JP2004091928A - 磁性金属粉末 - Google Patents

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赤地 義昭
Minoru Takatani
高谷 稔
Hisashi Kosara
小更 恒
Hiroyuki Uematsu
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Abstract

【課題】 従来存在しなかった新規な磁性金属粉末を提供する。
【解決手段】 Feを主体とする単結晶からなる平均粒径が0.1〜20μmの球状体であり、その表面にFeよりも酸素との親和力の強い元素を構成要素とする酸化物からなるコーティング層が形成された磁性金属粉末。
【選択図】図10

Description

 本発明は、磁性金属粉末に関するものである。
 金属粉末の製造方法をその出発原料により分類することができる。つまり、金属粉末は、気相、液相および固相から製造することができる。そして、気相から金属粉末を製造する具体的な方法としては、CVD(Chemical Vapor Depositions)法、スパッタリング
法、真空蒸着法が知られている。液相からの金属粉末の製造方法としては、共沈法、ガスまたは水アトマイズ法、スプレー法および噴霧熱分解法が知られている。さらに、固相からの金属粉末の製造方法としては、金属塊を粉砕機により適度な大きさに粉砕する、あるいはこの粉砕粉末に所定の処理を施す粉砕法が知られている。
 ところで、エレクトロニクス分野における各種部品はこれからますます高周波での使用が余儀なくされる。プリント基板も同様であり、また誘電率の高い基板、誘電率の低い基板、磁気特性の高い基板、電波を吸収する基板等、種々の特性を有する基板が要求される。このような基板を得るために、プリント基板内に高周波特性のよい磁性粉末を必要に応じて基板を構成する樹脂に混合、分散させることが行われている。磁性粉末としては、高周波用フェライト粉末、カーボニル鉄粉末が用いられている。また、プリント基板以外では、パッケージの分野において、樹脂に電波吸収材料からなる粉末を混合、分散したり、導電性ペーストの分野では、電子回路、抵抗、コンデンサ、ICパッケージ等の部品を製造するための厚膜ペースト中に導電性粒子を混合、分散することが行われている。さらに、軟磁性材料としては、チョークコイルなどの電源用コイル材料、硬磁性材料としてはモータ用のコア材料、その他にも、磁気抵抗、磁気センサ、など幅広く磁性粉末が利用されている。
 特許文献1(特開昭62−1807号公報(特公昭63−31522号公報))に、厚膜ペースト用の金属粉末を噴霧熱分解法で作成する発明が開示されている。この発明は、金属塩を含む溶液を噴霧して液滴にし、その液滴を該金属塩の分解温度より高く、かつ金属の融点より高い温度であって、しかも金属の融点以下の温度で金属が酸化物を形成する場合にはその酸化物の分解温度より高い温度で加熱して、該金属塩を熱分解し生成した金属粒子を溶融するというものである。
 特開昭62−1807号公報の噴霧熱分解法によれば、球状で結晶性が良く、しかも高分散性の金属粉末が得られる。具体的な実施例として、AgNO3を含む溶液を用いて最
大粒径1.7μm、最小粒径0.5μmのAg粉末を作成する例、AgNO3およびPd(
NO32を含む溶液を用いて最大粒径2.5μm、最小粒径1.5μmのAg−Pd合金粉末を作成する例およびHAuCl4を含む溶液を用いて最大粒径1.0μm、最小粒径0.
5μmのAu粉末を作成する例が開示されている。また、これら粉末は、結晶性の良い球状の粉末であることが述べられている。
 以上のように特開昭62−1807号公報によれば、結晶性に優れた0.5〜2.5μm程度の粒子径を有する球状の金属粉末を得ることができる。このような性状を備えた金属粉末は、導電性ペーストとするのに好適である。
特開昭62−1807号公報 特開平8−170112号公報 特開平10−102108号公報 特開平10−330802号公報 特開平11−80818号公報 特開平11−124602号公報
 ところが、特開昭62−1807号公報に具体的に示された金属はAg、Ag−Pd合金およびAuであり、磁性粉末を混合、分散する用途に適合した金属粉末、特にFe粉末を開示していない。
 噴霧熱分解法による金属粉末の製造方法を開示する先行技術としては、上記の特開昭62−1807号公報のほかに、特許文献2(特開平8−170112号公報)、特許文献3(特開平10−102108号公報)、特許文献4(特開平10−330802号公報)、特許文献5(特開平11−80818号公報)および特許文献6(特開平11−124602号公報)がある。これら先行技術はFe粉末またはFe合金粉末の製造の可能性を示唆しているが、現実にFe粉末またはFe合金粉末を製造した例は見当たらない。つまり、噴霧熱分解法により製造することのできる金属粉末は、その種類に大きな制約があったといえる。
 Fe粉末またはFe合金粉末は、前述した気相からの製造方法あるいは固相からの製造方法によって得ることができることはいうまでもない。しかし、気相からの製造方法による金属粉末は粒径が微小であり、樹脂と混合する用途には不向きである。また、固相からの製造方法による金属粉末は、粉砕機を使用することから粉末の形状を球形とすることが困難であるとともに、粒度分布が悪い。
