JP4365567B2 - 静電荷像現像用トナー及び画像作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電印刷法、静電記録法等において形成された静電荷潜像を可視像化する静電荷像現像用トナー及び画像作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷もしくは記録法の内、例えば電子写真法においては、光導電性感光体を帯電、露光し、感光体上に静電荷潜像を形成し、次いでこの静電荷潜像を樹脂をバインダーとして着色剤等を含有せしめた微粒子状トナーによって現像し、得られたトナー像を記録紙上に転写し定着して記録画像が得られる。
【0003】
このような静電像記録工程では、微粒子状トナーによる静電荷潜像の現像と記録紙上への定着が特に重要な工程であり、従来においてはトナーを現像する方法として、高速、高画質現像が可能なトナーと磁性キャリアより成る二成分現像剤を用いる磁気ブラシ現像法がよく用いられている。また、トナーを定着する方法としては、熱効率が高く高速定着が可能な熱ローラ定着法がよく用いられている。
【0004】
一方、最近においては、情報機器の発展に伴い、光導電性感光体の露光にレーザビームを用い、コンピュータの指示による変調信号によって記録画像をドットで再現するレーザビームプリンタが発達している。特に、最近のレーザビームプリンタでは、より一層の高画質の画像作製が求められるため、レーザビームの径を絞り込んで小さくし、ドット密度が600〜1200dpi(dots/inch)と高くなっている。これに伴い、微細になった静電荷潜像を現像する目的で、トナー及びキャリアの粒子径も小さくなり、体積平均粒径が10μm以下の微粒子トナーと重量平均粒径が100μm以下の微粒子キャリアの適用が進められている。
【0005】
一方、定着においては前記の熱ローラ定着が多用されているが、プリンタの過熱劣化を抑制し、機内の部品の熱劣化を防止すること。定着機を作動せしめてから定着が可能になるまでのウォームアップ時間を短くすること。また、記録紙に熱が吸収されることによる定着不良を防止して、連続通紙による画質の維持を可能にすること。過熱による記録紙のカールと火災を防止すること。熱ローラへ加える荷重を減らし、定着機の構造を簡易化、小形化すること等の観点から、定着用ヒータ及び駆動モータの消費電力を下げて、熱ローラの温度をより低温で、また、熱ローラの圧力をより低圧力で定着できるトナーの開発が望まれている。
【0006】
この様に、微粒子で低温、低圧力で定着出来る高性能なトナーの開発が望まれている。一方、前記の様にトナーを10μm以下に微粒子化した場合、以下の様な問題が発生する。即ち、現像工程においては、微粒子トナーを使用することにより高画質が得られが、非画像部へのトナー付着(カブリ)とトナー飛散が生じ易く、流動性の低下によるトナー搬送等のハンドリング性も低下し易い。
【0007】
更に、微粒子トナーの付着力の強さと耐衝撃性の弱さにより、トナーによるキャリア汚染(キャリアスペント)が起こり易くなり、現像剤寿命が低下し易い。また、定着に関しては同一の定着強度を得るために、粒子径の大きなトナーよりも多くのエネルギーを要し、トナー製造時には、粉砕、分級工程での歩留まりが低下するため、トナーのコストが高くなる。
【0008】
微粒子トナーではこれら多くの問題が生じ、通常平均粒径5μm未満のトナーは実用化することが難しく、トナーの平均粒径を5〜10μmの範囲に分級し、トナーの外添剤、外添処方の改良によりトナーの流動性を高めて用いる。一方、キャリアについてはトナーの小粒径化に伴い、重量平均粒径を100μm以下の小粒径とし、キャリアの比表面積を高めて、トナーとの摩擦帯電性を向上せしめる。しかし、30μm未満のキャリアではキャリアの磁力が低下し、静電荷像保持部材上に静電吸引力で付着し易くなるため、キャリアの平均粒径を30〜100μmの範囲に分級し、必要に応じて表面を樹脂でコートして用いる。
【0009】
これらの粒度分布の改善と流動性、帯電性の改良により、微粒子トナー及び現像剤は複写機、プリンタ等で実用化される様になった。しかし、実機で印刷を行う場合、特に毎分10頁以上の高速印刷を繰り返す場合には、上記の微粒子トナー特有の問題が生じ、トナーによるキャリアスペントによる現像剤寿命の低下、及びトナーによる感光体フィルミングによる感光体寿命の低下が起こり易くなる。
【0010】
また、画像の定着強度が得られにくく、特に、定着工程において、熱ローラの温度と圧力を高める必要があり、そのため、定着機の高信頼化、簡易小形化、コスト低減を図りにくい問題があった。
【0011】
トナーの定着性能向上のため、定着用樹脂にワックスを添加することは知られている。例えば、特開昭52−3304号公報、特開昭52−3305号公報、特開昭57−52574号公報等の技術が開示されている。
【0012】
ワックス類は、トナーの低温時や高温時の熱ローラへの付着、いわゆるオフセット現象を防止し、低温時のトナーの定着性の向上のために用いられ、最近では、低温定着の観点から低融点ワックスが着目されている。
【0013】
例えば、特開平5−313413号公報にはトナーの低温定着性、耐オフセット性、非凝集性を改善するため、特定の分子量分布を有するビニル系共重合体に140℃での粘度が1万ポイズ以下のエチレンまたはプロピレンとα−オレフィン共重合体を添加することが開示されている。
【0014】
