%で調合し12時間架台にて混合した後、キャリア表面からトナーを電界分離した。この後、分離後のキャリアを用いて再度トナーとキャリアをトナー混合比7重量%で調合し、1分, 5分, 30分の帯電量を電解分離法により測定した。
その結果をもとに帯電の立ち上がり性能ならびに耐久性能(帯電安定性)が実使用可能なレベルかどうかの基準に照らし合わせて○:良好,△:実用上問題無し,×:実用上問題有りにランク分けした。
【0092】
以下、デジタル複写機(DiALTA Di350;ミノルタ社製)を用いた。詳しくは、上記複写機の定着装置は定着ローラーのクリーニング用のウェブローラーを有し、オイルレス定着方式を採用していた。
(分離性能・非オフセット性能および定着強度)
各トナーを上記バインダ型キャリアと組み合わせてそれぞれトナー混合比が7重量%になるように調合し、架台にて30分間混合してスターターを作成し、デジタル複写機(DiALTA Di350;ミノルタ社製)を用いて画出しを行い、評価を行った。なお、上記複写機の定着装置については、テフロンハードローラー方式のものと、フッ素系の表層剤構成のシフトタイプのソフトローラー方式のものとを使用して評価を行った。テストパターンは、3色重ね時のトナー付着量を想定してA4縦通紙で先端5mmに20mm幅の階調パターン(階調パターンの最大トナー付着量は、1.5mg/cm2)を印字したサンプルを用いて評価を行った。定着温度は、120〜200℃の範囲において2℃刻みで変化させながら定着を行い、評価を行った。
【0093】
分離性能・非オフセット性能
◎:ソフトローラー方式およびハードローラー方式のいずれの方式の定着装置を用いた場合においても、印字物が定着ローラーに巻きつくことなく通紙可能であり、かつ、非オフセット温度領域が50℃以上確保できている;
○:ソフトローラー方式およびハードローラー方式のいずれかの方式の定着装置を用いた場合において、印字物が定着ローラーに巻きつくことなく通紙可能であり、かつ、非オフセット温度領域が50℃以上確保できている;
△:ソフトローラー方式およびハードローラー方式のいずれの方式の定着装置を用いた場合においても、印字物が定着ローラーに巻きつくことなく通紙可能であり、かつ、非オフセット温度領域が30℃以上確保できている;
×:ソフトローラー方式およびハードローラー方式のいずれの方式の定着装置を用いた場合においても、印字物が定着ローラーに巻きつくことなく通紙可能であるが、非オフセット温度領域が30℃未満である。
【0094】
定着強度
ソフトローラー方式の定着装置およびハードローラー方式の定着装置を用いて画出しされた定着画像を真中から2つに折り曲げてその剥離性を目視にて評価した。なお、定着できた画像のみを用いた。
◎:全ての画像において白スジが発生せず、実用上問題がなかった;
○:実用上問題ない程度に白スジが発生した画像が存在した;
△:なんとか実用できる程度に白スジが発生した画像が存在した;
×:実用上問題となる白スジが発生した画像が存在した。
【0095】
(かぶり)
また、各トナーと上記バインダ型キャリアをそれぞれトナー混合比7重量%になるように混合してスターターを作成し、各スターターを、デジタル複写機(DiALTA Di350;ミノルタ社製)に搭載し、25℃、55%RHの環境下でB/W7%の画像を印字し、3000枚の耐久テストを行った。
○:かぶりが全く発生せず、画像品質の劣化がなかった;
△:かぶりがほとんど発生せず、画像品質の劣化がほとんど認められなかった(実用上問題なし);
×:かぶりが発生し、画像品質の劣化が認められた。
【0096】
(光沢)
また、各トナーを上記バインダ型キャリアと組み合わせてそれぞれトナー混合比が7重量%になるように調合し、架台にて30分間混合してスターターを作成し、デジタル複写機(DiALTA Di350;ミノルタ社製)を用いてベタ画像を画出しした。なお、定着温度を120〜200℃の範囲において2℃刻みで変化させて画出しした。評価は、得られた画像の光沢度をポータブル光沢計(GMX-202/75°;村上色彩技術研究所製)で測定し、光沢度30°以上の画像が得られた定着温度の範囲に基づいて行なった。
○:上記範囲が30℃以上であった;
×:上記範囲が30℃未満であった。
【0097】
またトナーY-1,C-1,M-1およびBk-1と、上記バインダ型キャリアをそれぞれトナー混合比7重量%になるように混合してスターターを作成し、定着装置においてフッ素系表面剤構成のシフトローラーに変更したデジタル複写機(DiALTA Di350;ミノルタ社製)に搭載し、NN環境(25℃、55%RH)でB/W比8%のフルカラー画像を印字し、3000枚の耐久テストを行った結果、かぶりおよび画像品質の劣化はほとんど認められなかった。
【0098】
(他の測定方法)
・樹脂のガラス転移点Tgの測定法
示差走査熱量計(DSC-200:セイコー電子社製)を用いて、リファレンスをアルミナとし、10mgの試料を昇温速度10℃/minの条件で20〜120℃の間で測定し、メイン吸熱ピークのショルダー値をガラス転移点とした。
・樹脂の軟化点Tmの測定法
フローテスター(CFT-500:島津製作所社製)を用い、ダイスの細孔(径1mm、長さ1mm)、加圧20kg/cm2、昇温速度6℃/minの条件で1cm3の試料を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点の高さの1/2に相当する温度を軟化点とした。