 以上のように、従来の金属粉末の製造方法によれば、樹脂と混合するのに好適な性状を備えた磁性金属粉末、特にFe粉末またはFe合金粉末を得ることができなかった。そこで本発明は、そのような金属粉末を得るために好適な製造方法を提供し、併せて従来存在しなかった新規な磁性金属粉末を提供することを課題とする。
 本発明者は前記課題を解決するために、噴霧熱分解法が対象とする金属の種類に制限があったことの原因について検討した。噴霧熱分解法は溶液を原料としており、熱分解のための高温加熱工程において本来得ようとする金属とは無関係の水分を熱分解するために熱エネルギーを消費してしまう。また、水蒸気が発生することにより熱分解、典型的には還元処理を行う雰囲気が水蒸気雰囲気となる。この水蒸気雰囲気中の水分は、還元作用を低減させる。したがって、従来の噴霧熱分解法によっては、強還元が必要な物質を出発原料とする金属粉末を得ることができなかったものと推測される。特許文献1に開示されたAg、Ag−Pd合金およびAuは、いずれも強い還元力を要することなく得ることができるものである。
 本発明者は、噴霧熱分解法のように湿式の出発原料を用いることなく、出発原料として粒径を特定した乾燥状態にある化合物粉末に熱分解処理を施すことにより、従来では得ることのできなかった球状の単結晶Fe粉末の製造に成功した。すなわち本発明は、還元により磁性金属粉末を生成する原料酸化物粉体をキャリアガスとともに所定の加熱処理領域に供給する原料供給工程と、加熱処理領域に供給された原料酸化物粉体を原料酸化物粉体の分解温度以上の温度に加熱する加熱処理工程と、加熱処理工程で得られた生成物を冷却することにより磁性金属粉末を得る冷却工程と、を備え、原料酸化物粉体に含まれる磁性金属元素よりも酸素との親和力の強い元素を構成要素とする酸化物からなる粉体を原料酸化物粉体との混合物として所定の加熱処理領域に供給するか、または原料酸化物粉体が磁性金属と磁性金属元素よりも酸素との親和力の強い元素を構成要素とする複合酸化物からなる磁性金属粉末の製造方法を創出した。
 以上の製造方法により得られる本発明の磁性金属粉末は、Feを主体とする単結晶からなる平均粒径が0.1〜20μmの球状体であり、その表面にFeよりも酸素との親和力
の強い元素を構成要素とする酸化物からなるコーティング層が形成されるという従来では得られない新規な磁性金属粉末となる。
 本発明の磁性金属粉末において、望ましい平均粒径は0.5〜10μm、さらに望まし
くは1〜5μmである。また本発明による磁性金属粉末は、飽和磁束密度が2.0T以上
と極めて優れた磁気特性を得ることができる。
 本発明のコーティング層は、後述するように、磁性金属粉末の製造過程で形成することができる。コーティング層を形成することにより、磁性金属粉末に対して、耐酸化性、絶縁性、非凝集性を付与することができる。本発明によれば、従来では得ることのできなかった球状の単結晶Fe粉末を製造できるという利益の他に、乾燥状態にある化合物粉末に還元処理を施すため、加熱エネルギーが従来の噴霧熱分解法に比べて少なくて済む、収率が高い、といった効果を享受することもできる。
 本発明によれば、磁性金属粉末を製造する過程で、その表面にコーティング層を形成することができる。このコーティング層を形成するためには、原料酸化物粉体に含まれる磁性金属元素よりも酸素との親和力の強い元素を構成要素とする酸化物を原料酸化物粉体との混合物として所定の加熱処理領域に供給すればよい。また、原料酸化物粉体が、磁性金属と磁性金属元素よりも酸素との親和力の強い元素を構成要素とする複合酸化物とすることによっても磁性金属粉末を製造する過程で、その表面にコーティング層を形成することもできる。
 本発明によれば、0.1〜20μmの粒径を有する球状かつ単結晶の磁性金属粉末を得
ることができる。しかも本発明によれば、このような磁性金属粉末を、原料酸化物粉体をキャリアガスによって所定の加熱処理領域に供給するという簡易な方法で大量に製造することができる。また、この磁性金属粉末の表面にコーティング層を形成することにより、磁性金属粉末に対して種々の機能を与えることができる。しかも本発明によれば、コーティング層を特別の工程を付加することなく形成することができる。
 以下本発明の実施形態を説明する。
 まず本発明による磁性金属粉末の製造工程概略を図1に基づき説明する。図1に示すように、本発明の製造方法は、原料酸化物粉体を供給する粉体供給工程、供給された粉体を所定温度に加熱する加熱処理工程、加熱処理によって得られた生成物を冷却する冷却工程および後処理工程から構成される。
 粉体供給工程を実施する具体的な構成として、図1にはキャリアガスと原料酸化物粉体とを別途用意し、ノズルNを介してキャリアガスとともに原料酸化物粉体を加熱処理工程に供給する形態を記載している。キャリアガスとしては、加熱処理工程において、還元性雰囲気を形成することのできるガスを用いることができる。例えば、水素ガス、一酸化炭素ガス、アンモニアガスといった公知の還元能力を有するガスを用いることができる。この中では高温で還元力が増す水素ガスを用いるのが望ましい。また、還元ガスは不活性ガスとの混合ガスとして供給することもできる。混合する不活性ガスとしては、窒素ガス、ArガスおよびNeガスを用いることができる。加熱処理工程におけるNOxの発生を考慮すると、ArガスおよびNeガスを用いることが望ましい。また、キャリアガスとしては不活性ガスを用い、還元性雰囲気を形成すべき領域において還元ガスを供給することもできる。原料酸化物粉体を溶融した後に、生成された溶融物に対して還元処理を施す場合に適用することができる。
