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【書類名】 明細書
【発明の名称】 真空装置用駆動機構および真空装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】 真空装置の気密容器内に固定設置される一端が開放されたエアバッグ収納容器と、この収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部が前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出し、これによって前記真空容器内において対象物体を移動することを特徴とする真空装置用駆動機構。
【請求項2】 前記真空装置用駆動機構はさらに、前記エアバッグ内の気体を排気する気体排気手段を備え、この気体排気手段により前記エアバッグ内の気体を排気することにより、前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出したエアバッグの一部を前記エアバッグ収納容器内に後退収納し、これによって前記真空容器内において対象物体を移動することを特徴とする請求項1記載の真空装置用駆動機構。
【請求項3】 前記エアバッグは弾性体材料により構成され、前記気体排気手段によりその内部の気体が排気されたとき、前記エアバッグ自体の弾性力により前記エアバック収納容器内に後退収納されることを特徴とする請求項2記載の真空装置用駆動機構。
【請求項4】 前記エアバッグには、前記気体排気手段によりその内部の気体が排気されたとき、前記エアバッグを弾性力により前記エアバッグ収納容器内に後退収納させる弾性体手段が設けられていることを特徴とする請求項記載の真空装置用駆動機構。
【請求項5】 前記高圧気体供給手段および前記気体排気手段は、前記エアバッグ収納容器を貫通して設けられる共通の貫通口を介して気体を供給しあるいは排気することを特徴とする請求項記載の真空装置用駆動機構。
【請求項6】 前記エアバッグ収納容器の上面に、前記開放端を閉塞するように配置されたエアバッグ補強体と、このエアバッグ補強体を内部に収納して、エアバッグ補強体の上下方向の移動をガイドするとともに、その移動範囲を一定の範囲に制限するように、前記エアバッグ収納容器の上面に固定されたストッパーとをさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の真空装置用駆動機構。
【請求項7】 内部に気密な空間が形成された真空容器と、この真空容器内に配置された真空装置用駆動機構とからなり、この真空装置用駆動機構は一端が開放されたエアバッグ収納容器と、この収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部が前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出し、これによって前記真空容器内において被処理物体を移動させることを特徴とする真空装置。
【請求項8】 内部に気密な空間を形成する被処理物体の搬送室と、この搬送室を構成する隔壁に形成された処理室開口部を介して連設される気密空間により構成される処理室と、前記搬送室を構成する隔壁に形成された搬送室開口部と、前記搬送室内に設けられ、被処理物体を搬送するためのサセプタを前記搬送室開口部と前記処理室開口部間で搬送する搬送機構と、この搬送機構に設置され、前記処理室開口部あるいは前記搬送室開口部を気密に開閉するように前記サセプタを駆動する真空装置用駆動機構とを備え、この真空装置用駆動機構は、一端が開放されたエアバッグ収納容器と、このエアバッグ収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出させ、これによって前記サセプタを押圧して、前記処理室開口部あるいは前記搬送室開口部を気密に閉塞するように構成したことを特徴とする真空装置。
【請求項9】 前記搬送室の外部には、外部搬送機構が設置されており、この外部搬送機構には、垂直回転軸の回りに回転する水平アームと、この水平アームの端部に設けられた前記搬送室開口部を密に開閉する真空蓋とを備えたことを特徴とする請求項8記載の真空装置。
【請求項10】 前記処理室は前記搬送室に連設された1個または複数個のスパッタ室であり、前記被処理物体はディスク基板であることを特徴とする請求項8または9記載の真空装置。
【請求項11】 内部に気密な放電空間を形成するスパッタ室と、このスパッタ室内に磁界を印加するように、前記スパッタ室の上方に配置された磁界発生装置と、この磁界発生装置による磁界が印加されるように、前記スパッタ室内上部に配置されたターゲットと、前記スパッタ室の底部を構成する隔壁に形成されたスパッタ室開口部を介して連設されるとともに、前記スパッタ室の底部から横方向に延長された気密空間を形成する搬送室と、この搬送室の前記スパッタ室の底部から横方向に延長された気密空間の天井部分に設けられた搬送室開口部と、前記搬送室内に設けられ、スパッタ膜を形成するためのディスク基板を載置するためのサセプタを前記搬送室開口部と前記スパッタ室開口部間で交互に搬送する内部ディスク搬送機構と、前記搬送室開口部に嵌合してこの開口部を気密に閉塞するとともに、下面に前記ディスク基板を着脱自在に保持する複数の真空蓋と、これらの真空蓋を前記搬送室開口部と前記搬送室から離れた位置に配置されたディスク基板載置するディスク搬送テーブル間で交互に搬送する外部ディスク搬送機構と、前記サセプタ底部に設けられた真空装置用駆動機構とを備え、この真空装置用駆動機構は前記サセプタ底部に固定設置され、下端が開放されたエアバッグ収納容器と、このエアバッグ収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部が前記エアバッグ収納容器の開放下端部から突出して前記搬送室底面に接触押圧し、これによって前記サセプタをその上面が前記搬送室開口部に接触してこの開口部を気密に閉塞するように構成したことを特徴とする真空装置。
【請求項12】 前記サセプタ上部には、前記ディスク基板を前記サセプタ上面から上昇させる第2の真空装置用駆動機構が設けられ、前記サセプタが前記搬送室開口部あるいは前記処理室開口部に押圧されるとき、前記外部ディスク搬送機構の真空蓋に設けたチャッキング機構に前記ディスク基板を挿入させ、あるいは、前記スパッタ室内のセンターマスクに前記ディスク基板を押圧させることを特徴とする請求項10または11に記載の真空装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えばスパッタ装置、CVD装置あるいは蒸着装置等のような成膜装置、CDEあるいはRIEのようなエッチング装置等の真空装置に関し、特に被処理物体その他の物体を真空装置内で移動させる駆動機構を備えた真空装置に関に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、CDあるいはDVDなどの情報記録用ディスク製造に用いる毎葉式マグネトロンスパッタ装置においては、表面に金属あるいは半金属物質からなる反射膜をスパッタリングにより被着するためのプラスチックからなる光ディスク基板を、搬送機構により真空装置外部から内部に取り込むためロードロック機構が用いられている。また、このスパッタ装置においては、真空装置内部に取り込まれた被処理物体である光ディスク基板は上記搬送機構により真空装置内のスパッタ室下部に搬送され、スパッタ室下部において上下方向に往復運動するディスクプッシャ機構により、スパッタ室内に上昇搬送される。
