JP2000191770A - 安定化ポリフェニレンエーテル樹脂の製法とその組成物 - Google Patents
安定化ポリフェニレンエーテル樹脂の製法とその組成物Info
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Abstract
エーテル系重合体(PPE樹脂)を、(メタ)クリル酸
エステル又はケイ皮酸エチルとラジカル発生剤無添加下
で、PPE樹脂のガラス転移温度以上の温度まで加熱す
る、6−クロマン環化末端基をPEユニット100個当
たり平均0.01個以上有し、数平均分子量が1,00
0〜100,000であるPPE樹脂の製法。 【化1】 記載のポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレ
ン系樹脂とからなる樹脂組成物又はフィルム。 【効果】 本発明の6−クロマン環化末端基含有PPE
樹脂は、熱酸化劣化を受け易いという従来のPPE樹脂
に比して、可塑化等の問題を起こすことなく、熱安定性
に優れている。
Description
レンエーテル樹脂の製法、その組成物、そのフイルムに
関する。更に詳しくは、本発明は、ポリフェニレンエー
テル樹脂を構成するポリフェニレンエーテル鎖が全体と
して6−クロマン環化末端基を有し、加工時及び高温下
での使用時の熱酸化劣化が抑制される新規なポリフェニ
レンエーテル樹脂の製法に関する。また、本発明は、そ
のポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂と
からなる組成物及びそのフィルムに関する。
械的特性、電気的特性、耐熱性等に優れ、熱可塑性成形
材料として広く用いられている。しかし、これらの長所
と共に熱酸化劣化を受けやすいという欠点を併せ持つた
めに、熱酸化劣化を受けやすい用途に対しては使用が制
限されるという問題がある。この問題を回避するため
に、アミンや有機リン化合物などの種々の安定剤を用い
る提案が多数なされている。これとは別にポリフェニレ
ンエーテル自体を改質する方法も提案されている。例え
ば、特公昭49−17679号公報、特公昭49−48
197号公報、米国特許第3、767、627号明細書
(特公昭53−12553号公報)等は、ポリフェニレ
ンエーテルのフェノール性末端基をエステル化やエーテ
ル化等の方法で封鎖することによって、耐熱酸化劣化性
を改良したものである。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、溶媒に樹脂を溶解した
溶液からキャスト成形によって製造したフイルムでは或
る程度の安定化効果が認められるものの、溶融成形した
試験片やフイルムで評価すると、充分な安定化効果が認
められない。これは、例えば、工業的に極めて重要なポ
リ〔オキシ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレ
ン)〕の場合、溶融成形の熱により一般式(f) :
されていないフェノール性水酸基と同様の熱酸化劣化の
原因になるためと推定されている。 これを改善する方
法として、サリチル酸エステル等の水酸基の封鎖剤を溶
融時に共存させる方法が最近提案されている(米国特許
第4,760,118号明細書、特開昭63−2956
32号報)。
度の改善は達成されるものの、2個のベンゼン環の間に
存在して該ベンゼン環により活性化された極めて酸化さ
れやすいメチレン基がそのまま残ってしまうために、耐
熱酸化性は依然不十分である。加えて、この方法では、
ポリフェニレンエーテル樹脂を可塑化してしまう種々の
副生物が副生され、溶融成形物はその中に残る副生物の
ために可塑化されてしまう。この副生物を除くには、樹
脂を溶解、再沈澱処理しなければならないという新たな
問題が生ずる。
て、本発明者等は鋭意研究した結果、ポリフェニレンエ
ーテル樹脂の末端構造を、いわゆる6−クロマン骨格と
して環化した場合、驚くべきことにポリフェニレンエー
テル樹脂は溶融成形時の安定性が極めて高く、熱酸化劣
化の原因となる前記(f) 式に代表される一般式(h) ;
3は水素又はメチル基である。但し、R2、R3は同時に
メチル基となることはない。)で表される部分構造がポ
リフェニレンエーテル鎖中に殆ど生成しないということ
を発見した。本発明において、「6−クロマン骨格又は
基」の用語は、非置換または置換された6−クロマンを
意味する。従って、本発明の1つの目的は、熱酸化劣化
に対して高耐性の特性を有する安定化ポリフェニレンエ
ーテル樹脂の容易に実施し得る製造方法を提供すること