 還元効率は、原料酸化物粉体の還元温度、大きさ、単位体積当たりの粉体の量、還元領域のキャリアガス速度(還元温度における滞留時間)、圧力に依存する。還元効率を考えれば、圧力が高いほど還元条件として好ましいが、粉末の捕集を考えると負圧にし、大気圧
に近い条件で作成することがより好ましい。キャリアガス中における還元ガスの濃度は、原料酸化物粉体の親和力、形状、サイズ、還元領域の速度(還元温度における滞留時間)、キャリアガスに対する単位体積中の粉体量、還元剤に対する被還元元素の還元反応定数、圧力により適宜定めればよい。なお、2種類の元素における還元力の優劣は、いわゆる還元の対象となる元素に対する親和力の大きさの差となり、目的金属の化合物と還元剤とが反応したときに生じる標準自由エネルギー変化の差である。この大きさによって還元されるのかされないのかが決まることとなる。
 原料酸化物粉体を加熱処理工程に供給する手法は、図1に記載された方式に限定されない。例えば、原料酸化物粉体に対して還元ガスを含む圧縮ガスを吹き付けることによりキャリアガスとともに原料酸化物粉体を加熱処理工程に供給する方式を採用することができる。また、分散機を利用した供給、分級機や粉砕機の出力を利用し供給、つまり分級または粉砕することで出力側から得られる粉末を加熱処理工程に送り込むことも可能である。
 加熱処理工程は、加熱炉で実現される。加熱方式としては、電気による加熱、ガスの燃焼熱による加熱および高周波加熱等の公知の方式を採用することができる。原料酸化物粉体はキャリアガスとともに加熱炉内を浮遊した状態で還元される。この還元の具体的内容については後述する。還元時の原料酸化物粉体の流速は、還元ガス濃度、捕集効率、還元温度に応じて適宜定めることになるが、概ね0.05〜10m/sの範囲、とりわけ0.1〜5m/s、さらには0.5〜2m/sで選択するのが望ましい。粉末の流速は、キャリ
アガスの流速を制御することにより変えることができる。
 加熱処理工程で得られた生成物は冷却工程に移行される。具体的には、加熱炉内に冷却ゾーンを設ける、あるいはキャリアガスとともに大気中に排出することにより生成物を冷却することができる。この冷却は、放冷でもよいが冷却媒体を用いて強制的に冷却することもできる。この冷却工程を経ることにより所望する磁性金属粉末を得る。
 冷却工程後には、例えばサイクロン・バグフィルタによって粉末を捕集する一方、キャリアガスについては適切な排ガス処理を行った後に排気される。
 本発明における原料酸化物粉体は、磁気特性を備える金属元素を含む。その種類は限定されないが、Feを含む遷移金属、とりわけFe族元素(Fe,Ni,Co)を主体とし、その他に半金属元素(Si,Pなど)、他の遷移金属元素(Mn,Cu,Cr等)を含有することもできる。
 原料酸化物粉体は、還元により所望の金属(合金を含む)粉末を生成するものであれば、その形態は限定されない。例えば、スプレー法などで作製した顆粒粉、粉砕機により粉砕した粉砕粉でもよい。また、作製したい組成比として混合した塩を含む水溶液を用いた溶液スプレー法による粉末、また、圧電素子、二流体ノズルを用いた噴霧熱分解法による粉末でもよい。なお、本発明で原料酸化物粉体とは、粉末、顆粒粉、粉砕粉等、その形態に拘わらず粒子から構成される種々の形態を包含している。例えば、最終的にFe粉末を得る場合には、酸化鉄粉末を用いるのがコスト的にも有利である。原料酸化物粉体のサイズは、0.1〜100μmの範囲で適宜定めればよい。ただし、0.5〜50μmが作成するのに好ましく、1〜20μmであればさらに好ましい。粒子が小さすぎると、大きい粒子の表面に付着する傾向になるし、樹脂に混合するのに不向きであり、また、粒子径が大きくなるほど、還元条件、単結晶粒子の作成条件が厳しくなるためである。
 本発明において、乾燥状態の原料酸化物粉体を用いる点が従来の噴霧熱分解法による金属粉末の製造方法と異なる特徴の一つである。それは、噴霧熱分解法で必然的に発生する大量の水蒸気成分が還元濃度の低下を招き、より還元物に対する親和力の大きな金属元素を作成できない原因となるからである。ここで、乾燥状態とは、原料酸化物粉体に対して特別な乾燥処理を施すことを要求するものではない。従来の噴霧熱分解法のような溶液状態の出発原料、スラリー状態の出発原料のように、湿式状態の粉体を含まないことを意味している。
 次に、加熱処理工程および冷却工程における原料酸化物粉体の変遷を図2および図3に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、原料酸化物粉体を磁性金属酸化物粉末とする。また、図2は磁性金属酸化物を還元した後に溶融し、しかる後に冷却固化する例を、図3は磁性金属酸化物を溶融した後に還元し、しかる後に冷却固化する例を示している。
 図2において、磁性金属酸化物粉末は、還元ガスからなるキャリアガスとともに加熱処理工程に供給される。ここで、加熱処理工程の加熱温度をT、磁性金属酸化物の還元温度をTr、磁性金属の融点をTmとすると、T>Tm>Trの関係にあるものとする。磁性金属酸化物粉末を加熱温度がTに管理された加熱処理工程に供給すると、磁性金属酸化物粉末はTrに達した段階で還元処理が終了し、融点の高い酸化物から融点の低い磁性金属粒子に変化する。その後、磁性金属粒子には融点Tm以上の熱エネルギーが付与されることになるので、各粒子は溶融する。溶融した複数の粒子が結合して新たな溶融粒子を形成する。この新たな溶融粒子が冷却工程において再結晶をなして単結晶の磁性金属粉末を構成する。
