JP3957037B2 - 静電荷像現像用トナー、トナー容器、トナー定着装置、トナー定着方法及び画像形成方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナー、トナー容器、トナー定着装置、トナー定着方法及び画像形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法など静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用トナー、トナー容器、トナー定着装置、トナー定着方法及び画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法における定着方式として、加熱ヒートローラ方式が広く一般に用いられている。この加熱ヒートローラを用いる場合に、近年の環境への配慮による省エネ気運の高まりを受けて、低温定着タイプのトナーの開発が盛んに行なわれている。特に高温での定着を必要とする中〜高速複写方式に低温定着化の要求が強い。これに対応して、従来多用されてきたスチレン−アクリル系樹脂にかえて、低温定着性にすぐれ耐熱保存性も比較的良いポリエステル樹脂の使用が試みられている。しかし、さらなる低温定着化のためには、樹脂そのものの熱特性をコントロールすることが必要となるが、ガラス転移温度を下げすぎると耐熱保存性を悪化させたり、分子量を小さくして樹脂を軟らかくしすぎるとホットオフセット発生温度を低下させるなど、トナーだけでの省エネルギー化は問題が多い。
【0003】
そのため、トナー自体を低温定着化可能なものとする試みに併せて、定着方式から省エネルギー化を試みる動きもある。定着方式の省エネルギー化には、画像形成装置をスイッチオンしてから画像形成が可能となるまでの待機時間(装置のウォームアップタイム)に要する電力量を可能な限り小さくするために、待機時間の短縮が要求される。この要求を達成するためのやり方の一つとして、加熱ヒートローラ等の定着部材を低熱容量化させて、トナーの温度応答性を向上させる方法が考えられる。これには、定着部材のこれまで以上の薄肉化、熱伝導率の良い材料の使用が必要となる。その結果、材質によっては、加圧による歪みが考えられ、これまでのような面圧を加えられない場合がある。
【0004】
もう一つの方法として、ローラではなくシートを介して画像と接触するベルト定着方式がある。この方式では、定着部材の低熱容量化に加え、構成によってはニップ幅の拡大、ベルトによる余熱効果が得られ、低温定着化が可能となる。しかし、ベルトのよりやたわみの問題があり、この場合も高い面圧を加えられない。
【0005】
このような低面圧の定着装置では、加圧力によるトナー粒子の変形がこれまでより小さいため、十分な定着強度が得られるまで粒子を変形させるためには、さらなる低温定着トナーが必要となる。このようにトナーの低温定着化をはかると、それに起因して定着温度範囲の確保(耐ホットオフセット性)が難しくなってくるという問題が想定される。
【0006】
オフセットの防止にはトナー中にワックスのような離型剤を含有させ、定着時にそれを染み出させることが一般的になっているが、離型剤は染み出しやすいように、トナー中にドメインとして存在する必要がある。しかし、このドメインの存在状態によっては、トナー粒子表面のワックスを多くすることになり、これに起因して保存性や現像性などにさまざまな問題を生じやすい。特に、面圧が低い定着システムの場合には離型剤が染み出しにくくなるので、これを考慮した離型剤ドメインの存在状態達成には課題が大きい。
【0007】
ワックス含有の副作用を抑え、低温定着と耐オフセットの両立を図っている従来技術の例としては、特開平7−295290号公報、特開平8−234480号公報、特開平9−34163号公報など、粘弾性から従来のトナーより低温定着化となるが、さらなる低温定着化を達成するには不十分である。また、特許第2904520号公報、特開2000−56511公報などでは低圧低温定着可能としたものであるが、立上り時間を短くできるような定着システムで低温定着化を達成するには不十分である。
【0008】
さらに、1999年度の国際エネルギー機関(IEA)のDSM(Demand−side Management)プログラム中には、次世代複写機の技術調達プロジェクトが存在し、その要求仕様が公表され、30cpm以上の複写機については、前記待機時間が10秒以内,待機時の消費電力が10〜30ワット以下(複写速度で異なる)とするよう、従来の複写機に比べて飛躍的な省エネ化の達成が要求されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、画像形成装置、特に中〜高速機で従来にないレベルの低温定着性を有し、耐ホットオフセット性,熱保存性が良好で、従来にないレベルの省エネルギー化を達成できる定着装置に適し、長期的に現像性が良好で高画質な画像を形成することができ、さらに粉砕性の良いトナー及びトナー容器を提供することである。本発明の別の課題は、前記トナー及びトナー容器により、従来にないレベルの低温定着化と省エネルギー化を達成できるトナー定着方法及びトナー定着装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、以下の技術的手段、手法により解決される。
(1)少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10Pa以下かつトナーのtanδ(損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’が5×10Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー。
(2)横軸をlog(M)(Mは分子量)、縦軸を重量%で表した分子量分布図で、トナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布のピーク位置が3.3〜4の範囲にあり、かつピークの半値幅が1.5以下であることを特徴とする上記(1)のトナー。
(3)少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、周波数10Hz、温度100℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が4×10Pa以下かつトナーのtanδ(損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.3以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’が5×10Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー。
(4)横軸をlog(M)(Mは分子量)、縦軸を重量%で表した分子量分布図で、トナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布のピーク位置が3.3〜4の範囲にあり、かつピークの半値幅が1.1以下であることを特徴とする上記(3)のトナー。
(5)トナーのTHF可溶溶分のGPCによる分子量分布の分子量10万以上の割合が、3重量%以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のトナー。
(6)トナー中の結着樹脂のクロロホルム不溶分が2〜20%であることを特徴とする上記(1)〜(5)のトナー。
(7)結着樹脂がクロロホルム不溶分を含む結着樹脂とクロロホルム不溶分を含まない結着樹脂の少なくとも2種で構成されるものであることを特徴とする上記(1)〜(6)のトナー。
(8)結着樹脂の80重量%以上がポリエステル樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(7)のトナー。
(9)ポリエステル樹脂の酸価が8〜45mgKOH/g、水酸基価が50mgKOH/g以下であることを特徴とする上記(8)のトナー。
