JP2016186917A - リチウム電池用正極 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウム電池用正極(特に、該正極を構成する樹脂集電体)の耐久性を向上させる手段を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体と、前記樹脂集電体上に設けられた正極活物質層と、を有するリチウム電池用正極において、前記正極活物質層と接する樹脂集電体表面に、電子伝導性層を配置したことを特徴としたリチウム電池用正極により達成される。
【選択図】図3

Description

本発明は、リチウム電池用正極に関する。
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、二次電池の開発が鋭意行われている。しかしながら、広く普及するためには電池を高性能にして、より安くする必要がある。また、電気自動車については、一充電走行距離をガソリンエンジン車に近づける必要があり、より高エネルギー密度の電池が望まれている。電池を高エネルギー密度にするためには、電池反応に直接かかわらない電池部材をできるだけ減らす必要がある。電池の集電タブや電池間接続のためのバスバーなどが節約できて、非常に体積効率がよく車載に適した電池として、双極型の二次電池が提案されている。双極型二次電池は、一枚の集電体の一方の面に正極、他方の面に負極が形成された双極型電極を用いている。そしてこの双極型電極を、電解質を含んだセパレータ(電解質層)を介して正極と負極とが向かい合うように複数積層した構造となっている。したがって、この双極型二次電池は、集電体と集電体との間の正極、負極およびセパレータ(電解質層)によって一つの単セル(単電池層)が構成されている。更に、より高性能化を目指して、集電体に導電性フィラーを分散させた樹脂マトリックスを用いた、いわゆる樹脂集電体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−190649号公報
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂集電体を用いる正極では、耐久条件を室温より少し高くすると、通常のAl集電体を用いた正極と比べて急激にサイクル劣化してしまう問題がある。
そこで、本発明は、樹脂集電体を用いた正極のサイクル劣化を改善する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、樹脂集電体を用いた電極のサイクル劣化を抑えるため鋭意研究を重ねた。その結果、樹脂集電体表面の導電性フィラーが電解液に直接触れないか、触れてもイオン伝導抵抗が大きく、樹脂マトリックスと接した導電性フィラー上での酸化副反応が起こり難く、樹脂集電体と電子的接続ができる電子伝導性層を設ければ改善されるとの知見に基づき、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明の目的は、正極活物質層と接する樹脂集電体表面に、電子伝導性層を配置した構成のリチウム電池用正極により達成できるものである。
本発明によれば、正極として、正極活物質層と接する樹脂集電体表面に、電子伝導性層を設けた構成とすることにより、該正極の耐久性を向上でき、該正極を用いた電池のサイクル寿命を大幅に改善できる。
本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態である、扁平型(積層型)の双極型でない非水電解質リチウムイオン二次電池の基本構成を示す断面概略図である。 本発明のリチウムイオン二次電池の他の実施形態である、扁平型(積層型)の双極型非水電解質リチウムイオン二次電池の基本構成を示す断面概略図である。 本発明のLi電池用正極の一実施形態を示す断面概略図である。 アセチレンブラックを20質量%含むポリプロピレンからなる樹脂集電体の表面を、上方45°方向から観察した走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。 図4の樹脂集電体上に正極活物質層を設けた従来の正極を用いた電池を、1種の加速試験として温度と上限電圧を上げた充放電条件でサイクル耐久試験を行い、100サイクル後の樹脂集電体の断面をSEMで観察した写真である。上記充放電条件は、45℃で、0.2CのCC−CVで4.3Vまで10時間充電し、0.2CのCCで3.0Vまで放電し、これを1サイクルとして、この充放電サイクルを繰り返して行った。 実施例及び比較例で作製したコインセル(ハーフセル)の充放電試験を行い、初回の放電容量に対する容量維持率の充放電サイクルに対する変化を示したグラフである。
本発明の実施形態は、ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体と、樹脂集電体上に設けられた正極活物質層とを有するLi電池用正極において、正極活物質層と接する樹脂集電体表面に、電子伝導性層を配置したことを特徴とする。かかる構成により、上記した本発明の効果を有効に発現することができるものである。ここで、樹脂集電体上に設けられた正極活物質層とは、樹脂集電体の直上ではなく、樹脂集電体上に形成された電子伝導性層を介して設けられた正極活物質層であればよい。
すなわち、本発明者らは、樹脂集電体を用いた電極のサイクル劣化を抑えるため鋭意研究を重ねた。その結果、上記樹脂集電体を用いる正極では、耐久条件を室温より少し高くすると、通常のAl集電体と比べて急激にサイクルレ劣化してしまうことが分かった。サイクル劣化した正極の樹脂集電体の断面SEM像をみると、内部にふくれているところが見えた。具体的な劣化反応メカニズムは分からないが、樹脂集電体表面の導電性フィラー(例えば、アセチレンブラック等)と樹脂と電解液が共存しているところで問題の反応が起こっていると考えられた。樹脂集電体表面の導電性フィラーと樹脂マトリックスとの接触界面付近で問題の反応が起こるためには、相手の負極との間でイオンが動かなければならない。そこで、正極活物質層と接する樹脂集電体表面に、イオンを通さないか、通しにくくて樹脂マトリックスと導電性フィラーの界面と同じ劣化反応が起こりにくい電子伝導性層を設ければ改善されるとの知見に基づき、本発明に到達したものである。即ち、樹脂集電体表面の導電性フィラーが電解液に直接触れないか、触れてもイオン伝導抵抗が大きく、樹脂と接した導電性フィラー上での酸化副反応が起こり難く、樹脂集電体と電子的接続ができる電子伝導性層を正極活物質層と接する樹脂集電体表面に配置する。かかる構成とすることにより、上記課題を解決し、本発明の目的を達成することができるものである。
まず、一実施形態によるLi電池用正極が好適に用いられるリチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本実施形態の対象となるリチウムイオン二次電池は、以下に説明する正極を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。
例えば、上記リチウムイオン二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。積層型(扁平型)電池構造(図1、2参照)を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
リチウムイオン二次電池内の電解質層の種類で区別した場合には、電解質層に非水系の電解液等の溶液電解質を用いた溶液電解質型電池、電解質層に高分子電解質を用いたポリマー電池など従来公知のいずれの電解質層のタイプにも適用し得るものである。該ポリマー電池は、さらに高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)を用いたゲル電解質型電池、高分子固体電解質(単にポリマー電解質ともいう)を用いた固体高分子(全固体)型電池に分けられる。
図1は、本発明の一実施形態の扁平型(積層型)の双極型ではない非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を模式的に表した断面概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体である電池外装材29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極と、電解質層17と、負極とを積層した構成を有している。正極は、オレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体である正極集電体11の両面に、電子的接続がされた(電気的に結合した)電子伝導性でイオン伝導性の低い電子伝導性層14と、正極活物質層13がこの順で配置された構造を有する。負極は、樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体である負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された構造を有する。具体的には、正極集電体11、電子伝導性層14及び正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15及び負極集電体12とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する正極、電解質層および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質(溶液電解質やゲル電解質等)が保持されてなる構成を有する。
なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに電子伝導性層14および正極活物質層13が配置されているが、両面に電子伝導性層14および正極活物質層13が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ電子伝導性層14および正極活物質層13を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に電子伝導性層14および正極活物質層13がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層負極集電体が位置するようにし、該最外層負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、電池外装材29の端部に挟まれるようにして電池外装材29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27はそれぞれ、必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
なお、図1に示す電池構成では、電子伝導性層14が、正極集電体11の両面に配置(形成)されているのが望ましい。これは、電子伝導性層14が、正極集電体11のいずれか一方の面(片面)のみに設けられている場合、電子伝導性層14が設けられていない正極集電体11のもう一方の面(他面)側から樹脂集電体である正極集電体11の耐久性劣化が生じる恐れがあるためである。また、図1に示す電池構成では、すべての正極集電体11に対して、電子伝導性層14が両面に設けられているが、本発明は上記形態に限定されない。即ち、積層型電池が複数の単電池層19(正極集電体11)を有する場合には、少なくとも一つの正極集電体11に対して電子伝導性層14が配置されていればよいが、好ましくは全ての正極集電体11に対して電子伝導性層14が両面に配置されるものである。
図2は、本発明の他の実施形態の扁平型(積層型)の双極型非水電解質リチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型電池」ともいう)10bの基本構成を模式的に表した断面概略図である。図2に示す双極型電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
図2に示すように、双極型電池10bの発電要素21は、複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23では、オレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体である双極型集電体11’の一方の面に電子的接続がされた(電気的に結合した)電子伝導性でイオン伝導性の低い電子伝導性層14と、正極活物質層13がこの順で配置された構造を有する。また、各双極型電極23では、上記双極型集電体11’の反対側の面に負極活物質層15が配置された構造を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質(溶液電解質やゲル電解質等)が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の(電子伝導性層14及び)正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23及び電解質層17が交互に積層される。即ち、一の双極型電極23の正極活物質層13と、一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。また図2に示す電池構成での正極は、少なくとも双極型集電体11’、電子伝導性層14、正極活物質層13を構成部材とするものである。また、負極は、少なくとも双極型集電体11’、負極活物質層15を構成部材とするものである。
隣接する双極型集電体11’、電子伝導性層14、正極活物質層13、電解質層17、負極活物質層15および双極型集電体11’は、一つの単電池層19を構成する。なお、双極型集電体11’は、その名の通り、1つの双極型集電体11’が、正極と負極の双極の集電機能を有するため、1つの単電池層19の正極を構成する双極型集電体11’が、隣接する他の単電池層19の負極を構成する双極型集電体11’にもなる。したがって、双極型電池10bは、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液(溶液電解質)の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層双極型集電体11aには、片面のみに電子伝導性層14と正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層双極型集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層双極型集電体11aの両面に、正極構成部材の電子伝導性層14、正極活物質層13と、負極構成部材の負極活物質層15が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層双極型集電体11bの両面に、負極構成部材の負極活物質層15と、正極構成部材の電子伝導性層14と正極活物質層13が形成されてもよい。
さらに、図2に示す双極型電池10bでは、正極側の最外層双極型集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層双極型集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートフィルム29から導出している。
図2に示す双極型電池10bにおいては、通常、各単電池層19の周囲にシール部31が設けられる。このシール部31は、電池内で隣り合う双極型集電体11’どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かようなシール部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型電池10bが提供されうる。
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型電池10bでは、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止する必要がある。よって、発電要素21を電池外装材であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
なお、図2の電池構成では、双極型集電体11’の正極を構成する面に電子伝導性層14が配置(形成)されていればよい。すなわち、双極型集電体11’の一方の面に電子伝導性層14及び正極活物質層13が、他方の面に負極活物質層15が、それぞれ、この順で配置(形成)されている。また、図2では、すべての双極型集電体11’に対して、電子伝導性層14が設けられているが、本発明は上記形態に限定されない。即ち双極型電池が複数の単電池層19(双極型集電体11’)を有する場合には、少なくとも一つの双極型集電体11’に対して電子伝導性層14が配置されていればよいが、好ましくは全ての双極型集電体11’に対して電子伝導性層14が配置された構成である。
図3は、本発明のLi電池用正極の一実施形態を示す断面概略図である。図3に示すLi電池用正極40は、オレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体である正極集電体(双極型集電体を含む)41、前記正極集電体41の表面上に形成される電子伝導性層42、および前記電子伝導性層42の表面上に形成される正極活物質層43を有する。なお、本明細書において、特記しない限り、正極集電体、負極集電体及び双極型集電体を一括して「集電体」と、正極、負極及び双極型電極を一括して「電極」と、正極及び負極活物質層を一括して「活物質層」とも称する。このため、例えば、「集電体」は、正極集電体、負極集電体、双極型集電体または正極及び負極集電体(更に双極集電体を含む場合もある)のいずれかを意味する。
