JP2004221071A - 導電性組成物用炭素質材料及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】集積回路、電子部品、光学部品や各種制御部品などの広範な工業製品、配線材料や各機器との接続材料、各種機器の帯電防止材料、電磁波シールド、静電塗装等に適用することができる導電性組成物、それらを含む導電性塗料及び導電性接着剤を提供する。
【解決手段】(1)2〜500nm、アスペクト比10〜15000の気相法炭素繊維もしくは、繊維中にホウ素を0.01〜5質量%含有する気相法炭素繊維と、黒鉛質粒子及び/または非晶質炭素粒子との混合物を含み、気相法炭素繊維10〜90質量%、黒鉛質粒子0〜65質量%、非晶質炭素粒子0〜35質量%である導電性組成物用炭素質材料、(2)前記導電性組成物用炭素質材料を含む導電性組成物、その導電性組成物の製造方法、及び(3)導電性材料として前記導電性組成物を配合した導電性塗料、並びに該導電性塗料を用いた導電性塗膜並びに電子部品。
【選択図】 なし

Description

本発明は、エレクトロニクス材料に使用され、集積回路、電子部品、光学部品や各種制御部品などの広範な工業製品に、配線材料や各機器との接続材料として、あるいは各種機器の帯電防止材料、電磁波シールドとして、また、静電塗装等に適用される導電性組成物、その組成物を含む導電性塗料、及び導電性接着剤に関する。
導電性塗料、導電性接着剤には、例えば、導電性ペーストがあるが、用途により、狭義には導電性ペーストと抵抗ペーストに分けることができる。本発明は、抵抗ペーストも導電性ペーストに含めた広義の導電性ペーストに関するものである。
導電性ペーストは、主に導電材料、助剤、バインダーまたはマトリックス材料としての樹脂、溶剤から構成され、樹脂を溶剤に溶かしたワニスに、導電材料や助剤の微粒子を分散させることにより製造されている。この導電材料や助剤の分散には、3本ロール、ボールミル、ペイントシェーカーや遊星ミル等の分散混合機、解砕機や粉砕機が用いられる。導電性ペーストは、塗布後の熱処理温度により、乾燥・硬化型ペーストと焼付け型ペーストに分類することができる。
乾燥・硬化型ペーストは、常温から250℃程度の温度範囲で熱処理されて導電材料、助剤と樹脂成分の複合体が形成される。この型のペーストは、使用する樹脂を選択することにより、耐溶剤性、耐熱性、接着性、柔軟性等の特徴を持たせることができる。これに使用される代表的な樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂やポリプロピレン樹脂等が挙げられる。焼付け型ペーストは、熱処理温度が400〜1300℃程度であり、塗布した有機成分は熱処理により焼失し無機成分となる。この型のペーストに使用される樹脂は、塗布時や熱処理時の挙動を考慮して選択され、ニトロセルロース、エチルセルロース等のセルロース系樹脂やアクリル樹脂、ブチラール樹脂等が使用されている。
助剤としては、塗布時の流動性や塗布後の塗膜強度や摺動性を向上させるため、分散剤、増粘剤が用いられ、これらの例として、酸化珪素やアルミナ等が挙げられる。
溶剤は、樹脂の溶解性、導電剤の分散に必要な流動性の確保や、塗布後の熱処理による揮発性、揮発後の塗膜性状を考慮して選択する必要がある。その例として、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン等、テルピネオール等のテルペン化合物やグリコールエーテル、グリコールエステル等が挙げられる。
これら導電性ペーストの塗布方法には、スクリーン印刷法、ディスペンサー法、ディッピング法、転写法、アプリケーター法、ハケ塗り法やスプレー法があり、基板や電子素子に塗布する主な方法は、スクリーン印刷法、ディッピング法、転写法である。塗布方法に合わせて、導電性ペーストの粘度等を調整する必要がある。
導電材料は、金、白金、パラジウム、銀、銀・白金合金、銀・パラジウム合金等の貴金属の微粒子や、銅、ニッケル、アルミ、タングステン等の卑金属の微粒子が用いられる。あるいは、炭素、黒鉛、カーボンブラック、酸化ルテニウム、酸化錫、酸化タンタル等の導電性非金属微粒子が用いられる。
しかし、導電材料として金属を含有しているときは、時間の経過と共に金属が酸化、腐食等されて、導電性が低下したり、電気回路基板の変形により基板から導電塗膜が剥離し、また、金属として銀を使用した場合は高価であるという問題がある。一方、カーボン系導電性材料は、酸化、腐食等に対して安定で、経済的であるが導電性が不十分である等の問題点があった。
最近、気相法炭素繊維とカーボンブラックと熱可塑性樹脂及び/または熱硬化性樹脂を含む導電性塗料(例えば、特開平6-122785号公報(特許文献1)参照。)やホウ素含有微細炭素繊維と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含む導電性塗料(例えば、特開2001-200211号公報(特許文献2)参照。)、易黒鉛化炭素繊維を含む塗料、接着剤(例えば、特開昭61-218669号公報(特許文献3)参照。)が提案されている。
導電性塗料あるいは導電性接着剤の導電材料には、銀、金や白金を始め貴金属や銅、ニッケル等の卑金属、炭素の微粒子が用いられるが、前記の特許文献3件などの提案は、樹脂成分に対して、導電組成物に炭素繊維を混合して用いることにより導電性機能及び耐久性等の特性を向上させた導電性塗料、導電性接着剤を提供しようとするものである。
しかし、これら提案の方法においては、十分な導電性を得ようとすると、多量の炭素繊維を添加する必要があり、その結果樹脂成分との混合物の流動性が低下する。また、導電性成分として黒鉛化繊維のみを用いた場合は抵抗性に異方性が生じてしまうことが課題となっている。
特開平6−122785号公報 特開2001−200211号公報 特開昭61−218669号公報
本発明は、導電性塗料あるいは導電性接着剤において、その導電性、マイグレーションの防止、耐酸化性、経年安定性や摺動特性を向上させた導電性組成物を含む導電性塗料あるいは導電性接着剤、さらにはこれらを用いた抵抗性異方性の少ない塗膜(導電体)を提供することを目的とする。