にある。更に、本発明の他の1つの目的は、耐熱酸化劣
化性のみならず、成形性に優れた、上記ポリフェニレン
エーテル樹脂とポリスチレン系樹脂との組成物及びその
フィルムを提供することにある。
ンエーテル系重合体を、一般式(d) 又は(e) で表される
炭素−炭素二重結合を有する化合物とラジカル発生剤無
添加の状態で、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温
度以上の温度まで加熱することを特徴とする、6−クロ
マン環化末端基を樹脂を構成するフェニレンエーテルユ
ニットの100個に対して平均0.01個以上有し、数
平均分子量が1,000〜100,000の範囲にあ
る、モノマー(i) 又はモノマー(ii)のホモポリマー、或
いはモノマー(i) 又はモノマー(ii)及び/又はモノマー
(iii) とのコポリマーを基本骨格とするポリフェニレン
エーテル樹脂の製造方法を提供する。また、
る。R2、R3は水素又はメチル基である。但し、R2、R3
が同時にメチル基となることはない。R6、R7は夫々独
立に水素、アルキル基、置換アルキル基を表すが、同時
−水素であることはない。)
ピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−
エチルヘキシル基、オクチル基、イソデシル基、ラウリ
ル基、トリデシル基、ステアリル基又はシクロヘキシル
基である。)
%とポリスチレン系樹脂99〜1重量%とからなる樹脂
組成物を提供する。また、 記載のポリフェニレンエーテル樹脂もしくは、該
ポリフェニレンエーテル樹脂1〜99重量%とポリスチ
レン系樹脂99〜1重量%とからなる樹脂組成物を主要
構成材とするポリフェニレンエーテルフイルムを提供す
る。
ーテル樹脂は、その末端基が6−クロマン基の環化され
た構造になっていることに特徴がある。本発明の安定化
ポリフェニレンエーテル樹脂においては、6−クロマン
環化末端基を、樹脂を構成するフェニレンエーテルユニ
ットの100個に対して平均0.01個以上含有する必
要がある。
平均分子量(約10,000〜30,000)の場合、
環化末端基はフェニレンエーテルユニットの100個に
対して平均0.15個以上が好ましい。さらに好ましく
は、平均0.2個以上である。その上限は特になく、多
ければ多いほど耐熱酸化劣化の点で好ましい。また、末
端基の全てが6−クロマン環化末端基の構造である樹脂
も極めて安定な樹脂である。本発明のポリフェニレンエ
ーテル樹脂は、その末端基を除き、繰返単位として
と定義され、特に限定はない。その代表的な例は、下記
式 (b);
る。R2、R3は水素又はメチル基である。但し、R2、R3
が同時にメチル基となることはない。)で示されるフェ
ニレンエーテルユニットの少なくとも1種から構成さ
れ、更に、後述の式(i) 、(j) 、(k) のモノマーユニッ
ト等を含んでもよい。
本骨格としてのポリフェニレンエーテル重合体を工業的
に有利なフェノール類の酸化カップリング重合で製造す
る場合には、R1はメチル基又はフェニル基である。R
2、R3は水素又はメチル基である。但し、R2、R3が同時
にメチル基となることはなく、このフェニレンエーテル
ユニットが全ユニットに対して90〜100%であるこ
とが好ましい。これらの条件を満たす最も好ましいR1
〜R3を有するフェニレンエーテルユニットに対応する
モノマーとしては、(i) 2,6−ジメチルフェノール、
(ii)2−メチル−6−フェニルフェノール、(iii) 2,
3,6−トリメチルフェノール等が挙げられる。モノマ
ー(i) 又はモノマー(ii)のホモポリマー、或いはモノマ
ー(i) とモノマー(ii)及び/又はモノマー(iii) とのコ
ポリマーが本発明の樹脂基本骨格としてのポリフェニレ
ンエーテル重合体として好ましく用いられる。
脂中には、熱安定性を改善するという趣旨に反しない限
り、従来ポリフェニレンエーテル樹脂中に存在させても
よいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテ
ルユニットを部分構造として含んでもかまわない。少量
共存させることが提案されているものの例としては、特
願昭63−12698号及び特開昭63−301222
号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチ
ル)6−メチルフェニレンエーテルユニット(i) や、2
−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)6−メ