二次電池の重量当たりの出力密度向上を目的として、特許文献1では、オレフィン系の樹脂マトリックスおよびカーボン系導電性フィラーを含む樹脂集電体を用いることが提案されている。しかしながら、この樹脂集電体を用いたLi電池用正極においては、該正極を用いた二次電池の実使用条件下で実際に生じ得る条件(例えば、45℃にて上限電位をLi対極換算で4.3Vに設定して充放電を行う条件)で容易にサイクル劣化しまうことがわかった。詳しくは通常のリチウムイオン二次電池で使用されるAlを正極集電体(双極型集電体)とした正極(双極型電極の正極を含む)に比べて急速にサイクル劣化(正極の容量が急速に減少)することが判明した。その結果、Li電池用正極の耐久性、特に該正極に用いた上記樹脂集電体の充放電サイクル耐久性が不十分であり、耐久性に問題があることがわかった。そこで、本発明者らがこの問題を詳細に検討したところ、このサイクル劣化のメカニズムはまだはっきりしないが、導電性フィラー自体は、通常のAl箔を集電体に用いた正極でも使用されているので、導電性フィラーの酸化が問題であるとは考えにくい。劣化反応は、この導電性フィラーに接したオレフィン系の樹脂マトリックス(種々の樹脂マトリックスの中でも、とりわけ電解液に対する耐久性、耐溶剤性に優れている材料)の部分が何らかの原因で、直接あるいは間接に腐食されるためと考えらえる。そこで、本発明者らは、樹脂集電体と正極活物質層との界面近傍部分について注目した。図4は、導電性フィラーとしてアセチレンブラック(AB)を20質量%含むオレフィン系のポリプロピレン(PP;樹脂マトリックス)からなる樹脂集電体の表面を、上方45°方向から観察した走査型電子顕微鏡(SEM)の写真である。図4中、白く見えているのがABであり、黒く見えているのがPPである。図4から分かるように、樹脂集電体の表面には1μm程度の凹凸があり、その凹凸の所々でABが露出しており、PP(樹脂マトリックス)が個々のABに接(背接ないし包接)しながら全面(全体)にわたって存在している。図5は、図4の樹脂集電体上に正極活物質層を設けた従来の正極を用いた電池を、1種の加速試験として温度と上限電圧を上げた充放電条件でサイクル耐久試験を行い、100サイクル後の樹脂集電体の断面を同様にSEMで観察した写真(図面)である。上記充放電条件は、45℃で、0.2CのCC−CV(定電流定電圧)で4.3Vまで10時間充電し、0.2CのCC(定電流)で3.0Vまで放電し、これを1サイクルとして、この充放電サイクルを繰り返して行った。図5に示すように、樹脂集電体内部(比較的表層部)に膨れ(亀裂)ができていることが確認できた。このような観察結果から、本発明者らは、劣化反応が樹脂集電体表面のAB(導電性フィラー)、PP(オレフィン系の樹脂マトリックス)と電解液が共存するところで活発に起こっていると推察した。
そこで、かような問題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した。その結果、上記反応を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる電子伝導性層を設ければ、サイクル劣化の問題を改善できると考えた。即ち樹脂集電体表面の導電性フィラーが電解液に直接触れないか、触れてもイオン伝導抵抗が大きく、オレフィン系樹脂と接した該フィラー上での酸化副反応を起こり難くするように、尚且つ該集電体と電子的接続ができる電子伝導性層を活物質層との間に介在させる。こうした構成(正極構造)とするにより、正極、特に樹脂集電体のサイクル耐久性を大幅に改善できることを見出したものである。電子伝導性で(イオン伝導性の低い)電子伝導性層を正極活物質層と接する樹脂集電体表面に配置することで、上記した劣化反応を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てるため、サイクル劣化の問題を改善できる。これにより、Li電池用正極の耐久性、特に該正極を構成する、ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体のサイクル耐久性を向上させることができる。なお、上記劣化メカニズム(作用機序)等は推測であり、本発明は上記によって限定されない。
以下、上記Li電池用正極を用いたリチウムイオン二次電池について、さらに詳細に説明する。なお、本形態の「Li電池用正極」は、リチウム電池が双極型電池の場合、双極型電極の正極側の構成(即ち、樹脂集電体と、前記樹脂集電体の片面に設けられる電子伝導性層と、前記電子伝導性層上に設けられた正極活物質層と、を含む構成)をいう(図2参照)。また、リチウム電池が双極型ではない電池の場合、正極の構成(正極用の樹脂集電体と、前記樹脂集電体の両面(又は片面)に設けられる電子伝導性層と、前記電子伝導性層上に設けられた正極活物質層と、を含む構成)をいう(図1参照)。
[樹脂集電体]
上記Li電池用正極及び負極(並びに双極型電極)は、ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体を有する。
(ポリオレフィン系の樹脂マトリックス)
ポリオレフィン系の樹脂マトリックスの例としては、例えば、ポリエチレン(PE)(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)等の種々のポリオレフィンやそれらの共重合体ならびに混合物が挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定であり、また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。さらに、樹脂集電体に用いられる種々の樹脂マトリックスの中でも、とりわけ使用する電解液に対する耐久性に優れている。電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
(樹脂集電体に含まれる導電性フィラー)
樹脂集電体に含まれる導電性フィラー(電子伝導性層に含まれる導電性フィラーと区別する必要上、導電性フィラーAともいう)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、樹脂集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるリチウムイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。また、導電性フィラーAは、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択されるのが好ましい。さらに、耐食性(耐酸化性)に優れるものが、電極の耐久性をより向上できる点で好ましい。
導電性フィラーAとしては、具体的には、カーボン材料(カーボン系フィラー)、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーAは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、ステンレス(SUS)等のこれらの合金材や金属酸化物が用いられてもよい。耐食性(耐酸化性)の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料、ニッケル、より好ましくはカーボン材料、ニッケルである。また、電気的安定性の観点からは、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、さらに好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボン材料である。特に好ましくはフィラー間の接触抵抗が大きくないことから、カーボン材料(カーボン系フィラー)である。また、これらの導電性フィラーAは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
上記カーボン材料(カーボン系フィラー)としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、カーボンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン、グラファイトおよびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのカーボン材料は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン材料は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン材料は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン材料を導電性フィラーAとして用いる場合には、カーボン材料の表面に疎水性処理を施すことにより電解質(溶液電解質)のなじみ性を下げ、樹脂集電体の空孔に電解質(溶液電解質)が染み込みにくい状況を作ることも可能である。さらに、耐食性(耐酸化性)に優れ、電極の耐久性をより向上できる。
導電性フィラーAの形状は、特に制限はなく、粒子状、粉末状、繊維状、板状、塊状、布状、またはメッシュ状などの公知の形状を適宜選択することができる。例えば、広範囲に亘って導電性を付与したい場合は、粒子状の導電性フィラーを使用することが好ましい。一方、特定方向への導電性をより向上させたい場合は、繊維状等の形状に一定の方向性を有するような導電性フィラーを使用することが好ましい。
導電性フィラーAの平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜1μm程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、粒子(導電性フィラーA)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。上記粒子径の定義及び平均粒子径の測定方法は、導電性フィラーA以外の他の粒子(例えば、導電性フィラーB、正極活物質、負極活物質など)にも適用し得るものである。
導電性フィラーAが繊維状である場合、その平均繊維長は特に制限されるものではないが、0.1〜100μmであることが好ましい。なお、本明細書中において、平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される繊維の繊維長の平均値として算出される値を採用するものとする。また、導電性フィラーAが繊維状である場合の、その平均直径もまた特に制限されるものではないが、0.01〜1μmであることが好ましい。このような大きさであれば、導電性フィラーAは電子伝導性層や負極活物質層表面の凹凸と有効に接触できる。このため、樹脂集電体と電子伝導性層や負極活物質層との電気的接触をより高めることができる。また、後述する電子伝導性層中の導電性フィラーBは樹脂集電体や正極活物質層表面の凹凸と有効に接触できる。このため電子伝導性層中の導電性フィラーBも電子伝導性層と樹脂集電体や正極活物質層との電気的接触をより高めることができる。また、導電性フィラーが繊維状である場合には、少量の添加でも、2次元的な(横方向の)電気的接触を増大できるため、好ましい。
樹脂集電体中のポリオレフィン系の樹脂マトリックスの含有量は、集電機能を有効に発現し、軽量化により出力密度の向上効果が図れるものであれば特に制限されないが、樹脂集電体中のポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーAとの合計量を100質量部として、好ましくは10〜95質量部であり、より好ましくは12〜90質量部である。樹脂マトリックスの含有量が上記範囲内であれば、耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性をより向上できる。
また、樹脂集電体中の導電性フィラーAの含有量も集電機能を有効に発現し、軽量化により出力密度の向上効果が図れるものであれば特に制限はない。しかしながら、導電性フィラーAの含有量は、樹脂集電体中のポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーAとの合計量を100質量部として、好ましくは5〜90質量部であり、より好ましくは10〜88質量部である。かような量の導電性フィラーAをポリオレフィン系の樹脂マトリックスに添加することにより、樹脂集電体の質量増加を抑制しつつ、樹脂集電体に十分な導電性を付与することができる。
上記樹脂集電体には、ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーAの他、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤の例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等のカルボン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。これら他の添加剤の添加量は、上記必須成分を含有する樹脂集電体としての機能(性能)等を損なわない範囲内であれば特に制限されないが、ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーAとの合計100質量部に対して、1〜25質量部が好ましい。
樹脂集電体の厚さは、電解液遮蔽性及び工程上の強度を保つことができる範囲内であればよく、好ましくは1〜200μm、より好ましくは3〜150μm、さらに好ましくは5〜100μmである。この範囲内であれば、電解液遮蔽性、工程上の強度及び導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。
樹脂集電体の抵抗値に関しては、双極型二次電池に用いる場合、双極型二次電池用の集電体に求められる膜厚方向(積層方向)の電子伝導性が十分に確保できていればよく、厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率が、10〜10−5Ω・cmの範囲であるのが好ましい。
上記した面内方向の体積抵抗率の測定方法としては、実施例で用いた測定方法である、JIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に従って測定することができる。例えば、JIS規格により所定サイズに切り出したシート(サンプル)を該JIS規格に適合する市販の抵抗測定機を用いて計測して求めることができる。
樹脂集電体の製造方法は、特に制限されず、例えば、押出機等により、ポリオレフィン系の樹脂マトリックス、導電性フィラーA、および必要に応じて添加剤の各成分を溶融混練した後、溶融混練済材料を熱プレス機により圧延する方法が挙げられる。あるいは、ポリオレフィン系の樹脂マトリックス、導電性フィラーA、および必要に応じて添加剤の各成分を成形して得ることもできる。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
なお、上記樹脂集電体は、単層構造であってもよいし、あるいはこれらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。また上記樹脂集電体は、本実施形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、上記ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーAを含む樹脂層に加えて、他の層を有していてもよい。他の層としては、例えば、導電性を有する樹脂からなる樹脂層や金属層がある。前者は、集電体の軽量化の観点から好ましい。また、後者は、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点から好ましい。但し、少なくとも、正極活物質層と接する樹脂集電体表面には、上記ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーAを含む樹脂層を用い、それ以外の部分に上記した他の層を配置してもよい。
更に本形態では、上記樹脂集電体を構成する樹脂集電体用材料として、樹脂集電体用分散剤(A)、ポリオレフィン系の樹脂マトリックス(B)及び導電性フィラーA(C)を含有するものを用いてなるものが利用できる。これら樹脂集電体用分散剤(A)及び樹脂集電体用材料は、導電性フィラーA(C)を均一に分散させた樹脂集電体を得ることができ、電池としての十分な充放電特性を発現させることができる。その結果、樹脂集電体の特徴である軽量化による電池の重量当たりの出力向上を損なうことなく、導電性フィラーAを均一に分散し、十分な充放電特性を発現できる、樹脂集電体用分散剤を含む樹脂集電体用材料を用いてなる樹脂集電体を提供することができる。
上記樹脂集電体を構成する樹脂集電体用材料のうち、ポリオレフィン系の樹脂マトリックス(B)及び導電性フィラーA(C)については、上記した通りであるので、ここでの説明は省略する。以下では、樹脂集電体用分散剤(A)を中心に説明する。
(樹脂集電体用分散剤)
本形態の樹脂集電体用分散剤(A)は、親樹脂ブロック(A1)と親導電性フィラーブロック(A2)とを有するブロック重合体からなる樹脂集電体用分散剤である。上記親樹脂ブロック(A1)は、炭素数2〜30のオレフィン(a1)を必須構成単量体とするポリマーブロックである。上記親導電性フィラーブロック(A2)は、カルボキシル基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及びイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するポリマーブロックである。
樹脂集電体用分散剤(A)において、親樹脂ブロック(A1)とは、後述する親樹脂ブロック(A1)の溶解度パラメータ(以下、SP値と略記する)とポリオレフィン系の樹脂マトリックス(B)のSP値との差の絶対値|{(B)のSP値}−{(A1)のSP値}|が小さいものを示す。
詳しくは、樹脂集電体用材料において、ポリオレフィン系の樹脂マトリックス(B)のSP値と樹脂集電体用分散剤(A)中の親樹脂ブロック(A1)のSP値との差の絶対値|{(B)のSP値}−{(A1)のSP値}|は、1.0(cal/cm1/2以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8(cal/cm1/2以下であり、特に好ましくは0.5(cal/cm1/2以下である。SP値差が1.0(cal/cm1/2以下であると、樹脂集電体中での導電性フィラーA(C)の分散性が良好となる。
SP値は、Fedors法によって計算される。SP値は、次式で表せる。
但し、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm)を表す。