(10)サリチル酸金属化合物を含有することを特徴とする上記(1)〜(9)のトナー。
(11)結着樹脂として2種以上を使用し、これらが互いに非相溶で海島状の相分離構造をとり、島状樹脂中に実質的に離型剤が内包されていることを特徴とする上記(1)〜(10)のトナー。
(12)トナーの体積平均粒径が5〜7μmであることを特徴とする上記(3)〜(11)のトナー。
(13)ナーによって形成したトナー像を担持した支持体をローラ間を通過させることによってトナー像の加熱定着を行う2本のローラを有し、かつ該2本のローラのトナー像と接触する側の定着ローラが非弾性ローラであり、該2本のローラ間に加える面圧(ローラ荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着装置。
(14)記録材上にナーによって形成したトナー像を有端もしくは無端ベルトと接触させながらトナー像の加熱定着を行うトナー定着装置であって、該記録材とベルトとの接触面圧(荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着装置。
(15)ナーによって形成したトナー像を担持した支持体を、ーラ間を通過させることにより又は有端もしくは無端ベルトと接触させることにより、トナー像の加熱定着を行うトナー定着装置であって、該トナー像を担持した支持体に加える面圧(荷重/接触面積)が1×10Pa以下であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が4×10 Pa以下かつトナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.3以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着装置。
(16)ナーを使用して形成された記録材上のトナー像を、2本ローラ間を通過させて定着するトナーの定着方法であって、トナー像と接触する側の定着ローラが非弾性ローラであり、該2本のローラ間に加える面圧(ローラ荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナーの定着方法。
(17)ナーを使用して形成された記録材上のトナー像を、有端もしくは無端ベルトと接触させながら定着するトナーの定着方法であって、該記録材とベルトとの接触面圧(荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナーの定着方法。
(18)トナーによって形成したトナー像を担持した支持体を、ローラ間を通過させることにより又は有端もしくは無端ベルトと接触させることにより、トナー像の加熱定着を行うトナー定着装置であって、該トナー像を担持した支持体に加える面圧(荷重/接触面積)が1×10 Pa以下であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を 含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が4×10 Pa以下かつトナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.3以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着方法。
(19)上記(1)〜(12)のトナーが充填されたトナー容器。
(20)上記(19)のトナー容器が装着された画像形成装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。トナーは粘弾性体であり、粘性成分と弾性成分の比で、定着特性が左右される。低温定着には低い温度で弾性成分が小さくなり、トナーが変形して紙などの記録材に接着しやすくなることが要求される。一方、耐オフセット性には、高温で弾性成分が小さくなりすぎず、トナー間の凝集力を保つことが要求される。粘弾性は加えられる力によって値が変わり、大きい力ほど弾性成分が小さくなりやすく、低温でトナーは変形しやすいが、高温でのトナー間凝集力を保ちにくい。逆に小さい値では弾性成分が小さくなりにくく、トナーは変形しにくいが、高温までトナー間凝集力を保ちやすい。本発明は、この点に注目し、低温で弾性成分が小さくなるだけでなく、小さい力でも弾性成分が小さくなることが特徴である。
【0012】
本発明のトナー、特に前記第1の態様のトナーを低温定着性と関係する温度100℃、周波数10Hz、応力1500〜2000Paでの粘弾性を上記特性のものとするには、トナーを構成する樹脂の分子量分布をシャープ化し、かつその低分子量分の絶対量を可能な限り多くすることが有効であるということを確認した。したがって、トナー中の結着樹脂のTHF可溶分の分子量分布(GPCによる分子量分布)が、横軸を分子量の対数log(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.3〜4の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であることにより得られる。
【0013】
また、前記本発明の第2の態様のトナーは、トナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.3〜4の範囲にあり、ピークの半値幅が1.1以下であることが好ましい。
【0014】
なお、本発明におけるトナー粘弾性は次のように測定される。ハーケ社製レオストレスRS50システムを使用し、直径20mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2mm、周波数10Hz、温度100℃又は180℃に設定して、応力100〜3000Paの範囲で測定を行った。トナーは直径20mm厚さ2mmのペレット状にしたものを使用した。
【0015】
一方、耐オフセット性と関係する温度180℃、周波数10Hz、応力1500〜2000Pa又は1000〜1500Paでの粘弾性を上記特性のものとするには、架橋成分の効果が大きい。特に、THF可溶分中に低分子量成分の割合が多いほど、架橋成分の耐オフセット性への効果が大きい。したがって、本発明のトナーはクロロホルム不溶分が存在することが好ましく、その存在量は2〜20%である。これにより、耐オフセット性だけでなく、耐熱保存性もよくなる。しかし、クロロホルム不溶分が20%より多いと、弾性成分の割合が高くなりすぎ、低温定着を阻害しやすい。
【0016】
また、架橋成分だけでなく、THF可溶分中の高分子量成分も耐オフセット性への効果がある。しかし、架橋成分の効果に比べれば小さいものであり、高分子量成分の割合によっては、かえって低温でのシャープメルト性を阻害する場合もある。
【0017】
したがって、トナーの結着樹脂中のTHF可溶分のGPCによる分子量分布の分子量10万以上の割合が3重量%以下であることが好ましい。また、このためには、トナーを構成する樹脂において、THF可溶分のGPCによる分子量分布の分子量10万以上の割合が10重量%以下であることが好ましい。
【0018】
従来は、トナー製造過程のトナー構成材料を溶融混練する工程で、架橋成分は剪断力により切断され、THF可溶分中の高分子量成分となってしまう。しかし、THF不溶分があっても、可溶分中に低分子量成分が非常に多く高分子量成分がない場合には、低分子量の海の中に架橋成分の島が存在するような状態になり、架橋成分に剪断力がかかりにくく、架橋成分の切断がされにくいと考えられる。
【0019】
このようなトナーを得るためには、1種類の樹脂でも可能であるが、2種類以上の樹脂を使用することにより、本発明のトナー特性を得やすい。この場合、一方をクロロホルム不溶分を含有しないものとし、もう一方をクロロホルム不溶分を含有するものとすることが、架橋成分の切断されにくさという点で効果的である。なお、クロロホルム不溶分を含有する樹脂は、クロロホルム不溶分が5〜40%のものを使用することが好ましい。