 次に、図3において、不活性ガスからなるキャリアガスとともに磁性金属酸化物粉末を加熱処理工程に供給する。磁性金属酸化物は、まず加熱処理工程において溶融する。磁性金属酸化物が溶融した後に、還元ガスを加熱処理工程に供給することにより還元反応を生じさせる。このとき得られる溶融生成物は、当該磁性金属からなる溶融物である。この溶融物は、冷却工程において融点に達すると再結晶を開始し、凝固した段階では単結晶からなる磁性金属粉末を構成する。この図3の例では、還元ガスを含まないキャリアガスを用いることによりはじめに磁性金属酸化物粉末を溶融し、次いで還元ガスを供給して溶融物に還元反応を生じさせる。
 図2および図3に示した通り、本発明は、還元した後に溶融し、しかる後に冷却固化する形態、溶融した後に還元し、しかる後に冷却固化する形態のいずれをも採用することができる。しかし、加熱処理温度その他の条件によっては、還元と溶融とが混在して生ずる場合もあり、両者を明確に区別することができない場合もあろう。本発明はこのような場合をも包含している。
 本発明の特徴の1つは、還元により得られた生成物である粒子にその粒子の融点以上の熱エネルギーを与え、一度、原料酸化物粉体の結晶性を壊すことにある。原料酸化物粉体が不定形な一魂の破砕粉、微粒子が凝集した形の顆粒粉であったとしても、溶融することにより一粒の液滴になる。液滴となった生成物は、表面張力により球状体を形成し、その形態のまま冷却工程を経ることにより再結晶した球状の磁性金属粉末を得ることができるのである。この金属粉末は、単結晶であるとともに平均粒径を0.1〜20μmの範囲と
することができる。
 以上では、原料酸化物粉体を溶融して単結晶を得る本発明の望ましい態様について説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されず、原料酸化物粉体を溶融することなく磁性金属粉末を得ることもできる。もっとも、この場合、原料酸化物粉体が不定形であれば得られる磁性金属粉末も不定形を維持するおそれがあるとともに単結晶を得ることもできなくなる。また、還元処理過程において、粉体表面から優先的に還元がなされ、中空孔の状態で還元処理が終了するおそれもあり、しかも欠陥の多い粒子となる。これは、出発原料が顆粒粉の場合にも同じことがいえる。したがって、性状の優れた磁性金属粉末を得るためには、原料酸化物粉体を一度溶融することが望ましいのである。つまり、一度溶融することにより、原料酸化物粉体内の不純物を液滴の表面に追い出すことができ、原料酸化物粉体よりも高純度かつ真球状の単結晶金属粒子を製造することができる。また、溶融することにより複数種類の元素を含んだ原料酸化物粉体を用いた場合に合金化することも可能となる。もっとも、この場合、原料酸化物粉体が不定形であれば得られる磁性金属粉末も不定形を維持したり、欠陥の多い粉末が作製されるおそれがあるとともに単結晶を得ることもできなくなる。また、還元処理過程において、粉体の表面は内部よりも温度が高いた
め粉体表面から優先的に溶融、還元がなされるため、中空孔の状態で還元処理が終了するおそれもある。さらに、顆粒粉の場合において磁性金属粉末は合金状態の割合が多い(合金化が進んだ)粒子を得ることが難しくなる。合金が進まず各々の金属粒子の割合が多くなる金属混合粒子となる。こちらも、還元処理過程において、粉体内部よりも外部から還元、溶融が始まるため、中空孔や欠陥の多い粒子状態で還元処理が終了するおそれもある。
 また本発明によれば、原料酸化物粉体が水分を極力含まないため、還元時の水蒸気の影響を抑えることができ、還元ガスの還元能力を効率よく活かすことが可能となる。よって、水溶液を原料酸化物粉体として熱分解する従来の噴霧熱分解法よりも低温で、しかも単位体積当たりの粉体還元処理量を多くすることが可能となる。
 本発明では磁性金属粉末に種々の機能を強化または付加するためにその周囲にコーティング層を形成することができる。このコーティング層は磁性金属粉末を得た後にコーティング層を形成するための特別な工程によって得ることもできるが、本発明では磁性金属粉末の製造過程でコーティング層を形成する手法を提案する。このコーティング層は、例えば、酸化物の場合において還元の対象となる元素は酸素となるため、より酸素との親和力の強い元素を構成要素とする酸化物からなる。よって、還元の対象となる元素に対する親和力の大きさで各々のコーティング成分なる、還元条件を決めることになる。そして、この酸化物からなるコーティング層を形成するためには、いくつかの手法を採用することができる。この手法は、コーティング層を構成する酸化物を、どのような形態で供給するかによって区別することができる。
