JP2002356708A - 磁性金属粉末の製造方法および磁性金属粉末 - Google Patents
磁性金属粉末の製造方法および磁性金属粉末Info
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Abstract
供する。 【解決手段】 磁性金属酸化物粉末を還元ガスからなる
キャリアガスにより加熱炉に供給する。加熱炉内の温度
は、磁性金属酸化物粉末の還元開始温度以上かつ当該磁
性金属の融点以上の温度に維持されている。磁性金属酸
化物粉末は還元処理され、還元処理による生成物である
磁性金属粒子はその後溶融して球状の溶融物が得られ
る。溶融物は冷却工程で再結晶化され、球状かつ単結晶
の磁性金属粉末を得ることができる。
Description
その製造方法に関するものである。
り分類することができる。つまり、金属粉末は、気相、
液相および固相から製造することができる。そして、気
相から金属粉末を製造する具体的な方法としては、CV
D(Chemical Vapor Depositions)法、スパッタリン
グ法、真空蒸着法が知られている。液相からの金属粉末
の製造方法としては、共沈法、ガスまたは水アトマイズ
法、スプレー法および噴霧熱分解法が知られている。さ
らに、固相からの金属粉末の製造方法としては、金属塊
を粉砕機により適度な大きさに粉砕する、あるいはこの
粉砕粉末に所定の処理を施す粉砕法が知られている。
各種部品はこれからますます高周波での使用が余儀なく
される。プリント基板も同様であり、また誘電率の高い
基板、誘電率の低い基板、磁気特性の高い基板、電波を
吸収する基板等、種々の特性を有する基板が要求され
る。このような基板を得るために、プリント基板内に高
周波特性のよい磁性粉末を必要に応じて基板を構成する
樹脂に混合、分散させることが行われている。磁性粉末
としては、高周波用フェライト粉末、カーボニル鉄粉末
が用いられている。また、プリント基板以外では、パッ
ケージの分野において、樹脂に電波吸収材料からなる粉
末を混合、分散したり、導電性ペーストの分野では、電
子回路、抵抗、コンデンサ、ICパッケージ等の部品を
製造するための厚膜ペースト中に導電性粒子を混合、分
散することが行われている。さらに、軟磁性材料として
は、チョークコイルなどの電源用コイル材料、硬磁性材
料としてはモータ用のコア材料、その他にも、磁気抵
抗、磁気センサ、など幅広く磁性粉末が利用されてい
る。
号公報(特公昭63−31522号公報)に、厚膜ペー
スト用の金属粉末を噴霧熱分解法で作成する発明が開示
されている。この発明は、金属塩を含む溶液を噴霧して
液滴にし、その液滴を該金属塩の分解温度より高く、か
つ金属の融点より高い温度であって、しかも金属の融点
以下の温度で金属が酸化物を形成する場合にはその酸化
物の分解温度より高い温度で加熱して、該金属塩を熱分
解し生成した金属粒子を溶融するというものである。特
開昭62−1807号公報の噴霧熱分解法によれば、球
状で結晶性が良く、しかも高分散性の金属粉末が得られ
る。具体的な実施例として、AgNO3を含む溶液を用
いて最大粒径1.7μm、最小粒径0.5μmのAg粉末
を作成する例、AgNO3およびPd(NO3)2を含む
溶液を用いて最大粒径2.5μm、最小粒径1.5μmの
Ag−Pd合金粉末を作成する例およびHAuCl4を
含む溶液を用いて最大粒径1.0μm、最小粒径0.5μ
mのAu粉末を作成する例が開示されている。また、こ
れら粉末は、結晶性の良い球状の粉末であることが述べ
られている。以上のように特開昭62−1807号公報
によれば、結晶性に優れた0.5〜2.5μm程度の粒子
径を有する球状の金属粉末を得ることができる。このよ
うな性状を備えた金属粉末は、導電性ペーストとするの
に好適である。
具体的に示された金属はAg、Ag−Pd合金およびA
uであり、磁性粉末を混合、分散する用途に適合した金
属粉末、特にFe粉末を開示していない。噴霧熱分解法
による金属粉末の製造方法を開示する先行技術として
は、上記の特開昭62−1807号公報のほかに、特開
平8−170112号公報、同10−102108号公
報、同10−330802号公報、同11−80818
号公報および同11−124602号公報がある。これ
ら先行技術はFe粉末またはFe合金粉末の製造の可能
性を示唆しているが、現実にFe粉末またはFe合金粉
末を製造した例は見当たらない。つまり、噴霧熱分解法
により製造することのできる金属粉末は、その種類に大
きな制約があったといえる。
気相からの製造方法あるいは固相からの製造方法によっ
て得ることができることはいうまでもない。しかし、気
相からの製造方法による金属粉末は粒径が微小であり、
樹脂と混合する用途には不向きである。また、固相から
の製造方法による金属粉末は、粉砕機を使用することか
ら粉末の形状を球形とすることが困難であるとともに、
粒度分布が悪い。以上のように、従来の金属粉末の製造
方法によれば、樹脂と混合するのに好適な性状を備えた
磁性金属粉末、特にFe粉末またはFe合金粉末を得る
ことができなかった。そこで本発明は、そのような金属
粉末を得るために好適な製造方法を提供し、併せて従来
存在しなかった新規な磁性金属粉末を提供することを課
題とする。
決するために、噴霧熱分解法が対象とする金属の種類に
制限があったことの原因について検討した。噴霧熱分解
法は溶液を原料としており、熱分解のための高温加熱工
程において本来得ようとする金属とは無関係の水分を熱
分解するために熱エネルギーを消費してしまう。また、
水蒸気が発生することにより熱分解、典型的には還元処
理を行う雰囲気が水蒸気雰囲気となる。この水蒸気雰囲
気中の水分は、還元作用を低減させる。したがって、従
来の噴霧熱分解法によっては、強還元が必要な物質を出
発原料とする金属粉末を得ることができなかったものと
推測される。特開昭62−1807号公報に開示された
Ag、Ag−Pd合金およびAuは、いずれも強い還元
力を要することなく得ることができるものである。本発
明者は、噴霧熱分解法のように湿式の出発原料を用いる
ことなく、出発原料として粒径を特定した乾燥状態にあ
る化合物粉末に熱分解処理を施すことにより、従来では
得ることのできなかった球状の単結晶Fe粉末の製造に