また、本発明の導電性塗料あるいは導電性接着剤は、導電性ばかりでなく、熱伝導性にも優れる放熱性材料を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、導電材料に気相法炭素繊維、黒鉛質粒子及び/または非晶質炭素粒子を含む導電性組成物用炭素質材料、これらを含む導電性組成物、それらを含む導電性塗料及び導電性接着剤を見出した。
また、繊維中にホウ素を0.01〜5質量%含有する気相法炭素繊維と、黒鉛質粒子及び/または非晶質炭素粒子との混合物で、該炭素繊維を20質量%以上含む導電性組成物用炭素質材料、これらを含む導電組成物、それらを含む導電性塗料、導電性接着剤を見出した。
さらに、本発明の導電性塗料及び導電性接着剤は、導電性ばかりでなく熱伝導性にも優れる放熱性材料を提供し得ることをも見出した。
導電性塗料は、液状、ペースト状、または粉末状の製品を含み、流動状態(液状、融解状、空気懸濁体などの状態を含む)で物体の表面に広げると薄い膜となり、時間の経過につれてその面に固着した固体の皮膜(塗膜)となり、連続してその面を覆う。
すなわち本発明は
[1]内部に中空構造を持つ多層構造であり、外径2〜500nm、アスペクト比10〜15000の気相法炭素繊維と、黒鉛質粒子及び/または非晶質炭素粒子とを含み、これらの割合(質量%)が気相法炭素繊維10〜90%、黒鉛質粒子0〜65%、非晶質炭素粒子0〜35%であることを特徴とする導電性組成物用炭素質材料、
[2]気相法炭素繊維が、ホウ素を0.01〜5質量%含有する繊維であり、前記炭素繊維を20質量%以上含む前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[3]気相法炭素繊維が、分岐状気相法炭素繊維を含むものである前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[4]気相法炭素繊維が、コブ状気相法炭素繊維を含むものである前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[5]黒鉛質粒子または非晶質炭素粒子の平均粒径が、0.1〜100μmである前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[6]黒鉛質粒子または非晶質炭素粒子が、2000℃以上で熱処理されている前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[7]黒鉛質粒子が、ホウ素を含む前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[8]非晶質炭素粒子が、ホウ素を含む前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[9]非晶質炭素粒子が、カーボンブラックまたはガラス状炭素である前記[1]または[8]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[10]カーボンブラックが、オイルファーネスブラック、ガスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック及びケッチェンブラックからなる群から選ばれる少なくとも1種である前記[9]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[11]内部に中空構造を持つ多層構造であり、外径2〜500nm、アスペクト比10〜15000の気相法炭素繊維と黒鉛質粒子とを含み、気相法炭素繊維と黒鉛質粒子の少なくともいずれか一方がホウ素を含み、気相法炭素繊維と黒鉛質粒子の割合(質量%)が前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[12]内部に中空構造を持つ多層構造であり、外径2〜500nm、アスペクト比10〜15000の気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子とを含み、気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子の少なくともいずれか一方がホウ素を含み、気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子の割合(質量%)が気相法炭素繊維65〜93%、黒鉛質粒子7〜35%である前記[1]に記載の導電性組成物用炭素質材料、
[13]前記[1]乃至[12]のいずれか1項に記載の導電性組成物用炭素質材料、バインダーまたはマトリックス材料の樹脂成分および必要に応じ溶剤を含むことからなる導電性組成物、
[14]溶剤を除いた導電性組成物中における、気相法炭素繊維の濃度をa質量%、黒鉛質粒子の濃度をb質量%、非晶質炭素粒子の濃度をc質量%とすると、a、b、cは次式:
Figure 2004221071
を満たす範囲である前記[13]に記載の導電性組成物、
[15]前記[1]乃至[12]のいずれか1項に記載の導電性組成物用炭素質材料に樹脂成分、必要に応じて溶剤を添加し、混練することを特徴とする導電性組成物の製造方法、
[16]導電性材料として前記[13]または[14]記載の導電性組成物を含有することを特徴とする導電性塗料、
[17]導電性塗料を、導電性ペーストとして用いる前記[16]に記載の導電性塗料、
[18]前記[13]または[14]に記載の導電性組成物を含むことを特徴とする導電性接着剤、
[19]前記[18]に記載の導電性塗料を用いて形成されたことを特徴とする導電性塗膜、及び
[20]前記[16]に記載の導電性塗料および/または前記[18]に記載の導電性接着剤を用いて作製されたことを特徴とする電子部品を開発することにより上記の課題を解決した。
以下、本発明について詳細に説明する。
気相法炭素繊維:
気相法炭素繊維は、1980年代後半に研究されるようになり、炭化水素等のガスを金属触媒の存在下で気相熱分解することによって直径1000nm以下、数nmまでの炭素繊維が得られることが知られている。
