JP3877147B2 - リチウム電池用正極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム電池用正極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話や携帯ビデオカメラ等の電気機器の電源として、リチウム電池の使用が主流となりつつある。このことは、リチウム電池が高い重量エネルギー密度を持つためである。リチウム電池は、リチウムを含む正極活物質をもち充電時にはリチウムをリチウムイオンとして放出し放電時にはリチウムイオンを吸蔵することができる正極と、負極活物質をもち充電時にはリチウムイオンを吸蔵し放電時にはリチウムイオンを放出することができる負極と、有機溶媒にリチウムが含まれる支持塩よりなる電解質が溶解されてなる非水電解液と、から構成される。
【0003】
このようなリチウム電池は、重量エネルギー密度を向上させるために、正極および負極がシート状に形成され、同じくシート状に形成されたセパレータを介して巻回あるいは積層された状態で、ケース内に納められている。シート状の正極および負極は、集電体となる金属箔の表面に、活物質を含む合剤層を形成した構造をしている。
【0004】
リチウム電池用正極は、リチウム複合酸化物よりなる正極活物質、カーボン等よりなる導電材、カルボキシルメチルセルロース(CMC)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等よりなるバインダが溶剤に分散した活物質ペーストを調製し、調製された活物質ペーストを集電体の表面に塗工して合剤層を形成することで製造されている。
【0005】
リチウム電池用正極の製造において、正極活物質などが分散する溶剤にはNMP等の有機系の溶液が用いられていた。これに対し、近年は、原料や取り扱いに要するコストの低減および排出時の環境負荷への影響から、水が使用されてきている。
【0006】
リチウム電池の正極活物質に用いられるリチウム複合酸化物は、水と反応を生じることが知られている。すなわち、水にLiMexOyを添加すると、複合酸化物からLiの離脱が生じる。この反応は、酸化物中のLiイオン(Li+)と水よりなる溶剤のプロトン(H+)とがイオン交換を生じることにより生じると推測される。
【0007】
さらに、水よりなる溶剤にリチウム複合酸化物が分散した活物質ペーストは、Liイオンの離脱により、pHが10以上となり、アルカリ性を示す。アルカリ性の活物質ペーストは、集電体と反応を生じ、集電体の腐食およびH2ガスの発生を進行させる。
【0008】
集電体と活物質ペーストとの界面でH2ガスが発生すると、それによって活物質の浮き上がりを生じる。浮き上がりの結果、活物質の見掛け体積が増加し、単位体積あたりの重量が減少する。このように塗着性が低下すると、塗着密度は減少することになる。
【0009】
製造された電極の合剤層内には、H2ガスによる数十μm程度の内径の穴が多数生じる。この多数の穴により合剤層の表面に割れが発生し、電極体としての強度が低下する。また、合剤層の材料分布が不均一になり、サイクル特性等の電池特性が劣化する。
【0010】
さらに、正極の製造を合剤層の製造を短時間で行うために、集電体の表面に塗布された活物質ペーストは、加熱されて乾燥されている。しかしながら、乾燥のために加熱されることで、Liイオンの離脱反応がより促進される。このことは、乾燥時の加熱温度を低温とすることとなり、乾燥に長時間を要するようになる。この結果、正極の製造に要する時間が長くなっていた。
【0011】
加えて、正極の保管中においても、集電体の腐食が生じる問題があった。詳しくは、空気中あるいは正極合剤層中に残存した水分に、合剤層に残存したアルカリ成分が溶出を生じるためである。正極の保管中に集電体の腐食が生じると、正極の厚みが増加し、電極密度が低下するようになる。
【0012】
このような問題を解決するために、活物質ペースト中に炭酸ガスを混合して中和する方法が、特開平8−69791号に開示されている。
【0013】
詳しくは、特開平8−69791号には、強アルカリに対し腐食性を有する金属箔を集電体とし、その表面にリチウムと遷移金属を主体とした複合酸化物を主成分とする活物質層を形成した正極板と、負極板と、この正極板と負極板との間にセパレータを介在させた非水電解液二次電池の製造方法において、前記正極板は活物質と増粘材を練合させた粘性水溶液のアルカリ成分を中和した後、このペーストを集電体表面に塗着し乾燥したことを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法が開示されている。
【0014】
