JP5231166B2 - 非水電解質二次電池用正極板の製造法及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
この種の電池は電池電圧が高く、また上記従来の電池に比べて重量及び体積当たりのエネルギー密度が大きく今後最も期待される二次電池といわれており、上記の用途の他、最近電力貯蔵用途や電気自動車などの大容量の大型電池への適用も盛んに検討されている。
従来、非水電解質二次電池用正極板は、正極活物質を導電剤などの共に有機溶媒又は水性溶媒で混練し、得られるペーストをアルミニウム箔の集電体に塗布し、乾燥して製造することが一般であるが、有機溶媒を使用した場合は、環境を配慮して有機溶媒を回収しなければならない手間を要すると共に製造コストが高くなり、更には、可燃性であるため、防爆の配慮も必要となり煩わしい。
水性溶媒を使用する場合は、アルミ箔が、その上に塗布される正極活物質の水性ペーストと接触し、腐食するので、下記のように種々の防腐手段が提案されている。例えば、特開平8-69791号公報には、LiCoO2,LiNiO2,LiMnO2又はLiMn2O4から成る正極活物質と増粘剤を混練した水性ペースト中に炭酸ガスを通気させ該ペーストのpH7〜11に中和した後、アルミニウム箔に塗布することにより、塗布時のアルミニウム箔の腐食を軽減するようにした発明が開示されている。
特開2003-157836号公報には、上記の特開平8-69791号公報の発明の課題を解決するため、正極活物質ペーストと水との反応を抑制するカーボン、PTFE又は導電性ポリマーから成る保護被膜を有する正極活物質を用いることにより、正極活物質(LiMexOy)からのリチウムの離脱を抑えることができ、リチウムの離脱によるその組成や結晶構造の変化を防止し、活物質ペーストとリチウム電池用正極の製造法その正極の発明が開示されている。
また、特開2003-157852号公報にも、特開平8-69791号公報の発明の課題を解消するため、正極活物質ペーストとの反応を抑制すると共に電気伝導性を有する酸化アルミニウム、カーボンとバインダー又は導電性高分子から成る保護被膜を表面に有する集電体を用いることにより、正極活物質(LiMexOy)(Me:Ni,Co,Mnの少なくとも1種を含む遷移金属、x,y:任意)のペーストによる集電体の腐食が生じないリチウム電池用正極の製造方法とその正極の発明が開示されている。
一方、上記の正極板のように、集電用基板上に正極活物質ペーストを塗布した単一の塗工層から成る正極板では、エネルギーに限界があるため、複数種の正極活物質の夫々有機溶剤を用い合剤と共に混練して調製した夫々のペーストを集電用基板上に順次塗工し、その多層塗工層を乾燥し、エネルギーの向上、電池容量の向上をもたらすようにした多層型の正極板の製造方法の発明が、例えば、特開2007-355989号公報に記載されている。
特許文献3及び4は、正極活物質を有機溶媒を用いてペーストを調製するため、前記したような課題を有し、また、これら文献3及び4の実施例で用いられているLMO活物質或いはLCO/LMO混合活物質を有機溶媒に代え、水性溶媒を用いてペーストを調製したものをアルミニウム箔に塗布し、その塗工層を形成したところ、塗布中にアルミニウム箔の腐食をもたらし、アルミニウム箔と正極活物質との界面に形成された不導電体層によりインピーダンスが上昇するなど、電池特性の劣化をもたらすことが判った。
これら水性ペーストのpHを測ったところ、pH12以上の強アルカリ性であった。従って、特許文献1又は2に従って、LMO活物質やLCO活物質に保護被膜を形成し、或いはアルミニウム箔に保護被膜を形成する加工を施せば、その塗布時の腐食問題は解決できるが、上記したように、その加工工程を要し、且つ正極の製造コストの増大をもたらす。
かかる課題に鑑み、本発明は、かかる課題を解消し、正極活物質の水性ペーストをアルミニウム箔などの集電用基板に塗布し、その塗工層が乾燥する迄の間に生ずる腐食を確実に防止し、複数層の塗工層から成る非水電解質二次電池用正極板を円滑且つ確実に製造し得る製造方法と該正極板を用いた電池特性の向上した非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
更に本発明は、請求項2に記載の通り、請求項1に係る発明において、リン酸鉄リチウム系材料又はマンガン酸リチウム系材料から成る正極活物質を水性溶媒を用い合剤と共に混練して成るpH6〜10の水性ペーストを集電用基板上に塗布して第一塗工層を形成し、該第一塗工層の上に、リチウム含有層状酸化物から成る正極活物質を合剤と共に混練して成るpH11以上の水性ペーストを塗布して第二塗工層を形成し、次いで、これらの積層塗工層を乾燥したことを特徴とする請求項2に記載の多層型の非水電解質二次電池用正極板の製造法に存する。
更に本発明は、リン酸鉄リチウム系材料から成る正極活物質を水性溶媒を用い合剤と共に混練して成るpH6〜10の水性ペーストを集電用基板上に塗布して第一塗工層を形成し、該第一塗工層の上に、リチウム含有層状酸化物から成る正極活物質を合剤と共に混練して成るpH11以上の水性ペーストを塗布して第二塗工層を形成し、次いで、これらの積層塗工層を乾燥して得た多層型の非水電解質二次電池用正極板を用いた非水電解質二次電池であって、前記非水電解質二次電池用正極板は、集電用基板と、この集電用基板上に形成され、リン酸鉄リチウム系材料から成る正極活物質と合剤とを有した第一塗工層と、この第一塗工層上に形成され、リチウム含有層状酸化物から成る正極活物質と合剤とを有した第二塗工層とを備え、前記第一塗工層及び前記第二塗工層は乾燥されて成ることを特徴とする非水電解質二次電池に存する。
更に、請求項1又は2に係る発明によれば、上記の効果に加え、該第一塗工層上にpH11以上の強アルカリの水性ペーストを塗布し、第二塗工層を形成したので、該第二塗工層により集電用基板を腐食させることなく塗布できると共に、電池容量の増大と放電容量維持率を長期に亘り向上し得る多層型の正極板を容易且つ安価に製造することができる効果をもたらす。