また、ΔH及びVは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(151〜153頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΔH)とモル体積の合計(V)を用いることができる。
この数値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(相溶性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
親樹脂ブロック(A1)は、炭素数2〜30のオレフィン(a1)を必須構成単量体とするポリマーブロックである。
オレフィン(a1)を必須構成単量体とするポリマーブロックとしては、オレフィン(a1)の1種又は2種以上を(共)重合したポリマーブロック、及びオレフィン(a1)の1種又は2種以上と他の単量体(b1)の1種又は2種以上とを共重合したポリマーブロックが含まれる。
上記オレフィン(a1)には、炭素数(以下、Cと略記する)2〜30のアルケンが含まれ、例えば、C2〜3のもの{エチレン及びプロピレン}並びにC4〜30のα−オレフィン{1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−デセン及び1−ドデセン等}等が含まれる。
他の単量体(b1)には、オレフィン(a1)との共重合性を有するC4〜30の不飽和単量体であって、(a1)及び後述するエチレン性不飽和モノマー(a2)以外のものが含まれ、例えばスチレン及び酢酸ビニル等が含まれる。
親樹脂ブロック(A1)としては、下記(A11)〜(A14)が含まれる。
(A11)エチレンを必須構成単量体とするポリマーブロック(ポリエチレンブロック)
エチレンを必須構成単量体とするポリマーブロック(ポリエチレンブロック)としては、例えば、高、中又は低密度ポリエチレン、エチレンとC4〜30のα−オレフィン及び/又は他の単量体(b1)とを共重合したポリマーブロック等が挙げられる。
(A12)プロピレンを必須構成単量体とするポリマーブロック(ポリプロピレンブロック)
プロピレンを必須構成単量体とするポリマーブロック(ポリプロピレンブロック)としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンとC4〜30のα−オレフィン及び/又は他の単量体(b1)とを共重合したポリマーブロック等が挙げられる。
(A13)エチレン及びプロピレンを必須構成単量体とするポリマーブロック
エチレン及びプロピレンを必須構成単量体とするポリマーブロックとしては、例えば、エチレンとプロピレンとを共重合したポリマーブロック、エチレン及びプロピレンとC4〜30のα−オレフィン及び/又は(b1)とを共重合したポリマーブロック等が挙げられる。
(A14)C4〜30のオレフィンを必須構成単量体とするポリマーブロック
C4〜30のオレフィンを必須構成単量体とするポリマーブロックとしては、例えば、ポリブテン等が挙げられる。
これらのうち、電池特性の観点から、(A11)〜(A13)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとを共重合したポリマーブロック及びプロピレンと(b1)とを共重合したポリマーブロックであり、次にさらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンとプロピレンとを共重合したポリマーブロックである。
親導電性フィラーブロック(A2)には、カルボキシル基(−COOH)、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基(−CO−O−CO−)、ヒドロキシル基(−OH)、アミノ基(−NHR;Rは水素原子又は任意の置換基。アミド基及びイミド基においても同じ。)、アミド基(−NR−CO−)及びイミド基(−CO−NR−CO−)からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)を必須構成単量体とするポリマーブロックが含まれる。
上記(a2)には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a21)、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基を有するエチレン性不飽和モノマー(a22)、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a23)、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a24)、アミド基を有するエチレン性不飽和モノマー(a25)、イミド基を有するエチレン性不飽和モノマー(a26)及び上記官能基のうち2種以上の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a27)が含まれる。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a21)としては、モノカルボン酸[C3〜15、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸]、ジカルボン酸[脂肪族化合物(C4〜24のものが含まれ、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸)、芳香族化合物(C10〜24のものが含まれ、例えばジカルボキシスチレン等)及び脂環式化合物(C8〜24のものが含まれ、例えばジカルボキシシクロヘキセン及びジカルボキシシクロヘプテン等)等]、3価〜4価又はそれ以上のポリカルボン酸[脂肪族化合物(C6〜24のものが含まれ、例えばアコニット酸等)並びに脂環式(C7〜24の物が含まれ、例えばトリカルボキシシクロペンテン、トリカルボキシシクロヘキセン及びトリカルボキシシクロオクテン等]、多価カルボン酸のアルキル(C1〜18)エステル(マレイン酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノ−t−ブチルエステル、メサコン酸モノデシルエステル、ジカルボキシシクロヘプテンジドデシルエステル等)及びその塩{アルカリ金属塩及びアンモニウム塩等}等が挙げられる。
1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基を有するエチレン性不飽和モノマー(a22)としては、上記ジカルボン酸又はポリカルボン酸の無水物(C4〜24、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び無水アコニット酸等)が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a23)としては、C4〜20のものが含まれ、具体的には、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール及び2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等が挙げられる。
アミノ基を含有するエチレン性不飽和モノマー(a24)としては、C5〜15の1級又は2級アミノ基含有(メタ)アクリレート[アミノアルキル(C1〜6)(メタ)アクリレート{例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート等}及びアルキル(C1〜6)アミノアルキル(C1〜6)(メタ)アクリレート{t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等}等]、C3〜10のアミノ基含有アリル化合物[(メタ)アリルアミン及びジアリルアミン等]等が挙げられる。
アミド基を含有するエチレン性不飽和モノマー(a25)としては、C3〜30の(メタ)アクリルアミド化合物[(メタ)アクリルアミド;N−アルキル(C1〜6)(メタ)アクリルアミド{例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド等};及びN,N−ジアルキル(C1〜6)又はジアラルキル(C7〜15)(メタ)アクリルアミド{例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド及びN,N−ジベンジルアクリルアミド等}等]、上記(メタ)アクリルアミド化合物を除くC4〜20のアミド基含有ビニル化合物{例えば、メタクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、桂皮酸アミド、環状アミド(N−ビニルピロリドン、N−アリルピロリドン等)等}、4級アンモニウム基含有ビニル化合物[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及び3級アミノ基含有ビニル化合物{ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等}の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド及びジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの等)等]等が挙げられる。
イミド基を含有するエチレン性不飽和モノマー(a26)としては、C4〜24のものが含まれ、例えばマレイン酸イミド、イタコン酸イミド、シトラコン酸イミド及びジカルボキシシクロヘプテンイミド等が挙げられる。イミド基(−CO−NR−CO−)のRとしては、水素原子又はC1〜6のアルキル基が好ましい。
2種以上の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a27)としては、カルボキシル基、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基及びイミド基からなる群より選ばれる2種類以上の官能基を有するものが含まれ、具体的には、カルボキシル基とアミド基とを持つエチレン性不飽和モノマー{多価カルボン酸のアルキル(C1〜18)アミド(C4〜60のものが含まれ、例えばマレイン酸モノアミド、マレイン酸モノメチルアミド、フマル酸モノエチルアミド、メサコン酸モノデシルアミド及びジカルボキシシクロヘプテンモノドデシルアミド等)等}、アミノ基とアミド基を有するエチレン性不飽和モノマー{C5〜10のアミノ基含有アクリルアミド[N−アミノアルキル(C1〜6)(メタ)アクリルアミド、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等]等}等が挙げられる。
エチレン性不飽和モノマー(a2)は1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
上記エチレン性不飽和モノマー(a2)のうち、電気化学的安定性の観点から、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a21)及び1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基を有するエチレン性不飽和モノマー(a22)が好ましく、さらに好ましくは無水マレイン酸である。
親導電性フィラーブロック(A2)には、エチレン性不飽和モノマー(a2)の他に、他のビニルモノマー(b2)を共重合させてもよい。
他のビニルモノマー(b2)としては、エチレン性不飽和モノマー(a2)と共重合できるビニルモノマーであり、(a1)及び(a2)以外であれば、特に制限なく、次のビニルモノマー等が使用できる。
脂環式ビニルモノマーとしては、C3〜20のものが含まれ、具体的には、シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、C8〜14のものが含まれ、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン及びビニルナフタレン等が挙げられる。
脂肪族ビニルモノマーとしては、C2〜28の物が含まれ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本形態において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
ハロゲン元素含有ビニルモノマーとしては、C2〜20のものが含まれ、具体的には、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等が挙げられる。
親導電性フィラーブロック(A2)を構成するエチレン性不飽和モノマー(a2)の割合は、導電性フィラーA(C)の分散性の観点から、(A2)の質量を基準として、50〜100質量%が好ましく、さらに好ましくは60〜100質量%であり、特に好ましくは70〜100質量%である。
親導電性フィラーブロック(A2)中のカルボキシル基(−COOH)、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基(−CO−O−CO−)、ヒドロキシル基(−OH)、アミノ基(−NHR)、アミド基(−NR−CO−)及びイミド基(−CO−NR−CO−)の合計モル濃度は、導電性フィラーA(C)の分散性の観点から、(A2)の質量を基準として、0.0001〜0.03モル/gが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.028モル/gであり、特に好ましくは0.01〜0.025モル/gである。
(A2)中の上記官能基の合計モル濃度は、樹脂集電体用材料(A)を製造する際の(a2)及び(b2)の仕込み量から、下記数式により算出することができる。
なお、上記モル濃度を算出にあたっては、2種以上の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a27)を用いる場合は、各モノマー(a2)の仕込み量に官能基の数をかけた値を「各モノマー(a2)の仕込み量」として算出する。
樹脂集電体用分散剤(A)中のカルボキシル基(−COOH)、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基(−CO−O−CO−)、ヒドロキシル基(−OH)、アミノ基(−NHR)、アミド基(−NR−CO−)及びイミド基(−CO−NR−CO−)の合計濃度は、導電性フィラーA(C)の分散性の観点から、樹脂集電体用分散剤(A)の質量を基準として、1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは1.2〜20質量%、特に好ましくは1.4〜10質量%である。
樹脂集電体用分散剤(A)中の上記官能基の合計濃度は、樹脂集電体用分散剤(A)を製造する際の(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)の仕込み量から、下記数式により算出することができる。
樹脂集電体用分散剤(A)中のカルボキシル基(−COOH)、1,3−ジオキソ−2−オキサプロピレン基(−CO−O−CO−)、ヒドロキシル基(−OH)、アミノ基(−NHR)、アミド基(−NR−CO−)及びイミド基(−CO−NR−CO−)の合計モル濃度は、樹脂集電体用分散剤(A)の質量を基準として、導電性フィラーA(C)の分散性の観点から、0.00005〜0.015モル/gが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜0.014モル/gである。
樹脂集電体用分散剤(A)中の上記官能基の合計モル濃度は、樹脂集電体用分散剤(A)について13C−NMR及びIR(赤外分光)を測定し、モル濃度の分かっている試料を用いて求めた検量線に当てはめることで算出できる。
また、樹脂集電体用分散剤(A)中の上記官能基の合計モル濃度は、樹脂集電体用分散剤(A)を製造する際の(a1)、(a2)、(b1)及び(b2)の仕込み量から、下記数式により算出することもできる。
樹脂集電体用分散剤(A)の製造方法としては、一般的なオレフィン重合体を製造する方法{例えばバルク法、溶液法、スラリー法及び気相法等}で製造した重合体(A’1){上記(a1)及び必要により(b1)を含むモノマーを重合したもの等}に、熱減成反応などで不飽和基を導入して重合体(A’’1)とし、これに上記エチレン性不飽和モノマー(a2){必要により(b2)を含む}を付加する方法等が挙げられる。
溶液法は、溶媒中に触媒および単量体を投入し溶液中にて重合させる方法である。
溶液法における溶媒としては、飽和炭化水素[脂肪族炭化水素(C3〜24のものが含まれ、例えばプロパン、ブタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン及びオクタデカン等)、脂環式炭化水素(C3〜24のものが含まれ、例えばシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロオクタン等)、芳香族炭化水素(C6〜12のものが含まれ、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン等)、石油留分(C12〜60のものが含まれ、例えばガソリン、灯油及び軽油等)等]、重合時に液状であるオレフィン(C31〜100のものが含まれ、例えば、低分子量ポリオレフィン等)等が挙げられる。
スラリー法は、分散媒中に触媒および単量体を投入し、スラリー状にて重合させる方法である。
分散媒としては、上記飽和炭化水素および重合時に液状であるオレフィンなどが挙げられる。
気相法は、気相中に触媒及び単量体を投入し気相中にて重合させる方法である。詳しくは反応器中に触媒を徐々に投入し、さらにその触媒に効率よく接触するように単量体を投入し、気相中で重合させる方法で、生成した重合体は自重にて落下し、反応器下方から回収する。分子量の調整は、公知の手段、例えば温度、圧力、水素添加量等の選択により行うことができる。
重合温度としては、気相法の場合は、導電性フィラーA(C)の分散性及び(A1)の分子量分布の観点から、0〜120℃が好ましく、さらに好ましくは20〜100℃である。
溶液法の場合は、導電性フィラーA(C)の分散性及び(A1)の分子量分布の観点から、0〜200℃が好ましく、さらに好ましくは10〜180℃である。
