JP2003157852A - リチウム電池用正極の製造方法およびリチウム電池用正極 - Google Patents

リチウム電池用正極の製造方法およびリチウム電池用正極

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JP2003157852A JP2001353504A JP2001353504A JP2003157852A JP 2003157852 A JP2003157852 A JP 2003157852A JP 2001353504 A JP2001353504 A JP 2001353504A JP 2001353504 A JP2001353504 A JP 2001353504A JP 2003157852 A JP2003157852 A JP 2003157852A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 活物質ペーストに水よりなる溶剤を用いても
集電体に腐食が生じないリチウム電池用正極の製造方法
および正極を提供すること。 【解決手段】 本発明のリチウム電池用正極の製造方法
および正極は、集電体が表面に活物質ペーストとの反応
を抑制するとともに電気伝導性を有する保護被膜を有す
ることを特徴とする。本発明の製造方法を用いて製造さ
れた正極は、正極活物質が均一に分散した電極となり、
リチウム電池を形成したときに、高い電池特性を発揮す
る効果を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム電池用正
極の製造方法およびリチウム電池用正極に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話や携帯ビデオカメラ等の
電気機器の電源として、高い重量エネルギー密度を持つ
ことから、リチウム電池の搭載が主流となりつつある。
このリチウム電池は、リチウムを含む正極活物質をもち
充電時にはリチウムをリチウムイオンとして放出し放電
時にはリチウムイオンを吸蔵することができる正極と、
負極活物質をもち充電時にはリチウムイオンを吸蔵し放
電時にはリチウムイオンを放出することができる負極
と、有機溶媒にリチウムが含まれる支持塩よりなる電解
質が溶解されてなる非水電解液と、から構成される。
【0003】また、このようなリチウム電池は、重量エ
ネルギー密度を向上させるために、正極および負極がシ
ート状に形成され、同じくシート状に形成されたセパレ
ータを介して、シート状の正極および負極が巻回あるい
は積層された状態で、ケース内に納められている。シー
ト状の正極および負極は、集電体となる金属箔の表面
に、活物質を含む合剤層を形成した構造をしている。
【0004】リチウム電池の正極は、LiMexOy
(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移
金属、x、yは特に限定しない)よりなる正極活物質、
カーボン等よりなる導電剤およびPVDF等よりなるバ
インダが溶剤に分散した活物質ペーストを調製し、調整
された活物質ペーストをAlよりなる集電体の表面に塗
工して合剤層を形成することで製造されている。
【0005】リチウム電池の正極の製造において、溶剤
にはNMP等の有機系の溶液が用いられていた。これに
対し、近年は、原料や取り扱いに要するコストの低減や
排出時の環境負荷への影響から、溶剤として水が使用さ
れてきている。
【0006】正極活物質のLiMexOyは、水と反応
を生じることが知られている。すなわち、水にLiMe
xOyを添加すると、結晶内のLiの離脱が生じる。こ
の反応は、結晶中のLiイオン(Li+)と水のプロト
ン(H+)とがイオン交換を生じることにより生じると
推測される。
【0007】さらに、水よりなる溶剤にLiMexOy
が分散した活物質ペーストは、Liイオンの離脱によ
り、アルカリ性を示す。アルカリ性の活物質ペースト
は、集電体と反応を生じ、集電体の腐食およびH2ガス
の発生を進行させる。
【0008】集電体と活物質ペーストとの界面でH2
スが発生すると、それによって活物質の浮き上がりを生
じる。浮き上がりの結果、活物質の見掛け体積が増加
し、単位体積あたりの重量が減少する。このように塗着
性が低下すると、塗着密度は減少することになる。
【0009】さらに、製造された電極の合剤層内には、
2ガスによる数十μm程度の内径の穴が多数生じる。
この多数の穴により合剤層の表面に割れが発生し、電極
体としての強度が低下する。また、合剤層の材料分布が
不均一になり、サイクル特性等の電池特性が劣化する。
【0010】さらに、正極の製造を合剤層の製造を短時
間で行うために、集電体の表面に塗布された活物質ペー
ストは、加熱されて乾燥されている。しかしながら、乾
燥のために加熱されることで、集電体とアルカリ性の活
物質ペーストとの反応が促進される。この結果、正極の
製造に要する時間が長くなっていた。
【0011】このような問題を解決するために、活物質
ペースト中に炭酸ガスを混合して中和する方法が、特開
平8−69791号に開示されている。
【0012】詳しくは、特開平8−69791号には、
強アルカリに対し腐食性を有する金属箔を集電体とし、
その表面にリチウムと遷移金属を主体とした複合酸化物
を主成分とする活物質層を形成した正極板と、負極板
と、この正極板と負極板との間にセパレータを介在させ
た非水電解液二次電池の製造方法において、前記正極板
は活物質と増粘材を練合させた粘性水溶液のアルカリ成
分を中和した後、このペーストを集電体表面に塗着し乾
燥したことを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法
が開示されている。
【0013】しかしながら、活物質ペースト中に炭酸ガ
スを供給して中和する方法では、LiMexOyから離
脱するLi量が多量となるという問題があった。すなわ
ち、多量のLiがLiMexOyから離脱するため、L
iMexOyの組成や結晶構造が変化し、電池特性を悪
