JP6808948B2 - 非水系リチウムイオン二次電池用負極、その製法及び非水系リチウムイオン二次電池 - Google Patents

非水系リチウムイオン二次電池用負極、その製法及び非水系リチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、非水系リチウムイオン二次電池用負極、その製法及び非水系リチウムイオン二次電池に関する。
非水系リチウムイオン二次電池は、高電圧・高エネルギー密度が得られるだけでなく、小型・軽量化が図れるため、パソコンや携帯電話等の情報通信機器の関連分野ではすでに実用化されている。また、近年では、資源問題や環境問題から電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電源としても利用されている。こうした非水系リチウムイオン二次電池は、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物、負極活物質として炭素材料、電解液として有機溶媒にLi塩を溶かしたもので構成されている。一般的に、正極活物質として層状構造、もしくはスピネル型構造を有するLiCoO2、LiNiO2、LiMn24およびそれらの誘導体が用いられ、負極活物質として黒鉛や非晶質炭素、合金などが使用されている。電解液溶媒には、可燃性の鎖状カーボネートと環状カーボネートを混合したもの、リチウム塩にはその伝導性の高さからLiPF6が用いられていることが多い。
しかし、非水系リチウムイオン二次電池は、特に低温において高い負極反応抵抗を示すため、低温入出力が低いという大きな課題がある。また、Liの電位に近い非常に低い充放電電位を示すことから、低温での入力時に分極増大によるLi析出の懸念がある。そのため、黒鉛粒子表面をピッチ、有機化合物あるいは高分子化合物で被覆し、焼成または黒鉛化することによりリチウムイオン二次電池の入出力を向上させることが提案されている(特許文献1〜4)。
一方、黒鉛化ナノ炭素粒子、あるいはカーボンブラックなどの非晶質炭素粒子を黒鉛粒子表面に担持することで、充放電特性が向上することが報告されている。例えば、親水化された黒鉛粒子に炭素質あるいは黒鉛質の粒子を付着させる方法(特許文献5)、黒鉛にカーボンブラックを添加する方法(特許文献6)、黒鉛原料とカーボンブラックを混合し熱処理することで黒鉛表面にカーボンブラックを固着させる方法(特許文献7)などが提案されている。
特開平5−307959号公報 特許第5061437号公報 特許第5153055号公報 特許第5772939号公報 特開2005−243447公報 特開2004−171901公報 特開2003−346804公報
しかしながら、特許文献1〜4では、負極を作製する際の結着材の分散媒が水系溶媒の場合、粒子間の導電性が十分でないため、充放電特性を十分に発揮できない場合がある。また、負極塗工時の安全面、環境面への配慮から、水系溶媒・結着材の使用が望まれており、水系溶媒・結着材を用いた場合にも優れた充放電特性を示す黒鉛粒子表面改質が求められている。
また、特許文献5〜7では、粒子間の導電性は改善されるが、特に低温における負極反応抵抗の増大に対しては、根本的な改善とはなっていない。また、カーボンブラックを黒鉛粒子表面に担持することにより、黒鉛粒子表面が疎水性となることから、水系溶媒・結着材を用いた負極塗工時に凝集が起こりやすくなり、均一な塗布膜を得ることが困難となる。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、黒鉛を負極活物質とする負極において、水系で製造可能であり、リチウムイオンの入出力特性及びLi析出耐性を向上させることを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、負極活物質である黒鉛に親水性カーボンブラックを適量添加すると、その目的を達成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の非水系リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質である黒鉛と、親水性カーボンブラックと、水系バインダーとを含み、(1)前記黒鉛の平均粒径をr1、比重をd1、前記親水性カーボンブラックの平均粒径をr2、比重をd2、前記親水性カーボンブラックの前記黒鉛に対する添加割合をx質量%としたとき、前記親水性カーボンブラックが前記黒鉛を被覆している割合である被覆率(=x(r1/4r2)(d1/d2))が6.1%以上46.4%以下であるか、(2)前記親水性カーボンブラックの前記黒鉛に対する添加割合が0.2質量%以上1.5質量%以下のものである。なお、r1とr2の単位、d1とd2の単位は揃えるものとする(以下同じ)。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池は、上述した非水系リチウムイオン二次電池用負極と、正極と、非水電解液とを含むものである。