スラリー法の場合は、導電性フィラーA(C)の分散性及び(A1)の分子量分布の観点から、−50〜100℃が好ましく、さらに好ましくは0〜90℃である。
圧力としては、気相法の場合は、導電性フィラーA(C)の分散性、(A1)の分子量分布及び経済性の観点から、0.049〜9.8MPaが好ましく、さらに好ましくは0.098〜4.9MPaである。
溶液法及びスラリー法の場合は、導電性フィラーA(C)の分散性、(A1)の分子量分布及び経済性の観点から、0.078〜0.98MPaが好ましく、さらに好ましくは0.098〜0.49MPaである。
重合体(A’1)において、2種以上の(a1){必要によりさらに(b1)を含む}を共重合する場合の結合形式は、ランダム、ブロック及びグラフト重合のいずれでもよい。
重合体(A’1)の数平均分子量(以下、Mnと略記する)は、導電性フィラーA(C)の分散性及び樹脂集電体用分散剤(A)の分子量の観点から、好ましくは10,000〜300,000であり、さらに好ましくは15,000〜150,000である。
重合体(A’1)のMnは、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
・装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
・溶媒:オルトジクロロベンゼン
・標準物質:ポリスチレン
・サンプル濃度:3mg/ml
・カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED−B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
・カラム温度:135℃。
重合体(A’1)を熱減成することにより不飽和基を導入した重合体(A’’1)を得ることができる。ここにおいて、熱減成とは、ポリマーを温度180〜450℃(好ましくは220〜400℃)にて熱処理して、処理前のポリマーのMn(Mn1とする)に対する処理後のポリマーのMn(Mn2とする)の低減比Mn2/Mn1を0.9〜0.001とすることと定義する。
不飽和基を導入した重合体(A’’1)の炭素数1,000個当たりの分子末端及び/又は分子内の二重結合量は、エチレン性不飽和モノマー(a2)の導入しやすさの観点から、0.2〜10個、好ましくは0.3〜6個、特に好ましくは0.5〜5個である。
上記二重結合量はNMR(核磁気共鳴)法によって測定することができる。
不飽和基を導入した重合体(A’’1)の製造方法としては、導電性フィラーA(C)の分散性の観点から、熱減成法(例えば特公昭43−9368号公報、特公昭44−29742号公報及び特公平6−70094号公報に記載の方法等)が好ましい。
熱減成法には、重合体(A’1)を(1)連続式又は(2)バッチ式で熱減成する方法が含まれる。
(1)の方法は、連続槽に一定流量(10〜700kg/h)で供給されるオレフィン重合体を、ラジカル開始剤不存在下では、好ましくは300〜450℃で0.5〜10時間、また、ラジカル開始剤存在下では、好ましくは180〜300℃で0.5〜10時間、連続的に熱減成する方法である。(2)の方法は、閉鎖系反応器中のオレフィン重合体を、上記(1)と同様に有機過酸化物不存在下又は存在下、同様の熱処理条件で熱減成する方法である。
(1)の方法で用いられる装置としては、連続混練機〔例えば、スタティックミキサー、FCM[商品名:Farrel(株)製]、LCM[商品名:(株)神戸製鋼所製]及びCIM[商品名:(株)日本製鋼所製]等〕、単軸押出機及び二軸押出機等が挙げられる。
上記ラジカル開始剤としては、アゾ化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスイソバレロニトリル等)、過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有するもの)[例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド及びジクミルパーオキシド等]及び多官能(分子内にパーオキシド基を2個以上有するもの)[例えば2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネート及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネート等]等〕等が挙げられる。
ラジカル開始剤の使用量は、重合体(A’1)の質量に基づいて、導電性フィラーA(C)の分散性及び樹脂集電体用分散剤(A)の分子量分布の観点から、0.01〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
上記熱減成法のうち、分子量の観点から好ましいのは(1)の方法であり、特に好ましくはラジカル開始剤不存在下、300〜450℃で0.5〜10時間、重合体(A’1)を一定流量で供給して連続的に熱減成する製造方法である。
不飽和基を導入した重合体(A’’1)にエチレン性不飽和モノマー(a2){必要により(b2)を含む}を付加する方法としては、不飽和基を導入した重合体(A’’1)及び(a2)を加熱溶融、又は適当な有機溶媒に懸濁若しくは溶解させ、これに上述のラジカル開始剤をラジカル開始剤(k)〔又は(k)を適当な有機溶媒に溶解させた溶液〕として加えて加熱撹拌する方法(溶融法、懸濁法及び溶液法)、並びに不飽和基を導入した重合体(A’’1)、(a2){必要により(b2)}を予め混合し、溶融混練する方法(溶融混練法)などが挙げられる。
ラジカル開始剤(k)としては、上述のラジカル開始剤と同様のものが使用でき、具体的には、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスイソバレロニトリル等);過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有する)開始剤[ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド及びジクミルパーオキシド等]、多官能(分子内に2個〜4個またはそれ以上のパーオキシド基を有する)開始剤[2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネート及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネート等]等〕等が挙げられる。
これらのうち、不飽和基を導入した重合体(A’’1)へのエチレン性不飽和モノマー(a2)の反応性の観点から、過酸化物が好ましく、さらに好ましくは単官能開始剤、特に好ましくはジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド及びジクミルパーオキシドである。
(k)の使用量は、樹脂集電体用分散剤(A)の質量に基づいて、不飽和基を導入した親樹脂ブロックへのエチレン性不飽和モノマー(a2)の反応率の観点から、好ましくは0.001〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%である。
上記有機溶媒としては、C3〜18、例えば炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(ジ−、トリ−又はテトラクロロエタン及びジクロロブタン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン及びジ−t−ブチルケトン等)並びにエーテル(エチル−n−プロピルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル及びジオキサン等)等が挙げられる。
上記溶融混練法で用いられる装置としては、押出機、バンバリーミキサーまたはニーダなどが挙げられる。
これらの製造方法のうち、不飽和基を導入した重合体(A’’1)とエチレン性不飽和モノマー(a2)の反応性の観点から、溶融法及び溶液法が好ましい。
溶融法での反応温度は、不飽和基を導入した重合体(A’’1)が溶融する温度であればよく、不飽和基を導入した重合体(A’’1)とエチレン性不飽和モノマー(a2)の反応性の観点から、120〜260℃が好ましく、さらに好ましくは130〜240℃である。
溶液法での反応温度は、不飽和基を導入した重合体(A’’1)が溶解する温度であればよく、不飽和基を導入した重合体(A’’1)とエチレン性不飽和モノマー(a2)の反応性の観点から、110〜210℃が好ましく、さらに好ましくは120〜180℃である。
樹脂集電体用分散剤(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する)としては、導電性フィラーA(C)の分散性と電池特性の観点から、2,000〜300,000が好ましく、さらに好ましくは5,000〜200,000であり、特に好ましくは7,000〜150,000であり、最も好ましくは10,000〜100,000である。
樹脂集電体用分散剤(A)のMwは、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
・装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
・溶媒:オルトジクロロベンゼン
・標準物質:ポリスチレン
・サンプル濃度:3mg/ml
・カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED−B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
・カラム温度:135℃。
本形態の樹脂集電体用分散剤(A)は、親樹脂ブロック(A1)と親導電性フィラーブロック(A2)とを有するブロック重合体からなる樹脂集電体用分散剤であるが、導電性フィラー(C)の分散性の観点から、質量比{(A1)/(A2)}が好ましくは50/50〜99/1であり、さらに好ましくは60/40〜98/2であり、特に好ましくは70/30〜95/5である。
樹脂集電体用材料中の樹脂集電体用分散剤(A)の含有量は、導電性フィラーA(C)の分散性の観点から、樹脂集電体用材料の質量を基準として、1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜15質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。
樹脂集電体用材料中のポリオレフィン系の樹脂マトリックス(B)の含有量は、樹脂強度の観点から、樹脂集電体用材料の質量を基準として、20〜98質量%が好ましく、さらに好ましくは40〜95質量%であり、特に好ましくは60〜92質量%である。
樹脂集電体用材料中の導電性フィラーA(C)の含有量は、導電性フィラーA(C)の分散性の観点から、樹脂集電体用材料の質量を基準として、1〜79質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。
本形態の樹脂集電体用材料を製造する方法としては、公知の樹脂に粉体を混合・混練する方法として知られているマスターバッチの製造、熱可塑性樹脂組成物(分散剤、フィラー及び熱可塑性樹脂からなる組成物、又はマスターバッチと熱可塑性樹脂からなる組成物)の製造に際して、混合・混練する方法として用いられる公知の方法が用いられ、一般的にはペレット状又は粉体状の成分を適切な混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて混合して製造することができる。
混練時の各成分の添加順序には特に限定はなく、予め樹脂集電体用分散剤(A)を導電性フィラーA(C)と混合し、ポリオレフィン系の樹脂マトリックス(B)に配合してもよい。あるいは、樹脂集電体用分散剤(A)と導電性フィラーA(C)とポリオレフィン系の樹脂マトリックス(B)を同時に混合しても良い。
得られた樹脂集電体用材料は、さらにペレタイザーなどによりペレット化または粉末化してもよい。
上記樹脂集電体用材料は、さらに必要に応じ、その他の成分{架橋促進剤(アルデヒド・アンモニア−アミン骨格含有化合物、チオウレア骨格含有化合物、グアニジン骨格含有化合物、チアゾール骨格含有化合物、スルフェンアミド骨格含有化合物、チウラム骨格含有化合物、ジチオカルバミン酸塩骨格含有化合物、キサントゲン酸塩骨格含有化合物及びジチオリン酸塩骨格含有化合物等)、架橋剤(イオウ等)、着色剤、紫外線吸収剤、汎用の可塑剤(フタル酸骨格含有化合物、トリメリット酸骨格含有化合物、リン酸基含有化合物及びエポキシ骨格含有化合物等)}等を適宜添加することができる。その他の成分の合計添加量は、電気的安定性の観点から、樹脂集電体用材料の質量に対して、0.0001〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜1質量%である。
本形態の樹脂集電体は、上記の樹脂集電体用材料を成形して得ることもできる。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
上記樹脂集電体用材料を成形して得られる樹脂集電体の厚さも、電解液遮蔽性及び工程上の強度を保つことができる範囲内であればよく、好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜120μmである。この範囲内であれば、電解液遮蔽性、工程上の強度及び導電性を確保した上で、軽量化による電池の出力密度を高めることができる。
[電子伝導性層]
上記Li電池用正極(双極型電極の正極を含む)は、正極活物質層と接する上記樹脂集電体表面に、電子伝導性層を有する。即ち、電子伝導性層は、上記樹脂集電体と正極活物質層との間に配置される。当該構成により、電子伝導性層は、樹脂集電体表面の導電性フィラーが電解液に直接触れないか、触れてもイオン伝導抵抗が大きく、オレフィン系の樹脂マトリックスと接した導電性フィラー上での酸化副反応が起こり難く、樹脂集電体と電子的接続ができる。そのため、Li電池用正極の耐久性、特に該正極(双極型電極の正極を含む)を構成する上記樹脂集電体の充放電サイクル耐久性を大幅に改善することができる。
上記電子伝導性層の体積抵抗率は、20Ωcm以下が好ましく、より好ましくは5Ωcm以下である。電子伝導性層の電子伝導度は、樹脂集電体の電子伝導度より高いものが好ましい。言い換えれば、電子伝導性層の体積抵抗は、樹脂集電体の体積抵抗より低いものが好ましい。これは、電子伝導性層の電子伝導性が、樹脂集電体の電子伝導度より低い(電子伝導性層の体積抵抗が、樹脂集電体の体積抵抗より高い)と電池の内部抵抗にそれ自体での抵抗が加算されてしまう。さらに、樹脂集電体および正極活物質層との接触抵抗が大きくなると考えられるからである。電子伝導性層の電子伝導度ないし体積抵抗率の測定方法は、(1)単独では、電子伝導性層の原料スラリーをPETフィルムに塗布して、乾燥して、4端子法で測定(ないし測定値から算出)することができる。(2)樹脂集電体に電子伝導性層を設けた積層構造(フィルム)全体のバルク抵抗を測定して、樹脂集電体のバルク抵抗との比較から算出できる。
また、電子伝導性層は、イオン伝導性がごく小さいかない方が好ましい。具体的には10−3S/m以下が好ましく、より好ましくは10−4S/m以下である。これは、正極(樹脂集電体と正極活物質層)の劣化の原因が、樹脂集電体表面の該集電体を構成する樹脂と導電性フィラーの界面で起こっていると考えられる。そこで、その部分(界面)へイオン(を含む電解液)が存在しなければ劣化につながると考えらえる何らかの酸化反応は起こらないためである。電子伝導性層のイオン伝導度の測定方法は、電子伝導性層を電子絶縁性でイオン透過性のたとえば電解液で満たされたセパレータで両側を挟んで、イオンだけが電子伝導性層を流れるような構成にして、その部分でのイオン電導抵抗を測定すればよい。具体的には、更にそれぞれのセパレータの外側にLi金属電極を配置して、交流法あるいは直流法で、中間の電子伝導性層の有り無しの抵抗から算出することができる。実際には、さらに、電子伝導性層の枚数を増やして、その時の増分から算出してもよい。
前記電子伝導性層の室温(25℃)での耐酸化性は、Li基準で4.2V以上が好ましく、より好ましくは4.3V以上である。これは、樹脂集電体と正極活物質層間の界面に設ける電子伝導性層は、上記した劣化反応を防止する観点から、耐酸化性(耐食性)が強く望まれるためである。かかる構成を満足することにより、上記した電子伝導性層の作用効果をより顕著に発現することができる点で優れている。電子伝導性層の耐酸化性をLi基準で4.2V以上としたのは、通常のリチウムイオン電池の電圧上限がLi基準で4.2Vのためである。
前記電子伝導性層の耐酸化性は、Al箔集電体との相対比較により求める。電子伝導性層を電極(正極)側に向けた構成(電子伝導性層を樹脂集電体と正極活物質層の間に設けた構成)で、対極にLi金属を用いたセルを使用して、一般的な充放電条件にて充放電サイクルを実施する。ここで、上記充放電条件は、室温(25℃)で、0.2CのCC−CVで4.2Vまで10時間充電し、0.2CのCCで3.0Vまで放電し、これを1サイクルとして、この充放電サイクルを繰り返して行う。その時の容量減少を、同じ正極活物質層でAl箔を集電体に用いたセルとの容量劣化を比較する。この際、同じ正極活物質層でAl箔を集電体に用いたセルよりも容量劣化が小さい場合に、使用した電子伝導性層の耐酸化性が4.2Vを有するものとする。よって、上記充放電条件のうち、充電時の上限電圧を変えていくことで、電子伝導性層の耐酸化性の範囲を確認できる。なお、Al箔の耐酸化性は4.2Vではなく、LiPF6やLiBF4を含む電解液を使用すれば、4.5Vより高いため、通常は電解液の方が先に酸化分解する。よって、上記Al箔は比較対象には含まれない。仮に集電体が酸化劣化すれば、容量劣化は急激となる。耐酸化性とは、その電位を上限として充放電しても急激な容量減少がないとき、少なくともその電位までは耐酸化性が有るといえるものである。逆に耐酸化性がないと、その電位まで充放電すると急激に容量減少することになる。