化させるという問題があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑
みてなされたものであり、活物質ペーストに水よりなる
溶剤を用いても集電体に腐食が生じないリチウム電池用
正極の製造方法を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明者らは、活物質ペーストとの反応を抑制する保護
被膜を表面に有する集電体を用いることで上記課題を解
決できることを見出した。
【0016】すなわち、本発明のリチウム電池用正極の
製造方法は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mn
の少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)より
なる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調
製する工程と、Alよりなる集電体の表面に活物質ペー
ストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程
と、を有するリチウム電池用正極の製造方法において、
集電体は、表面に活物質ペーストとの反応を抑制すると
ともに電気伝導性を有する保護被膜を有することを特徴
とする。
【0017】本発明のリチウム電池用正極の製造方法
は、活物質ペーストが塗布される集電体の表面に保護被
膜が形成されているため、集電体と活物質ペーストとの
反応が抑制される。この結果、本発明の製造方法を用い
て製造された正極は、正極活物質が均一に分散した電極
となる。本発明の製造方法を用いて製造された正極は、
リチウム電池を形成したときに、高い電池特性を発揮す
る効果を示す。
【0018】本発明のリチウム電池用正極は、LiMe
xOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含
む遷移金属、x、y;任意)よりなる正極活物質と、水
と、を有する活物質ペーストを調製する工程と、Alよ
りなる集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥さ
せて活物質合剤層を形成する工程と、を有するリチウム
電池用正極の製造方法が施されてなるリチウム電池用正
極であって、集電体は、表面に活物質ペーストとの反応
を抑制するとともに電気伝導性を有する保護被膜を有す
ることを特徴とする。
【0019】本発明のリチウム電池用正極は、正極の製
造時に活物質ペーストと集電体とが反応を生じることが
抑えられているため、正極活物質が均一に分散してい
る。すなわち、本発明の正極は、リチウム電池を形成し
たときに、高い電池特性を発揮する効果を示す。
【0020】
【発明の実施の形態】(リチウム電池用正極の製造方
法)本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、LiM
exOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を
含む遷移金属、x、y;任意)よりなる正極活物質と、
水と、を有する活物質ペーストを調製する工程と、Al
よりなる集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥
させて活物質合剤層を形成する工程と、を有するリチウ
ム電池用正極の製造方法において、集電体は、表面に活
物質ペーストとの反応を抑制するとともに電気伝導性を
有する保護被膜を有する。
【0021】LiMexOy(Me;Ni、Co、Mn
の少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)より
なる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調
製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペー
ストが調製される。
【0022】Alよりなる集電体の表面に活物質ペース
トを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程に
より、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウ
ム電池用正極となる。
【0023】集電体は、表面に活物質ペーストとの反応
を抑制するとともに電気伝導性を有する保護被膜を有す
る。すなわち、本発明のリチウム電池用正極の製造方法
は、集電体の表面に保護被膜を有するため、活物質合剤
層を形成する工程において、集電体と活物質ペーストと
の反応が抑えられている。
【0024】また、保護被膜が活物質ペーストとの反応
を抑制するとともに電気伝導性を有することで、集電板
としての機能が発揮される。すなわち、保護被膜が電気
伝導性を有することで、本発明の製造方法で製造された
正極がリチウム電池に用いられたときに、集電体として
の機能を発揮できる。
【0025】保護被膜が厚さが0.02〜1μmの酸化
アルミニウム被膜であり、集電体と活物質合剤層とが厚
さ方向に押圧されることが好ましい。
【0026】保護被膜が酸化アルミニウム被膜よりなる
ことで、集電体の表面に容易に活物質ペーストとの反応
を抑制する保護被膜を形成することができる。
【0027】さらに、集電体と活物質合剤層とが厚さ方
向に押圧されることで、アルミニウムと正極活物質とが
接触し、集電体と正極活物質とが電気的に接続される。
すなわち、酸化アルミニウムは電気絶縁性を有するた
め、この状態では集電体として不適である。このため、
押圧することで、集電体の表面の電気絶縁性の酸化アル
ミニウム被膜が破壊され、電気伝導性が確保される。さ
らに、集電体と活物質合剤層とが厚さ方向に押圧される
ことで、活物質合剤層の密度が向上し、正極のエネルギ
ー密度が向上する。
【0028】また、酸化アルミニウム被膜の厚さが0.
