JP3952749B2 - リチウム電池用電極の製造方法およびリチウム電池用電極 - Google Patents

リチウム電池用電極の製造方法およびリチウム電池用電極 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法およびリチウム電池用電極に関し、詳しくは、低温特性に優れたリチウム電池を得られるリチウム電池用電極を製造する製造方法およびリチウム電池用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話や携帯ビデオカメラ等の電気機器の電源として、高い重量エネルギー密度を持つことから、リチウム電池の搭載が主流となりつつある。このリチウム電池は、リチウムを含む正極活物質をもち充電時にはリチウムをリチウムイオンとして放出し放電時にはリチウムイオンを吸蔵することができる正極と、負極活物質をもち充電時にはリチウムイオンを吸蔵し放電時にはリチウムイオンを放出することができる負極と、有機溶媒にリチウムが含まれる支持塩よりなる電解質が溶解されてなる非水電解液と、から構成される。
【0003】
また、このようなリチウム電池は、重量エネルギー密度を向上させるために、正極および負極がシート状に形成され、同じくシート状に形成されたセパレータを介して、シート状の正極および負極が巻回あるいは積層された状態で、ケース内に納められている。シート状の正極および負極は、集電体となる金属箔の表面に、活物質を含む合剤層を形成した構造をしている。
【0004】
リチウム電池の正極は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、yは特に限定しない)よりなる正極活物質、カーボン等よりなる導電剤、カルボキシルメチルセルロース(CMC)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等よりなるバインダが溶剤に分散した活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗工して合剤層を形成することで製造されている。
【0005】
リチウム電池の正極の製造において、溶剤にはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機系の溶液が用いられていた。これに対し、原料や取り扱いに要するコストの低減や排出時の環境負荷への影響から、溶剤として水が使用されてきている。
【0006】
しかしながら、溶剤に水が用いられて製造された正極は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機系の溶剤を用いて製造された正極と比較して、特に低温での出力が低下するという問題を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、活物質ペーストに水よりなる溶剤を用いても低温出力が低下しない電極を製造できるリチウム電池用電極の製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、低温出力の低下の原因について検討した結果、バインダとして用いられたCMCが活物質表面を被覆し、この活物質を被覆したバインダが電池を形成したときに、活物質界面におけるリチウムイオンの移動を阻害していると推測した。
【0009】
この結果、上記課題を解決するために本発明者らは、活物質表面を被覆してもリチウムイオンの移動を阻害しないバインダについて検討を重ねた結果、バインダの種類を調節し、バインダを構成する分子間のすき間を大きくすることで、リチウムイオンの移動が阻害されなくなることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法において、バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、分子量の大きな水溶性のセルロースがバインダとして用いられているため、バインダが活物質表面を被覆したときにリチウムイオンが通過できるすき間が形成される。この結果、本発明のリチウム電池用電極の製造方法により製造された電極は、活物質界面でのリチウムイオンの移動が阻害されなくなり、電池を形成したときに低温出力が向上した電池を得られる。
【0012】
本発明のリチウム電池用電極は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とする。
【0013】
本発明のリチウム電池用電極は、分子量の大きな水溶性のセルロースがバインダとして用いられているため、活物質表面を被覆したバインダにリチウムイオンが通過できるすき間が形成されている。この結果、本発明のリチウム電池用電極は、活物質界面でのリチウムイオンの移動が阻害されなくなり、電池を形成したときに低温出力が向上した電池を得られる。
【0014】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法において、バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とする。
【0015】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、分子量の大きな水溶性のセルロースがバインダとして用いられているため、バインダが活物質表面を被覆したときにリチウムイオンが通過できるすき間が形成される。この結果、本発明のリチウム電池用電極の製造方法により製造された電極は、活物質界面でのリチウムイオンの移動が阻害されなくなり、電池を形成したときに低温出力が向上した電池を得られる。
【0016】
本発明のリチウム電池用電極は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とする。
【0017】
本発明のリチウム電池用電極は、分子量の大きな水溶性のセルロースがバインダとして用いられているため、活物質表面を被覆したバインダにリチウムイオンが通過できるすき間が形成されている。この結果、本発明のリチウム電池用電極は、活物質界面でのリチウムイオンの移動が阻害されなくなり、電池を形成したときに低温出力が向上した電池を得られる。
【0018】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法において、バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とする。
【0019】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、バインダが分子量の分布が広い水溶性のセルロースを有するため、バインダが活物質表面を被覆したときにリチウムイオンが通過できるすき間が形成される。この結果、本発明のリチウム電池用電極の製造方法により製造された電極は、リチウムイオンの移動が阻害されなくなり、電池を形成したときに低温出力が向上する。
【0020】
本発明のリチウム電池用電極は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とする。
【0021】
本発明のリチウム電池用電極は、バインダが分子量の分布が広い水溶性のセルロースを有するため、バインダが活物質表面を被覆してもリチウムイオンが通過できるすき間が形成されている。この結果、本発明のリチウム電池用電極は、電池を形成したときに低温出力が向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】
(第一発明)
(製造方法)
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法において、バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有する。
【0023】
少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペーストが調製される。
【0024】
集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程により、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウム電池用電極となる。
【0025】
本発明の製造方法は、活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗布し、乾燥させてリチウム電池用電極を製造する。また、バインダと活物質とを有する活物質ペーストが調製され、乾燥されることで、表面をバインダが被覆した活物質が得られる。
【0026】
バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有する。バインダが1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有することで、製造されたリチウム電池用電極の活物質界面でのリチウムイオンの移動の阻害が抑えられ、この電極を用いた電池の低温特性が向上する。なお、本発明の製造方法において、バインダの粘度は、室温(約25℃)での粘度を示す。
【0027】
詳しくは、分子量の大きな水溶性のセルロースを有するバインダは、活物質ペーストが塗布される前の状態では、粒子レベルで不均一な状態で活物質表面に位置している。この状態で活物質ペーストが乾燥すると、活物質表面にバインダが不均一な状態で固定される。不均一な状態で固定されると、活物質表面にバインダに被覆されないすき間ができ、リチウム電池が組み立てられたときにリチウムイオンがこのすき間を通るようになる。この結果、十分なリチウムイオンの移動が確保されるため、低温での電池の特性が向上する。