成功した。すなわち本発明は、熱分解により磁性金属粉
末を生成する原料粉体をキャリアガスとともに所定の加
熱処理領域に供給する原料供給工程と、前記加熱処理領
域に供給された前記原料粉体を前記原料粉体の分解温度
以上の温度に加熱する加熱処理工程と、前記加熱処理工
程で得られた生成物を冷却することにより磁性金属粉末
を得る冷却工程と、を備えることを特徴とする磁性金属
粉末の製造方法である。本発明によれば、従来では得る
ことのできなかった球状の単結晶Fe粉末を製造できる
という利益の他に、乾燥状態にある化合物粉末に熱分解
処理を施すため、加熱エネルギーが従来の噴霧熱分解法
に比べて少なくて済む、収率が高い、といった効果を享
受することもできる。また、本発明の磁性金属粉末は、
Feの単結晶に限るものではなく、他の磁性金属粉末を
製造することを許容する。また、磁性についても、軟質
磁性材に限らず硬質磁性材について適用することもでき
る。
ガスを含み、前記加熱処理工程において前記原料粉体を
還元することにより還元生成物を生成し、前記冷却工程
によりこの生成物を冷却することにより磁性金属粉末を
得ることができる。また本発明において、前記加熱処理
工程において前記還元生成物からなる溶融物を生成し、
前記冷却工程において前記溶融物を再結晶化させること
により磁性金属粉末を得ることもできる。また本発明に
おいて、前記加熱処理工程において前記原料粉体の溶融
物を生成した後に前記溶融物を還元処理し、還元処理さ
れた前記溶融物を前記冷却工程において再結晶化させる
ことにより磁性金属粉末を得ることもできる。つまり、
本発明では、固体状態の原料粉体を還元処理した後に溶
融物を生成し、この溶融物を冷却固化する手法と、固体
状態の原料粉体を溶融した後に溶融状態を維持しつつ還
元処理し、しかる後に冷却固化する手法のいずれかを採
用することができる。このように一旦溶融することによ
り、得られる磁性金属粉末を容易に単結晶とすることが
可能となる。本発明において、前記原料粉体を酸化鉄粉
末とすることにより、純鉄からなる磁性金属粉末を得る
ことができる。さらにまた本発明において、前記磁性金
属粉末を製造する過程で、その表面にコーティング層を
形成することができる。このコーティング層を形成する
ために、前記原料粉体に含まれる前記磁性金属よりも還
元力の強い元素を構成要素とする化合物からなる粉体を
前記原料粉体とともに前記所定の加熱処理領域に供給す
ることができる。この場合、前記磁性金属よりも還元力
の強い元素を構成要素とする化合物からなる粉体は前記
原料粉体よりも粒径が小さいことが望ましい。また、前
記原料粉体が前記磁性金属よりも還元力の強い元素を構
成要素とする化合物を含む形態とすることによっても前
記磁性金属粉末を製造する過程で、その表面にコーティ
ング層を形成することもできる。このコーティング層の
形成については後述する。
ることのできなかった性状のFe粉末またはFe合金粉
末を得ることができる。すなわち本発明によれば、Fe
族元素の1種または2種以上を含み平均粒径0.1〜1
00μmの酸化物粉体を加熱処理雰囲気中に供給し、前
記加熱処理雰囲気中で前記酸化物粉体の溶融物を生成
し、前記溶融物を冷却固化することによりFe族元素の
1種または2種以上からなる磁性金属粉末を得る磁性金
属粉末の製造方法であって、前記加熱処理雰囲気中にお
いて、前記溶融物の生成前または前記溶融物の生成後か
つ冷却固化前に還元処理を施すことを特徴とする磁性金
属粉末の製造方法が提供される。本発明の磁性金属粉末
は、平均粒径を0.1〜20μmとすることができる。
この粒径は好適には0.5〜10μm、さらに好適には
1〜5μmである。また本発明によって得られる磁性金
属粉末も単結晶とすることができるから、優れた磁気特
性および高周波特性を得ることが可能になる。以上の磁
性金属粉末の製造方法においても、その製造過程におい
てコーティング層を形成することができる。
とする単結晶であり、平均粒径が0.1〜20μmの球
状体であるという従来では得られない新規な磁性金属粉
末となる。本発明の磁性金属粉末において、望ましい平
均粒径は0.5〜10μm、さらに望ましくは1〜5μ
mである。また本発明による磁性金属粉末は、飽和磁束
密度が2.0T以上と極めて優れた磁気特性を得ること
ができる。本発明の磁性金属粉末は、当該金属単体で構
成することができるが、その表面にコーティング層を形
成することができる。コーティング層は、磁性金属粉末
を製造した後に形成することもできるが、上述したよう
に、磁性金属粉末の製造過程で形成することができる。
そしてその場合、前記コーティング層が、Feよりも親
和力の強い元素を構成要素とする化合物から構成するこ
とができる。コーティング層を形成することにより、磁
性金属粉末に対して、耐酸化性、絶縁性、非凝集性を付
与することができる。
る。まず本発明による磁性金属粉末の製造工程概略を図
1に基づき説明する。図1に示すように、本発明の製造
方法は、原料粉体を供給する粉体供給工程、供給された
粉体を所定温度に加熱する加熱処理工程、加熱処理によ
って得られた生成物を冷却する冷却工程および後処理工
程から構成される。
て、図1にはキャリアガスと原料粉体とを別途用意し、
ノズルNを介してキャリアガスとともに原料粉体を加熱
処理工程に供給する形態を記載している。キャリアガス
としては、加熱処理工程において、還元性雰囲気を形成
することのできるガスを用いることができる。例えば、
水素ガス、一酸化炭素ガス、アンモニアガスといった公
知の還元能力を有するガスを用いることができる。この
中では高温で還元力が増す水素ガスを用いるのが望まし
い。また、還元ガスは不活性ガスとの混合ガスとして供
給することもできる。混合する不活性ガスとしては、窒
素ガス、ArガスおよびNeガスを用いることができ
る。加熱処理工程におけるNOxの発生を考慮すると、
ArガスおよびNeガスを用いることが望ましい。ま
た、キャリアガスとしては不活性ガスを用い、還元性雰
囲気を形成すべき領域において還元ガスを供給すること
もできる。原料粉体を溶融した後に、生成された溶融物
に対して還元処理を施す場合に適用することができる。
還元効率は、原料粉体の熱分解温度、大きさ、単位体積
当たりの粉体の量、熱分解領域のキャリアガス速度(還