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池用負極の製法は、黒鉛と水系バインダーとを含んだ負極塗料に、(1)被覆率が6.1%以上46.4%以下となるように、又は(2)親水性カーボンブラックの前記黒鉛に対する添加割合が0.2質量%以上1.5質量%以下となるように、前記親水性カーボンブラックの水系分散液を添加して混合した後、得られた混合液を負極集電体上に塗布して乾燥し、その後に圧延処理を施して負極とするものである。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質である黒鉛粒子表面に親水性カーボンブラックが適量担持されている。これにより、水系で製造することが可能となる。また、リチウムイオンの入出力特性及びLi析出耐性が向上する。その理由は、以下のように推測される。リチウムイオンは非水電解液中では溶媒が配位した構造、つまり溶媒和した状態となって安定化している。この溶媒和したリチウムイオンが負極活物質である黒鉛に挿入する際には、SEI被膜の作用により脱溶媒和してリチウムイオンが黒鉛に挿入する。リチウムイオンが挿入する過程において、特にリチウムイオンが脱溶媒和する過程の活性障壁が大きく、律速となることが報告されている(J. Electochem. Soc., 152, A2151 (2005))。上述したリチウムイオンの入出力特性及びLi析出耐性が向上するという効果は、黒鉛表面に適量の親水性カーボンブラックを担持することで、リチウムイオンの脱溶媒和過程の活性障壁を低減し、負極反応抵抗を低減したために得られたものと推測される。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池20の一例を示す模式図。 親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合(質量%)と親水性カーボンブラックの被覆率とLi析出限界電流値との関係を示すグラフ。 親水性カーボンブラック添加なしの負極シートのSEM写真。 親水性カーボンブラックを1質量%添加した負極シートのSEM写真。 親水性カーボンブラックを5質量%添加した負極シートのSEM写真。
本発明の非水系リチウムイオン二次電池は、非水系リチウムイオン二次電池用負極と、正極と、非水電解液とを含むものである。このうち、非水系リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質である黒鉛と、親水性カーボンブラックと、水系バインダーとを含み、(1)黒鉛の平均粒径をr1、比重をd1、親水性カーボンブラックの平均粒径をr2、比重をd2、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合をx質量%としたとき、親水性カーボンブラックが黒鉛を被覆している割合である下記式の被覆率が6.1%以上46.4%以下であるか、(2)親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合が0.2質量%以上1.5質量%以下のものである。
被覆率(%)=x(πr2 2/4πr1 2)(r1 3/r2 3)(d1/d2
=x(r1/4r2 )(d1/d2
(負極)
非水系リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質である黒鉛と、親水性カーボンブラックと、水系バインダーとを含んでいる。
黒鉛としては、例えば、鱗片状黒鉛や鱗片黒鉛などの天然黒鉛のほか、人造黒鉛、熱分解黒鉛などが挙げられる。
親水性カーボンブラックは、界面活性剤などを添加することなく、水系溶媒(水を主体とする溶媒、特に水)中で分散状態を維持することが可能なカーボンブラックであり、顔料インクなどで用いられている。親水性カーボンブラックは、粒子表面にカルボキシル基やヒドロキシル基などの官能基を有することで、水系溶媒中での粒子同士の凝集を防ぎ、高い分散性を示すという特徴がある。親水性カーボンブラックでは、一般的にカーボンブラック表面にこれらの官能基が50μmol/g以上存在することで高い分散性を発揮することが可能となる。親水性カーボンブラックが黒鉛を被覆する割合(被覆率)は、6.1%以上46.4%以下であることが好ましく、14.7%以上36.7%以下であることがより好ましい。被覆率が6.1%未満だと、リチウムイオンの入出力特性及びLi析出耐性が十分向上しないため好ましくない。被覆率が46.4%を超えると、Li析出耐性や初回充放電効率が低下するため好ましくない。Li析出耐性が低下するのは、黒鉛粒子表面に親水性カーボンブラックが複数層被覆してしまい、リチウムイオンの伝導過程が妨げられるためと考えられる。また、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合は、0.2質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上1.2質量%以下がより好ましい。この添加割合が0.2質量%未満だと、リチウムイオンの入出力特性及びLi析出耐性が十分向上しないため好ましくない。また、添加割合が1.5質量%を超えると、Li析出耐性や初回充放電効率が低下するため好ましくない。Li析出耐性が低下するのは、黒鉛粒子表面に親水性カーボンブラックが複数層被覆してしまい、リチウムイオンの伝導過程が妨げられるためと考えられる。