 第1の手法は、コーティング層を構成する酸化物を、磁性金属粉末を得るための原料酸化物粉体との混合物として供給する方法である。この第1の手法は、原料酸化物粉体とコーティング層を構成する酸化物からなる粉体との混合粉体として供給する形態と、前記コーティング層を構成する酸化物が分散した原料酸化物粉体として供給する形態に区別することができる。また、前者は2種類の粉末からなる顆粒粉の形態を包含する。第2の手法は、磁性金属と当該磁性金属よりも還元力の強い元素とを含む複合酸化物として供給する方法である。各手法について、図4〜図6を参照しつつ説明する。なお、図4〜図6は還元した後に溶融する形態について説明するが、溶融した後に還元する形態において実施することができることはいうまでもない。
 はじめに、第1の手法のうちで、原料酸化物粉体とコーティング層を構成する酸化物からなる粉体との混合粉体として供給する形態を図4に基づいて説明する。なお、ここでも原料酸化物粉体として磁性金属酸化物粉末を例にする。
 磁性金属酸化物とともに当該磁性金属よりも還元のやり取りとなる元素との親和力の強い元素を構成要素とする酸化物からなる粉体(コーティング材料)を供給する。この酸化物は、磁性金属酸化物が還元される温度域においても還元されにくい。この酸化物の種類は特に問わないが、例えば、最終的に得たい磁性金属よりも酸素との親和力の強い元素、例えば、Feに対してはSi、Ti、Cr、Mn、Al、Nb、Ta、Ba、Ca、Mg、Sr等の酸化物が挙げられる。
 ここで、加熱処理温度をT、磁性金属酸化物の還元温度をTr1、コーティング材料の還元温度をTr2、磁性金属の融点をTm1、コーティング材料の融点をTm2とすると、Tr2>T>Tm2>Tm1>Tr1の条件を満足するものとする。ただし、この関係はあくまで一例であり、本発明が他の関係を排除することを意味するものではない。例えば、Tr2>Tm2>T>Tm1>Tr1あるいは、コーティング材料となる酸化物や当該金属に対する溶融温度、還元温度が逆であっても本発明を実施することができる。また、条件式で、T>Tr2>Tm2>Tm1>Tr1の場合は、TがTr2の近傍の場合、作成条件、還元条件によって完全に還元反応が進まなかった場合には、一部が金属として存在したり、磁性金属に溶融し、その他、還元されなかった酸化物がコーティング材料となる。
 例えば、2元素が一つの粒子内に存在する場合、その各々の融点、還元温度をTm1、Tr1、Tm2、Tr2とした場合、条件式でT>Tr2>Tm2>Tm1>Tr1の場合において、T>Tr2が成り立ち、2元素が還元されることとなれば、お互いの元素同士は溶融しあうため合金粒子を作成することができる。2元素が完全に還元される熱エネルギーを与えた場合には、球状合金粒子を作成することが可能となる。合金の度合い、結晶性は冷却速度に依存することになる。
 コーティング材料が還元されたとしても、その構成元素が各々元素単体まで還元されなければ、コーティング材料となりえる。
 加熱処理温度がTに管理された加熱処理工程に磁性金属酸化物粉末とコーティング材料とで作成した混合粉体を供給すると、Tr1において、磁性金属酸化物は還元される。この温度ではコーティング材料は還元されないため、当初の酸化物の形態を維持する。その後、還元による生成物である磁性金属にはその融点であるTm1以上の温度Tに加熱されるため溶融するが、コーティング材料はその融点Tm2が加熱処理温度Tより低いために溶融する。また、加熱処理温度Tがコーティング材料の還元温度Tr2より低いために、コーティング材料は還元されない。大部分の体積を占める比重の大きい磁性金属が溶融して中心部に集まる一方、比重の小さいコーティング材料が外周に弾き出された一粒の液滴を形成する。溶融しないコーティング材料が表面に弾き出されるのは、液滴状態にある磁性金属が加熱処理時にゆるやかであるにしろ外部の影響を受けて自転を起しており、その遠心力の影響を受けるためと考えられる。その後、冷却工程において表面にコーティング材料を弾き出した状態で粒子内部からの温度低下による核結晶が磁性金属で発生し固化が行われる。還元されないコーティング材料は、磁性金属と分離されたまま冷却される。すると、得られる粉末は、球状かつ単結晶の磁性金属粒子の周囲に酸化物がコーティングされた形態となる。原料酸化物粉体とともに添加されるコーティング材料のサイズを制御することにより、コーティング層を均等な膜厚とすることができる。また、コーティング層を得るためには、コーティング材料の供給量、サイズを所定の範囲にすることが重要である。コーティング材料の量が多くなると磁性金属の溶融段階で自転がなくなるおそれがあるし、また溶融した磁性金属が中心に集まりにくいためである。
 次に、第1の手法のうちで、コーティング層を構成する酸化物が分散した原料酸化物粉体として供給する形態を図5に基づいて説明する。
 図5において、原料酸化物粉体はマトリックスを磁性金属酸化物粉末とし、その粉末中にコーティング材料が分散した形態を有している。この形態の典型例として、SiO2
不純物として含有する酸化鉄(Fe23)を掲げることができる。
 還元ガスをキャリアガスとしてこの原料酸化物粉体を加熱処理工程に供給する。加熱処理工程において、はじめに母材を構成する磁性金属酸化物が還元される。このとき磁性金属酸化物中に分散していたコーティング材料は還元されずに当初の形態を維持する。したがって、還元処理により、コーティング材料が分散した磁性金属粒子が形成される。
 つぎに、コーティング材料が内部に分散した磁性金属粒子のうち、磁性金属の部分が溶融する。磁性金属が溶融することにより、前述の例と同様に、コーティング材料は溶融金属の外周に弾き出される。その後、冷却工程において表面にコーティング材料を弾き出した状態で粒子内部からの温度低下による核結晶が磁性金属で発生し固化が行われる。得られる粉末は、球状かつ単結晶の磁性金属粒子の周囲に酸化物がコーティングされた形態となる。