元温度における滞留時間)、圧力に依存する。還元効率
を考えれば、圧力が高いほど還元条件として好ましい
が、粉末の捕集を考えると負圧にし、大気圧に近い条件
で作成することがより好ましい。キャリアガス中におけ
る還元ガスの濃度は、原料粉体の親和力、形状、サイ
ズ、還元領域の速度(還元温度における滞留時間)、キャ
リアガスに対する単位体積中の粉体量、還元剤に対する
被還元元素の還元反応定数、圧力により適宜定めればよ
い。なお、2種類の元素における還元力の優劣は、いわ
ゆる還元の対象となる元素に対する親和力の大きさの差
となり、目的金属の化合物と還元剤とが反応したときに
生じる標準自由エネルギー変化の差である。この大きさ
によって還元されるのかされないのかが決まることとな
る。原料粉体を加熱処理工程に供給する手法は、図1に
記載された方式に限定されない。例えば、原料粉体に対
して還元ガスを含む圧縮ガスを吹き付けることによりキ
ャリアガスとともに原料粉体を加熱処理工程に供給する
方式を採用することができる。また、分散機を利用した
供給、分級機や粉砕機の出力を利用し供給、つまり分級
または粉砕することで出力側から得られる粉末を加熱処
理工程に送り込むことも可能である。
熱方式としては、電気による加熱、ガスの燃焼熱による
加熱および高周波加熱等の公知の方式を採用することが
できる。原料粉体はキャリアガスとともに加熱炉内を浮
遊した状態で熱分解、具体的には還元される。この還元
の具体的内容については後述する。熱分解時の原料粉体
の流速は、還元ガス濃度、捕集効率、熱分解温度に応じ
て適宜定めることになるが、概ね0.05〜10m/s
の範囲、とりわけ0.1〜5m/s、さらには0.5〜2
m/sで選択するのが望ましい。粉末の流速は、キャリ
アガスの流速を制御することにより変えることができ
る。
に移行される。具体的には、加熱炉内に冷却ゾーンを設
ける、あるいはキャリアガスとともに大気中に排出する
ことにより生成物を冷却することができる。この冷却
は、放冷でもよいが冷却媒体を用いて強制的に冷却する
こともできる。この冷却工程を経ることにより所望する
磁性金属粉末を得る。冷却工程後には、例えばサイクロ
ン・バグフィルタによって粉末を捕集する一方、キャリ
アガスについては適切な排ガス処理を行った後に排気さ
れる。
える金属元素を含む。その種類は限定されないが、Fe
を含む遷移金属、とりわけFe族元素(Fe,Ni,C
o)を主体とし、その他に半金属元素(Si、Pなど)、
他の遷移金属元素(Mn、Cu、Cr等)を含有するこ
ともできる。原料粉体は、熱分解により所望の金属(合
金を含む)粉末を生成するものであれば、その形態は限
定されない。例えば、磁性金属の酸化物、窒化物、硼化
物、硫化物等の化合物及び金属塩、スプレー法などで作
製した顆粒粉、粉砕機により粉砕した粉砕粉でもよい。
また、作製したい組成比として混合した塩を含む水溶液
を用いた溶液スプレー法による粉末、また、圧電素子、
二流体ノズルを用いた噴霧熱分解法による粉末でもよ
い。なお、本発明で原料粉体とは、粉末、顆粒粉、粉砕
粉等、その形態に拘わらず粒子から構成される種々の形
態を包含している。例えば、最終的にFe粉末を得る場
合には、酸化鉄粉末を用いるのがコスト的にも有利であ
る。原料粉体のサイズは、0.1〜100μmの範囲で
適宜定めればよい。ただし、0.5〜50μmが作成す
るのに好ましく、1〜20μmであればさらに好まし
い。粒子が小さすぎると、大きい粒子の表面に付着する
傾向になるし、樹脂に混合するのに不向きであり、ま
た、粒子径が大きくなるほど、還元条件、単結晶粒子の
作成条件が厳しくなるためである。なお、本発明におい
て熱分解とは、熱を加えることにより化合物が2種以上
のより簡単な物質に変化する化学反応を言う。この熱分
解は熱を加えて行う還元反応を包含する概念であること
は言うまでもない。本発明において、乾燥状態の原料粉
体を用いる点が従来の噴霧熱分解法による金属粉末の製
造方法と異なる特徴の一つである。それは、噴霧熱分解
法で必然的に発生する大量の水蒸気成分が還元濃度の低
下を招き、より還元物に対する親和力の大きな金属元素
を作成できない原因となるからである。ここで、乾燥状
態とは、原料粉体に対して特別な乾燥処理を施すことを
要求するものではない。従来の噴霧熱分解法のような溶
液状態の出発原料、スラリー状態の出発原料のように、
湿式状態の粉体を含まないことを意味している。
る原料粉体の変遷を図2および図3に基づいて説明す
る。なお、説明の便宜上、原料粉体を磁性金属酸化物粉
末とする。また、図2は磁性金属酸化物を還元した後に
溶融し、しかる後に冷却固化する例を、図3は磁性金属
酸化物を溶融した後に還元し、しかる後に冷却固化する
例を示している。図2において、磁性金属酸化物粉末
は、還元ガスからなるキャリアガスとともに加熱処理工
程に供給される。ここで、加熱処理工程の加熱温度を
T、磁性金属酸化物の還元温度をTr、磁性金属の融点
をTmとすると、T>Tm>Trの関係にあるものとす
る。磁性金属酸化物粉末を加熱温度がTに管理された加
熱処理工程に供給すると、磁性金属酸化物粉末はTrに
達した段階で還元処理が終了し、融点の高い酸化物から
融点の低い磁性金属粒子に変化する。その後、磁性金属
粒子には融点Tm以上の熱エネルギーが付与されること
になるので、各粒子は溶融する。溶融した複数の粒子が
結合して新たな溶融粒子を形成する。この新たな溶融粒
子が冷却工程において再結晶をなして単結晶の磁性金属
粉末を構成する。次に、図3において、不活性ガスから
なるキャリアガスとともに磁性金属酸化物粉末を加熱処
理工程に供給する。磁性金属酸化物は、まず加熱処理工
程において溶融する。磁性金属酸化物が溶融した後に、
還元ガスを加熱処理工程に供給することにより還元反応
を生じさせる。このとき得られる溶融生成物は、当該磁
性金属からなる溶融物である。この溶融物は、冷却工程
において融点に達すると再結晶を開始し、凝固した段階
では単結晶からなる磁性金属粉末を構成する。この図3
の例では、還元ガスを含まないキャリアガスを用いるこ
とによりはじめに磁性金属酸化物粉末を溶融し、次いで
還元ガスを供給して溶融物に還元反応を生じさせる。図
2および図3に示した通り、本発明は、還元した後に溶
融し、しかる後に冷却固化する形態、溶融した後に還元