また、同様の目的で、特開平7−287413号公報には示差走査熱量計(DSC)による吸収熱量のピーク(融点)が75〜85℃のパラフィンワックスを添加すること、特開平8−314181号公報、特開平9−179335号公報、特開平9−319139号公報にはDSCによる融点が85〜100℃の天然ガス系フィッシャートロピッシュワックスを添加すること、特開平6−324513号公報にはDSCによる融点が85〜110℃のポリエチレンワックスを添加すること、特開平7−36218号公報には融点が50℃以下の成分を蒸留法等によって除去したDSCの融点が70〜120℃のポリエチレン系ワックスを添加すること、特開平8−114942号公報には重量平均分子量(Mw)が1千未満のポリエチレンワックスを添加することが開示されている。
【0015】
一方、低融点ワックスをトナーに添加するとトナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性が低下する。それを改良するため特開平6−123994号公報では重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.5以下のワックスを用いること、特開平7−209909号公報では140℃における溶融粘度が0.5〜10mPa・sであり、且つ針入度が3.0dmm以下であるエチレン系オレフィン重合体ワックスを用いること、特開平7−287418号公報では平均分子量が1千以上のフィッシャートロピッシュワックスを用いることが開示されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術を用いてトナーの定着性能を向上させることが可能だが、低融点ワックスを用いた場合、特に、微粒子トナーでは、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性を維持した上での定着性能の向上が難しく、実用に供し得るトナー及び画像作製方法を提供することができなかった。
【0017】
本発明の目的は、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性が良好でトナーによるキャリアスペントによる現像剤寿命の低下、及びトナーによる感光体フィルミングによる感光体寿命の低下が起こりにくく、また、定着に要するエネルギーが小さく、熱ローラ定着方式を採用した場合に熱ローラの温度と圧力を低下させることが可能で、且つ、オフセット現象が発生し難いトナーを提供し、それを用いた安定した画像作製方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、少なくとも定着用樹脂及びワックスを含む静電荷像現像用トナーにおいて、前記ワックスは炭化水素系ワックスであり、その構成成分として1.5を越える重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)を有し、140℃における溶融粘度が4mPa・sを超え10mPa・s未満であり、結晶化度が75%を越え85%以下であるワックスAと、1.5以下の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)を有し、140℃における溶融粘度が0.5mPa・sを超え10mPa・s未満であり、結晶化度が85%を越え95%以下であるワックスBとを含み、前記ワックスAおよびワックスB混合系の前記静電荷像現像用トナーの示差走査熱量計により測定されるDSC曲線が、昇温時の吸収熱量曲線の前記ワックスに帰属される吸熱ピークを1〜4つ有し、前記吸熱ピークのうち最大値で定義される融点(Tmp)が81〜86℃であり、前記トナーの溶融開始温度(Tfb)は110℃未満であり且つ前記吸熱ピークの最大値で定義される融点(Tmp)より高いことにより達成される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。一般に、トナーの定着用樹脂には、前記熱ローラ定着用としてビニル系共重合体、特にスチレン〜(メタ)アクリル系樹脂が用いられ、最近ではポリエステル系樹脂も用いられる様になった。しかし、ポリエステル系樹脂は一般に吸水性の高い極性基(水酸基、カルボキシル基)を有し、トナーが吸湿し易く、トナーの帯電特性が変化し易い面があり、依然としてスチレン〜(メタ)アクリル系樹脂がトナー用樹脂の主流となっている。この定着用樹脂にワックス類を添加し、トナーの定着性能を向上する。
【0020】
ワックス類は、一般にトナーのオフセット防止剤として古くから用いられているが、反面、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性が低下し、融着が発生し易くなったりする問題点がある。ワックス類には多くの種類があり、その機能に応じて使い分けられるが、トナーのオフセット防止の面から、非極性で熱ロールに非粘着性の炭化水素系ワックスが最適である。
【0021】
炭化水素系ワックスは、分子量分布を持ったポリオレフィン分子の集合体であり、その特性は、分子量分布に大きく依存する。一般に、炭化水素系ワックスの効果は高温オフセットの防止に加え、低分子量成分を多くすることで低温オフセットの防止や低温定着の向上にも効果を発揮する。
【0022】
しかしながら、定着性能向上のために低分子量成分を増加させると、トナーの耐熱性や耐久性、保存安定性が低下し、現像剤のキャリア、感光体への融着も発生し易くなる。このため既存の炭化水素系ワックスの低分子量成分を徹底的にカットし、分子量分布をシャープにすることが試みられている。即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる分子量分布において、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.5以下、好ましくは1.45以下となる様に、ワックスの分子量分布をシャープにする(特開平6−123994号公報)。