02〜1μmとなることで、活物質ペーストとの反応を
抑制でき、かつ圧縮されたときに破壊される。すなわ
ち、酸化アルミニウム被膜の厚さが0.02μm未満で
は活物質ペーストとの反応を抑制することができず、1
μmを超えると集電体と活物質合剤層とが厚さ方向に押
圧されたときに酸化アルミニウム被膜が十分に破壊され
なくなり活物質合剤層で生じた電力を取り出せなくな
る。
【0029】なお、アルミニウムは、通常、大気中の酸
素との間で生成した酸化被膜を有する。この酸化被膜
は、0.01μm程度の厚さである。このため、アルミ
ニウム表面に自然に形成された酸化被膜は、十分な厚さ
が確保されていないため集電体の保護被膜としては機能
しない。
【0030】酸化アルミニウム被膜は、ベーマイト(A
23・H2O)を有することが好ましい。酸化アルミ
ニウム被膜がベーマイトを有することで、酸化アルミニ
ウム被膜が活物質ペーストとの反応を抑制することがで
きるとともに押圧されたときに破壊されるようになる。
【0031】酸化アルミニウム被膜は、集電体を水蒸気
中または水中で加熱して形成されたことが好ましい。A
lよりなる集電体を水蒸気中または水中で加熱すること
で、ベーマイトを主成分とした酸化アルミニウム被膜を
形成することができる。
【0032】なお、水蒸気中または水中での集電体の加
熱は、所望の酸化アルミニウム被膜が形成できるように
行われる。
【0033】保護被膜は、カーボン粒子とカーボン粒子
を結着するバインダと、を有することが好ましい。保護
被膜がカーボン粒子とバインダとを有することで、活物
質ペーストとの反応を抑制するとともに電気伝導性を有
する保護被膜となる。すなわち、カーボン粒子は、高い
電気伝導性、軽量および電位的に安定等の特性を有して
いるため、電気伝導性を有する保護被膜を形成できる。
また、カーボン粒子単独では、保護被膜を形成できない
ため、バインダが用いられる。バインダがカーボン粒子
を結着して保護被膜を形成しているため、集電体と活物
質ペーストと接触しなくなり、集電体と活物質ペースト
との反応が抑えられる。
【0034】まお、カーボン粒子とバインダの量は、特
に限定されるものではない。すなわち、リチウム電池を
形成したときに、正極としての機能が確保できるように
保護被膜が形成されていればよい。一般に、カーボン粒
子の含有量が増加すると、保護被膜の導電性が高くな
り、カーボン粒子の含有量が減少すると導電性が低下す
る。また、カーボン粒子の含有量が増加すると、相対的
なバインダ量が低下し、被膜が形成されなくなる。
【0035】バインダは、カーボン粒子を結着できれば
特に限定されるものではない。たとえば、リチウム電池
の正極において正極活物質を結着するバインダとして用
いられているPVDFやCMCをあげることができる。
【0036】カーボン粒子は、その種類が特に限定され
るものではない。また、カーボン粒子は、正極の活物質
合剤層に導電剤として導入されるカーボンと同種であっ
ても、別種であってもどちらでもよい。
【0037】カーボン粒子は、少なくともカーボンブラ
ック、グラファイトの1種を有することが好ましい。少
なくともカーボンブラック、グラファイトの1種を有す
ることで、保護被膜に十分な電気伝導性が確保される。
【0038】カーボン粒子とバインダとを有する保護被
膜の厚さは、一概に決定できるものではない。すなわ
ち、保護被膜の電気伝導性は保護被膜を構成するカーボ
ン粒子とバインダとの割合により決定されるため、高い
電気伝導性を有する保護被膜と低い電気伝導性を有する
保護被膜とでは、求められる厚さが異なる。
【0039】一般に、保護被膜の厚さが厚くなるほど、
組み立てられた電池のエネルギー密度が低下し、保護被
膜の厚さが薄くなると、活物質ペーストと集電体との反
応を抑制できなくなる。
【0040】保護被膜は、導電性高分子を有することが
好ましい。導電性高分子を有することで、活物質ペース
トとの反応を抑制するとともに電気伝導性を有すること
ができる。すなわち、導電性高分子は、電気伝導性を確
保しながら集電体と活物質ペーストとの接触を抑制でき
る。この導電性高分子としては、たとえば、ポリアニリ
ンをあげることができる。
【0041】導電性高分子を有する保護被膜の厚さは、
一概に決定できるものではない。すなわち、導電性高分
子により電気伝導性が異なるためである。
【0042】本発明のリチウム電池用正極の製造方法
は、集電体の表面に保護被膜を有する以外は、特に限定
されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成
する材料は、従来のリチウム電池用正極の製造に用いら
れている材料を用いることができる。
【0043】正極活物質のLiMexOy(Me;N
i、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、
y;任意)は、特に限定されるものではない。たとえ
ば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiN
iO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合
物を用いることができる。
【0044】LiMn24系、LiCoO2系、、Li
NiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電
子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質
としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好
なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さ
らに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活
物質を用いることが好ましい。
【0045】たとえば、正極活物質の水との反応性は、
LiNiO2系>LiCoO2系>LiMn24系の順で
あり、本発明の製造方法は、LiNiO2系の正極活物
質を用いたときに、特に大きな効果を発揮する。
【0046】活物質ペーストは、結着剤および/または
導電剤を有することが好ましい。活物質ペーストが結着
剤および/または導電剤を有することで、製造される正
極の特性が向上する。
【0047】結着剤は、正極活物質粒子をつなぎ止める
作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機
系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビ
ニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテト
ラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげるこ
とができる。
【0048】導電剤は、正極の電気伝導性を確保する。
導電剤としては、たとえば、カーボンブラック、アセチ
レンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上
の混合したものをあげることができる。
【0049】本発明のリチウム電池用正極の製造方法
は、活物質ペーストが塗布される集電体の表面に保護被
膜が形成されているため、集電体と活物質ペーストとの
反応が抑制される。この結果、本発明の製造方法を用い
て製造された正極は、正極活物質が均一に分散した電極
となる。本発明の製造方法を用いて製造された正極は、
リチウム電池を形成したときに、高い電池特性を発揮す
る効果を示す。
【0050】(リチウム電池用正極)本発明のリチウム
電池用正極は、LiMexOy(Me;Ni、Co、M
nの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)よ
りなる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを
調製する工程と、Alよりなる集電体の表面に活物質ペ
ーストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工
程と、を有するリチウム電池用正極の製造方法が施され
てなるリチウム電池用正極であって、集電体は、表面に
活物質ペーストとの反応を抑制するとともに電気伝導性