【0003】
このようなスパッタ装置においては、上記のロードロック機構およびディスクプッシャ機構はいずれも真空装置内で被処理物体を搬送して上下方向に往復運動するリフト機構を備えている。このリフト機構は、そのほとんどが高圧空気シリンダーあるいは油圧シリンダーが用いられている。このようなシリンダーを用いる理由は次の通りである。例えばロードロック機構は真空室外から真空シールを介して真空室内にシリンダーロッドを貫通させ、ロッドの先端に設けた受け座を光ディスク基板を載置するためのサセプターに突き当てて連結し、サセプターを真空室の真空蓋が設けられた内壁に押しつける。この状態で被処理物体である光ディスク基板を真空室内に取り込むために真空蓋を開放すると、大気圧がサセプターを押し下げる方向に働くため、シリンダーはこの力に耐えなければならない。このシリンダーに作用する大気圧による力は1,270〜1,470ニュートン(N)となるため、高圧空気シリンダーあるいは油圧シリンダーが用いられる。
【0004】
また、このリフト機構は、シリンダーロッド等その機構の一部が真空室を構成する容器を貫通して設けられるため、真空シールを必要とする。この真空シールとしてはOリングシールやベローズシールが用いられている。ベローズシールは金属製のダイヤフラムを重ねて溶接したもので、シリンダーロッドと真空装置のリフト機構の固定面間に取り付けることによりシールするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような真空装置においては、リフト機構として大きなスペースを占める高圧空気シリンダーあるいは油圧シリンダーを用いるため、装置が大型化する欠点があった。また、リフト機構の一部が貫通する真空容器に設けられるOリングシールは、その内側を金属製のシリンダーロッドが摺動するため、磨耗が激しい。Oリングシールの磨耗はこの部分から真空シールが破壊され、真空容器の気密性を維持できなくなる。この磨耗を防止し、シール性の向上のために、従来から、真空用のグリースが用いられているが、このグリースに真空容器内の膜剥離物質やディスク基板の破片などが付着して真空シールを破壊する原因となった。また、このグリースの成分が真空装置の使用中に真空容器内に飛散し、被処理物体に形成すべき被膜成分に混入し、その特性に悪影響を及ぼすことがあった。
【0006】
他方、ベローズシールは金属製のダイヤフラムがシリンダーロッドの往復運動に伴って伸縮するため、長時間の使用により金属疲労が発生し、突然ベローズが破壊され、真空シールが破壊されることがあった。
【0007】
したがって本発明の目的は、小型で、特別な真空シールのための手段あるいは機構を必要としないリフト機構およびこれを備えた真空装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の真空装置用駆動機構は、気密容器内に固定設置される一端が開放されたエアバッグ収納容器と、この収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部が前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出し、これによって前記真空容器内において対象物体を移動することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の真空装置用駆動機構は、さらに、前記エアバッグ内の気体を排気する気体排気手段を備え、この気体排気手段を用いて前記エアバッグ内の気体を排気することにより、前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出したエアバッグの一部を前記エアバッグ収納容器内に後退収納し、これによって、前記真空容器内において対象物体を移動することを特徴とするもである。
【0010】
さらに、本発明の真空装置用駆動機構においては、前記エアバッグは弾性体材料により構成され、前記気体排気手段によりその内部の気体が排気されたとき、前記エアバッグ自体の弾性力により前記エアバッグ収納容器内に後退収納されることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明の真空装置用駆動機構においては、前記エアバッグには、前記気体排気手段によりその内部の気体が排気されたとき、前記エアバッグを弾性力により前記エアバッグ収納容器内に後退収納させる弾性体手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明の真空装置用駆動機構においては、前記エアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段および前記エアバッグ内の気体を排気する気体排気手段は、前記エアバッグ収納容器を貫通して設けられる共通の貫通口を介して気体を供給しあるいは排気することを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の真空装置用駆動機構においては、前記エアバッグ収納容器の上面に、前記開放端を閉塞するように配置されたエアバッグ補強体と、このエアバッグ補強体を内部に収納して、エアバッグ補強体の上下方向の移動をガイドするとともに、その移動範囲を一定の範囲に制限するように、前記エアバッグ収納容器の上面に固定されたストッパーとをさらに備えたことを特徴とするものである。
【0014】
次に、本発明の真空装置は、内部に気密な空間が形成された真空容器と、この真空容器内に配置された真空装置用駆動機構とからなり、この真空装置用駆動機構は一端が開放されたエアバッグ収納容器と、この収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部が前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出し、これによって前記真空容器内において被処理物体を移動させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の真空装置は、内部に気密な空間を形成する被処理物体の搬送室と、この搬送室を構成する隔壁に形成された処理室開口部を介して連設される気密空間により構成される処理室と、前記搬送室を構成する隔壁に形成された搬送室開口部と、前記搬送室内に設けられ、被処理物体を搬送するためのサセプタを前記搬送室開口部と前記処理室口部間で搬送する搬送機構と、この搬送機構に設置され、前記処理室開口部あるいは前記搬送室開口部を気密に開閉するように前記サセプタを駆動する真空装置用駆動機構とを備え、この真空装置用駆動機構は、一端が開放されたエアバッグ収納容器と、このエアバッグ収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部を前記エアバッグ収納容器の開放端部から突出させ、これによって前記サセプタを押圧して、前記処理室開口部あるいは前記搬送室開口部を気密に閉塞するように構成したことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明の真空装置においては、前記搬送室の外部には、外部搬送機構が設置されており、この外部搬送機構には、垂直回転軸の回りに回転する水平アームと、この水平アームの端部に設けられた前記搬送室開口部を密に開閉する真空蓋とを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