【0023】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、炭化水素系ワックスの分子量分布を上記の様にシャープにすると、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性は向上するが、定着性能が不十分になり、特に、微粒子トナーにおいては、毎分10頁以上の高速印刷を繰り返す場合には定着性能が低下することが分かった。
【0024】
そこで、本発明者等は、炭化水素系ワックスを種々検討し、低分子量成分を適度に含有せしめ、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.5を越えるワックスをトナーに適用し、諸特性を評価した結果、140℃における溶融粘度が10mPa・s未満であり、結晶化度が85%以下であり、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸収熱量曲線のピークの最大値で定義されるワックスの融点(Tmp)が110℃未満であれば、トナーの定着性能を大幅に向上できることが分かった。
【0025】
本発明において、ワックスの分子量分布を1.5を越える様に拡大するが、十分な定着性と耐オフセット性を得るためには、140℃におけるワックスの溶融粘度が10mPa・s未満であり、結晶化度が85%以下と小さくなる様に、分子量分布を制御する必要がある。ワックスの溶融粘度と結晶化度がこの範囲を越えて大きくなると、微粒子トナーを用いた高速定着では、十分な定着性と耐オフセット性を得ることができない。
【0026】
本発明のワックスを定着用樹脂に適量添加し、トナーの定着性能を大幅に向上することができる。しかし、本発明のワックスは分子量分布が大きく、低粘度であるためトナーに添加した場合、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性が低下し易い。これらを悪化させないためにはワックスの140℃における溶融粘度が4mPa・sを越えること、及び又は、結晶化度が75%を越える様に、ワックスの分子量分布を調節する。この様なワックスは、工業的にはチーグラ触媒またはメタロセン触媒を用いた中圧法または低圧法ポリエチレン重合法によって得られたポリエチレンの低重合物を精製して得ることができる。即ち、ポリエチレンの低重合物から油分、オリゴマー等を真空蒸留法等で除去し、それから得られる留出残液を必要に応じて高温、高減圧下で低分子量成分を適度に除去して得られ、具体例としては、ヤスハラケミカル社製の商品名ネオワックスL、同AL、同LS、同CL、同ACL等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、前記ワックスの分子量分布の調節により、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性を向上せしめるが、それが不十分な場合、また、流動性を向上させる目的で、その一部を他のワックス類で置換することができる。その場合に最適なワックス類を種々検討した結果、1.5以下の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)を有し、140℃における溶融粘度が10mPa・s未満であり、結晶化度が85%を越え95%以下である炭化水素系ワックスが好適であり、前記ワックス混合系の示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸収熱量曲線のピークの最大値で定義される融点(Tmp)が110℃未満であれば、トナーの定着性能を損わず、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性を向上せしめることが分かった。
【0028】
ここで、ワックスの一部を置換する炭化水素系ワックスの溶融粘度は10mPa・s未満の範囲としたが、溶融粘度があまりに小さくなるとトナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性が低下するため、溶融粘度は0.5mPa・sを超える範囲が適当である。また、結晶化度を85%を越え95%以下の範囲としたが、この範囲より小さくなるとトナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性が低下し、この範囲より大きくなるとトナーの定着性能が低下する。
【0029】
本発明においては、140℃における溶融粘度が10mPa・s未満である低粘度の炭化水素系ワックスを用いる。この様な低粘度の炭化水素系ワックスをトナーに多量に添加して定着強度を向上させる場合、ワックスのトナー中への分散性を向上させないと、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性が低下し易い。ワックスのトナー中への分散性を向上させる方法としては、トナーの熱溶融混練時のエネルギーを増加させ、ワックスを定着用樹脂中に微細に分散させる方法がある。しかし、この方法では、ワックスの分散性が良くなる一方で、定着用樹脂が機械的なダメージを受けて、定着性や耐高温オフセット性が低下する弊害が出る。そこで、ワックスの分散性を向上させる別種の方法として、特開平5−313413号公報、特開平9−281748号公報、特開平9−304966号公報に開示の定着用樹脂を合成する際に合成の全部又は一部の過程でワックスを共存させる共存重合法があり、本発明で検討したところ、ワックスを定着用樹脂中に樹脂の劣化を伴わずに均一に分散することができた。