【0028】
さらに、分子量の大きな水溶性のセルロースは、かさ高い分子である。このことから、バインダが活物質表面を被覆しても、水溶性のセルロース分子のかさ高さにより、分子鎖間にすき間が生じ、リチウムイオンの移動経路が確保される。
【0029】
一般に、水に溶解したときの水溶性のセルロースの粘度と水溶性のセルロースの分子量とは正の相関関係を有している。すなわち、水溶性のセルロース水溶液の粘度が大きくなるほど、水溶性のセルロースの分子量が大きくなる。
【0030】
さらに、本発明の製造方法は、バインダが高い粘度の水溶性のセルロースを有することで調製された活物質ペーストの粘度が高くなり、バインダ量を減らすことができる。すなわち、少量のバインダで活物質ペーストの粘性を付与できるため、バインダ量を減らすことができる。バインダ量が減少すると、活物質表面を被覆するバインダ量が減少し、活物質界面におけるリチウムイオンの移動の阻害が減少する。この結果、正極を用いて組み立てられた電池の低温特性が向上する。
【0031】
セルロースは、バインダとして用いることができる水溶性のセルロースであれば限定されるものではない。本発明の製造方法は水を溶剤として活物質ペーストを調製するため、バインダには水溶性高分子であることが求められる。水溶性のセルロースとしては、たとえば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシルセルロース、メチルセルロースをあげることができる。
【0032】
バインダは、水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することが好ましい。水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することで、活物質を被覆したバインダ間のすき間が増加する。すなわち、分子量が異なる水溶性高分子を配することで、バインダを構成する分子同士の立体障害が増加し、活物質表面のすき間が形成されるようになる。
【0033】
また、水溶性高分子は、水溶性のセルロースだけでなく、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子をあげることができる。
【0034】
さらに、バインダが、水に分散する樹脂を有することが好ましい。水に分散する樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン類、ポリイミド樹脂等の耐有機溶媒性に優れる水分散タイプの樹脂をあげることができる。
【0035】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、バインダが水溶性のセルロースを有する以外は、特に限定されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、従来のリチウム電池用電極の製造に用いられている材料を用いることができる。
【0036】
本発明の製造方法は、正極および負極の製造に適用できる。さらに、本発明の製造方法により製造された正極および負極の両極を電池に適用すればより効果的となる。本発明の製造方法により製造されたリチウム電池用電極は、リチウム電池用正極であることがより好ましい。
【0037】
本発明の製造方法を正極に適用するときには、活物質は正極活物質となる。
【0038】
正極活物質は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)であることが好ましい。このLiMexOyは、特に限定されるものではない。たとえば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物を用いることができる。
【0039】
LiMn24系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さらに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0040】
活物質ペーストは、導電材を有することが好ましい。活物質ペーストが導電材を有することで、製造される正極の特性が向上する。
【0041】
導電材は、正極の電気伝導性を確保する。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上の混合したものをあげることができる。
【0042】
また、活物質ペーストが塗布される正極の集電体としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0043】
本発明の製造方法を負極に適用するときには、活物質は負極活物質となる。
【0044】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイトまたは非晶質炭素等の炭素材料等をあげることができる。そして、ショート不良等の発生原因となるデンドライト状リチウムの析出がなく、リチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された負極活物質としては、炭素材料が好ましい。
【0045】
活物質ペーストは、負極活物質以外に必要に応じて結着剤等を有することが好ましい。
【0046】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることができる。
【0047】
負極の集電体としては、たとえば、銅、ニッケルなどを網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0048】
さらに、本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、活物質合剤層が形成された後に、集電体と活物質合剤層とを圧縮することが好ましい。圧縮することで、活物質合剤層の密度が向上するとともに、活物質粒子の距離が短くなる。
【0049】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、分子量の大きな水溶性のセルロースがバインダとして用いられているため、バインダが活物質表面を被覆したときにリチウムイオンが通過できるすき間が形成される。この結果、本発明のリチウム電池用電極の製造方法により製造された電極は、リチウムイオンの移動が阻害されなくなり、低温出力が向上する。
【0050】
(リチウム電池用電極)
本発明のリチウム電池用電極は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有する。
【0051】
少なくとも活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペーストが調製される。
【0052】
Alよりなる集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程により、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウム電池用電極となる。
【0053】
本発明のリチウム電池用電極は、活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗布し、乾燥させて製造される。また、バインダと活物質とを有する活物質ペーストが調製され、乾燥されることで、表面をバインダが被覆した活物質が得られる。
【0054】
バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有する。バインダが1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有することで、リチウム電池用電極は、活物質界面でのリチウムイオンの移動の阻害が抑えられ、電池の低温特性が向上する。なお、本発明のリチウム電池用電極において、バインダの粘度は、室温(25℃)での粘度を示す。
【0055】
詳しくは、分子量の大きな水溶性のセルロースを有するバインダは、活物質ペーストが塗布される前の状態では、粒子レベルで不均一な状態で活物質表面に位置している。この状態で活物質ペーストが乾燥すると、活物質表面にバインダが不均一な状態で固定される。不均一な状態で固定されると、活物質表面にバインダに被覆されないすき間ができ、リチウム電池が組み立てられたときにリチウムイオンがこのすき間を通るようになる。この結果、十分なリチウムイオンの移動が確保されるため、低温特性が向上する。
【0056】
さらに、分子量の大きな水溶性のセルロースは、かさ高い分子である。このことから、バインダが活物質表面を被覆しても、水溶性のセルロース分子のかさ高さにより、分子鎖間にすき間が生じ、リチウムイオンの移動経路が確保される。
【0057】
一般に、水に溶解したときの水溶性のセルロースの粘度と水溶性のセルロースの分子量とは正の相関関係を有している。すなわち、水溶性のセルロース水溶液の粘度が大きくなるほど、水溶性のセルロースの分子量が大きくなる。
【0058】
さらに、バインダが高い粘度の水溶性のセルロースを有することで、活物質ペーストの粘度も高くなり、バインダ量を減らすことができる。すなわち、少量のバインダで活物質ペーストの粘性を付与できるため、バインダ量を減らすことができる。バインダ量が減少すると、活物質表面を被覆するバインダ量が減少し、活物質界面におけるリチウムイオンの移動の阻害が抑えられる。この結果、本発明のリチウム電池用電極を用いて組み立てられた電池の低温特性が向上する。