しかしながら、活物質ペースト中に炭酸ガスを供給して中和させる方法では、pHの低下にともなってペーストの塗布性が低下する問題があった。すなわち、活物質ペースト中に炭酸ガスを通気させると、活物質ペースト中の結着剤や活物質の分散性が低下し、凝集が発生したり、活物質ペーストの粘度が増加するようになる。さらに、活物質ペースト中に炭酸ガスを通気させると、中和にともなってLiイオンが消費され、正極活物質が失活し、電池の容量の低下を招くという問題を有していた。また、Liイオンと炭酸ガスが反応し、炭酸リチウムが多量に生じこれが活物質を覆うことで抵抗増加を引き起こすという問題も有していた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、活物質ペーストに水よりなる溶剤を用いても高エネルギー密度、高出力のリチウム電池用正極の製造方法を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らは、活物質ペースト中のアルカリ成分が原因であることに着目し、活物質ペーストの特性を変化させることなくアルカリ成分を中和できる中和方法について検討を重ねた結果、活物質ペーストの塗布および乾燥が中和成分を含む乾燥ガス中で行われる製造方法とすることで上記課題を解決できることを見出した。
【0017】
すなわち、本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、リチウム複合酸化物よりなる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調製するペースト調製工程と、集電体の表面に活物質ペーストを塗布する塗布工程と、集電体の表面に塗布された活物質ペーストを乾燥させる乾燥工程と、を有するリチウム電池用正極の製造方法において、塗布工程および乾燥工程が、活物質ペースト中に生じたアルカリ成分を中和する中和剤を含むガス雰囲気で行われることを特徴とする。
【0018】
本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、塗布工程および乾燥工程が中和剤を含むガス雰囲気中で行われる。すなわち、中和剤により活物質ペーストによる集電体の腐食がおさえられる。この結果、本発明の製造方法は、高エネルギー密度、高出力のリチウム電池が得られる正極を製造できる。
【0019】
さらに、本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、粘度等の活物質ペーストの特性を変化させないため、活物質ペーストの塗布性が維持され、正極の製造に要するコストの上昇が抑えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、ペースト調製工程と、塗布工程と、乾燥工程と、を有する。
【0021】
ペースト調製工程は、リチウム複合酸化物よりなる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調製する工程である。ペースト調製工程において活物質ペーストを調製することで、集電体の表面に合剤層が一体に形成された正極を製造することができる。
【0022】
塗布工程は、集電体の表面に活物質ペーストを塗布する工程である。塗布工程において活物質ペーストを集電体の表面に塗布することで、集電体の表面上に正極活物質を配する。
【0023】
乾燥工程は、集電体の表面に塗布された活物質ペーストを乾燥させる工程である。乾燥工程において活物質ペーストを乾燥させることで、正極活物質を有する合剤層を集電体の表面に一体に形成できる。
【0024】
すなわち、本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、ペースト調製工程と、塗布工程と、乾燥工程と、を有することで、正極活物質を有する合剤層が集電体の表面上に一体に形成された正極が製造される。
【0025】
本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、塗布工程および乾燥工程が、中和剤を含むガス雰囲気で行われる。塗布工程および乾燥工程が中和剤を含むガス雰囲気中で行われることで、活物質ペーストによる集電体の腐食がおさえられる。ここで、中和剤とは、活物質ペースト中に生じたアルカリ成分を中和する物質である。
【0026】
詳しくは、塗布工程が中和剤を含むガス雰囲気中で行われると、活物質ペーストは、中和剤を含むガスが表面に存在する状態で集電体に塗布される。すなわち、活物質ペーストは、中和剤が存在する状態で集電体の表面に塗布される。この結果、集電体に塗布された活物質ペーストと集電体との界面には、中和剤が残存し、この中和剤が活物質ペーストによる集電体の腐食を抑えるようになる。
【0027】
また、乾燥工程が中和剤を含む乾燥ガス雰囲気中で行われると、活物質ペースト中にアルカリ成分が溶出を生じても、雰囲気中の中和剤がアルカリ成分を中和する。ここで、乾燥工程においては活物質ペースト中に不可避の気孔が生じ、この気孔を経路として活物質ペースト中に中和剤が侵入する。さらに、活物質ペーストが乾燥して形成された合剤層中において、アルカリ成分が溶出を生じても、この雰囲気中の中和剤がアルカリ成分を中和する。
【0028】
以上のことから、塗布工程および乾燥工程が中和剤を含む乾燥ガス雰囲気中で行われることで、アルカリ成分による集電体の腐食が抑えられる。
【0029】
中和剤は、活物質ペーストあるいは正極合剤層中に生じるアルカリ成分を中和できる物質であれば特に限定される物ではない。中和剤は、酸性ガスおよび/または酸性物質であることが好ましい。中和剤は、雰囲気を構成する乾燥ガス中への分散の容易さから酸性ガスであることがより好ましい。