【0020】
トナー中の結着樹脂の分子量分布はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、次のように測定される。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6重量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定に当っては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えばPressure Chemical Co.あるいは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0021】
トナー中の結着樹脂のクロロホルム不溶分は以下のように測定される。結着樹脂約1.0gを秤量し、これにクロロホルム約50gを加えて十分に溶解させた溶液を、まず、遠心分離でわけJIS規格(P3801)5種Cの定量ろ紙を用いて常温でろ過する。続いてろ紙残渣が不溶分であり、用いたトナーとろ紙残渣の比(重量%)で表わす。なお、トナーとした時の結着樹脂中のクロロホルム不溶分を測定する場合には、トナー約1.0gを秤量して結着樹脂と同様の方法で行うが、ろ紙残渣の中には顔料などの固形物が存在するので、熱分析により別途求める。
【0022】
トナーを構成する樹脂としては、前記の条件のトナーになりさえすれば、特に限定的でなく、後述するように各種の樹脂が適用可能であるが、特にポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂はシャープメルト性があり低分子量でも樹脂の凝集力が強いため、低温定着性と耐オフセット性の両立がしやすい樹脂である。ポリエステル樹脂だけでなく他の樹脂を併用する場合には、ポリエステル樹脂の持つ良い特性を損なうことがないように、結着樹脂の80重量%以上がポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0023】
また、トナーに用いるポリエステル樹脂として、低温定着性を達成するためには、その酸価が8mgKOH/g以上のものが好ましく、一方トナーのホットオフセット性を向上させるには、その酸価が45mgKOH/g以下のものが好ましい。また、ポリエステル樹脂の水酸基価については、所期の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を確保するには、50mgKOH/g以下のものが好ましい。
【0024】
前記の酸価及び水酸基価の測定方法は、JIS K0070に規定の方法による。但しサンプルが溶解しない場合は、溶媒にジオキサン又はTHF等の溶媒を用いる。
【0025】
耐オフセット性には、トナー中には、サリチル酸金属化合物を含有させると、耐ホットオフセット性が改良できるため好ましい。また、耐オフセット性には、離型剤の染み出しも重要なことである。従来より低い面圧での定着にも有効なトナーを想定した本発明のトナーの場合には、離型剤の染み出しが特に重要になる。
【0026】
離型剤を染み出しやすくするには、離型剤の分散径を大きくすることがよいが、大きすぎると、さまざまな問題を生じる。特にポリエステル樹脂を使用する場合には、従来のスチレン−アクリル系樹脂に比べて離型剤の分散径が大きくなりやすい。
【0027】
本発明では少なくとも2種以上の樹脂を使用し、これらが互いに非相溶で海島状の相分離構造をとり、これら樹脂とは非相溶の離型剤が島状樹脂中に内包されていることが好ましい。この場合、海状樹脂がポリエステル樹脂で、島状樹脂が海状樹脂のポリエステル樹脂よりもワックスを分散しやすい樹脂であることが好ましい。
【0028】
トナーの製造過程における粉砕時には、トナー中に界面があればそこに応力が集中する。そのため、樹脂と離型剤だけで海島構造をとる従来の方法では、離型剤分散径が大きいほど樹脂と離型剤の界面に多く応力が集中し、その結果トナー表面の離型剤存在量が多くなり問題を引き起こす。しかし本発明のように樹脂と樹脂とで構成される海島構造とすることにより、樹脂と樹脂の界面、樹脂と離型剤の界面という2種類の界面ができる。その結果、離型剤のトナー粒子表面存在量が小さくなる。しかし、離型剤を内包した樹脂がトナー表面に存在するようになるので、離型剤はトナー粒子の表面近傍に存在し、離型剤の染み出しにくくなることはない。
【0029】
しかしながら、この構成ではすべての離型剤が必ずしも島状樹脂中に内包される必要はない。離型剤はある程度の分散径の範囲で分布を持つものが一般的であり、粉砕界面になりにくい分散径の小さい離型剤も存在する。したがって、長軸径0.5μm以上の分散径を持つ離型剤の95個数%以上が、島状樹脂中に内包されていることが好ましい。また、島状樹脂に内包されていても、離径剤分散径は大きすぎないほうがよい。より好ましくは、0.5μm以上の分散径を持つ離型剤のうち99個数%以上が2μmを超えないことである。このような構成にすることにより、粉砕界面が増えるため、粉砕性向上にもつながる。
【0030】
本発明のトナーの粒径については特に限定的でないが、細線再現性等に優れた高画質を得るためには、体積平均粒径が5〜10μmであることが好ましい。また、低圧定着に対しては、トナー粒径を小さくすると定着温度を低下させることができるので、体積平均粒径を5〜7μmにすることがより好ましい。これは、粒径を小さくすることにより定着部材と接触するトナーの個数が多くなり、トナーの熱応答性が高まるからと考えられる。
【0031】
トナー体積平均粒径は、種々の方法によって測定可能であるが、本発明では米国コールター・エレクトロニクス社製のコールターカウンターTAIIが用いられる。
【0032】
本発明のトナーの製造法は限定的でなく、通常の粉砕法でも、例えば重合法のような粉砕法以外の製造法、あるいはそれらの併用であっても良い。
【0033】
次に本発明のトナーに用いられる材料について詳細に説明する。本発明で結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって通常得られるものである。
【0034】
アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
【0035】
また、カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
【0036】
本発明で用いられるポリエステル樹脂は単独使用ができるが、2種類以上を使用することが好ましい。この場合、前述したようにクロロホルム不溶分を含有する樹脂とこれを含有しない樹脂との2種類以上使用することが好ましい。これにより、低温定着性と耐オフセット性に適したトナー特性を得られやすい。ここで、ポリエステル樹脂としては、熱保存性の関係から、ガラス転位温度Tgが55℃以上のもの、好ましくは60℃以上のもの、さらに好ましくは60〜68℃である。
【0037】
本発明においては、樹脂のTgは、理学電機社製のRigaku THRMOFLEX TG8110により、昇温速度10℃/minの条件にて測定される。
【0038】
本発明において、トナー中の樹脂成分として、前述のように、ポリエステル樹脂を用いることが最も適しているが、ポリエステル樹脂以外の樹脂も、上記トナー粘弾性を満足すれば、単独若しくはブレンド使用において低温定着化を達成できる。また、ポリエステル樹脂を用いる場合においても、トナーの性能を損なわない範囲で、他の樹脂を併用することもできる。
【0039】
ポリエステル樹脂以外の使用可能な樹脂を例示すると、次のようなものを挙げることができる。なお、これらの樹脂は単独使用に限らず、二種以上併用することも可能である。
【0040】
ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン/クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/塩化ビニル共重合体、スチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体(スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/メタクリル酸エステル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単独重合体又は共重合体)、塩化ビニル樹脂、スチレン/酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン/エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂。
【0041】
これらの樹脂の製造法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれも利用できる。また、上記樹脂のガラス転位温度Tgは、ポリエステル樹脂と同じく、熱保存性の関係から55℃以上がよく、より好ましくは60℃以上が良い。
【0042】
本発明のトナーに用いる着色剤としては、例えばカーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料等の染顔料など、従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用し得、ブラックトナーとしてもフルカラートナーとしても使用できる。これらの着色剤の使用量はトナー樹脂成分に対して、通常1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%である。
【0043】
本発明においてトナーに使用される離型剤としては公知のものが全て使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。カルナウバワックスとしては、微結晶のものが良く、酸価が5以下であるものが好ましい。モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であることが好ましい。酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価は10〜30が好ましい。
【0044】
その他の離型剤としては、固形シリコーンワニス、高級脂肪酸高級アルコール、モンタン系エステルワックス、低分子量ポリプロピレンワックス等、従来公知のいかなる離型剤をも混合して使用できる。これらの離型剤の使用量は、トナー樹脂成分に対し、1〜20重量部、好ましくは3〜10重量部である。
【0045】
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤、流動性改良剤などを配合することも可能である。帯電制御剤としては、ニグロシン染料、金属錯塩型染料、第四級アンモニウム塩等の従来公知のいかなる極性制御剤も、単独あるいは混合して使用できる。これらの極性制御剤の使用量は、トナー樹脂成分に対し、0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。特に、サリチル酸金属錯体、好ましくは6配位の構成を取りうる3価以上の金属を有する錯体が、樹脂とワックスの反応性が高い部分と反応し軽度の架橋構造を作ることで帯電制御剤としての効果のみならず、耐ホットオフセットの改良効果があることが判明している。ここで、3価以上の金属の例としては、Al,Fe,Cr,Zr等が挙げられる。
【0046】
流動性改良剤としては、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等、従来公知のいかなる流動性改良剤をも単独あるいは混合して使用できる。これらの流動性改良剤の使用量は、トナー重量に対し、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
【0047】
本発明のトナーは磁性体を含有した磁性トナーとして用いることができ、トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれら金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物などが挙げられる。特にマグネタイトが磁気特性の点で好ましい。
【0048】
これらの強磁性体は平均粒径が0.1〜2μm程度のものが望ましく、トナー中に含有させる量としては樹脂成分100重量部に対し約15〜200重量部、特に好ましくは樹脂成分100重量部に対し20〜100 重量部である。
【0049】
本発明のトナーは、一成分現像剤としても、キャリアと組み合わせてなる二成分現像剤としても用いることができる。本発明のトナーを二成分現像剤として使用する場合のキャリアとしては、公知のものがすべて使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のごとき磁性を有する粉体、ガラスビーズ等及びこれらの表面を樹脂などで処理した物などが挙げられる。
【0050】
本発明におけるキャリアにコーティングし得る樹脂粉末としては、スチレン−アクリル共重合体、シリコーン樹脂、マレイン酸樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂エポキシ樹脂等がある。スチレン−アクリル共重合体の場合は、30〜90重量%のスチレン分を有するものが好ましい。この場合スチレン分が30重量%未満だと現像特性が低く、90重量%を超えるとコーティング膜が硬くなって剥離しやすくなり、キャリアの寿命が短くなるからである。また、本発明におけるキャリアの樹脂コーティングは、上記樹脂の他に接着付与剤、硬化剤、潤滑剤、導電材、荷電制御剤等を含有してもよい。
【0051】
本発明においては、トナー像を担持した支持体を、2本のローラの間を通過させることによってトナー像の加熱定着を行う定着装置において、トナー像と接触する側の定着ローラが非弾性ローラである定着装置において、本発明のトナーを使用することにより、従来以上の低温定着が可能となる。特に、従来の定着装置より面圧の低いローラ定着装置やベルト加熱定着装置において本発明のトナーを使用することが有効である。これによりトナーの低温定着化が可能になるだけでなく、定着部材が低熱容量となり定着装置の電源を入れてからスタートまでの待機時間が短縮されるので、省エネルギー化が可能となる。さらに、トナー像を担持した支持体を、2本のローラの間を通過させることによってトナー像の加熱定着を行う定着装置において、トナー像と接触する側の定着ローラの厚みが1.0mm以下、2本のローラ間に加える面圧(ローラ荷重/接触面積)が1×10Pa以下の定着装置に、本発明のトナーのうち温度100℃、周波数10Hz、応力1000〜1500PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が4×10Pa以下、トナーのtanδが1.3以上のトナーを使用することが有効である。
【0052】
以下に本発明に使用される定着装置の1例を図1に基づいて説明する。1は定着ローラ、2は加圧ローラをそれぞれ表している。定着ローラ1はアルミニウム、鉄、ステンレス又は真鍮のような、高熱伝導体から構成された中空筒上芯金3の表面にRTV、シリコーゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなオフセット防止層4が被覆されている。定着ローラ1の内部には、加熱ランプ5が配置されている。加圧ローラ2の金属シリンダー6は定着ローラ1と同じ材質が用いられる場合が多く、その表面にはPFA、PTFAなどのオフセット防止層7が被覆されている。また、必ずしも必要ではないが、加圧ローラ2の内部には加熱ランプ8が配置されている。定着ローラと加圧ローラは、両端のバネにより圧接され回転する。この定着ローラ1と加圧ローラ2の間に未定着トナー像Tの画像受像体Sを通過させ定着を行う。