さらに、本発明の真空装置においては、前記処理室は前記搬送室に連設された1個または複数個のスパッタ室であり、前記被処理物体はディスク基板であることを特徴とするものである。
【0018】
さらに、本発明の真空装置は、内部に気密な放電空間を形成するスパッタ室と、このスパッタ室内に磁界を印加するように、前記スパッタ室の上方に配置された磁界発生装置と、この磁界発生装置による磁界が印加されるように、前記スパッタ室内上部に配置されたターゲットと、前記スパッタ室の底部を構成する隔壁に形成されたスパッタ室開口部を介して連設されるとともに、前記スパッタ室の底部から横方向に延長された気密空間を形成する搬送室と、この搬送室の前記スパッタ室の底部から横方向に延長された気密空間の天井部分に設けられた搬送室開口部と、前記搬送室内に設けられ、スパッタ膜を形成するためのディスク基板を載置するためのサセプタを前記搬送室開口部と前記スパッタ室開口部間で交互に搬送する内部ディスク搬送機構と、前記搬送室開口部に嵌合してこの開口部を気密に閉塞するとともに、下面に前記ディスク基板を着脱自在に保持する複数の真空蓋と、これらの真空蓋を前記搬送室開口部と前記搬送室から離れた位置に配置されたディスク基板載置するディスク搬送テーブル間で交互に搬送する外部ディスク搬送機構と、前記サセプタ底部に設けられた真空装置用駆動機構とを備え、この真空装置用駆動機構は前記サセプタ底部に固定設置され、下端が開放されたエアバッグ収納容器と、このエアバッグ収納容器内に収納されたエアバッグと、このエアバッグ内に高圧気体を供給する高圧気体供給手段とからなり、この高圧気体供給手段により前記エアバッグ内に高圧気体を供給することにより、前記エアバッグの一部が前記エアバッグ収納容器の開放下端部から突出して前記搬送室底面に接触押圧し、これによって前記サセプタをその上面が前記搬送室開口部に接触してこの開口部を気密に閉塞するように構成したことを特徴とするものである。
【0019】
さらに、本発明の真空装置においては、前記サセプタ上部には、前記ディスク基板を前記サセプタ上面から上昇させる第2の真空装置用駆動機構が設けられ、前記サセプタが前記搬送室開口部あるいは前記スパッタ室開口部に押圧されるとき、前記外部ディスク搬送機構の真空蓋に設けたチャッキング機構に前記ディスク基板を挿入させ、あるいは、前記スパッタ室内のセンターマスクに前記ディスク基板を押圧させることを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明を真空装置の一形態である枚葉式マグネトロンスパッタ装置に適用した実施形態を示す断面図である。このスパッタ装置は、処理室としてほぼ円筒状の気密容器であるスパッタ室11と、このスパッタ室11の下側に、このスパッタ室11に連通して設けられた同じく気密容器であるディスク搬送室12とを備えている。スパッタ室11の上壁外面には磁石装置13が回転モータ14により回転可能に設けられている。
【0022】
スパッタ室11の上壁内面には成膜物質からなるデスク状のターゲット15が水冷バッキングプレート16に固定されている。ターゲット15の中心部からはセンターマスク17がスパッタ室11内に垂直に懸下されている。スパッタ室11とディスク搬送室12とを区切る隔壁18には、ディスク基板19の上表面をスパッタ室11に露出するためのスパッタ室開口部20が設けられている。
【0023】
ディスク搬送室12は、スパッタ室11の下側に位置する第1の気密空間12−1とここからさらに横(水平)方向に延長された第2の気密空間12−2から構成されており、これらの第1および第2の気密空間は全体として概ね円筒あるいは半円筒形状となっている。第2の気密空間12−2の天井部分には搬送室開口部21が設けられている。ディスク搬送室12内には、複数のディスク基板19−1、19−2をそれぞれ載置するための複数個のサセプタ22−1、22−2を備えた内部ディスク搬送機構23が設けられている。この内部ディスク搬送機構23はディスク基板19−1、19−2をスパッタ室開口部20と搬送室開口部21との間で交互に回転搬送する。この内部ディスク搬送機構23はまた、第1および第2の気密空間12−1、12−2からなるディスク搬送室12の中央部に垂直方向に設けられた回転軸25を備え、ディスク搬送室12の外部下側に設置されたモータ24により回転駆動される。この回転軸25の頂部には複数のリング状の水平アーム26−1、26−2が固定されており、それぞれにサセプタ22−1、22−2が載置されている。
【0024】
第2の気密空間12−2の天井部分に設けられた搬送室開口部21には、この開口部に嵌合して気密に閉塞するとともに、下面にディスク基板19−1、19−2を着脱自在に保持する複数の真空蓋30−1、30−2が設けられる。これらの複数の真空蓋30−1、30−2はディスク搬送室12の外部に設けられた外部ディスク搬送機構31により搬送される。すなわち、外部ディスク搬送機構31は、モータ32により回転駆動される垂直回転軸33を備え、この垂直回転軸33の頂部には半径方向に延長される水平アーム34−1、34−2が固定されている。これらの水平アーム34−1、34−2の先端部には搬送室開口部21に嵌合する真空蓋30−1、30−2が固定されている。真空蓋30−1、30−2の下面はディスク基板19の中心孔に挿入して、ディスクを着脱するメカニカルチャック35−1、35−2によりディスク基板19を搬送するように構成されている。ディスク搬送室12の外部にはまた、モータ36により水平面内で回転するディスク搬送テーブル37が設けられている。ディスク搬送テーブル37には複数のディスク基板19−3、19−4が載置され、ディスク搬送テーブル37が回転してディスク基板19−3が外部ディスク搬送機構31の水平アーム34−2により搬送される真空蓋30−2の直下に移動したとき、真空蓋30−2にチャックされる。チャックされたディスク基板19−3は外部ディスク搬送機構31の回転によりディスク搬送室12の搬送室開口部21の位置に搬送され、真空蓋30−2が搬送室開口部21に嵌合したのち真空蓋30−2の下面から離脱され、ディスク搬送室12内のサセプタ22−2上に載置される。