し、しかる後に冷却固化する形態のいずれをも採用する
ことができる。しかし、加熱処理温度その他の条件によ
っては、還元と溶融とが混在して生ずる場合もあり、両
者を明確に区別することができない場合もあろう。本発
明はこのような場合をも包含している。
た生成物である粒子にその粒子の融点以上の熱エネルギ
ーを与え、一度、原料粉体の結晶性を壊すことにある。
原料粉体が不定形な一魂の破砕粉、微粒子が凝集した形
の顆粒粉であったとしても、溶融することにより一粒の
液滴になる。液滴となった生成物は、表面張力により球
状体を形成し、その形態のまま冷却工程を経ることによ
り再結晶した球状の磁性金属粉末を得ることができるの
である。この磁性金属粉末は、単結晶であるとともに平
均粒径を0.1〜20μmの範囲とすることができる。
る本発明の望ましい態様について説明した。しかし、本
発明はこの態様に限定されず、原料粉体を溶融すること
なく磁性金属粉末を得ることもできる。もっとも、この
場合、原料粉体が不定形であれば得られる磁性金属粉末
も不定形を維持するおそれがあるとともに単結晶を得る
こともできなくなる。また、還元処理過程において、粉
体表面から優先的に還元がなされ、中空孔の状態で還元
処理が終了するおそれもあり、しかも欠陥の多い粒子と
なる。これは、出発原料が顆粒粉の場合にも同じことが
いえる。したがって、性状の優れた磁性金属粉末を得る
ためには、原料粉体を一度溶融することが望ましいので
ある。つまり、一度溶融することにより、原料粉体内の
不純物を液滴の表面に追い出すことができ、原料粉体よ
りも高純度かつ真球状の単結晶金属粒子を製造すること
ができる。また、溶融することにより複数種類の元素を
含んだ原料粉体を用いた場合に合金化することも可能と
なる。もっとも、この場合、原料粉体が不定形であれば
得られる磁性金属粉末も不定形を維持したり、欠陥の多
い粉末が作製されるおそれがあるとともに単結晶を得る
こともできなくなる。また、還元処理過程において、粉
体の表面は内部よりも温度が高いため粉体表面から優先
的に溶融、還元がなされるため、中空孔の状態で還元処
理が終了するおそれもある。さらに、顆粒粉の場合にお
いて磁性金属粉末は合金状態の割合が多い(合金化がす
すんだ)粒子を得ることが難しくなる。合金が進まず各
々の金属粒子の割合が多くなる金属混合粒子となる。こ
ちらも、還元処理過程において、粉体内部よりも外部か
ら還元、溶融が始まるため、中空孔や欠陥の多い粒子状
態で還元処理が終了するおそれもある。また本発明によ
れば、原料粉体が水分を極力含まないため、還元時の水
蒸気の影響を抑えることができ、還元ガスの還元能力を
効率よく活かすことが可能となる。よって、水溶液を原
料粉体として熱分解する従来の噴霧熱分解法よりも低温
で、しかも単位体積当たりの粉体還元処理量を多くする
ことが可能となる。
化または付加するためにその周囲にコーティング層を形
成することができる。このコーティング層は磁性金属粉
末を得た後にコーティング層を形成するための特別な工
程によって得ることもできるが、本発明では磁性金属粉
末の製造過程でコーティング層を形成する手法を提案す
る。このコーティング層は、例えば、酸化物の場合にお
いて還元の対象となる元素は酸素となるため、より酸素
との親和力の強い元素を構成要素とする化合物からな
る。よって、還元の対象となる元素に対する親和力の大
きさで各々のコーティング成分についての還元条件を決
めることになる。そして、この化合物からなるコーティ
ング層を形成するためには、いくつかの手法を採用する
ことができる。この手法は、コーティング層を構成する
化合物を、どのような形態で供給するかによって区別す
ることができる。第1の手法は、コーティング層を構成
する化合物を、磁性金属粉末を得るための原料粉体との
混合物として供給する方法である。この第1の手法は、
原料粉体とコーティング層を構成する化合物からなる粉
体との混合粉体として供給する形態と、前記コーティン
グ層を構成する化合物が分散した原料粉体として供給す
る形態に区別することができる。また、前者は2種類の
粉末からなる顆粒粉の形態を包含する。第2の手法は、
磁性金属と当該磁性金属よりも還元力の強い元素とを含
む複合化合物、例えば複合酸化物として供給する方法で
ある。各手法について、図4〜図6を参照しつつ説明す
る。なお、図4〜図6は還元した後に溶融する形態につ
いて説明するが、溶融した後に還元する形態において実
施することができることは言うまでもない。
とコーティング層を構成する化合物からなる粉体との混
合粉体として供給する形態を図4に基づいて説明する。
なお、ここでも原料粉体として磁性金属酸化物粉末を例
にする。磁性金属酸化物とともに当該磁性金属よりも還
元のやり取りとなる元素との親和力の強い元素を構成要
素とする化合物からなる粉体(コーティング材料)を供
給する。この化合物は、磁性金属酸化物が還元される温
度域においても還元されにくい。この化合物の種類は特
に問わないが、例えば、最終的に得たい磁性金属よりも
酸素との親和力の強い元素、例えば、Feに対してはS
i、Ti、Cr、Mn、Al、Nb、Ta、Ba、C
a、Mg、Sr等の酸化物が挙げられる。ここで、加熱
処理温度をT、磁性金属酸化物の還元温度をTr1、コ
ーティング材料の還元温度をTr2、磁性金属の融点を
Tm1、コーティング材料の融点をTm2とすると、T
r2>T>Tm2>Tm1>Tr1の条件を満足するも
のとする。ただし、この関係はあくまで一例であり、本
発明が他の関係を排除することを意味するものではな
い。例えば、Tr2>Tm2>T>Tm1>Tr1ある
いは、コーティング材料となる化合物や当該磁性金属に
対する溶融温度、還元温度が逆であっても本発明を実施
することができる。また、条件式で、T>Tr2>Tm
2>Tm1>Tr1の場合は、TがTr2の近傍の場
合、作成条件、還元条件によって完全に還元反応が進ま
なかった場合には、一部が金属として存在したり、磁性
金属に溶融し、その他、還元されなかった化合物がコー
ティング材料となる。例えば、2元素が一つの粒子内に
存在する場合、その各々の融点、還元温度をTm1、T
r1、Tm2、Tr2とした場合、条件式でT>Tr2
>Tm2>Tr1の場合において、T>Tr2が成り立
ち、2元素が還元されることとなれば、お互いの元素同