【0030】
中和剤は、アルカリ成分を中和したときに、活物質ペーストあるいは合剤層中に塩などの不純物を残留させない物質であることがより好ましい。
【0031】
中和後に不純物を残留させない酸性ガスとしては、炭酸ガスをあげることができる。また、中和後に塩を残留させない酸性物質としては、酢酸、シュウ酸、乳酸、酪酸および電解酸性水をあげることができ、電解酸性水がより好ましい。
【0032】
乾燥ガス雰囲気を構成するガスは、特に限定されるものではない。例えば、空気を用いることができる。また、このガスは、酸性ガスであってもよい。
【0033】
酸性ガスを含むガスは、ガスの一部を酸性ガスに置換することで調製できる。
【0034】
また、酸性物質をガスに含有させる方法としては、酸性物質を気化して混合させる方法や、酸性物質をガス中に噴霧する方法を用いることができる。このとき、酸性物質を予め水等の溶媒に分散させておいてもよい。
【0035】
塗布工程および乾燥工程が施されるときのガス雰囲気としては、乾燥空気中に炭酸ガスを含有させて調製された雰囲気であることがより好ましい。空気および炭酸ガスの両者が気体であるため、雰囲気の調製を用意に行うことができる。さらに、雰囲気ガスに特別な後処理の必要がないため、正極の製造に要するコストの上昇を抑えることができる。
【0036】
塗布工程および乾燥工程が施される雰囲気中の中和剤の混合量は、特に限定されるものではない。すなわち、集電体の表面に塗布される活物質ペーストの種類や雰囲気の温度などにより、生じるアルカリ成分の種類およびアルカリ成分量が異なるためである。
【0037】
乾燥工程は、活物質ペーストが塗布された集電体を60〜150℃に加熱することが好ましい。すなわち、60〜150℃に加熱することで、活物質ペーストの乾燥が促進されるだけでなく、活物質ペースト中のアルカリ成分と中和剤との反応が促進される。
【0038】
本発明の製造方法は、乾燥工程が施された後に、活物質合剤層を圧縮するプレス行程を有することが好ましい。プレス行程において活物質合剤層を圧縮することで、合剤層の密度が大きくなり、エネルギー密度に優れた正極となる。
【0039】
本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、合剤中にアルカリ成分が溶出したときにでも、中和剤によりアルカリ成分を中和している。このアルカリ成分の中和により、集電体の腐食および腐食にともなう水素ガスの発生が抑えられる。水素ガスの発生が抑えられることで、活物質ペースト中に気泡が抑えられる。この結果、製造された正極の合剤層中の空孔が少なくなり、正極の緻密性が向上する。
【0040】
また、本発明の製造方法により製造された正極は、保管中においても集電体の腐食による膜厚の増加が抑えられているため、高い特性を有する正極となっている。
【0041】
本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、塗布工程および乾燥工程が中和剤を含むガス雰囲気中で行われる以外は、特に限定されるものではない。すなわち、活物質ペーストを構成する材料は、従来のリチウム電池用正極の製造に用いられている材料を用いることができる。
【0042】
正極活物質は、リチウム複合酸化物よりなる。このリチウム複合酸化物としては、LiMexOy(Me;Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x、y;任意)で示される。本発明の製造方法において、このLiMexOyは、特に限定されるものではない。たとえば、LiMnO2、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、を主骨格として、各種金属元素が置換した化合物を用いることができる。
【0043】
LiMn2O4系、LiCoO2系、LiNiO2系の正極活物質がより好ましい。すなわち、電子とリチウムイオンの拡散性能に優れるなど正極活物質としての性能に優れているため、高い充放電効率と良好なサイクル特性とを有するリチウム電池が得られる。さらに、材料コストの低さから、LiMn2O4系の正極活物質を用いることが好ましい。
【0044】
活物質ペーストは、導電材を有することが好ましい。活物質ペーストが導電材を有することで、製造される正極の特性が向上する。
【0045】
導電材は、正極の電気伝導性を確保する。導電材としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等の炭素物質の1種または2種以上の混合したものをあげることができる。
【0046】
活物質ペーストは結着剤を有することが好ましい。活物質ペーストが結着剤を有することで、製造される正極の特性が向上する。
【0047】
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める作用を有する。結着剤としては、有機系結着剤や、無機系結着剤を用いることができ、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の化合物をあげることができる。