チルフェニレンエーテルユニット(j) 等が挙げられる。
基、(C1〜C20)ヒドロキシアルキル基、(C2〜
C22)アルコキシアルキル基、(C3〜C22)アシロキ
シアルキル基又は(C4〜C20)ポリアルキレンエーテ
ル基である。)
ヒドロキシアルキル基、(C2〜C22)アルコキシアル
キル基、(C3〜C22)アシロキシアルキル基又は(C4
〜C20)ポリアルキレンエーテル基である。)
たり1個以上の6−クロマン環化末端基を存在させるた
めには、例えば一般式(k)で示されるような多価エーテ
ルユニットを含ませることが有効である。
は、数平均分子量で1,000〜100,000であ
る。その好ましい範囲は、約6,000〜60,000
である。特に、エンジニアリング樹脂の用途として好ま
しいのは、約10,000〜30,000のものであ
る。なお、本発明の数平均分子量は、ゲルパーミエーシ
ョンクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検
量線を用いて求めたポリスチレン換算の数平均分子量で
ある。前述したように、本発明においては、全体として
6−クロマン環化末端基を樹脂中のフェニレンエーテル
ユニットの100個に対して平均0.01個以上含むこ
とが必要である。
において、6−クロマン環化末端基の量は核磁気共鳴ス
ペクトルを用いて測定することができる。かくして、本
発明の安定化ポリフェニレンエーテル樹脂は、6−クロ
マン環化末端基を有するため、溶融(成形)した場合
に、下記一般式(h) の転位構造の生成が従来のポリフェ
ニレンエーテル樹脂に比べて著しく少ない他、分子量の
変化がほとんど起こらないといった優れた性質を有する
ものである。
細書(特開昭63−295632号公報)で提案されて
いる溶融末端封鎖法とは異なり、転位反応自体を抑制す
るものであるため、水酸基の生成だけでなく二つのベン
ゼン環の間に存在し該ベンゼン環により活性化されたメ
チレン基の生成も抑制されるものである。更に、副生成
物による可塑化などの問題は殆ど起こらず、繰返し溶融
成形しても、上記式(h)の転位構造の生成や分子量の変
化が少なく、効果が持続するという極めて優れた安定性
を有する成形材料である。
脂を溶融成形材料として使用する場合の好ましい態様と
しては、フェノール性水酸基が樹脂中のフェニレンエー
テルユニット (b)の100個に対し平均0.5個以下で
あり、また、転位を起こした(h)式の構造(代表的な例
として、工業的に有用なポリ〔オキシ(2,6−ジメチ
ル−1,4−フェニレン)〕を主体とする樹脂では、転
位を起こした下記式(f) の構造)が、樹脂中のフェニレ
ンエーテルユニットの100個に対し平均0.1個以下
であることが更に好ましい。
脂は、従来のポリフェニレンエーテルに比べて、可塑化
等の問題を起こすことなく、溶融成形時及び高温下での
使用時の熱酸化による劣化および粘度上昇が大幅に抑制
され、且つ耐熱酸化劣化性が抑制された成形物が容易に
成形できるという優れた特性を有する成形材料である。
脂は、以下のようにして製造することができる。即ち、
一般式(c) ;
る。R2、R3は水素又はメチル基である。但し、R2、R3
が同時にメチル基となることはない。R6、R7は夫々独
立に水素、アルキル基、置換アルキル基を表すが、同時
−水素であることはない。)で示される末端基を有する
ポリフェニレンエーテル系重合体を、一般式(d) 又は
(e) で表される炭素−炭素二重結合を有する化合物とラ
ジカル発生剤無添加の状態で、ポリフェニレンエーテル
のガラス転移温度以上の温度まで加熱することにより、
6−クロマン環化末端基を樹脂を構成するフェニレンエ
ーテルユニットの100個に対して平均0.01個以上
有し、数平均分子量が1,000〜100,000の範
囲にある、モノマー(i) 又はモノマー(ii)のホモポリマ
ー、或いはモノマー(i) 又はモノマー(ii)及び/又はモ
ノマー(iii) とのコポリマーを基本骨格とするポリフェ
ニレンエーテル樹脂が製造できる。
ピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−
エチルヘキシル基、オクチル基、イソデシル基、ラウリ
ル基、トリデシル基、ステアリル基又はシクロヘキシル
基である。)
レンエーテルは、水酸基のオルト位に少なくとも一つの
ベンジル位水素を有するフェノール化合物を一級または
二級アミンを含んだ触媒の存在下に酸化カップリング重
合又は共重合して得られる(例えば、米国特許第4,7