水系バインダーとは、水を溶媒もしくは分散媒体とするバインダーをいう。水系バインダーとしては、熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、多糖類などが挙げられるが、これらの混合物を用いてもよい。具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)が挙げられる。このうち、スチレン−ブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの混合バインダーが、結着力が大きいため好ましい。
負極は、黒鉛と水系バインダーとを含んだ負極塗料に、(1)被覆率が6.1%以上46.4%以下となるように、又は(2)親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合が0.2質量%以上1.5質量%以下となるように、親水性カーボンブラックの水系分散液を添加して混合した後、得られた混合液を負極集電体上に塗布して乾燥し、その後に圧延処理を施すことにより製造してもよい。親水性カーボンブラックの水系分散液としては、例えば東海カーボン(株)のAqua−Black162やAqua−Black001などが挙げられる。負極集電体としては、導電性材料で形成されたものであれば特に限定されないが、例えば、銅やステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などの金属で形成されている箔やメッシュを用いることができる。負極集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。この製法によれば、負極塗料に親水性カーボンブラックの水系分散液を添加した混合した混合液を負極集電体に塗布する場合、混合液中で凝集が全く起こらず、均一な塗布膜を得ることが可能となる。
(正極)
正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、正極集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。
正極活物質としては、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、LiMnO2やLiMn24などのリチウムマンガン複合酸化物、LiCoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、LiNiO2やLiNix1-x2(xは0<x<1,Mは、Li、Ni以外の金属元素であり、Co、Mn、Fe、Mg及びAlからなる群より選ばれる1以上であることが好ましい)などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物などを用いることができる。
導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック(AB)、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。
結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。
正極集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。正極集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。正極集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
(非水電解液)
非水電解液としては、非水溶媒に支持塩(リチウム塩)を溶解させたものである。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。
支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩の濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
(二次電池)
本発明の非水系リチウムイオン二次電池は、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、非水電解液の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。本発明の非水系リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本発明の非水系リチウムイオン二次電池20の一例を示す模式図である。この非水系リチウムイオン二次電池20は、カップ形状の金属製の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する金属製の封口板26と、を備えている。この非水系リチウムイオン二次電池20は、正極22と負極23との間に非水電解液27が満たされている。また、この負極23は、上述したように、負極活物質である黒鉛と、親水性カーボンブラックと、水系バインダーとを含み、(1)被覆率が6.1%以上46.4%以下であるか、(2)親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合が0.2質量%以上1.5質量%以下のものである。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