士は溶融しあうため合金粒子を作成することができる。
2元素が完全に還元される熱エネルギーを与えた場合に
は、球状合金粒子を作成することが可能となる。合金の
度合い、結晶性は冷却速度に依存することになる。コー
ティング材料が還元されたとしても、その構成元素が各
々元素単体まで還元されなければ、コーティング材料と
なりえる。
程に磁性金属酸化物粉末とコーティング材料とで作成し
た混合粉体を供給すると、Tr1において、磁性金属酸
化物は還元される。この温度ではコーティング材料は還
元されないため、当初の酸化物の形態を維持する。その
後、還元による生成物である磁性金属にはその融点であ
るTm1以上の温度Tに加熱されるため溶融するが、コ
ーティング材料はその融点Tm2が加熱処理温度Tより
低いために溶融する。また、加熱処理温度Tがコーティ
ング材料の還元温度Tr2より低いために、コーティン
グ材料は還元されない。大部分の体積を占める比重の大
きい磁性金属が溶融して中心部に集まる一方、比重の小
さいコーティング材料が外周に弾き出された一粒の液滴
を形成する。溶融しないコーティング材料が表面に弾き
出されるのは、液滴状態にある磁性金属が加熱処理時に
ゆるやかであるにしろ外部の影響を受けて自転を起して
おり、その遠心力の影響を受けるためと考えられる。そ
の後、冷却工程において表面にコーティング材料を弾き
出した状態で粒子内部からの温度低下による核結晶が磁
性金属で発生し再結晶化が行われる。還元されないコー
ティング材料は、磁性金属と分離されたまま冷却され
る。すると、得られる粉末は、球状かつ単結晶の磁性金
属粒子の周囲に酸化物がコーティングされた形態とな
る。原料粉体とともに添加されるコーティング材料のサ
イズを制御することにより、コーティング層を均等な膜
厚とすることができる。また、コーティング層を得るた
めには、コーティング材料の供給量、サイズを所定の範
囲にすることが重要である。コーティング材料の量が多
くなると磁性金属の溶融段階で自転がなくなるおそれが
あるし、また溶融した磁性金属が中心に集まりにくいた
めである。
層を構成する化合物が分散した原料粉体として供給する
形態を図5に基づいて説明する。図5において、原料粉
体はマトリックスを磁性金属酸化物粉末とし、その粉末
中にコーティング材料が分散した形態を有している。こ
の形態の典型例として、SiO2を不純物として含有す
る酸化鉄(Fe2O3)を掲げることができる。還元ガス
をキャリアガスとしてこの原料粉体を加熱処理工程に供
給する。加熱処理工程において、はじめに母材を構成す
る磁性金属酸化物が還元される。このとき磁性金属酸化
物中に分散していたコーティング材料は還元されずに当
初の形態を維持する。したがって、還元処理により、コ
ーティング材料が分散した磁性金属粒子が形成される。
つぎに、コーティング材料が内部に分散した磁性金属粒
子のうち、磁性金属の部分が溶融する。磁性金属が溶融
することにより、前述の例と同様に、コーティング材料
は溶融金属の外周に弾き出される。その後、冷却工程に
おいて表面にコーティング材料を弾き出した状態で粒子
内部からの温度低下による核結晶が磁性金属で発生し再
結晶化が行われる。得られる粉末は、球状かつ単結晶の
磁性金属粒子の周囲に酸化物がコーティングされた形態
となる。
いて説明する。第2の手法は、磁性金属と当該磁性金属
よりも還元力の強い元素とを含む複合化合物、例えば複
合酸化物として供給する方法である。この酸化物をここ
では磁性金属複合酸化物と呼び、その具体例としてFe
Al2O4を掲げることにする。図6において、還元ガス
をキャリアガスとして原料粉体である磁性金属複合酸化
物を加熱処理工程に供給する。加熱処理工程において、
磁性金属複合酸化物は還元され、磁性金属と酸化物とに
分解される。FeAl2O4を例にすると、FeとAl2
O3に分解される。Al2O3がコーティング材料とな
る。その後、磁性金属が融点以上の温度に達して溶融す
る。そうすると、やはりコーティング材料であるAl2
O3が外周に弾き出される。しかる後、冷却工程におい
て表面にコーティング層を弾き出した状態で粒子内部か
らの温度低下による核結晶が磁性金属で発生し再結晶化
が行われる。得られる粉末は、球状かつ単結晶の磁性金
属粒子の周囲にAl2O3がコーティングされた形態とな
る。なお、還元力を弱めた条件とすれば、磁性金属であ
るFeの一部がAlと化合物(FeAl2O4)を形成し
たまま分離せず、当該化合物(FeAl2O4)がそのま
まコーティング材料となることもある。
が固体の状態を維持した例を示したが、コーティング層
を形成する過程で溶融しかつ磁性金属よりも融点の低い
セラミックス材料やガラス質材料をコーティング材料と
して用いることもできる。このセラミックスとしてはチ
タン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、フェライト
磁性材料が挙げられる。図7に基づきガラス質材料の例
を説明する。なお、ガラス質材料が、当該磁性金属より
も還元力の強い元素を構成要素とする化合物からなるこ
とは前述の通りである。キャリアガスである還元ガスと
ともに、磁性金属酸化物とガラス質材料からなるコーテ
ィング材料を供給する。ここで、加熱処理温度をT、磁
性金属酸化物の還元温度をTr、磁性金属の融点をTm
1、コーティング材料の融点をTm3とすると、T>T
m1>Tr1>Tm3の条件を満足するものとする。た
だし、この関係はあくまで一例であり、本発明が他の関
係を排除することを意味するものではない。加熱処理工
程において、はじめに融点の低いガラス質材料がTm3
において溶融し、ついでTr1において磁性金属酸化物
が還元される。次に、還元により得られた磁性金属がT
m1に達すると溶融する。この段階では、磁性金属とガ
ラス質材料とがともに溶融している。この時、コーティ
ング材料であるガラス質材料は溶融した状態を維持する
が、磁性金属よりも比重が小さいため自然と周囲に弾き
出される。その後の冷却工程において、溶融粒子内部か
らの温度低下および融点の高い磁性金属が先に結晶核を
形成し、そこを起点として磁性金属の再結晶化が行われ
る。溶融状態のガラス質材料は、粒子が外部の影響を受
けて自転をしているため、遠心力により表面を均等に被