【0030】
また、本共存重合法の樹脂をトナーに適用したところ、ワックスを比較的多量に添加してもトナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性が低下せず、トナーによるキャリアスペントによる現像剤寿命の低下、及びトナーによる感光体フィルミングによる感光体寿命の低下が起こりにくく、安定した静電トナー像作製方法を提供できることが分かった。
【0031】
また、定着用樹脂と本発明のワックスを用いて得られたトナーの溶融物性について、トナーの溶融開始温度(Tfb)が、トナーの示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、昇温時の吸収熱量曲線の前記ワックスに帰属される吸熱ピークの最大値に対応した融点(Tmp)とTmp<Tfb<110℃の関係を有し、トナーのガラス転移点(Tg)が50℃を越える場合に本発明のワックスの性能を最大限発揮でき、良好な定着性能と耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性を有するトナーが得られる。
【0032】
本発明では定着性能を向上させるために、ワックスの融点(Tmp)を110℃未満とするが、更に、ワックスの融点(Tmp)をトナーの溶融開始温度(Tfb)より低くし、トナーが定着工程で溶融を開始する前にワックスを溶融せしめ、トナーの定着ロールへの離型効果を高めてオフセットを防止し、同時に定着強度を高めることができる。また、トナーのガラス転移点(Tg)は50℃を越える様に設定し、トナーの保存安定性を確保する。その結果、トナーの定着性能が良いにも係わらず、トナーによるキャリアスペントによる現像剤寿命の低下、及びトナーによる感光体フィルミングによる感光体寿命の低下が起こりにくく、安定した静電トナー像作製方法を提供することができる。
【0033】
本発明において炭化水素系ワックスの分子量分布は高温でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により次の条件で測定される。
(GPC測定条件)
装置:ALC/GPC 150−C(ウォーターズ社)
分離カラム:GMH−HT60cm×1、GMH−HTL60cm×1(TOSOH社製)
カラム温度:135℃
移動相:o−ジクロロベンゼン
検出器:示差屈折計
流速:1.0ml/min
試料濃度:0.15wt%
注入量:400μl
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用し、Mark−Houwink−Sakuradaの式あるいは粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって算出される。
【0034】
また、定着用樹脂の分子量分布はGPCにより次の条件で測定される。
(GPC測定条件)
装置:HLC−8120GPC(TOSOH社製)
分離カラム:TSKgel Super HM−H/H4000/H3000/H2000、6.0mmI.D.×150mm
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
検出器:示差屈折計
流速:0.6ml/min
試料濃度:3g/l THF
注入量:20μl
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用し、樹脂全体の分子量、分子量分布等を求める。
【0035】
本発明において、ワックスの溶融粘度はブルックフィールド型粘度計を用い、140℃の値を測定する。また、ワックスの結晶化度はX線回折法により、次の条件で測定される。
X線:Cu−Kα線(グラファイトモノクロメータにより単色化)
波長λ=1.5406オングストローム
出力 40kV、40mA
光学系:反射法、スリットDS、SS=1°、RS=0.3mm
測定範囲:2θ=10°〜35°
ステップ間隔:0.02°
走査速度:2θ/θ連続スキャン1.00°/分
以上の条件で測定し、試料のX線回折プロファイルを3本の結晶ピークと非晶散乱に分離し、それらの面積から下式により結晶化度を算出する。
結晶化度(%)=Ic/(Ic+Ia)×100
Ic:各結晶ピーク面積の和
Ia:各結晶ピーク面積の和+非晶散乱面積
一方、DSC測定ではワックス、又はトナーの熱のやり取りを測定し、その挙動を観測するので、測定原理から超高感度の熱流束型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。例えば、TAインスツルメンツ社製の2910が使用できる。測定条件としては、ワックスまたはトナーを約5mg計量してDSCに載置し、1分間に50mlの窒素ガスを吹き込み、20℃から160℃の間を1分間あたり10℃の割合で昇温させ、次に160℃から20℃に1分間あたり10℃の割合で降温し、前履歴を取った後、再度1分間あたり10℃の割合で昇温させ、その時の図2に示すDSC吸収熱量曲線の最大ピークより、ワックスまたはトナーの吸熱ピークの最大値に対応した融点(Tmp)を求める。
【0036】
一方、トナーのガラス転移点(Tg)は、上記のDSC測定において、トナーの吸収熱量曲線を測定し、定着用樹脂に帰属される吸収熱量曲線の図2に示すショルダーよりTgを求めることができる。