【0053】
本発明に用いられる熱ローラ定着装置の一つは、定着ローラのオフセット防止層がPTFE、PFA、FEPなどである、非弾性ローラである。本発明に用いられる熱ローラ定着の別の一つは、特に、定着ローラの金属シリンダーの厚みが1.0mm以下である。これにより、定着ローラの温度立ち上がり特性が改善され、極めて短時間で所望の温度まで立ち上げることができる。この場合の好ましい金属シリンダーの厚みは、用いる材料の強度、熱伝導率により異なるが0.2〜0.7mmである。ローラ面圧は高い方がトナー像の定着には有利であるが、前記定着ローラの金属シリンダーの厚みを1.0mm以下としたこの定着装置では、ローラの歪みを、招くため大荷重は加えられず、その荷重は1.5×10Pa以下であり、好ましくは0.5〜1.0×10Paである。面圧はローラ両端に加えられる荷重をローラ接触面積で割った値である。ローラ接触面積は、定着可能温度まで加熱したローラ間にOHP用紙のような、加熱により表面性の大きく変化するシートを通過させ、途中で停止し数10秒間保持した後排出し、表面性の変化した箇所の面積を求める。
【0054】
本発明に用いられるベルト加熱定着装置の例を図2に示す。9は金属製(アルミニウム、鉄等)芯金10に弾性体11(シリコーンゴムなど)を被覆した定着ローラであり、12は金属性中空筒状芯金13(アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等からなるパイプ)からなり内部等に加熱ランプ14を有する加熱ローラである。Sは加熱ローラR3部分に接する定着ベルトBの表面温度を測定する為の温度センサーである。定着ローラ9と加熱ローラ12との間に定着ベルト15が張設されている。定着ベルト15は熱容量の小さい構成であり、基体(ニッケルやポリイミドなどの30から150μm程度の厚さ)上に、オフセット防止層(シリコーンゴムで50から300μmの厚さや、フッ素系樹脂で10から50μm程度の厚さなど)が設けられたものである。また、16は金属製芯金17に弾性体18を被覆した加圧ローラであり、定着ベルト15を介して定着ローラ9を下方から押圧することにより、定着ベルト15と加圧ローラ16との間にニップ部を形成している。そして19は、未定着トナー画像Tの画像受像体Sを支持するガイドである。
【0055】
なお、これらは一例であり、例えば定着ローラ9や、加圧ローラ16の内部に加熱ランプ20や21を設けることも可能である。本発明ではこれら例以外の構成で、定着ローラや定着ベルトを使用した定着装置も適用される。また、それぞれの部材の寸法は、必要とされる各種の条件により設定される。
【0056】
本発明のトナーを、一成分現像剤あるいは二成分現像剤いずれで用いる場合においても、トナーは容器に充填され、トナーが充填された容器は、画像形成装置とは別途に流通され、ユーザーが画像形成装置に装着して画像形成するのが、一般的である。前記容器として用いられるものは限定的でなく、従来のボトル型あるいはカートリッジ型に限らず用いられる。また、画像形成装置とは電子写真法によって画像を形成するための装置であれば限定されず、例えば複写機とかプリンターが包含される。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
実施例及び比較例(トナーD、K、L)のトナー製造
本発明の実施例に使用するトナーの製造
トナー構成材料のうちポリエステル樹脂の特性は表1に記載のものを使用
トナーA
トナー構成材料
ポリエステル樹脂a 100重量部
脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス 5重量部
カーボンブラック(#44:三菱化成社製) 10重量部
含金属アゾ化合物 1重量部
上記のトナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約9.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.5wt%添加混合し、最終的なトナーとした。
【0059】
トナーB
トナーAのポリエステル樹脂aの代わりに、ポリエステル樹脂bを75重量部、ポリエステル樹脂cを25重量部とする以外はトナーAと同じ構成材料を使用し、トナーAの場合と同様の方法でトナー化した。
【0060】
トナーC
トナーAのポリエステル樹脂aの代わりに、ポリエステル樹脂dを50重量部、ポリエステル樹脂eを50重量部とする以外はトナーAと同じ構成材料を使用し、トナーAの場合と同様の方法でトナー化した。
【0061】
トナーD(比較例トナー)
トナー構成材料
ポリエステル樹脂f 50重量部
ポリエステル樹脂e 50重量部
酸化ライスワックス 5重量部
カーボンブラック(#44:三菱化成社製) 10重量部
4級アンモニウム塩化合物 1重量部
上記のトナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約9.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.5wt%添加混合し、最終的なトナーとした。
【0062】
トナーE
トナー構成材料
ポリエステル樹脂f 45重量部
ポリエステル樹脂e 40重量部
スチレン−アクリル酸メチル共重合樹脂 15重量部
(クロロホルム不溶分なし、Tg61℃)
低分子量ポリエチレンワックス 5重量部
カーボンブラック(#44:三菱化成社製) 10重量部
4級アンモニウム塩化合物 1重量部
上記のトナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約9.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.5wt%添加混合し、最終的なトナーとした。このトナーはこれまでのトナーA〜Dに比べて粉砕性の高いものであった。
【0063】
トナーF
トナー構成材料
ポリエステル樹脂g 50重量部
ポリエステル樹脂h 50重量部
脱遊離脂肪酸型カルナバワックス 5重量部
カーボンブラック 10重量部
含金属アゾ染料 1重量部
上記のトナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約9.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.5wt%添加混合し、最終的なトナーとした。
【0064】
トナーG
トナーF構成材料の含金属アゾ染料を1重量部の代わりに、サリチル酸ジルコニウム化合物を2重量部とする以外はトナーFと同じ構成材料を使用し、トナーFの場合と同じ方法で体積平均粒径約9.5μmのトナーを得た。
【0065】
トナーH
トナーG構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約6.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.8wt%添加混合し、最終的なトナーとした。
【0066】
トナーI
トナー構成材料
ポリエステル樹脂g 50重量部
ポリエステル樹脂h 45重量部
ポリエチレンにスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸
ブチルがグラフトしたもの
(クロロホルム不溶分なし、Tg68℃) 5重量部
脱遊離脂肪酸型カルナバワックス 5重量部
カーボンブラック 10重量部
サリチル酸ジルコニウム化合物 2重量部
上記トナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約6.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.8wt%添加混合し、最終的なトナーとした。体積平均粒径はトナーHと同等だが、粉砕性はトナ−Hの場合よりも高く、トナーIより体積平均粒径の大きいトナーGの場合と同等の粉砕性だった。