[実験例1]
(電池作製)
負極活物質として球形化天然黒鉛粒子(平均粒径10μm)、水系バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースの混合物を用意した。球形化天然黒鉛粒子とスチレン−ブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースとを、質量比98:1:1となるように秤量し、これらの材料を水に分散させた。これに親水性カーボンブラック分散液(東海カーボン(株)製、Aqua−Black162、平均粒径100nm、以下同じ)を添加し、混練することで負極合材層形成用組成物を調製した。黒鉛の平均粒径をr1、比重をd1、親水性カーボンブラックの平均粒径をr2、比重をd2、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合をx質量%としたときの、親水性カーボンブラックが黒鉛を被覆している割合である被覆率(=x(r1/4r2)(d1/d2))が30.6%となるように、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合を1質量%として、黒鉛と親水性カーボンブラックの合計質量が上述の98:1:1の98質量%となるように調整した。これを厚さ10μmの負極集電体(銅箔)に合材目付け量が5mg/cm2となるように塗布した。その後、120℃の真空中で6時間乾燥させて、ロールプレス機を用いて圧延処理を施すことによって、負極集電体上に合材密度1.1g/cm3の負極合材層が形成された負極シートを作製した。なお、比重d1を2.2g/cm3、比重d2を1.8g/cm3とした。
作製した負極シートにおける黒鉛粒子表面の親水性カーボンブラック分散度を確認するためにSEM観察を実施した。SEM観察は、日立ハイテクノロジーズ製のS−3600Nを用い、加速電圧10kV、観察倍率10000倍で実施した。
正極活物質であるLiNi0.8Co0.15Al0.052と、導電材であるアセチレンブラック(AB)、結着材であるPVDFとを、質量比85:10:5となるように秤量し、これらの材料をNMPに分散させてペースト状の正極合材層形成用組成物を調製した。これを厚さ15μmの正極集電体(アルミニウム箔)に合材目付け量が7mg/cm2となるように塗布した。その後、120℃の真空中で6時間乾燥させて、ロールプレス機を用いて圧延処理を施すことによって、正極集電体上に合材密度2.1g/cm3の正極合材層が形成された正極シートを作製した。
上記正極シートの合材を一部剥離しアルミニウム製の正極端子を超音波溶接して取り付けた。同様に、上記負極シートの合材を一部剥離しニッケル製の負極端子を超音波溶接して取り付けた。各端子を取り付けた正極シートと負極シートを、ポリエチレン製の単層構造のセパレータを介してアルミラミネートセルを作製した。非水電解液としてECとDMCとEMCとの体積比が3:4:3の非水溶媒に1MのLiPF6を溶解させたものを使用した。このようにして作製した10mAh級のアルミラミネートセルを用いて、以下の評価を行った。
(電池評価)
アルミラミネートセルを20℃の環境下において、充放電を実施した。充放電条件は、2mAの定電流充電によって4.1Vに到達後、2mAの定電流によって3.0Vまで放電を実施した。この充電容量と放電容量より、初回充放電効率を算出した。初回充放電後の電池に対して、SOC50%(電池電圧3.7V)に調整した後、電池を−10℃の環境下に保持して、交流インピーダンス測定を実施した(振幅電圧5mV、周波数範囲100kHz〜0.002Hz)。得られたインピーダンススペクトルを等価回路フィッティングすることにより、高周波数側円弧の抵抗を算出し、これを負極反応抵抗とした(J. Power Sources., 174, 1131 (2007))。
Li析出耐久評価は以下のように実施した。まず耐久試験前の電池容量評価を行うため、20℃環境下で4.1Vに定電流充電(2mA)した後、4.1Vで1時間定電圧充電を実施した。その後、3Vに定電流放電(2mA)した後、3Vで1時間定電圧放電を実施した。このようにして算出した放電容量を耐久前容量とした。Li析出耐久試験は以下のように実施した。SOC50%(電池電圧3.7V)に調整した電池を−10℃の環境下に保持した後、100mAで20秒間充電を行い、5分間休止をした後、100mAで20秒間放電を行い、5分間の休止を設けた。このサイクルを50回繰り返したのち、耐久前と同様の手順で容量評価を行い、耐久前後の容量維持率を算出した。120mA、140mA、160mA、180mA、200mAで同様の耐久試験を実施し、容量維持率が95%を割り込む電流値を外挿して算出し、負極合材質量当たりの電流値を算出してLi析出限界電流値と定義した。