【0059】
水溶性のセルロースは、バインダとして用いることができる水溶性のセルロースであれば限定されるものではない。本発明のリチウム電池用電極はその製造工程において、水を溶剤として活物質ペーストを調製するため、バインダには水溶性高分子であることが求められる。水溶性のセルロースとしては、たとえば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシルセルロース、メチルセルロースをあげることができる。
【0060】
バインダは、水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することが好ましい。水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することで、活物質を被覆したバインダ間のすき間が増加する。すなわち、分子量が異なる水溶性高分子を配することで、バインダを構成する分子同士の立体障害が増加し、活物質表面のすき間が形成されるようになる。
【0061】
また、水溶性高分子は、水溶性のセルロースだけでなく、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子をあげることができる。
【0062】
さらに、バインダが、水に分散する樹脂を有することが好ましい。水に分散する樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン類、ポリイミド樹脂等の耐有機溶媒性に優れる水分散タイプの樹脂をあげることができる。
【0063】
本発明のリチウム電池用電極はその製造工程において、バインダが水溶性のセルロースを有する以外は、特に限定されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、従来のリチウム電池用電極の製造に用いられている材料を用いることができる。
【0064】
本発明のリチウム電池用電極は、正極および負極に適用できる。さらに、本発明のリチウム電池用電極を、正極および負極の両極を電池にに適用すればより効果的となる。本発明のリチウム電池用電極は、リチウム電池用正極であることがより好ましい。
【0065】
本発明のリチウム電池用電極を正極として用いるときには、活物質は正極活物質となる。
【0066】
正極活物質は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)であることが好ましい。このLiMexOyは、特に限定されるものではない。たとえば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物を用いることができる。
【0067】
LiMn24系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さらに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0068】
活物質ペーストは、導電材を有することが好ましい。活物質ペーストが導電材を有することで、正極の特性が向上する。
【0069】
導電材は、正極の電気伝導性を確保する。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上の混合したものをあげることができる。
【0070】
また、活物質ペーストが塗布される正極の集電体としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0071】
本発明のリチウム電池用電極を負極として用いるときには、活物質は負極活物質となる。
【0072】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイトまたは非晶質炭素等の炭素材料等をあげることができる。そして、ショート不良等の発生原因となるデンドライト状リチウムの析出がなく、リチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された負極活物質としては、炭素材料が好ましい。
【0073】
活物質ペーストは、負極活物質以外に必要に応じて結着剤等を有することが好ましい。
【0074】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることができる。
【0075】
負極の集電体としては、たとえば、銅、ニッケルなどを網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0076】
さらに、本発明のリチウム電池用電極は、活物質合剤層が形成された後に、集電体と活物質合剤層とを圧縮されてなることが好ましい。圧縮されることで、活物質合剤層の密度が向上するとともに、活物質粒子の距離が短くなる。
【0077】
本発明のリチウム電池用電極は、分子量の大きなセルロースがバインダとして用いられているため、バインダが活物質表面を被覆してもリチウムイオンが通過できるすき間が形成されている。この結果、本発明のリチウム電池用電極は、低温出力が向上している。
【0078】
(第二発明)
(製造方法)
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法において、バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有する。
【0079】
少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペーストが調製される。
【0080】
集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程により、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウム電池用電極となる。
【0081】
本発明の製造方法は、活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗布し、乾燥させてリチウム電池用電極を製造する。また、バインダと活物質とを有する活物質ペーストが調製され、乾燥されることで、表面をバインダが被覆した活物質が得られる。
【0082】
バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有する。バインダが重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有することで、製造されたリチウム電池用電極は、活物質のリチウムイオンの移動の阻害が抑えられ、リチウム電池用電極を用いた電池の低温特性が向上する。
【0083】
重量平均分子量は、高分子の分子量を規定する手法の一つである。すなわち、重合された高分子は一般に分子量に分布がある。このような高分子は、M1の分子量をもつ分子がn1個、M2の分子量をもつ分子がn2個、…Mnの分子量をもつ分子がnn個の混合物よりなる。
【0084】
この高分子の分子量は、以下の数1で示された試料重量を分子の数で割って計算される数平均分子量(Mn)と、数2で示され重量の平均値から決まる重量平均分子量(Mw)とがある。
【0085】
【数1】
Figure 0003952749
【0086】
【数2】
Figure 0003952749
【0087】
高分子を構成する各種の分子は、混合物中に含まれる割合だけでなく、その質量に応じて平均値に寄与するので重量平均分子量が必要とされる。重量平均分子量の大きな高分子は、分子量の大きな高分子を有する。
【0088】
分子量の大きな水溶性のセルロースを有するバインダは、活物質ペーストが塗布される前の状態では、粒子レベルで不均一な状態で活物質表面に位置している。この状態で活物質ペーストが乾燥すると、活物質表面にバインダが固定され、活物質表面を被覆したバインダは不均一に分布するようになる。このため、活物質表面にバインダに被覆されないすき間ができ、リチウム電池が組み立てられたときにリチウムイオンがこのすき間を通るようになる。この結果、十分なリチウムイオンの移動が確保されるため、低温特性が向上する。
【0089】
さらに、分子量の大きな水溶性のセルロースは、かさ高い分子である。このことから、バインダが活物質表面を被覆しても、水溶性のセルロース分子のかさ高さにより、分子鎖間にすき間が生じ、リチウムイオンの導通経路が確保される。
【0090】
この相互作用から、バインダの水溶性のセルロースの分子量は、大きければ大きいほど、組み立てられた電池の低温特性が向上する。
【0091】
水溶性のセルロースは、バインダとして用いることができる水溶性のセルロースであれば限定されるものではない。本発明の製造方法は水を溶剤として活物質ペーストを調製するため、バインダには水溶性高分子であることが求められる。水溶性のセルロースとしては、たとえば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシルセルロース、メチルセルロースをあげることができる。
【0092】
バインダは、水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することが好ましい。水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することで、活物質を被覆したバインダ間のすき間が増加する。すなわち、分子量が異なる水溶性高分子を配することで、バインダを構成する分子同士の立体障害が増加し、活物質表面のすき間が形成されるようになる。