を有する保護被膜を有する。
【0051】本発明のリチウム電池用正極は、正極の製
造時に活物質ペーストと集電体とが反応を生じることが
抑えられているため、正極活物質が均一に分散してい
る。すなわち、本発明のリチウム電池用正極は、リチウ
ム電池を形成したときに、高い電池特性を発揮できる。
【0052】LiMexOy(Me;Ni、Co、Mn
の少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)より
なる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調
製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペー
ストが調製される。
【0053】Alよりなる集電体の表面に活物質ペース
トを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程に
より、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウ
ム電池用正極となる。
【0054】集電体は、表面に活物質ペーストとの反応
を抑制するとともに電気伝導性を有する保護被膜を有す
る。すなわち、本発明のリチウム電池用正極は、集電体
の表面に保護被膜を有するため、製造時の活物質合剤層
を形成する工程において、集電体と活物質ペーストとの
反応が抑えられている。
【0055】また、保護被膜が活物質ペーストとの反応
を抑制するとともに電気伝導性を有することで、集電板
としての機能が発揮される。すなわち、保護被膜が電気
伝導性を有することで、本発明の製造方法で製造された
正極がリチウム電池に用いられたときに、集電体として
の機能を発揮できる。
【0056】保護被膜が厚さが0.02〜1μmの酸化
アルミニウム被膜であり、集電体と活物質合剤層とが厚
さ方向に押圧されることが好ましい。
【0057】保護被膜が酸化アルミニウム被膜よりなる
ことで、集電体の表面に容易に活物質ペーストとの反応
を抑制する保護被膜を形成することができる。
【0058】さらに、集電体と活物質合剤層とが厚さ方
向に押圧されることで、アルミニウムと正極活物質とが
接触し、集電体と正極活物質とが電気的に接続される。
すなわち、酸化アルミニウムは電気絶縁性を有するた
め、この状態では集電体として不適である。このため、
押圧することで、集電体の表面の電気絶縁性の酸化アル
ミニウム被膜が破壊され、電気伝導性が確保される。さ
らに、集電体と活物質合剤層とが厚さ方向に押圧される
ことで、活物質合剤層の密度が向上し、正極のエネルギ
ー密度が向上する。
【0059】また、酸化アルミニウム被膜の厚さが0.
02〜1μmとなることで、活物質ペーストとの反応を
抑制でき、かつ圧縮されたときに破壊される。すなわ
ち、酸化アルミニウム被膜の厚さが0.02μm未満で
は活物質ペーストとの反応を抑制することができず、1
μmを超えると集電体と活物質合剤層とが厚さ方向に押
圧されたときに酸化アルミニウム被膜が十分に破壊され
なくなり活物質合剤層で生じた電力を取り出せなくな
る。
【0060】なお、アルミニウムは、通常、大気中の酸
素との間で生成した酸化被膜を有する。この酸化被膜
は、0.01μm程度の厚さである。このため、アルミ
ニウム表面に自然に形成された酸化被膜は、十分な厚さ
が確保されていないため集電体の保護被膜としては機能
しない。
【0061】酸化アルミニウム被膜は、ベーマイト(A
23・H2O)を有することが好ましい。酸化アルミ
ニウム被膜がベーマイトを有することで、酸化アルミニ
ウム被膜が活物質ペーストとの反応を抑制することがで
きるとともに押圧されたときに破壊されるようになる。
【0062】酸化アルミニウム被膜は、集電体を水蒸気
中または水中で加熱して形成されたことが好ましい。A
lよりなる集電体を水蒸気中または水中で加熱すること
で、ベーマイトを主成分とした酸化アルミニウム被膜を
形成することができる。
【0063】なお、水蒸気中または水中での集電体の加
熱は、所望の酸化アルミニウム被膜が形成できるように
行われる。
【0064】保護被膜は、カーボン粒子とカーボン粒子
を結着するバインダと、を有することが好ましい。保護
被膜がカーボン粒子とバインダとを有することで、活物
質ペーストとの反応を抑制するとともに電気伝導性を有
する保護被膜となる。すなわち、カーボン粒子は、高い
電気伝導性、軽量および電位的に安定等の特性を有して
いるため、電気伝導性を有する保護被膜を形成できる。
また、カーボン粒子単独では、保護被膜を形成できない
ため、バインダが用いられる。バインダがカーボン粒子
を結着して保護被膜を形成しているため、集電体と活物
質ペーストと接触しなくなり、集電体と活物質ペースト
との反応が抑えられる。
【0065】まお、カーボン粒子とバインダの量は、特
に限定されるものではない。すなわち、リチウム電池を
形成したときに、正極としての機能が確保できるように
保護被膜が形成されていればよい。
【0066】バインダは、カーボン粒子を結着できれば
特に限定されるものではない。たとえば、リチウム電池
の正極において正極活物質を結着するバインダとして用
いられているPVDFやCMCをあげることができる。
【0067】カーボン粒子は、その種類が特に限定され
るものではない。また、カーボン粒子は、正極の活物質
合剤層に導電剤として導入されるカーボンと同種であっ
ても、別種であってもどちらでもよい。
【0068】カーボン粒子は、少なくともカーボンブラ
ック、グラファイトの1種を有することが好ましい。少
なくともカーボンブラック、グラファイトの1種を有す
ることで、保護被膜に十分な電気伝導性が確保される。
【0069】カーボン粒子とバインダとを有する保護被
膜の厚さは、一概に決定できるものではない。すなわ
ち、保護被膜の電気伝導性は保護被膜を構成するカーボ
ン粒子とバインダとの割合により決定されるため、高い
電気伝導性を有する保護被膜と低い電気伝導性を有する
保護被膜とでは、求められる厚さが異なる。
【0070】一般に、保護被膜の厚さが厚くなるほど、
組み立てられた電池のエネルギー密度が低下し、保護被
膜の厚さが薄くなると、活物質ペーストと集電体との反
応を抑制できなくなる。
【0071】保護被膜は、導電性高分子を有することが
好ましい。導電性高分子を有することで、活物質ペース
トとの反応を抑制するとともに電気伝導性を有すること
ができる。すなわち、導電性高分子は、電気伝導性を確
保しながら集電体と活物質ペーストとの接触を抑制でき
る。この導電性高分子としては、たとえば、ポリアニリ
ンをあげることができる。
【0072】導電性高分子を有する保護被膜の厚さは、
一概に決定できるものではない。すなわち、導電性高分
子により電気伝導性が異なるためである。
【0073】本発明のリチウム電池用正極は、集電体の
表面に保護被膜を有する以外は、特に限定されるもので
はない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、
従来のリチウム電池用正極の製造に用いられている材料
を用いることができる。
【0074】正極活物質のLiMexOy(Me;N
i、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、
y;任意)は、特に限定されるものではない。たとえ
ば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiN
iO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合
物を用いることができる。
【0075】LiMn24系、LiCoO2系、、Li
NiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電
子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質
としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好
なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さ
らに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活
物質を用いることが好ましい。