・分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(807-IT型;日本分光工業社製)を使用し、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを使用して、ポリスチレン換算により分子量を求めた。
・酸価は、10mgの試料をトルエン50mlに溶解し、0.1%のブロムチモールブルーとフェノールレッドの混合指示薬を用いて、予め標定されたN/10水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、N/10水酸化カリウム/アルコール溶液の消費量から算出した値である。
・水酸価は、秤量された試料を無水酢酸で処理し、得られたアセチル化合物を加水分解し、遊離する酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmgで表した。
・テトラヒドロフラン(THF)不溶分は、25℃、100gのテトラヒドロフランに樹脂5g(X)を添加し、24時間撹拌して得られる溶液を加圧ろ過したとき、ろ紙上に残留する成分を乾燥し、その重量を測定することによって算出する。
THF不溶分=(残留成分の重量)/X×100
【0099】
・粉砕性指数
試料(体積平均粒径を約2mmに調整されたバインダー樹脂、重合体(B)、またはトナー組成物(混練冷却後フェザーミル(目開き2mmメッシュ)で粗粉砕したもの)を機械式粉砕機(KTM-0型:川崎重工業社製)で処理量F(5kg/h)、KTM回転数12000(rpm)にて粉砕する際に、試料通過無し時の負荷動力値W0と試料を通過させた時の負荷動力値W1を記録する。その後、KTM粉砕で得られた粉砕物の体積平均粒径D(μm)をコールタマルチサイザーII(コールターベックマン社製)にて測定する。
本発明で用いた粉砕性指数は、下記式により算出される。
粉砕性指数=(D×(W1-W0))/F
【0100】
【発明の効果】
本発明のトナーは、離型性オイルの塗布量が低減された定着方式に適用されても、優れた定着性、耐熱保管性、安全性、帯電性、生産性および画質性を有する。
Claims (9)
- 少なくともバインダー樹脂(A)、重合体(B)、離型剤および着色剤を混練し、粉砕して得られたトナー粒子を含んでなる静電荷像現像用トナーであって、
前記バインダー樹脂(A)が数平均分子量2000〜5000および重量平均分子量/数平均分子量5〜30のポリエステル樹脂であり、
前記重合体(B)が重量平均分子量1000〜3000および重量平均分子量/数平均分子量2.0以下のポリスチレンまたはポリ−α−メチルスチレンであり、
重合体(B)の粉砕性指数が0.1〜1.0であってバインダー樹脂(A)の粉砕性指数より0.5以上小さく、
前記離型剤がワックスであり、
前記トナー粒子中の重合体(B)の平均粒径が1.5μm以下である静電荷像現像用トナー。 - バインダー樹脂(A)がガラス転移点50〜70℃および軟化点95〜160℃を有する請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 重合体(B)がガラス転移点50〜85℃および軟化点100〜160℃を有する請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 離型剤がトナー粒子中、平均粒径1.5μm以下で分散され、重合体(B)の平均粒径が離型剤の平均粒径より小さい請求項1〜3いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 離型剤の軟化点が60〜150℃であり、離型剤の含有量がバインダー樹脂(A)100重量部に対して2〜20重量部、重合体(B)の含有量がバインダー樹脂(A)100重量部に対して1.5〜25重量部である請求項1〜4いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 離型剤が軟化点60〜110℃のワックスと軟化点110〜150℃のワックスからなる請求項1〜5いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- バインダー樹脂(A)の酸価が5〜50KOHmg/gである請求項1〜6いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- バインダー樹脂(A)が軟化点90〜115℃の第1ポリエステル系樹脂と軟化点130〜160℃の第2ポリエステル系樹脂からなり、第1ポリエステル系樹脂と第2ポリエステル系樹脂との重量比が80:20〜5:95である請求項1〜7いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- バインダー樹脂(A)の軟化点が100〜145℃である請求項1〜8いずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
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