例えば、ベンゼン等の有機化合物を原料とし、触媒としてのフェロセン等の有機遷移金属化合物をキャリアーガスと共に高温の反応炉に導入し、基盤上に生成させる方法(特許第1784726号)、浮遊状態で気相法炭素繊維を生成させる方法(米国特許第4572813号)、あるいは反応炉壁に成長させる方法(特許第2778434号)等が開示されている。さらにこれらの方法により得られた気相法炭素繊維をアルゴン等の不活性雰囲気下600〜1500℃で熱処理し、更に2000〜3300℃で熱処理を行うことにより黒鉛化されたものが得られる(特開平8-60444号)。
これら製造方法により、比較的細くて導電性や熱伝導性に優れ、アスペクト比の大きいフィラー材に適した炭素繊維が得られるようになり、2〜500nm程度の径で、アスペクト比10〜15000程度のものが量産化され、導電性あるいは熱伝導性フィラー材として導電性樹脂用フィラーや鉛蓄電池の添加材等に使用されるようになった。
これら気相法炭素繊維は、形状や結晶構造に特徴があり、炭素六角網面の結晶が年輪状に巻かれ積層した構造を示し、その内部には極めて細い中空部を有する繊維である。また本発明に用いる気相法炭素繊維としては例えば特開2002-266170号公報に開示されている分岐状気相法炭素繊維であっても良いし、繊維径に変動があって、コブ状部分を有する気相法炭素繊維であっても良い。
含ホウ素炭素繊維:
更に、炭素繊維自体の導電性を向上させるためには、上記の様な気相法炭素繊維に対して各種の黒鉛化触媒を用いて、炭素繊維の結晶性(黒鉛化度)を向上させる方法がある。例えば、黒鉛化触媒としてホウ素または/及びホウ素化合物を使用した場合、ホウ素、あるいはホウ素及びホウ素化合物を含有する気相法炭素繊維(含ホウ素炭素繊維)は、通常の気相法炭素繊維に比べて導電性が向上する。
気相法炭素繊維はそのまま使用しても導電性の高い炭素質材料であり、またこれを配合した導電性組成物の機械的強度の向上に効果のある材料であるが、製造したままであるときは、繊維表面に原料炭化水素、その熱分解物などが付着している可能性があり、さらには結晶性が不十分なこともしばしば存在する。そこでこの炭素繊維を2000℃、好ましくは2300℃以上に不活性雰囲気下で熱処理すると、付着熱分解物などが揮散、除去されるとともに結晶性(黒鉛化)が進み、導電性の向上を図ることができる。結晶性の向上と共に炭素繊維の導電性も向上する。さらに炭素繊維の黒鉛化を一層促進させるために熱処理の際にホウ素を共存させることが特に好ましい。
繊維中にホウ素を含有する気相法炭素繊維(含ホウ素炭素繊維)は、上記気相法炭素繊維や分岐状、コブ状気相法炭素繊維を、例えば、国際公開第00/58536号パンフレットに開示した方法で、ホウ素あるいはホウ酸、ホウ酸塩、酸化ホウ素、炭化ホウ素等のホウ素化合物とともに、アルゴン等の不活性雰囲気下2000〜3300℃で熱処理することにより得られる。
含ホウ素炭素繊維の原料微細気相法炭素繊維としては、あまり結晶の発達していないドーピングしやすい低温熱処理品、例えば1500℃以下で熱処理された繊維を用いるか、好ましくは熱処理していない製造したままの(アズグロウン)状態の気相法炭素繊維を用いる。熱処理していない結晶の未発達の繊維でもホウ素触媒を用いた処理(ホウ素化処理)時に、黒鉛化温度まで加熱処理されるので十分使用できる。含ホウ素炭素繊維原料として通常の熱処理として採用される2000℃以上の温度で黒鉛化処理された繊維を用いることもできるが、エネルギー効率の面からは前もって黒鉛化せずに熱処理していないもの、あるいは1500℃以下の温度で熱処理したものを用いてホウ素の触媒作用を働かせる方が好ましい。
含ホウ素炭素繊維の原料は取扱い易くするため、あらかじめ解砕、粉砕してもよいが、原料ホウ素またはホウ素化合物は炭素繊維と直接混合せずに別の容器に入れて熱処理してホウ素またはホウ素化合物の蒸気を発生させて炭素繊維と反応させた後に最終的に解砕、粉砕、分級等のフィラー化処理をするので、熱処理の前にフィラー等としての適正な長さにしておく必要はない。気相成長法で一般的に得られる太さ(径)2〜1000nm程度、長さ500〜400000nm程度の炭素繊維をそのまま用いることができる。
熱処理は2000℃以上の温度で行われるので、使用するホウ素またはホウ素化合物は少なくとも2000℃に達する前に分解等によっても蒸発しない物質であることが必要である。例えば、元素状ホウ素、B22、B23、B43、B45等のホウ素酸化物、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ素オキソ酸やその塩、B4C、B6C等のホウ素炭化物、BNその他のホウ素化合物を使用する。好ましくはB4C、B6C等のホウ素炭化物、元素状ホウ素がよい。
炭素繊維にホウ素を導入する方法としては、原料、すなわち固体状のホウ素またはホウ素化合物を炭素繊維に直接添加あるいは混合する方法、原料ホウ素またはホウ素化合物と炭素繊維を直接接触させずに、ホウ素またはホウ素化合物を加熱して発生させた蒸気を炭素繊維と接触させる方法があるが後者が好ましい。
炭素繊維にドーピングできるホウ素量は、一般的には0.01質量%〜5質量%である。従ってホウ素またはホウ素化合物を炭素繊維に直接接触させることなく蒸気で供給するときのホウ素またはホウ素化合物の使用量は、反応率を考慮して炭素量に対してホウ素原子換算で5質量%以上存在するように供給するのがよい。ホウ素の使用量が少ないと十分な効果が得られない。
ホウ素またはホウ素化合物を炭素繊維に直接添加あるいは混合する方法では、熱処理の段階で過剰のホウ素またはホウ素化合物が繊維上で溶融燒結して固まったり、繊維表面を被覆したりして電気抵抗を上昇させるなど、要求されるフィラー特性が失われることがある。特に製造時に使用するシードとなる遷移金属またはその化合物由来の金属成分がホウ素と容易に反応して繊維の結晶内または表面でホウ化物(ホウ化金属)になる場合は、炭素繊維にホウ素またはホウ素化合物を接触させないで行うことが好ましい。
原料の微細な炭素繊維は、3次元の立体構造を持ち、フロック形状となり易いだけでなく、嵩密度が極めて小さく空隙率が非常に大きい。しかも添加するホウ素量は少量なので、単に両者を混合しただけでは両者を均一に接触させることは難しく、炭素繊維全体に均一な触媒作用をもたらすことは困難である。