電子伝導性層の材料としては、電子伝導性でイオン伝導性の低い材料であれば、特に制限されない。詳しくは、(1)p型の導電性高分子を含む材料、(2)電子吸引性基を含む繰り返し単位からなる高分子と導電性フィラーを含む材料、(3)主にエポキシ樹脂と導電性フィラーを含む材料が好ましい。これは、樹脂集電体表面を、上記(1)のp型の導電性高分子を含む材料からなる電子伝導性層で覆えば、上記の目的を達成し、本形態の効果を発現できるためである。即ち、上記劣化反応(オレフィン系樹脂と接した導電性フィラーA上での酸化副反応)を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる層を実現でき、本形態の効果を発現できる。さらに、p型の導電性高分子では、正極が使用される電位範囲で酸化されて電子伝導性になるからである。ちなみに、n型の導電性高分子だと、酸化状態(中性)では絶縁性で、大きな抵抗層となることから選定しなかったものである。また、電子伝導性層を樹脂と導電性フィラーを含む材料で構成する場合、上記した劣化反応が起こらないように樹脂自体を、上記(2)のように電子吸引性基を含む繰り返し単位でできたものとすることで上記の目的を達成し、本形態の効果を発現できるためである。即ち、上記劣化反応(オレフィン系樹脂と接した導電性フィラーA上での酸化副反応)を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる層を実現でき、本形態の効果を発現できる。また、耐酸化性が高くなるので、正極の使用電位範囲でより安定にできるためである。更に、樹脂集電体表面を、上記(3)の主にエポキシ樹脂と導電性フィラーを含む材料からなる電子伝導性層で覆えば、上記の目的を達成し、本形態の効果を発現できるためである。即ち、電子伝導性層としてエポキシ樹脂コート層を適用した際の耐酸化性改善機構(エポキシ樹脂コートで耐酸化性の効果が発現するメカニズム)は、まだよくわからないが次のように推察される。樹脂が酸化劣化するためには、樹脂集電体の電極側表面の導電性フィラーAと集電体樹脂の界面へイオン(陰イオン)が到達する必要があると考えられる。コートする樹脂を3次元架橋構造とすることで、イオンがエポキシ樹脂コート層を透過して樹脂集電体表面へ到達しにくくなる。電解液に触れている面のエポキシ樹脂が一部酸化されても、金属での不動態化現象のように分解生成物で更なる反応が抑制されるため改善されると推察されることから、本形態の効果を有効に発現できると考えられる。また、耐酸化性が高くなるので、正極の使用電位範囲でより安定にできる。さらに、エポキシ樹脂の分子構造の一部に耐酸化性のある官能基(電子吸引性基など)を導入するか、エポキシ樹脂の層内へ耐酸化性のある添加剤を加えればこの効果は促進される可能性があると考えられる。以下、電子伝導性層に含まれる導電性フィラーは、樹脂集電体に含まれる導電性フィラー(導電性フィラーA)と区別する必要上、導電性フィラーBともいう。
さらに具体的には、上記(1)のp型の導電性高分子としては、p型の導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらのp型の導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。p型の導電性高分子の代表的な例としては、電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系(例えば、ポリチオフェン、ハロゲン化ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)類等のポリ(3−アルキルチオフェン)類、ポリ(ジアルキルチルオフェン)類、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシ−4−メチルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−(4−オクチルフェニル)チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン−co−3’−オクチルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(3−チオフェンアルカンスルホン酸)ナトリウム類など)、ポリアセチレン系、またはこれらの混合物などが挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。p型の電子伝導性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリアセチレン系がより好ましい。
上記(1)のp型の導電性高分子を「含む」としたのは、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、p型の導電性高分子以外の他の材料を含んでもよいためである。この場合、主成分であるp型の導電性高分子の含有量は、電子伝導性層全量に対し、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。p型の導電性高分子の含有量が上記範囲内であれば、上記の目的を達成し、本形態の効果を発現できる。即ち、上記劣化反応(オレフィン系樹脂と接した導電性フィラーA上での酸化副反応)を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる層を実現でき、本形態の効果を発現できる。さらに、p型の導電性高分子の含有量が上記範囲内であれば、正極が使用される電位範囲で酸化されて電子伝導性になる。さらに耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性をより向上できる。
上記(1)のp型の導電性高分子以外の他の材料をとしては、特に制限されるものではなく、従来公知の樹脂集電体に用いられている樹脂マトリックス(高分子材料)やその他の添加剤等を適宜利用することができる。上記樹脂マトリックス(高分子材料)の例としては、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデンまたはこれらの混合物などが挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。これらの材料は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、接着性を高めることが可能である。これら従来公知の樹脂集電体に用いられている樹脂マトリックス(高分子材料)の含有量としては、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されない。
次に上記(2)の電子吸引性(求引性)基を含む繰り返し単位を有する高分子としては、(2a)主にフッ素系高分子、好ましくはフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を有する高分子、(2b)カルボン酸エステルに由来する(ないし官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子、等が挙げられる。ただし、これらの高分子に何ら制限されるものではない。上記(2)の高分子の繰り返し単位に含まれる電子吸引性(求引性)基としては、特に制限されるものではなく、例えば、−O、−N、−P、−S、ニトロ基(−NO)、−SOR、−SOR、−SOR、−NR、−OR、−SR、ハロゲン(−F、−Cl、−Br、−I)、シアノ基(−CN)、=O、=NR、≡N、≡CR、−C≡CR(ここで、Rは、例えば、アルキル基等を表す)などが挙げられる。これら電子吸引性(求引性)基(例えば、CN基)を含む繰り返し単位を有する高分子では、当該高分子の製膜性と電解液中での膜の安定性があれば、十分に使用可能である。また、これら電子吸引性(求引性)基を含む繰り返し単位を有する高分子を使用することで、導電性フィラー、とりわけカーボン材料の方がより安定になる点でも優れている。上記(2)の高分子では、上記(2a)、(2b)の高分子以外にも、上記したような電子吸引性(求引性)基を繰り返し単位に含むものであればよい。例えば、電子吸引性基としてハロゲン、ニトロ基、シアノ基等がついたポリチオフェン系(安定で導電性を有する点で優れる)、電子吸引性基としてシアノ基がついたポリアクリロニトリル系(膨潤しない点で優れる)などが挙げられる。但し、本形態の上記(2)の高分子は、これらに限定されるものではない。以下では、上記(2)の高分子の中でも好適な上記(2a)および(2b)の高分子について説明する。
上記(2a)のフッ素系高分子、好ましくはフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を有する高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(ポリビニリデンフルオライド;PVDF)やその共重合体(例えば、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−TrFE))、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(P(VDF−HFP))、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(P(VDF−HFP−TFE))、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体(P(VDF−PFP))、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(P(VDF−PFP−TFE))、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体(P(VDF−PFMVE−TFE))、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(P(VDF−CTFE))等)などのポリフッ化ビニリデン系の高分子が挙げられる。これらフッ素系高分子では、電解液中で安定な成膜ができ、耐酸化性を高くできる。なかでも、ポリフッ化ビニリデン系の高分子材料は、電解液中で安定な成膜ができ、耐酸化性を高くできるほか、信頼性が高く、電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、樹脂集電体及び正極活物質層との接着性をより高めることができる。また、上記(2a)で「主に」フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位とする高分子としたのは、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を有する高分子以外の他の高分子や添加剤を含んでもよいためである。
上記(2a)のフッ素系高分子、好ましくはフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を有する高分子以外の他の高分子としては、特に制限されるものではなく、従来公知の樹脂集電体に用いられている樹脂マトリックス(高分子材料)等を適宜利用することができる。詳しくは、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはこれらの混合物である。これらの材料もポリフッ化ビニリデン系の高分子と同様に、電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、接着性を高めることが可能であるためである。上記(2a)のフッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位を有する高分子以外の他の高分子の含有量としては、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されない。
また上記(2b)のカルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子を構成する繰り返し単位を導く(該単位に含まれる)カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステル等を用いることもできる。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルから選択される1種以上であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルであることが特に好ましい。
上記(2b)のカルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子は、電子伝導性層を高分子(樹脂)と導電性フィラーを含む材料で構成する場合、上記した劣化反応が起こらないように樹脂自体を、上記(2b)のカルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子とすることで上記の目的を達成し、本形態の効果を有効に発現できる。即ち、上記劣化反応(オレフィン系樹脂と接した導電性フィラーA上での酸化副反応)を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる層を実現でき、本形態の効果を有効に発現できる。また、オレフィン系樹脂と導電性フィラーAを含む樹脂集電体表面を上記(2b)のカルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子と導電性フィラーBを含む電子伝導性層で覆うことにより、耐酸化性が高くなるので、正極の使用電位範囲でより安定にできる。
上記(2b)のカルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子は、カルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位のみからなる高分子(重合体)であってもよい。更に、カルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位の他に、これと共重合可能な他の単量体に由来する繰り返し単位(共重合された他の繰り返し単位)を有する高分子(共重合体)であってもよい。
上記他の単量体としては、例えばα,β−不飽和ニトリル化合物、不飽和カルボン酸(アクリル酸など)、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物およびその他の不飽和単量体を挙げることができる。
上記(2b)のカルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子以外の他の高分子としては、特に制限されるものではない。例えば、従来公知の樹脂集電体に用いられている樹脂マトリックス(高分子材料)等を適宜利用することができる。詳しくは、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの混合物である。これらの材料は、電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、接着性を高めることが可能であるためである。上記(2b)のカルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子以外の他の高分子の含有量としては、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されない。また、上記(2b)で「主に」官能基としてカルボン酸エステルを有する繰り返し単位を有する高分子としたのは、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、カルボン酸エステルに由来する(官能基としてカルボン酸エステルを有する)繰り返し単位を有する高分子以外の他の高分子を含んでもよいためである。
次に、上記(3)のエポキシ樹脂、詳しくは、3次元架橋のネットワークを形成する樹脂マトリックス(高分子材料)として使用されるエポキシ樹脂としては特に制限されるものではなく、従来公知の各種エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、常温で液状のエポキシ樹脂及び/又は結晶性2官能エポキシ樹脂を含む樹脂組成物Aを反応(硬化)させてなるものが挙げられる。市販されている液状のエポキシ樹脂としては、例えば、三菱化学(株)製「jER828EL」、「YL980」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「jER806H」、「YL983U」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「RXE21」(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「871」、「191P」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「604」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D](ナフタレン型2官能エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株)製セロキサイド「2021P」、「2081」、「3000」(脂環式エポキシ樹脂)、東都化成(株)製「ZX−1658」(シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂)などが挙げられる。市販されている結晶性2官能エポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬(株)製「NC3100」(2官能ビフェニル型エポキシ樹脂リッチ体)、三菱化学(株)製「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製「YX8800」(アントラセン骨格含有型エポキシ樹脂)、東都化成(株)製「YDC−1312」、「YSLV−80XY」、「YSLV−120TE」、「ZX−1598A」などが挙げられる。また、誘電正接を低くさせるという観点から、スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体を用いるのが好ましく、具体的には、日油(株)製「マープルーフG−0115S」、「マープルーフG−0130S−P」、「マープルーフG−0150M」、「マープルーフG−0250S」、「マープルーフG−1005S」、「マープルーフG−1005SA」、「マープルーフG−1010S」、「マープルーフG−2050M」、「マープルーフG−01100」、「マープルーフG−017581」などが挙げられる。