【0093】
また、水溶性高分子は、水溶性のセルロースだけでなく、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子をあげることができる。
【0094】
さらに、バインダが、水に分散する樹脂を有することが好ましい。水に分散する樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン類、ポリイミド樹脂等の耐有機溶媒性に優れる水分散タイプの樹脂をあげることができる。
【0095】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、バインダが水溶性のセルロースを有する以外は、特に限定されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、従来のリチウム電池用電極の製造に用いられている材料を用いることができる。
【0096】
本発明の製造方法は、正極および負極の製造に適用できる。さらに、本発明の製造方法により製造された正極および負極の両極を電池に適用すればより効果的となる。本発明の製造方法により製造されたリチウム電池用電極は、リチウム電池用正極であることがより好ましい。
【0097】
本発明の製造方法を正極に適用するときには、活物質は正極活物質となる。
【0098】
正極活物質は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)であることが好ましい。このLiMexOyは、特に限定されるものではない。たとえば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物を用いることができる。
【0099】
LiMn24系、LiCoO2系、、LiNiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さらに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0100】
活物質ペーストは、導電材を有することが好ましい。活物質ペーストが導電材を有することで、製造される正極の特性が向上する。
【0101】
導電材は、正極の電気伝導性を確保する。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上の混合したものをあげることができる。
【0102】
また、活物質ペーストが塗布される正極の集電体としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0103】
本発明の製造方法を負極に適用するときには、活物質は負極活物質となる。
【0104】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイトまたは非晶質炭素等の炭素材料等をあげることができる。そして、ショート不良等の発生原因となるデンドライト状リチウムの析出がなく、リチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された負極活物質としては、炭素材料が好ましい。
【0105】
負極は、負極活物質以外に必要に応じて結着剤を混合して得られた活物質ペーストが集電体に塗布されてなることが好ましい。
【0106】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることができる。
【0107】
負極の集電体としては、たとえば、銅、ニッケルなどを網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0108】
さらに、本発明の電極の製造方法は、活物質合剤層が形成された後に、集電体と活物質合剤層とを圧縮することが好ましい。圧縮することで、活物質合剤層の密度が向上するとともに、活物質粒子の距離が短くなる。
【0109】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、分子量の大きな水溶性のセルロースがバインダとして用いられているため、バインダが活物質表面を被覆したときにリチウムイオンが通過できるすき間が形成される。この結果、本発明のリチウム電池用電極の製造方法により製造された電極は、リチウムイオンの移動が阻害されなくなり、低温出力が向上する。
【0110】
(リチウム電池用電極)
本発明のリチウム電池用電極は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とする。
【0111】
少なくとも活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペーストが調製される。
【0112】
Alよりなる集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程により、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウム電池用電極となる。
【0113】
本発明のリチウム電池用電極は、活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗布し、乾燥させて製造される。バインダと活物質とを有する活物質ペーストが調製され、乾燥されることで、表面をバインダが被覆した活物質が得られる。
【0114】
バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有する。バインダが重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有することで、リチウム電池用電極は、正極活物質のリチウムイオンの移動の阻害が抑えられ、リチウム電池用電極を用いた電池の低温特性が向上する。
【0115】
重量平均分子量の大きな高分子は、分子量の大きな高分子を有する。
【0116】
分子量の大きな水溶性のセルロースを有するバインダは、活物質ペーストが塗布される前の状態では、粒子レベルで不均一な状態で活物質表面に位置している。この状態で活物質ペーストが乾燥すると、活物質表面にバインダが固定され、活物質表面を被覆したバインダは不均一に分布するようになる。このため、活物質表面にバインダに被覆されないすき間ができ、リチウム電池が組み立てられたときにリチウムイオンがこのすき間を通るようになる。この結果、十分なリチウムイオンの移動が確保されるため、低温特性が向上する。
【0117】
さらに、分子量の大きな水溶性のセルロースは、かさ高い分子である。このことから、バインダが活物質表面を被覆しても、水溶性のセルロース分子のかさ高さにより、分子鎖間にすき間が生じ、リチウムイオンの導通経路が確保される。
【0118】
この相互作用から、バインダの水溶性のセルロースの分子量は、大きければ大きいほど、組み立てられた電池の低温特性が向上する。
【0119】
水溶性のセルロースは、バインダとして用いることができる水溶性のセルロースであれば限定されるものではない。本発明のリチウム電池用電極はその製造工程において、水を溶剤として活物質ペーストを調製するため、バインダには水溶性高分子であることが求められる。水溶性のセルロースとしては、たとえば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシルセルロース、メチルセルロースをあげることができる。
【0120】
バインダは、水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することが好ましい。水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することで、活物質を被覆したバインダ間のすき間が増加する。すなわち、分子量が異なる水溶性高分子を配することで、バインダを構成する分子同士の立体障害が増加し、活物質表面のすき間が形成されるようになる。
【0121】
また、水溶性高分子は、水溶性のセルロースだけでなく、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子をあげることができる。
【0122】
さらに、バインダが、水に分散する樹脂を有することが好ましい。水に分散する樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン類、ポリイミド樹脂等の耐有機溶媒性に優れる水分散タイプの樹脂をあげることができる。
【0123】
本発明のリチウム電池用電極は、バインダが水溶性のセルロースを有してなること以外は、特に限定されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、従来のリチウム電池用電極の製造に用いられている材料を用いることができる。
【0124】
本発明のリチウム電池用電極は、正極および負極に適用できる。さらに、本発明のリチウム電池用電極を、正極および負極の両極に適用すればより効果的となる。本発明のリチウム電池用電極は、リチウム電池用正極であることがより好ましい。
【0125】
本発明のリチウム電池用電極を正極として用いるときには、活物質は正極活物質となる。
【0126】