従ってホウ素の導入反応を効率よく行うには、繊維とホウ素またはホウ素化合物をよく混合し、できるだけ均一に接触させる必要がある。そのためには、ホウ素またはホウ素化合物はできるだけ粒径の小さいものを使用するのが好ましいが、繊維とホウ素またはホウ素化合物を非接触で行う方法が、炭素繊維のサイズの制限はなく、繊維のサイズが大きくても部分的に高濃度領域が発生することがなく、固結化も発生しにくい点から好ましい。
一般に、気相法による微細な炭素繊維は、嵩密度が小さく、製造されたままの集合体は約0.01g/cm3以下、これを熱処理し解砕粉砕分級した通常品は0.02〜0.08g/cm3程度である。このように多くの空隙率を持つ微細な炭素繊維を熱処理するには非常に容量の大きな熱処理炉が必要で設備コストが高くなるだけでなく、生産性も悪い。効率的な方法でホウ素を導入する方法が重要である。
ホウ素の導入反応を効率よく行うためには炭素繊維の周囲のホウ素濃度を十分に保持する必要がある。そのためには、両者を直接接触させたいが、気相法炭素繊維生成触媒金属(例えば、鉄、コバルト等)とホウ素が反応したホウ化物が過剰に残り不都合が生じる場合には、直接接触させることなく、また熱処理の過程で、濃度のかたよりがおきないようにしなければならない。
そのため、熱処理前に繊維とホウ素またはホウ素化合物が固体同士で直接接触しないように、例えば別々の容器(ルツボ等)に入れたり、ホウ素またはホウ素化合物を炭素繊維布で包むなどして、共存させ熱処理することもできるが、好ましくは高密度化し、かつその状態をできるだけ維持(固定化)して熱処理する。その好ましい方法として、熱処理前に、炭素繊維を充填した容器の中に、ホウ素またはホウ素化合物を入れた容器を入れた後、圧力を加えて圧縮し、高密度化して固定化する。
繊維とホウ素またはホウ素化合物を高密度化し、固定化する方法としては、成形法、造粒法、あるいは、混合物をルツボにいれて一定の形状に圧縮して、詰め込む方法等が挙げられる。成形法の場合、成形体の形状は円柱状、板状や直方体等何れの形状でもよい。
圧縮して成形体とした後、圧力を開放すると多少容積が膨らみ、嵩密度が下がることもあるが、その場合は圧縮時の嵩密度を圧力開放後の固定化の嵩密度が0.03g/cm3以上になるようにする。また繊維を容器に入れる場合も、処理効率を上げるために、加圧板等を用いて嵩密度が0.03g/cm3以上になるように圧縮したり、また圧縮したまま熱処理することもできる。
ホウ素を炭素の結晶内に導入するために必要な処理温度は2000℃以上、好ましくは2300℃以上である。処理温度が2000℃に満たないとホウ素と炭素との反応性が悪く、ホウ素の導入が難しい。また、ホウ素の導入を一層促進し、かつ炭素の結晶性を向上させ、特に径が約100nm程度の繊維で、炭素網面層の面間隔d002を0.3385nm以下にする必要がある場合には2300℃以上に保つことが好ましい。熱処理温度の上限は特に制限はないが、装置等の制限から3200℃程度である。
使用する熱処理炉は2000℃以上、好ましくは2300℃以上の目的とする温度が保持できる炉であればよく、アチソン炉、抵抗炉、高周波炉他の通常の何れの装置でもよい。また、粉体または成形体に直接通電して加熱する方法も使用できる。
熱処理の雰囲気は非酸化性の雰囲気、好ましくはアルゴン、ヘリウム、ネオン等の1種もしくは2種以上の希ガス雰囲気がよい。熱処理の時間は、生産性の面からは出来るだけ短い方が好ましい。長時間加熱していると燒結してくるので、製品収率も悪化する。従って、成形体等の中心部の温度が目標温度に達した後、1時間以下の保持時間で十分である。
非晶質炭素粒子:
非晶質炭素とは、炭素原子が不規則な空間配置をしたX線回折、電子回折でブロードな反射を示す炭素である。ガラス状炭素、カーボンブラック等や、熱処理温度が低くて三次元規則構造を持たず、黒鉛構造に至らない結晶性の低い炭素が挙げられる。
このうち、ほぼ95%以上の非晶質炭素からなるナノメートルサイズの微粒子で比表面積、ストラクチャー、アグリゲート(凝集体)分布などの品質が作り込まれている炭素材料であるカーボンブラックが好適に使用できる。
カーボンブラックは、製造方法、原料により種々のものが知られているが、本発明に好適に使用できるものとしては、オイルファーネスブラック、ガスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができる。これらの中でも、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックが好ましい。
本発明で使用する非晶質炭素粒子、例えば、カーボンブラックは、ストラクチャーが発達し、一次粒子径が小さく、かつ二次粒子径が大きく表面積が大きくて多孔質であることが望ましい。また、吸油量が90ml(DBP)/100g以上(JIS K 6221-1982「ゴム用カーボンブラック試験方法」に準じて測定)であることが好ましい。かくすることにより、得られる炭素質材料がストラクチャー構造を取りやすく、より高い導電性を発揮するからである。
非晶質炭素粒子の粒径(ストラクチャー基準)は、通常30〜500nm、好ましくは30〜100nmであり、BET法による比表面積の値が20〜50m2/gが好ましい。
本発明に係る導電性組成物用炭素質材料中における非晶質炭素粒子の含有量としては、通常7〜35質量%、好ましくは10〜30質量%である。
また、導電性組成物の場合の非晶質炭素粒子の含有量としては、1〜60質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。非晶質炭素粒子の含有量が1質量%未満だと、導電性組成物は十分な導電性、少ない抵抗異方性を発揮することができなくなることがあり、また、非晶質炭素粒子の含有量が60質量%以上だと、相対的に気相成長炭素繊維や黒鉛粒子の含有量が少なくなったり、あるいは樹脂成分の含有量が少なくなったりすることにより、導電性が十分に発揮されなかったりする不都合を生じることがある。
非晶質炭素(例えばカーボンブラック)はそのまま使用しても良いが、気相法炭素繊維と同様に、2000℃以上、好ましくは2300℃以上の温度での熱処理あるいはホウ素またはホウ素化合物を用いて2000℃以上、好ましくは2300℃以上の温度でのホウ素共存下における熱処理した黒鉛質粒子を超えない結晶化度を有するものを使用することができるこのような処理をした非晶質炭素は、熱処理しない非晶質炭素に比して導電性が向上し、また塗膜強度の向上した製品が得られるなど好ましい効果が期待できる。