[実験例2]
被覆率が15.3%となるように、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合を0.5質量%として負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験例3]
親水性カーボンブラックを添加せずに負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験例4]
被覆率が3.1%となるように、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合を0.1質量%として負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験例5]
被覆率が61.1%となるように、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合を2質量%として負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験例6]
被覆率が91.7%となるように、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合を3質量%として負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験例7]
被覆率が152.8%となるように、親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合を5質量%として負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験例8]
親水性処理を施していないカーボンブラック(東海カーボン(株)製、トーカブラック#5500、平均粒径25nm、以下同じ)を黒鉛に対して0.5質量%添加して負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験例9]
親水性処理を施していないカーボンブラックを黒鉛に対して0.25質量%添加して負極シートを作製した以外は、実験例1と同様にして電池作製および電池評価を行った。
[実験結果]
実験例1〜9の添加種、添加割合、被覆率、初回充放電効率、負極反応抵抗、Li析出限界電流値を表1に示す。
表1より分かるように、親水性カーボンブラックを黒鉛表面に担持した場合、被覆率が増加するにしたがって、あるいは親水性カーボンブラックの添加割合が増加するにしたがって、負極反応抵抗が低下することが明らかとなった。一方、Li析出限界電流値は被覆率が15.3%や30.6%、あるいは親水性カーボンブラックの添加割合が0.5質量%や1質量%の場合にほぼ極大値となり、被覆率が3.1%以下あるいは添加割合が0.1質量%以下の場合や被覆率が61.1%以上あるいは添加割合が2質量%以上の場合には、Li析出限界電流値が低下することが分かった。被覆率が3.1%以下あるいは添加割合が0.1質量%以下では添加量が少なすぎ、負極反応抵抗の低減効果が小さいためにLi析出限界電流値が向上しなかったと考えられる。また、被覆率が61.1%以上あるいは添加割合が2質量%以上では負極反応抵抗は低減するが、実際の電池入力の際には黒鉛表面に存在する親水性カーボンブラックがリチウムイオンの挿入脱離に対して障壁となるためにLi析出限界電流値は低下したと推測される。
親水性カーボンブラックの黒鉛に対する添加割合と親水性カーボンブラックの被覆率とLi析出限界電流値との関係を図2のグラフに示す。図2中、CBはカーボンブラックの略である。このグラフにおいて、Li析出限界電流値が親水性カーボンブラックを添加しなかった実験例3の値よりも5%向上したラインをボーダーラインとし、Li析出限界電流値がこのボーダーライン以上となる被覆率及び親水性カーボンブラックの添加割合を求めたところ、前者が6.1%以上46.4%以下、後者が0.2質量%以上1.5質量%以下であった。一方、実験例2と同等以上のLi析出限界電流値となる被覆率及び親水性カーボンブラックの添加割合を求めたところ、前者が14.7%以上36.7%以下、後者が0.5質量%以上1.2質量%以下であった。
負極シートのSEM観察を行った結果、実験例3の親水性カーボンブラック添加なしの場合には、図3に示すように黒鉛粒子のみが観察された。実験例1の被覆率30.6%(親水性カーボンブラック1質量%)の負極シートでは、図4に示すようにほぼ均一に分散して黒鉛表面を親水性カーボンブラック(図4中、白くて細かい点)が被覆していた。これに対して、実験例7の被覆率152.8%(親水性カーボンブラック5質量%)の負極シートでは、図5に示すように親水性カーボンブラックが重なり合って被覆している様子が確認された。実験例7では、黒鉛表面に水系バインダーであるスチレン−ブタジエンゴムやカルボキシメチルセルロースが存在しており、これらと親水性カーボンブラックが密着することで、Li挿入経路が塞がれたのではないかと推測される。初回充放電効率についても、被覆率61.1%以上(親水性カーボンブラックを2質量%以上)の実験例5〜7では親水性カーボンブラック添加なしの実験例3に比べて明らかに低下していた。親水性処理を施していないカーボンブラックを用いて同様の検討を行った実験例8,9では、負極反応抵抗低減効果、およびLi析出限界電流値の向上効果は確認されなかった。このことから、黒鉛表面に担持するカーボンブラックとしては、親水性を有するカーボンブラックであることが必要であることが示された。