正極活物質は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)であることが好ましい。このLiMexOyは、特に限定されるものではない。たとえば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物を用いることができる。
【0127】
LiMn24系、LiCoO2系、、LiNiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さらに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0128】
活物質ペーストは、導電材を有することが好ましい。活物質ペーストが導電材を有することで、製造される正極の特性が向上する。
【0129】
導電材は、正極の電気伝導性を確保する。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上の混合したものをあげることができる。
【0130】
また、活物質ペーストが塗布される正極の集電体としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0131】
本発明のリチウム電池用電極を負極として用いるときには、活物質は負極活物質となる。
【0132】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイトまたは非晶質炭素等の炭素材料等をあげることができる。そして、ショート不良等の発生原因となるデンドライト状リチウムの析出がなく、リチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された負極活物質としては、炭素材料が好ましい。
【0133】
活物質ペーストは、負極活物質以外に必要に応じて結着剤等を有することが好ましい。
【0134】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることができる。
【0135】
負極の集電体としては、たとえば、銅、ニッケルなどを網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0136】
さらに、本発明のリチウム電池用電極は、活物質合剤層が形成された後に、集電体と活物質合剤層とを圧縮されてなることが好ましい。圧縮することで、活物質合剤層の密度が向上するとともに、活物質粒子の距離が短くなる。
【0137】
本発明のリチウム電池用電極は、分子量の大きなセルロースがバインダとして用いられているため、バインダが活物質表面を被覆したときにリチウムイオンが通過できるすき間が形成されている。この結果、本発明のリチウム電池用電極は、リチウムイオンの移動が阻害されなくなっており、電池を形成したときに低温出力が向上する。
【0138】
(第三発明)
(製造方法)
本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法において、バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有する。
【0139】
少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペーストが調製される。
【0140】
集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程により、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウム電池用電極となる。
【0141】
すなわち、本発明の製造方法は、活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗布し、乾燥させてリチウム電池用電極を製造する。また、本発明の製造方法においては、バインダと活物質とを有する活物質ペーストが調製され、乾燥されることで、表面をバインダが被覆した活物質が得られる。
【0142】
バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有する。バインダが重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有することで、製造されたリチウム電池用電極は、活物質のリチウムイオンの移動の阻害が抑えられ、リチウム電池用電極を用いた電池の低温特性が向上する。ここで、重量平均分子量および数平均分子量は、上記した数1および数2で規定される。
【0143】
詳しくは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースは、さまざまな分子量の水溶性のセルロース分子が混合している。このため、この水溶性のセルロースが活物質表面を被覆したときには、分子量の差および分子構造の不均一により、水溶性のセルロース分子の間にすき間が形成される。バインダの水溶性のセルロースにすき間が形成されると、活物質へのリチウムイオンの移動が阻害されない電極となり、低温特性の優れた電池を得ることができる。
【0144】
重量平均分子量/数平均分子量は、一般に高分子の分子量分布の広がりを示す。分子量分布に広がりがあると重量平均分子量は、必ず数平均分子量より大きくなり、広がりが広くなるほど重量平均分子量と数平均分子量との差が広がることが知られている。ことため、重量平均分子量/数平均分子量が大きくなると、分子量分布が広くなる。
【0145】
水溶性のセルロースは、バインダとして用いることができる水溶性のセルロースであれば限定されるものではない。本発明の製造方法は水を溶剤として活物質ペーストを調製するため、バインダには水溶性高分子であることが求められる。水溶性のセルロースとしては、たとえば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシルセルロース、メチルセルロースをあげることができる。
【0146】
バインダは、水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することが好ましい。水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することで、活物質を被覆したバインダ間のすき間が増加する。すなわち、分子量が異なる水溶性高分子を配することで、バインダを構成する分子同士の立体障害が増加し、活物質表面のすき間が形成されるようになる。
【0147】
また、水溶性高分子は、水溶性のセルロースだけでなく、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子をあげることができる。
【0148】
さらに、バインダが、水に分散する樹脂を有することが好ましい。水に分散する樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン類、ポリイミド樹脂等の耐有機溶媒性に優れる水分散タイプの樹脂をあげることができる。
【0149】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、バインダが水溶性のセルロースを有する以外は、特に限定されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、従来のリチウム電池用電極の製造に用いられている材料を用いることができる。
【0150】
本発明の製造方法は、正極および負極の製造に適用できる。さらに、本発明の製造方法により製造された正極および負極の両極を電池に適用すればより効果的となる。本発明の製造方法により製造されたリチウム電池用電極は、リチウム電池用正極であることがより好ましい。
【0151】
本発明の製造方法を正極に適用するときには、活物質は正極活物質となる。
【0152】
正極活物質は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)であることが好ましい。このLiMexOyは、特に限定されるものではない。たとえば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物を用いることができる。
【0153】
LiMn24系、LiCoO2系、、LiNiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さらに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0154】
活物質ペーストは、導電材を有することが好ましい。活物質ペーストが導電材を有することで、製造される正極の特性が向上する。
【0155】
導電材は、正極の電気伝導性を確保する。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上の混合したものをあげることができる。
【0156】
また、活物質ペーストが塗布される正極の集電体としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0157】
本発明の製造方法を負極に適用するときには、活物質は負極活物質となる。
【0158】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイトまたは非晶質炭素等の炭素材料等をあげることができる。そして、ショート不良等の発生原因となるデンドライト状リチウムの析出がなく、リチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された負極活物質としては、炭素材料が好ましい。
【0159】