常温で液状のエポキシ樹脂及び/又は結晶性2官能エポキシ樹脂を反応(硬化)させてなるものを用いる場合には、常温で液状のエポキシ樹脂及び/又は結晶性2官能エポキシ樹脂の含有量は特に制限されるものではない。常温で液状のエポキシ樹脂及び/又は結晶性2官能エポキシ樹脂を含む樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、10〜99質量%が好ましく、20〜95質量%がより好ましい。
上記樹脂組成物A中には、上記エポキシ樹脂の硬化剤(重合開始剤ないし架橋剤)を含むのがよい。重合開始剤(硬化剤ないし架橋剤)としては特に制限されるものではなく、従来公知の各種重合開始剤を適宜用いることができる。例えば、三新化学工業(株)製「サンエイドSI−60」(カチオン重合開始剤(硬化剤ないし架橋剤))、「サンエイドSI−80」、「サンエイドSI−100」、「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」、「サンエイドSI−150L」、サンアプロ(株)製「CPI−100P」(光カチオン重合開始剤(硬化剤ないし架橋剤))、「CPI−110P」、「CPI−101A」、(株)ADEKA製「アデカオプトマーCP−66」(熱カチオン重合開始剤(硬化剤ないし架橋剤))、「アデカオプトマーCP−77」、「アデカオプトマーSP−150」(光カチオン重合開始剤(硬化剤ないし架橋剤))、「アデカオプトマーSP−152」、「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−172」、日本曹達(株)製「CI−2064」(光カチオン重合開始剤(硬化剤ないし架橋剤))、「CI−2639」、「CI−2624」、「CI−2481」などが挙げられる。
上記以外にも、シアネートエステル系硬化剤、活性エステル系硬化剤から選択される硬化剤の1種又は2種以上((A)成分)と、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂((B)成分)とを含む樹脂組成物Bを反応(硬化)させてなるものが挙げられる。
上記シアネートエステル系硬化剤は、特に限定されるものではなく、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。シアネートエステル系硬化剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは500〜4500であり、より好ましくは600〜3000である。
上記シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
市販されているシアネートエステル系硬化剤としては、下式(1)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン(株)製、PT30、シアネート当量124)、下式(2)で表されるビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230、シアネート当量232)、下式(3)で表されるジシクロペンタジエン構造含有シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン(株)製、DT−4000、DT−7000)等が挙げられる。
式(1)中、nは平均値として任意の数(好ましくは0〜20)を示す。
式(3)中、nは平均値として0〜5の数を表す。
上記活性エステル系硬化剤は、特に限定されるものではなく、例えば、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N−ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化化合物等の反応活性の高いエステル基を有し、エポキシ樹脂の硬化作用を有するものをいう。活性エステル系硬化剤は、特に制限はないが、1分子中に2個以上の活性エステル基を有する化合物が好ましく、多価カルボン酸を有する化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物から得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を持つ芳香族化合物がより好ましく、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とから得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が更に好ましい。また、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であればエポキシ樹脂との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。なかでも耐熱性、溶解性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
活性エステル系硬化剤の製造方法は特に制限はないが、公知の方法により製造することができ、具体的には、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。また、活性エステル系硬化剤としては、特開2004−277460号公報に記載の活性エステル系硬化剤を使用することもでき、市販のものを用いることもできる。
市販されている活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むもの、フェノールノボラックのアセチル化物、フェノールノボラックのベンゾイル化物等が好ましく、なかでもジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものがより好ましい。具体的には、HPC−8000−65T(DIC(株)製、活性基当量約223)、EXB9460S−65T(DIC(株)製、活性基当量約223)、DC808(三菱化学(株)製、活性基当量約149)、YLH1026(三菱化学(株)製、活性基当量約200)、YLH1030(三菱化学(株)製、活性基当量約201)、YLH1048(三菱化学(株)製、活性基当量約245)、等が挙げられ、中でもEXB9460Sがワニスの保存安定性、硬化物の熱膨張率の観点から好ましい。
樹脂組成物中の(A)成分の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の(A)成分の含有量の上限値は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%が更に好ましく、25質量%が更に一層好ましい。一方、樹脂組成物中の(A)成分の含有量の下限値は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、2質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、8質量%が更に好ましい。
上記(B)成分のビスフェノールAF型エポキシ樹脂は特に限定されるものではなく、例えば、式(4)で表されるものを用いる事ができる。なかでも、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。また、市販のものを用いる事もでき、市販されているビスフェノールAF型エポキシ樹脂としては、YL7723(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
式(4)中、R1〜R8は水素、フッ素、アルキル基を示し、R1〜R8が水素であるのが好ましい。
樹脂組成物中のビスフェノールAF型エポキシ樹脂の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%が更に好ましい。一方、樹脂組成物中のビスフェノールAF型エポキシ樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、5質量%が更に好ましい。
活性エステル系硬化剤のエステル当量とシアネートエステル系硬化剤のシアネート当量とを合わせた総当量と、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂のエポキシ当量との比は、1:0.4〜1:2となるのが好ましく、1:0.7〜1:1.6がより好ましい。
上記樹脂組成物Bは、更に硬化促進剤を含有させる事により(A)成分、エポキシ樹脂等を効率的に硬化させることができる。硬化促進剤は特に限定されないが、金属系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
上記金属系硬化促進剤としては、特に制限されるものではなく、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。金属系硬化促進剤としては、硬化性、溶剤溶解性の観点から、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、鉄(III)アセチルアセトナートが好ましく、特にコバルト(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
金属系硬化促進剤の添加量の上限値は、樹脂組成物Bの保存安定性等の観点から、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、金属系硬化促進剤に基づく金属の含有量が500ppmが好ましく、200ppmがより好ましい。一方、樹脂組成物中の金属系硬化促進剤の添加量の下限値は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、金属系硬化促進剤に基づく金属の含有量が20ppmが好ましく、30ppmがより好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に制限はないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、 1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
アミン系硬化促進剤としては、特に制限はないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤の硬化促進剤の含有量は、特に制限はないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.01〜0.5質量%の範囲がより好ましい。0.005質量%未満であると、硬化が遅くなり熱硬化時間が長く必要となる傾向にあり、1質量%を超えると樹脂組成物の保存安定性の低下、熱膨張率が増加する傾向となる。
樹脂組成物AないしBにおいては、エポキシ樹脂(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂を除く)を含有させることができる。このようなエポキシ樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
樹脂組成物AないしBには、更に熱可塑性樹脂を含有させることにより硬化物の機械強度を向上させることもできる。このような高分子化合物としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂がより好ましい。
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールAF骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格、スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。なかでも、誘電正接を低下させ、線膨張係数を低くさせるという観点から、ビスフェノールAF骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。フェノキシ樹脂の末端はフェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。市販品としては、例えば、三菱化学(株)製YL7383、YL7384(ビスフェノールAF骨格含有フェノキシ樹脂)、三菱化学(株)製1256、4250(ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、三菱化学製YX8100(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、三菱化学製YL6954(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)や、その他東都化成(株)製FX280、FX293、三菱化学(株)製YL7553、YL6794、YL7213、YL7290、YL7482等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)社製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、5000〜200000の範囲であるのが好ましい。なお重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
樹脂組成物に、熱可塑性樹脂を配合する場合、熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
上記(3)のエポキシ樹脂、詳しくは、3次元架橋のネットワークを形成する樹脂マトリックス(高分子材料)として上記エポキシ樹脂等の高分子を用いるのが、電解液中での正極の使用可能電位範囲で酸化還元に対して安定である点で好ましい。
上記(3)のエポキシ樹脂等の高分子は、電子伝導性層を高分子(樹脂)と導電性フィラーを含む材料で構成する場合、上記した劣化反応が起こらないように樹脂自体を、上記(3)のエポキシ系の樹脂とすることで上記の目的を達成し、本形態の効果を有効に発現できる。即ち、上記劣化反応(オレフィン系樹脂と接した導電性フィラーA上での酸化副反応)を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる層を実現でき、本形態の効果を有効に発現できる。また、オレフィン系樹脂と導電性フィラーAを含む樹脂集電体表面を上記(3)のエポキシ系の樹脂と導電性フィラーBを含む電子伝導性層で覆うことにより、耐酸化性が高くなるので、正極の使用電位範囲でより安定にできる。なお、エポキシ樹脂コートで耐酸化性の効果が発現するメカニズムについては、上述した通りである。また、上記(3)で「主に」エポキシ樹脂としたのは、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、エポキシ樹脂以外の他の高分子を含んでもよいためである。
上記(2)、(2a)、(2b)及び(3)の導電性フィラーBは、導電性(電子伝導性)を有する材料から選択される。好ましくは、電子伝導性層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。また、導電性フィラーBは、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択されるのが好ましい。
導電性フィラーBとしては、上記した導電性フィラーAと同様のもの(材料、形状、平均粒子径、繊維状である場合の平均繊維長)を用いることができる。ここでは、重複した説明を避けるべく、その記載を省略する。
なお、電子伝導性層に用いる導電性フィラーBは、導電性フィラーAと同様のものを用いることができるが、なかでも表面に絶縁性の酸化被膜ができにくく、フィラー間の接触抵抗が大きくないなど接触抵抗等の問題が少ないことから、カーボン系フィラーであることが好ましい。これは、炭素(カーボン)は、酸化されても表面の官能基1つ分の膜厚で、その膜厚ならトンネル効果で電子が透過できるためであると考えられる。カーボン系フィラーとしては、例えば、アセチレンブラック(AB)、カーボンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのカーボン系フィラーは電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン系フィラーは非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン系フィラーは、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン系フィラーを導電性フィラーBとして用いる場合には、カーボン系フィラーの表面に疎水性処理を施すことにより電解質(溶液電解質)のなじみ性を下げ、樹脂集電体の空孔に電解質(溶液電解質)が染み込みにくい状況を作ることも可能である。さらに、耐食性(耐酸化性)に優れ、電極の耐久性をより向上できる。
導電性フィラーBの平均粒子径(一次粒子の平均粒子径)は、導電性フィラーAと同様の範囲のものを用いることができ、電池の電気特性の観点から、0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜1μm程度であることが好ましい。また導電性フィラーBの平均粒子径(二次粒子(凝集体)の平均粒子径)は、電子伝導性層に欠陥等ができなければ特に制限はなく、凝集体の大きさ(平均粒子径)が0.1μm以上であればよく、電子伝導性層の厚さ(〜20μm)以下であればよいことから、0.02〜20μmの範囲である。とりわけアセチレンブラック等の凝集体(会合したもの)を用いる場合、3次元の電子ネットワークを構築しやすくするためには、30〜50nm(0.03〜0.05μm)の範囲が好ましい。