88,277号明細書)。この場合、得られるポリマー
は、一般式(c) で表される末端基を有するポリフェニレ
ンエーテルと、ベンジル位に一級又は二級アミンの結合
していない末端構造を有するポリフェニレンエーテルと
の混合物として得られるが、本発明においては、これを
分離することなく用いうる。前者と後者の使用割合は特
に限定されないが、前者の末端基数/後者の末端基数の
比で示せば、好ましくは0.4以上、特に好ましくは
0.9以上である。
基を有するポリフェニレンエーテルと一般式(d) 又は
(e) で表される不飽和化合物との反応使用量は、好まし
くは、一般式(c) で表される末端基を有するポリフェニ
レンエーテルに対して、一般式(d) 又は(e) の不飽和化
合物を2〜50当量程度用いればよい。本発明の反応機
構は、明確には解明されていないが、おそらく一般式
(c) の末端基が、ガラス転移温度以上に加熱された時に
分解して生成する一般式(L) ;
ls-Alder 反応して6−クロマン環化末端基になるもの
と推定される。
第263264号公報(特開昭63−101417号公
報)、ヨーロッパ特許公開第263,265号公報(特
開昭63−101451号公報)に式(m)、(n);
ーテル製造の際の副生物であるジフェノキノンに対する
反応であり、ポリフェニレンエーテル自身に対するもの
ではない。この反応は低分子の溶液反応についてのもの
であり、しかも反応時間が30分と長く、本発明の安定
化ポリフェニレンエーテル樹脂の製法とは、根本的に異
なるものである。
合物については、当業界で広く知られている経験的知見
や理論的予測があり、置換基の少なくとも一つが、カル
ボニル基、シアノ基等の電子吸引性の官能基であること
が好ましいことが知られている。しかし、本発明者の研
究によって、驚くべきことに置換基の一つが電子供与性
の基であるスチレンや(メタ)クリル酸エステル、コハ
ク酸エチル等の場合の方が、この反応が効率よく起こる
ことが判明した。この場合は、一般に考えられている一
段階協奏機構ではなく、不飽和化合物として例えばスチ
レンを例にとるとバイラジカル(o)を経由する機構で反
応が進行しているものと推定される。
ェニレンエーテル樹脂を製造する場合の不飽和化合物
(d)又は(e)の態様としては、中間体ラジカルを安定化す
るために、前述の通り、特定の(メタ)クリル酸エステ
ル、ケイ皮酸エチルであることが好ましい。不飽和化合
物(d) として芳香環を含まないものを用いることができ
る。そのような不飽和化合物の具体例としては、アクリ
ル酸のプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、2
−エチルヘキシル、オクチル、イソデシル、ラウリル、
トリデシル、ステアリル、シクロヘキシル等のアクリル
酸エステル類;メタクリル酸のプロピル、ブチル、イソ
ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、オクチル、
イソデシル、ラウリル、トリデシル、ステアリル、シク
ロヘキシル等のメタクリル酸エステル類等が挙げられ
る。不飽和化合物(e) の好ましい具体例としては、ケイ
皮酸エチルが挙げられる。
レフィンを用いた場合、生成する末端基は、中間体ラジ
カルの安定性によって配向が決まり易く、例えば、スチ
レンの場合は、下記式(p) のタイプの末端基を有する構
造のものができ易い。
でスチレンと溶融混練する改質技術は、米国特許第3,
929,930号明細書(特公昭52−38596号公
報)、米国特許第4,097,556号明細書(特公昭
59−11605号公報)等により公知であるが、この
方法を末端基(c) を有するポリフェニレンエーテルに対
して実施しても、スチレン類自身の重合等の反応が支配
的に起こるために、6−クロマン環化末端基が実質的に
生成しない。また、特公昭45−40551号公報及び
特公昭46−32427号公報には、ポリフェニレンエ
ーテルを夫々塩化性化合物やブレンステッド酸の存在下
でスチレン又はスチレン誘導体と反応させる方法が開示
されているが、これらの先行技術は140℃以下の溶液
状態で好適に実施されるものであり、ポリフェニレンエ
ーテルのガラス転移温度以上の溶融状態で好適に実施す
る本発明の製造方法とは全く異なるものである。また、
これらの先行技術の方法を末端基(c)を有するポリフ
ェニレンエーテルに対して実施しても、6−クロマン環
化末端基の生成は実質的に認められず、本発明の安定化
ポリフェニレンエーテル樹脂は製造できない。
脂の原料である末端基(c)を有するポリフェニレンエ