【0067】
トナーJ
トナー構成材料
ポリエステル樹脂i 50重量部
ポリエステル樹脂j 45重量部
ポリエチレンにスチレン、アクリロニトリル、
アクリル酸ブチルがグラフトしたもの
(クロロホルム不溶分なし、Tg68℃) 5重量部
脱遊離脂肪酸型カルナバワックス 5重量部
カーボンブラック 10重量部
サリチル酸鉄(III)化合物 2重量部
上記のトナー構成材料をトナーIの場合と同様の方法でトナー化し、体積平均粒径約6.5μmのトナーを得た。
【0068】
トナーK(比較例トナー)
トナー構成材料
ポリエステル樹脂d 80重量部
スチレン−アクリル酸2エチルヘキシル−メタクリル酸nブチル共重合樹脂
(クロロホルム不溶分13%、Tg63℃) 20重量部
低分子量ポリエチレンワックス 5重量部
カーボンブラック 10重量部
含金属アゾ染料 1重量部
上記のトナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約9.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.5wt%添加混合し、最終的なトナーとした。
【0069】
トナーL(比較例トナー)
トナー構成材料
ポリエステル樹脂k 100重量部
脱遊離脂肪酸型カルナバワックス 5重量部
カーボンブラック 10重量部
サリチル酸ジルコニウム化合物 2重量部
上記のトナー構成材料をヘンシェルミキサー中で十分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、得られた混練物をジェットミル又は機械式粉砕機,風力分級機で粉砕分級し体積平均粒径約9.5μmのトナー母体を得た。得られたトナー母体に疎水性シリカ0.5wt%添加混合し、最終的なトナーとした。
【0070】
【表1】
Figure 0003957037
【0071】
トナーの評価項目及び評価方法を下記に、評価結果を表2〜3に示す。
トナー構成及び離型剤分散状態
トナー粒子を約100nmに超薄切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により倍率1万倍で観察を行ない写真撮影した。
樹脂構造
○…樹脂が海島構造をとり島状樹脂中に離型剤が存在する
−…樹脂の海島構造がない
離型剤分散状態
◎…1.5μmを超える離型剤がない
○…2μmを超える離型剤がない
△…2μmを超える離型剤が存在するが、その数は少ない(0.5μm以上の離型剤のうち5個数%以下)。
×…2μmを超える離型剤が多く存在する。
(×以外は許容範囲)
【0072】
粉砕性
平均粒径1mm以下に粗粉砕されているトナーを、日本ニューマチック社製のIDS型粉砕機で一定条件下で粉砕した時の、単位時間当たりの処理量により求めた。
◎:4kg以上、○:3〜4kg、△:1〜3kg、×:1kg未満、▲:4kg以上だが微粉が多量発生(×、▲以外は許容範囲)
耐熱保存針入度
トナー約20gを20mlのガラス瓶に入れ、50回タッピングを行ないトナーを密に固めた後、50℃の恒温槽に24時間放置し、その後針入度を測定した。
◎:貫通、○:25mm以上、△:15〜25mm、×:15mm未満(×以外は許容範囲)
定着特性
リコー製複写機 MF−2200を改造して、本来の定着装置を取り外して別の定着装置を取り付けられるようにし、定着装置の設定温度を変えられるようにした。これに、実施例で示したトナー、現像剤、実施例で示した定着装置、リコー製タイプ6200紙をセットし複写テストを行った。なお、上記A〜Lのトナーは、平均粒径100μmの球状フェライトにシリコーン樹脂を被覆したキャリアと混合して2成分現像剤とした。現像剤はキャリア93重量部、トナー3重量部をターブラーミキサーで5分攪拌して得た。
【0073】
評価に使用する定着装置は次の3種類である。
(1)図1示す熱ローラ定着装置で、以下の構成のもの
定着ローラの金属シリンダーがSUSで厚さ3.0mm
定着ローラのオフセット防止層がPTFEで厚さ20μm
加圧ローラの金属シリンダーがSUSで厚さ2mm
加圧ローラのオフセット防止層が厚さ4μmのシリコーンゴムの上に厚さ50μmのPFA
面圧2.5×10Pa
線速180mm/sec
(2)図2に示すベルト加熱定着装置で、以下の構成のもの
定着ローラがシリコーン発泡体
加圧ローラの金属シリンダーがSUSで厚さ1mm
加圧ローラのオフセット防止層がPFAチューブ+シリコーンゴムで厚さ1mm
加熱ローラが厚さ2mmのアルミ
ベルトの基体が50μmのポリイミド
ベルトのオフセット防止層が15μmのシリコーンゴム
面圧1×10Pa
線速200mm/sec
(3)図1示す熱ローラ定着装置で、以下の構成のもの
定着ローラの金属シリンダーがアルミで厚さ0.5mm
定着ローラのオフセット防止層がPTFEで厚さ16μm
加圧ローラの金属シリンダーがアルミで厚さ1mm
加圧ローラのオフセット防止層が厚さ3μmのシリコーンゴムの上に厚さ30μmのPFA
面圧9×10Pa
線速180mm/sec
【0074】
定着温度を変化させて定着下限温度とホットオフセット発生温度を求めた。定着下限温度は、スミア法でスミア濃度がIDで0.4未満となる温度とした。尚、高温オフセットの評価条件は紙送りの線速度を50mm/secとオフセット発生に対して厳しい条件に設定した。
定着装置(1)での定着下限温度(×、××以外が従来の低温定着トナーよりさらに低温定着)
◎…165℃未満、○…165〜175℃、△…175〜185℃、×…185〜195℃、××…195℃以上
定着装置(2)での定着下限温度(×、××以外が許容範囲)
◎…125℃未満、○…125〜135℃、△…135〜145℃、×…145〜155℃、××…155℃以上
定着装置(3)での定着下限温度(×、××以外が許容範囲)
◎…145℃未満、○…145〜155℃、△…155〜165℃、×…165〜175℃、××…175℃以上
ホットオフセット発生温度
◎…210℃以上、○…200〜210℃、△…190〜200℃、×…180〜190℃、××…180℃未満
【0075】
耐久性
トナーDについては定着装置(3)、それ以外のトナーについては定着装置(1)を用いて、これ以外は定着性評価をする場合と同様の装置、記録紙で5万枚連続複写テストを行ない、初期画像や初期現像剤の帯電量に対する、5万枚終了後の変化を調べた。なお各定着装置の設定温度は、(1)の熱ローラ定着装置185℃、(3)の熱ローラ定着装置165℃とした。
◎:Q/Mの低下がほとんどなく画質良好、○:Q/Mの低下があるが画質良好、△:Q/Mの低下があり画質も変化するが問題ないレベル、×:画質悪化(×以外は許容範囲)
【0076】
[定着装置例、定着方法例]
実施例1
トナーAと定着装置(1)を用いて定着性評価を行った。その結果、定着下限温度は従来の低温定着トナーよりさらに低く、しかもオフセット発生までに余裕度のあるトナーであった。また、耐久性評価では、初期から50万枚複写後まで、画像濃度が高く、転写むらがなく、地肌汚れなどのない高品質の画像が得られた。ここで、使用したトナー耐熱保存性も良いものであった。定着装置例、定着方法例の他の実施例、及び比較例とともに、結果は表4に示される。
【0077】
実施例2
トナーAと定着装置(2)を用いて定着性評価を行った。低熱容量の定着装置(2)で定着装置(1)の場合よりも低温で定着でき、消費エネルギーが低減できた。この場合もオフセット発生までの余裕度があった。
【0078】
比較例1
トナーAと定着装置(3)を用いて定着性評価を行った。定着装置(1)を使用した実施例1の場合と同じ温度で定着可能であるが、ヒーター電源オンからこの温度に到達するまでの待機時間がかかるため、待機時間短縮による更なる省エネルギーをめざした定着装置にとって、適したトナーとはいえない。
【0079】
実施例3、4