活物質ペーストは、負極活物質以外に必要に応じて結着剤等を有することが好ましい。
【0160】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることができる。
【0161】
負極の集電体としては、たとえば、銅、ニッケルなどを網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0162】
さらに、本発明の電極の製造方法は、活物質合剤層が形成された後に、集電体と活物質合剤層とを圧縮することが好ましい。圧縮することで、活物質合剤層の密度が向上するとともに、活物質粒子の距離が短くなる。
【0163】
本発明のリチウム電池用電極の製造方法は、バインダが分子量の分布が広い水溶性のセルロースを有するため、バインダが活物質表面を被覆したときにリチウムイオンが通過できるすき間が形成される。この結果、本発明のリチウム電池用電極の製造方法により製造された電極は、リチウムイオンの移動が阻害されなくなり、低温出力が向上する。
【0164】
(リチウム電池用正極)
本発明のリチウム電池用電極は、少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有する。
【0165】
少なくとも活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調製する工程において、水を溶剤として用いた活物質ペーストが調製される。
【0166】
Alよりなる集電体の表面に活物質ペーストを塗布し、乾燥させて活物質合剤層を形成する工程により、集電体の表面に活物質合剤層が形成され、リチウム電池用電極となる。
【0167】
すなわち、本発明のリチウム電池用電極は、活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗布し、乾燥させて製造される。また、本発明のリチウム電池用電極は、バインダと活物質とを有する活物質ペーストが調製され、乾燥されることで、表面をバインダが被覆した活物質が得られる。
【0168】
バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有する。バインダが重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有することで、製造されたリチウム電池用電極は、活物質のリチウムイオンの移動の阻害が抑えられ、このリチウム電池用電極を用いた電池の低温特性が向上する。ここで、重量平均分子量および数平均分子量は、上記した数1および数2で規定される。
【0169】
詳しくは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースは、さまざまな分子量の水溶性のセルロース分子が混合している。このため、この水溶性のセルロースが活物質表面を被覆したときには、分子量の差および分子構造の不均一により、水溶性のセルロース分子の間にすき間が形成される。バインダの水溶性のセルロースにすき間が形成されると、活物質へのリチウムイオンの移動が阻害されない正極となり、低温特性の優れた電池を得ることができる。
【0170】
水溶性のセルロースは、バインダとして用いることができる水溶性のセルロースであれば限定されるものではない。本発明のリチウム電池用電極はその製造工程において、水を溶剤として活物質ペーストを調製するため、バインダには水溶性高分子であることが求められる。水溶性のセルロースとしては、たとえば、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシルセルロース、メチルセルロースをあげることができる。
【0171】
バインダは、水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することが好ましい。水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有することで、活物質を被覆したバインダ間のすき間が増加する。すなわち、分子量が異なる水溶性高分子を配することで、バインダを構成する分子同士の立体障害が増加し、活物質表面のすき間が形成されるようになる。
【0172】
また、水溶性高分子は、水溶性のセルロースだけでなく、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸塩等の水溶性高分子をあげることができる。
【0173】
さらに、バインダが、水に分散する樹脂を有することが好ましい。水に分散する樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン等のオレフィン類、ポリイミド樹脂等の耐有機溶媒性に優れる水分散タイプの樹脂をあげることができる。
【0174】
本発明のリチウム電池用電極は、バインダが水溶性のセルロースを有してなること以外は、特に限定されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、従来のリチウム電池用正極の製造に用いられている材料を用いることができる。
【0175】
本発明のリチウム電池用電極は、正極および負極に適用できる。さらに、本発明のリチウム電池用電極を、正極および負極の両極を電池にに適用すればより効果的となる。本発明のリチウム電池用電極は、リチウム電池用正極であることがより好ましい。
【0176】
本発明のリチウム電池用電極を正極として用いるときには、活物質は正極活物質となる。
【0177】
正極活物質は、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)であることが好ましい。このLiMexOyは、特に限定されるものではない。たとえば、LiMnO2、LiMn24、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物を用いることができる。
【0178】
LiMn24系、LiCoO2系、、LiNiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さらに、材料コストの低さから、LiMn24系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0179】
活物質ペーストは、導電材を有することが好ましい。活物質ペーストが導電材を有することで、製造される正極の特性が向上する。
【0180】
導電材は、正極の電気伝導性を確保する。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上の混合したものをあげることができる。
【0181】
また、活物質ペーストが塗布される正極の集電体としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0182】
本発明のリチウム電池用電極を負極として用いるときには、活物質は負極活物質となる。
【0183】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能な材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイトまたは非晶質炭素等の炭素材料等をあげることができる。そして、ショート不良等の発生原因となるデンドライト状リチウムの析出がなく、リチウムを電気化学的に吸蔵・放出し得るインターカレート材料で形成された負極活物質としては、炭素材料が好ましい。
【0184】
活物質ペーストは、負極活物質以外に必要に応じて結着剤等を有することが好ましい。
【0185】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることができる。
【0186】
負極の集電体としては、たとえば、銅、ニッケルなどを網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0187】
さらに、本発明のリチウム電池用電極は、活物質合剤層が形成された後に、集電体と活物質合剤層とを圧縮されてなることが好ましい。圧縮することで、活物質合剤層の密度が向上するとともに、活物質粒子の距離が短くなる。
【0188】
本発明のリチウム電池用電極は、バインダが分子量の分布が広い水溶性のセルロースを有するため、バインダが活物質表面を被覆してもリチウムイオンが通過できるすき間が形成されている。この結果、本発明のリチウム電池用電極は、低温出力が向上する。
【0189】
(リチウム電池)
第一〜第三発明のリチウム電池用電極の製造方法で製造された電極および本発明のリチウム電池用電極は、通常のリチウム電池用電極と同様にしてリチウム電池を形成することができる。
【0190】
すなわち、正極と負極とを電解液とともに電池容器内に収容することで製造できる。なお、第一〜第三発明のリチウム電池用電極を正極または負極に用いたときの相手極は、従来のリチウム電池において用いられている電極を用いることができる。
【0191】
電解液は、通常のリチウム二次電池に用いられる電解液であればよく、電解質塩と非水溶媒とから構成される。
【0192】