サセプタ22−1、22−2の底部には、真空装置用駆動機構40−1、40−2が設けられている。これらの真空装置用駆動機構40−1、40−2は前記サセプタ底部に固定設置され、下端が開放されたエアバッグ収納容器41−1、41−2と、これらの収納容器内に収納されたエアバッグ42−1、42−2と、これらのエアバッグ内に前記エアバッグ収納容器41−1、41−2を貫通して高圧気体を供給する高圧気体供給パイプ43−1、43−2とから構成されている。この高圧気体供給パイプ43−1、43−2の端部はモータ24により回転駆動される回転軸25内に形成された中空部(図示せず)を介してディスク搬送室12の外部に導出され、それぞれ3方弁44−1、44−2に連結されている。これらの3方弁44−1、44−2は高圧気体供給パイプ43−1、43−2の端部を高圧気体供給源45および排気ポンプ46に選択的に連結する。この3方弁44−1、44−2を高圧気体供給源45側に切替えてエアバッグ42−1、42−2内に高圧気体を供給すると、エアバッグ42−1、42−2の一部が前記エアバッグ収納容器41−1、41−2の開放下端部から突出してディスク搬送室12の底面に接触する。この状態でさらに高圧気体供給源45からエアバッグ42−1、42−2内に高圧気体を供給すると、エアバッグ42−1、42−2の下部突出部がディスク搬送室12の底面を押圧し、この反作用によりサセプタ22−1、22−2が上昇し、その上面がスパッタ室口部20あるいは搬送室開口部21に接触してこれらの開口部を気密に閉塞する。
【0025】
図2乃至図5は真空装置用駆動機構の構造を示す図で、図2乃至図4の(A)は断面図、(B)は斜視図である。図2に示す真空装置用駆動機構40は、上面に開口51が形成され、底面に貫通口52が形成された円筒状のエアバッグ収納容器41を備えている。このエアバッグ収納容器41内には、底部にエアバッグ収納容器41の貫通口52に連通するエア導入口53が形成されたエアバッグ42が収納されている。エアバッグ42はその底部がエアバッグ収納容器41の底部に固定されている。エアバッグ42の本体中央部から上部には本体下部より小さな直径の蛇腹54が形成されており、この蛇腹54はそれが伸長するとき、エアバッグ収納容器41の開口51を通過してエアバッグ収納容器41の外部に突出可能に構成されている。エアバッグ42は例えばウレタンゴムあるいはブナゴムのような弾性有機材料により構成されており、その内部に高圧気体が供給されていない状態においては、エアバッグ42の頂部がエアバッグ収納容器41の外部に位置するが蛇腹54の大部分がエアバッグ収納容器41内に収納されている。なお、エアバッグ収納容器41はエアバッグ42より強度の高い変形しにくい材料、例えば金属材料により構成される。
【0026】
エアバッグ収納容器41の貫通口52には、図1に示した高圧気体供給パイプ43−1、43−2が連結され、高圧気体が貫通口52からエアバッグ42内に供給される。この結果エアバッグ42内に高圧気体が充満してエアバッグ42の本体中央部から上部に形成された蛇腹54部分がエアバッグ収納容器41の開口51を通過してエアバッグ収納容器41の外部に伸長突出する。このときエアバッグ42の下部はその直径が蛇腹54部分よりも大きいため、エアバッグ収納容器41の開口51を通過することなく、エアバッグ収納容器41内に残留している。エアバッグ収納容器41の開口51を通過してエアバッグ収納容器41の外部に伸長突出した蛇腹54部分はその頂部によりこれに接触する他の物体を押圧する。図1においては真空装置用駆動機構40−1、40−2はサセプタ22−1、22−2の底面に図2に示されている状態に対して、上下を逆転して設置されている。このためエアバッグ収納容器41の外部に伸長突出したエアバッグ42の頂部はディスク搬送室12の底面を押圧し、この反作用によりサセプタ22−1、22−2が上昇する。
【0027】
エアバッグ42内に高圧気体が充満した状態において、図1に示した3方弁44−1、44−2を排気ポンプ46側に切替えて、エアバッグ42内の気体を排気すると、エアバッグ42の蛇腹54はその弾性力により収縮し、図2に示すように、その頂部はエアバッグ収納容器41の外部に位置するが、その大部分はエアバッグ収納容器41内に復帰する。
【0028】
図3に示す真空装置用駆動機構60は、エアバッグ収納容器61が全体として直方体の筐体であり、このエアバッグ収納容器61内に収納されるエアバッグ62の伸縮機構である蛇腹63の構造が異なる点を除き、図2の真空装置用駆動機構40とほぼ同じ構造である。このため、同一構成部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。この真空装置用駆動機構60におけるエアバッグ62の蛇腹63部分は、その垂直断面がS字状に曲折されている。すなわち、このエアバッグ62の本体下部は、その水平断面がエアバッグ収納容器61の底面とほぼ同一の形状および面積を有しており、本体上部は水平断面がエアバッグ収納容器61の上面に形成された矩形の開口64の開口面より小さな面積の矩形に構成されている。そしてエアバッグ62の本体上部と本体下部とは上述したように、垂直断面がS字状に曲折された蛇腹63により結合されている。この蛇腹63はエアバッグ62内に高圧気体が供給されると伸長し、この結果開口64を介してエアバッグ収納容器61の外部に位置する頂部が上昇する。そしてエアバッグ62内の気体が排気されると、蛇腹63はその弾性力により収縮し、この結果開口64を介してエアバッグ収納容器61の外部に位置する頂部が下降する。
【0029】
図4に示す真空装置用駆動機構65は、エアバッグ66の伸縮機構が異なる点を除き、図3の真空装置用駆動機構60とほぼ同じ構造であるため、同一構成部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。この真空装置用駆動機構65のエアバッグ6は図2あるいは図3のエアバッグ42、62のように蛇腹54、63を設けることなく、エアバッグ66全体の弾性力により伸縮するように構成されている。
【0030】
図5は本発明のさらに他の実施形態を示す真空装置用駆動機構の断面である。同図においては、図3の真空装置用駆動機構60と同一構成部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。図5に示す真空装置用駆動機構67は、エアバッグ収納容器61の上面に形成された矩形の開口64の上部には、この開口64を閉塞するエアバッグ補強体68が設けられている。このエアバッグ補強体68は、その底部68−1がエアバッグ収納容器61の開口64部を閉塞するような面積を有し、その本体部68−2はその水平断面が、底部68−1より狭い面積を有しており、その垂直断面はほぼ凸字形をなすように構成されている。このエアバッグ補強体68は弾性有機材料で構成されるエアバッグ62本体に対し、金属等のより強度の高い変形しにくい材料により構成される。このエアバッグ補強体68の周囲にはエアバッグ補強体68を内部に収納して、エアバッグ補強体68の上下方向の移動をガイドするとともに、その移動範囲を一定の範囲に制限するためのストッパー69が、開口64の周囲のエアバッグ収納容器61上にボルト70により固定されている。すなわち、ストッパー69は頂部にエアバッグ補強体68の本体部68−2が通過できる開口部69−1が形成された筐体により構成され、エアバッグ補強体68がその内部を上下に案内されて移動する。エアバッグ補強体68の移動ストロークは、その底部68−がエアバッグ収納容器61上に接触する位置を下限とし、その底部68−がストッパー69の頂部にある開口部69−1に到達する位置を上限とする範囲である。移動ストロークの上限において、エアバッグ補強体68はその底部68−の面積が開口部69−1の面積より広いため、開口部69−1を通過することができずにこの位置でその移動を停止する。