【0076】たとえば、正極活物質の水との反応性は、
LiNiO2系>LiCoO2系>LiMn24系の順で
あり、本発明の製造方法は、LiNiO2系の正極活物
質を用いたときに、特に大きな効果を発揮する。
【0077】活物質ペーストは、結着剤および/または
導電剤を有することが好ましい。活物質ペーストが結着
剤および/または導電剤を有することで、製造される正
極の特性が向上する。
【0078】結着剤は、正極活物質粒子をつなぎ止める
作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機
系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビ
ニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテト
ラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげるこ
とができる。
【0079】導電剤は、正極の電気伝導性を確保する。
導電剤としては、たとえば、カーボンブラック、アセチ
レンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上
の混合したものをあげることができる。
【0080】本発明のリチウム電池用正極は、正極の製
造時に活物質ペーストと集電体とが反応を生じることが
抑えられているため、正極活物質が均一に分散してい
る。すなわち、本発明の正極は、リチウム電池を形成し
たときに、高い電池特性を発揮する効果を示す。
【0081】(リチウム電池)本発明のリチウム電池用
正極の製造方法で製造された正極および本発明のリチウ
ム電池用正極は、通常のリチウム電池用正極と同様にし
てリチウム電池を形成することができる。
【0082】すなわち、正極と負極とを電解液とともに
電池容器内に収容することで製造できる。
【0083】負極は、リチウムイオンを充電時には吸蔵
し、かつ放電時には放出することができれば、その材料
構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成の
ものを用いることができる。特に、負極活物質および結
着剤を混合して得られた合材が集電体に塗布されてなる
ものを用いることが好ましい。
【0084】負極活物質としては、特に限定されるもの
ではなく、公知の活物質を用いることができる。たとえ
ば、結晶性の高い天然黒鉛や人造黒鉛などの炭素材料、
金属リチウムやリチウム合金、スズ化合物などの金属材
料、導電性ポリマーなどをあげることができる。
【0085】結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用
を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結
着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリ
デン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフ
ルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることが
できる。
【0086】負極の集電体としては、たとえば、銅、ニ
ッケルなどを網、パンチドメタル、フォームメタルや板
状に加工した箔などを用いることができる。
【0087】電解液は、通常のリチウム二次電池に用い
られる電解液であればよく、電解質塩と非水溶媒とから
構成される。
【0088】電解質塩としては、たとえば、LiP
6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiC
l、LiBr、LiCF3SO3、LiN(CF3
22、LiC(CF3SO23、LiI、LiAlC
4、NaClO4、NaBF4、Nal等をあげること
ができ、特に、LiPF6、LiBF4、LiClO4
LiAsF6などの無機リチウム塩、LiN(SO2x
2x+1)(SO2y2y+1)で表される有機リチウム塩
をあげることができる。ここで、xおよびyは1〜4の
整数を表し、また、x+yは3〜8である。有機リチウ
ム塩としては、具体的には、LiN(SO2 CF3
(SO225)、LiN(SO2CF3)(SO2
3 7)、LiN(SO2CF3)(SO249)、Li
N(SO225)(SO2 25)、LiN(SO22
5)(SO237)、LiN(SO225)(SO2
49)等があげられる。なかでも、LiN(SO2
3 )(SO249)、LiN(SO225)(SO
225)などを電解質に使用すると、電気特性に優れ
るので好ましい。
【0089】なお、この電解質塩は、電解液中での濃度
が、0.5〜2mol/dm3となるように溶解してい
ることが好ましい。電解液中の濃度が0.5mol/d
3未満となると十分な電流密度が得られないことがあ
り、2mol/dm3を超えると粘度が増加し、電解液
の導電性の低下を生じるようになるためである。
【0090】電解質塩が溶解する有機溶媒としては、通
常のリチウム二次電池の非水電解液に用いられる有機溶
媒であれば特に限定されず、例えば、カーボネート化合
物、ラクトン化合物、エーテル化合物、スルホラン化合
物、ジオキソラン化合物、ケトン化合物、ニトリル化合
物、ハロゲン化炭化水素化合物等をあげることができ
る。詳しくは、ジメチルカーボネート、メチルエチルカ
ーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネ
ート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジ
メチルカーボネート、プロピレングリコールジメチルカ
ーボネート、エチレングリコールジエチルカーボネー
ト、ビニレンカーボネート等のカーボネート類、γ−ブ
チルラクトン等のラクトン類、ジメトキシエタン、テト
ラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テト
ラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル
類、スルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホラン
類、1,3−ジオキソラン等のジオキソラン類、4−メ
チル−2−ペンタノン等のケトン類、アセトニトリル、
ピロピオニトリル、バレロニトリル、ベンソニトリル等
のニトリル類、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化
炭化水素類、その他のメチルフォルメート、ジメチルホ
ルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキ
シド等をあげることができる。さらに、これらの混合物
であってもよい。
【0091】これらの有機溶媒のうち、特に、カーボネ
ート類からなる群より選ばれた一種以上の非水溶媒が、
電解質の溶解性、誘電率および粘度において優れている
ので、好ましい。
【0092】正極を用いて形成されるリチウム電池は、
その形状が特に限定されるものではなく、たとえば、シ
ート型、コイン型、円筒型、角型など、種々の形状の電
池として使用できる。好ましくは、正極および負極がシ
ート状に形成され、シート状のセパレータを介した状態
で巻回された巻回型電極体であることが好ましい。さら
に、体積効率に優れることから扁平形状巻回型電極体で
あることがより好ましい。
【0093】セパレータについても、通常のリチウム二
次電池に用いられるセパレータであれば特に限定され
ず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等よりなる
多孔質樹脂をあげることができる。
【0094】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0095】本発明の実施例として、リチウム電池用正
極を製造した。
【0096】(実施例1) (正極の製造)正極集電体のアルミニウム箔の表面に酸
化アルミニウム被膜を形成した。正極集電体に用いられ
たAl箔は、1N30−H材(Al:99.3%以上)
よりなり、厚さが15μmのAl箔が用いられた。な
お、このAl箔は、大気中の酸素により生じた厚さ0.