電解質塩としては、たとえば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCl、LiBr、LiCF3SO3、LiN(CF3 SO22、LiC(CF3SO23、LiI、LiAlCl4、NaClO4、NaBF4、Nal等をあげることができ、特に、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6などの無機リチウム塩、LiN(SO2x2x+1)(SO2y2y+1)で表される有機リチウム塩をあげることができる。ここで、xおよびyは1〜4の整数を表し、また、x+yは3〜8である。有機リチウム塩としては、具体的には、LiN(SO2 CF3)(SO225)、LiN(SO2CF3)(SO237)、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiN(SO225)(SO225)、LiN(SO225)(SO237)、LiN(SO225)(SO249)等があげられる。なかでも、LiN(SO2CF3 )(SO249)、LiN(SO225)(SO225)などを電解質に使用すると、電気特性に優れるので好ましい。
【0193】
なお、この電解質塩は、電解液中での濃度が、0.5〜2mol/dm3となるように溶解していることが好ましい。電解液中の濃度が0.5mol/dm3未満となると十分な電流密度が得られないことがあり、2mol/dm3を超えると粘度が増加し、電解液の導電性の低下を生じるようになるためである。
【0194】
電解質塩が溶解する有機溶媒としては、通常のリチウム二次電池の非水電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されず、例えば、カーボネート化合物、ラクトン化合物、エーテル化合物、スルホラン化合物、ジオキソラン化合物、ケトン化合物、ニトリル化合物、ハロゲン化炭化水素化合物等をあげることができる。詳しくは、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジメチルカーボネート、プロピレングリコールジメチルカーボネート、エチレングリコールジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチルラクトン等のラクトン類、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、スルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホラン類、1,3−ジオキソラン等のジオキソラン類、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、アセトニトリル、ピロピオニトリル、バレロニトリル、ベンソニトリル等のニトリル類、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、その他のメチルフォルメート、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等をあげることができる。さらに、これらの混合物であってもよい。
【0195】
これらの有機溶媒のうち、特に、カーボネート類からなる群より選ばれた一種以上の非水溶媒が、電解質の溶解性、誘電率および粘度において優れているので、好ましい。
【0196】
正極を用いて形成されるリチウム電池は、その形状が特に限定されるものではなく、たとえば、シート型、コイン型、円筒型、角型など、種々の形状の電池として使用できる。好ましくは、正極および負極がシート状に形成され、シート状のセパレータを介した状態で巻回された巻回型電極体であることが好ましい。さらに、体積効率に優れることから扁平形状巻回型電極体であることがより好ましい。
【0197】
セパレータについても、通常のリチウム二次電池に用いられるセパレータであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等よりなる多孔質樹脂をあげることができる。
【0198】
本発明の電極を用いて形成されるリチウム電池は、電極におけるサイクル特性の劣化が生じないため、優れたサイクル特性を有する。
【0199】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0200】
本発明の実施例として、リチウム電池用正極を製造した。
【0201】
(実施例1)
実施例1として、正極活物質とバインダと水とを有する活物質ペーストを調製し、この活物質ペーストを集電体の表面に塗布、乾燥させてリチウム電池用正極を製造した。
【0202】
まず、正極活物質として平均粒径が8μmのLiNi0.81Co0.16Al0.032粒子を87重量部と、導電材として平均粒径が50nmのカーボンブラック粒子(デンカブラック HS−100)を10重量部と、バインダのCMCを1〜2重量部と、バインダのPTFEディスパージョンをPTFE換算で1重量部を、83重量部の純水に投入して、ホモジナイザ式の混練機を用いて混練して活物質ペーストを調製した。
【0203】
その後、調製された活物質ペーストをAl箔よりなる集電体の表面に塗布した。ここで、Al箔には、1N30−H材(Al:99.3%以上)よりなり、厚さが15μmのAl箔が用いられた。
【0204】
活物質ペーストの塗布は、コンマコータにてAl箔表面上に片面あたり目付量6.4mg/cm2で両面に塗布された。その後、80℃に保持された炉内を2分で通過させて乾燥させた。
【0205】
その後、線圧0.2ton/cmでプレス成形を行って、活物質合剤層の密度を向上させた。
【0206】
以上の手段により、実施例1の正極が製造された。
【0207】
なお、バインダのCMCには粘度および重量平均分子量の異なる4種類のCMCが用いられた。4種類のCMCを表1に示した。なお、表1に記載された1%水溶液の粘度は、25℃の温度で、B型粘度計により測定された値である。また、CMCの重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー法(GPC法)により測定された。
【0208】
【表1】
Figure 0003952749
【0209】
(評価)
実施例1の正極の評価として、リチウム電池を製造し、このリチウム電池の低温特性を測定した。
【0210】
(リチウム電池の製造)
負極活物質のグラファイト92.5重量部の、バインダのPVDF7.5重量部、130重量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に投入し、ホモジナイザ式の混練機を用いて混練して負極活物質ペーストを調製した。
【0211】
調製された負極活物質ペーストは、正極と同様にコンマコータを用いて銅箔上に片面あたりの目付量が3.8mg/cm2となるように両面にペーストを塗布、乾燥した。その後、ロールプレス機を通し、線圧0.25ton/cmの荷重をかけ、電極密度を1.25g/cm3にまで上昇させた電極を作製した。
【0212】
以上の手段により負極が製造された。
【0213】
以上で得られた負極と実施例1の正極とをセパレータを介した状態で巻回させて、巻回型電極を形成し、この電極をケースの内部に挿入した。このとき、集電リードがケースの正極端子および負極端子に接合された。
【0214】
セパレ−タは、厚さが25μmのポリエチレン製多孔質膜を、電解液にはエチレンカーボネート(EC)とをジエチレンカーボネート(DEC)を30:70の体積比で混合した溶媒に電解質として1mol/リットルのLiPF6を溶解させたものを用いた。
【0215】
また、巻回型電極が収容されたケースは、直径18mm、高さ65mmの内部空間を有していた。
【0216】
その後、ケース内に電解液が注入され、ケースが閉じられた。
【0217】
(低温特性)
低温特性の測定は、以下の手段により行われた。
【0218】
まず、25サイクル目まで、室温で充放電を行った後に、電池電圧を3.62Vに調節した状態で、内部温度が−30℃に保持された恒温槽内に保持し、出力特性を測定した。
【0219】
25サイクル目までの充放電は、電流が2C、電圧が4.1Vでの低電流充電と、電流が2C、電圧が3Vの低電流放電と、を繰り返した。
【0220】
出力特性の測定は、まず、電池を0.1Aの電流値で10秒間充電し、充電終了直後の電池の電圧を測定する。また、電池は、充電終了後に5分間保持された後に、0.1Aの低電流で10秒間放電し、放電終了直後の電池の電圧を測定する。そして、電池が放電終了後に5分間保持された後に、0.1A増加させた電流値で10秒間充電し、充電終了直後の電池の電圧を測定した。この電流を0.1Aずつ増加させてゆき、1Aの電流値まで電池の出力を測定した。
【0221】
詳しくは、出力特性の測定は、0.1A充電、測定、5分間保持、0.1A放電、0.2A充電、測定、5分間保持、0.2A放電、0.3A充電、測定、5分間保持、0.3A放電、…………、1A充電、測定となるように行われた。
【0222】
各電流値で得られた電流値を横軸に電圧を縦軸にとったグラフを作成し、その傾きから電池の内部抵抗を算出した。さらに、下限電圧の3Vとなる電流値に下限電圧の3Vをかけて出力を算出した。
【0223】
試料1〜4の正極を用いた電池の出力を、図1に示した。なお、図1においては、試料1の正極を用いた電池の出力を1として試料2〜4の正極を用いた電池の出力を出力比で示した。試料2の正極を用いた電池の出力は1.2、試料3の正極を用いた電池の出力は1.4、試料4の正極を用いた電池の出力は1.9であった。
【0224】
図1より、バインダのCMCの粘度が上昇すると、得られた出力も大きくなることがわかる。また、1%水溶液の粘度が4000mPa・s以上のCMCをバインダとして用いることで、高い低温出力が得られることがわかる。
【0225】
さらに、重量平均分子量が140万以上のCMCをバインダとして用いることで、高い低温出力が得られることがわかる。