【0037】
本発明において、トナーの溶融開始温度(Tfb)は、定荷重押出し形細管式レオメータ(島津製作所製フローテスタCFT−500C形)を用い、昇温法で図3に示すピストンストロークの流動過程より溶融開始温度を測定し、Tfbとする。この際、フローテスタの測定条件は、荷重20kgf/cm2、ダイ径1mm、ダイ長さ10mm、昇温速度6℃/分とする。
【0038】
本発明のトナーにおいて、炭化水素系ワックスの添加量は、ワックス総量において、定着用樹脂に対し0.5〜20wt%添加することが好ましい。0.5wt%未満ではトナーの定着性能を改良する効果が少なくなり、20wt%を越えるとトナーの耐久性が低下し、高温オフセットも発生し易くなる。また、他のワックス類を併用しても構わないが、本発明の炭化水素系ワックスの性能が損なわれない様に注意して用いる必要がある。
【0039】
本発明の定着用樹脂に使用されるビニル系共重合体としては、その構成単位として、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含み、これ以外のビニル系単量体を含むことができる。
【0040】
本発明におけるスチレン系単量体の具体例としては、スチレンの他にo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−ter−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等を挙げることができる。
【0041】
本発明におけるアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類の他、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ビスグリシジル、ジメタクリ酸ポリエチレングリコール、メタクリロキシエチルホスフェート等を挙げることができ、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどが特に好ましく用いれれる。
【0042】
本発明におけるその他のビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸及び又はそのα−あるいはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体及びジエステル誘導体、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、コハク酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等を挙げることができる。
【0043】
本発明における定着用樹脂は、これらビニル系共重合体をそのまま用い得るが、これらビニル系単量体を用いて、本発明の炭化水素系ワックスを共存させる共存重合を合成の全部又は一部の過程で行うことにより、ワックスを均一に分散させたビニル系共重合体を少なくともその構成要素として含むことができる。なお、ビニル系共重合体は主として2個以上の重合可能な二重結合を有する単量体、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等の架橋剤で一部、架橋されていても良い。
【0044】
本発明のトナーには帯電制御剤をトナー粒子に配合(内部添加)、もしくは混合(外部添加)して用いることにより、トナーの帯電量を所望の値に制御することができる。
【0045】
トナーの正帯電制御剤としては、ニグロシン及びその脂肪酸等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類;これらの単独或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ニグロシン系、四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系染料の如き帯電制御剤が特に好ましく用いられる。
【0046】
トナーの負帯電制御剤としては、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類がある。
【0047】
これらの帯電制御剤をトナーに内部添加する場合、定着用樹脂に対して0.1〜10wt%添加することが好ましい。
【0048】
本発明のトナーにおいては、現像性、流動性、帯電安定性、耐久性向上のため、シリカ微粉末を外部添加することが好ましい。
【0049】
本発明に用いられるシリカ微粉末は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上のものが好ましく、トナーに対して0.01〜5wt%の範囲で外部添加する。また、必要に応じてシリカ微粉末を各種有機ケイ素化合物等の処理剤、あるいは種々の処理剤で疎水化、もしくは帯電性を制御して用いられる。
【0050】