【0031】
図2乃至4に示した真空装置用駆動機構においては、エアバッグは金属性のエアバッグ収納容器に覆われているが、高圧気体の供給により、エアバッグが突出する部分は弾性有機材料で構成されたエアバッグ自体が真空室内に突出する。このため、エアバッグ突出する部分を受け止める対象物確実に存在しないと、エアバッグは破裂するまで膨張することになる。図5に示した真空装置用駆動機構は、このような恐れを除去し、安全かつ確実に動作させるために、エアバッグ突出部に金属等のエアバッグ補強体68を設置し、エアバッグ62が安全なストローク以上エアバッグ収納容器61の外部に伸張しないように構成されている。
【0032】
図6はこのように構成された真空装置用駆動機構による駆動サイクルを示すグラフである。同図の横軸は時間で1目盛りは100msesで表示されており、縦軸は真空装置用駆動機構による駆動距離で、1目盛りは0.5mmで表示されている。このグラフは、真空中に設置された真空装置用駆動機構に、5.9×10-3Paの高圧気体の供給と排気をほぼ1秒間隔で交互に繰り返し、エアバッグ頂部の移動距離の変化を測定したものである。このグラフから、この真空装置用駆動機構の立上がりは0.02秒、立ち下がりは0.09秒を要することがわかる。
【0033】
次に、このように構成された図1の枚葉式マグネトロンスパッタ装置の動作を説明する。先ず、ディスク搬送室12を構成する第2の気密空間12−2内に配置されたサセプタ22−2下面に設置された真空装置用駆動機構40−2を高圧気体供給44により駆動して、サセプタ22−2を水平アーム26−2の上面より上昇させ、搬送室開口部21をサセプタ22−2の上面により気密に閉塞する。
【0034】
一方、モータ36により水平面内で回転するディスク搬送テーブル37上に載置された、スパッタ処理が施される前のディスク基板19−3、19−4は、外部ディスク搬送機構31により搬送される真空蓋30−2の直下において真空蓋30−2の下面にチャックされる。真空蓋30−2は外部ディスク搬送機構31によりディスク搬送室12を構成する第2の気密空間12−2の天井部分に設けられた搬送室開口部21に回転搬送される。この状態は図1の真空蓋30−1で示されている。真空蓋30−1はこの搬送開口部21に嵌合してこれを気密に閉塞するとともに、下面にチャックしたディスク基板19−3を離脱し、これをディスク搬送室12内のサセプタ22−2上に載置する。図1のディスク基板19−2はこの状態を示している。次いで真空装置用駆動機構40−2を排気ポンプ46によるエアバッグ42の排気により駆動して、サセプタ22−2を水平アーム26−2の上面の位置まで下降させる。この状態において内部ディスク搬送機構23は、モータ24により回転軸25の回りに回転駆動され、サセプタ22−2を第1の気密空間12−1内に搬送する。この状態は図1においてはサセプタ22−1、ディスク基板19−1、真空装置用駆動機構40−1として示されている。
【0035】
ディスク搬送室12を構成する第1の気密空間12−1内に配置されたサセプタ22−1は、その下面に設置された真空装置用駆動機構40−1を駆動することにより、水平アーム26−1の上面より上昇させられ、スパッタ室11とディスク搬送室12とを区切る隔壁18に形成されたスパッタ室口部20をサセプタ22−1の上面により気密に閉塞する。これによってスパッタ室11が密閉され、ディスク基板19−1の中心孔にはセンターマスク17が嵌合する。
【0036】
この状態において、スパッタ室11にはガス導入口(図示せず)からアルゴンガスが導入され、スパッタ室11上壁と側壁間に放電用高電圧が印加されるとともに、磁石装置13による回転磁界がスパッタ室11内に印加され、スパッタ室11内には放電によるプラズマが発生する。この放電により、ターゲット15の下面からターゲット材料物質が放出され、サセプタ22−1上に載置されたディスク基板19−1の表面に堆積してスパッタ膜が形成される。
【0037】
ディスク基板表面へのスパッタ膜形成工程が完了すると、真空装置用駆動機構40−1を再び駆動して、サセプタ22−1を水平アーム26−1の上面の位置まで降下させる。次いで、内部ディスク搬送機構23をモータ24により回転駆動して、サセプタ22−1を第2の気密空間12−2内に搬送する。この状態は図1においてはサセプタ22−2、ディスク基板19−2、真空装置用駆動機構40−2として示されている。
【0038】
次いで、サセプタ22−2下面に設置された真空装置用駆動機構40−2を再び高圧気体供給44により駆動して、サセプタ22−2を水平アーム26−2の上面より上昇させ、搬送室開口部21をサセプタ22−2の上面によりディスク搬送室12の内部から気密に閉塞する。この状態において、ディスク基板19−2は搬送室開口部21をディスク搬送室12の外部から閉塞する真空蓋30−1の下面にチャックされ、外部ディスク搬送機構31により搬送室開口部21から取り外されてディスク搬送テーブル37上に回転搬送される。そしてディスク基板19−2はこの状態で真空蓋30−1の下面から離脱されディスク搬送テーブル37上に載置される。この状態は図1のディスク基板19−3で示されている。ディスク基板19−3はディスク搬送テーブル37により搬送され、表面にスパッタ膜が形成されたディスク基板19−4として取り出される。
【0039】
以上説明した本発明の実施形態に示されるように、本発明の真空装置用駆動機構40−1、40−2は、その駆動機構全体が真空装置を構成するディスク搬送室12内に設置されているため真空シールを必要としない利点がある。したがって真空シール用のOリングの磨耗やこれによる不純物のスパッタ膜への混入等の問題を生ずることがない。
【0040】
また、本発明の真空装置用駆動機構40−1、40−2は、全体として小型にできるため、真空装置全体の構造を小型にできる。
【0041】
さらに、本発明の真空装置用駆動機構40−1、40−2は、その形状が変形可能なエアバッグ42の頂部によりディスク搬送室12の底面等、対象物体を押圧するため、真空装置用駆動機構40−1、40−2と押圧対象物体との相対的な位置関係は必ずしも正確に一致する必要がないため、真空装置内での真空装置用駆動機構40−1、40−2の設置位置の自由度があり、スペースの有効活用が計れる。
【0042】
さらに、本発明の真空装置用駆動機構40−1、40−2は、従来のOリングシールやベローズの交換メンテナンスに比較して、エアバッグ42等の交換メンテナンスに熟練を必要とせず、短時間に交換が可能である。
【0043】