【0226】
(実施例2)
実施例2として、正極活物質とバインダと水とを有する活物質ペーストを調製し、この活物質ペーストを集電体の表面に塗布、乾燥させてリチウム電池用正極を製造した。
【0227】
まず、正極活物質として平均粒径が8μmのLiNi0.81Co0.16Al0.032粒子を87重量部と、導電材として平均粒径が50nmのカーボンブラック粒子(デンカブラック HS−100)を10重量部と、バインダのCMCを1〜2重量部と、バインダのPTFEディスパージョンをPTFE換算で1重量部を、83重量部の純水に投入して、ホモジナイザ式の混練機を用いて混練して活物質ペーストを調製した。
【0228】
その後、調製された活物質ペーストをAl箔よりなる集電体の表面に塗布した。ここで、Al箔には、1N30−H材(Al:99.3%以上)よりなり、厚さが15μmのAl箔が用いられた。
【0229】
活物質ペーストの塗布は、コンマコータにてAl箔表面上に片面あたり目付量6.4mg/cm2で両面に塗布された。その後、80℃に保持された炉内を2分で通過させて乾燥させた。
【0230】
その後、線圧0.2ton/cmでプレス成形を行って、活物質合剤層の密度を向上させた。
【0231】
以上の手段により、実施例2の正極が製造された。
【0232】
なお、バインダのCMCには重量平均分子量/数平均分子量比の異なる3種類のCMCが用いられた。3種類のCMCを表2に示した。なお、CMCの重量平均分子量および数平均分子量は、GPC法により測定された。
【0233】
【表2】
Figure 0003952749
【0234】
(評価)
実施例2の正極の評価として、実施例1の評価と同様に電池を製造し、製造された電池の低温での出力を求めた。
【0235】
試料5〜7の正極を用いた電池の出力を、図2に示した。なお、図2においては、試料5の正極を用いた電池の出力を1として試料6、7の正極を用いた電池の出力を出力比で示した。試料6の正極を用いた電池の出力は1、試料7の正極を用いた電池の出力は1.4であった。
【0236】
図2より、バインダのCMCの重量平均分子量/数平均分子量比が12.5と大きなCMCを用いると、高い低温出力が得られることがわかる。
【0237】
(実施例3)
実施例3として、正極活物質とバインダと水とを有する活物質ペーストを調製し、この活物質ペーストを集電体の表面に塗布、乾燥させてリチウム電池用正極を製造した。
【0238】
まず、正極活物質として平均粒径が8μmのLiNi0.81Co0.16Al0.032粒子を87重量部と、導電材として平均粒径が50nmのカーボンブラック粒子(デンカブラック HS−100)を10重量部と、バインダのCMCを0.5重量部と、バインダのPEOを0.5重量部、バインダのPTFEディスパージョンをPTFE換算で1重量部を、83重量部の純水に投入して、ホモジナイザ式の混練機を用いて混練して活物質ペーストを調製した。
【0239】
なお、CMCには、25℃でB型粘度計で測定された1%水溶液の粘度が11000mPa・sのCMCが用いられた。また、PEOは、数平均分子量が350万の高分子が用いられた。
【0240】
その後、調製された活物質ペーストをAl箔よりなる集電体の表面に塗布した。ここで、Al箔には、1N30−H材(Al:99.3%以上)よりなり、厚さが15μmのAl箔が用いられた。
【0241】
活物質ペーストの塗布は、コンマコータにてAl箔表面上に片面あたり目付量6.4mg/cm2で両面に塗布された。その後、80℃に保持された炉内を2分で通過させて乾燥させた。
【0242】
その後、線圧0.2ton/cmでプレス成形を行って、活物質合剤層の密度を向上させた。
【0243】
以上の手段により、実施例3の正極が製造された。
【0244】
実施例3の正極は、すなわち、CMC量を減少させ、CMCの減少量に対応した量のPEOを添加した以外は、実施例1の試料4の正極と同様な正極である。
【0245】
(評価)
実施例3の正極の評価として、実施例1の評価と同様に電池を製造し、製造された電池の低温での出力を求めた。
【0246】
実施例1の試料4の正極を用いた電池の出力を1としたときに、実施例3の低温出力は、1.2であった。すなわち、PEOをバインダに添加することで、低温出力が向上したことがわかる。
【0247】
【発明の効果】
本発明の製造方法により製造されたリチウム電池用電極は、活物質表面を被覆した水溶性のセルロースにより、リチウムイオンが通過できるすき間が形成されている。この結果、本発明のリチウム電池用電極の製造方法により製造された電極は、活物質界面でのリチウムイオンの移動が阻害されなくなり、電池を形成したときに低温出力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の正極を用いた電池の低温出力比を示した図である。
【図2】 実施例2の正極を用いた電池の低温出力比を示した図である。

Claims (12)

  1. 少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、
    集電体の表面に該活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、
    を有するリチウム電池用電極の製造方法において、
    該バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とするリチウム電池用電極の製造方法。
  2. 前記バインダは、前記水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有する請求項1記載のリチウム電池用電極の製造方法。
  3. 少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、
    集電体の表面に該活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、
    を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、
    該バインダは、1%水溶液における粘度が4000mPa・s以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とするリチウム電池用電極。
  4. 前記バインダは、前記水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有する請求項3記載のリチウム電池用電極。
  5. 少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、
    集電体の表面に該活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、
    を有するリチウム電池用電極の製造方法において、
    該バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とするリチウム電池用電極の製造方法。
  6. 前記バインダは、前記水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有する請求項5記載のリチウム電池用電極の製造方法。
  7. 少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、
    集電体の表面に該活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、
    を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、
    該バインダは、重量平均分子量が140万以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とするリチウム電池用電極。
  8. 前記バインダは、前記水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有する請求項7記載のリチウム電池用電極。
  9. 少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、
    集電体の表面に該活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、
    を有するリチウム電池用電極の製造方法において、
    該バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とするリチウム電池用電極の製造方法。
  10. 前記バインダは、前記水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有する請求項9記載のリチウム電池用電極の製造方法。
  11. 少なくとも活物質と、水と、バインダと、を有する活物質ペーストを調製する工程と、
    集電体の表面に該活物質ペーストを塗布し、乾燥させる工程と、
    を有するリチウム電池用電極の製造方法が施されてなるリチウム電池用電極であって、
    該バインダは、重量平均分子量/数平均分子量が12.5以上の水溶性のセルロースを有することを特徴とするリチウム電池用電極。
  12. 前記バインダは、前記水溶性のセルロースと異なる分子量の水溶性高分子を有する請求項9記載のリチウム電池用電極。
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