更に、トナーへの他の添加剤としては、例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリ沸化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末、中でもポリ沸化ビニリデンが好ましい。或いは酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。或いは例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末の如き流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。凝集防止剤、或いは例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化アンチモン粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤、また、逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0051】
本発明のトナーは、二成分系現像剤として用いる場合には、キャリアと混合して用いられる。この場合、トナーとキャリアとの混合比はトナー濃度として2〜10wt%が好ましい。
【0052】
本発明に用い得るキャリアとしては、公知のものが使用可能であり、例えば鉄粉、フェライト、マグネタイト、ガラスビーズ及びこれらの表面をフッ素系樹脂、ビニル系樹脂或いはシリコーン系樹脂等でコートしたものが用いられる。
【0053】
本発明のトナーは通常はトナーとキャリアからなる二成分現像剤として用いられるが、トナーに更に磁性材料を含有させ磁性トナーとして一成分現像剤としても用いられる。この場合、磁性材料は着色剤の役割を兼ねることができる。本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトの酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のアルムニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
【0054】
これら磁性体は平均粒径が2μm以下、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが好ましく、トナー中に含有させる量としては、定着用樹脂に対し、30〜70wt%が良い。
【0055】
本発明のトナーに使用し得る着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が挙げられる。トナーの着色剤としては、例えば顔料としてカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルーがある。これらは定着画像の光学濃度を維持するのに必要十分な量が用いられ、好ましくは樹脂に対し0.2〜15wt%添加する。
【0056】
更に同様の目的で染料が用いられる。例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、これらは樹脂に対し0.2〜15wt%添加する。
【0057】
本発明における静電荷像現像用トナーを作製するには、定着用樹脂、炭化水素系ワックス、及び/又は本発明の炭化水素系ワックスを共存重合により均一に分散したワックスを含む定着用樹脂、帯電制御剤、着色剤としての顔料または染料、磁性粉、更に必要に応じて他のワックスや添加剤をヘンシェルミキサー、スーパーミキサーの如き混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダ、エクストルーダーの如き熱溶融混練機を用いて溶融混練して素材類を十分に混合せしめた後、冷却固化後微粉砕及び分級を行って平均粒径が5〜10μmのトナーを得る。更に、必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサーの如き混合機によりトナーの表面に付着混合せしめ、添加剤を外部添加したトナーを得ることができる。
【0058】
本発明のトナーは、静電荷保持部材上に形成された静電荷潜像をトナーとキャリアから構成される二成分現像剤を用いて顕像化し、顕像化したトナー像を記録媒体上に転写し、静電荷保持部材上に残留したトナー像を清掃すると共に、記録媒体上に転写したトナー像を定着して記録画像を得る静電像記録工程において、特に良好な定着性能を示し、トナーの耐熱性、耐久性、保存安定性、流動性も良好で、トナーによるキャリアスペントによる現像剤寿命の低下、及びトナーによる感光体フィルミングによる感光体寿命の低下が起こりにくく、安定した静電トナー像作製方法を提供することができる。
【0059】
以下、本発明の実施例について説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
スチレン90重量部、アクリル酸n−ブチル10重量部よりなる重量平均分子量が約30万のスチレン−アクリル系共重合体樹脂86wt%、クロム含金属染料(オリエント化学工業社製 商品名:ボントロンS−34)1wt%、カーボンブラック(三菱化学社製 商品名:MA−100)8wt%、炭化水素系ワックスA(ヤスハラケミカル社製 商品名:ネオワックスAL)4wt%、炭化水素系ワックスB(東洋ペトロライト社製 商品名:PW655)1wt%の配合からなるトナー原料をスーパーミキサーで予備混合し、二軸混練機で熱溶融混練後、ジェットミルで粉砕し、その後、乾式気流分級機で分級して平均粒径が約9μmの粒子を得た。更に前記粒子に疎水性シリカ(日本アエロジル社製 商品名:アエロジルR972)0.8wt%を添加し、ヘンシェルミキサーで攪拌し、前記粒子の表面に疎水性シリカを付着させ本発明のトナーを得た。
【0060】