図7は本発明の他の実施形態を示す多目的スパッタ成膜装置の構成を示す水平断面図である。断面がほぼ正方形の気密なディスク搬送室71の内部中心部には垂直方向に延長された中空回転軸72が設けられている。この回転軸72の周囲には断面がほぼ正方形で回転軸72の回転に伴って水平面内で回転する枠体73が設けられている。この枠体73の4つの壁面の外周面には図2乃至図4に示したような、4個の真空装置用駆動機構74−1〜74−4が設けられている。これらの真空装置用駆動機構74−1〜74−4にはそれぞれ中空回転軸72を介して外部から導入される高圧気体供給パイプ75−1〜75−4により高圧気体が供給され。4個の真空装置用駆動機構74−1〜74−4はそれぞれのエアバッグの一部の突出作用により、サセプタ76−1〜76−4をディスク搬送室71の周囲4壁面に形成された開口77−1〜77−4を閉塞するように押圧する。ディスク搬送室71の3つの壁面の外周面にはそれぞれ、開口77−1〜77−3を介して3個のスパッタ室78−1〜78−3が連通するように固定されている。これらの3個のスパッタ室78−1〜78−3は多目的のスパッタリングを行うための異なる条件で動作するもので、例えば、図示しないがそれぞれ異なる材料のターゲットを備え、異なる種類の膜を形成することができるように構成されている。ディスク搬送室71の4壁面の内、残りの壁面に形成された開口77−4には、ディスク搬送室71の外部に設置されたロードロック機構79により、ディスク搬送テーブル80−1、80−2が交互に移動し、開口77−4を気密に閉塞する。ロードロック機構79は中空回転軸72とほぼ平行に垂直方向に延長配置された第2の中空回転軸81とともに回転する第2の枠体82を備え、この枠体82の対向する2つの壁面外周面に図2乃至図4に示したような、2個の真空装置用駆動機構83−1、83−2が設けられている。これらの真空装置用駆動機構83−1、83−2には、図示しないが第2の中空回転軸81を介して外部から導入される高圧気体供給パイプによりそれぞれ高圧気体が供給されている。2個の真空装置用駆動機構83−1、83−2はそれぞれのエアバッグの一部の突出作用により、ディスク搬送テーブル80−1、80−2をディスク搬送室71の壁面に形成された開口77−4を閉塞するように押圧する。ディスク搬送テーブル80−1、80−2には図示しないが、その表面にスパッタ膜を形成するためのディスク基板が載置固定され、ロードロック機構79はディスク基板を開口77−4を介して外部からディスク搬送室71内に供給し、あるいは、ディスク搬送室71内から外部に取り出す。
【0044】
この実施形態による多目的スパッタ成膜装置は、サセプタ76−1〜76−4を駆動する真空装置用駆動機構74−1〜74−4を全て気密容器であるディスク搬送室71内に設置できるため、従来のシリンダ機構を用いる場合のように、往復運動するピストンの気密シール手段を必要とせず、装置が全体的に簡素化、小形化される。また、ディスク搬送室71の外部に設置されるロードロック機構79も同様に、簡素化、小形化が図れる。
【0045】
図8は本発明に用いられる真空装置用駆動機構の他の実施形態を示す断面図である。なお、同図においては図2の真空装置用駆動機構と基本的な構成は同じでるため、対応する構成部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0046】
この実施形態においては、エアバッグ42内部に蛇腹54の伸縮方向をガイドするガイド機構91と高圧気体の排気時、蛇腹54を後退させるためのスプリング機構92を備えている。エアバッグ42の頂部肉厚内には金属ディスク93が埋設されており、この金属ディスク93の中心には、エアバッグ42内に垂直に延長されたピストン軸94が連結されている。ピストン軸94はガイド機構91に設けられた軸受95に支持され、ピストン軸94はこの軸受95内を垂直方向に往復運動する。この軸受95内には油性の潤滑材を用いることにより、円滑な往復運動を確保する。スプリング機構92は金属ディスク93の周辺部とエアバッグ収納容器41の底面間を結合する複数本のスプリングにより構成されている。
【0047】
このように構成された真空装置用駆動機構は、エアバッグ収納容器41の底面に設けられた貫通口52から高圧空気が送り込まれると、エアバッグ42の蛇腹54が伸長し、エアバッグ42の頂部が上昇する。このとき、エアバッグ42の頂部肉厚内の金属ディスク93はそのピストン軸94が軸受95内を案内されることにより、エアバッグ42の頂部も垂直方向に高い方向精度をもって移動する。このとき、スプリング機構92はエアバッグ42の頂部の上昇とともに伸長する。次に、高圧空気が貫通口52から排出されると、エアバッグ42内部の気圧が低下するため、頂部肉厚内の金属ディスク93がスプリング機構92の収縮により下方に引っ張られ、これによって蛇腹54も収縮する。このとき、金属ディスク93に連結されたピストン軸94が軸受95内を案内されることにより、エアバッグ42の頂部も垂直方向に高い方向精度をもって下降する。
【0048】
このように、この実施形態の真空装置用駆動機構は、柔軟な弾性体からなるエアバッグの伸縮による駆動の位置精度を向上することができる。また、この実施形態においては、ガイド機構が密閉されたエアバッグ内に設けられているため、真空装置用駆動機構を真空容器内において用いる場合であっても、油性の潤滑材を用いることができる。
【0049】
図9は本発明の真空装置の他の実施形態を示す要部断面図である。なお、同図の構成は図1に示した真空装置における内部ディスク搬送機構23に支持されたサセプタ22−1の部分に相当するため、対応する部分には対応する符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態においては、サセプタ22−1内に2個の真空装置用駆動機構101、102が垂直方向に2段に積層配置されている。そして1段目の真空装置用駆動機構101におけるエアバッグの突出部に連通口103を設け、これを2段目の真空装置用駆動機構102の高圧空気導入口(図示せず)に連結して、多段構造の真空装置用駆動機構を構成している。なお、2個の真空装置用駆動機構101、102の連結部は、複数個の気密シール104を介してネジ105で固定されている。このような構成により、各段のエアバッグ突出部の移動ストロークが加算された、より大きなストロークの駆動機構が得られる。
【0050】
図10は本発明のさらに他の実施形態を示す真空装置の要部断面図である。なお、同図の構成は図1に示した真空装置における各構成部分に対応する部分には対応する符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態においては、サセプタ22−1、22−2内上部に、部に設けられた真空装置用駆動機構40−1、40−2(以下ではこれらを第1の真空装置用駆動機構という。)の他に第2の真空装置用駆動機構110−1、110−2がそれぞれ設置されている。これらの第2の真空装置用駆動機構110−1、110−2は、それぞれサセプタ22−1、22−2上面に載置されるディスク基板19−1、19−2を上下方向に往復移動させる。これらの第2の真空装置用駆動機構110−1、110−2は、それぞれ高圧気体供給パイプ43−1、43−2(以下これらを第1の高圧気体供給パイプという。)とは独立した第2の高圧気体供給パイプ112−1、112−2により駆動用の高圧気体が供給される。