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2により、上記のように集電用基板の腐食を確実に防止された正極板を用いた非水電解質二次電池であるので、長期に亘り容量維持率を維持する非水電解質二次電池が製造ロスなく確実に得られる効果をもたらす。
導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、炭素繊維、グラファイトなどの導電性カーボンや、導電性ポリマー、金属粉末などが挙げられるが、導電性カーボンが特に好ましい。これら導電剤は正極活物質100重量部に対して20重量部以下、好ましくは、10重量部以下を添加する。
水溶性増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイドなどである。これら水溶性増粘剤は正極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜4.0重量部以下、より好ましくは0.5〜3.0重量部以下添加する。水溶性増粘剤の量が、前記範囲を超えると二次電池の電池抵抗が増大して放電レート特性が低下し、逆に前記範囲が未満であると水性ペーストが凝集してしまう。前記水溶性増粘剤は水溶液の状態で用いてもよく、その際は0.5〜3.0重量%の水溶液にして用いることが好ましい。
また、結着剤として、例えばフッ素系結着剤やアクリルゴム、変性アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル系重合体、ビニル系重合体の単独或いはこれらの2種以上の混合物、又は共重合体として用いることができる。また、耐酸化性、少量で充分な密着性、極板に柔軟性が得られるためアクリル系重合体を用いることが好ましい。
また、多層型の正極板の製造においては、第一塗工層の塗布厚みはできる限り薄くすることが好ましいが、あまり薄くしすぎると、第二塗工層の水性ペーストが浸透し、集電用基板の腐食を誘発することのないように比較的厚めに形成することが好ましい。
また、第二塗工層の塗布量は第一塗工層のそれよりも厚く塗布することが好ましい。高容量化を目的として形成される第二塗工層が薄いと電池エネルギー密度を充分に上げることができない。
多層型の正極板の製造において、塗工層の層数は、特に制限されないが、低コストやハイレート特性が得られ易い観点から五層以下、好ましくは、二層乃至三層であることがより好ましい。
正極活物質の水性ペーストの該集電用基板上へ或いは第二塗工層以上の塗工には、スロットダイコート、スライドダイコート、ディップコートなどから選択したダイコート法を用いることが一般である。
実施例1
カーボンコーティングされた二次粒子から成る粒径1μm以上のオリビン型リン酸鉄リチウム100重量部と導電剤としてアセチレンブラック10重量部とを密閉容器の中で乾式混合した。この混合粉体に、水溶性増粘剤として、2重量%のカルボキシメチルセルロース水溶液100重量部を添加し、これをプラネタリーミキサーで充分に混合した後、更に、水分散バインダーを固形分で5重量部となるように添加して充分に混合し水性ペーストを調製した。水分散バインダーとしてはアクリル重合体(固形分濃度40wt.%)を用いた。この水性ペーストのpH値をpH試験紙で調べ、pH値9であることを確認した。
即ち、アルミニウム箔上に、リン酸鉄リチウムの水性ペーストを乾燥重量で5mg/cm2となるように塗布して第一塗工層を形成し、その上にリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の水性ペーストを乾燥重量で15mg/cm2となるように塗布して第二塗工層を形成し、全体として、単位面積当たりの塗布量が乾燥後の総重量で20mg/cm2となるように塗布し、次いで、乾燥し、その後、ロールプレスにてプレスし、二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例2
実施例1で用いたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に代え、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を用い、実施例1と同様にしてその水性ペーストを調製した。そのpHは11であることを確認し、この水性ペーストを用い実施例1と同様にして第二塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例3
実施例1で用いたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に代え、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)を用い、実施例1と同様にしてその水性ペーストを調製した。そのpHは11であることを確認し、この水性ペーストを用い実施例1と同様にして第二塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例4
実施例1で用いたリン酸鉄リチウムに代え、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)を用い、実施例1と同様にしてその水性ペーストを調製した。そのpHは9であることを確認し、この水性ペーストを用い実施例1と同様にして第一塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例5