前記炭化水素系ワックスAは中低圧法ポリエチレン低重合物の精製品で、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は1.71、140℃における溶融粘度は8.5mPa・s、DSCの吸収熱量ピークは83℃に融点を有し、X線回折法による結晶化度は83%である。また、前記炭化水素系ワックスBは完全飽和のエチレンホモポリマーであり、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は1.20、140℃における溶融粘度は6.0mPa・s、DSCの吸収熱量ピークは93℃に融点を有し、X線回折法による結晶化度は93%である。
【0061】
前記トナーの溶融開始温度(Tfb)は103℃、トナーのワックス成分のDSCにおける吸収熱量曲線の最大値に対応した融点(Tmp)は85℃、トナーのガラス転移点は52℃であった。
【0062】
上記トナーをOPCを感光体として用いた電子写真方式のレーザビームプリンタに適用し、OPCの帯電電位−650V、残留電位−50V、現像バイアス電位−400V、現像部コントラスト電位350Vで、毎分60枚の印刷速度(印刷プロセス速度26.7cm/sec)で画像作製を行った。現像機には、キャリアとして、導電剤含有シリコーン系樹脂でコートした重量平均粒径が100μmのマグネタイトキャリア(電気抵抗4.1×108Ω・cm)を使用し、トナー濃度2.5wt%で現像剤を調製し、磁気ブラシ現像法で現像ギャップ(感光体と現像ロールスリーブ間の距離)を0.8mmとし、感光体と現像ロールを同方向で移動し、両者の周速比(現像ロール/感光体)を3とし、反転現像で画像を作製した。
【0063】
定着機は、アルミニウム製芯金をフッ素樹脂(テトラフルオロエチレン〜パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体:PFA)のチューブで薄く被覆し(厚さ40μm)、中心部にヒータランプを設置したものを熱ロールとし、アルミニウム製芯金にゴム硬度約30度のシリコーンゴム層(厚さ7mm)を設置し、最外層をPFAチューブで被覆したものをバックアップロールとし、定着条件は、プロセス速度26.7cm/sec、熱ロールとバックアップロールの外径φ60mm、押し付け荷重50kgf、両者の接触域(ニップ)の幅約7mmとし、熱ロールの制御温度を175℃とした。なお、熱ロールにはシリコーンオイルを含浸したノーメックスペーパ巻き取りタイプの清掃機を設置した。
【0064】
上記トナーの保存性安定性をトナーを金属製シャーレに入れ、調湿剤で湿度を65%RHにコントロールしたデシケータ中に50℃で24時間放置し、トナーの凝集の程度を目視で評価した。その結果、トナーは目立った凝集を起こさず、保存安定性は良好であった。また、前記のレーザビームプリンタに適用し、連続印刷を行ったところ、良好な定着性能が得られ、30万頁の連続印刷を繰り返してもトナーによるキャリアスペントによる現像剤寿命の低下、及びトナーによる感光体フィルミングによる感光体寿命の低下が起こらず、安定した画像を得ることができた。
(実施例2)
炭化水素系ワックスBとして、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.17、140℃における溶融粘度が7.8mPa・s、DSCの吸収熱量ピークによる融点が94℃、X線回折法による結晶化度が90%の天然ガスより合成したフィッシャートロピッシュワックス(日本精蝋社製 商品名:FT−100)を用いる以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを得た。トナーの溶融開始温度(Tfb)は102℃、トナーのワックス成分のDSCにおける吸収熱量曲線の最大値に対応した融点(Tmp)は86℃、トナーのガラス転移点は52℃であった。
【0065】
上記トナーを実施例1と同様の方法で評価した結果、実施例1と同様に良好な結果を得た。
(実施例3)
炭化水素系ワックスBとして、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.36、140℃における溶融粘度が6.9mPa・s、DSCの吸収熱量ピークによる融点が80℃、X線回折法による結晶化度が90%の石炭より合成したフィッシャートロピッシュワックス(シューマン・サゾール社製 商品名:SPRAY30)を用いる以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを得た。トナーの溶融開始温度(Tfb)は102℃、トナーのワックス成分のDSCにおける吸収熱量曲線の最大値に対応した融点(Tmp)は82℃、トナーのガラス転移点は51℃であった。
【0066】
上記トナーを実施例1と同様の方法で評価した結果、実施例1と同様に良好な結果を得た。
(実施例4)
炭化水素系ワックスBとして、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.06、140℃における溶融粘度が2.6mPa・s、DSCの吸収熱量ピークによる融点が70℃、X線回折法による結晶化度が92%の合成パラフィンワックス(日本精蝋社製 商品名:HNP11)を用いる以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーを得た。トナーの溶融開始温度(Tfb)は101℃、トナーのワックス成分のDSCにおける吸収熱量曲線の最大値に対応した融点(Tmp)は81℃、トナーのガラス転移点は52℃であった。
【0067】
上記トナーを実施例1と同様の方法で評価した結果、実施例1と同様に良好な結果を得た。
(実施例5)