同図の真空装置には、図1においては省略されたスパッタ室11およびディスク搬送室12用の排気機構が示されている。すなわち、スパッタ室11の側壁に形成された排気口11−1にはディスク搬送室12に隣接して真空装置底部に延長配置された排気ダクト11−2が設けられている。この排気ダクト11−2の下端には排気用の主ポンプ114−1および補助ポンプ114−2が連結されている。また、第2の気密空間12−2の底部に形成された排気口12−3には排気用の主ポンプ116−1および補助ポンプ116−2が連結されている。なお、ディスク搬送テーブル37には、外部ディスク搬送機構31のメカニカルチャック35−1、35−2にディスク基板19-3、19-4を着脱するためのディスクプッシャー118が設けられている。
【0051】
図11は、第1の真空装置用駆動機構40−1、40−2によりサセプタ22−1、22−2を上方にリフトするとともに、第2の真空装置用駆動機構110−1、110−2により、ディスク基板19−1、19−2を上方にリフトした状態を示している。この状態においては、ディスク基板19−1はスパッタ室11内のセンターマスク17の下面に押圧されるとともに、ディスク基板19−2は真空蓋30−1下面に接触配置されている。
【0052】
図12、13はそれぞれ図10、11に示される真空装置のサセプタに設置された真空装置用駆動機構の構造および動作をより詳細に示す要部断面図である。なお、同図においても、図1乃至5、図10乃至11に示された構成部分と同一の構成部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
図12は、内部ディスク搬送機構23のリング状の水平アーム26−2に支持されたサセプタ22−2が、ディスク搬送室12を構成する第2の気密空間12−2の天井部分に形成された搬送室開口部21の直下に配置された状態を示している。サセプタ22−2の下面には第1の真空装置用駆動機構40−2が設置され、上面には第2の真空装置用駆動機構110−2が設置されている。第1の真空装置用駆動機構40−2のエアバッグ42はディスク搬送室12の底部134に向かって突出するように、サセプタ22−2の下面に下向きに設置されている。これに対して第2の真空装置用駆動機構110−2はエアバッグ66がディスク搬送室12の天井部分に向かって突出するように、サセプタ22−2の上面に上向きに設置されている。第2の真空装置用駆動機構110−2は図5に示したエアバッグ補強体68を有しており、エアバッグ66の上方への突出がストッパー69により一定の範囲に制限される。エアバッグ補強体68の上面にはディスク基板19の中心孔に嵌合するセンターカイド120が固定されている。このセンターカイド120はメカニカルチャック35−2を構成する3本の上爪に対応する3本の下爪により構成されている。このセンターカイド120は、ディスク基板19−2が上昇する以前においては、ディスク基板19−2をサセプタ22−2の上面に固定するが、ディスク基板19−2が上昇したときには、メカニカルチャック35−2を構成する上爪がディスク基板19−2の中心孔を貫通して開き、ディスク基板19−2を機械的に保持するように構成されている。
【0054】
内部ディスク搬送機構23のリング状の水平アーム26−2に支持されたサセプタ22−2には、また、複数個のサセプタ引き戻し機構124が設けられている。これらのサセプタ引き戻し機構124は、サセプタ22−2の周囲の水平アーム26−2に形成された複数個の透孔126と、これらの透孔126を貫通し、上端がサセプタ22−2の鍔部128に固定された案内軸130と、この案内軸130に緩挿され、案内軸130の下端と水平アーム26−2の下面に対し、これらを互いに引き離す方向の弾性力を付与するコイルバネ132とにより構成されている。なお、図12および図13において符号134はディスク搬送室12用の排気口を、また、符号136は真空シール用のOリングをそれぞれ示している。
【0055】
次に、図12および図13を用いて、第1の真空装置用駆動機構40−2および第2の真空装置用駆動機構110−2によるサセプタ22−2およびディスク基板19の駆動動作を説明する。図12は第1の真空装置用駆動機構40−2および第2の真空装置用駆動機構110−2のいずれにも駆動用の高圧気体が供給されず、したがってそれぞれのエアバッグ42、66は収納容器61内に収納されたままの状態にある。次に、第1の真空装置用駆動機構40−2および第2の真空装置用駆動機構110−2にそれぞれ第1の高圧気体供給パイプ43−2および第2の高圧気体供給パイプ112−2を介して駆動用の高圧気体が供給されると、それぞれのエアバッグ42、66は膨張し、収納容器61内から下方および上方に突出する。これにより、第1の真空装置用駆動機構40−2のエアバッグ42はエアバッグ補強体68を介してディスク搬送室12の底板134を押圧し、その反作用によりサセプタ22−2が上昇する。これにより、サセプタ22−2はその上面により搬送室開口部21を閉塞するとともに、サセプタ引き戻し機構124のコイルバネ132はさらに圧縮される。
【0056】
他方、第2の真空装置用駆動機構110−2のエアバッグ42はエアバッグ補強体68を介してディスク基板19を外部ディスク搬送機構31の真空蓋30−1方向に押し上げる。そしてメカニカルチャック35−2を構成する上爪がディスク基板19の中心孔に挿入されて3本の爪を開き、これによってディスク基板19−2が保持される。
【0057】
第1の真空装置用駆動機構40−2および第2の真空装置用駆動機構110−2から駆動用の高圧気体が排気されると、サセプタ引き戻し機構124のコイルバネ132がその弾性力により伸長し、サセプタ22−2を図12に示す元の位置に引き戻す。
【0058】
なお、図12、13においては、ディスク搬送室12の搬送室開口部21の直下に配置されたサセプタ22−2について説明したが、図10、11に示したスパッタ室開口部20の直下に配置されたサセプタ22−1も、同様な構造を備え、同様な動作を行うことはいうまでもない。ただし、スパッタ室開口部20の直下に配置されたサセプタ22−1は、スパッタ室開口部20を閉塞するとともに、スパッタ室11内のディスク基板19−1を押し上げセンターマスク17下面に接触させる。
【0059】
このようにディスク基板19−1、19−2を第2の真空装置用駆動機構110−1、110−2により移動することにより、以下に述べるような従来装置における課題が解決できる。すなわち、サセプタ22−1、22−2上面に載置したディスク基板19−1、19−2はスパッタ室11でサセプタ22−1がその開口部20へ押圧され、且つディスク基板19−1がセンターマスク17に押圧される。しかしサセプタ22−1およびディスク基板19−1という、2つの構造物を同時に異なる対象物であるスパッタ室開口部20およびセンターマスク17に押圧することは機械寸法上から無理が伴う。サセプタ22−1、22−2にはディスク搬送室12の開口部21に押圧時に、ディスク搬送室12を大気からシールするためのOリング136が設けられている。このOリング136はスパッタ室開口部20側では大気をシールしないために充分な力で押圧しない。このためにサセプタ22−1とスパッタ室開口部20とはOリング136が介在して密着しないため、この間隙の寸法が定まらずディスク基板19−1をセンターマスク17や外周マスク(図示せず)に押圧することが困難となる。すなわち、ディスク基板19−1をセンターマスク17に押圧するようにすると、サセプタ22−1のOリング136がスパッタ室開口部20に接触しない場合、あるいはこの逆に、サセプタ22−1のOリング136をスパッタ室開口部20に接触させた場合、ディスク基板19−1がセンターマスク17に接触しない場合が出てくる。このためにサセプタ22−1、22−2とディスク基板19−1、19−2とを別の真空装置用駆動機構によりリフトすることにより上記の問題が解決される。