ーテル系重合体は、溶融(加工)時に分解して中間構造
(L)発生すると考えられているが、その分解速度は約
200℃の上下で極端に差があることが判明した。
0℃では数分間で殆ど完全に分解するのに対して180
℃では10時間経過しても半減するにすぎない。
製造にあたっては、末端基(c)として、例えば上記式
(q)の末端基を有するポリフェニレンエーテル系重合
体を180℃以上のガラス転移温度以上に加熱する前
に、不飽和化合物(d)又は(e)と機械的に混合して
おいた方が好ましい。
ェルミキサー等によってドライブレンドする方法、溶融
ブレンドの後乾燥させる方法、不飽和化合物(d)をポ
リフェニレンエーテルは溶解しないが不飽和化合物
(d)は溶解する、例えばメタノールやペンタン等のよ
うな溶媒に溶解させて、粉末状の末端基(c)を有する
ポリフェニレンエーテル系重合体に含浸させた後、溶媒
を乾燥除去する方法、これらを利用したマスターバッチ
法、押出機の上流に180℃以下の領域を設定し、そこ
に末端基(c)を有するポリフェニレンエーテル系重合
体と不飽和化合物(d)又は(e)とをフィードする方
法等が挙げられる。なお、180℃以上に加熱した後で
同じまたは異なる不飽和化合物(d)を追加してもよ
い。
(c)を有するポリフェニレンエーテル系重合体と不飽
和化合物(d)又は(e)は、次いでポリフェニレンエ
ーテル系重合体のガラス転移温度(約208℃)以上に
加熱溶融される。好ましい温度範囲は、ガラス転移温度
の20〜150℃上であり、さらに好ましくは、50〜
120℃上である。加熱する時間は温度との関係で一概
にはいえないが、望まれる反応が完了するのに十分の時
間加熱すればよい。一般には、約1分〜1時間程度であ
り、数分程度が好ましい。余り長くしても意味がない。
6−クロマン環化末端基の生成する反応は、通常ガラス
転移温度以上では十分速いので、不必要に過剰な熱をか
けないほうがよい。また、加熱は、前述の通り、ラジカ
ル重合開始剤の不存在下で行う必要がある。酸素もでき
る限り排除するべきであり、そのために反応雰囲気を窒
素ガス雰囲気などにするのが好ましい。
ポリスチレン系樹脂と高い相溶性を有し、これらとブレ
ンドすると耐熱酸化劣化性が改良された成形性の良好な
樹脂組成物が得られる。即ち、本発明によれば、本発明
の特定の製法で製造された6−クロマン環化末端基を有
する安定化ポリフェニレンエーテル樹脂1〜99重量%
とポリスチレン系樹脂99〜1重量%とからなる樹脂組
成物が提供される。このポリスチレン系樹脂としては、
一般に、ポリフェニレンエーテル樹脂と共に通常用いら
れるものであって、当業界においてよく知られているも
のを用いることができる。例えば、スチレンの単独重合
体の他、相溶性を損なわない範囲で他のエチレン性不飽
和モノマーとの共重合体が挙げられる。具体的なコモノ
マーの例としては、α−メチルスチレン、アクリロニト
リル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル類、メ
タクリル酸エステル類、無水マレイン酸、N−アルキル
マレイミド類、N−アリールマレイミド類、ビニルオキ
サゾリン等がある。
状弾性体を含有するものをブレンドして用いれば、ポリ
フェニレンエーテル樹脂の別の短所である耐衝撃性の低
さも改善される。具体的には、耐衝撃性ポリスチレン、
ABS樹脂、AES樹脂等である。また、スチレン−ブ
タジエン系ブロックコポリマー、スチレン−イソプレン
系ブロックコポリマー等も含まれる。この場合にも、従
来の同様な組成物に比べて熱酸化劣化に対する安定性の
著しく改善された組成物を得ることができる。ゴム分と
して不飽和結合の一部または前部が水素添加されたもの
を用いると、一層顕著な効果が認められる。また、これ
らのスチレン−ブタジエン系ブロックコポリマー、スチ
レン−イソプレン系ブロックコポリマー及びそれらの水
素添加物を無水マレイン酸等で変性したものも用い得
る。これらのゴム状ブロック共重合体は架橋粒子状のも
のも用い得る。
エーテル樹脂は、ポリスチレン系樹脂といかなる量比で
ブレンドしてもよく、前者が1〜99重量%でもよい。
好ましくは99〜50重量%である。また、ポリスチレ
ン系樹脂との組成物化は、本発明の安定化ポリフェニレ
ンエーテル樹脂を製造する際、又は製造後に行ってもよ
い。例えば、末端基(c)を有するポリフェニレンエー
テル系重合体、ポリスチレン樹脂及び式(d)又は
(e)の不飽和化合物をドライブレンドした後、ロール
ミル、二軸押出機等で溶融混練することにより目的の組
成物を得ることができる。