黒鉛粒子:
本発明で使用する黒鉛質粒子は黒鉛化がそれほど進行していなくても良く、具体的にはX線格子面間隔C0値(すなわち炭素網面層の面間隔d002の2倍値)が0.685nm以下(すなわちd002が0.3425nm以下)程度まで黒鉛化が進行していれば充分である。完全な黒鉛としての理論値はC0が0.6708nm(d002が0.3354nm)であり、この値をより小さくなることはない。
黒鉛質粒子としては、天然黒鉛、人造黒鉛が使用できるが、炭素質原料を熱処理することにより黒鉛質粒子として使用することができる。
黒鉛質粒子の原料としては、炭素質粉体である天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、メソフェーズカーボン、ピッチ、木炭、樹脂炭等を使用することができるが、天然黒鉛、人造黒鉛、加熱することで黒鉛化が進み易いコークス、メソフェーズカーボン、ピッチが好適である。
形状は球形に近い方が樹脂と混練し易く、またメソフェーズカーボンを用いると流動性が向上するため樹脂成形性に優れたものが得られる。
黒鉛質粒子と非晶質炭素粒子は、予め粉砕等により最終的に必要とされる粒度に調整してもよく、熱処理後に粉砕等により調整してもよいが、予め調整してあることが望ましい。
黒鉛質粒子と非晶質炭素粒子の粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。また、微粉砕機のスクリーンミル、ターボミル、スーパーミクロンミル、ジェットミルでも条件を選定することによって使用可能である。
特性及び生産性を考慮すると、粒径は平均粒径0.1〜100μmの範囲が好ましく、さらに0.1〜80μmの範囲が好ましい。粒径については粒径が0.5μm以下及び/または80μmを超える粒子を実質的に除去し、これらの粒子が各々5質量%以下、好ましくは1質量%以下になるようにする。
熱処理工程は、平均粒径0.1〜100μmの炭素質粉体(原料粉)(黒鉛と非晶質)に対し、平均粒径0.1〜100μmのホウ素、ニッケル、コバルト、マンガン、ケイ素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、モリブデン、タングステン、ジルコニウムまたはその化合物から選ばれた少なくとも1種を、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜10質量%添加して混合した後に蓋付きの黒鉛製容器(ルツボ等)に入れる。上記化合物が0.01質量%より少量だと効果が充分でなく、10質量%より多いと効果は殆ど変わらないが、該化合物粉体や炭素質粉体が凝集する等の悪影響が出始めるため好ましくない。
熱処理後黒鉛質粒子に含まれる所望の元素を100質量ppm以上にするには、化合物粉体として1種類以上(例えば、所望の元素としてホウ素元素の場合は、ホウ素、炭化ホウ素、酸化ホウ素等)を混合して添加する方がさらに効果的である。これは熱処理時の炉内温度には多少のばらつきが生じるために、融点、沸点の異なる物質を混合しておくことによりこのばらつきの問題を小さくできるからである。
熱処理は黒鉛容器を容器ごとアルゴン、窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中で熱処理することにより行われる。熱処理のための炉は黒鉛化炉として一般的なアチソン炉や高周波誘導加熱炉等を用いることができる。加熱温度は2000℃以上で、かつ添加物質や生成したホウ化物が揮散消失しない温度に抑えることが望ましい。概ね2000〜2500℃の範囲に加熱温度を設定するのが望ましい。なお、この熱処理時に黒鉛化していない原料の黒鉛化が併せて進行するが、上記の添加物質は黒鉛化触媒としても作用するため有効である。2500℃以上、例えば2500〜3200℃に加熱すると黒鉛微粉の黒鉛化が進行する点では有利だが、熱処理装置の材質から見てこの程度の温度が上限となる。
本発明に係る導電性組成物用炭素質材料中における気相法炭素繊維と黒鉛質粒子及び/または非晶質炭素粒子の割合(質量%)は、気相法炭素繊維10〜90%好ましくは25〜60%、さらに30〜50%が好ましく、黒鉛質粒子0〜65%好ましくは0〜40%、非晶質炭素粒子0〜35%好ましくは0〜20%である。
非晶質炭素粒子を含まない、気相法炭素繊維と黒鉛質粒子を含む本発明に係る導電性組成物用炭素質材料中における気相法炭素繊維と黒鉛質粒子との割合は気相法炭素繊維35〜93%、好ましくは35〜60%、黒鉛質粒子7〜65%、好ましくは10〜40%である。
また、黒鉛質粒子を含まない、気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子を含む本発明に係る導電性組成物用炭素質材料中における気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子との割合は気相法炭素繊維35〜93%、好ましくは35〜60%、非晶質炭素粒子7〜35%、好ましくは10〜30%である。
なお、導電性塗料として体積固有抵抗が0.1Ωcm以下のものを必要とするときには、導電性組成物用炭素質材料は単なる気相法炭素繊維よりも、ホウ素含有気相法炭素繊維が好ましく、この繊維を60質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、非晶質炭素粒子及び/または黒鉛質粒子の合計が40質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20〜10質量%のものであることが必要である。
気相法炭素繊維は、中空繊維であるため熱伝導性が優れ、熱伝導性を必要とするペーストなどの用途に好適である。また気相法炭素繊維は塗膜の強度、導電性を向上させるが、これを熱処理あるいはホウ素含有気相法炭素繊維とすることにより、結晶性及び導電性が一層向上し、耐酸化性を改良し、経年変化を抑制する性能を付与することができる。
また、黒鉛質粒子及び非晶質炭素粒子は、単独で用いた場合においても濡れ性の向上、気相法炭素繊維による導電性の異方性を解消し、動摩擦抵抗が小さく摺動性に優れた塗膜を形成できる。