スチレン70重量部、メタクリル酸メチル10重量部、アクリル酸n−ブチル20重量部を重合して、分子量分布の極大値が約40万の樹脂を得た。この樹脂200gと、実施例1で使用した炭化水素系ワックスA(ヤスハラケミカル社製商品名:ネオワックスAL)45gとの混合物を、3リットルのセパラブルフラスコに入れキシレン1リットルで溶解し、気相を窒素ガスで置換した後、この系をキシレンの沸点(135〜145℃)まで加熱した。
【0068】
キシレンの環流が起きた状態で、攪拌しながら、スチレン440g、アクリル酸n−ブチル65g及び重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート30gを溶解した混合物を2.5時間かけて滴下しながら、溶液重合を行い、高分子量重合体と炭化水素系ワックスAの存在下に、低分子量の重合体成分を重合させた。滴下終了後、更にキシレンの沸騰する温度で攪拌しながら1時間熟成した。その後、系の温度を180℃まで徐々に上げながら、減圧下にキシレンを脱溶剤して、低分子量側の分子量分布のピークが約4千5百の樹脂を得た。
【0069】
この樹脂において、炭化水素系ワックスAの含有量は約6wt%であり、前記ワックスは中低圧法ポリエチレンの低重合物の精製品であり、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は1.71、140℃における溶融粘度は8.5mPa・s、DSCの吸収熱量ピークは83℃に融点を有し、X線回折法による結晶化度は83%である。
【0070】
次に、前記炭化水素系ワックスAを含有したスチレン−アクリル系共重合体樹脂89wt%、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が1.20、140℃における溶融粘度が6.0mPa・s、DSCの吸収熱量ピークが93℃に融点を有し、X線回折法による結晶化度が93%である実施例1で使用した炭化水素系ワックスB(東洋ペトロライト社製 商品名:PW655)1wt%、クロム含金属染料(オリエント化学工業社製 商品名:ボントロンS−34)1wt%、カーボンブラック(三菱化学社製 商品名:MA−100)9wt%の配合からなるトナー原料をスーパーミキサーで予備混合し、二軸混練機で熱溶融混練後、ジェットミルで微粉砕し、その後乾式気流分級機で分級して平均粒径が約9μmのトナー粒子を得た。
【0071】
更に前記粒子に疎水性シリカ(日本アエロジル社製 商品名:アエロジルR972)0.8wt%を添加し、ヘンシェルミキサーで攪拌し、前記粒子の表面に疎水性シリカを付着させ本発明のトナーを得た。トナーの溶融開始温度(Tfb)は100℃、トナーのワックス成分のDSCにおける吸収熱量曲線の最大値に対応した融点(Tmp)は82℃、トナーのガラス転移点は51℃であった。
【0072】
上記トナーを実施例1と同様の方法で評価した結果、実施例1と同様に良好な結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静電荷像記録工程の実施例。
【図2】DSC吸収熱量曲線による融点、ガラス転移点の測定例を示す説明図。
【図3】定荷重押し出し形細管式レオメータによる溶融開始温度の測定例を示す説明図。
【符号の説明】
1は帯電器、2は感光体、3は露光器、4は現像ロール、5は現像機、6は記録媒体、7は転写器、8は定着用熱ロール、9は定着用バックアップロール、10はイレーズ光源、11は清掃機である。
Claims (6)
- 少なくとも定着用樹脂及びワックスを含む静電荷像現像用トナーにおいて、前記ワックスは炭化水素系ワックスであり、その構成成分として1.5を越える重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)を有し、140℃における溶融粘度が4mPa・sを超え10mPa・s未満であり、結晶化度が75%を越え85%以下であるワックスAと、1.5以下の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)を有し、140℃における溶融粘度が0.5mPa・sを超え10mPa・s未満であり、結晶化度が85%を越え95%以下であるワックスBとを含み、前記ワックスAおよびワックスB混合系の前記静電荷像現像用トナーの示差走査熱量計により測定されるDSC曲線が、昇温時の吸収熱量曲線の前記ワックスに帰属される吸熱ピークを1〜4つ有し、前記吸熱ピークのうち最大値で定義される融点(Tmp)が81〜86℃であり、前記トナーの溶融開始温度(Tfb)は110℃未満であり且つ前記吸熱ピークの最大値で定義される融点(Tmp)より高いことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 前記定着用樹脂は、ビニル系共重合体であり、前記炭化水素系ワックスの一部もしくは全部の存在下で重合したビニル系共重合体を含有することを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナーのガラス転移点(Tg)が50℃を越えることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- 請求項1記載の静電荷像現像用トナーを用いたことを特徴とする画像作製方法。
- 前記静電荷像現像用トナーを記録媒体に定着する定着手段が接触加熱定着手段であることを特徴とする請求項4記載の画像作製方法。
- 前記記録媒体に毎分10頁以上の印刷速度で印刷することを特徴とする請求項5記載の画像作製方法。
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