覆する。また、コーティング材料が完全に溶融したとし
ても、金属とコーティング化合物の物理的特性により、
互いに固溶はせず分離した状態を保つことができると考
えられる。磁性金属とガラス質材料との界面は何らかの
化学的結合があるものと思われる。その後、温度の低下
とともにガラス質材料は単結晶磁性金属の表面で凝固す
ることにより、均一なコーティング層を有する磁性金属
粉末を得ることができる。
を形成する手法では、磁性金属の融点以上の熱エネルギ
ーを与えているが、このような熱エネルギーを与えるこ
となくガラス質材料からなるコーティング層を有する磁
性金属粉末を製造することもできる。ただし、この磁性
金属粉末は、多結晶体でありかつ球状を得ることができ
ない場合がある。この手法は、加熱処理温度をT、磁性
金属酸化物の還元温度をTr、磁性金属の融点をTm
1、コーティング材料(ガラス質材料)の融点をTm3
とすると、Tm1>T>Tr1>Tm3の条件を満足す
ることにより実行できる。この場合、加熱処理工程にお
いて、融点の低いガラス質材料がTm3にて溶融する。
この時、磁性金属酸化物粉末は全体量の大部分の体積を
占めているために個々の表面で反応、凝集して粉体の中
心に集まる。一方、溶融したガラス質材料は内部に集ま
らず、凝集粉体の表面に集まる。その後、磁性金属酸化
物がTr1にて還元反応が終了し、多結晶金属凝集体を
形成する。この凝集体は、冷却過程においてその表面を
ガラス質材料が凝固することでコーティング層を有する
多結晶磁性金属粉末を形成する。このように、コーティ
ング成分として、磁性金属酸化物よりも低い温度で溶融
するガラス質材料を選べば、多結晶磁性金属の周囲にコ
ーティング層を形成した粉末を得ることもできる。コー
ティング層を形成することにより、磁性金属粉末として
の絶縁性、耐酸化性、非凝集性を向上することができ
る。また、熱による酸化防止効果としても働く。さらに
アルカリ土類金属を添加することで、熱による酸化防止
効果を一層高めることも可能である。また、先にも述べ
たように、コーティング層は磁性金属粉末を得た後に形
成しても良い。
する。 (実施例1)還元ガスとなる68%水素+窒素の混合ガ
スをキャリアガスとして、原料粉体である平均粒径3μ
mの酸化鉄(Fe2O3)粉末を加熱炉へ供給した。酸化
鉄(Fe2O3)粉末の純度は99.9%である。キャリ
アガスの流量は3l/min、炉内温度(加熱処理温
度)は1650℃である。なお、酸化鉄(Fe2O3)の
融点は1550℃、Feの融点は1536℃である。得
られた粉末をSEM(走査電子顕微鏡)により観察し
た。その結果を図8に示すが、得られた粉末が真球状で
あることが確認された。また、得られた粉末の粒径を粒
度分布測定装置(堀場製作所製 LA−920)により測
定したところ、粒度分布が0.5〜6μm、平均粒径が
2.2μmであることが確認された。得られた粉末につ
いてX線回折を行った。結果を図9に示すが、Feを示
すピークのみが確認された。また、電子線透過回折を行
ったところ、得られた粉末がFeの単結晶体からなるこ
とが確認された。同様のプロセスにより得られた複数種
の粉末の磁気特性を測定した。結果を表1に示す。2.
0T以上の飽和磁束密度(Bs)が得られることができ
ることが確認された。
rの混合ガスをキャリアガスとして、原料粉体である平
均粒径0.2μmの酸化鉄(Fe2O3、純度99.7%)
を加熱炉へ供給した。キャリアガスの流量は2l/mi
n、炉内温度(加熱処理温度)は1600℃である。得
られた粉末をSEM(走査電子顕微鏡)により観察した
結果、真球状であることが確認された。また、得られた
粉末の粒径を粒度分布測定装置により測定したところ、
粒度分布は0.1〜1μmであることが確認された。原
料粉体が0.2μmであるのに対して1μmほどの大き
な粒子が得られるのは、原料粉体の一部が凝集した状態
で溶融し、この溶融体が冷却工程で凝固したためと考え
られる。得られた粉末についてX線回折を行ったところ
Feを示すピークのみが確認された。また、電子線透過
回折を行ったところ、得られた粉末が金属単結晶Feか
らなることが確認された。
0.1μmの酸化鉄(Fe2O3、純度99.9%)90重
量部と平均粒径0.3μmのSiO210重量部を5%希
釈のバインダー(PVA)と共にスラリー化し、スプレー
ドライヤーにて粒度分布が0.5〜20μmの顆粒粉を
作製した。その顆粒粉を52%水素+Arの混合ガスを
キャリアガスとして加熱炉へ供給することにより粉末を
作製した。キャリアガスの流量は2l/min、炉内温
度(加熱処理温度)は1650℃である。なお、SiO
2の融点は1713℃である。得られた粉末をSEM
(走査電子顕微鏡)により観察した。その結果を図10
に示すが、得られた粉末が真球状であることが確認され
た。また、得られた粉末の粒径を粒度分布測定装置によ
り測定したところ、粒度分布が1〜8μm、平均粒径が
2.57μmであることが確認された。また、得られた
粉末をTEM(透過電子顕微鏡)により観察した。TE
M像を図11に示すが、表面にコーティング層が形成さ
れていることが確認できる。また、電子線透過回折の結
果より、粉末の中心部は単結晶のFe粒子、コーティン
グ層がアモルファス(非晶質)状の物質からなることが確
認された。コーティング層からSi成分が多く検出され
たことから、コーティング層はアモルファスSiO2か
ら構成されるものと判断される。得られた粉末の磁気特
性を測定したところ、飽和磁束密度(Bs)が1.85
Tであることが確認された。このように、本実施例によ
る粉末はコーティング層を形成しても1.8T以上の優
れた特性を有している。
0.1μmの酸化鉄(Fe2O3、純度99.9%)をFe
で80mol%とシリカのエアロジルをSiで20mo
l%を5%希釈のバインダー(PVA)と共にスラリー化
し、スプレードライヤーにて粒度分布0.5〜20μm
の顆粒粉を作製した。その顆粒粉を水素50%+窒素5
0%の混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給する
ことにより粉末を作製した。キャリアガスの流量は2l
/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650℃であ