 次に、図6に基づき前述の第2の手法について説明する。第2の手法は、磁性金属と当該磁性金属よりも還元力の強い元素とを含む複合酸化物として供給する方法である。この酸化物をここでは磁性金属複合酸化物と呼び、その具体例としてFeAl24を掲げることにする。
 図6において、還元ガスをキャリアガスとして原料酸化物粉体である磁性金属複合酸化
物を加熱処理工程に供給する。加熱処理工程において、磁性金属複合酸化物は還元され、磁性金属と酸化物とに分解される。FeAl24を例にすると、FeとAl23に分解される。Al23がコーティング材料となる。
 その後、磁性金属が融点以上の温度に達して溶融する。そうすると、やはりコーティング材料であるAl23が外周に弾き出される。しかる後、冷却工程において表面にコーティング層を弾き出した状態で粒子内部からの温度低下による核結晶が磁性金属で発生し固化が行われる。得られる粉末は、球状かつ単結晶の磁性金属粒子の周囲にAl23がコーティングされた形態となる。
 なお、還元力を弱めた条件とすれば、磁性金属であるFeの一部がAlと化合物(FeAl24)を形成したまま分離せず、当該化合物(FeAl24)がそのままコーティング材料となることもある。
 以上説明した形態では、コーティング材料が固体の状態を維持した例を示したが、コーティング層を形成する過程で溶融しかつ磁性金属よりも融点の低いセラミックス材料やガラス質材料をコーティング材料として用いることもできる。このセラミックスとしてはチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、フェライト磁性材料が挙げられる。図7に基づきガラス質材料の例を説明する。なお、ガラス質材料が、当該磁性金属よりも還元力の強い元素を構成要素とする酸化物からなることは前述の通りである。
 キャリアガスである還元ガスとともに、磁性金属酸化物とガラス質材料からなるコーティング材料を供給する。ここで、加熱処理温度をT、磁性金属酸化物の還元温度をTr、磁性金属の融点をTm1、コーティング材料の融点をTm3とすると、T>Tm1>Tr1>Tm3の条件を満足するものとする。ただし、この関係はあくまで一例であり、本発明が他の関係を排除することを意味するものではない。
 加熱処理工程において、はじめに融点の低いガラス質材料がTm3において溶融し、ついでTr1において磁性金属酸化物が還元される。次に、還元により得られた磁性金属がTm1に達すると溶融する。この段階では、磁性金属とガラス質材料とがともに溶融している。この時、コーティング材料であるガラス質材料は溶融した状態を維持するが、磁性金属よりも比重が小さいため自然と周囲に弾き出される。その後の冷却工程において、溶融粒子内部からの温度低下および融点の高い磁性金属が先に結晶核を形成し、そこを起点として磁性金属の固化が行われる。溶融状態のガラス質材料は、粒子が外部の影響を受けて自転をしているため、遠心力により表面を均等に被覆する。また、コーティング材料が完全に溶融したとしても、金属とコーティング材料の物理的特性により、互いに固溶はせず分離した状態を保つことができると考えられる。磁性金属とガラス質材料との界面は何らかの化学的結合があるものと思われる。その後、温度の低下とともにガラス質材料は単結晶磁性金属の表面で凝固することにより、均一なコーティング層を有する磁性金属粉末を得ることができる。
 以上のガラス質材料によるコーティング層を形成する手法では、磁性金属の融点以上の熱エネルギーを与えているが、このような熱エネルギーを与えることなくガラス質材料からなるコーティング層を有する磁性金属粉末を製造することもできる。ただし、この磁性金属粉末は、多結晶体でありかつ球状を得ることができない場合がある。
 この手法は、加熱処理温度をT、磁性金属酸化物の還元温度をTr、磁性金属の融点をTm1、コーティング材料(ガラス質材料)の融点をTm3とすると、Tm1>T>Tr1>Tm3の条件を満足することにより実行できる。この場合、加熱処理工程において、融点の低いガラス質材料がTm3にて溶融する。この時、磁性金属酸化物粉末は全体量の大部分の体積を占めているために個々の表面で反応、凝集して粉体の中心に集まる。一方、溶融したガラス質材料は内部に集まらず、凝集粉体の表面に集まる。その後、磁性金属酸化物がTr1にて還元反応が終了し、多結晶金属凝集体を形成する。この凝集体は、冷却過程においてその表面をガラス質材料が凝固することでコーティング層を有する多結晶磁性金属粉末を形成する。このように、コーティング成分として、磁性金属酸化物よりも
低い温度で溶融するガラス質材料を選べば、多結晶磁性金属の周囲にコーティング層を形成した粉末を得ることもできる。
 コーティング層を形成することにより、磁性金属粉末としての絶縁性、耐酸化性、非凝集性を向上することができる。また、熱による酸化防止効果としても働く。さらにアルカリ土類金属を添加することで、熱による酸化防止効果を一層高めることも可能である。また、先にも述べたように、コーティング層は磁性金属粉末を得た後に形成しても良い。
 次に、本発明にかかる磁性金属粉末においてコーティング層を除く単結晶部分の具体的な例を参考例として説明した後に、本発明の実施例について説明する。