これらの黒鉛質粒子及び非晶質炭素粒子の炭素質物質も加熱処理あるいはホウ素化処理により気相法炭素繊維と同様に導電性の向上の効果を期待できる。黒鉛質粒子及び非晶質炭素粒子はそれぞれ単独でも上記の効果があるが、これを併用することにより、非晶質炭素粒子の不規則な鎖状に枝分かれした構造(ストラクチャー)と気相法炭素繊維との接触により電気的なネットワークを形成することで導電性を発現するのみならず、非晶質炭素粒子より導電性に優れた黒鉛質粒子を繊維状物質間の空隙に分散させることで電気的なネットワークの広がりを増すとともに、繊維状物質間の接触点の解離による導電性の低下を防ぎ、導電性の安定性等が期待できる。
樹脂成分:
本発明に係る導電性組成物においては、樹脂成分をフィラー等のバインダーあるいはマトリックスとして使用する。
使用できる樹脂成分としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン(PS)、スチレンブタジエン樹脂(SB)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチルメタクリレート(PMMA、アクリル樹脂)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、エチレンポリテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、AS樹脂(SAN)、ABS樹脂(ABS)、アイオノマー(IO)、AAS樹脂(AAS)、ACS樹脂(ACS)、ポリアセタール(POM、ポリオキシメチレン)、ポリアミド(PA、ナイロン)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリブチレンテレフタレート(PBTP)、ポリアリレート(PAR、Uポリマー)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PESF)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオキシベンゾイル(POB)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、酢酸セルロース(CAB)、酢酪酸セルロース(CAB)等がある。これらの中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチルメタクリレート、ポリテトラフロロエチレン、エチレンポリテトラフロロエチレン共重合体が好ましい。これらの熱可塑性樹脂はその一種を単独に用いても、二種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂(PF)、アミノ樹脂、ユリア樹脂(UF)、メラミン樹脂(MF)、ベンゾグアナミン樹脂、不飽和ポリエステル(UP)、エポキシ樹脂(EP)、ジアリルフタレート樹脂(アリル樹脂)(PDAP)、シリコーン(SI)、ポリウレタン(PUR)、ビニルエステル樹脂等がある。これらの中でも、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。なお、場合によっては、熱可塑性樹脂の一種またはその二種以上と熱硬化性樹脂の一種またはその二種以上を併用しても良い。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系(SBC)、ポリオレフィン系(TPO)、ウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE)、ポリアミド系(TPAE)、1,2−ポリブタジエン(PB)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、アイオノマー(IO)等がある。これらの中でも、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、アイオノマーが好ましい。なお、場合によっては、熱可塑性エラストマーの一種またはその二種以上と熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂の一種またはその二種以上を併用しても良い。
組成物:
本発明の導電性組成物における熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーの割合は、通常、20〜95質量%、好ましくは40〜65質量%である。樹脂成分の含有割合が20質量%未満だと、導電性組成物を用いて導電路を形成してもその導電路は剥離し易くなることがあり、また、95質量%以上だと十分な導電性を有しない導電性組成物になることがある。
本発明に係る導電性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の種々の添加剤を含有させることができる。
添加剤としては、可塑剤、安定剤、充填材、補強剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤等を挙げることができる。どのような添加剤を使用するかは、本発明に係る導電性組成物をどのような用途に供するかにより適宜に決定することができる。
本発明の導電性組成物は、気相法炭素繊維、非晶質炭素粒子、黒鉛質粒子と樹脂成分とを混合することにより製造することができる。混合に際しては公知の混合機を使用することができる。各成分の配合順序には特に制限はない。また、この導電性組成物を使用して導電性塗料、導電性接着剤を調製する方法についても公知の方法が使用できる。
本発明に係る導電性組成物は良好な導電性を有するので、この組成物を使用して導電性塗料及び導電性インクを形成することができる。また、この本発明の導電性組成物は樹脂成分をマトリックスとしているので成形性を有する。したがって、この導電性組成物を適宜に成形することにより、ファクシミリ電極板などの低抵抗バンド、非帯電コンベヤーベルト、医学用ゴム製品、導電タイヤ、IC収納ケース、謄写用・紡績用ロール、弾性電極、加熱用エレメント、過電流・過熱防止用素子、電磁波シールド材料、各種キーボードスイッチ、コネクター素子、スイッチ素子等の用途に展開することができる。