る。得られた粉末は、SEM観察結果より真球状である
ことが確認された。また、粒度分布測定装置により粒度
分布が0.9〜8μmであることが確認された。また、
TEM観察により真球状の粒子の表面にコーティング層
が形成されていること、電子線透過回折の結果より粉末
中心部は単結晶のFe粒子、コーティング層がアモルフ
ァス(非晶質)状の物質からなることが確認された。コー
ティング層からSi成分が多く検出されたことから、コ
ーティング層はアモルファスSiO2から構成されるも
のと判断される。金属磁性材料であるFe単結晶とコー
ティング材料であるSiO2の体積比は、Si成分が還
元されずコーティング材料が全てSiO2で形成されて
いると仮定すると、ほぼ1:1となる。得られた粉末の
磁気特性を測定した。その結果飽和磁束密度(Bs)が
1.77Tであることが確認された。このように、本実
施例による粉末はコーティング層を形成しても1.7T
以上の優れた特性を有している。
(Fe2O3、純度99.9%)をFeで90mol%と
アルミナ(Al2O3)のエアロジルをAlで10mol
%を5%希釈のバインダー(PVA)と共にスラリー化
し、スプレードライヤーにて粒度分布0.5〜20μm
の顆粒粉を作成した。この顆粒粉を50%水素+50%
窒素の混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給し
た。キャリアガスの流量は2l/min、炉内温度(加
熱処理温度)は1650℃である。なお、Al2O3の融
点は2050℃である。得られた粉末は、SEM観察結
果より真球状であることが確認された。また、粒度分布
測定装置により粒度分布が0.8〜8μm、平均粒径が
2.6μmであることが確認された。さらに、電子線透
過回折の結果より、粉末の中心部は単結晶のFe粒子、
コーティング層がアモルファス(非晶質)状の物質からな
ることが確認された。コーティング層からAl成分が多
く検出されたことから、コーティング層はアモルファス
Al2O3から構成されるものと判断される。
(Fe2O3、純度99.7%)と平均粒径0.7mの酸化
ニッケル(NiO)とをmol比で1対1になるように
秤量し純水と分散剤を少量に添加したスラリーを得、こ
のスラリーを12時間ボールミルにて混合処理をした。
混合処理体に対して乾燥処理、仮焼(1000℃で2時
間)を行い、ニッケル鉄酸化物(NiFe2O4)と酸化
ニッケル(NiO)の混合バルク体を作製した。この混
合バルク体を粉砕処理することで平均粒径2μm(粒度
分布が0.2〜5μm)の原料粉体を作製した。その原料
粉体を50%水素+50%アルゴンの混合ガスをキャリ
アガスとして加熱炉へ供給した。キャリアガス流量は2
l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650℃で
ある。なお、NiとFeがmol比で1対1の合金の融
点は1450℃である。得られた粉末は、SEM観察結
果より真球状であることが確認された。この粉末は、粒
径が0.1μm程度の粒子が凝集した微粒子凝集体と5
μmほどある比較的大きな粒子とが混在した形態をなし
ている。また、大きな粒子の表面に一部の微粒子が付着
する形態も観察された。粒径は粒度分布計により0.2
〜5μmであることが確認された。さらに、X線回折結
果より、NiとFeがmol比で1対1の合金であるピ
ークが確認された。
(Fe2O3、純度99.9%)90重量%と平均粒径0.
3μmのSiO2、B2O3およびAl2O3とからなるガ
ラス質材料(日本電子硝子株式会社製 GA−47)を
10重量%とし、5%希釈のバインダー(PVA)と共に
ヒラリー化し、スプレードライヤーにて粒子径1〜10
μmの顆粒粉からなる原料粉体を作製した。この顆粒粉
を50%水素+50%アルゴンの混合ガスをキャリアガ
スとして加熱炉へ供給した。キャリアガスの流量は2l
/min、炉内温度(加熱処理温度)は1600℃であ
る。なお、ガラス質材料の融点は1500℃以下であ
る。得られた粉末は、SEM観察結果より真球状である
ことが確認された。また、粒度分布計により粒度分布が
0.8〜10μmであることが確認された。さらに、T
EM観察結果から、真球状の粒子表面にコーティング層
が形成されていることが確認された。電子線透過回折に
よれば、得られた粉末の中心部は単結晶のFe粒子、コ
ーティング層がアモルファス(非晶質)である。また、コ
ーティング層からAl、SiおよびBが検出されたこと
から、ガラス質材料からなるコーティング層が形成され
ているものと判断される。
t%含む平均粒径3μmの酸化鉄(Fe2O3)粉末を還
元ガスとなる50%水素+50%窒素の混合ガスをキャ
リアガスとして加熱炉へ供給した。キャリアガスの流量
は3l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650
℃である。得られた粉末をSEM(走査電子顕微鏡)に
より観察した結果、得られた粉末が真球状であることが
確認された。また、得られた粉末の粒径を粒度分布測定
装置により測定したところ、平均粒径が1.7μmであ
ることが確認された。得られた粉末についてX線回折お
よび電子線透過回折を行ったところ、表面にSiO2が
形成されたFeの単結晶体からなることが確認された。
この実施例8において、SiO2は不純物としてFe2O
3に含まれているが、このように純度の低い原料を用い
ても単結晶のFe粉末を製造することができ、しかもそ
の製造過程で表面にコーティング層を形成できる点は、
本発明の顕著な効果を示唆している。
Arの混合ガスをキャリアガスとして、平均粒径0.1
μmの酸化鉄(Fe2O3)粉末を加熱炉へ供給した。キ
ャリアガスの流量は3l/min、炉内温度(加熱処理
温度)は1500℃である。得られた粉末の粒径を粒度
分布測定装置(堀場製作所製 LA−920)により測定
したところ、0.2〜5μmの粒度分布を示すことが確
認された。また、得られた粉末についてX線回折を行っ
た結果、Feのピークのみが確認された。したがって、
加熱炉内で酸化鉄(Fe2O3)粉末が還元処理されたも
のと判断される。この実施例9では、炉内温度が150
0℃とFeの融点(1536℃)以下の温度であるか
ら、還元により得られた生成物(Fe)は溶融しない。