01μmの酸化被膜を表面に有する。
【0097】まず、Al箔を純水中に浸漬した。つづい
て、Al箔が浸漬した状態で、純水を80℃に加熱し
た。1時間経過した後にAl箔を取り出した。取り出さ
れたAl箔は、表面に0.2μmの酸化アルミニウム被
膜が形成されていた。
【0098】つづいて、活物質ペーストを調製した。L
iNi0.81Co0.16Al0.032よりなる正極活物質が
87wt%、導電剤のカーボンブラック10wt%、増
粘剤としても機能する結着剤として2wt%のカルボキ
シメチルセルロース(CMC)、結着剤のポリテトラフ
ルオロエチレン(PTFE)が1wt%を純水中に投入
し、ホモジナイザ式の混練機を用いて混練した。ここ
で、調製された活物質ペーストは、pHが11.9であ
った。
【0099】調製された活物質ペーストは、コンマコー
タにてAl箔表面上に片面あたり目付量6.4mg/c
2で一方の表面に塗布された。その後、80℃に加熱
して乾燥させた後に、3ton/cm2の圧力でプレス
成形を行って活物質合剤層を形成した。このプレス成形
により、活物質合剤層の密度が上昇するとともに、Al
箔の表面の酸化アルミニウム被膜が破壊された。
【0100】以上の手段により、実施例1のリチウム電
池用正極が製造された。
【0101】ここで、実施例1のリチウム電池用正極の
活物質合剤層の表面の写真を撮影し、図1に示した。な
お、この写真は、活物質ペーストがAl箔の表面に塗
布、乾燥された状態で撮影された。すなわち、圧縮され
る前の活物質合剤層の表面を撮影した。
【0102】図1より、活物質合剤層の表面には、H2
ガスによる細孔が見られず、均一に正極活物質が分布し
ていることが確認された。
【0103】(実施例2)実施例2は、活物質ペースト
の塗布後の乾燥を150℃で行った以外は、実施例1と
同様に製造されたリチウム電池用正極である。
【0104】実施例2のリチウム電池用正極の活物質合
剤層の表面の観察を実施例1と同様に行った。その結
果、実施例2のリチウム電池用正極の活物質合剤層の表
面にもH2ガスによる細孔が確認されなかった。すなわ
ち、実施例2より、Al箔の表面に酸化アルミニウム被
膜をもうけることで、アルミニウムの腐食が促進される
150℃の高温で乾燥を行っても、実施例1のリチウム
電池用正極と同様に、腐食の進行が抑えられることがわ
かる。
【0105】(比較例1)比較例1は、酸化被膜を形成
しないAl箔を正極集電体として用いた以外は、実施例
1と同様に製造されたリチウム電池用正極である。
【0106】なお、比較例1のリチウム電池用正極の正
極集電体として用いられた酸化被膜を形成しないAl箔
は、0.01μmの酸化被膜が大気中の酸素により形成
されていた。
【0107】実施例1と同様に、比較例1のリチウム電
池用正極の活物質合剤層の表面の写真を撮影し、図2に
示した。なお、この写真は、実施例1と同様に、圧縮さ
れる前の活物質合剤層の表面を撮影した。
【0108】図2より、比較例1のリチウム電池用正極
の表面には、10〜50μm程度の穴が多数確認され
た。また、比較例1のリチウム電池用正極は、正極活物
質の粒子が不均一であることも確認された。
【0109】(評価)実施例1および比較例1のリチウ
ム電池用正極の評価として、リチウム電池用正極を用い
たコイン型リチウム電池を製造し、サイクル特性を測定
した。ここで、製造されたコイン型電池を図3に示し
た。
【0110】(リチウム電池の製造)リチウム電池用正
極は、直径14mmの円形に打ち抜かれて形成された。
【0111】負極は、直径15mmの円盤状の金属リチ
ウムが用いられた。
【0112】電解液は、エチレンカーボネートとジエチ
レンカーボネートとの等体積混合溶媒に、電解質塩とし
てLiPF6を電解液中での濃度が1mol/dm3とな
るように溶解して調整された。
【0113】リチウム電池用正極2および負極3は、正
極ケース51とリチウム電池用正極2のAl箔が、負極
ケース52と負極3とが当接した状態でケース5に溶接
して固定された。
【0114】その後、正極ケース51および負極ケース
52は、正極2および負極3の間に厚さ25μmのポリ
エチレン製の微多孔質フィルムよりなるセパレータ6を
介した状態で、正極ケース51および負極ケース52を
嵌合し、接合した。このとき、正極ケース51および負
極ケース52は、ポリプロピレンよりなるガスケット7
を介して、内部に非水電解液4を満たした状態で接合さ
れた。
【0115】以上の手順により実施例のコイン型電池1
は製造された。
【0116】(サイクル特性の測定)サイクル特性の測
定は、以下の手段により行われた。
【0117】まず、5サイクル目まで室温で4.2V、
1mA/cm2、3時間の定電流定電圧による充電を行
った後に、1mA/cm2の定電流で終止電圧を3Vと
した放電を行った。
【0118】つづいて、電池を60℃の恒温槽内に保持
し、定電流充電(電流:2C、電圧:4.2V)、定電
流放電(電流:2C、電圧:3Vまで)で50サイクル
の充放電を行った。
【0119】実施例1および比較例1のリチウム電池用
正極を用いた電池のサイクル特性の測定結果を図4に示
した。
【0120】図4より、実施例1の電池は、50サイク
ル後の電池容量が初期容量の90%以上の容量を維持し
ていることがわかる。すなわち、高いサイクル特性を有
している。
【0121】これに対して、比較例1の電池は、50サ
イクル後の容量が初期容量の70%程度に低下した。こ
のことは、正極合剤層内での正極活物質の分布が不均一
となっているため、正極内での反応が不均一になり、局
所的な電流の集中による副反応の発生およびマイクロシ
ョートの発生が起こったものと解釈される。