上記(2)、(2a)、(2b)及び(3)において、電子伝導性層中の電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子(樹脂)の含有量は、電子伝導性層全量に対して、10〜95質量%、より好ましくは15〜90質量%である。電子伝導性層中の樹脂の含有量が上記範囲内であれば、電子伝導性層を樹脂と導電性フィラーを含む材料で構成する場合、上記した劣化反応が起こらないようにすることができ、上記の目的を達成し、本形態の効果を発現できる。即ち、上記劣化反応(オレフィン系樹脂と接した導電性フィラーA上での酸化副反応)を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる層を実現でき、本形態の効果を発現できる。また、耐酸化性が高くなるので、正極の使用電位範囲でより安定にできる。
上記(2)、(2a)、(2b)及び(3)において、電子伝導性層中の導電性フィラーBの含有量は、電子伝導性層に導電性(電子伝導性)を付与し、イオン透過を抑制する観点から、電子伝導性層全量に対して、5〜85質量%、より好ましくは10〜80質量%である。導電性フィラーBの含有量が上記範囲内であれば、上記劣化反応(オレフィン系樹脂と接した導電性フィラーA上での酸化副反応)を抑えて尚且つ樹脂集電体と正極活物質層の電子的接触をスムースに保てる層を実現でき、本形態の効果を発現できる。また上記範囲内の含有量の導電性フィラーBを上記電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子(樹脂)、あるいはエポキシ樹脂に添加することにより、電子伝導性層の質量増加を抑制しつつ、電子伝導性層に十分な導電性を付与することができる。
上記(2)の電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子(樹脂)、あるいは上記(3)のエポキシ樹脂と導電性フィラーBを「含む」としたのは、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば、上記樹脂と導電性フィラーB以外の他の材料を含んでもよいためである。この場合、他の材料としては、各種の添加剤が挙げられる。この添加剤の例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等のカルボン酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。この添加剤の添加量としては、本形態の作用効果を損なわない範囲内であれば特に制限されないが、上記樹脂と導電性フィラーBとの合計100質量部に対して、1〜25質量部が好ましい。
電子伝導性層の厚さは、好ましくは10〜20μmの範囲である。電子伝導性層の厚さが20μm以下であれば電池の内部抵抗が抑え、電池の体積エネルギー密度が低下するのを抑制することができる点で優れている。電子伝導性層の厚さが10μm以上であると、膜の欠陥が発生するのを抑制し、わずかなイオン伝導性により劣化が進行してしまうのを効果的に防止することができる点で優れている。
電子伝導性層の製造方法は、特に制限されず、通常の正極活物層の製造方法と同様にして作製することができる。すなわち、上記(1)の材料である樹脂又は(2)の材料である樹脂、導電性フィラーB、さらにこれらに必要に応じて添加してもよい各種添加剤の各成分を粘度調整溶剤に添加、混合して、電子伝導性層形成用スラリーを形成する。このスラリーを樹脂集電体に塗布し、乾燥(例えば、適当な温度(80℃程度)での真空乾燥等)して、電子伝導性層を形成する方法などが挙げられる。必要に応じて、乾燥後、樹脂集電体上に形成した電子伝導性層を熱プレス機などにより圧延してもよい。例えば、上記(2a)の主に官能基としてカルボン酸エステルを含む繰り返し単位からなる高分子(ポリフッ化ビニリデン)と導電性フィラーB(アセチレンブラック)を用いた電子伝導性層の作製方法としては、以下により得ることができる。まず所定濃度のPVDFを溶解したNMP溶液、NMP及びアセチレンブラックを所定量混合し、電子伝導性層形成用スラリーを作製する。このスラリーを樹脂集電体表面にアプリケーターで所定のギャップで塗工し、加熱しながら真空乾燥して脱溶剤させて所望の厚さの電子伝導性層を得ることができる。上記(2b)のエポキシ樹脂と導電性フィラーB(アセチレンブラック)を用いた電子伝導性層の作製方法としては、以下により得ることができる。まず、液状のエポキシ樹脂、結晶性2官能エポキシ樹脂、メチルエチルケトン、アセチレンブラック及び硬化剤を所定量混合し、電子伝導性層形成用スラリーを作製する。このスラリーを樹脂集電体表面にアプリケーターで所定のギャップで塗工し、加熱しながら真空乾燥して脱溶剤及び硬化し、所望の厚さの電子伝導性層を得ることができる。
正極は、樹脂集電体に上記電子伝導性層形成用スラリーを塗布して塗膜を前記集電体上に形成し、必要に応じ熱プレスして電子伝導性層を樹脂集電体上に形成する。さらにこの電子伝導性層上に正極スラリーを塗布、乾燥して正極活物質層を形成することによって得ることが好ましい。かような構造であれば、樹脂集電体や電子伝導性層中の導電性フィラーA又はBと樹脂成分とがより接触しやすくなり、接触抵抗がより低減し、耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性をより向上できる。
さらに、導電性フィラーA又はBの少なくとも一部は、樹脂集電体や電子伝導性層や正極活物質層の表面にめり込んでいる構造を有していてもよい。かような構造であれば、樹脂集電体や電子伝導性層中の導電性フィラーA又はBと樹脂集電体や電子伝導性層や正極活物質層中の他の成分とがさらにより接触しやすくなり、接触抵抗がさらにより低減し、耐久性、特に電極の充放電サイクル耐久性をより向上できる。
また、正極は、正極活物質層を離型性のある基材(PETフィルム等)上に作製し、樹脂集電体に上記電子伝導性層形成用スラリーを塗布、乾燥(80℃程度で真空乾燥)して電子伝導性層を形成し、これらを積層して(貼り合わせて)正極を作製してもよい。これらを積層する(貼り合わせる)ことによっても正極を得ることができる。離型性のある基材は正極製造後に剥離して除去すればよい。これらの方法でも接触抵抗の面内バラツキを低減できる。好ましくは、樹脂集電体に上記電子伝導性層形成用スラリーを塗布、乾燥(80℃程度で真空乾燥)して電子伝導性層を形成し、更に正極スラリーを塗布、乾燥して正極活物質層を形成した方が、各層間の密着性に優れる点で優れている。なお、実施例では、あくまで本発明の効果の証明のため、正極活物質層を離型性のある基材上に作製する代わりに、セパレータに正極スラリーを塗布、乾燥して作製する方法を採用している。これは、樹脂集電体と正極活物質層界面付近の問題に特化して、現象をわかりやすくするためである。
上記電子伝導性層は、単層構造であってもよいし、あるいは上記(1)ないし(2)の 以下では、Li電池用正極を用いたリチウムイオン二次電池の該正極(及び負極、並びに双極型電極)における樹脂集電体及び電子伝導性層以外の構成の好ましい形態を説明するが、本形態は、Li電池用正極の中でも上記した樹脂集電体及び電子伝導性層に特徴があり、それ以外の構成は、公知と同様あるいは適宜修飾して適用できる。
[活物質層]
本形態のLi電池の活物質層は、活物質を含む。ここで、活物質は、充放電時にイオンを吸蔵・放出し、電気エネルギーを生み出す。活物質には、放電時にイオンを吸蔵し充電時にイオンを放出する組成を有する正極活物質と、放電時にイオンを放出し充電時にイオンを吸蔵できる組成を有する負極活物質とがある。本形態の活物質層は、活物質として正極活物質を使用する場合は正極活物質層として機能し、逆に負極活物質を使用する場合は負極活物質層として機能する。本明細書では、正極活物質および負極活物質に共通する事項については、単に「活物質」として説明する。
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Mn−Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられ、さらに好ましくはLi(Ni−Mn−Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)が用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれる。よって、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられる。好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):LiNiMnCo(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化される。そのため、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と寿命特性とのバランスを向上させるという観点からは好ましい。例えば、LiNi0.5Mn0.3Co0.2は、一般的な民生電池で実績のあるLiCoO、LiMn、LiNi1/3Mn1/3Co1/3などと比較して、単位質量あたりの容量が大きい。また、エネルギー密度の向上が可能となることでコンパクトかつ高容量の電池を作製できるという利点を有しており、航続距離の観点からも好ましい。なお、より容量が大きいという点ではLiNi0.8Co0.1Al0.1がより有利である。また、LiNi0.5Mn0.3Co0.2はLiNi1/3Mn1/3Co1/3並みに優れた寿命特性を有しているのである。
(負極活物質)
一方、好ましい負極活物質としては、SiやSnなどの金属、Siを含む合金、あるいはTiO、Ti、TiO、もしくはSiO、SiO、SnOなどの金属酸化物、Li4/3Ti5/3もしくはLiMnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、またはグラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料などが挙げられる。
本形態のLi電池の活物質層は、必要に応じて、導電助剤、バインダ、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。ただし、活物質層中、活物質として機能しうる材料の含有量は、85〜99.5質量%であることが好ましい。
導電助剤とは、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における導電ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。ここで、導電助剤の含有量は、活物質層の導電性を所望の程度にまで向上できれば特に制限されないが、活物質層全量(固形分換算)に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であることが好ましい。
バインダ(結着剤)は、活物質、導電助剤などを相互に結着させ、活物質層の構造や導電ネットワークを保持する機能を有する。バインダとして使用される材料は、特に限定されないが、負極活物質を含む負極活物質層に使用する場合は、水系バインダを含むことが好ましい。水系バインダは、結着力が高く、また、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。正極活物質を含む正極活物質層に使用する場合は、以下に説明する「水系バインダ以外のバインダ材料」を用いることができる。
水系バインダとは水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。
水系バインダとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200〜4000、より好適には、1000〜3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98〜30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1〜80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1〜50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜4)エステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、並びにマンナンガラクタン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダは1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても構わない。
上記水系バインダは、結着性の観点から、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダはスチレン−ブタジエンゴムを含むことが好ましい。
水系バインダとしてスチレン−ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。なかでも、バインダとして、スチレン−ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロース(塩)とを組み合わせることが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有質量比は、特に制限されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.1〜10であることが好ましく、0.5〜2であることがより好ましい。
負極活物質層中の上記水系バインダの含有量は、負極活物質層中のバインダの総量に対して、80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることが好ましい。
また、上記水系バインダ以外のバインダ材料(正極活物質を含む正極活物質層に使用するバインダ材料)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
バインダの含有量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層全量(固形分換算)に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
本形態の活物質層の厚さは、特に限定されず、電池についての従来公知の知見が適宜参照されるが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは30〜50μmである。
[電解質層]
本形態のLi電池の電解質層に使用される電解質は、特に制限はないが、上述の非水電解質二次電池用活物質層のイオン伝導性を確保する観点から、液体電解質、ゲルポリマー電解質、またはイオン液体電解質が用いられる。
液体電解質は、リチウムイオンのキャリヤーとしての機能を有する。電解液層を構成する液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が例示される。また、リチウム塩としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiCFSO等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。液体電解質は、上述した成分以外の添加剤をさらに含んでもよい。かような化合物の具体例としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1,2−ジビニルエチレンカーボネート、1−メチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−メチル−2−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−1−ビニルエチレンカーボネート、1−エチル−2−ビニルエチレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、ビニルオキシメチルエチレンカーボネート、アリルオキシメチルエチレンカーボネート、アクリルオキシメチルエチレンカーボネート、メタクリルオキシメチルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート、エチニルオキシメチルエチレンカーボネート、プロパルギルオキシエチレンカーボネート、メチレンエチレンカーボネート、1,1−ジメチル−2−メチレンエチレンカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがより好ましい。これらの環式炭酸エステルは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HEP)、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
ゲルポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
イオン液体電解質は、イオン液体にリチウム塩が溶解したものである。なお、イオン液体とは、をカチオンおよびアニオンのみから構成される塩であり、常温で液体である一連の化合物をいう。
イオン液体を構成するカチオン成分は、置換されているかまたは非置換のイミダゾリウムイオン、置換されているかまたは非置換のピリジニウムイオン、置換されているかまたは非置換のピロリウムイオン、置換されているかまたは非置換のピラゾリウムイオン、置換されているかまたは非置換のピロリニウムイオン、置換されているかまたは非置換のピロリジニウムイオン、置換されているかまたは非置換のピペリジニウムイオン、置換されているかまたは非置換のトリアジニウムイオン、および置換されているかまたは非置換のアンモニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