【0048】
また、活物質ペーストが塗布される集電体としては、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属を網、パンチドメタル、フォームメタルや板状に加工した箔などを用いることができる。
【0049】
本発明の製造方法により製造された正極は、通常のリチウム電池用正極と同様にしてリチウム電池を構成できる。すなわち、リチウム電池は、正極と負極と電解液とその他必要に応じた要素とからなる。本発明の正極を用いたリチウム電池は、その形状に特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型等、種々の形状の電池として使用できる。
【0050】
負極には、一般的なリチウム二次電池の、公知の材料および構成を用いることができる。
【0051】
負極は、負極活物質、必要に応じて導電材や結着材やキャパシタ材料等を混合して得られたペーストを調製し、このペーストが集電体に塗布、乾燥されてなるものを用いることが好ましい。
【0052】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵、放出が可能でれば、特に限定されるものではなく、公知の材料を用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイトまたは非晶質炭素等の炭素材料等をあげることができる。そして、リチウムを電気化学的に吸蔵、放出し得るインターカレート材料であることから、炭素材料を負極活物質として用いることがより好ましい。
【0053】
負極活物質は、比表面積が比較的大きく、吸蔵・放出速度が速いため特に室温での出力・回生密度に対して良好となる。
【0054】
負極活物質の比表面積の制御方法は、特に制限されるものではないが、比表面積は原材料の比表面積に大きく影響を受けるため、所定の条件で原材料を粉砕および/または分級し制御することが好ましい。なお、焼成し作製した後に粉砕および/または分級してもよい。
【0055】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させてなる。
【0056】
有機溶媒は、通常のリチウム電池の電解液の用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではない。例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1、2ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネートあるいはこれらの複数種を混合した混合溶媒が好ましい。
【0057】
これらの有機溶媒のうち、特にカーボネート類、エーテル類からなる群より選ばれた1種以上の非水溶液を用いることがより好ましい。すなわち、これらの非水溶媒は、支持塩の溶解性、誘電率および粘度において優れているため、電池の充放電効率が高くなるため、好ましい。
【0058】
混合溶媒において、主溶媒として用いる溶媒としては、炭素負極材料の安定した充放電を得るためには、エチレンカーボネートを用いることが好ましい(例えば、主溶媒としてプロピレンカーボネート等を用いると、初回充電時に電解液と炭素負極が反応してしまい、電池が大きく劣化する。エチレンカーボネートを主溶媒として用いると、炭素負極表面に安定な被膜が形成され、良好な充放電特性が得られると推測される。)
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、これら無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF8)2およびLiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)から選ばれる有機塩、ならびにこれら有機塩の誘導体の少なくとも一種であることが望ましい。
【0059】
支持塩は、LiPF6が好ましい。LiPF6は、イオン導電性が高く、活物質との反応性が小さいためリチウム電池の支持塩として好ましい。
【0060】
支持塩の濃度についても特に限定されるものではなく、用途に応じ、支持塩および有機溶媒の種類を考慮して適切に選択することが好ましい。
【0061】
これらの支持塩を有機溶媒に溶解させて調製された電解液は、電池性能を優れたものとすることができ、かつその電池性能を室温以外の温度域においてもさらに高く維持することができる。
【0062】
セパレ−タは、正極および負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割をはたすものである。セパレータとしては、たとえば、多孔性合成樹脂膜を用いることが好ましい。特に、ポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いることが好ましい。なお、円筒形のリチウム二次電池において、セパレ−タは、正極と負極との絶縁性を担保するため、正極および負極よりもさらに大きいものとすることが好ましい。