【0060】
さらに、ディスク搬送室開口部21側では、ディスク基板19−2、19−3の受け渡しに際して、外部ディスク搬送機構31はメカニカルチャック35−1、35−2や真空チャックを使用している。サセプタ22−1、22−2上面にはディスク基板19−2を載置してこれをスパッタ室11まで高速で搬送する際に、ディスク基板19−2を落下しないよう、テーパー状に掘り下げた受け部に続きディスクを飛び出させないために垂直に掘り下げた受け部が形成されている。従ってディスク基板19−1、19−2は、サセプタ22−1、22−2の上面から約5mm程下がった奥まった位置に置かれている。外部ディスク搬送機構31のメカニカルチャック35−1、35−2等のチャッキング機構はこの奥まった位置に載置されたディスク基板19−1、19−2を取り出すために長いチャッキング機構、即ちディスク搬送室開口部21を密に閉塞する真空蓋30−1下面から少なくも5mm程突出する長さを必要とする。一方ディスク基板19−1、19−2を載置したサセプタ22−1、22−2はこのチャッキング機構を避けて搬送するためのクリアランス2mmを加えて合計7mm程度のクリアランスを必要とすることになる。サセプタ22−1、22−2はそれらの真空装置用駆動機構40−1、40−2により上下に移動することにより上記クリアランスを確保することは可能である。しかし、サセプタ22−1、22−2の上下移動のストロークが長くなると、真空装置用駆動機構40−1、40−2が大型化し高価になるとともに、上下移動に要する時間も長くなるため、このストロークを1mmでも2mmでも縮めることが重要である。このためサセプタ22−1、22−2の上下移動の他にディスク基板19−1、19−2を別個に上下移動させることにより、上記の要求を満たすことができる。
【0061】
図14は本発明のさらに他の実施形態を示す真空装置の断面図である。なお、同図の構成は図1、図10あるいは図11に示した真空装置における各構成部分に対応する部分には対応する符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態においては、サセプタ22−1、22−2を上昇あるいは下降させるための第1の真空装置用駆動機構140−1、140−2がサセプタ22−1、22−2内ではなく、ディスク搬送室の底部134上に、それらのエアバッグ142−1、142−2がそれぞれサセプタ22−1、22−2側に突出するように設置されている。
【0062】
この実施形態によれば、サセプタを軽量化しあるいは薄型化する場合に有効である。すなわち、搬送室底部134に真空装置用駆動機構140−1、140−2を設置し、エアバッグ142−1、142−2の突出部のみをサセプタ22−1、22−2の下端面に突き当ててサセプタを駆動する。
【0063】
なお、サセプタの製作条件や、サセプタ下端部の形状条件等で、エアバッグをサセプタ下端部と搬送室底部に併せ持つ構造も取ることができる。
【0064】
以上本発明を種々の実施形態により説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0065】
例えば、図1、図10、図11及び図14に記載された真空装置においては、単一のスパッタ室が示されているが、図7に示したように、異なる種類の成膜を行う複数個のスパッタ室を有する真空装置に対しても本発明が適用できることは言うまでもない。この場合には複数個のスパッタ室に対して共通の搬送室を設け、ディスク基板を外部からこの搬送室内に搬入し、このディスク基板を水平面内で回転する搬送機構により各スパッタ室に搬送して成膜し、成膜されたディスク基板を再び搬送室を介して真空装置外部に取り出すようにすればよい。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の真空装置用駆動機構は、高圧気体により動作し、全体を小型化できるため、駆動機構全体を真空装置内部に設置することが可能である。したがって、特別な真空シールのための手段あるいは機構を必要とすることなく、また、真空装置内に潤滑油成分等の不純物が混入する恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明を真空装置の一形態である枚葉式マグネトロンスパッタ装置に適用した実施形態を示す、スパッタ装置の断面図である。
【図2】
本発明の真空装置用駆動機構の構造を示す図で、各図の(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【図3】
本発明の真空装置用駆動機構の構造を示す図で、各図の(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【図4】
本発明の真空装置用駆動機構の他の構造を示す図で、各図の(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【図5】
本発明の真空装置用駆動機構のさらに他の構造を示す断面図である。
【図6】
本発明の真空装置用駆動機構による駆動サイクルを示すグラフである。
【図7】
本発明の他の実施形態を示す多目的スパッタ成膜装置の構成を示す水平断面図である。
【図8】
本発明のエアバッグ駆動機構の他の実施形態を示す断面図である。
【図9】
本発明の真空装置の他の実施形態を示す要部断面図である。
【図10】
本発明のさらに他の実施形態を示す真空装置の断面図である。
【図11】
図10に示す真空装置の動作状態を示す断面図である。
【図12】
図10、11に示す真空装置の要部を示す断面図である。
【図13】
図12に示す真空装置の動作状態を示す断面図である。
【図14】
本発明のさらに他の実施形態を示す真空装置の断面図である。
【符号の説明】
11 スパッタ室
12 ディスク搬送室
12−1 第1の気密空間
12−2 第2の気密空間
13 磁石装置
14 回転モータ
15 ターゲット
16 水冷バッキングプレート
17 センターマスク
18 隔壁
19 ディスク基板
20 スパッタ室開口部
21 ディスク搬送室開口部
22 サセプタ
23 内部ディスク搬送機構
24 モータ
25 回転軸
26 水平アーム
30−1 真空蓋
30−2 真空蓋
31 外部ディスク搬送機構
32 モータ
33 回転軸
34 水平アーム
35 メカニカルチャック
36 モータ
37 ディスク搬送テーブル
40 真空装置用駆動機構
42 エアバッグ収納容器
43−1 高圧気体供給パイプ
43−2 高圧気体供給ポンプ
44−1 3方弁
44−2 3方弁
45 高圧気体供給源
46 排気ポンプ
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