イオン液体を構成するアニオン成分の具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO )、テトラフルオロホウ酸イオン(BF )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )、(FSO、AlCl 、乳酸イオン、酢酸イオン(CHCOO)、トリフルオロ酢酸イオン(CFCOO)、メタンスルホン酸イオン(CHSO )、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CFSO)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドイオン((CSO)、BF 、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)炭素酸イオン((CFSO)、過塩素酸イオン(ClO )、ジシアンアミドイオン((CN))、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、RCOO、HOOCRCOOOOCRCOO、NHCHRCOO(この際、Rは置換基であり、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、エーテル基、エステル基、またはアシル基であり、前記の置換基はフッ素原子を含んでいてもよい。)などが挙げられる。
好ましいイオン液体の例としては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが挙げられる。これらのイオン液体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
イオン液体電解質に用いられるリチウム塩は、上述の液体電解質に使用されるリチウム塩と同様である。なお、当該リチウム塩の濃度は、0.1〜2.0Mであることが好ましく、0.8〜1.2Mであることがより好ましい。
また、イオン液体に以下のような添加剤を加えてもよい。添加剤を含むことにより、高レートでの充放電特性およびサイクル特性がより向上しうる。添加剤の具体的な例としては、例えば、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、メチルジグライム、スルホラン、トリメチルホスフェイト、トリエチルホスフェイト、メトキシメチルエチルカーボネート、フッ素化エチレンカーボネートなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。添加剤を使用する場合の使用量は、イオン液体に対して、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータは、電解質を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。特に電解質として液体電解質、イオン液体電解質を使用する場合には、セパレータを用いることが好ましい。
セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
ポリマーないし繊維からなる多孔性シートのセパレータとしては、例えば、微多孔質(微多孔膜)を用いることができる。該ポリマーないし繊維からなる多孔性シートの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン;これらを複数積層した積層体(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体など)、ポリイミド、アラミド、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)等の炭化水素系樹脂、ガラス繊維などからなる微多孔質(微多孔膜)セパレータが挙げられる。
微多孔質(微多孔膜)セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできない。1例を示せば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。前記微多孔質(微多孔膜)セパレータの微細孔径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。
不織布セパレータとしては、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル;PP、PEなどのポリオレフィン;ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性が得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
[電極の製造方法]
正極(双極型電極の正極側を含む)の製造方法は、特に制限されないが、まず、樹脂集電体(双極型樹脂集電体)上に電子伝導性層を形成した後、この電子伝導性層上に正極活物質層を形成する。負極(双極型電極の負極側を含む)の製造方法は、特に制限されないが、樹脂集電体上に負極活物質層を形成する。正極を形成する方法としては、上記した通りであるので、ここでの説明は省略する。また、負極を形成する方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用することができる。電極活物質層を形成する方法につき、一例を挙げると、活物質および必要であれば導電助剤、バインダ等の他の成分を所定の分散溶媒に分散させて電極スラリーを調製し、この電極スラリーを樹脂集電体(または樹脂集電体上に形成された電子伝導性層)上、又はセパレータ上に塗布し、乾燥する。ここで、分散溶媒として使用できる溶媒としては、特に制限されないが、例えば、アセトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル等の極性溶媒などを用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。電極スラリー中の活物質の濃度は、特に制限されず、活物質層の厚みなどによって適宜選択できる。塗布方法も特に制限されず、刷毛での塗布、バーコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。活物質の塗布量は、特に制限されない。乾燥温度、乾燥時間は特に制限されない。なお、上記乾燥は、大気圧下または減圧下で行ってもよい。
上記したようにして製造される本発明の正極(及び負極、並びに双極型電極)は、リチウムイオン二次電池に好適に用いられる。リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン二次電池であってもよい。巻回型のリチウムイオン二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
上記リチウムイオン二次電池において、正極以外の主要な構成部材(負極、電解質層、集電板、リード、外装材等)については、従来公知の知見が適宜採用される。また、上記のリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
上記正極を有するリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車、燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの高質量エネルギー密度、高質量出力密度等が求められる車両駆動用電源や補助電源として好適に用いることができる。
また、リチウムイオン二次電池に限定されるわけではなく、当該正極は他のタイプの二次電池、さらには一次電池にも適用できる。
上記電極を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明するが、以下の実施例および比較例のみに限定されるわけではない。なお、以下において、特記しない限り、操作は、室温(25℃)で行った。
比較例1
正極活物質:バインダ:導電助剤=85:5:10の質量比でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散した正極スラリーを調製した。この正極スラリーをポリプロピレン製の微多孔質のセパレータ(厚さ25μm)に塗布して乾燥して、直径15mmに打ち抜いて、厚さ40μm(目付量LiCoO純分で9.3mg/cm)の正極活物質層+セパレータの積層構造体とした。なお、上記正極活物質、バインダ及び導電助剤には、それぞれ、平均粒子径8μmのLiCoO、PVDF及びアセチレンブラック(平均粒子径35nm;電化ブラックHS−100)を用いた。
上記積層構造体を、アセチレンブラック(平均粒子径35nm;電化ブラックHS−100)(導電性フィラーA)20質量%を含むポリプロピレン(樹脂マトリックス)の厚さ100μmの樹脂集電体(膜)上に正極側が接触するように配置した。また、上記積層構造体の反対側(セパレータ側)には、リチウム金属の対極を配置し、セル(発電要素)とした。ここで、上記樹脂集電体(膜)及びリチウム金属(対極)も直径15mmに打ち抜いたものを用いた。また上記樹脂集電体(膜)の体積抵抗は、20Ω・cmであった。
上記セル(発電要素)をコインセル容器内に入れ、該容器内に1M LiPFのEC:DEC=1:1(質量比)の電解液を注入し、セル(発電要素)に電解液を含浸させ、該容器に蓋を被せて密閉し、コインセルを作製した。上記コインセルを用いて充放電評価を行った。
参考例1
比較例1と同様にして作製した正極スラリーを、厚さ20μmのアルミホイル(Al集電体)上に塗布、乾燥して、直径15mmで打ち抜いて、厚さ35μmの正極活物質層を形成し、正極とした。
上記正極の正極活物質層側に、比較例1と同様のポリプロピレン製の微多孔質のセパレータ(厚さ25μm)を接触するように配置した。また、セパレータの反対側には、リチウム金属の対極を配置し、セル(発電要素)とした。ここで、上記セパレータ及びリチウム金属(対極)も直径15mmに打ち抜いたものを用いた。
上記セル(発電要素)をコインセル容器内に入れ、該容器内に1M LiPFのEC:DEC=1:1(質量比)の電解液を注入し、セル(発電要素)に電解液を含浸させ、該容器に蓋を被せて密閉し、コインセルを作製した。上記コインセルを用いて充放電評価を行った。
実施例1
比較例1と同様にして、正極活物質層+セパレータの積層構造体を作製した。
次に、ポリフッ化ビニリデンの12質量%NMP溶液(クレハKF1120)8質量部、NMP88質量部、アセチレンブラック(導電性フィラーB;平均粒子径35nm;電化ブラックHS−100)4質量部を混合して電子伝導性層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、比較例1と同様の樹脂集電体の表面にアプリケーターでギャップ150μmで塗工し、80℃で8時間真空乾燥して脱溶剤させて、電子伝導性層を形成し、これらを直径15mmで打ち抜いて、樹脂集電体+電子伝導性層の積層構造体とした。このとき電子伝導性層の膜厚は13μmであった。電子伝導性層の形成に用いたポリフッ化ビニリデンは、電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子の1種であるフッ化ビニリデンを繰り返し単位からなる高分子である。また樹脂集電体(膜)の体積抵抗は、比較例1と同様に20Ω・cmであった。また電子伝導性層の体積抵抗は、2Ω・cmであった。
樹脂集電体+電子伝導性層の積層構造体に、正極活物質層+セパレータの積層構造体を乗せて(積層して)、電子伝導性層と正極活物質層とが接触するように配置した。また、上記正極活物質層+セパレータの積層構造体の反対側(セパレータ側)には、リチウム金属の対極を配置し、セル(発電要素)とした。ここで、上記リチウム金属(対極)も直径15mmに打ち抜いたものを用いた。
上記セル(発電要素)をコインセル容器内に入れ、該容器内に1M LiPFのEC:DEC=1:1(質量比)の電解液を注入し、セル(発電要素)に電解液を含浸させ、該容器に蓋を被せて密閉し、コインセルを作製した。上記コインセルを用いて充放電評価を行った。また、電子伝導性層の室温(25℃)での耐酸化性は、Li基準で、少なくとも4.3V以上までもつことを確認した。
実施例2
比較例1と同様にして、正極活物質層+セパレータの積層構造体を作製した。
次に、液状のエポキシ樹脂10質量部、結晶性2官能エポキシ樹脂14質量部、メチルエチルケトン73質量部、実施例1と同様のアセチレンブラック3質量部、硬化剤0.2質量部を混合して電子伝導性層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、比較例1と同様の樹脂集電体の表面にアプリケーターでギャップ30μmで塗工し、90℃で3時間真空乾燥して脱溶剤及び硬化して、電子伝導性層を形成し、これらを直径15mmで打ち抜いて、樹脂集電体+電子伝導性層の積層構造体とした。このとき電子伝導性層の膜厚は5μmだった。また、電子伝導性層の形成に用いた樹脂は、電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子の1種であるエポキシ樹脂である。詳しくは、エポキシ樹脂のうち液状のエポキシ樹脂には、セロキサイド2021P(脂環式エポキシ樹脂;ダイセル製)を用いた。またエポキシ樹脂のうち結晶性2官能エポキシ樹脂には、マープルーフG2050M(スチレンとグリシジルメタクリレートの共重合体;日油製)を用いた。上記エポキシ樹脂の硬化剤(重合開始剤ないし架橋剤)には、サンエイドSI−60(三新化学工業製)を用いた。また樹脂集電体(膜)の体積抵抗率は、比較例1と同様に20Ω・cmであった。また電子伝導性層の体積抵抗は、13Ω・cmであった。
樹脂集電体+電子伝導性層の積層構造体に、正極活物質層+セパレータの積層構造体を乗せて(積層して)、電子伝導性層と正極活物質層とが接触するように配置した。また、上記正極活物質層+セパレータの積層構造体の反対側(セパレータ側)には、リチウム金属の対極を配置し、セル(発電要素)とした。ここで、上記リチウム金属(対極)も直径15mmに打ち抜いたものを用いた。
上記セル(発電要素)をコインセル容器内に入れ、該容器内に1M LiPFのEC:DEC=1:1(質量比)の電解液を注入し、セル(発電要素)に電解液を含浸させ、該容器に蓋を被せて密閉し、コインセルを作製した。上記コインセルを用いて充放電評価を行った。また、電子伝導性層の室温(25℃)での耐酸化性は、Li基準で、少なくとも4.3V以上までもつことを確認した。
(充放電評価試験)
比較例1、参考例1および実施例1〜2でそれぞれ作製したコインセルを、45℃の恒温槽にいれて、以下の充放電条件でサイクル耐久試験を行った。
(充放電条件)
0.2CのCC−CVで4.3Vまで10時間充電し、0.2CのCCで3.0Vまで放電した。これを1サイクルとして50サイクル繰り返してサイクル耐久試験を行った。
(評価結果)
初回の放電容量に対する容量維持率の充放電サイクルに対する変化を図7に示した。図7から明らかなように、比較例1のアセチレンブラック(導電性フィラーA)20質量%を含むポリプロピレン(樹脂マトリックス)製の厚さ100μmの樹脂集電体(膜)では、急激にサイクル劣化してしまう。しかしながら、実施例のような電子伝導性層を、比較例1と同じ樹脂集電体(膜)と正極活物質層の間に配置することにより、サイクル耐久性を大幅に改善されることが確認できた。
また、実施例のような電子伝導性層を、樹脂集電体と正極活物質層の間に配置することにより、参考例1のAl集電体に比して大幅に軽量化(より高エネルギ化)した上で、Al集電体と同程度の優れたサイクル耐久性を発現できることが確認できた。
10a 扁平型(積層型)の双極型でない非水電解質リチウムイオン二次電池、
10b 扁平型(積層型)の双極型非水電解質リチウムイオン二次電池、
11 正極集電体、
11’ 双極型集電体、
11a 正極側の最外層双極型集電体、
11b 負極側の最外層双極型集電体、
12 負極集電体、
13 正極活物質層、
14 電子伝導性層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29、52 電池外装材、
31 シール部、
40 Li電池用正極、
41 正極集電体(双極型集電体を含む)、
42 電子伝導性層、
43 正極活物質層、
50 リチウムイオン二次電池、
58 正極タブ、
59 負極タブ。

Claims (9)

  1. ポリオレフィン系の樹脂マトリックスと導電性フィラーを含む樹脂集電体と、前記樹脂集電体上に設けられた正極活物質層と、を有するリチウム電池用正極において、
    前記正極活物質層と接する樹脂集電体表面に、電子伝導性層を配置したことを特徴とするリチウム電池用正極。
  2. 前記電子伝導性層の室温(25℃)での耐酸化性がLi基準で4.2V以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極。
  3. 前記電子伝導性層が、主にエポキシ樹脂と導電性フィラーを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム電池用正極。
  4. 前記電子伝導性層が、p型の導電性高分子であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム電池用正極。
  5. 前記電子伝導性層が、電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子と導電性フィラーを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム電池用正極。
  6. 前記電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子が、主にフッ化ビニリデンを繰り返し単位とする高分子からなることを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池用正極。
  7. 前記電子吸引性基を含む繰り返し単位を有する高分子が、主にエポキシ樹脂、または主に官能基としてカルボン酸エステルを有する繰り返し単位とする高分子であることを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池用正極。
  8. 前記電子伝導性層に用いる導電性フィラーが、カーボン系フィラーであることを特徴とする請求項3、5〜7のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極を用いてなることを特徴とするリチウム電池。
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