したがって、単結晶かつ真球状の粉末を得ることはでき
ないものの、酸化鉄(Fe2O3)粉末を加熱炉に供給す
るという簡易な手法により、磁性金属であるFe粉末を
大量に製造できるという本発明の効果を示唆するもので
ある。
0.1〜20μmの粒径を有する球状かつ単結晶の磁性
金属粉末を得ることができる。しかも本発明によれば、
このような磁性金属粉末を、原料粉体をキャリアガスに
よって所定の加熱処理領域に供給するという簡易な方法
で大量に製造することができる。また、この磁性金属粉
末の表面にコーティング層を形成することにより、磁性
金属粉末に対して種々の機能を与えることができる。し
かも本発明によれば、コーティング層を特別の工程を付
加することなく形成することができる。
説明するための図。
する図。
する図。
する図。
する図。
する図。
する図。
M像を示す写真。
回折結果を示すチャート。
EM像を示す写真。
EM像を示す写真。
6)
ガスを含み、前記加熱処理工程において前記原料粉体を
還元することにより還元生成物を生成し、前記冷却工程
によりこの還元生成物を冷却することにより磁性金属粉
末を得ることができる。また本発明において、前記加熱
処理工程において前記還元生成物からなる溶融物を生成
し、前記冷却工程において前記溶融物を再結晶化させる
ことにより磁性金属粉末を得ることもできる。また本発
明において、前記加熱処理工程において前記原料粉体の
溶融物を生成した後に前記溶融物を還元処理し、還元処
理された前記溶融物を前記冷却工程において再結晶化さ
せることにより磁性金属粉末を得ることもできる。つま
り、本発明では、固体状態の原料粉体を還元処理した後
に溶融物を生成し、この溶融物を冷却固化する手法と、
固体状態の原料粉体を溶融した後に溶融状態を維持しつ
つ還元処理し、しかる後に冷却固化する手法のいずれか
を採用することができる。このように一旦溶融すること
により、得られる磁性金属粉末を容易に単結晶とするこ
とが可能となる。本発明において、前記原料粉体を酸化
鉄粉末とすることにより、純鉄からなる磁性粉末を得る
ことができる。さらにまた本発明において、前記磁性金
属粉末を製造する過程で、その表面にコーティング層を
形成することができる。このコーティング層を形成する
ために、前記原料粉体に含まれる前記磁性金属よりも還
元力の強い元素を構成要素とする化合物からなる粉体を
前記原料粉体とともに前記所定の加熱処理領域に供給す
ることができる。この場合、前記磁性金属よりも還元力
の強い元素を構成要素とする化合物からなる粉体は前記
原料粉体よりも粒径が小さいことが望ましい。また、前
記原料粉体が前記磁性金属よりも還元力の強い元素を構
成要素とする化合物を含む形態とすることによっても前
記磁性粉末を製造する過程で、その表面にコーティング
層を形成することもできる。このコーティング層の形成
については後述する。
Claims (14)
- 【請求項1】 熱分解により磁性金属粉末を形成する原
料粉体をキャリアガスとともに所定の加熱処理領域に供
給する原料供給工程と、 前記加熱処理領域に供給された前記原料粉体を前記原料
粉体の分解温度以上の温度に加熱する加熱処理工程と、 前記加熱処理工程で得られた生成物を冷却することによ
り磁性金属粉末を得る冷却工程と、を備えることを特徴
とする磁性金属粉末の製造方法。 - 【請求項2】 前記キャリアガスが還元ガスを含み、 前記加熱処理工程において前記原料粉体を還元すること
により還元生成物を生成し、 前記冷却工程によりこの生成物を冷却することにより磁
性金属粉末を得ることを特徴とする請求項1に記載の磁
性金属粉末の製造方法。 - 【請求項3】 前記加熱処理工程において前記還元生成
物からなる溶融物を生成し、 前記溶融物を前記冷却工程において再結晶化させること
により磁性金属粉末を得ることを特徴とする請求項2に
記載の磁性金属粉末の製造方法。 - 【請求項4】 前記加熱処理工程において前記原料粉体
の溶融物を生成した後に前記溶融物を還元処理し、 還元処理された前記溶融物を前記冷却工程において再結
晶化させることにより磁性金属粉末を得ることを特徴と
する請求項1に記載の磁性金属粉末の製造方法。 - 【請求項5】 前記磁性金属粉末が単結晶であることを
特徴とする請求項3または4に記載の磁性金属粉末の製
造方法。 - 【請求項6】 前記原料粉体が酸化鉄粉末であることを
特徴とする請求項1に記載の磁性金属粉末の製造方法。 - 【請求項7】 前記原料粉体に含まれる前記磁性金属よ
りも還元力の強い元素を構成要素とする化合物からなる
粉体を前記原料粉体とともに前記所定の加熱処理領域に
供給することを特徴とする請求項1に記載の磁性金属粉
末の製造方法。 - 【請求項8】 前記原料粉体が前記磁性金属よりも還元
力の強い元素を構成要素とする化合物を含むことを特徴
とする請求項1に記載の磁性金属粉末の製造方法。 - 【請求項9】 Fe族元素の1種または2種以上を含み
平均粒径0.1〜100μmの酸化物粉体を加熱処理雰
囲気中に供給し、 前記加熱処理雰囲気中で前記酸化物粉体の溶融物を生成
し、 前記溶融物を冷却固化することによりFe族元素の1種
または2種以上からなる磁性金属粉末を得る磁性金属粉
末の製造方法であって、 前記加熱処理雰囲気中において、前記溶融物の生成前ま
たは前記溶融物の生成後かつ冷却固化前に還元処理を施
すことを特徴とする磁性金属粉末の製造方法。 - 【請求項10】 前記磁性金属粉末の平均粒径が、0.
1〜20μmであることを特徴とする請求項9に記載の
磁性金属粉末の製造方法。 - 【請求項11】 前記磁性金属粉末が単結晶であること
を特徴とする請求項9または10に記載の磁性金属粉末
の製造方法。 - 【請求項12】 Feを主体とする単結晶であり、平均
粒径が0.1〜20μmの球状体であることを特徴とす
る磁性金属粉末。 - 【請求項13】 前記磁性金属粉末は、その表面にコー
ティング層が形成されたことを特徴とする請求項12に
記載の磁性金属粉末。 - 【請求項14】 前記コーティング層が、Feよりも酸
素との親和力の強い元素を構成要素とする化合物からな
ることを特徴とする請求項13に記載の磁性金属粉末。
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