<参考例1>
 還元ガスとなる68%水素+窒素の混合ガスをキャリアガスとして、原料酸化物粉体である平均粒径3μmの酸化鉄(Fe23)粉末を加熱炉へ供給した。酸化鉄(Fe23)粉末の純度は99.9%である。キャリアガスの流量は3l/min、炉内温度(加熱処
理温度)は1650℃である。なお、酸化鉄(Fe23)の融点は1550℃、Feの融点は1536℃である。
 得られた粉末をSEM(走査電子顕微鏡)により観察した。その結果を図8に示すが、得られた粉末が真球状であることが確認された。
また、得られた粉末の粒径を粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−920)により測定したところ、粒度分布が0.5〜6μm、平均粒径が2.2μmであることが確認された。
 得られた粉末についてX線回折を行った。結果を図9に示すが、Feを示すピークのみが確認された。また、電子線透過回折を行ったところ、得られた粉末がFeの単結晶体からなることが確認された。
 同様のプロセスにより得られた複数種の粉末の磁気特性を測定した。結果を表1に示す。2.0T以上の飽和磁束密度(Bs)が得られることが確認された。
Figure 2004091928
<参考例2>
 還元ガスとなる4%水素+Arの混合ガスをキャリアガスとして、原料酸化物粉体であ
る平均粒径0.2μmの酸化鉄(Fe23、純度99.7%)を加熱炉へ供給した。キャリアガスの流量は2l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1600℃である。
 得られた粉末をSEM(走査電子顕微鏡)により観察した結果、真球状であることが確認された。
 また、得られた粉末の粒径を粒度分布測定装置により測定したところ、粒度分布は0.
1〜1μmであることが確認された。原料酸化物粉体が0.2μmであるのに対して1μ
mほどの大きな粒子が得られるのは、原料酸化物粉体の一部が凝集した状態で溶融し、この溶融体が冷却工程で凝固したためと考えられる。
 得られた粉末についてX線回折を行ったところFeを示すピークのみが確認された。また、電子線透過回折を行ったところ、得られた粉末が金属単結晶Feからなることが確認された。
<参考例3>
 平均粒径0.6μmの酸化鉄(Fe23、純度99.7%)と平均粒径0.7μmの酸化
ニッケル(NiO)とをmol比で1対1になるように秤量し純水と分散剤を少量に添加したスラリーを得、このスラリーを12時間ボールミルにて混合処理をした。混合処理体に対して乾燥処理、仮焼(1000℃で2時間)を行い、ニッケル鉄酸化物(NiFe24)と酸化ニッケル(NiO)の混合バルク体を作製した。この混合バルク体を粉砕処理することで平均粒径2μm(粒度分布が0.2〜5μm)の原料酸化物粉体を作製した。その
原料酸化物粉体を50%水素+50%アルゴンの混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給した。キャリアガス流量は2l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650℃である。なお、NiとFeがmol比で1対1の合金の融点は1450℃である。
 得られた粉末は、SEM観察結果より真球状であることが確認された。この粉末は、粒径が0.1μm程度の粒子が凝集した微粒子凝集体と5μmほどある比較的大きな粒子と
が混在した形態をなしている。また、大きな粒子の表面に一部の微粒子が付着する形態も観察された。粒径は粒度分布計により0.2〜5μmであることが確認された。さらに、
X線回折結果より、NiとFeがmol比で1対1の合金であるピークが確認された。
 原料酸化物粉体として、平均粒径0.1μmの酸化鉄(Fe23、純度99.9%)90重量部と平均粒径0.3μmのSiO210重量部を5%希釈のバインダー(PVA)と共にスラリー化し、スプレードライヤーにて粒度分布が0.5〜20μmの顆粒粉を作製した
。その顆粒粉を52%水素+Arの混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給することにより粉末を作製した。キャリアガスの流量は2l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650℃である。なお、SiO2の融点は1713℃である。
 得られた粉末をSEM(走査電子顕微鏡)により観察した。その結果を図10に示すが、得られた粉末が真球状であることが確認された。
 また、得られた粉末の粒径を粒度分布測定装置により測定したところ、粒度分布が1〜8μm、平均粒径が2.57μmであることが確認された。
 また、得られた粉末をTEM(透過電子顕微鏡)により観察した。TEM像を図11に示すが、表面にコーティング層が形成されていることが確認できる。また、電子線透過回折の結果より、粉末の中心部は単結晶のFe粒子、コーティング層がアモルファス(非晶
質)状の物質からなることが確認された。コーティング層からSi成分が多く検出された
ことから、コーティング層はアモルファスSiO2から構成されるものと判断される。
 得られた粉末の磁気特性を測定したところ、飽和磁束密度(Bs)が1.85Tである
ことが確認された。このように、本実施例による粉末はコーティング層を形成しても1.