ル樹脂及びこのポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチ
レン系樹脂とからなる樹脂組成物を用いたフイルムは非
常に優れた特性を示す。従来のポリフェニレンエーテル
樹脂によるフイルム化は今まで種々試みられているが、
加熱溶融加工時の安定性が劣り、特に加熱時の分子量の
変化による粘度の変動のために、均一なフイルムを得る
ことが困難であり、また得られたフイルム自体も熱酸化
劣化を受けやすく実用的に用いる上で問題があった。本
発明は、上記安定化ポリフェニレンエーテル樹脂および
このポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂
とからなる組成物を用い、上記の従来の問題点を解消し
た、非常に実用性の高いフイルムをも包含する。このフ
イルムの厚みは特に制限されないが、5〜1,000μ
m、好ましくは30〜500μmである。
優れた耐熱性、電気絶縁特性、機械的特性に加え、熱酸
化劣化の改良により絶縁フイルム等への利用が可能とな
る。このフイルムの製法に関しては特に限定の必要はな
く、通常行われている溶融プレス成形法及び押出機によ
り樹脂を加熱溶融し、平形ダイより押し出すTダイフイ
ルム法等が用い得る。また、ポリフェニレンエーテル樹
脂等をトルエン、クロロホルム、テトラクロロエタン等
の適当な溶剤に溶解し、この溶液より製膜機によりフイ
ルム化する溶液キャスト法も用い得る。本発明のポリフ
ェニレンエーテル樹脂は、この他にガラス繊維等の無機
フィラー、各種の安定剤、可塑剤、難燃剤、顔料等を公
知の方法に従い適宜添加して用いることができる。
するが、本発明はこれらの例によって限定されるもので
はない。なお、各測定は以下の条件によって行った。 ポリマーの粘度は、0.5%クロロホルム溶液を3
0℃の条件下でウベローデ粘度管を用いて測定し、ηs
p/cで表す。 1H−核磁気共鳴スペクトルは日本電子(株)製の
GX−270でCOCl2 を溶媒として測定し、テトラ
メチルシランを基準として用いる。 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下G
PC)は、東洋曹達工業(株)製HL−802RTSで
測定する。GPCにおける検量線は、標準ポリスチレン
を用いて作成したものを使用する。
基は、EHUD SHCHORI等の方法〔ジャーナル
・オブ・アプライド・ポリマーズ・サイエンス;アプラ
イド・ポリマー・シンポジウム、34、103〜117
頁、(1978)に記載〕に従って測定する。 ポリマーの熱重量減少は、成形体をトルエンの5重
量%溶液として、同量のメタノールを加えて沈澱させ、
濾過、メタノール、洗浄、乾燥して得たパウダーについ
て、空気中350℃、60分の条件で測定し、減少量の
重量%値で表わす。 ポリマー中の耐熱酸化劣化性は、成形体をクロロホ
ルムに溶解してキャスト法によって作製したフィルム
(50〜60μm)を、180℃の空気循環式恒温槽に
7時間放置した後、赤外分光光度計で1695cm-1の
吸収の増分を測定し、相対値で表す。
位;
キシル基に対応し、酸化劣化の程度の指標となる。 (参考例1) (i) <末端基(c) を有するPPE樹脂の製造> 原料のポリフェニレンエーテルは、米国特許4,78
8,277号明細書(特願昭62−77570号)に記
載されている方法に従って、ジブチルアミンの存在下
に、2,6−キシレノールを酸化カップリング重合して
製造する。得られるポリフェニレンエーテルの粘度は
0.545であり、ガラス転移温度は約208℃であ
る。1H−核磁気共鳴スペクトルで分析した結果、式
(q);
0.32個存在することが確認される。
単位(r)の100個につき、0.34個存在すること
が確認される。
場合の安定化PPE樹脂> このポリフェニレンエーテルの100重量部に対してス
チレン10重量部を添加して、ヘンシェルミキサーで均
一にブレンドした後、スクリューの直径が30mmφの
二軸押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)中300
℃で溶融混練し、水槽を通してペレット化する。このよ
うにして得られるペレットを1H−核磁気共鳴スペクト
ルで分析した結果、式(s);
き、0.03個存在することが3.86ppmのシグナ
ルの面積値から確認される。また、遊離のフェノール性
水酸基の量は、主な繰返単位(r)の100個につき
0.45個存在することが確認される。また、GPCで
求めた数平均分子量は24,500であり、粘度は0.