実施例3ではトナーBと定着装置(1)を用いて、また、実施例4ではトナーBと定着装置(2)を用いて定着評価を行った。どちらの場合もトナーAを使用した実施例1、2の場合よりもオフセット発生までの余裕度が上がった。クロロホルム不溶分のある樹脂とない樹脂をブレンドしたトナーBの使用により、低温定着性と耐オフセット性のバランスがよくなった。
【0080】
実施例5、6
実施例5ではトナーCと定着装置(1)を用いて、また、実施例6ではトナーCと定着装置(2)を用いて定着評価を行った。樹脂の水酸基価が高くなったことにより、記録紙への親和性がよくなり、面圧の低い定着装置(2)を用いた実施例6の場合に定着温度を下げる効果が高かった。
【0081】
比較例2、3
比較例2ではトナーA、比較例3ではトナーBを用い、それぞれ定着装置(3)を用いて定着評価を行った。定着装置(1)や定着装置(2)では定着温度が低下したが、それでも定着装置(3)にとっては適したトナーとならなかった。
【0082】
比較例4、5、6
比較例4ではトナーDと定着装置(1)を用いて、比較例5ではトナーDと定着装置(2)を用いて、また比較例6ではトナーDと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。分子量分布のピーク位置が低くシャープな分子量分布であることにより、低分子量成分の割合が多くなり、トナーCを用いた場合よりも低温で定着できるようになった。さらにこのトナーは、待機時間短縮可能な定着装置(3)を効果的に使えるトナーとなった。このように低分子量成分の割合が多くなっても、クロロホルム不溶分が多いのでオフセット発生までに余裕度のあるトナーとなった。これには、混練時に剪断力がかかりにくく、離型剤分散径が実施例6までのトナーよりもやや大きいことによる離型剤の染み出しやすさの影響も考えられる。しかし、連続複写テストで、問題となるような大きな変化ではないが、初期画像に比べると画質の低下が見られる。したがって、離型剤の分散状態はこれより悪くならないほうがよいといえる。
【0083】
実施例7、8、比較例
実施例ではトナーEと定着装置(1)を用いて、実施例ではトナーEと定着装置(2)を用いて、また比較例ではトナーEと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。このトナーEはトナーDで使用したポリエステル樹脂2種と、これらと非相溶な樹脂を使用したものであるが、トナーDを使用した場合よりも定着下限温度が高くなった。この結果から、ポリエステル樹脂の結着樹脂全体に占める割合が高いほうが、低温定着化を達成しやすいものであるといえる。なお、TEM観察によりこのトナーEはトナーDと異なり、結着樹脂が海島構造を形成し、島状樹脂中への離型剤の存在が確認できた。しかも離径剤分散径が特に大きいものはなかった。このトナーを使用した耐久性評価では、トナーDを使用した場合のような画質の変化はなかった。
【0084】
実施例9、10、11
実施例ではトナーFと定着装置(1)を用いて、実施例10ではトナーFと定着装置(2)を用いて、また実施例11ではトナーFと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。評価の結果、どの定着装置にも低温定着化ができ、オフセット発生までの余裕度のあるトナーであった。このトナーFを使用して耐久性評価を行った結果、50万枚複写後まで初期と変わらない良好な画像が得られた。
【0085】
実施例12、13、14
実施例12ではトナーGと定着装置(1)を用いて、実施例13ではトナーGと定着装置(2)を用いて、また実施例14ではトナーGと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。トナーFとは含金属アゾ染料がサリチル酸ジルコニウム化合物に変わったという違いであるが、どの定着装置に置いてもオフセット発生温度が、トナーF使用の場合よりも高くなった。
【0086】
実施例15、16、17
実施例15ではトナーHと定着装置(1)を用いて、実施例16ではトナーHと定着装置(2)を用いて、また実施例17ではトナーHと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。トナーの粒径が小さくなったことにより、面圧の低い定着装置(2)や定着装置(3)を用いた場合に、定着温度がより低くなった。
【0087】
実施例18、19、20
トナーIは、TEM観察から海島構造を形成し、島状樹脂中に離型剤の存在が確認できた。離型剤の分散状態は非常によいものであった。このトナーはトナーHよりも耐熱保存性が良いが、これは離径剤分散径が小さくなっただけでなく、ポリエステル樹脂と非相溶のTgの高い樹脂がトナー表面に多く存在していることが影響している。このトナーIについて、実施例18では定着装置(1)を用いて、実施例19では定着装置(2)を用いて、また実施例20では定着装置(3)を用いて定着評価を行った。評価の結果、オフセット発生温度はやや低下するが、どの定着装置においても、低温定着性と耐オフセット性が両立できるトナーであった。
【0088】
実施例21、22、23
実施例21ではトナーJと定着装置(1)を用いて、実施例22ではトナーJと定着装置(2)を用いて、また実施例23ではトナーJと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。評価の結果、どの定着装置にも低温定着化ができ、オフセット発生までの余裕度の高いトナーであった。このトナーJを使用して耐久性評価を行った結果、50万枚複写後まで初期と変わらない良好な画像が得られた。
【0089】
比較例8、9、10
比較例ではトナーKと定着装置(1)を用いて、比較例ではトナーKと定着装置(2)を用いて、また比較例10ではトナーKと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。評価の結果、定着装置(1)では従来の低温定着トナーの定着下限温度と同じで、このようなトナーでは、面圧の低い定着装置(2)や定着装置(3)ではこの装置に適した定着下限温度にはならなかった。
【0090】
比較例11、12、13
比較例11ではトナーLと定着装置(1)を用いて、比較例12ではトナーLと定着装置(2)を用いて、また比較例13ではトナーLと定着装置(3)を用いて定着評価を行った。評価の結果、定着装置(1)や定着装置(2)では非常に低い温度で定着でき、定着装置(3)でも低温で定着できるが、オフセット発生温度が低いものであった。
【0091】
【表2】
Figure 0003957037
【0092】
【表3】
Figure 0003957037
【0093】
【表4】
Figure 0003957037
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、従来と比べてより低温定着化が達成され、かつ耐ホットオフセット性、熱保存性が良好で、初期の高画質が長期的に変化せず、低面圧で消費エネルギーを低減できる装置に適したトナーを提供することができる。さらに本発明は、前記のようなトナーを収納した容器及びそれを装着した画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱定着ローラの一例を説明した断面図である。
【図2】本発明のベルト加熱定着方式の一例を説明した図である。
【符号の説明】
1 定着ローラ
2 加圧ローラ
3 中空筒上芯金
4 オフセット防止層
5 加熱ランプ
6 金属シリンダー
7 オフセット防止層
8 加熱ランプ
9 定着ローラ
10 金属製(アルミニウム、鉄等)芯金
11 弾性体(シリコーンゴムなど)
12 加熱ローラ
13 金属性中空筒状芯金(アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等からなるパイプ)
14 加熱ランプ
15 定着ベルト
16 加圧ローラ
17 金属製芯金
18 弾性体
19 未定着トナー画像Tの画像受像体Sを支持するガイド