【0122】(実施例3)実施例3は、純水中でのAl
箔の加熱温度を90℃とした以外は実施例1と同様に製
造されたリチウム電池用正極である。
【0123】なお、純水中の90℃での加熱によりAl
箔の表面に形成された酸化アルミニウム被膜は、約0.
8μmであった。
【0124】実施例3のリチウム電池用正極の活物質合
剤層の表面の観察を実施例1と同様に行った。その結
果、実施例3のリチウム電池用正極の活物質合剤層の表
面にもH2ガスによる細孔が確認されなかった。
【0125】すなわち、Al箔の表面に厚さが0.8μ
mの酸化アルミニウム被膜をもうけることで、実施例1
のリチウム電池用正極と同様に、活物質ペーストの塗工
時および乾燥時にAl箔の腐食が抑えられることがわか
る。
【0126】(比較例2)比較例2は、純水中でのAl
箔の加熱温度を100℃とした以外は実施例1と同様に
製造されたリチウム電池用正極である。
【0127】なお、純水中の100℃での加熱によりA
l箔の表面に形成された酸化アルミニウム被膜は、約
1.2μmであった。
【0128】比較例2のリチウム電池用正極の活物質合
剤層の表面の観察を実施例1と同様に行った。その結
果、比較例2のリチウム電池用正極の活物質合剤層の表
面にもH2ガスによる細孔が確認されなかった。
【0129】すなわち、Al箔の表面に厚さが1.2μ
mの酸化アルミニウム被膜をもうけることで、比較例2
のリチウム電池用正極と同様に、活物質ペーストの塗工
時および乾燥時にAl箔の腐食が抑えられることがわか
る。
【0130】(評価)実施例3および比較例2のリチウ
ム電池用正極の評価として、実施例1と同様にコイン型
電池を作製し、内部抵抗およびサイクル特性の測定を行
った。
【0131】内部抵抗の測定は、まず、充電電流1.5
mAで3.75Vまで2時間でCC−CV充電を行っ
た。その後、0.5mAで10秒間放電、0.5mAで
10秒間充電、1mAで10秒間放電、1mAで10秒
間充電1.5mAで10秒間放電、1.5mAで10秒
間充電、3mAで10秒間放電、3mAで10秒間充
電、4.5mAで10秒間放電、4.5mAで10秒間
充電し、各放電後、充放電後の電圧を縦軸に充放電電流
を横軸にとった電流−電圧プロット値の近似一次直線の
傾きから内部抵抗値を求めた。ここで、実施例1の電池
の内部抵抗も同時に測定した。内部抵抗の測定結果を表
1に示した。
【0132】
【表1】
【0133】表1より、Al箔の表面に酸化アルミニウ
ム被膜を形成したリチウム電池用正極を用いた電池の内
部抵抗は、Al箔の表面に形成された酸化アルミニウム
被膜の厚さが厚くなるほど、増加している。
【0134】実施例1および3は、内部抵抗の測定値が
9mΩ、11mΩであり、リチウム電池に用いるために
十分に低い値を示した。これに対し、比較例2のリチウ
ム電池用正極を用いた電池は、内部抵抗が23mΩと大
きくなっていた。このことは、酸化アルミニウム被膜の
厚さが厚くなるほど、絶縁性の酸化アルミニウム被膜の
破壊が困難となり、抵抗値が高くなったと推測される。
【0135】また、実施例1と同様の方法によりサイク
ル特性を測定したところ、実施例3および比較例2のリ
チウム電池用正極を用いた電池は、50サイクル後にも
90%以上の容量が維持された。
【0136】以上のことから、実施例3のリチウム電池
用正極は、サイクル特性に優れるとともに、内部抵抗の
小さな電池を製造することができる。
【0137】(実施例4) (正極の製造)正極集電体のアルミニウム箔の表面にカ
ーボンを有する被膜を形成した。正極集電体に用いられ
たAl箔は、実施例1と同様な1N30−H材(Al:
99.3%以上)よりなり、厚さが15μmのAl箔で
あった。なお、このAl箔は、大気中の酸素により生じ
た厚さ0.02μmの酸化被膜を表面に有する。
【0138】まず、カーボンを有する被膜を形成するた
めのカーボン含有ペーストを調製した。このカーボンペ
ーストは、平均粒径が25nmのカーボンブラック粒子
92.5g、PVDF7.5g、を130gのN−メチ
ル−2−ピロリドン(NMP)溶液中に分散させて調製
された。ここで、カーボンブラックには、通常のリチウ
ム電池の導電剤に用いられている粉末を用いている。こ
のため、カーボンブラックは高い電気伝導性を有する。
【0139】調製されたカーボンペーストは、Al箔の
表面に塗布され、120℃で乾燥させられた。ここで、
乾燥後の被膜の厚さは、20μmであった。
【0140】以上の手段により、実施例4のリチウム電
池用正極が製造された。
【0141】(評価)実施例4のリチウム電池用正極の
評価として、実施例1と同様にサイクル特性を測定し
た。
【0142】実施例4のリチウム電池用正極を用いた電
池においても、50サイクル後の電池容量は、90%以
上で維持されていた。
【0143】
【発明の効果】本発明のリチウム電池用正極の製造方法
は、活物質ペーストが塗布される集電体の表面に保護被
膜が形成されているため、集電体と活物質ペーストとの
反応が抑制される。この結果、本発明の製造方法を用い
て製造されたリチウム電池用正極は、正極活物質が均一
に分散した電極となる。本発明の製造方法を用いて製造
されたリチウム電池用正極は、リチウム電池を形成した
ときに、高い電池特性を発揮する効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のリチウム電池用正極の活物質合剤
層の表面の写真である。
【図2】 比較例1のリチウム電池用正極の活物質合剤
層の表面の写真である。
【図3】 実施例1および比較例1のリチウム電池用正
極を用いた電池の構成を示した図である。