547である。
機械(株)製IS80EPN)で330℃の条件で成形
し、試験片とする。この試験片(短冊6.4mm)につ
いて同様の分析を行うと、上記式(s)の末端基が、主
な繰返単位(r)の100個につき0.23個存在し、
(f)式の転位構造が、主な繰返単位(r)の100個
につき、0.13個存在することが確認される。
(r)の100個につき0.69個存在することが確認
される。また、GPCで求めた数平均分子量は25,0
00であり、粘度は0.552である。この試験片のA
STM D256によるノッチ付アイゾット衝撃強度は
4kg・cm/cmである。また、空気中での熱安定性の
測定結果を比較例1とともに下記表1に示す。
末端基(q)を有するポリフェニレンエーテルを、不飽
和化合物を使用しない他は、同様な条件で押出し、ペレ
ットとする。さらに、このペレットを参考例1と同様な
条件で射出成形し、試験片とする。このペレット及び試
験片の分析結果は、表1にまとめて示す。表1から明ら
かなように、参考例1の樹脂は、射出成形時の粘度、分
子量、化学構造の変化が比較例の樹脂に比べて格段に少
なく、優れた加工安定性を有するものであることが分か
る。さらに、射出成形片の熱酸素下での安定性も実施例
の樹脂は良好であり、高温下での使用に対しても優れた
成形材料であることが分かる。 (参考例2)参考例1におけるスチレンの代わりにα−
メチルスチレンを用いる以外は、同様にしてペレットを
得る。得られるペレットは、主な繰返単位(r)の10
0個につき、式(t)の環化末端基構造が0.20個存
在し、(f)式の転位構造が100個につき0.02個
存在する。
(r)の100個につき、0.48個存在する。また、
GPCで求めた数平均分子量は23,600であり、粘
度は0.531である。 (参考例3)90重量部の2,6−ジメチルフェノール
と100重量部の2,3,6−トリメチルフェノール
を、参考例1と同様の方法で重合し原料のポリフェニレ
ンエーテルを製造する。得られるポリフェニレンエーテ
ルの粘度は0.568であり、式(q)、(u)及び、
(v)式の末端基構造が合わせて全フェニレンエーテル
ユニットの100個につき0.36個存在する。
エーテルユニットの100個につき、0.26個存在す
る。このポリフェニレンエーテルを用いて、参考例1と
同様にして本発明の安定化ポリフェニレンエーテル樹脂
のペレットを得る。このペレットは、式(s)の末端基
及びその3位又は5位にメチル基が置換した末端基が、
合計で、全フェニレンエーテルユニットの100個につ
き、0.26個存在する。
の一部がメチル基に置換された構造は、全フェニレンエ
ーテルユニットの100個につき0.03個であり、遊
離のフェノール性水酸基の量は全フェニレンエーテルユ
ニットの100個につき0.37個である。また、GP
Cで求めた数平均分子量は27,300である。
と同様な方法で粘度が0.568の原料ポリフェニレン
エーテルを製造する。このポリフェニレンエーテル樹脂
は、末端構造(q)が(r)の100個に対して0.3
6個であり、遊離のフェノール性水酸基が0.25個で
ある。この原料ポリフェニレンエーテルの100部に対
して表2に挙げた化合物を指定量加えて均一に混合し、
320℃、3分間の条件で溶融プレス成形する。結果を
表2に示す。
1と同様にして原料のポリフェニレンエーテルを製造す
る。得られたポリフェニレンエーテルの粘度は、0.5
74である。また、末端基(q)は全く存在せず、遊離
のフェノール性OHは主な繰返単位(r)の100個に
つき0.71個である。この原料ポリフェニレンエーテ
ルを単独で320℃、3分間溶融プレス成形する。結果
を表2に示す。
300℃、2分間の条件で溶融プレス成形して、厚さ5
0〜60μmのフィルムとする。このフィルムを180