以上の実験例1〜9のうち、実験例1,2が本発明の実施例に相当し、実験例3〜9が比較例に相当する。なお、これらの実験例は本発明を何ら限定するものではない。
20 非水系電池、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 非水電解液。

Claims (7)

  1. 負極活物質である黒鉛と、
    粒子表面にカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する親水性カーボンブラックと、
    水系バインダーと
    を含み、
    前記黒鉛の平均粒径をr1、比重をd1、前記親水性カーボンブラックの平均粒径をr2
    、比重をd2、前記親水性カーボンブラックの前記黒鉛に対する添加割合をx質量%とし
    たとき、前記親水性カーボンブラックが前記黒鉛を被覆している割合である下記式の被覆率が14.7%以上36.7%以下である、
    非水系リチウムイオン二次電池用負極。
    被覆率(%)=x(r1/4r2 )(d1/d2
  2. 負極活物質である黒鉛と、
    粒子表面にカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する親水性カーボンブラックと、
    水系バインダーと
    を含み、
    前記親水性カーボンブラックの前記黒鉛に対する添加割合が0.5質量%以上1.0質量%以下である、
    非水系リチウムイオン二次電池用負極。
  3. 負極活物質である黒鉛と、
    親水性カーボンブラックと、
    水系バインダーと
    を含み、
    前記黒鉛の平均粒径をr1、比重をd1、前記親水性カーボンブラックの平均粒径をr2
    、比重をd2、前記親水性カーボンブラックの前記黒鉛に対する添加割合をx質量%とし
    たとき、前記親水性カーボンブラックが前記黒鉛を被覆している割合である下記式の被覆率が14.7%以上36.7%以下である、
    非水系リチウムイオン二次電池用負極。
    被覆率(%)=x(r1/4r2 )(d1/d2
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の非水系リチウムイオン二次電池用負極と、
    正極と、
    非水電解液と、
    を含む非水系リチウムイオン二次電池。
  5. 黒鉛と水系バインダーとを含んだ負極塗料に、下記式の被覆率が14.7%以上36.7%以下となるように粒子表面にカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する親水性カーボンブラックの水系分散液を添加して混合した後、得られた混合液を負極集電体上に塗布して乾燥し、その後に圧延処理を施して負極とする、
    非水系リチウムイオン二次電池用負極の製法。
    被覆率(%)=x(r1/4r2 )(d1/d2
    (式中、r1は前記黒鉛の平均粒径、d1は前記黒鉛の比重、r2は前記親水性カーボンブ
    ラックの平均粒径、d2は前記親水性カーボンブラックの比重、xは前記親水性カーボン
    ブラックの前記黒鉛に対する添加割合(質量%)である)
  6. 黒鉛と水系バインダーとを含んだ負極塗料に、下記式の被覆率が14.7%以上36.7%以下となるように親水性カーボンブラックの水系分散液を添加して混合した後、得られた混合液を負極集電体上に塗布して乾燥し、その後に圧延処理を施して負極とする、
    非水系リチウムイオン二次電池用負極の製法。
    被覆率(%)=x(r1/4r2 )(d1/d2
    (式中、r1は前記黒鉛の平均粒径、d1は前記黒鉛の比重、r2は前記親水性カーボンブ
    ラックの平均粒径、d2は前記親水性カーボンブラックの比重、xは前記親水性カーボン
    ブラックの前記黒鉛に対する添加割合(質量%)である)
  7. 黒鉛と水系バインダーとを含んだ負極塗料に、粒子表面にカルボキシル基及び/又はヒドロキシル基を有する親水性カーボンブラックの前記黒鉛に対する添加割合が0.5質量%以上1.0質量%以下となるように前記親水性カーボンブラックの水系分散液を添加して混合した後、得られた混合液を負極集電体上に塗布して乾燥し、その後に圧延処理を施して負極とする、
    非水系リチウムイオン二次電池用負極の製法。
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