【図4】 実施例1および比較例1のリチウム電池用正
極を用いた電池のサイクル特性の測定結果を示した図で
ある。
【符号の説明】
1…コイン型電池 2…リチウム電池用正極 3…負極 4…電解液 51…正極ケース 52…負極ケース 6…セパレータ 7…ガスケット
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年11月27日(2001.11.
27)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山田 学 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 5H017 AA03 AS02 BB01 BB08 BB17 CC01 DD05 DD06 EE05 EE06 EE07 HH03 5H050 AA18 BA16 BA17 CA08 CA09 CB08 CB12 CB20 DA02 DA08 FA04 FA18 GA02 GA03 GA22 GA27 HA04

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 LiMexOy(Me;Ni、Co、M
    nの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)よ
    りなる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを
    調製する工程と、 Alよりなる集電体の表面に該活物質ペーストを塗布
    し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程と、を有す
    るリチウム電池用正極の製造方法において、 該集電体は、表面に該活物質ペーストとの反応を抑制す
    るとともに電気伝導性を有する保護被膜を有することを
    特徴とするリチウム電池用正極の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記保護被膜が厚さが0.02〜1μm
    の酸化アルミニウム被膜であり、 前記集電体と前記活物質合剤層とが厚さ方向に押圧され
    る請求項1記載のリチウム電池用正極の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化アルミニウム被膜は、ベーマイ
    ト(Al23・H2O)を有する請求項2記載のリチウ
    ム電池用正極の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記酸化アルミニウム被膜は、前記集電
    体を水蒸気中または水中で加熱して形成された請求項2
    記載のリチウム電池用正極の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記保護被膜は、カーボン粒子と該カー
    ボン粒子を結着するバインダと、を有する請求項1記載
    のリチウム電池用正極の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記カーボン粒子は、少なくともカーボ
    ンブラック、グラファイトの1種を有する請求項5記載
    のリチウム電池用正極の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記保護被膜は、導電性高分子を有する
    請求項1記載のリチウム電池用正極の製造方法。
  8. 【請求項8】 LiMexOy(Me;Ni、Co、M
    nの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)よ
    りなる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを
    調製する工程と、 Alよりなる集電体の表面に該活物質ペーストを塗布
    し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程と、を有す
    るリチウム電池用正極の製造方法が施されてなるリチウ
    ム電池用正極であって、 該集電体は、表面に該活物質ペーストとの反応を抑制す
    るとともに電気伝導性を有する保護被膜を有することを
    特徴とするリチウム電池用正極。
  9. 【請求項9】 前記保護被膜が厚さが0.02〜1μm
    の酸化アルミニウム被膜であり、 前記集電体と前記活物質合剤層とが厚さ方向に押圧され
    る圧縮行程が施された請求項8記載のリチウム電池用正
    極。
  10. 【請求項10】 前記酸化アルミニウム被膜は、ベーマ
    イト(Al23・H2O)を有する請求項8記載のリチ
    ウム電池用正極。
  11. 【請求項11】 前記酸化アルミニウム被膜は、前記集
    電体を水蒸気中または水中で加熱して形成された請求項
    8記載のリチウム電池用正極。
  12. 【請求項12】 前記保護被膜は、カーボン粒子と該カ
    ーボン粒子を結着するバインダと、を有する請求項8記
    載のリチウム電池用正極。
  13. 【請求項13】 前記カーボン粒子は、少なくともカー
    ボンブラック、グラファイトの1種を有する請求項12
    記載のリチウム電池用正極。
  14. 【請求項14】 前記保護被膜は、導電性高分子を有す
    る請求項8記載のリチウム電池用正極。
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