℃の空気循環式オーブン中で15時間エージング後、4
70nmの吸光度で着色度を評価する。結果を表3に示
す。
レンエーテル樹脂ペレット75重量部と耐衝撃性ポリス
チレン(旭化成工業(株)製:商品名スタイロン49
2)25重量部を良く混合し、二軸押出機で300℃の
条件で溶融ブレンドしてペレタイズする。得られるペレ
ットを300℃で3分間プレスして圧延フィルムとす
る。得られるフィルムを150℃、7時間熱曝露を行
い、酸化劣化の進行度を1695cm -1の吸収で調べ
る。また、同じペレットを300℃で射出成形して試験
片を作成し、同じ条件で熱曝露を行いアイゾット衝撃強
さの保持率を測定する。結果を表4に示す。 (比較例4)比較例1で製造せるポリフェニレンエーテ
ル樹脂のペレットを使用する以外は、参考実施例2と同
様にして圧延フィルムおよび試験片を得る。得られるフ
ィルムおよび試験片を150℃で7時間熱暴露を行い、
酸化劣化の進行度およびアイゾット衝撃強さの保持率を
調べる。結果は表4に示す。
る安定化ポリフェニレンエーテル樹脂は、熱酸化劣化を
受け易いという従来のポリフェニレンエーテル樹脂に比
して、可塑化等の問題を起こすことなく、溶融成形時の
劣化および粘度上昇が大幅に改善され、且つ耐熱酸化劣
化が改善された、熱安定性に優れたポリフェニレンエー
テル樹脂である。また、上記安定化ポリフェニレンエー
テル樹脂とポリスチレン系樹脂との組成物は優れた熱安
定性と機械的強度を示し、特に安定化ポリフェニレンエ
ーテル樹脂とゴム弾性体を含むポリスチレン系樹脂との
組成物は、優れた熱安定性を示すばかりでなく、従来の
ポリフェニレンエーテルの他の欠点である耐衝撃性の低
さも改善される。
Claims (3)
- 【請求項1】 一般式(c) で示される末端基を有するポ
リフェニレンエーテル系重合体を、一般式(d) 又は(e)
で表される炭素−炭素二重結合を有する化合物とラジカ
ル発生剤無添加の状態で、ポリフェニレンエーテルのガ
ラス転移温度以上の温度まで加熱することを特徴とす
る、6−クロマン環化末端基を樹脂を構成するフェニレ
ンエーテルユニットの100個に対して平均0.01個
以上有し、数平均分子量が1,000〜100,000
の範囲にある、モノマー(i) 又はモノマー(ii)のホモポ
リマー、或いはモノマー(i) 又はモノマー(ii)及び/又
はモノマー(iii) とのコポリマーを基本骨格とするポリ
フェニレンエーテル樹脂の製造方法。 【化1】 (式(c) において、R1はメチル基又はフェニル基であ
る。R2、R3は水素又はメチル基である。但し、R2、R3
が同時にメチル基となることはない。R6、R7は夫々独
立に水素、アルキル基、置換アルキル基を表すが、同時
−水素であることはない。) 【化2】 (式(d) 中、R4は水素又はメチル基であり、R5はプロ
ピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−
エチルヘキシル基、オクチル基、イソデシル基、ラウリ
ル基、トリデシル基、ステアリル基又はシクロヘキシル
基である。) 【化3】 モノマー(i) :2,6−ジメチルフェノール、 モノマー(ii):2−メチル−6−フェニルフェノール、 モノマー(iii) 2,3,6−トリメチルフェノール。 - 【請求項2】 請求項1記載のポリフェニレンエーテル
樹脂1〜99重量%とポリスチレン系樹脂99〜1重量
%とからなる樹脂組成物。 - 【請求項3】 請求項1記載のポリフェニレンエーテル
樹脂もしくは、該ポリフェニレンエーテル樹脂1〜99
重量%とポリスチレン系樹脂99〜1重量%とからなる
樹脂組成物を主要構成材とすることを特徴とする、ポリ
フェニレンエーテルフイルム。
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