【0063】
ケースは、特に限定されるものではなく、公知の材料、形態で作成することができる。
【0064】
ガスケットは、ケースと正負の両端子部の間の電気的な絶縁と、ケース内の密閉性とを担保するものである。例えば、電解液にたいして、化学的、電気的に安定であるポリプロピレンのような高分子等から構成できる。
【0065】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【0066】
(実施例)
本発明の実施例として、リチウム電池用正極を作製した。
【0067】
(実施例1)
正極活物質として平均粒径が8μmのLiNi0.81Co0.16Al0.03O2粒子を87重量部と、導電材として平均粒径が50nmのカーボンブラック粒子(デンカブラック HS−100)を10重量部と、バインダのPTFEディスパージョンをPTFE換算で2重量部と、バインダのカルボキシメチルセルロースを1重量部を、83重量部の純水に投入して、ホモジナイザ式の混練機を用いて混練して活物質ペーストを調製した。
【0068】
つづいて、調製された活物質ペーストをAl箔よりなる集電体の表面に塗布した。ここで、Al箔には、1N30_H材(Al:99.3%以上)よりなり、厚さが15μmのAl箔が用いられた。
【0069】
活物質ペーストの塗布は、コンマコータにてAl箔表面上に片面あたり目付量6.4mg/cm2で両面に塗布された。ここで、コンマコータにおける塗布は、炭酸ガス雰囲気中で行われた。
【0070】
つづいて、80℃に保持された炉内を2分で通過させて乾燥させた。このとき、炉内は炭酸ガス雰囲気に保持されている。
【0071】
その後、線圧0.2ton/cmでプレス成形を行って、活物質合剤層の密度を向上させた。
【0072】
以上の手段により、実施例1の正極が製造された。
【0073】
(実施例2)
活物質ペーストの塗布時の雰囲気および乾燥時の炉内雰囲気が酸性雰囲気である以外は実施例1と同様に正極の製造を行った。なお、酸性雰囲気は、水の電気分解によって製造された酸性水を加熱することによって蒸気にし、空気と混合させて混合ガスを調製し、この混合ガスを導入することで得られた。
【0074】
(比較例)
活物質ペーストの塗布時の雰囲気および乾燥時の炉内雰囲気が大気雰囲気である以外は実施例1と同様に正極の製造を行った。すなわち、活物質ペーストの塗布および乾燥が大気中で行われることで製造された。
【0075】
(評価)
実施例1、2および比較例の正極の評価として、合剤層の密度を測定した。測定結果を表1に示した。
【0076】
さらに、プレス前の合剤層の表面を顕微鏡で観察し、表面状態の評価を行った。評価結果を表1にあわせて示した。なお、表面状態の評価において、気泡が少なく緻密な状態を○、気泡が多量に観察された状態を×とした。
【0077】
【表1】
表1より、実施例1および2の正極の合剤層の密度は、比較例の正極の合剤層の密度より高かった。すなわち、実施例1および2の正極は合剤層中の空孔量が比較例の合剤層中の空孔量より少ないことを示す。このことは、表面状態の観察結果からも明らかである。
【0078】
すなわち、実施例1および2の正極は、活物質ペーストの塗布および乾燥が中和剤を含有する雰囲気で行われているため、活物質ペーストによる塗集電体の腐食が抑えられ、活物質ペースト内に気泡が生じることが抑えられている。さらに、実施例1および2の正極は、合剤層中にアルカリ成分が溶出しても中和剤が中和をしているため、密度の低下が抑えられている。
【0079】
以上のことから、アルカリ成分を中和できる雰囲気で活物質ペーストの塗布および乾燥が行われることで、密度の低下の抑えられた正極が製造された。
【0080】
【発明の効果】
本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、塗布工程および乾燥工程が中和剤を含むガス雰囲気中で行われる。すなわち、中和剤により活物質ペーストによる集電体の腐食がおさえられる。この結果、本発明の製造方法は、高エネルギー密度、高出力のリチウム電池が得られる正極を製造できる。
【0081】
さらに、本発明のリチウム電池用正極の製造方法は、粘度等の活物質ペーストの特性を変化させないため、活物質ペーストの塗布性が維持され、正極の製造に要するコストの上昇が抑えられる。
Claims (3)
- リチウム複合酸化物よりなる正極活物質と、水と、を有する活物質ペーストを調製するペースト調製工程と、
集電体の表面に該活物質ペーストを塗布する塗布工程と、
該集電体の表面に塗布された該活物質ペーストを乾燥させる乾燥工程と、
を有するリチウム電池用正極の製造方法において、
該塗布工程および該乾燥工程が、該活物質ペースト中に生じたアルカリ成分を中和する中和剤を含むガス雰囲気で行われることを特徴とするリチウム電池用正極の製造方法。 - 前記中和剤が、酸性ガスおよび/または酸性物質である請求項1記載のリチウム電池用正極の製造方法。
- 前記中和剤は、炭酸ガスである請求項1〜2記載のリチウム電池用正極の製造方法。
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