本発明の組成物に用いる溶剤としては、一般的に導電性塗料、導電性接着剤に用いられている溶剤を用いることができる。例えば、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、テルピネオール等のテルペン化合物やグリコールエーテル、グリコールエステル等を用いることができる。
これらの中から、使用する樹脂成分に応じて溶解性の良好なものを選択して使用する。これらはその一種を単独で使用することもできるし、またそれらの二種以上を併用することもできる。溶剤の使用量は、特に制限がなく、塗料及び接着剤を製造する際の通常の使用量で足りる。
また、塗布時の流動性や塗布後の塗膜強度や摺動性を向上させるため、分散剤、増粘剤などの助剤も一般的に導電性塗料に用いられている物を使用することができる。ワニスへの導電剤等の分散は、一般的に導電性塗料に用いられている方法により作製できる。
本発明に用いる助剤や樹脂の添加量は、用いる樹脂の特性にも依存するが、導電性塗料、導電性接着剤の導電性、粘度、流動性等の要求される性能によって決定される。
本発明の導電性組成物における、気相法炭素繊維、黒鉛質粒子、非晶質炭素粒子の溶剤を除いた導電性組成物中の気相法炭素繊維濃度をa質量%、黒鉛質粒子濃度をb質量%、非晶質炭素粒子濃度をc質量%とすると、a、b、cは次式を満たす範囲が好ましい。
Figure 2004221071
更に、導電性組成物の体積固有抵抗を向上させるためには、気相法炭素繊維にホウ素含有気相法炭素繊維を含ませることが好ましい。ホウ素含有気相法炭素繊維は高導電性炭素繊維であり、導電パスを効率良く形成させるため、その含有量は、溶剤を除いた導電性組成物中に好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜60質量%がよい。
また、気相法炭素繊維と黒鉛質粒子の混合物、または気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子の混合物を用いる場合は、気相法炭素繊維は内部に中空構造を持つ多層構造であり、外径2〜500nm、アスペクト比10〜15000であって、繊維中にホウ素を0.01〜5質量%含有する気相法炭素繊維が好ましく、導電性組成物中に該炭素繊維を20質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは25〜60質量%、さらに好ましくは30〜50質量%がよい。20質量%未満の含有量だと、気相法炭素繊維による導電性のパスが形成されず所望の導電性が得られず不都合である。
用途:
導電性塗料、導電性接着剤を使用する対象物としては、その塗膜に導電性を必要とするものであるならば特に制限がない。特に、この導電性塗料を使用し印刷配線板のような電気回路板を好適に製造することができる。
ここで、この電気回路基板の用途としては、家電用、産業用、車両用、通信情報用、航空船舶用、宇宙・兵器用、時計・写真用、玩具用などの各種の用途を挙げることができる。
これらの各種の用途に応じて、導電性塗料または導電性インクを用いた配線用電気回路は、基板の片面に形成されていても、また基板の両面に形成されていても良い。この電気回路基板は、導電性塗料を印刷法によりあるいは塗装により基板上に塗布し、必要に応じて熱や電子線で硬化し、あるいは溶剤を除去するために乾燥するなどして製造される。導電性塗料の塗膜厚は、通常5〜100μmである。
以下に本発明について代表的な例を示し、さらに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
気相法炭素繊維の作製:
特許2778434号公報に記載された方法により、平均繊維径150nm、平均繊維長20μmの気相法炭素繊維を得た。この繊維をアルゴン雰囲気下、1000℃で熱処理を行い更に2800℃で黒鉛化を行った(この気相法炭素繊維を以下、VGCF(150)と記す。)。
また、同様な方法により、平均繊維径80nm、平均繊維長20μmの気相法炭素繊維を得た。この繊維をアルゴン雰囲気下、1000℃で熱処理を行い更に2800℃で黒鉛化を行った(この気相法炭素繊維を以下、VGCF(80)と記す。)。
VGCF−Bの作製:
平均繊維径150nm、平均繊維長20μmの気相法炭素繊維をアルゴン雰囲気下、1000℃で熱処理を行い、この繊維に炭化ホウ素を2質量%添加し、2800℃で黒鉛化を行った(この気相法炭素繊維を以下、VGCF−B(150)と記す。)。
また、平均繊維径80nm、平均繊維長20μmの気相法炭素繊維をアルゴン雰囲気下、1000℃で熱処理を行い、この繊維に炭化ホウ素を2質量%添加し、2800℃で黒鉛化を行った(この気相法炭素繊維を以下、VGCF−B(80)と記す。)。
CB−Hの作製:
カーボンブラックCB(K)(アクゾ社製:ケッチェンブラックEC)をアルゴン雰囲気下、2800℃で熱処理を行った(このカーボンブラックを以下、CB−H(K)と記す。)。
CB−Bの作製:
カーボンブラック(アクゾ社製:ケッチェンブラックEC)に炭化ホウ素を2質量%添加し、アルゴン雰囲気下、2800℃で熱処理を行った(このカーボンブラックを以下、CB−B(K)と記す。)。
黒鉛質粒子−Bの作製:
UFG10(昭和電工製人造黒鉛微粉、平均粒径5μm)に平均粒径10μmに調整した炭化ホウ素を2質量%添加して混合した。この混合サンプルを黒鉛製の蓋付き容器に入れて、アルゴン雰囲気下、2800℃で熱処理を行った(この黒鉛質粒子を、以下UFG10−Bと記す。)。
実施例1:
樹脂にキシレン変性フェノキシ樹脂、溶剤にグリコールエーテルを用い、導電剤に、黒鉛質粒子(昭和電工製人造黒鉛微粉、平均粒径5μm、製品名:UFG10)、非晶質炭素粒子(アクゾ社製ケッチェンブラックEC)(CB(K)と記す。)、気相法炭素繊維(平均繊維径150nm、平均繊維長20μm)(VGCF(150と記す。)を表1に示す添加量を用いて、3本ロールにて混練りを行い導電性ペーストを得た。
このペーストを用いて、エポキシ基板に幅4mm×長さ10mmのパターンをn=5でスクリーン印刷法にて印刷し、200℃で乾燥硬化を行った。乾燥硬化後のパターンの膜厚は膜厚10μmであった。また、このパターンの体積固有抵抗を測定した。その平均値を表1に示す。