実施例2に用いたコバルト酸リチウム(LiCoO2)の水性ペーストを乾燥重量で7.5mg/cm2となるように塗布し、更にその上に実施例3で用いたニッケル酸リチウム(LiNiO2)の水性ペーストを乾燥重量で7.5mg/m2となるように塗布し、第三塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして三層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例6
実施例4において第二塗工層の形成に用いたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に代え、コバルト酸リチウム(LiCoO2)の水性ペーストを用い、第二塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例7
実施例6において第二塗工層の形成に用いたコバルト酸リチウムに代え、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)の水性ペーストを用い、第二塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例8
実施例1において第一塗工層形成に用いたリン酸鉄リチウムの水性ペーストに代え、リン酸鉄リチウムとマンガン酸リチウムを1対1の割合で混合して成る活物質を実施例1と同様にしてその水性ペーストを調製した。そのpHは9であった。この水性ペーストを用いて第一塗工層を形成し、第二塗工層の形成は実施例6で用いたと同じコバルト酸リチウム(LiCoO2)の水性ペーストで形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例9
実施例8において第二塗工層形成に用いたコバルト酸リチウム(LiCoO2)の水性ペーストに代え、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)の水性ペーストを用い第二塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例10
実施例8において第二塗工層形成に用いたコバルト酸リチウムの水性ペーストに代え、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の水性ペーストを用いて第二塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして二層から成る多層型の正極板を製造した。
実施例1と同様にして、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の水性ペーストを調製し、この水性ペーストをアルミニウム箔上に乾燥重量で20mg/cm2となるように塗布し、以下実施例1と同様に乾燥、ブレスして単層型の正極板を製造した。
比較例2
比較例1で用いたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に代え、コバルト酸リチウムの水性ペーストを用いた以外は、比較例1と同様にして単層型の正極板を製造した。
比較例2
比較例1で用いたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に代え、ニッケル酸リチウムの水性ペーストを用いた以外は、比較例1と同様にして単層型の正極板を製造した。
更に詳細には、各電池につき、0.1CAの充放電レートで活性化充放電を3サイクル行い、その後レート特性の評価として、充電レートを0.1CAとして4.1Vまで充電し、その後、0.2、0.5、1.0、2.0、3.0、5.0の各放電レートで放電特性を評価し、0.2CA放電時の容量との維持率を比較しレート特性評価とした。その後0.5CAの充放電レートでサイクル特性評価を実施した。
下記表3は、各電池につき、0.2CA放電時の容量を100%としたときの容量維持率を示す。
図1は、上記表3の容量維持率を放電レート(CA)と放電容量維持率(%)の関係を示す図である。
多層型の正極板は、製造工程上二層型が一般であるが、全体の厚さ、製造コストなどを考慮し、三〜五層型の正極板の製造にとどめることが好ましい。
Claims (3)
- 所望の正極活物質を水性溶媒を用い合剤と共に混練して成る水性ペーストのpHを測定した後、pH6〜10の水性ペーストを集電用基板上に塗布し、第一塗工層を形成し、該第一塗工層上にpH11以上の水性ペーストを塗布し第二塗工層を形成し、次いでこれらの積層塗工層を乾燥することを特徴とする多層型の非水電解質二次電池用正極板の製造法。
- リン酸鉄リチウム系材料又はマンガン酸リチウム系材料から成る正極活物質を水性溶媒を用い合剤と共に混練して成るpH6〜10の水性ペーストを集電用基板上に塗布して第一塗工層を形成し、該第一塗工層の上に、リチウム含有層状酸化物から成る正極活物質を合剤と共に混練して成るpH11以上の水性ペーストを塗布して第二塗工層を形成し、次いで、これらの積層塗工層を乾燥したことを特徴とする請求項1に記載の多層型の非水電解質二次電池用正極板の製造法。
- リン酸鉄リチウム系材料から成る正極活物質を水性溶媒を用い合剤と共に混練して成るpH6〜10の水性ペーストを集電用基板上に塗布して第一塗工層を形成し、該第一塗工層の上に、リチウム含有層状酸化物から成る正極活物質を合剤と共に混練して成るpH11以上の水性ペーストを塗布して第二塗工層を形成し、次いで、これらの積層塗工層を乾燥して得た多層型の非水電解質二次電池用正極板を用いた非水電解質二次電池であって、
前記非水電解質二次電池用正極板は、集電用基板と、この集電用基板上に形成され、リン酸鉄リチウム系材料から成る正極活物質と合剤とを有した第一塗工層と、この第一塗工層上に形成され、リチウム含有層状酸化物から成る正極活物質と合剤とを有した第二塗工層とを備え、前記第一塗工層及び前記第二塗工層は乾燥されて成ることを特徴とする非水電解質二次電池。
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