8T以上の優れた特性を有している。
 原料酸化物粉体として、平均粒径0.1μmの酸化鉄(Fe23、純度99.9%)をF
eで80mol%とシリカのエアロジルをSiで20mol%を5%希釈のバインダー(
PVA)と共にスラリー化し、スプレードライヤーにて粒度分布0.5〜20μmの顆粒粉を作製した。その顆粒粉を水素50%+窒素50%の混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給することにより粉末を作製した。キャリアガスの流量は2l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650℃である。
 得られた粉末は、SEM観察結果より真球状であることが確認された。また、粒度分布測定装置により粒度分布が0.9〜8μmであることが確認された。また、TEM観察に
より真球状の粒子の表面にコーティング層が形成されていること、電子線透過回折の結果より粉末中心部は単結晶のFe粒子、コーティング層がアモルファス(非晶質)状の物質からなることが確認された。コーティング層からSi成分が多く検出されたことから、コーティング層はアモルファスSiO2から構成されるものと判断される。金属磁性材料であ
るFe単結晶とコーティング材料であるSiO2の体積比は、Si成分が還元されずコー
ティング材料が全てSiO2で形成されていると仮定すると、ほぼ1:1となる。
 得られた粉末の磁気特性を測定した。その結果飽和磁束密度(Bs)が1.77Tであ
ることが確認された。このように、本実施例による粉末はコーティング層を形成しても1.7T以上の優れた特性を有している。
 平均粒径0.1μmの酸化鉄(Fe23、純度99.9%)をFeで90mol%とアルミナ(Al23)のエアロジルをAlで10mol%を5%希釈のバインダー(PVA)と共にスラリー化し、スプレードライヤーにて粒度分布0.5〜20μmの顆粒粉を作成し
た。この顆粒粉を50%水素+50%窒素の混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給した。キャリアガスの流量は2l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650℃である。なお、Al23の融点は2050℃である。
 得られた粉末は、SEM観察結果より真球状であることが確認された。また、粒度分布測定装置により粒度分布が0.8〜8μm、平均粒径が2.6μmであることが確認された。さらに、電子線透過回折の結果より、粉末の中心部は単結晶のFe粒子、コーティング層がアモルファス(非晶質)状の物質からなることが確認された。コーティング層からAl成分が多く検出されたことから、コーティング層はアモルファスAl23から構成されるものと判断される。
 平均粒径0.1μmの酸化鉄(Fe23、純度99.9%)90重量%と平均粒径0.3
μmのSiO2、B23およびAl23とからなるガラス質材料(日本電子硝子株式会社
製 GA−47)を10重量%とし、5%希釈のバインダー(PVA)と共にヒラリー化し、スプレードライヤーにて粒子径1〜10μmの顆粒粉からなる原料酸化物粉体を作製した。この顆粒粉を50%水素+50%アルゴンの混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給した。キャリアガスの流量は2l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1600℃である。なお、ガラス質材料の融点は1500℃以下である。
 得られた粉末は、SEM観察結果より真球状であることが確認された。また、粒度分布計により粒度分布が0.8〜10μmであることが確認された。さらに、TEM観察結果
から、真球状の粒子表面にコーティング層が形成されていることが確認された。電子線透過回折によれば、得られた粉末の中心部は単結晶のFe粒子、コーティング層がアモルファス(非晶質)である。また、コーティング層からAl、SiおよびBが検出されたことから、ガラス質材料からなるコーティング層が形成されているものと判断される。
 シリカ(SiO2)を3.7wt%含む平均粒径3μmの酸化鉄(Fe23)粉末を還元ガスとなる50%水素+50%窒素の混合ガスをキャリアガスとして加熱炉へ供給した。キャリアガスの流量は3l/min、炉内温度(加熱処理温度)は1650℃である。
 得られた粉末をSEM(走査電子顕微鏡)により観察した結果、得られた粉末が真球状であることが確認された。
 また、得られた粉末の粒径を粒度分布測定装置により測定したところ、平均粒径が1.
7μmであることが確認された。
 得られた粉末についてX線回折および電子線透過回折を行ったところ、表面にSiO2
が形成されたFeの単結晶体からなることが確認された。
 この実施例5において、SiO2は不純物としてFe23に含まれているが、このよう
に純度の低い原料を用いても単結晶のFe粉末を製造することができ、しかもその製造過程で表面にコーティング層を形成できる点は、本発明の顕著な効果を示唆している。
本発明による磁性金属粉末の製造工程概略を説明するための図である。 本発明による磁性金属粉末の生成過程を説明する図である。 本発明による磁性金属粉末の生成過程を説明する図である。 本発明による磁性金属粉末の生成過程を説明する図である。 本発明による磁性金属粉末の生成過程を説明する図である。 本発明による磁性金属粉末の生成過程を説明する図である。 本発明による磁性金属粉末の生成過程を説明する図である。 参考例1により得られた磁性金属粉末のSEM像を示す写真である。 参考例1により得られた磁性金属粉末のX線回折結果を示すチャートである。 実施例1により得られた磁性金属粉末のSEM像を示す写真である。 実施例1により得られた磁性金属粉末のTEM像を示す写真である。

Claims (5)

  1.  Feを主体とする単結晶からなる平均粒径が0.1〜20μmの球状体であり、その表面にFeよりも酸素との親和力の強い元素を構成要素とする酸化物からなるコーティング層が形成されたことを特徴とする磁性金属粉末。
  2.  前記コーティング層がSiO2からなることを特徴とする請求項1に記載の磁性金属粉
    末。
  3.  前記コーティング層がAl23からなることを特徴とする請求項1に記載の磁性金属粉末。
  4.  前記コーティング層がアモルファス状酸化物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁性金属粉末。
  5.  平均粒径が1〜5μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁性金属粉末。
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