また、塗膜の付着性評価をJIS K 5400-1900「碁盤目法」に準じて行った。上記ペーストを用いて、エポキシ基板に60mm×60mmのパターンでスクリーン印刷法にて印刷し、200℃で乾燥硬化し、厚さ10μmの塗膜を得た。この塗膜の付着性をます目数100の碁盤目法にて評価し、塗膜に付けた傷の状態を観察して、評価点数10、8を「◎」、6、4を「○」、2を「△」、0を「×」として4段階で評価した。その結果を表1及び2に示す。
実施例2〜12及び比較例1〜5:
表1及び表2に示した気相法炭素繊維、黒鉛質粒子及び/または非晶質炭素粒子を用いて、実施例1と同様に導電性ペーストを作製し、それを用いて評価パターンの印刷、乾燥硬化を行い、体積固有抵抗を測定した。
Figure 2004221071
Figure 2004221071
本発明によれば、導電性塗料、導電性接着剤の導電材料に気相法炭素繊維、黒鉛質粒子、非晶質炭素粒子の混合物を用いることにより、また、繊維中にホウ素を0.01〜5質量%含有する気相法炭素繊維と、黒鉛質粒子または非晶質炭素粒子との混合物を用いることにより、導電性、耐酸化性、経年安定性や摺動特性を向上させた、抵抗性異方性の少ない導電体(塗膜等)が得られる。

Claims (20)

  1. 内部に中空構造を持つ多層構造であり、外径2〜500nm、アスペクト比10〜15000の気相法炭素繊維と、黒鉛質粒子及び/または非晶質炭素粒子とを含み、これらの割合(質量%)が気相法炭素繊維10〜90%、黒鉛質粒子0〜65%、非晶質炭素粒子0〜35%であることを特徴とする導電性組成物用炭素質材料。
  2. 気相法炭素繊維が、ホウ素を0.01〜5質量%含有する繊維であり、前記炭素繊維を20質量%以上含む請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  3. 気相法炭素繊維が、分岐状気相法炭素繊維を含むものである請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  4. 気相法炭素繊維が、コブ状気相法炭素繊維を含むものである請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  5. 黒鉛質粒子または非晶質炭素粒子の平均粒径が、0.1〜100μmである請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  6. 黒鉛質粒子または非晶質炭素粒子が、2000℃以上で熱処理されている請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  7. 黒鉛質粒子が、ホウ素を含む請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  8. 非晶質炭素粒子が、ホウ素を含む請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  9. 非晶質炭素粒子が、カーボンブラックまたはガラス状炭素である請求項1または8に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  10. カーボンブラックが、オイルファーネスブラック、ガスブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック及びケッチェンブラックからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  11. 内部に中空構造を持つ多層構造であり、外径2〜500nm、アスペクト比10〜15000の気相法炭素繊維と黒鉛質粒子とを含み、気相法炭素繊維と黒鉛質粒子の少なくともいずれか一方がホウ素を含み、気相法炭素繊維と黒鉛質粒子の割合(質量%)が気相法炭素繊維35〜93質量%、黒鉛質粒子7〜65質量%である請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  12. 内部に中空構造を持つ多層構造であり、外径2〜500nm、アスペクト比10〜15000の気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子とを含み、気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子の少なくともいずれか一方がホウ素を含み、気相法炭素繊維と非晶質炭素粒子の割合(質量%)が気相法炭素繊維65〜93質量%、非晶質炭素粒子7〜35質量%である請求項1に記載の導電性組成物用炭素質材料。
  13. 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の導電性組成物用炭素質材料、バインダーまたはマトリックス材料の樹脂成分および必要に応じ溶剤を含むことからなる導電性組成物。
  14. 溶剤を除いた導電性組成物中における、気相法炭素繊維の濃度をa質量%、黒鉛質粒子の濃度をb質量%、非晶質炭素粒子の濃度をc質量%とすると、a、b、cは次式:
    Figure 2004221071
    を満たす範囲である請求項13に記載の導電性組成物。
  15. 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の導電性組成物用炭素質材料に樹脂成分、必要に応じて溶剤を添加し、混練することを特徴とする導電性組成物の製造方法。
  16. 導電性材料として請求項13または14記載の導電性組成物を含有することを特徴とする導電性塗料。
  17. 導電性塗料を、導電性ペーストとして用いる請求項16に記載の導電性塗料。
  18. 請求項13または14に記載の導電性組成物を含むことを特徴とする導電性接着剤。
  19. 請求項18に記載の導電性塗料を用いて形成されたことを特徴とする導電性塗膜。
  20. 請求項16に記載の導電性塗料および/または請求項18に記載の導電性接着剤を用いて作製されたことを特徴とする電子部品。

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