20 加熱ランプ
21 加熱ランプ
T 未定着トナー画像
S 未定着トナー画像Tの画像受像体

Claims (20)

  1. 少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10Pa以下かつトナーのtanδ(損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’が5×10Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー。
  2. 横軸をlog(M)(Mは分子量)、縦軸を重量%で表した分子量分布図で、トナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布のピーク位置が3.3〜4の範囲にあり、かつピークの半値幅が1.5以下であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
  3. 少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、周波数10Hz、温度100℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が4×10Pa以下かつトナーのtanδ(損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.3以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’が5×10Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー。
  4. 横軸をlog(M)(Mは分子量)、縦軸を重量%で表した分子量分布図で、トナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布のピーク位置が3.3〜4の範囲にあり、かつピークの半値幅が1.1以下であることを特徴とする請求項3記載のトナー。
  5. トナーのTHF可溶溶分のGPCによる分子量分布の分子量10万以上の割合が、3重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトナー。
  6. トナー中の結着樹脂のクロロホルム不溶分が2〜20%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトナー。
  7. 結着樹脂がクロロホルム不溶分を含む結着樹脂とクロロホルム不溶分を含まない結着樹脂の少なくとも2種で構成されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のトナー。
  8. 結着樹脂の80重量%以上がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のトナー。
  9. ポリエステル樹脂の酸価が8〜45mgKOH/g、水酸基価が50mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項8記載のトナー。
  10. サリチル酸金属化合物を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のトナー。
  11. 結着樹脂として2種以上を使用し、これらが互いに非相溶で海島状の相分離構造をとり、島状樹脂中に実質的に離型剤が内包されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のトナー。
  12. トナーの体積平均粒径が5〜7μmであることを特徴とする請求項3〜11のいずれかに記載のトナー。
  13. ナーによって形成したトナー像を担持した支持体をローラ間を通過させることによってトナー像の加熱定着を行う2本のローラを有し、かつ該2本のローラのトナー像と接触する側の定着ローラが非弾性ローラであり、該2本のローラ間に加える面圧(ローラ荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であ り、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着装置。
  14. 記録材上にナーによって形成したトナー像を有端もしくは無端ベルトと接触させながらトナー像の加熱定着を行うトナー定着装置であって、該記録材とベルトとの接触面圧(荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着装置。
  15. ナーによって形成したトナー像を担持した支持体を、ーラ間を通過させることにより又は有端もしくは無端ベルトと接触させることにより、トナー像の加熱定着を行うトナー定着装置であって、該トナー像を担持した支持体に加える面圧(荷重/接触面積)が1×10Pa以下であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が4×10 Pa以下かつトナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.3以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着装置。
  16. ナーを使用して形成された記録材上のトナー像を、2本ローラ間を通過させて定着するトナーの定着方法であって、トナー像と接触する側の定着ローラが非弾性ローラであり、該2本のローラ間に加える面圧(ローラ荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナーの定着方法。
  17. ナーを使用して形成された記録材上のトナー像を、有端もしくは無端ベルトと接触させながら定着するトナーの定着方法であって、該記録材とベルトとの接触面圧(荷重/接触面積)が1×10 Pa以上であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1500〜2000PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が5×10 Pa以下かつ該トナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.2以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1500〜2000Paでの該トナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナーの定着方法。
  18. トナーによって形成したトナー像を担持した支持体を、ローラ間を通過させることにより又は有端もしくは無端ベルトと接触させることにより、トナー像の加熱定着を行うトナー定着装置であって、該トナー像を担持した支持体に加える面圧(荷重/接触面積)が1×10 Pa以下であり、前記トナーが、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を含有し、周波数10Hz、温度100℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’(貯蔵弾性率)が4×10 Pa以下かつトナーのtanδ ( 損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比:G”/G’)が1.3以上であり、周波数10Hz、温度180℃、応力1000〜1500PaでのトナーのG’が5×10 Pa以上かつトナーのtanδが5以下であることを特徴とするトナー定着方法。
  19. 請求項1乃至12のいずれかに記載のトナーが充填されたトナー容器。
  20. 請求項19のトナー容器が装着された画像形成装置。
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